FFの恋する小説スレPart5at FF
FFの恋する小説スレPart5 - 暇つぶし2ch250:エッジ前哨戦【41】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/05 15:57:30 4S9toHaY0
「街の人たちに話を聞いてみたんだけど、
街外れの大きな倉庫にたくさんの人が集められてるらしい。
WR0の部隊が救助に向かっている。オイラ達が頼まれているのは、
残存勢力をまとめること、避難した人を安全な所まで運ぶことだ。」
クラウドは膝を折って屈み、ティファと同じ様にナナキの目線に合わせる。
「安全な場所…どこか心当たりがあるか?」
「コスモキャニオンがいいと思う。」
「あそこは、学者連中が知恵を寄せ合って、
ちょっとした要塞みたいになってるらしい。
地の利もいいし、マリンやデンゼルを預けるのにちょうどいい。」
バレットが口を挟む。
「WROの基地は、あちこち走り回ってるお前の方が詳しいだろ。」
クラウドは頷くと、フェンリルに置いてある地図を持って来て、
それぞれがどこへ向かうか指示を出した。

バレットとナナキが子ども達を避難民を連れてコスモキャニオンに向かう。
ナナキはそのままコスモキャニオンの守りに就き、バレットはそのまま
大陸の北側の基地を周る。クラウドとティファはその反対側だ。

「出発前に、お前らに言っておく事がある。」
バレットはデンゼルとマリンの身に起こった事を二人に話した。
ティファは気絶せんばかりに驚き、クラウドも青ざめ、言葉を失った。
「あいつらには、俺がお灸を据えておいた。だから気にすんな。」
「デンゼルは今、眠っているよ。大丈夫、オイラがついてる。」


251:エッジ前哨戦【42】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/05 16:00:09 4S9toHaY0
出発前に会いたいという二人の言葉を、バレットは撥ね付けた。
「マリンの側に居なかったのは、俺も同じだ。
勝手に飛び出したデンゼルには帰ったらお尻でも叩いてやれ。」
男の子にはよくある事だからな、と言われても二人はいたたまれない。
「おら、さっさと行くぞ!」
ろくなフォローもないまま、バレットは
さっさとトレーラーに戻ってしまった。
途方に暮れる二人をレッドは見上げ、
なんと声を掛けたものかと考える。
「クラウド…オイラ、今、身体が二つあればって思うんだ。
でも、一つしかない。」
二人は黙ってナナキの言葉に耳を傾ける。
「一人で出来る事には限界がある。
だから、仲間がいるんだろ?バレットは、
二人共、一人でなんとかしようとするから、
水臭いって怒っているんだと思うよ。」
バレットは少し変わったよね、ナナキはそう付け足した。
確かに、以前の彼ならマリンを置いていったというだけで
怒鳴り散らされていただろう。
相変わらず義理人情に厚いが、直情直行なだけではない。
クラウドはもう一度膝を折り、ナナキの頭に手を置いた。
「ありがとう、ナナキ。子ども達を頼む。」
ナナキが頷く。
トレーラーから バレットがさっさと行けと叫んでいる。
「オイラも行くよ。ヴィンセントに気を付けてって。」
二人の顔に漸く笑顔が戻り、手を振ってくれるのを確認すると、
ナナキはトレーラーに向かって駆け出した。バレットがやかましく
叫んでいる運転席の横にするりと身体を滑り込ませる。

252:エッジ前哨戦【43】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/05 16:01:16 4S9toHaY0
「何を話してたんだ?」
「うん、少しね。」
「余計なこと、言ってんじゃねーぞ。」
バレットはキーを回し、エンジンをかける。
「父ちゃん、ティファとお話出来ないの?」
マリンは不満そうだ。
「いいかぁ、マリン。アイツらはああやってすぐ飛び出しちまう。
飛び出しちまうもんはしょうがねぇ。
だがな、飛び出しても帰って来るのは、マリンやデンゼルが居るからだ。」
「でも…待つのは嫌い。」
沈んだ声だ。
マリンは隣に座るナナキの頭を抱き寄せ、柔らかい毛に顔を埋める。
バレットは慎重にアクセルを踏む。
後ろで眠るデンゼルや大勢の避難民を思っての事だ。
「待つ方が、飛び出してくよりキツいからな。
だがな、待ってやれ。そうでなきゃあいつら、どこへ行っちまうか分かんねーぞ。
まったく、子供におんぶされてるなんざ、情けねぇやつらだ。」
乱暴な言い方に、マリンはくすりと笑う。
「そうなの!マリンがついてなきゃ、ティファもクラウドもダメなの!」
バレットは目を細めて愛娘の顔を見て、
「まったくだ!」
そうして、また豪快に笑うのだった。


253:エッジ前哨戦【44】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/05 16:02:24 4S9toHaY0
フェンリルの後部座席に跨がったティファが重大な事を思い出し、
それを伝える為にクラウドの背中を叩いた。
「私もリーダーに報告したいことがあるの。」
ティファは神羅ビルで出会ったロッソの事をクラウドに話した。
「理由は分からないけど、“獲物”と言っていたのは
ヴィンセントの事じゃないかしら。」
「そいつが何故ヴィンセントを狙うんだ?」
「そうね…今展開しているWROの部隊の事かも。
でも、ロッソはエッジに向かうとも言ってたし、
手強い相手だから知らせておいた方がいいわ。
とても…嫌な感じだったわ。
人を傷つけるのを楽しんでる…そんな感じ。
ヴィンセントなら大丈夫だと思うけど。」
確かに…とクラウドが電話を取り出し、ヴィンセントにかける。
「近付いちゃダメなの。離れて攻撃した方がいいって。
やっかいな真空波の事も伝えて。」
クラウドは頷き、ヴィンセントが電話に出るのを待つ。
「だめだ…出ない。」
「そう…」
「WROの隊員に伝言を頼もう。」
「携帯も調達してもらえる?」
ポツン、と頬に何かが当たり、クラウドは空を見上げた。
「雨…」
「急ぎましょう。」

しかし、この後エッジのWROの部隊は全滅。
彼らの伝言がヴィンセントに伝わる事はなかった。
そして、彼らが再びミッドガルに終結するのは、まだもう少し先の事だった。

おわり。

254:エッジ前哨戦 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/05 16:03:06 4S9toHaY0
クラウドがティファをバイクに乗せるシーンは、投稿人が夢見がち故です。
あんな狭い所にティファが座れるかとか、熱くてとても座ってらんねーぞとか、
そういうツッこみは、ここに関してだけはどうかスルーよろしこです。

乙コールや感想下さった方のお陰で最後まで書けました。ありがとう。
もっとあらすじみたいにざくざく書くつもりでしたが、
>>152-153さんのお言葉で、いい意味で火が点きました。
その分、長くなってしまいましたが、最後までお付き合いありがとうございました。
お気に召して頂けたかは分かりませんが、書いている方はとても楽しかったです。
ミッドガル地上戦は書けるかどうか分かりませんが、また何か投下に参りますね。

255:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 16:48:55 72tJ79dp0
>>254
最高でした。
ありがとう。

256:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 19:39:06 4K6UcQstO
>>254
乙です!
本当に最高でした。
読んでてこんなに引き込まれてしまったのは久しぶりです。

257:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 19:46:53 ixLkY+/a0
>>254
すごく面白かったです。
この作品に出会えて良かったです。どうもありがとうございます。

258:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 20:12:49 EpWmIGpzO
>>254
乙です。読みながらハラハラしたり楽しかった。
デンゼルやマリンの様子も描かれててばっちり補完できました。
バレットもクラウドもティファも味がでていて良かったです。

259:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/05 21:19:56 SnTvFDUT0
>>234-238も◆BLWP4Wh4Ooも乙。
DCの行間を補完してくれるような話が読めて良かった。

260:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 00:51:50 rf+M4WthO
相変わらず文章が巧いよね

261:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 02:08:38 WW8MSfTH0
>>254
乙です、おもしろかったです。
戦闘描写もよかったと思います。読めてよかった、ありがとう。

>>234サンのリーブさんのお話の続きも楽しみにしてます。

262:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/06 13:25:44 QXByAnGQ0
>>254
乙です!
最高でした。

263:エッジ前哨戦 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/07 01:02:01 XO9GmIKi0
たくさんの乙コールありがとうございます。
『クラウドはティファの王子様』願望炸裂だったので、
引かれてしまったらどうしようかとヒヤヒヤしておりました。

もうすぐ12発売ですが、そうなるとスレは落ち易くなると聞きました。
こまめに投下した方がいいのかな?

264:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/07 02:48:51 JHaFSSIJO
保守
>>263
投下してくれると嬉しい!

265:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/07 20:11:02 /QSHokwqO
保守ついでに。

7好きとしては作品大量でかなり楽しませてもらってます。作者さんたち乙です。
それから前スレ未完の作品も続き待ってます。

266: ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/07 23:37:47 XO9GmIKi0
仕事忙しくなった_| ̄|○週末に投下に参りますね。



267:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/08 01:22:27 IYLX3iAY0
>>エッジ前哨戦
乙、そしてGJ! 最後まで読んでてすごく楽しかった。
何より嬉しいのがナナキ。DCにはほとんど登場しなかった彼の根拠をちゃんと
埋めてくれているのが嬉しくてうれしくて。クラウドがバイクで登場するシーンは
本編のビル脱出を彷彿とさせるし、剣で弾をはじく描写も格好よかった。ちゃんと
約束を意識しているところも素晴らしい!
あえて注文をつけるなら(この辺は7好き者のわがままと言うことで許して欲しいw)
>>252の「どこへ行っちまうか分かんねーぞ。」は「帰ってくる場所が分からない」
って方を強調した方が良かったかも知れないかな、なんて思ったり。(決戦前夜の
ティファの台詞・状況と対比させる意味でも)読んだ一個人の意見ということで、
聞いていただければ幸いです。

長々すんません。新作にも期待。

268:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(1)
06/03/08 01:57:31 IYLX3iAY0
前話:>>234-238
舞台:DCFF7第7章@シエラ号艇内
備考:ネタバレ有り(6章のアレが前提)なので、
    DC未プレイの方は読まない事をおすすめします。
----------




 彼女にとってそれは10年ぶりに向けられた笑顔、あるいは純粋な微笑みだった
のかも知れない。そしてその微笑みは、彼女の心の奥に閉ざされた大切な何かに、
ほんの少し。だが、確かに触れた。
(これは、……"誰の"記憶の断片……ですか?)
 少女は心の中で誰にとも分からないまま問うのだった。

                    ***

 彼が去ってしばらくしてから再び背後でドアが開く音がしたが、彼女は振り返ろう
ともしなかった。こちらに敵意や悪意が向けられていないことは、気配だけで大凡の
見当はついた。だから振り返る必要はないと判断して、ひたすら目の前のディスプレイに
流れる文字を追いかけながら、手元に並んだキーボードの上でせわしなく指を動かし
ている。タイピングの音と、機械から出る僅かなノイズだけが、この小さな空間を満たし
ていた。

269:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(2)
06/03/08 02:02:33 IYLX3iAY0
 飛空艇シエラ号の艇内で、そこは姉妹に割り当てられた部屋だった。所狭しと
壁際に並んだ計器類やディスプレイに加え、納められたたくさんの機械類を
一手に引き受けているのは、まだ外見は幼く見える妹のシェルクだった。
 姉はと言えば、彼女の後ろで静かに身を横たえている。
(…………)
 流れていく文字の速度が徐々に緩やかになり始めた頃、少女は顔を上げると
ようやくディスプレイから視線を離した。静かに息を吸い込むと瞼を閉じる。彼女は
無意識のうちに、酷使していた視覚神経を少しでも休ませようとしていたのだろう。
 目の前にある端末にSND―センシティブ・ネット・ダイブ―を実装するための
処理にはもう少し手を施さなければならないが、とりあえず山場は超えた。常人から
すればとてつもない作業量と、理解を超える処理だったが、少女にとってはこの
10年間の「日常」だった。
 正確には「日常」を維持するための手段―過酷な環境の中で生き残る術に
他ならない。できれば二度と思い出したくない地底での記憶は、それでも脳や精神は
おろか身体をも蝕んで、この先もずっとついて回るのだろう。
 ―データとして削除できるのならば、いっそのこと消し去ってしまいたい。
 目を閉じたまま少女の指はゆっくりとキーボードの上をたどった。入力されることの
ない文字列は、プログラムコマンド“削除”の意味を表している。
(…………)
 自分のとった全く意味のない行動に、少女は目を開けて自身の指を見つめながら
心の中でつぶやいた。
(バカみたい)

270:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(3)
06/03/08 02:09:10 IYLX3iAY0
『ほんまにスゴイんやな~……』
「!」
 唐突に足下から聞こえてきた声に、最小限の動作と最短の時間で少女は驚き
を表そうとしたが、どうやら相手にそれは伝わっていなかったようだ。
『邪魔してもうたかな?』
 そこに立っていたのは、誰かと同じように赤いマントを靡かせ、頭に小さな王冠を
乗せた“猫”だった。しかも二足歩行の。少女の知る限り、猫という動物は四足歩行の
はずだ。いやそれ以前に、猫は人語をしゃべらない。それにこの妙なしゃべり方は
一体なんだ?
 そんなことを考えてしまい、少女は思わずその“猫”見つめた。視覚から得た
その姿と、少女が知識として持っていたデータに合致するものが見つかった。
(ケット・シー)
 だが、あくまでもデータだ。そのもの自体と接触するのは今回が初めてだった。
観察するように、それをじっと見つめる。動作を見ていても敏捷性や機動性に長けて
いるとも思えないし、攻撃力や防御力があるようにも見えない。貧弱というよりは
非効率的だというのが、ケット・シーに対する第一印象だった。
『や~、そんなん見つめられたら照れてまうわ』
 そう言って、ケット・シーは首を傾げ、しっぽを大きく振って微笑んだ。
(!)
 しかしその姿を見ていると妙な、とても妙な感じがする。―これは、どういうこと
だろう? 不可解、奇妙、怪訝、不審―少女の中で、まるでデータベース化された
ように並ぶ感情の中から検索を試みた。しかし合致するデータが見つからない。

271:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(4)
06/03/08 02:12:50 IYLX3iAY0
 こうして少女がケット・シーを食い入るように見つめていると、今度は頭上から
声がした。
「作業の片手間で結構ですので、少しお尋ねしてもよろしいですか?」
「構いません」
 この男は知っている。リーブ=トゥエスティ。元神羅カンパニー都市部門統括に
して、現在はWRO<世界再生機構>の局長たる人物。そして……。
(ケット・シーの操縦者)
 つまり彼女にとって「ケット・シー」は単なるロボットだった。もちろん、その認識が
外れているわけではない。しかしこの妙な感覚は何だろう?
 迷走を続ける少女の思考をよそに、リーブは話を始めていた。
「これから行われる作戦会議の際、ケット・シーの見た内容もこちらから併せて
転送したいのですが、可能でしょうか?」
「…………」
 予想外の質問に、少女は男を無言で見上げた。何を言っているんですかこの人は? 
と、彼女の目が言っている。
「私、なにか妙なことを言ってますか?」
 すると声に出していないはずなのに、男は少女の問いに適切な返答を寄越してきた。
そのことに僅かばかり驚きもしたが、気にせず話を進めた。
「ネットワークを介さずとも、直接あなたの口から説明した方が早いのではないですか?」
「そうですね……ですが、私の口では説明できない部分があります。それを、
データとして転送して頂きたいのです」
「それは?」
「…………」

272:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(5)
06/03/08 02:18:38 IYLX3iAY0
 黙り込むリーブを、少女はじっと見つめていた。少し待ってみたが、今度は
返答がなかった。
『おっさん、口ベタやねん』
 かわりに答えたのは、足下にいたケット・シーだった。
 このふたり―1人と1匹?―を見ていると、とても効率が悪い。そう思って
少女は視線をそらす。
(なぜ、リーブ=トゥエスティは自らの口を動かして語らない?)
 そのことが少女には理解できなかった。だからかも知れない、珍しく苛立って
いるような気がした。
『けどな、わいの口からも説明でけへんねん。……あんな、シェルクはん』
「なんですか?」
 名前を呼ばれて少女が再びケット・シーに視線を戻す。

『想いを伝えられるのは、言葉だけやないねん……いんや、言葉じゃ伝わらん
モンもあるねんで?』

 ケット・シーはしっぽを振ることをやめ、じっとこちらを見つめていた。相変わらず
にこやかな笑みを貼り付けたままではいたけれど。
「それがたとえ、どんなに強い想いでも。……そして、どんなに辛い記憶でも」
 ケット・シーの言葉を引き継ぐように今度はリーブが語り出す。ひとつひとつの
言葉を噛みしめるように、ゆっくりと。

273:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(6)
06/03/08 02:30:59 IYLX3iAY0
「もともとケット・シーは遠隔操作のできる偵察用ロボットとして開発された技術を
搭載しています」
『せや、わいはオモチャやさかい』
 対照的にケット・シーはおどけた口調で相づちを打つ。
「ですが、ケット・シーにはふつうのロボットには搭載されていないものが積み
込んであります」
「それは?」
 彼らに誘導されている様な気はしたが、それでも少女は尋ねた。
「……“感情”です」
 リーブがそう言ったとき、初めてシェルクは彼と真正面から向き合った。思っていた
より、ずっと穏やかな表情をしていた事に気づく。
 シェルクは視線を足下におろすとケット・シーを見つめた。最初は人工知能の類だ
ろうかと考えた。少女の思考に重なるようにして、リーブの声は続く。
「ケット・シーに蓄えられたデータは私の記憶を介して蓄積されています。ですから
……ここにいる前のケット・シーのデータも、彼はちゃんと引き継いでいるんですよ」
『今でも占い、できるんやで~』
 ふたりの視線を受けて、ケット・シーが手をかざして自慢げに胸を張って見せる。
「しかし、ケット・シーを通して私が見たものを、私から他の方に伝えるには限界が
あります。それが言葉です」
 他者にものを伝達する手段であるはずの言葉が、それを阻害するというのはどう
いうことだろうか?
「言っていることの意味が、よく分かりませんが」
 突き放すようにして少女は問い返すと、再びディスプレイと向き合った。よく分からない
ことを、これ以上だらだらと聞かされたくなかったからだ。

274:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(7)
06/03/08 02:36:37 IYLX3iAY0
「……あなたも」
 背を向けた少女にリーブの姿は見えなかった。ただ、耳に届く声の反響で、
彼が後ろを向いたことは分かった。
 少女の座る後ろで、姉はカプセルの中に横たえられている。彼女がいつ
目覚めるのかは分からない。目覚める時が訪れるのかすら分からなかったが。
 姉は―シャルアは、それでもそこにいた。そして彼女をここへ運んだのは、
他ならぬこの男だった。
 アスールから逃げ延びた後、あの場所へ戻ったこの男は、シャルアを回収した。
閉ざされた扉の向こうで、どんな酷い姿をしていただろう? 考えたくもなかった。
自らの危険も顧みずに、しかも生死の定かでないものを回収してきたこの男の
行動が、シェルクには理解できなかった。
 理解できない行動をとった男の話など、いくら聞いても分かる訳がない。そう
思っていても、話は続く。
「あの場所で……見たことを説明はできるでしょう。しかし……」
 そっと、リーブはカプセルに手を伸ばす。両者を分かつ、今となっては決して
超えることのできない隔たりに触れながら、
「あそこで感じた想いを……どれだけ人に伝えられますか? どんな言葉を使って、
どう語れば、全てを伝えられますか?」
 絞り出すように、リーブは言葉を発した。

 ―「遅くなって、ごめんね。」

「残念ながら、私にはその方法が分からないのです」
 あのとき“見ている”事しかできなかった自分の感じたものは、伝えなくても良い
のだろうと。しかし、妹との再会をひたすら願っていた彼女の姿を、この目で見て
いたはずなのに、それを伝えることもできなかった。そして。

 ―「今でも、大好き……。」

 彼女を、失った。
 かけがえのない仲間を、目の前で。
----------

275:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/08 12:38:06 f+0f/bcuO
>>268
乙!深みがあってひきこまれた。
リーブ(ケットシー)がかなり良いっす。

276:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/08 15:28:14 3G4XtJEd0
>>268
乙です!
素敵なおじさまと、ひょうきんな猫の対比がいい!
シェルクとケットのコンビ(?)も好きだ。
この二人(?)でのWROの任務遂行…とか見たいな。

あげておきますね。

277:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/09 11:15:19 0FJU8+6h0
>268-274
乙!いい話だー。

278:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/10 01:59:52 T033R2EMO
保守

279:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/10 03:17:30 kMDft2p90
職人さん達本当乙です。
>>268-274
リーブいいよリーブw
シャルアとシェルクの姉妹愛にはDCでもグッときたので
こうしてまた補完できて嬉しいです。

280:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/11 00:35:50 cWC5zdF40


281:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/11 19:50:21 0FxBONTo0
hosyu

282:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/12 13:19:20 HvrcBREkO
ほーしゅー

283:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/13 08:38:09 /bkvjqbg0
保守します

284:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/13 19:20:13 nBFjiuvU0
hosyu

285:ミッドガル空戦【1】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/14 01:39:11 GR9+wlEZ0
どんどん出力が落ちて来るのが舵を通して伝わって来る。
様子を見に行くと言っていたシェルクも戻って来ない。

(こりゃあ…やべぇな)

「おい!」
シドはレーダー要員を呼ぶ。
「なんでしょう、艦長!」
きちんと敬礼する彼の肩をシドはぽん!と叩く。
「ちぃーっとな、様子見てくるからよ。これ、持っててくれ。」
「そ…そんな…自分はまだ見習い…」
いい終わらない内に、レーダー要員の手を取って、舵を掴ませる。
「とにかく落ちない様に、真っすぐ飛ばしておけよ。」
そう言い残すが早いか、どたどたとブリッヂを出て行ってしまった。




286:ミッドガル空戦【2】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/14 01:40:21 GR9+wlEZ0
動力室に向かう途中、艦橋にいるはずのシドを見て、
クルー達が驚いて振り返り、声を掛ける。
皆、出力の低下や被弾で大わらわなのだ。
そこに艦長がやって来たものだから、みな不安をぶつけてくる。
シドはそれを笑い飛ばし、励ましながら動力室に向かう。

中に飛び込むと、炎が上がっており、ひどい煙だ。
シドは口元を押さえ、煙の中に目を凝らす。
「おい!シェルク!」
咳き込みながら見つけたのは、床に転がるケット・シーだけだった。
「おい!ケット!」
抱き上げたそれはぐにゃりとして、反応がない。
(人形に戻ってる…)
シドはケット・シーを抱えたまま、外に飛び出した。
ケット・シーにダメージがある時、リーブは無事だったろうか?
「リーブ!」
リーブの待機しているキャビンに飛び込むと、
そこにはぐったりと椅子にもたれかかっているリーブがいた。

287:ミッドガル空戦 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/14 01:48:46 GR9+wlEZ0
>>285
ごめんなさい、前説を入れ忘れましたort

※DCの第8章『ミッドガル総攻撃』の辺りです。
ネタバレを含みますので、未プレイの方はご注意願います。

また投稿ミス…艦長に怒鳴られて逝って来ます…

>268-274 の影響か、ステキなおじさまと、
やかましいおじさんを書きたくなりまた。
続きは週末になりますが、またお付き合いよろしくお願い致します。ノシ

288:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/14 03:29:39 Q9rYk3d90
>>285-286
作戦会議の時の様子も、シドとリーブは対照的ですよね。
彼らが地上へ脱出する様子が見られるのでしょうか?
わくわくしながら続きお待ちしてます。

289:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(8)
06/03/14 04:11:36 Q9rYk3d90
>>268-274より
----------

 リーブが言葉を止めると、室内には静寂が広がった。周囲を埋め尽くす機械達も、
まるで息を止めてしまったかのように沈黙する。
 この静寂の中で、シェルクの脳裏では先ほど刻み込まれたばかりの記憶が再生
されていた。
 自分たちの意志に反して閉ざされようとする扉の隙間から、限られた時間の中で
シャルアは自分の気持ちを、思いを、妹に伝えようとした。彼女はその場に立ちつくす
シェルクの腕を強く引くと、何のためらいもなく閉じかけた扉に自らの左腕を挟み込んで
退路を確保し、妹を出口へと導きながらこう叫んだのだった。

 ―「私たちは、これから10年を取り戻すんだ」

 腕をつかまれさらに強く引っ張られた。痛みに思わず見上げれば、シャルアの真剣な
まなざしがあった。ぼんやりと、姉の力はこれほど強かったのかとシェルクは思った。
 そのときの感覚が、まだ残っているような気がする。まるで今でも、腕を引かれている
ような―
 錯覚。
「……!?」
 脳裏によみがえったビジョンを打ち消すように、シェルクは目を見開いた。瞼を閉じれば
また同じ闇の中に記憶が再生されるのではないか? 不安になって、瞬きすらためらった。
そんな自分を否定するように、あるいは隠すように言葉を発した。
「自分の感じた感情を全て伝えることなど、不可能でしょう。たとえ血を分けた家族だろうと、
同じものを見た人間だろうと。その精神構造や思考過程には個人差がありますから……
それに」
 キーボードをたたきながら、少女は淡々と答えた。もともと起伏のない話し方しかできないが、
今は違う。とても不愉快だった。

290:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(9)
06/03/14 04:18:22 Q9rYk3d90
「感情を伝えるという行為に、一体どんな意味があるのです? 情報として事実を
共有することの重要性は分かりますが、一個人の主観でしかない感情を共有する
ことがそれほど重要とは考えられません」
 正直、自分の口からこんなに言葉が出てくるとは彼女自身思っていなかった。
話すことに気を取られ、キー入力する手を止めそうになる。
 恐怖と苦痛に満ちた日常、しかしこの10年間で腹が立った事など一度もない。
たとえ腹を立てたところで力でねじ伏せられた。絶対的な命令と、服従。それが
少女にとっての日常だった。
 地底世界から解放されたとはいえ、少女には今さら腹を立てる理由はないはず
だった。
 けれど、とにかく腹立たしいのだ。あの日―WROの本部で相対した、あの時から。
 シャルア=ルーイもヴィンセント=ヴァレンタインもそうしたように、けれどこの男だけは、
敵であると認識し、さらに武器を向けられながらも最後までシェルクに銃口を向けよう
とはしなかった。
 それでいて……。
(……干……渉? ……違う。"彼女"のデータでもない……)
 少女自身ですら把握しきれないこの感情は、一体なんだろうか? 自身の内で
わき始めた思考と感情の奔流を鎮めようと、キーボードに置いた指に意識を集中
する。しようとした。
「重要性に対する答えであるとすれば……動機、でしょうかね」
 しかしそれを阻んだのは男の声だった。
「人間はコンピュータと違いプログラムを打ち込めば素直に動くと言うわけでは
ありません。コンピュータにも動力が必要なように、人間が動くためにも理由が
必要です。大きな動きをしようとすれば、それに見合うだけの大きな動機が必要に
なります。まして、自分の生命を危険にさらそうとする状況なら尚のこと」

291:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(10)
06/03/14 04:23:52 Q9rYk3d90
 それを担うにはお金や名誉ではとても足りない。しかし“大切な誰かのため”
というそれだけで、彼らが動く理由には充分なのだ。

 ―大切じゃないものなんか、ない。

 そういって剣を振るった男がいる。彼もまた、かけがえのない仲間のひとりだ。
ちょうど1年ほど前、この飛空艇から見ていた戦いの光景が重なる。
 リーブは「当時も今も、この船に乗り込んだ人たちの多くは、皆お人好しなのだ」
と付け加える。その言葉を聞いて、そういえば先程ここへ来た男も同じようなことを
言っていたなと少女は思い出す。
「……もっとも、私にそれを教えてくれたのは、他でもない彼らなんですけれどね」
 それこそ口では伝えづらいのだと苦笑したリーブの後を引き継いだのは、やはり
絶妙なタイミングでもたらされる足下からの声だった。
『せやから、わいらの出番なんやて』
「!」
 その声に再び視線を足下へ戻すと、ケット・シーが手を掲げている。
『わいが見たことを、直接みんなに見せてやりたいんや! したら納得してくれる。
確かに感じ方は違うかもしれへんけど、み~んな、この船に乗ってるんやで?』
 懸命にしゃべり続けるケット・シーを見ていると、少女の指は止まった。その姿を
見ていると、腹立たしさはどこかへ消えてしまう気がした。
 自分自身でも抑えることに必死だった内の奔流を、ケット・シーは意図もたやすく
鎮めることができた。そう考えると少し悔しいような気もするが、今は考えないことにした。
「……分かりました。できる限りのことはやってみます。ですが、どこまで実現できるかは
保証できません。それでも、よろしいですね?」
 後ろを振り返ることはしなかった。振り返ればまた、不愉快な腹立たしさが戻ってくる
ような気がしたからだ。
「構いません。ありがとうございます」
 それでは後ほど。と短く告げて、リーブは部屋を出て行った。

292:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(11)
06/03/14 04:27:27 Q9rYk3d90
 残された少女は再びディスプレイに向かうと作業を再開した。思わぬ追加注文に
対応するべく、再びせわしなく指を動かしながら、それでも考えた。
 自身の中にあるこの不快感の正体は一体なんだろう? と。

                    ***

 断片化された彼女の記憶、想い。喜びや悲しみ、痛み、感情……。
 それらの補完と復元が少女の内で何度も繰り返されている。知るはずのない事実、
持つはずのない記憶。そんなものまで抱え込んでしまった。
 けれど、それとは別の何かが確かに存在する。先程の男―リーブ=トゥエスティ
が言っていた言葉が引っかかる。
 ……動機。
 すなわち理由だ。彼の言っていることは間違ってはいない。理由がなければ行動と
いう結果は存在しない。そうだ、間違いではない。
 間違ってはいないはずなのに、分からない。
『ほな、行きますわ』
 その声に意識が現実へと戻って来る。頭部を装置ですっぽり覆われたケット・シーが
手を振っていた。その姿に、SNDを促すようにとシェルクはうなずく。どこまで投影が
実現できるかは、賭でしかなかった。

293:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ(12)
06/03/14 04:36:32 Q9rYk3d90


 すると、音が聞こえてきた。
 ビジョンはなく、闇の中にはただ音だけが聞こえる。
 人、それもたくさんの声。不鮮明ではあったが、それは確かに人の声だった。
 捕らわれ、連行された人々は、檻もろとも魔晄炉の深層部へと放り込まれる。
 暗闇に閉じこめられた苦しみ、突然連れ去られて理不尽な苦痛を与えられる
事への怒りや、恐怖。死に瀕した人々の悲鳴は、生への執着。
 ……闇の中に流れる声と、それを見た彼の記憶が投影される。

『な、なんちゅーことを!?』

 見ていることしかできない彼の―叫び。
 その声を残して、回線は切断された。
 彼はここで事切れたのだ。

 その声を聞いて、少女は思う。
 断片化されたデータの中には、少なからず自分の記憶や感情も混じっているのだ
と言うことを。
 まぶたを閉じて見ることすらしなかった、だから叫ぶこともできない。
 叫ぶことも泣くことも忘れてしまっている自分は今も、闇の中にいるのだと
……ようやく気づいた。

                            鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅣ<終>
----------
・敵側から味方に加わる/インスパイアとSND
 ……FF7のケット・シー(リーブ)とDCFF7のシェルクって立場や心境が似てる気がします。
・7章作戦会議でケット・シーがSNDする意味はこういう事だったんじゃないか?
・ここでのリーブは単なる説教おじさんw
・上手く書けませんでしたが、きっとシェルクはケット・シーに萌えていたんだよ。>7章SND

色々すみません。お読み下さった皆様ありがとうございます。

294:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/14 19:05:58 skSIU4ie0
>293
GJ!

295:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/15 08:44:56 WfAxso010
>>285>>289乙です!

296:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/15 14:58:28 u/Y//O2l0
あげときますね。

297:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/15 19:53:57 XsX1CGqj0
>289-293
(・∀・)イイ!!GJです!

298:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 01:34:28 eI3dkq020
FF12いよいよ発売ですかね?
作品投下とスレ落ち回避の保守

299:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 08:37:41 fAJTn6Mk0
保全

300:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 12:31:24 NB5hjEe70
保守

301:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 15:09:08 NgVpYGwg0
保守

302:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 18:05:50 WmaNWmdL0
保守

303:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 20:15:13 bMMNTuRa0
保守

304:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 23:02:13 5qEsDWkxO
さらに保守

305:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/16 23:56:03 ruTbWxAd0
保守

306:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 03:53:22 SpXOU87kO
保守

307:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 08:30:03 51VRXC5k0


308:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 08:42:21 5k+407Xg0
保守

309:The Kids Aren't Alright 1/4
06/03/17 11:22:44 r7K9eQEr0
保守ついでに故ダインスレの作品改訂版

「よぉダイン、エレノア!見舞いにきたぜ!」
筋肉質な腕に瑞々しい果物の乗った籠を抱えた男、バレットが病室に入る。
「おいおい……もう少し静かにドア開けろって、娘が起きちまう」
「おお、すまねぇな」
「バレット、いつもありがとうね」
「良いってことよ」
「そういえば、ミーナは?」
「ああ、ちょっと急な仕事が入っちまって、来れなくなっちまった」
「そっか……残念ね、ダイン」
「ん、何がだよ?」
バレットが不思議そうに尋ねると、エレノアは俺と目を合わせクスクスと笑い出した。
「おいおい何だよ、気になるじゃねぇか!」
「いや、てっきり手でも繋いで入ってくるんじゃねぇかと思ってさ」
「幸せそうな新婚さんの、微笑ましい姿を見たかったな~、って」
「な!……う、うるせぇよ!」
「ハハ、照れんなって」
バレットは真っ赤な顔でひとつ咳払いをして、エレノアのベッドの横の、小さなベッドを覗きこむ。
「可愛らしい子だな……名前、決まったのか?」
「ええ……マリンっていうの」
「マリン、か……良い名前じゃねぇか」
「ダインが、昨日の晩までずーーっと悩んで考えてた名前よ」
「ガハハ、お前らしいな!」
「うるせぇよ、お前だってずーーっと悩むに決まってらぁ!」
「ぬ……言い返せねぇじゃねぇか」
ダインが大声で笑うと、マリンが起きて泣き出した。
「ああ!もう、ダイン!何やってるのよ!」

陽だまりの様な日々だった。エレノアが、バレットが、ミーナが、マリンが居て。
こんな毎日が、ずっと続いて欲しいと願ってた。心の底から、そう願っていた。

310:The Kids Aren't Alright 2/4
06/03/17 11:43:02 r7K9eQEr0
「……胸糞悪い夢だな、畜生」
うな垂れるような暑さの中で、ダインは目を覚ます。
首を鳴らし、不自由な片足を引き摺りコンテナから外に出る。
途端に、サルの様なモンスター……バンディットが、彼に襲いかかる。
ダインは左腕の銃で、それをいとも容易く撃ち落とす。
バンディットは悲鳴と嗚咽を上げ、地面に伏している。
ダインはそれを撃つ。悲鳴が止んでも撃つ。それが、ピクリとも動かなくても撃つ。撃ち続ける。
カシュッ カシュッ
弾が切れ、ダインが興味を無くすまで撃たれたそれは、もはや原型も留めてなかった。
「壊れてしまえ……こんな世界も、何もかも」
虚無な狂気が、晴れすぎた空に一筋の線を引いた。

「……ダイン。……お前なのか?」
バレットは、闇雲に銃を撃ち放つ男に声を掛ける。
「懐かしい声だな……忘れようにも忘れられない声だ……」
間違いなく、それはダインだった。あちこち傷だらけになり、目は死んだ魚の様ではあったが。
「いつか会えると信じていた……。オレと同じ手術を受け、何処かで生きていると……」
バレットは、半ば泣きそうになりながら歩み寄る。その足元を、銃弾が掠めていった。
「俺はな、壊してしまいたいんだよ。この街の人間を、この街のすべてを、この世界のすべてを!」
「マリンは……マリンは生きている。ミッドガルにいるんだ。一緒に会いに行こう、な?」
ダインは幾分驚いた顔をした。少しの沈黙の後、口を開いた。
「そうか……生きているのか……わかったよ、バレット」
バレットは、安堵した。ようやく、俺達は元に戻れる
「やはりお前とは戦わなくてはならないな。」
安堵は、一瞬で砕け散った。
「エレノアがひとりで寂しがっている。マリンも連れていってやらないとな」
そして、陽の傾きかけたコレルに2つの銃声が響き渡った。

311:The Kids Aren't Alright 3/4
06/03/17 11:59:26 r7K9eQEr0
勝負が決まったのは、一瞬だった。
たった一発だけ放ったバレットの弾丸が、ダインの左肩を撃ち抜いた。
「ダイン!!」
「来るな!」
バレットはダインに駆け寄る。しかし、ダインの一喝がそれを止めた。
「……俺はあの時片腕と……一緒に、かけがえのない物を失った……。
 何処で……食い違っちまったのかな……」
「……わからねえよ。オレ達……こういうやり方でしか決着をつけられなかったのか?」
「言った筈だ…… 俺は……壊してしまいたかったんだよ……何もかも。
 この狂った世界も……俺自身も……」
「マリンは! マリンはどうなるんだ!」
「……考えてみろ……バレット……あの時マリンは幾つだった……?
今更俺が出ていったところであの子には……わかる筈もない……」
「けど……けどよぉ!!」
「それにな、バレット……。マリンを抱いてやるには俺の手は……少々汚れ過ぎちまったのさ……」
絶句し立ち尽くすバレットに、ダインはペンダントを投げ渡す。それは、見覚えのあるペンダントだった。
「そのペンダントをマリンに……エレノアの……形見……」
「わかった……」
「バレット……マリンを…………泣かせる……な……よ……」
ダインは崖の方へと歩み寄った。
「ダイン……やめろ!死ぬな、ダイン!!」
バレットは傷だらけの足でダインの元へと駆け寄る。しかし、ダインは一瞬だけ、笑顔を見せて
……そして、崖の底へと落ちていった。
「ダイーーーーーン!!」
バレットは絶叫し、その場に跪き、嗚咽を上げる。
「……ダイン。お前と同じなんだ……オレだって……オレの手だって……汚れちまってる……」
バレットは右腕の銃を見つめる。何人もの命を奪った、血まみれの右腕だ。
「うぉおおおおおおおおおーーーーーーー!!」
バレットの叫び声だけが、燃える様な赤に染まったコレルの空に響き渡った。

312:The Kids Aren't Alright 4/4
06/03/17 12:11:50 r7K9eQEr0
身体は、重力のままにひたすらに落ちていく。
もうじき俺の身体は砕けたハンバーグになってしまい、コレルの土に返るだろう。
俺のこころは、星へと還れるかな?

エレノア。どうかお前だけは、俺の事、温かく出迎えてくれよ。
ミーナ。お前の愛した男は、今も生きている。どうか、護ってやってくれ。
マリン。強く生きろよ、それと、悪い男にだまされるなよ。……優しい娘に、育ってくれよ。

遠い崖の上から、バレットの叫び声が聞こえた気がする。

思えば、本当にこいつとは喧嘩ばかりしていたな。ガキの頃から、今の今まで。
けれど、その後はまた、笑い合えていた。……今回ばかりは、無しだけどな。
そういえば、エレノアとの結婚を後押ししてくれたのも、お前だったよな。
お前には、世話になりっぱなしだったよな、バレット……。
けど、もう少しだけ世話になるぜ。マリンが大人になって、ひとりで生きて行けるまで
絶対死ぬな。そして、あのペンダントを渡してやってくれ。あと、あんまり心配かけさすな。
それと……最後にこれだけ言わせてくれよ。

…………ありがとう。お前は俺の、一番誇れる親友だったぜ。

313:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 12:29:43 D6iAyYur0
ダインキタ━━━(゜∀゜)━━━ !!!!!テラセツナス。
幸せな前半と切ない独白のコントラストがGJ!

314:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 16:34:32 N7DDJ4190
>>309-312
ダイン! とにかくGJだ、GJを贈らせてほしい!!
ダインが何よりも壊したかったのは、自分自身なのかな。プレイ当時はそんなこと
思いませんでしたが、これ読んでいたらそう思った。バレットの前で自決したのも
そういう意図が? と。

そして保守。

315:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/17 21:02:18 9Is6GtwNO
>>309
乙です!


316:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 01:22:09 BTfnD1Fo0
>>313-315
ありがとうございます(つд`)続編も投下させていただきます。

ジェノバ戦役から10年、かつてコレルプリズンと呼ばれた荒野に1組の父娘が訪れていた。
そこには、風化してしまったような2本の十字架と、それよりは新しい十字架が1本立っていた。
「これが、母さんと、父さんの奥さんと……」
マリンが言葉を選べずに視線を彷徨わせていると、バレットはその大きな掌をマリンの頭に乗せた。
「お前の、本当の父ちゃんの墓だ」

ダインとの約束を果たすのは、随分遅くなってしまった。幼い頃のマリンには厳しい話であったが
それでも、少し先延ばしにし過ぎてしまったのかもしれない。
しかし、マリンは事実をしっかりと受け止めてくれた。そして、バレットにこう言ったのだ。
「母さんと、父さんに会いに行きたい」

「ねえ父さん……私の母さんって、どんな人だった?」
バレットが朽ちてしまった十字架を、ちゃんとした物と取り替える作業をしているとマリンが尋ねた。
「そうだな……エレノアは、本ッ当に綺麗な人だった。もちろん、見た目だけじゃねぇぞ。
 気立ても良くて、明るくって……本当はな、父ちゃんの初恋の相手だったんだぞ」
「そうなんだ……。じゃあ、父さんの奥さんは?」
「ミーナは、とにっかく気の強い女だったな。結婚してからも、よく怒られたよ。
 けど、笑顔がすごく可愛かった。その笑顔に、やられちまったのさ」
「じゃあ……ダイン……さんは?」
「ダインは……村一番の悪ガキだったな。けど、誰よりも人を思いやれるヤツだった。
 俺とは、赤ん坊の頃からの仲だったけどよ……毎日毎日、馬鹿ばっかやってたなぁ」
バレットは、14年前に造られたワインのコルクを抜き、十字架に注いだ。
最後に3つの墓それぞれに花束を添えると、2人は目を瞑り手を合わせた。

― ダイン、随分時間がかかっちまったが、これで約束は果たしたぜ。
   エレノア、お前の自慢の娘は、こんなに綺麗な子になったんだ。お前そっくりさ。
   ミーナ、今はまだ無理だけどよ、いつか俺が星に還ったら、また手を繋いで歩こうぜ。
   ……俺は、お前等と会えて本当に良かった― 

317:題 :いつかの空の下2/2
06/03/18 01:43:45 BTfnD1Fo0
sage忘れスマソ_| ̄|○ >>316の続きです。

2人はゴールドソーサーのホテルに戻り、夕食を取ることにした。
「ねぇ、父さん」
「ん?」
「母さんも、父さんも、ミーナさんも、きっと幸せだったと思うよ。
 何でかはわかんないけど……父さんの嬉しそうな顔見てると、そう思った」
「……そうか」
バレットは涙が溢れそうになるのを、ウイスキーを一気に飲み干す事で無理矢理抑えた。
「私も、父さん達みたいになりたいな。大切な友達がいて、大切な人がいて……」
「お前にも大切な友達がいるだろう?デンゼルに、シェルクに……。ああ、でもあれだぞ。
 付き合うなら、ちゃーんとした男と付き合うんだぞ?悪いヤツに騙されるなよ」
「もう、子ども扱いしないでくださーい!」
「お前は、まだまだ子どもだっての!」
「……ねぇ父ちゃん。私も、お酒飲んでいい?」
「だーかーら、お前は子どもなんだから、ダメだ!」
「父ちゃんは、子どもの頃から飲んでたんでしょ?」
「う……そりゃあまあ、そうだけどよ……」
「なら、いいでしょ」
マリンはバレットのグラスを掠め取り、一気に煽った。
「あ、コラ馬鹿!」
「うぅ……美味しくなぁい……」
バレットは、日に日にミーナにもエレノアにも似ていく娘に、ため息をついた。

「結局、酔い潰れちまって……」
マリンを背負い、客室へと戻る。思えば、こうしておんぶするのは随分と久しぶりだ。
「……父ちゃん、何があっても、私の父ちゃんは、父ちゃんだけだよ……」
背中のマリンがそう呟くと、バレットはもう涙を止めることが出来なかった。

318:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 02:34:57 1H6BepRU0
>>316-317
DCFF7-2があったら、その中で描かれるダインの墓参りイベントってこんな感じで
ありそうだな、と(ふくらむ妄想)。
人が死んで肉体は滅んでも、ライフストリームに還るっていうFF7の世界観の中で、
それでもバレットは「けど会える訳じゃない」って、ハイウィンドの中で言ってるぐらい
死に対して真摯に向き合ってる姿が、ここでも良く描かれてるなと思いました。
>>316の下4行)



とりあえずFF12関連の勢いが凄いので、分割投下を試みてみます。
圧縮の頻度はどのぐらいなんだろう…。

319:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(1)
06/03/18 02:47:09 1H6BepRU0
前話:>>289-293
舞台:DCFF7第9章@シエラ号艇内(回想はFF7/DCFF7第7章~8章)
備考:DCFF7本編で描かれるシーンが前提で進みます、未プレイの方すみません。
    シエラ号の構造に多少のねつ造があるのはご愛敬と言うことで。
----------




 ―「がんばって、ケット・シー」

 そう言って微笑んでくれた彼女の笑顔を、今でも鮮明に覚えている。
 彼女はスパイだった自分を信じてくれただけではなく、励まそうと微笑んでくれた。
(忘れへんで……絶対。忘れへん)
 だから今度は、わいが頑張らなアカン。先に壊れてしもた1号機のことも、わいの
事も。たまにでええ、思い出してくれたら嬉しい。
 ケット・シーは来た道を振り返り、閑散としたフロアに向けて勢いよく手を振った。
見ている者もなければ、振り返してくれる者もいない。少しだけ淋しくなって振っていた
手をゆっくりと下ろした。
 誰にも見送られることなく、ケット・シーはエンジンルームへと続く扉を静かに開けた。

                    ***


320:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(2)
06/03/18 02:51:06 1H6BepRU0
 それはつい数分前の出来事である。
『アカン! アカンで~。戻るんや、戻らんかい!! コラ、聞いとるんか!?
……も・ど・ら・ん・か・い!!』
 幅の狭い通路の先から、いまいち深刻さに欠ける叫び声が聞こえて来た。
巡回中だった隊員があわてて駆けつけてみれば。
「こらこら、離しなさい」
 WRO局長が、珍しく困った顔で後ろを振り返り、視線を足下へ向けている。
つられて隊員も視線を下げてみれば。
『アカン、行ったらアカンのや!』
 猫がいた。
「…………」
 小さな猫―型の人形? ぬいぐるみ? ロボット?―が、必死に裾に
しがみついて、リーブの歩行を阻害している。深刻さに欠けるどころか、滑稽。
いや、それはいっそ微笑ましい光景だった。
 WRO<世界再生機構>の人間であれば、その猫を知らない者はいないだろう。
ケット・シー―それはジェノバ戦役の英雄のひとり、正確に言えば分身だった。
 なぜこんな狭い通路で押し問答を繰り広げているのかと言えば、出力低下の
警報音を聞き駆けつけたリーブが、自分が操っているはずのケット・シーに進路を
阻まれ立ち往生していたのだ。考えてみれば奇妙な現象である。

321:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(3)
06/03/18 03:00:01 1H6BepRU0
『そこの兄ちゃん、ちょっと頼まれてくれへんか?』
 ケット・シーは裾を引っ張る手を離さずに振り返ると、この光景を呆然と見つめて
いる隊員に向けてこう言ったのだ。
『異常事態なんや。急いで助っ人……いや、シドはん呼んで来てくれへんか? 
……このまま、このおっさん行かせるわけにはイカンのや』
 地上部隊のクラウド達はもちろん、ユフィやヴィンセント、他の隊員達もミッドガルに
向けて降下している。先の本部戦で受けた被害もあり、今この飛空艇には最低限
必要な人数しか残っていない。ケット・シーが言わんとしている事の重大さは、彼にも
分かっている。
「はっ!」
 律儀に敬礼する隊員に、ケット・シーは相変わらずおどけた口調で返した。
『……すんませんけど、頼んます』
 隊員は背を向け、来た道を全速力で駆け出していった。

                    ***

 ミッドガル総攻撃開始を目前に控えたシエラ号艇内は、各所で隊員がせわしなく
行き来し、来るべき出撃に備えてに活気づいていた。
 そんな飛空艇内で唯一、上層部の一番奥に設けられたメディカルルームだけは
その喧噪から隔絶されていた。少女はここへ戻ってくることをほんの少しだけ、ためらって
いた。しかしつい今し方、SNDを実装したばかりの専用端末はこの部屋にしかない。
だから戻って来ないわけには行かなかった。
 今やめる訳にはいかない。自分の身に託された"彼女"の思いを……願いを、知って
しまったから。
 それに。

 ―「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」

 そう言って目の前を去っていったリーブ=トゥエスティは、笑顔だった。シェルク自身が
動く理由はないはずなのに、彼の申し出を拒めなかった。まんまとあの男の言いなりに
なっている様で、そんな自分が腹立たしく思えた。

322:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(4)
06/03/18 03:13:27 1H6BepRU0
『シェルクはん』
 扉の前で名前を呼ばれた時、我に返った。通路脇に備え付けられた小型
ディスプレイに表示された数字は刻々と減少を続けている。ミッドガル総攻撃
開始までのカウントダウンは既に始まっていた。WROの侵攻部隊降下と
合わせて、シェルクもSNDで援護する手はずになっている。それは彼女自身の
提案により、急きょ決まったことだった。そのための最終調整をしていたはず
なのだが、どうやら別のところに気をとられていたようだ。気を取り直してパネルを
操作すると、室内へ通じる1つ目の扉を開いた。
 考えてみればケット・シーはリーブが操縦しているロボットのはずなのに、なぜか
これには腹立たしさを感じない。なぜだろう? 考えても答えは出て来そうにも
なかった。2つ目の扉の前で立ち止まったシェルクは、ちらりと視線だけを動かして
足元を見た。
「なにか?」
 ケット・シーはじっとこちらを見つめている。シェルクは視界の隅でその姿を確認
すると、視線を前方の扉へと戻した。
『さっきは……すんません』
 2つ目の扉はすでに自動で開いていたが中へは入らずに、シェルク横についた
小型ディスプレイを見つめていた。画面の中ではカウントダウンが続いている。一方で
耳ではケット・シーの話す言葉を正確にとらえていた。
 しかし唐突に謝られたのはいいが、何に対して謝られているのか心当たりがまるでない。
「なぜ謝るのですか?」
 画面に触れ、何度か表示を切り替えながら、シェルクは短く言葉を発した。別に見なくても
いいはずの飛行航路表示を呼び出して、すぐその画面を閉じる。
『……その。えらそうな事、言ってしもて』
「気にしていません」
 シェルクにしてみれば、ケット・シーに偉そうな事を言われた覚えがなかった。だから
そう返答したのだ。

323:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(5)
06/03/18 03:16:43 1H6BepRU0
 ここで会話が途切れた。画面上で確認できる情報には一通り目を通してしまった
シェルクは、仕方なしにメディカルルームへと足を踏み入れた。相変わらず整然と
並んだ機械類は、呼吸でもするように僅かなノイズ音を規則的に発していた。
 姉が横たえられているカプセルに視線を向けることはせずに、そのまま奥の席に
座ろうとしたシェルクは、いつもは自動で閉まるはずの扉が閉まらないのを不審に
思って振り返った。
 だが、異常は見られない。
 視線を下へ向けると、ケット・シーが入り口で立ったまま俯いている事にはじめて
気がついた。
「…………」
 落ち込んでいるような姿に、なんと声をかければ良いのかが分からずシェルクは
戸惑う。そのまま放っておけば良いような気はするのだが、そこにも妥当性を見い
だせずにまた戸惑った。とりあえず、ケット・シーの傍まで歩み寄る。
 しかし、けっきょく見下ろすだけで何もできなかった。
『3年前の、話なんやけど……』
 そんなシェルクに助け船でも出すように、ケット・シーがおずおずと顔を上げて
語り始める。

324:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(6)
06/03/18 03:23:34 1H6BepRU0
『わいな、最初はスパイやったんや。知っての通り神羅の人間やったから……。
せやけど、みんなと一緒におったら考え方、変わってしもたんや』
 最初は戸惑ったと言う。自分が派遣された本来の目的は監視、内偵、そして
ある物を神羅に渡す事だったから。しかし、それを決定的に覆したのが彼女の
言葉だった。
『……“がんばって”ってな……そう言って、わいの名前呼んでくれたんや。なんや、
アホくさい思うかもしれへんけど、ホンマに嬉しかったんや……』
 誰かに頼ってもらえること。
 誰かが必要としてくれること。
 それは、自分と同じボディの1号機の記憶だったけれど。
『せやから……“言葉で伝える”っちゅーことも大切なんやて……思うんや』
 照れたように頭に手をやって、いつものように戯けて見せようとした。けれど
上手くいかなかったのか、またすぐに俯いてしまう。
 一方それを聞いてシェルクは、出ないと思っていた答えの一部分が見えた様な
気がしたのだった。
 ―「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」
 なぜ、あの男の申し出を拒めなかったのか。その答えが。
「私も、同じ……ような気がします」
 そう言って、シェルクはひとつ息を吐き出した。「呆れました」とでも言いたげな
表情で。
「よく……分かりませんが、誰かに何かを依頼されるという行為には……慣れて
いません」
 シェルクはぎこちない動作で膝を少しだけ曲げると、前屈みになってケット・シーに
顔を近づけようとした。

325:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(7)
06/03/18 03:26:12 1H6BepRU0
 するとケット・シーは突然、シェルクの視線の高さまで高く飛び上がると、こう言い
放った。驚いたシェルクは呆然とその様子を眺めていた。
『よっしゃ! そんじゃもう一踏ん張りや! わいもサポートさせてもらいまっせ~。
一緒にがんばりましょ』
 ぴょんぴょんと、やけに嬉しそうに飛び上がるケット・シーを見ていると、シェルクは
これまでに見せたことのない表情を浮かべた。戸惑っているような困ったよな、そんな
小さな笑顔。

「……そうですね」

 そう言って、彼女は再び扉の横に設置された小型ディスプレイに視線を落とした。
画面端の表示は、残り3分を切っていた。
 シェルクはキーボードをたたいて画面を操作し、SNDの態勢へと移行する。

 かつての都ミッドガル―地上と空とを舞台にしたディープグラウンドとの激戦が幕を開ける前、
それはつかの間の平穏であった。



----------
分割もクソも行数規制で結局同じでした…orz

326:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 07:25:57 ZBtSm+5+0
hosyu

327:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 12:34:06 zUSs+YUHO
ほしゅ

328:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 18:24:44 zUSs+YUHO
保守

329:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 21:49:47 htKGFiBF0
>>316
>>319
乙です!
7って魅力的な人多いなーって読んでたら思いました。

みんな12プレイ中かな?

330:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/18 21:56:24 Uevt/GX60
>>319->>325
GJ!(n’∀’)η毎度毎度、楽しませてもらってます!
昨日に続き、もういっちょ妄想投下です。


331:Butterfly 1/2
06/03/18 22:29:49 Uevt/GX60
「お邪魔しま~す♪」
シャワーを浴び、ストレッチを済ませて眠りにつこうとしていたクラウドの部屋に
訪れたのは、顔を赤くし、酒の甘い匂いを漂わせたエアリスだった。
「……何のようだ」
「ねぇクラウド、一緒にお酒のも?」
「断る」
「え~、だって、まだ出発はしないんでしょ~?」
クラウド達は、ミッドガルを脱出して、東大陸を出るまでぶっ通しで旅をしていた。
メンバーの疲労も相当なものだったので、ここコスタ・デル・ソルでしばしの休息を
取る事にしていたのだ。みなそれぞれ、気ままに休暇を楽しんでいた。
しかし、クラウドは今ひとつ休めていなかったのだ。
今日の日中は、ずっと女性陣の買い物に付き合わされていたからだ。
何処にあれほどの体力が残っていたのか、不思議であった。
「……ティファやユフィと飲んだらどうだ?」
「ティファ、ジョニーさんの所に行ってるの。ユフィはもう寝ちゃったの。
 大体、ユフィ、未成年でしょ!」
「バレットは?」
「バーで飲んでたみたいで、もうイビキかいて寝ちゃってる」
「レッドは?」
「お酒飲めないの、知ってるでしょ!?ねぇクラウド、そんなにわたしと、お酒飲むの嫌?」
「そういう訳じゃないが、今日は疲れたんだ。早く寝たい」
「へぇ~、そうですか。クラウドは、女の子よりも疲れちゃって、お酒も飲めないんだ」
「……わかった。上がれよ」
「やった~!改めて、お邪魔しま~す!」
エアリスは、ここ数週間の旅の間でクラウドに関するひとつの法則を発見していた。
ちょっと喧嘩を売ると、必ず買ってしまうのだ。おかげで、バレットとの口喧嘩も絶えない。
まんまとエアリスの策略に嵌ってしまったクラウド。夜はまだ、これからだ。

332:Butterfly 2/3
06/03/18 23:01:19 Uevt/GX60
「へぇ~、ここがクラウドの部屋か~。もっと、散らかしてると思った」
「……悪かったな」
「も~、すぐ拗ねちゃ、ダメ!」
「拗ねてない。それより、勝手に人の部屋の冷蔵庫を開けるな」
「だって、お酒、ぬるくなっちゃうもの。……クラウド、ビールで良いよね?」
「ん、ああ」
「はい、かんぱ~い!」
エアリスは、クラウドの缶ビールに自分の缶カクテルを打ちつけた。
「さっきまで、一人で飲んでたのか?」
「ううん、ティファと一緒に、ジョニーさんの所で飲んでたの」
「ならそこで飲み続けていれば良かったじゃないか」
「うーん、わたし、ちょっとお邪魔だったみたいだったから」
クラウドには、ジョニーとティファの関係なんてわからない。親友なのかもしれないし
それ以上の関係だったのかもしれない。ティファは、子どもの頃から誰にでも好かれたから。
どちらにしても、何故かクラウドは、少しだけ寂しくなった。
(……馬鹿馬鹿しい)
「クラウド、どうしたの?」
「ん、なんでもない」
「へ~。ねぇ、クラウド。クラウドって子どもの頃どんな子だったの?」
「どんなって……別にいいだろ」
「気になる~!」
エアリスの質問攻めは延々と続いた。好きな食べ物は?好きな動物は?趣味とかあるの?
クラウドは濁らすこともままならず、答え続けた。その内、時計の針も2時を回った。


333:Butterfly 3/3
06/03/18 23:12:55 Uevt/GX60
「なぁエアリス。もう時間も時間だ。そろそろ部屋に戻らないか?」
「え~!もっと、クラウドと一緒にいたいな~」
クラウドはもう、ため息をつくしか無かった。ビールはもう、5本目に達していた。
ふと、エアリスがクラウドの隣に座り、上半身を預けてきた。
「おい、何してるんだ」
「クラウドって、好きな人とかいないの?」
一体この女は何を言っているのだろう。そう思った刹那、クラウドは彼女の異変に気付いた。
「……寝てる?」
質問するだけ質問して、エアリスは眠ってしまった。クラウドは何度目かわからないため息をつき
エアリスをベッドに運んでやった。クラウド自身も、そうとう酔ってしまっていた。
すっかりペースを崩されたクラウドは、ソファーに横たわり、眠りに落ちて行った。

翌朝は、やはり散々だった。2人揃って、二日酔いだ。
「う~……色々ごめんね、クラウド」
「別にかまわないさ」
「それじゃ、また、ね」
エアリスを見送ると、背後に気配を感じた。
「昨夜は随分とお楽しみのようでしたね」
思わず振り返ると、ニヤケっ面のユフィが立っていた。
「マテリア6個でどう?」
「おい、どういうことだ」
「あーあ、昨夜の事を赤裸々に話しちゃおうかな~」
やられた。ユフィは、クラウドの隣の部屋だったのだ。仮にもニンジャである彼女なら、隣室の会話くらい
筒抜けだ。更に都合が悪いことに、昨夜の記憶はいまいち曖昧だ。
もし何かの間違いがあったとしたら、それを話されるのはまずい。
「わかったよ……」
「イェ~イ!ティファには内緒にしておいてあげるね!」
二日酔いの頭を抑え、クラウドは部屋に戻り不貞寝を決め込む事にした。
ビーチで宝条と出会ったのは、その日の午後の事だった。

ひたすら振り回されるクラウドを書きたかっただけだった。今は反省しているor2

334:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 02:01:06 M9P+X8wh0


335:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 09:35:08 rBez1kqn0
保守

336:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 14:52:43 JQ80SPFu0


337:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/19 20:05:02 aOnhNo/L0


338:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 01:05:31 RpF7qpsX0


339:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 02:32:17 VtOLUHaK0
ぬぉ

340:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 08:28:39 c9Cwo/Ys0


341:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 11:01:06 P4efolaf0
保守

342:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/20 19:32:32 ODk6WueU0
保全

343:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 01:57:01 Ge9wXlkG0
>>331-333
> 「昨夜は随分とお楽しみのようでしたね」

宿屋の名言(@DQ)をさらっと言ってのけるユフィにワロタw

344:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 10:29:18 0JpfcKP30
ho

345:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 19:26:26 yUsJ6CZZO
保守

346:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/21 23:32:56 Mylcw6oq0
保守

347: ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:51:34 gK9d8eMC0
DC後、ヴィンセントが戻って来るまでの仲間達のお話です。

プレイされてない方はネタバレになるのでご注意願います。

カップリング要素はありませんがシェルクがオリジナルメンバーに
どういう風に受け入れられていったかという話なので、彼女が苦手だったり、
オリジナルメンバーと絡むのがお嫌いな方はご遠慮下さい。

348:DC後 【1】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:52:17 gK9d8eMC0
「さてと、奴を迎えに行くか。おい、リーブ!」
タバコの吸い殻を放り投げようとして、
慌ててポケットから携帯用の吸い殻を取り出したシドが言う。
「なんでしょう?」
「あの野郎は俺達で探す。お前は残りの後始末を頼まぁ。」
「分かりました。…と、シェルクさん。」
呆然と空を見上げ、どこか遠くで男達の話を
聞いていたシェルクは驚いてリーブを見上げる。
「あなたはしばらくはゆっくり休まれた方がいいかと思います。」
休むと言っても帰る場所のない自分にどうしろと言うのだろう。
それに、シド艦長はヴィンセントを探しに行くと言っていた。
出来ればそれに加わりたい。
「エッジにWROの宿舎があります。とりあえずそこに…」
「待って!」
「なんでしょう、ティファさん?」
「そんな味気のない所より、家に来ない?ヴィンセントが
お世話になったお礼がしたいわ。ね、クラウド、いいでしょう?」
「あぁ、大歓迎だ。」
「なるほど…それは名案ですね。」
「でしょ?」
そう言われても、初対面、しかも日常と隔絶された地下の住人だった自分に、
いきなり他人との共同生活が可能なのだろうか?

349:DC後 【2】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:52:53 gK9d8eMC0
「俺と、バレットとユフィは残ってヴィンセントを探す。先に戻っていてくれ。」
クラウドの言葉にティファは頷いて、優しくシェルクの肩に手を置く。
「え~!?アタシもぉ~?」
「探すのは得意だろ?」
不満の悲鳴を上げるユフィの頭に、シドの親父拳骨が落ちて来る。
「アタシだって女の子なのにぃ!差別!さべーつ!」
「ティファは子ども達が待ってんだよ。」
と、シドはにべもない。

シェルクは困惑を隠しきれない。
この中で自分の生い立ちを一番よく知るリーブを縋るように見上げる。
だが、リーブはにこにこと笑うだけだ。
「ご心配な気持ちは分かります。でも、あなたが滞在されるのに、
7th Heavenより最適な場所を思い付きませんよ。」

なんたろう、この人達は。

ヴィンセントが行方不明なのに心配する素振りも見せず、
かつての敵だった自分の心配ばかりしている。
「あなた方は彼の事が心配ではないのですか?」
不躾な質問にティファは小首を傾げてじっとシェルクを見つめる。
「あなた方はおかしいです。私のことよりも、彼の心配を…」
言いかけて、シェルクはハッと口を噤んだ。


350:DC後 【3】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:53:26 gK9d8eMC0
『なぜか私の周りには、理屈抜きで飛び出して、誰かを助けるお人好しばかりだ。』

彼の言葉を思い出し、目の前にいるこの連中こそがその“お人好し”なのだ。
困惑の次に湧いて来たのは好奇心だった。
一緒に行動していたら彼らの行動の根源にある物が見つかるだろうか?

考え込んでしまったシェルクをリーブは穏やかに見つめている。
この人は曲者だとシェルクは思う。
柔らかな物腰で、そのくせ嫌とは言わせないのだから。
「…分かりました。」
リーブは大きく頷き、バレットとシドも満足げだ。
「よろしくね、シェルク…私はティファ。
シドは…もう知っているのよね。こちらがクラウドとバレット。
みんな…仲間なの。ヴィンセントのね。」
クラウドは軽く頭を下げ、バレットはシェルクに握手を求める。
「バレットだ!ヴィンセントが世話になったみたいだな。」
大きな身体に大きな声だが、アスールの様に冷たい感じはしない。
シェルクがおずおずと手を出すと、バレットはその小さな手をそっと握る。
(暖かい…)
誰かの手を握るなんて久しぶりだった。
「ティファの所には俺の娘も居るんだ。
マリンっていってな。仲良くしてやってくれ。」
「男の子も居る。」
クラウドが短く言葉を挟む。
「デンゼルというんだ。」
子供の存在が再びシェルクを困惑させる。
「二人ともいい子よ。大丈夫。」
まるでシェルクの心配を察したかの様にティファの手が優しく肩を抱く

351:DC後 【4】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:55:19 gK9d8eMC0
「ところで、シェルクさん。」
「なんでしょう?」
「落ち着かれたら…WROに来ませんか?」
「え?」
「今回の戦いのせいもあるのですが…うちは慢性的に人手不足です。
あなたはネットワークのスペシャリストだ。是非、お手伝い願いたい。」
シェルクがどう返事しようか頭を巡らせていると、シドが割り込んで来た。
「待てよ!リーブ、何もこんな時に言わなくったっていいじゃねぇか。」
「それもそうですね、失礼しました、シェルクさん。」
リーブは大仰に両手を上げて、冗談めかして答える。
「大体シェルクはなぁ、俺んとこに来て、飛空艇団員になるんだよ。」
シドの言葉に一同が、そして誰よりもシェルクが目を丸くする。
「シ…シドぉ?」
呆れたユフィが肘で彼を突いても、シドは気にする風でもない。
「うっせぇな!俺だってちゃんと考えあってのことなんだよ!
あんたは大した力の持ち主だ。俺と一緒に飛空艇の謎を解き明かしてみねぇか?」
最後の言葉に、ちゃんと理由があったことに驚きつつも、
シェルクを除く一同はなんとなく納得した気分になる。
「物探しが得意ならなら油脈探しはどうだ?」
どういう対抗意識か、バレットまでそんな事を言い出す。
「バレット、彼女はネットワークのスペシャリストで、
ダウンジングが得意というわけではないのですよ。」
呆れたリーブが横やりを入れる。
「なんだ、その…ダウ…なんとかは?」
「ダウンジング…な。」
「クラウドぉ!てめぇはまた俺の間違いを小声で訂正したな。」
ティファがくすくす笑っているが、シェルクは笑うどころではない。
自分の行き先を巡って、親父三人が言い争うのを呆然と見ているだけだ。


352:DC後 【5】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:56:36 gK9d8eMC0
「だーっ!もぉ!親父ども、うるさあああい!」
ユフィが叫んで、親父三人が黙る。
「シェルクはね!アタシと一緒にウータイに行くの!
あそこならのんびり出来るし、最近温泉も湧いたの!
そこでゆっくり身体を癒すの。」
そして、シェルクの前に立つと、気まずそうに、
「あん時は…ひっぱたいたりして悪かったよ。」
シェルクの目が驚きで見開かれる。
別に気にしてません。そう言えばいいだけなのに、
胸の中にくすぐったい何かがわき上がって来て、言葉が出ないのだ。
「みんな…もういいでしょ?」
笑っていたティファが助け舟を出し、シド、バレット、リーブ、ユフィが黙る。
「私をシェルクは店で連絡を待っているわ。早くヴィンセントを見つけて来てね。」
「いけね!そうだった!」
「リーブ、お前が余計な事を言い出すからだぞ。」
「私のせいなんですか?」
親父連中がワイワイ言いながらそれぞれの持ち場に向う。
特に打ち合わせをする風でもないのがシェルクにはまた不思議だった。
「気を付けてね、クラウド。」
「あぁ。子ども達を頼む。」
クラウドは軽く手を振ると、バレットの後に続く。
「あ~あ、もう、ヴィンセントのヤツぅ~面倒かけるんだから…」
ブツブツ言いながら、更にユフィが従う。
「頼んだわよ、ユフィ!」
ティファの言葉に、ユフィは思い切り顔をしかめて見せたのだった。


353:DC後 【6】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:59:07 gK9d8eMC0
「ごめんなさい、びっくりしたでしょう?」
事実なので、素直にはい、と答える。
ティファとシェルクはエッジに怪我人を運ぶ車に便乗させてもらっている。
黙って座っているシェルクに、ティファも余計な事は言わない。
ただ、一言だけ、
「大丈夫。きっと彼は生きてるわ。彼が特別な身体だっていうことを別にしてもね。」
「どういう意味ですか?」
「ヴィンセントはね、私達には想像もつかない重荷を背負ってるけど、
そのことで弱音を吐いたり、愚痴を言ってるのをを聞いたことがないの。
そんな人があれくらいの事で死んでしまうわけないわ。」
分かったような、分からないような。
「彼のことも、私たちのことも、外の世界も、ゆっくり知っていけばいいわ。」
そう言って微笑むティファに、姉の顔が重なる。
「あなたは…リーブ・トゥエスティに何を聞いたのですか?」
「何をって…あなたのこと?」
「はい。」
ティファはシェルクをじっと見つめる。
さっき、“はい”と答えても、顔が動かなかった。
(普通、返事をすると自然に頷いたりするのに…)
まるで昔のクラウドのようだとティファは思う。
「あなたが閉ざされた世界の住人だったこと。
それと、ヴィンセントを助けてくれたこと。それだけよ。」

354:DC後 【7】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 01:59:40 gK9d8eMC0
「私が滞在するのに、あなたの所より最適な場所を
思い付かないと彼は言いました。その理由は?」
「ティファでいいのよ、シェルク…」
「答えて下さい。」
「あなたが”ティファ”って呼んでくれたらね。」
「問題をすり替えないで下さい。」
機械的な返事を返すシェルクが痛々しい。
急いではいけない…とティファは思い直し、
「そんなつもりはないわ。気に障ったらごめんなさい。
家が最適なのは、おいしくて栄養のある食事が摂れること。」
そんな理由で…と呆れるシェルクにティファは笑って答える。
「あら、大事なことよ。もう一つは…そうね、やっぱり
”ティファ”って呼んでくれるまでは秘密にしておくわ。」
これ以上の会話は無意味と判断し、シェルクは黙り込んだ。
ティファも何も言わない。
車の揺れに身を任せている内に頭がとろんとして来て、
いつの間にか眠ってしまった。

つづく。

355: ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/22 02:01:07 gK9d8eMC0
お久しぶりのエッジ前哨戦です。
書きかけの物(>>285>>286)を放り出して、こちらを始めてしまいました。
あちらも書きたいのですが、話は出来上がってるのものの
飛空艇内の資料がなくて、うまく話が進みません。
いいかげんな事をしてごめんなさいですが、
>>288さんをはじめ、皆様どうかお待ち下さい。
(誰も待ってないかもですがort)

遅レスですが、>>267さん。
投稿人同士のなれ合いになってしまうかと思って
お返事迷ってましたが、ドリルさん…ですよね?
>「帰ってくる場所が分からない」って方を強調した方が良かったかも知れない
のご指摘、仰る通りです。
クラウドもティファも、子供達がいるからこそ
“家”という場所に帰って来られるんですよね。
気付かず、書き損じてすごく悔しい…ort
いつも、的確な感想とアドバイスありがとございます。

お話も、推敲された丁寧な文章と深い洞察で
うっとりしながら読んでいます。新作お待ちしております。

356:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 06:55:13 DaIqr8Gh0
GJ!

357:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 12:46:25 9GBGR8Qf0
保守あげ。

358:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/22 18:55:00 2cPRCJs2O
>>355
GJ!読みやすかった。

359:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 03:12:01 pGpRCrJM0
>>348-354
呼び名についてはDC本編同様に、この先にあるイベントの伏線になってるのかな? とか。
最終的に私服で登場したシェルクとのいきさつが描かれると楽しそうだな、とか。
色々想像するとこの先の展開が楽しみです。
リーブとシェルクのやり取り(349-350)が個人的に萌えた。くせ者とか言いながら
不安からちょっと頼りにしちゃったりする辺り、戦闘に離れていても日常生活初心者
っていうか…反抗期?みたいでw

360:DC後 【8】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:47:16 QwiSbOEP0
>>348-354 の続きです。

「…ク…シェルク…」
何か、夢を見ていたような気がする。切ない夢だったと思う。
胸の辺りがざわざわと落ち着かない。
人間の感情を司るのは心臓ではなくて頭のはずなのに、
彼らと出会って以来、なんだか自分がおかしい。
「起こしちゃってごめんなさい。」
シェルクはぼんやりと間近にあるティファの顔をぼんやりと見つめる。
いつの間にかティファにもたれかかって眠ってしまっていたのだ。
状況に気付くと、シェルクは跳ね起きた。
「す…すみません…」
「疲れていたのね。」
ティファは先に立ってトレーラーから降りると、大きく伸びをした。
「いいお天気よ。」
振り返って、シェルクを手招く。
後に続いたシェルクも空を見上げる。
確かにいい天気だ。
(でも…なんだか落ちて来そう。)
吸い込まれそうな青空が、シェルクには不安だった。

361:DC後 【9】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:48:02 QwiSbOEP0
「ここから20分ほど歩くの。大丈夫?」
シェルクは空を見るのを止め、ティファを見て頷く。
「そう。じゃあこれを。」
ティファは毛布をシェルクを包み込む様にしてかける。
「寒くありません。」
「そうね…でも、家に着くまではこうしててね。」
「理由を説明して下さい。」
ティファは少し首を傾げ困った表情をする。
小首を傾げるのが彼女の癖らしい。
「…この街は、ディープグラウンド・ソルジャー達に襲われたの。」
それだけで十分だった。シェルクは目を伏せてしまう。
ティファは彼女がこれから向き合わなければいけない現実を思うと胸が痛んだ。
しかし、甘やかしても解決しない。答えは自分で見つけなければいけないのだ。
その一方で、彼女も被害者なのだ。
彼女だけでなく、長い間地下に閉じ込められていた人達が
この社会に戻る事が出来るのだろうか。それは途方もなく長い道のりだ

362:DC後 【10】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/03/23 10:48:32 QwiSbOEP0
「こっちよ。」
ティファは自分自身を奮い立たせるつもりで元気良く声を掛ける。
先に立って歩き出したティファの後に続く。
まだ煙が燻っていたり、あちこち壊れた家が目立つが、
金槌の音が響き、街は活気に溢れていて、
シェルクは物珍しげにその様子を眺めていた。
が、不意に泣き声がして、そちらに目をやる。
見ると、縦長の木の棺が家の中から出て来た所だった。
家を直していた人々が手を止め、帽子を取って黙礼して見送る。
棺に、小さな男の子が取りすがって泣いている。
「息子を庇って撃たれたらしい…」
「ちくしょう…ひでぇことしやがる。」
そんな会話が耳に入って来て、シェルクは途端に身体から血の気が一気に引くのを感じた。
身体が震えて、この陽気に毛布まで被っているのに寒くてたまらない。
黙礼していたティファはシェルクの様子に気付くと、
背中にそっと手を回し、その場を立ち去った

363:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/23 14:05:32 liSqfbcF0
保守

364:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 00:21:21 r98jSmFF0
hoshu

365:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 01:29:05 JD8UWBew0
>>360-362
毛布の件はしばらく考えないと回答が出てきませんでしたw
そうだ、そう言えばEDも最初はあのソルジャー衣装(?)の
ままでしたよね。細かいところまで行き届いてるなと。
続き期待sage

366:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(8)
06/03/24 01:37:25 JD8UWBew0
>>319-325より。
----------

                    ***

 言葉で……伝える。
 これは誰の“記憶”で、誰の“思い”……?

 身の内に渦巻く断片化されたデータ群。その中のどれが“彼女”のもので、どれが
自分の物か―シェルク自身にも分からなかった。
 自分の物だとはっきり分かるのは、地の底で暮らしていた10年間と、ほんの少し前の
記憶だけ。ケット・シーの言葉が脳裏によみがえる。

 ―『……言葉で伝えるっちゅーことも大切なんやて……思うんや』

 自分と、自分の中に埋め込まれた彼女の持つ記憶。
 どちらのものかも分からない思い。
 けれど確かに今、シェルクの中にそれはあった。
 だから……。

 ―だからお願い……私は……あなたに……
「……だからお願い……私は……あなたに……」

 ―生きて。

 最後の言葉が伝え終わらないうちに、回線は強制的に切断された。SNDから復帰した
シェルクを出迎えたのは、異常事態を知らせるアラートとやかましい警報音だった。
室内に並べられたディスプレイの全てに、警告画面が点滅していた。

367:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(9)
06/03/24 01:38:57 JD8UWBew0
 画面上に表示された情報から、おおまかな現状を把握する。飛空艇の、特に出力低下を
知らせるアラートが目に飛び込んできた。現在、航行維持に必要なシステム以外は強制的に
シャットダウンされていた。先程の回線切断もこのためだと知る。しかしメインエンジンに
被弾した様子はない。
「……!?」
 それから周囲を見回す。ケット・シーの姿はどこにもなかった。
 ―胸騒ぎがする。
 シェルク自身に“胸騒ぎ”というはっきりとした自覚はなかったが、何かに背中を押されたように
して部屋を飛び出しコントロールルームに向かった。しかしそこにも、ケット・シーの姿はなかった。
操縦者リーブ=トゥエスティの姿もない。操縦桿を握る男に向けて、シェルクは自ら進言する。
「……私が、様子を見てきます」
「悪ぃな、頼む!」
 シェルクは夢中だった。だからコントロールルームを出るとき、伝令を仰せつかったWRO隊員と
すれ違った事など気に留める余裕はなかった。


368:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(10)
06/03/24 01:45:15 JD8UWBew0

                    ***

 伝令から事のあらましを聞いたシドは、少しのあいだ無言で空を見上げていた。
それからおもむろに、操縦席から延びる階段のすぐ下に座っている一人のクルーを
呼んだ。
 舵を取る艦長自らが、目の前の操縦桿を手放すという事が一体なにを意味している
のか? 飛空艇乗りであれば誰もが知っている。シエラ号のコントロールルームにいる
彼ほどの人間であれば、尚のこと。
 彼は階段を上りきったところで、シドから無言で操縦桿を託された。いくら訓練を受けて
いても、驚きや戸惑いは隠せなかった。
「……艦長」
「ちぃと頼むぜ」
「しかし!」
「3年前のあの飛行に耐えたんだ、おめぇになら任せられる。頼んだぜ」
 シドに対して彼はそれ以上なにも言えなかった。
 3年前のあの日。飛空艇ハイウィンドで北の大空洞を発ってからミッドガル領空までの
飛行を経験したのは、シエラ号の中でもシドを含めて数人しかおらず、彼はそのうちの1人
だった。だからこそシドの言葉を誰よりも重く受け止めていたのだ。

369:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(11)
06/03/24 01:52:30 JD8UWBew0
 ―3年前。
 崩れ去る大空洞から辛くも飛び立った飛空艇ハイウィンド号は、天空より迫り来る
メテオと地上を覆うホーリーの狭間を縫って飛び続けた。日常で通用するはずの
物理法則など跡形もなく消し飛んでしまった世界、そんな中を飛行するのは無謀以外の
何物でもない。地上も、海も、空気さえも―この惑星上に存在するすべてが翻弄されて
いたのだ。
 そんな操縦もままならない状況でも、シドは操縦桿を離そうとはなかった。空から迫る
メテオの恐怖、墜落どころか空中分解してもおかしくはない危機的状況の中、それでも
ハイウィンドの航行を維持するために操縦桿を握り続けた。シドとはそう言う男なのだ。
 そんなシドが今、操縦桿を自分に託したのだ。そこまで自分が信頼されているというのは
純粋に嬉しかった。だが、シドが操縦桿を手放すというのは、それ以上の事態なのだ。
 当然、彼の頭によぎったのは最悪の事態である。
「エンジンルームの奴らからは未だに応答がない、……あの娘ひとりじゃ心許ないだろ?」
 万が一の時のためにと、操縦席の後ろにしまってあった槍を取り出す。しかしもし仮に
シエラ号艇内で戦闘が起きたとすれば、槍使いのシドには分が悪い。それでもシドは槍を
手にした。
 それから、まるで彼の内心を見透かしたかのように、シドは豪快な笑い声を上げる。
「安心しな。操縦桿を放り出すなんてマネはしねぇ。必ず戻ってくる。それまで……頼んだぜ」
 背中を強くたたかれて、息が詰まりそうになった。そんな彼をよそに、シドは階段など
使わずにそのまま操縦席から下へと飛び降りた。
「お気を付けて!」
 その声と、コントロールルームの扉が閉まる音がしたのはほぼ同時だった。
 それから彼は目の前の操縦桿を握ると、横にあるパネルも操作し始めた。3年前、
ハイウィンドに搭乗していた頃からの経験が、彼にその操作を促す。
 来るべき時に備えて。

----------
・「操縦士、シド=ハイウィンド」ってタイトルでも良かったかも知れません。
 今回はまだもう少し続きますです。。。

370:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/24 10:48:36 5SOLMzgj0
ついにシド、出撃!?
続き期待age

371:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 01:12:31 Im5IyfQz0
保守

372:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 11:14:17 PSGiJIUjO
保守に来ました

373:sage
06/03/25 12:54:58 5MxPQUfw0
>>366-369
続きが気になる!期待保守。

>>351
小声で訂正するクラウドワロタwww
プロローグにそんな場面があったな。


374:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/25 12:55:56 5MxPQUfw0
上げちまった、すまんort

375:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(12)
06/03/26 02:08:54 FoqZTKie0
>>366-369より。
----------

                    ***

 シエラ号内部の各エリアは、狭い通路で結ばれている。いくら全速力で走っても
進路をふさがれてしまえば、どうにもならなかった。
 上層部と下層部をつなぐ通路の真ん中で、シェルクは足を止めた。通行を妨害する
彼らの姿に、思わず呆れたような、一方では安堵したような声を零す。
「……なにをしているのですか?」
「!?」
『……あぁ、シェルクはん! 助かりますわ~』
 リーブとケット・シーは同時にシェルクに顔を向ける。会話の主導権を握ったのは、
未だにコートの裾を掴んだままの格好でいたケット・シーだった。
『エンジンルームからの応答があれへんから、わいが見に行こうと思とったんですわ』
「それで?」
 こんな場所で何をしているのかと尋ねた。
『おっさんには操縦室に向かって欲しいんですわ。通信設備が使えないんじゃ、わいの
能力つこた方が効率ええと思うんですわ』
「…………」
 確かにその通りだと頷いて、シェルクはリーブを見上げた。
「……先程シド=ハイウィンドも同じ話をしていました。現在、シエラ号の出力は正常時の
40%まで低下中、このため航行維持に必要な最低限のシステムしか稼働していない
状態です。詳しい原因は分かりませんが、出力低下の影響から通信設備が機能せず、
コントロールルームからはエンジンルームの状況が全く把握できていません」

376:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(13)
06/03/26 02:14:25 FoqZTKie0
 操縦席から離れられないシド=ハイウィンドに代わってここへ来たのだと、シェルクは
淡々と語った。その姿をじっと見つめていたリーブはシェルクに向き直ると、コートの
裾を掴んでいたケット・シーはその反動で床の上を転がった。
 リーブが何かを言う前に、シェルクが口を開く。
「これではSNDも使えません。ですからリーブ=トゥエスティ、あなたは今すぐコントロール
ルームへ向かって下さい」
「しかし“まったく応答が無い”のです、システムトラブルとは限らない……もしかすると……」
「もし万が一の場合でも問題ありません。……私の強さはあなたも見ていたはず。
そうでしたね」
 笑顔になることもなく、まっすぐに視線を向けられた。そんな少女の姿が、彼女と重なる。
こちらが中途半端な理論を展開すれば容赦なく封じてしまう、そんなところもそっくりだ。
そんなことを考えていたら、なぜだかシェルクを直視できなくて、リーブは思わず目をそらした。
(……姉妹、ですね)
『シェルクはんの勝ちやで』
 床を転がっていたケット・シーは身軽な動作で跳ね起きると、羽織っていたマントを整え
ながら言葉を発した。
 それでようやく諦めたのか、リーブはシェルクを改めて見た。そして観念したように告げた。
「分かりました」
 次にリーブは膝をついてケット・シーと向き合った。
(……それにしても何故……?)
 自分の感情を吹き込み、自身が操作しているはずのケット・シーがなぜ今回、操縦者の
意志を無視するような行動に出たのだろう? その原因を突き止めたいとも思ったのだが、
残念ながら今はそうするだけの時間がない。
「それでは、エンジンルームの様子を見てきてください」
 手短に用件だけを告げると、ケット・シーは頷いた。そうしてリーブの脇から顔をのぞかせ
ると。
『……シェルクはん、戻ったらSNDのお手伝い、させてもらいまっせ』
 そんな言葉を残して、エンジンルームへ向けて走り出したのである。扉をくぐり最後に
もう一度振り返ると、ふたりに向けて大きく手を振る。下層部へと続く扉が閉まるまで、
ケット・シーは手を振り続けた。

377:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(14)
06/03/26 02:19:11 FoqZTKie0

                    ***

 ケット・シーと別れたふたりは来た道を無言で戻った。やがてコントロールルームへ
続くドアが見えてきたところで、リーブの身に異変が起きた。
 一瞬、視界が大きくゆがんだ。何の前触れもなく襲った目眩にも似た症状をやり過ご
そうと、とっさに右手を壁につけバランスを崩しそうになる身体を支えた。同時にリーブの
脳裏に投影されたのは、ケット・シーを通して見えたエンジンルームの様子だった。
驚きのあまり思わず声をあげそうになるのを、すんでの所で堪える。
「……っ!?」
(―漆、黒の……闇。ネロ……!)
 零番魔晄炉で見た、あの男の影。それがシエラ号のエンジンルームにあった。
ケット・シーの前で駆けつけてきた隊員達が次々と闇の中に消えていった。生理的な
嫌悪感だけではないだろう、リーブはこみ上げてくる物を抑えようと左手で口元を覆い、
俯いた。
 しばらくすると後頭部に鈍い痛みが走り、もはや平衡感覚はほとんど失われ、支えなしに
姿勢を維持することが困難になっていた。
(……これは……)
 その様子に気づいて振り返ったシェルクの前で、リーブは右手だけでなく右半身を壁に
凭せかけてようやく姿勢を維持していた。
「!? ……」
 こういうときにどう行動すればいいのか、どんな言葉をかけてやればいいのか、とっさに
シェルクは分からなくなって助けを求めるように周囲を見回した。
 コントロールルームから飛び出してきたシドの姿が見えたのは、ちょうどその時だった。

378:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(15)
06/03/26 02:26:16 FoqZTKie0

                    ***

 シエラ号に降り立ったネロにとってケット・シーなど初めから視界には入っていな
かった。なぜなら彼が欲しているのは“生命”だからである。ケット・シーは感情を
吹き込まれているとは言え、人形あるいはロボット―つまり人工物である事に
変わりはなく、取り込んだところで生命エネルギーとしては何の足しにもならない
からだ。
 もっとも、ケット・シーを通して操縦者の生命を回収できるのならば話は違ってくる
のだろうが。残念ながらネロにはそこまでの知識もなければ、興味もなかった。
 しかし一方のケット・シーにとっては死活問題である。ネロの意図する、しないに
関わらず、ここで闇に取り込まれてしまえばそれで終わりだからだ。とはいえ目の
前で次々に消えていくWROの隊員達を放っておく訳にはいかない。
 武器を持たない彼にとって、戦える手段は皆無だった。

379:鼓吹士、リーブ=トゥエスティⅤ(16)
06/03/26 02:36:04 FoqZTKie0
『……すまんな、おっさん』
 呟いてから、ケット・シーはネロに向かった。武器になるのは―この作りモンの
体しかない。高く飛び上がり、両腕を力一杯振り回した。零番魔晄炉でDGソルジャーを
気絶させることはできたのだ.ダメージは与えられなくても、隙を作ることはできるかも
知れない。
 そんな僅かな可能性は、ネロが浮かべた薄ら笑いによってあっけなく否定された。
「先程から……目障りですね」
 手に持った拳銃を発射することなく、それをケット・シーめがけて振り下ろした。弾など
消費せずとも充分だ、と言うのがネロの判断であり、残念ながらそれは正しかった。まともに
抵抗することすらできず、ケット・シーの体はネロが振り上げた腕に捕捉された。
 死、あるいは壊れることへの恐怖はなかった。ただ、ケット・シーは必死に伝えようとした。
まとまらない思考を制御しようとしたが、上手くいかなかった。そのうえ“本体”に届くか
どうかの確証もなかった。それでも、最期まで諦めようとはしなかった。

 ―わい直接、クラウドはん達には会えんかったけど。
    WROの兄ちゃんや姉ちゃん、シャルアはんや、シェルクはんに会えて
    ……楽しかったで。
    大変やと思うけどみんな気ィつけてな。

    それからシェルクはん、手伝えのうなってしまってすんません。
    それからヴィンセントはん、今度こそメールの返事返してぇな。
    それからユフィはん、『あやつる』のマテリア、アレわいのやねんで?
    それからシドはん、また飛空艇乗っけてほしな。
    それからシャルアはん、みんな待っとるんやから寝坊したらアカンで?
    それから……それから……
    ホンマはもっと伝えなアカン事、たくさんあるねんけど……。

    おっさん。オモチャのわいに命をくれて、おおきに。
    また……
    …………。

 ネロの手によって叩き落とされたケット・シーは、そこで機能を停止した。

380:↑
06/03/26 02:42:11 FoqZTKie0
・実際のゲーム中のシーンでは、明らかに1秒も経ってないだろう
 という場面に無理矢理お話を挟み込んでます。
・いろいろ暴走しました。ケット・シーとか作者の脳内とか。
・もう少し続きます。

381:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/26 19:17:49 gn8jOJcd0
ネロキタ!…ケットがー!!緊迫した場面の続きが気になります。GJ!

382:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 08:33:59 cm02d+m10
イイヨイイヨー
保守

383:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 12:06:27 QcLSA/3Z0
ううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううううううう
ううううううううううううううううううううううううう

384:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/27 12:09:26 wt/YVeIr0
池沼の発作が始まりました

385:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 01:36:04 1h6WyHBS0
ho

386:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 12:54:45 6ojV75RcO
ほしゅ

387:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 14:30:02 ubDg2zij0
ここって恋話無しの単なる二次創作はNG?

388:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 16:24:39 6ojV75RcO
FFで全年齢対象(エロとかは専用板・スレへ)なら良いとオモ

389:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 22:58:34 GY0+gQNW0
>>387
OKならwktkして投下待ってる

390:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 23:14:32 ubDg2zij0
387です、ありがとうございます。なんか大丈夫そうなのかな。
こういうスレがあってよかった。いずれ投下致します。FF12の超脇役ですw

391:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/28 23:47:55 1p2C8rTM0
テカテカしながらお待ちしてます。

392:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/29 00:42:26 BudTuRPj0
できればFF12作品なら冒頭にネタバレ具合は表記してもらえると有り難い。
期待sage!

393:387
06/03/29 13:24:20 DFMHNivk0
お、またせしました^^

今僕は私立中学校に通っている。
どこの学校にもいじめというものは存在しているみたいで俺の学校にもいじめ
られてるやつがいる。
自分で言うのもなんだがおれはひとつ気合がうまいほうだ。(友から言われた)
そいつは俺の席の右隣にいるのだがそのいじめられてるやつの右側にいるやつ
この前そいつの机に「死ね、消えろ、キモイ」などとコンパスでほっているのを
おれはみた。おれはなにもいえなかった・・・・。
みてみぬふりをした。自分が悔しく自分をうらんだ。
誰かのためにおれは拳をふるったことがない。
自分をかえるしかない・・・。心に決めた。
その日おれは本屋によってボクシングの本を買って家ですぶりをした。
1日にジャブ(左)は1000回くらい素振りをしロー(右)も1000回
ほどふった。腕立て伏せも20回×3くらいした。
最初のほうはうまく腕立て伏せもできなかったが2ヶ月ほどたってこなせるように
なった。
半年の間おれはずっと自分の部屋でまいにち1時間くらいトレーニングをした。
おれは・・・・変わった! やつらをつぶせる・・・。
俺が鍛えている半年の間にいじめはひどくなった。いじめてるやつが6~8人いた。
放課後俺はそいつらを呼んだ。腕にプロテクターとバンテージをまいて・・・。
10分でけりはついた。

俺が勝った。
次の日校長室によばれ事情を聞かれた・・・。俺はすべてを告白した
その後いじめはなくなった。
その後いじめられてたやつにボクシングジムに通うように説得した。
そいつは見る見るうちに強くなりジャブ・ローを完全にマスターしとても強くなった。
俺があいつをかえた。

人は誰かを変えられる。それを忘れないでほしい。

394:激しくネタバレ
06/03/29 13:31:54 Rei2fi8t0
















アーシェ「バルフレアー!愛してるわーーーーーーー!」

バルフレア「うわああああああああああああああ!!!!!俺はフランを愛してるんだー!」

フラン「二枚目はつらいわね( ´,_ゝ`)プッ」

ヴァン「オイヨイヨ!(やめろよ、いやがってるだろ!)」

アーシェ「うるせー!貧民!」

ヴァン「ォィョィョー(アーシェがいじめるー)」

バッシュ「泣くな!男だろ!」

パンネロ「耐えぬいて大きくなるのよ(´;ω;`)」

395:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/29 14:36:22 NMVe6/RDO
>>394
ヤバスWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW

396:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/30 07:04:17 26bN5gGD0
保守

397:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/30 20:05:36 QP1gM4dpO
保守

398:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 01:08:45 DmIF3iHx0
年度末保守。

>>387
恋話要素の有無というよりも
作品への愛が重要。
などと言ってみる。

399:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 13:21:05 eM72GfiOO
保全

400:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/31 21:22:27 eM72GfiOO
ほー

401:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 08:56:00 sbb+ll7b0
hosyu

402:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 20:19:00 Cy65iTQu0
保守

403:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 22:20:33 VRh9RmmG0
ほしゅ

404:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/03/32 22:52:55 V3vZKUu9O
あげ

405:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 09:08:25 kDvs3jUqO
保守

406:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 19:51:50 lv8mnb3T0
保全

407:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 20:59:31 0NeN/jN4O
ヴィンユフィを書こうと思うんですが、何かリクエストとかありますかね?

408:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/02 23:34:17 s3+2CQsY0
ユフィがヴィンを振り回すのが好きなんだけど、定番過ぎ?

409:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 12:10:45 gUEjTXjPO
個人的にはDC内でもオープニングとか5、6章とかいいなと思う。
保守

410:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 19:00:51 Rntb+Xh+0
>>407
wktkして待ってる。

411:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 20:54:42 ldfguP2MO
>>408-410
本編・AC・DCでいつの話が良いですかね?

412:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 22:22:54 +dP3SPiD0
>>411
本当に降臨してくれるならACかDC時間軸キボンヌ
でも自分が一番書きやすいのでいいよー
お待ちしておりますwktk

413:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/03 23:58:52 ldfguP2MO
>>412
ありがとうございました。
じゃあAC直後でいかせて貰います。


414:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/04 18:44:25 vW9j/WwM0
期待ほしゅ

415:名前が無い@ただの名無しのようだ
06/04/05 01:06:51 wFL6TlzgO
保守

416:DC後 【11】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:20:37 9CpoUkTs0
>>384-385 >>360-362の続きです。

『7th Heaven』という看板の店でティファが足を止めた。
扉は壊れていて、店の中は銃痕だらけだった。
ティファは足下に気を付ける様にとだけ言って、先に立って店に入ると、
陽当たりの良い窓際の席にシェルクを座らせた。
シェルクは毛布をしっかりと握りしめ歯をガチガチと鳴らして震えていた。
「ちょっと待っててね。」
ティファはシェルクの肩に手を置くと、そう言い残して店を出て行った。
自分が座っている一画は無事だが、割れた食器や酒瓶が床に散乱している。
カウンターの椅子は倒され、壁に掛けられた額はだらしなくぶら下がり…
ここで何があったかは容易に想像が付いた。

ティファは両手一杯に何かを抱えて来てすぐに戻って来た。
それを、空いたテーブルの上に置くと、今度は扉を開けて、
家の奥に消え、またたくさんの物を抱えて戻って来た。
何度かそれを繰り返し、最後には自分の身長程あるプロパンガスのボンベを
抱えて地下室から上がって来たのにはさすがに驚いてしまった。
ティファは楽々とそれを床に置くと、コンロに繋いだ。
無事に火が点いたのを確認すると、小さなミルクパンに牛乳を注ぎ、温めた。
それを、2つのマグカップに容れると、砂糖と、小瓶から茶色の液体を少し足す。
「はい!」
シェルクは自分の目の前に置かれた湯気の立つマグカップをじっと見つめた。

417:DC後 【12】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:21:10 9CpoUkTs0
「ホットミルクよ。ブランデーの瓶が割れちゃったから、
お菓子作り用のお酒で代用したんだけど…」
そう言いながらティファはシェルクの向かい側に座ると、
試しに自分の分を一口飲んでみる。
「うん、おいしい。」
シェルクもおずおずとカップにカップに手を伸ばす。
湯気からは甘いミルクの香りに混ざって、ほのかに洋酒の香りがする。
一口飲んでみると、優しい味が口の中に広がった。
「お砂糖、もう少しいる?」
シェルクは首を横に振って、ゆっくりとミルクを飲み干した。
「私もね…」
不意にティファが口を開いた。
「空が…嫌いだったことがあるわ。なんだか自分だけ正しいって感じがして、
空が、私を責めてる様な気がしたの…」
「…どういう意味ですか?」
ティファはカップを持ったまま、また小首を傾げる。
「ごめんなさい。ただ…なんとなくよ。」
そう言うと、飲み終えた二つのカップを持って立ち上がった。
「さっき、連絡があったの。子ども達は夕方に帰って来るわ。
安全な所に避難させてたんだけど、仲間が連れて来てくれるって。」
「それは…また、あなた方の仲間ですか?」
「そうよ。あなたにとても会いたがってるの。」
「私に…?」
「ええ。」
シェルクは会った事のない人物が何故自分に興味を持つのか不思議だった。
「それは…ヴィンセント・バレンタインが私の“世話になった”からですか?」
「多分、ね。」
やはり、よく分からない。


418:DC後 【13】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:22:25 9CpoUkTs0
ティファはカップをシンクに置いて、軽く伸びをする。
「さてと、私はお店と家を片付けなくちゃ。あなたはどうする?少し休む?
それとも…もし、元気があるのなら手伝ってもらえるかしら?」
ホットミルクのお陰だろうか?さっきまでの震えはいつの間にか収まっている。
「大丈夫です。お世話になるのだから、手伝いくらいなんでもありません。」
「ありがとう。」
ティファは店の奥にある戸棚を開け、ほうきとちり取りを持って来た。
「これで、床を掃いていてくれる?割れた食器があるから、
必ずこの手袋をしてね。集めたガラスはここ、ゴミはこっちに捨てて。それから…」
ティファは細かく指示を出すと、
「じゃあ、私は今夜あなたが寝るベッドの用意をしてくるから、お願いね。」
バタンと扉が閉まって、店に一人残されたシェルクはまじまじとほうきを見つめる。
昨日までの激しい戦いと、10年に及ぶ地下での生活とのギャップが一度に押し寄せて来て、
思わず天を仰いだ。が、見えるのは鉄骨とコンクリートがむき出しになった天井だけだ。
(静かだ…)
表には人通りがあり、車の音も聞こえてくるが、どこか遠くから聞こえてくるようだった。
そして、改めて手に持ったほうきに目をやる。
昔、まだ姉と暮らしていた時に使った事があったので、
どういう風にすればいいのか、大体分かる。
とにかく、やると言ったのだから…とシェルクはほうきで床を掃き始めた。


419:DC後 【14】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:31:07 9CpoUkTs0
ティファは自分の部屋のベッドからシーツを剥いで、新しいのに変えていた。
(デンゼルと同じ事を言ってたわ…)
ここに来た当初、デンゼルは“世話になっている”という態度を崩そうとしなかった。
(いつか打ち解けてくれるといいけど…)
ティファは小さく溜め息を吐いた。
踵を返して、部屋を出ようとして、足を止める。
(いけない…忘れる所だった…)
ティファは携帯を取り出すと、クラウドに電話をかける。
「クラウド…?ごめんなさい、ちょっといい?」
電話からは瓦礫を取り除く作業音がして、クラウドの声が聞き取りにくい。
「そう…まだ見つからないのね。うん…うん…」
ティファは、シェルクと無事に店に着いたこと。
子ども達は夕方帰って来る事を伝えた。
クラウドも作業の進み具合を話す。ヴィンセントはまだ見つからない。
シドも手伝っていたが、飛空艇団の方にも顔を出さなくてはならないので、
自分とバレットとユフィで作業を進めている。そんな事を言葉少なく伝える。
そして、ティファに電話をして来た理由を聞いて来た。
「実はね、運んで貰いたい物があるの。」


420:DC後 【15】 ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:36:51 9CpoUkTs0
ベッドメイキングが終えると、ティファはシェルクの様子を見に、下へと降りて行った。
店と、住居部分を仕切る扉を開けると、もうもうとホコリが立ちこめ、
ティファは思わずくしゃん、とくしゃみをしてしまった。
見ると、シェルクが一心不乱にほうきで床を掃いている。
しかし、それは掃いているというよりや、ほうきを床に擦り付けて、
ほこりを舞い上げていると言った方が正しい。
「シェルク…?」
振り返ったシェルクは困った様に眉を寄せ、ホコリで目を真っ赤にしている。
ティファは思わず吹き出してしまった。
「何が…おかしいんですか?」
ムッとしたシェルクが聞き返す。
「ごめんなさい…」
ティファは尚もくすくす笑いながら、窓と扉を開け放った。
「私の教え方が悪かったのね。これじゃあ、ホコリが立つばっかりだわ。」
「だったら、笑うのは止めて下さい。」
「だって、今のシェルクの顔…」
少し唇を尖らせて、拗ねた様な顔がとても可愛らしかったのだ。
ティファがそう言うと、シェルクはぷい、と横を向いてしまう。
「ごめんなさい。もう笑わないわ。私も手伝うから、床を掃いてしまいましょ?」
シェルクはしぶしぶ頷くと、ティファに教わりながら掃き掃除を再開させる。
まず、必ず窓を開ける。ほうきはほこりが立たない様にそっと動かす。
ティファは辛抱強くシェルクに掃除を教え、陽がかげる頃にはなんとか店を片付ける事が出来た。

421: ◆BLWP4Wh4Oo
06/04/05 17:41:27 9CpoUkTs0
>>359
呼び名に関してはバッチリ伏線です。でも、そんな大掛かりな物ではないですが…

>くせ者とか言いながら 不安からちょっと頼りにしちゃったりする辺り
DC内でも、この二人のやり取りがとても好きでした。
今後、シェルクがどうなるかは分かりませんが、
なんだかんだでリーブが保護者っぽくなるのかな~
なればいいな~♪と思いつつ。

これを書くためにDC再プレイしました。
あれやこれやと批判はありますが、ヴィンセントの設定なんかは後付けは後付けでも、
良く出来た後付けだなぁ…と思えて来ました。
ここの所、毎日ここの小説を読みふけってるせいでしょうか?

>>413
自分もヴィンユフィ好きです。 光臨お待ちしております…




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