06/01/19 02:38:28 QYOqbnbD0
Ж月н日 レノ
今日も今日とて俺はイリーナの見舞いに来た。
あいつはいっつも「先輩も暇人っすね~」と迷惑そうにしているが、冗談じゃねぇ。
全く、どこを見てるんだ。いまの俺の、どこがフリーに見えるっていうんだかな、と。
………とっくに気付いてるさ。 俺は今、泳がされているだけだ。
俺は、一度アンゲロに触れた人間がどうなってゆくのかの、恰好のサンプルなんだ。
………ったく。社長も抜け目ない人だぜ。 ん?信用されてないだけだって?
ケケケ、そりゃあ悪うござんした、と。 ………チッ。おもしろくねえ。
ほら、イリーナの病室へ向かっている今だって………後ろをつけてきているのが分かる。
この気配はプロだ──………こりゃ、おそらく格闘♀、だな。
俺はいつものように気付かないフリをして、気だるげに病室へ向かう。
せいぜい報告するがいいさ。毎日だらだらと女の元に通う、腑抜けたエースの姿をよ。
それで安心して、さっさと俺とイリーナを自由にしてくれ。こいつには監視の必要なんてないと。
俺は俺のやり方で、タークスの誇りを取り戻す。その為に………悪いが、尾行は、邪魔だ。
扉に手をかけようとして、思い出したように適当なノックをした。
こないだ、ノックせずに開けたらちょうど着替え中で(まあぶっちゃけ狙ってたんだけど)
リミットブレイクかましたイリーナに右ストレートから左アッパー→手榴弾の連続コンボくらった。
くそ、まだ顎が痛ェぞ、と。 そんな事を思い出しながら、病室へ入る。
………こいつの情緒不安定にも呆れたもんだ。最近は特に顕著だな。
昔は絶対、俺に弱味なんか見せなかったのによ。これも、一緒に閉じ込められてからだっけ……。
あの平和だった(?)思い出に引き込まれそうになった俺の身体に、イリーナの手が伸びる。
くすぐるように腰や胸元を撫で回すその手つきに、「お前、誘ってんのか?それじゃあセッ………」
──なんて言ったら、オチが見え見えなのでやめておく。
この手の動き。………全く、バレバレにもほどがあるぞ、と。
軽く溜息を吐いた俺にも気付かず、イリーナは嬉々として俺の携帯をくすねた。
止めなかったのは、同情心からか。………やれやれ、俺らしくもない………ぜ、と。