06/03/08 01:57:31 IYLX3iAY0
前話:>>234-238
舞台:DCFF7第7章@シエラ号艇内
備考:ネタバレ有り(6章のアレが前提)なので、
DC未プレイの方は読まない事をおすすめします。
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彼女にとってそれは10年ぶりに向けられた笑顔、あるいは純粋な微笑みだった
のかも知れない。そしてその微笑みは、彼女の心の奥に閉ざされた大切な何かに、
ほんの少し。だが、確かに触れた。
(これは、……"誰の"記憶の断片……ですか?)
少女は心の中で誰にとも分からないまま問うのだった。
***
彼が去ってしばらくしてから再び背後でドアが開く音がしたが、彼女は振り返ろう
ともしなかった。こちらに敵意や悪意が向けられていないことは、気配だけで大凡の
見当はついた。だから振り返る必要はないと判断して、ひたすら目の前のディスプレイに
流れる文字を追いかけながら、手元に並んだキーボードの上でせわしなく指を動かし
ている。タイピングの音と、機械から出る僅かなノイズだけが、この小さな空間を満たし
ていた。