かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3at FF
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3 - 暇つぶし2ch500:299
05/11/18 19:39:29 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0264 4章 3節 山間(49)

若い男が知らせに行った後、すぐにでもセシル達は長老のいる館をへとまぬかれたのであった。
「お急ぎください……噂を聞きつけた方々が集まってくる前に」
セシル達を招待した女官は長老の元へ案内する途中に、そんな事を口走った。
当然、自分が期間するとは思っていなかった者も多いであろう。だが、自分はこうして帰ってきた。
多くの者は先程の男の様に驚くであろうし、実際にその目で本当かどうかを、確認したい人もいるであろう。
それでなくてもただ、興味本位でパラディンの姿を見たいと言う者もいるだろう。
もう少し時間がたつと、その趣の用件で神殿を訪れる者が後を絶たなくなるであろう。そうなればセシルは迂闊
に姿を見せることはできなくなる。
この女官の急げと言う言葉には、そういう意味が含まれているのだ。
「その姿……ご立派です。貴方も自身の中に、迷いを持っていたのですね。でも今は一切の迷いも感じられない。
とても良い表情をしていらっしゃいます」
最後にそう言い残して立ち去っていった。
「セシル殿……よくぞ試練を乗り越えた」
通されたのは神殿の祈りの間である。そこでは初めてあった時と同じように長老が一人佇んでいた。
「それとテラは……何処だ?」
あらかじめの報告を聞いていたのかテラが帰ってきた事を長老は知っていた。
セシル達を一瞥し、その姿が確認できなかった為、そう質問した。
「少し、神殿の中を見させて貰うと言ってましたよ。すぐに来ると言ってました」
「そうか……」
長老は珍しく、落胆した様子で肩を落とす。
セシルが試練をへてパラディンの資格を得た事も充分な話題であったが、テラの帰還もまた、
ミシディアの住人達にとっての重大な知らせであった。
テラはかつてはミシディアに住んでいた。パロムやポロムの弁によると相当名のたつ賢者として通っていた。
長老とも面識があったと見てもおかしくはないだろう。色々つもる話もあるのであろう。

501:299
05/11/18 19:50:16 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0265 4章 3節 山間(50)

「二人は足手まといにはならなかったか?」
気を取り直して長老は訪ねる。
「ええ……それは問題ありませんでした」
むしろ、多くの局面を救って貰ったこの二人には感謝の言葉もない。
「それで……この二人は? 一体」
「ああ! そうか戻ったら話すんだったな。長老……」
そう言ってパロムは長老の方へと向き直った。代わりに話してくれと言ってるようだ。
「では、私の口から話そうか……そもそも私がパロムとポロムをセシル殿のお供につけたのは当然修行を兼ねた
手伝いとしての意味もあるが、もう一つはお主を監視するためだったのだ」
「監視?」
「ちゃんと最後まで試練をなせるかどうかを詳しくな」
「そうですか……」
「だが、その必要も無かったようじゃな。二人ともご苦労であった」
「ごめんなさい。セシル様……黙っていて」
「いや、あんな事までしたんだから疑われない方がおかしいよ」
丁寧に謝罪の礼をするポロムを見て、セシルは特に気にとめていないという趣の言葉を返す。
生真面目な彼女の事だ。黙って関しする事には抵抗があったであろう。
「ですが……」
「もう気にしていないていってるんだから。ここまでにしようぜ」
パロムが言う。ポロムと対照的に、この事に関してはもう特に気にはしていないようだ。

502:299
05/11/18 19:51:23 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0266 4章 3節 山間(51)

「それで、パラディンになった感想はどうだ?」」
重い雰囲気を晴らそうとしてか、長老が話題を切り替える。
「正直、今になっても実感はありません。本当に僕が……って感じで」
その場を取り繕う為の方便でもなければ、遠慮しての事でもない。率直な感想であった。
「それに力に馴染むのには、少しばかり時間がかかりました」
「どういう事だ……」
「ええ、この力を手にしてから下山しようとした時でした。幾度か魔物の群れに遭遇して戦闘に突入する事が
あったのですが、戦おうにも最初はなかなか力を発揮する事ができませんでした」
「ほう……」
長老の反応を待った後、セシルはさらに続けた。
「でも。戦闘を重ねていく内にだんだんと力の使い方が分かってきました。今では特に問題はありませんよ。
おかげで下山してここめで帰ってくるのに結構な時間がかかりましたが」
もし、チョコボに乗らなければもっと時間がかかったであろう。

503:299
05/11/18 19:52:22 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0267 4章 3節 山間(52)

「それと、ちょっと気になることが……」
ふと思い立ったかの様にセシルは口を開く。
「山頂での試練の際、剣を授かったのですが、この剣、よく見てください……」
セシル自身も下山の折、剣を扱っていく中で、偶然にも気づいた事だった。
刃の部分に何か文字らしきものが深く刻み込まれていた。
「幸い、文字が読み取れない事は無かったのですが、何について書かれているのか長老に伺っておきたい
と思いまして」
一度、セシルも全てに眼を通したのだが、今ひとつその言葉が何を意味するものなのかが分からなかった。
だが、長老なら何か分かるかも知れない。
「剣にはこう書かれています……」

504:299
05/11/18 19:53:06 aluXxVi30
龍の口より生まれしもの
天高く舞い上がり光と闇を掲げ
眠りの地にさらなる約束をもたらさん。
月は果てしなき光に包まれ
母なる大地に大いなる恵みと慈悲を与えん。

「これはミシディアに伝わる伝説と同じ内容だ……」
最後まで聞いた長老は
「ちょっと見せてくれ……」
セシルから剣を受け取った長老はその文字を一字一句、丁寧に何度も読み返した。
「間違いない」
「それで、これはどういう意味をさしているんでしょうか?」
断言した長老にセシルは聞き返す。
「ただ、伝説として伝わっているだけであってそれが何を示しているのかまでは現時点では
分かっていないのだ」
「そうですか」
となると、もうミシディアで知ってる者は誰もいないと見た方がいいだろう。
「ミシディアに伝わる起きてではこの伝説の為に祈れと言われている。ひょっとすると今がその時なのかも
しれん」
長老のことば何処か予兆めいていた。

505:299
05/11/18 20:00:19 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0268 4章 3節 山間(53)

沈黙を打ち破るかの様に、扉が開く。
そして遠慮無く中に入ってきたのはテラであった。
「セシル、すまないな。久しぶりに帰ってきたものだからつい懐かしくてな、色々見て回ってしまったのだ」
「久しぶりじゃな」
長老が嬉しそうに声をあげる。
「ああ……」
テラの方は何処か遠慮しがちな態度であった。
さっき町中でテラを見た者達も何かをしっている素振りであった。
テラにとってこのミシディアになんらかの因縁があるのだろうか。
「この爺ちゃん凄いんだぜ! 何たって伝説の魔法。メテオを覚えたんだから」
「メテオだと……」
その単語を聞いた長老の声が裏返った。
「そうだ、セシルがパラディンの試練を超えた時、山頂で聞こえた声が私にも話しかけてきた、
そうして、力を授けてくれた」
「あの魔法の封印が解かれるとは、やはりただ事でない何かが起ころうとしているのか」
「そうかもしれんな……だが、世界の事情がどうあれメテオは私の手の中にある。この力さえあれば
ゴルベーザーも! 奴だけはこの私の手で倒す!」
「テラよ……今のお前は憎しみの力が増大しておる。そのままの状態で戦おうとするとお前自身の身を滅ぼす結果が
待っておるぞ。それにメテオなどと……」
「分かっておるわ! その位の事は……だが、あいつだけは、ゴルベーザだけは何としても!」
激しい口調のテラはこの場にいる全ての人物を黙らせるだけの覇気を感じさせた。
「駄目だ、いくらお前が強くなろうが今の考えでは決して勝つことはできん。周りの状況を見据えるのだ」

506:299
05/11/18 20:01:12 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0269 4章 3節 山間(54)

「おい、長老―」
感情を乱した長老を見たことがないのか、やや取り乱している。
「パロムパロムが口を挟む。
ここまで!」
だが、それ以上はポロムが言わせなかった。
「出ましょ……」
パロムのがここまで感情を崩す事を見たくはなかったのだろう。
この様な場に肩を掴み静かに退出する。
二人には長老はとてもではないが耐えきれなかったのだ。
曲がり角へと消えていく二人の影を見ながら自分も引くべきかとは思ったが、やめておいた。

507:299
05/11/18 20:02:06 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0270 4章 3節 山間(55)

「アンナが……娘が……」
二人が去った頃合いを見計らったようにテラが言う。
「…………」
セシルにもあの時のダムシアンの様相が頭に蘇ってくる。
「娘が殺されたのだ」
ずっしりとしたテラの声はとても短かったが、深い憎しみが秘められている。
「それだけで充分な理由であろう……」
「私怨で戦うというのか! 愚かな……それが、賢者として名を馳せた者の言うことか」
「何とでも言うがいい。ゴルベーザを倒せるのなら、そんな肩書き誰かにくれてやるわ!」
「頑固じゃな。昔と変わっておらん」
何とかと言った感じで長老が口から絞り出す。
「お前もだ。相も変わらずだ」
そこまで言うと、後は口を閉ざしたまま、部屋を出て行った。
「しかし、それではお前はどうなるのだ……」

508:299
05/11/18 20:03:59 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0271 4章 3節 山間(56)

「ああ、セシル殿。ちょっとばかり見苦しいところを見せてしまったな……」
寂しげな様子でテラを見送った後、長老はセシルに切り出す。
「あいつと私は昔からの仲でな。つい本音でやり合ってしまう。仮にも国を統べるものなのに
パロムとポロムもいたというのに……」
「いえ、そんな友人はとっても羨ましいです。本当に……」
もし、自分にもそれだけ他人とうち解けあえたら……カインも。
だが、もう過ぎ去ってしまった事。その日々を取り戻す為にもこの力を手に入れたのだ。
「そうか……有難う」
「何故、テラはミシディアを出て行ったんですか?」
聞いて良いのかどうか迷ったが、今聞かなければもう聞く機会はないだろう。
多少、配慮に欠ける行為だとは思ったが、セシルは思い切って質問した。
「やはり、分かるか」
「一応、テラとの付き合いは長い方ですし、さっき長老とも何処か余所余所しかったですし」
「ミシディアでは日々、魔法の研究が成されていた。過去、多くの偉人達が研究に努めてきた
おかげで、現在でも多くのミシディアの民が魔法を使えるようになった。だが、発展には常に
挫折や犠牲がつきものであった」
いきなり語り始めたので、セシルは最初テラの事を話しているとは気づかなかった。
「テラもこの国の魔法の発展に一役買っていた。若い頃から非常に優秀だったあいつは幾つもの
研究で成功を成し、民からの信頼も相当なものであった。だが、その評価の絶頂の時に事件は
起こった……」

509:299
05/11/18 20:04:52 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0272 4章 3節 山間(57)

身構える間もなく、長老の言葉は続く。
「事件はいたって簡単なものであった。その日、テラは古代魔法の封印を解こうとして、多数の
魔導師を動員していた。だが、研究は失敗。魔法は暴走し、そこにいた多くのものを傷つける事
となった」
「それが原因だったのですか……」
「いや、実験の失敗はミシディアでは珍しくはなかった。それに古代魔法に関する事なら尚更
であった。犠牲者が出ることもあった。この時は幸いにもなかった、その為、住人間の諍いや
テラを始めとした、研究に立ち会った者に恨みを持つものは殆どいなかった」
淡々と語る、長老の話は終わりではなかった。むしろここからが本当に話したい事であったのだろう。
「だが、テラの失敗は多くの住民を落胆させる結果となった。そして日々の研究に勤しむものの自信すら喪失
させてしまった。普通の者であったならそんな事はありえないであろう。しかし、テラだから問題だったのだ。
テラなら出来る、そんな期待に皆すがっていたからだ」
優れた才能を持つ者は一人だけで多大な人間へ影響を与える。しかし、それが必ずしもプラスに
働くとはいえない。それを端的に表した例なのかもしれない。
「誰もテラを恨まなかった。しかし、テラは去っていった。多くの者を傷つけた罪悪感も勿論あったが
それ以上に、落胆する者達を見てはおれなかったのだ」
「…………」
「それは失望したという意味ではない。むしろ皆の期待に応えられなかった自分への戒めであった。
そして、これ以上、自分へ信頼を寄せる者を増やしては民全員への不幸を招く。そう判断したのだ」
テラの存在はミシディアに発展をもたらしたが、それが住人の自らの意思を持つことを阻害していた可能性
にテラ自身は気づいたのだろう。

510:299
05/11/18 20:06:30 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0273 4章 3節 山間(58)

「勝手な推測だがな……」
長老はそう付け加えた。
「だが、奴の本音くらいは分かる間柄であると自負してるつもりだ」
「誰も止めなかったのですか?」
「引き留めようともしたが、奴は聞き入れなかった。一度決めたらもうその考えを修正する事はない。
奴はそんな性格なのだ。本来なら奴こそミシディアを率いる者だったのだ……」
テラが去った後のミシディアは長老がひきたのだろう。その後どうなったかは、今の町並みを見れば明白だ。
結果的にテラが去ったことはこの国を発展に導いたのかもしれない。
それでもしばらくは住人達にはやるせない思いが残ったであろう。
誰にも罪を問うことが出来なかった。そして皆が優しさと思いやりを持っていた。だが、それが
不幸を呼んだ。そしてその不幸は恨みや、悲しみを誰にもぶつける事ができない。その例をとってみると
この類の不幸は一方的に押し寄せる不幸に比べて、なんともやりきれないものだ。
「これで私の話は終わりだ」
「……有難うございます」
長老にはつらい話をさせてしまった。無駄な詮索などしない方がよかったのかもしれない。
だが、セシルはミシディアの民の持つ、多くの悲しみを少しだけだが、理解できた様な
気がした。それはセシルにとって大きな収穫であった。

511:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:24:26 S472HOBC0
リアルタイム超乙です!

ただ、長文投下だからなだけかもしれませんが、
どこか展開を急いでいるような印象を受けました。
次はいよいよバロンですな。


512:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:34:21 JEdwi+eM0
キタ━━(゚∀゚)━━!!!
あいかわらず長文なのにスラスラ読みやすいです。

513:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:42:34 oofwCHMK0
乙です。リアルタイムで見たの初めてだー

514:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 23:18:00 ONj9hvlh0
>「パロムパロムが口を挟む。
>ここまで!」

コピペミスかな?

やっぱうまいですね。乙でした。

そういえば本編ではこの長老はテラが死んでも、「愚か者め」としか言わないような冷たい奴だったような気がするけど、
こうやって文章化されると印象変わるね

515:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 12:49:27 E90/j0eE0
次の盛り上がりに向けての繋ぎあるいは布石?
それにしては冗長。
試練を終えたセシルや、長老の想いを深く掘り下げたかった?
それにしては拙速。

前回の出来がよかっただけに、今作を惜しむ。

516:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 22:57:12 1xORnM6i0
お、まとめサイトが・・

517:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/20 16:07:01 Pyj8K93G0
あげとく

518:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 07:09:10 gshyjlfd0
>>515
批評に対する批評はしたくないが、
毎回そうやって否定的な評価しか書こうとしないのははっきりいって凄く偉そうでいい印象を持てない

519:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 11:24:43 HunXZlh20
>518スルーしとけよ。
噛みついてる時点であんたも同レベルだぜ

520:299
05/11/21 19:05:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0274 4章 3節 山間(59)

夜中、セシルは神殿を抜け出し夜道を歩いていた。
試練を成し、あとはバロンへと向かうだけだ。その為の手段も確保出来てる。
だが、その前にどうしてもあっておきたい人がセシルにはいた。
本当なら、こんな夜中でなく、もっと早く―できればパラディンになった後、
一番最初にでも会いに行きたかった。
しかし、ミシディアにはまだ、自分を許していない人間がいるだろう。
許したくても、多少の時間つまりは心の整理をしなけれなならない者も多くいる事はセシルも
分かっていた。
そんな者に自分の姿を見せるのは得策では無い。そう判断した為、人通りの多い昼間でなく、
皆が寝静まった時間を選んだのだ。
そして町はずれの墓地にはやはりセシルの求めていた人影が見えた。
黒い法衣をまとったその影は闇に紛れるかのようにしてそこに静かに立っていた。
「やっぱり此処にいたんだ」
その人影に声をかける。
「ジェシー……」
「なんで、ここにいるって分かったんですか……?」
振り返ったその女性はまず最初にそう問うた。
「正直、ここで君に必ず会えるとは思っていなかったよ。でも良かったよ……」
「何がです?」
「もうこの機会を逃してしまったら当分は君に会えないからね」
「そこまでしてもらわなくても結構でしたのに……」
「でも、君と二人で話したかったから。それに……」
「それに?」
「ここが、一番君と話すのに向いていると思ったし」
本当のところ、今まで余計な時間はあったのだし、その時に長老辺りにでもとりついでもらえば
いつでも話す時間を作れたはずだ、

521:299
05/11/21 19:08:04 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0275 4章 3節 山間(60)

「馬鹿ですね……それでもし、私が此処にいなかったらどうするつもりでたの?」
「でも、結局は会えた……」
自分でもえらくいい加減な理屈だとは思ったが、敢えて言った。
「…………」
「…………」
そこまでで会話が途切れた。
「無理をしないでください。そんなに取り繕わなくても、一番言いたい事があるんじゃないですか?」
「明日にはここを発つ……」
促され、いきなり切り出す。
「それだけを言いたくて……」
言葉自体には大きな意味はなかった。他にもお互い、話す事はいくらでもあるはずだ。
だが、もうそれだけで充分だった。今更、謝罪の言葉が意味を成さない事をセシルは悟っていた。
「それじゃあ……」
踵を返し、夜闇に消えようとしたセシルをか細い腕が引き留める。
「私はまだ、あなたと面と向かって話す事はできません。それに今もあなたの事を全て許すこと
もできません。ですが……」

522:299
05/11/21 19:08:58 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0276 4章 3節 山間(61)

セシルは後に続く言葉を待った。
「これからは、これからは少しはあなたみたいな人でも理解していきたいと思います」
「そうか……」
「長老……いえ、父にもいろいろと諭されました。お前も変わらなければならないって。それが全て
分かったとは言い切れないですけど……」
彼女が父の事を話してくれるのはこれが最初であった。
「君は長老の娘だったんだね……」
「はい」
ゆっくりと、それでいて簡潔に応える。
「話してくれて有難う。じゃあ……行くよ」
「では」
今度はジェシーも引き留めなかった。そうしてセシルは去っていった。
短いやりとりであったが、お互いを理解しあうには幾ばくかの時間が必要であろう。
だから、これで良かったのだ。
向かう道は別方向。だがいずれ交わる時もくるであろう。その時には今とは違う何か別の言葉が出てくるかも知れない。
今のセシルにはこれだけで……充分であった。

523:299
05/11/21 19:11:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0277 4章 3節 山間(62)

窓から入ってきた淡い光がセシルが心地よい目覚めを誘う。
セシルはベッドから起きあがり、外の景色を眺める。快晴の青空に昇った太陽が円形状の町を
鮮やかに照らしていた。
「旅立ちには適任の天気だな……」
思わず、楽観的な言葉をこぼす。こんな天気では、彼でなくても口にはだしたくなるであろう。
己の幸運を噛みしめていると、扉を静かに叩く音が一つした。
「どうぞ……」
その声に誘われるかのように扉が開く。
「おはようございます」
その顔には見覚えがあった。
昨日、自分を長老の元へと案内してくれた女官のものだ。
「良く眠れましたか?」
「勿論です」
それは本当であった。彼にとってこの数日間は正に波乱の出来事の連続であった。
ここまで、ゆったりとした寝床で穏やかな心持ちで休息を取れたのは初めてであった。

524:299
05/11/21 19:12:39 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0278 4章 3節 山間(63)

「それで何か御用でしょうか?」
「お荷物が届いています」
一通りの挨拶を終え、用件を尋ねると女官は部屋の前に置かれた一つの包みを指さす。
「これは?」
「武具屋の店主さんから餞別だそうです。重いのでご注意ください」
ここまで持ってくるのも相当な苦労でしたと苦笑する。
セシルもその荷物を持ち上げようとする。それは確かに見た目以上の重さを有していた。
何とか部屋まで運び込み、女官に礼を言って扉を閉める。
持ち込むのも困難であったが、梱包されたその荷物を紐解くのも結構な労力を使用した。
「これは……」
開いた荷物から覗いたものは鎧であった。
それだけでなく、篭手を始めとした防具一式が詰め込まれていた。
そのどれもが渾身を込めた出来であり、丁寧に鍛えられたものであった。
「パラディンの……」
試練の山へ向かう前準備として、武具屋に行った時があった。
その時、店の一番目立つ所に安置されていた、鎧を思い出す。
―これはパラディン用の装備さ! あんたみたいな暗黒騎士には使えるわけがねえ―
店主の皮肉めいた苦笑が思い出される。
「あの時の鎧か? でも何故……」
信じられない気持ちでその鎧を眺めていると、荷物が入っていた箱の奥底に何かが残っている事に
気づく。
拾い上げてみるとそれは小さな紙切れであった。
じっくりと眼を凝らしてみると、文字が刻まれていた。
―頑張れよ―
大雑把な文字でそう書かれていた。
「…………」
ぎゅっと紙切れを握りしめ、懐にしまう。

525:299
05/11/21 19:18:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(64)

昨夜の内に、長老から指定されていたのでその場所には直ぐにたどり着けた。
「セシルか?」
既に到着していたテラが声をかける。
「おはよう、テラ。早いんだね」
「良く寝付けなくてな。まあ、復讐を誓った時以来、睡眠と言うものをまともに取ることが
出来なくなってな……」
「そうか……」
「そんなに遠慮をするな。、別に気にしてはおらんよ。ところでその鎧は?」
「ああ、旅立ちの餞別として貰ったんだよ……」
「ほお……なかなか様になっとるぞ」
まじまじと見つめながら、感想を一言。
「はは、有難う……」
町はずれにぽつんとそびえる、一軒の小屋。この魔法国家の神秘的な建物に比べると、明らかに質素な
作りである。
「ここからバロンに行けるのか?」
その事は既に長老から確認済みだった。しかし、今ひとつ実感が沸かなかったので念を押すかのように
聞いてしまう。
「そう思うのも無理はないかもしれんが、このデビルロードと呼ばれた道は昔はバロンとミシディア間の
交易ルートとして、栄えたのだ。今の両国の関係を見れば、とてもじゃないが、想像できん事だがな」
確かにここ数年のバロンは各国に対し、強硬的な姿勢で外交にも臨んでいた。
そうしてその圧力に一番反感を持ったのが、ミシディアであった。
結果、ミシディアはバロンの侵攻の真っ先の的にされてしまった。その時にこの道も閉鎖されてしまったんのだ。
最も現在の世界を見れば、むしろ最初に侵攻された事さえましな事に思えるが。

526:299
05/11/21 19:36:09 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(65)

「過去この場所に空間同士を繋げ、大陸間を自由に移動できる手段を確保するために出来上がったのがこのデビルロードだ。
そもそもこの道が何故デビルロード、つまり悪魔の道などという不吉な名称で呼ばれたかというと、理由が幾つかあるのだ……
一つはこの道を使うのに相当な生命力を犠牲にしたからじゃ。ああ、安心しろ現在は創設時に比べて実験の重ねた結果、
そこまで危険な道では無くなった。
もう一つはこの道を作った後、黒き鎧を纏った男が現れた事に起因している。
当時、その姿を見た者は悪魔が現れたと思ったのだ。しかしそれは誤解であった。そいつは唯の人間であり、その上バロンのものだと
言った。つまり、は成功したと言うことだな。人々はこの道を最初使い、大陸と大陸を一瞬にして移動したその者の名を取って
デビルロードと名付けたのだ。まあ、悪魔とは違ったのだが……」
「バロンから来た黒き鎧の男とは暗黒騎士だったのか?」
長々と続くテラの講釈の終了を見計らって訪ねる。
「詳しいことは私も知らんが、今重うと確かにそうだったのかもしれんな」
かつてのバロンから暗黒騎士がこの道を通ってミシディアまでやってきた。そして今かつて暗黒騎士だった
セシルはバロンに向かおうとしている。これは何かの偶然であろうか。
「既に封印は解かれているんだね」
「ああ、それは問題ない」
「では」
扉を開けようとしたセシルを呼び止める声が一つ、いや、二つあった。
それに続くように草を踏みしめる足音が二つ、二方向から聞こえてくる。
「パロム! それにポロムか!」
現れたその姿に少しだけ驚く。
「見送りに来てくれたのか……」
そう言えば誰の姿も見えない、だが、無理もないだろう。試練を乗り越えたと言え、昨日の今日の出来事である。住人全員が
手を振って見送りとは、そう簡単にはいくまい。
「違うよ。一緒に行くことにしたんだ」
「え!」
セシルとテラが殆ど同じタイミングで声を上げる。
「そんなに驚くなよ……ちゃんと長老から許しは貰ってるぜ」
「そういう事ですわ。以後も宜しくお願いします」

527:299
05/11/21 19:37:36 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0280 4章 3節 山間(66)

「それで長老は?」
昨日の内に礼は言っておいたが、あの人にはお世話になった。未練がましいかもしれないが、旅立つ直前に、もう一度だけ
顔を合わしておきたいと思った。
「長老は……明朝、祈りの塔に入られました」
「祈りの塔だと!」
「テラ、知ってるのか?」
「ああ……一応はな。詳しくは知らんがそこに入ったとなれば当分は出てこないと言うことだ」
そこまでして、長老は何に祈るのか? だが、セシルはそれを理解していた。
長老も世界……いや、守りたい者の為に戦いを始めたのだ。それはセシル達の様に直接的に手を動かす行為ではないかもしれない。
だが、その行いも一つの戦いである。
それだけで聞けば充分であった。此処にはいないが、長老が自分を全力で見送ってくれているのを感じる事ができた。
「そうか……じゃあ、僕たちも急ごう!」
小屋に入る途中に一度だけ後ろを振り返った。小高いこの場所からは白い町並みが一望できる。
ひょっとしたら、この町のどこから見るよりも美しい光景だったのかもしれない。
長老やジェシーの事が少しだけ、思い出される。しかし、もう迷いは無かった。
「みんな……これから行くバロンは僕の故郷と言っていい場所だ。そして戦いは激しくなる。ひょっとすると
生きて帰れないかも知れない。それでも僕に付いてきてくれるか?」
だが、そんな質問は無駄であった。
「勿論だ」
「今更、水くさいぜ」
「どこまでも」
返事は様々であったが、皆同じ思いだ。
「分かった行こう! バロンへ」
小屋の中、ひっそりと描かれた魔法陣に足を載せる。
途端、視界が揺るぎ始める。ぐにょりと曲がり始める視界の中、セシルはカインやローザ。
そしてゴルベーザの事を考えていた。

528:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 19:58:00 xX13pLR60
夢枕風にティファvsロッズ


面白そう

たまらぬ蹴りであったッ!!!


529:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 20:32:38 V1m8xr+H0
ジェシーとのオリジナル会話(・∀・)イイ!!

530:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 02:09:37 5QeVNfTo0
>>FF4
武具屋の餞別に感動。これゲームの中にあるのならなんか人情味あって良いな、FF4。
ジェシーとのやり取りが、完全なる相互理解であなく、相互理解の始まりという感じがして
良いなと思いました。個人的にこの流れだと、今後のテラが気になります。GJ!

531:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 08:46:14 FOjDfLOCO
それよりもヤンが気になる
一体何があったのか

532:FF8
05/11/22 10:49:45 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-1

(スコール・・・スコール・・・)
(誰だ)
(スコール、やっと会えたね)
(誰だ、誰なんだ、あんた)
(忘れちゃった?寂しいな・・・)
(どこかで会ったことが?)
(思い出して。忘れられたままじゃ、寂しいから・・・じゃあね、スコール)
(おい待て)
(思い出したら、いっぱいお話しようね)
(待て、待ってくれ・・・)

「おや、気がついたかい」
保険医のカドワキ先生が、俺の顔を覗き込んで言う。
俺はあたりを見回した。ここは医務室、俺と先生の二人しかいない。
すると今しがたのは夢だったのか。不思議な、夢だ。
俺はベッドから起き上がろうとした。
「!」
激しい眩暈に襲われると同時に、眉間に鈍痛が走る。
「ああ、しばらく寝たた方がいいよ。怪我した場所が場所だからね」
・・・怪我?場所が場所?ああ、そうか・・・
俺はサイファーとバトルしていたのを思い出した。
・・・しかし、なぜここに・・・

533:FF8
05/11/22 11:03:43 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-2

「嫌だねえ、覚えてないてのかい?」
困惑が顔に出たのだろう、カドワキ先生があきれるように言った。
「いいかい、あんたはね・・・」

カドワキ先生が話してくれた内容は、およそ次の通りだった。
あの後、つまりサイファーに眉間を斬られた後、俺は顔面を血で朱く染めながらも、
鬼神のごとき形相でサイファーに斬りかかって行ったのだそうだ。
その太刀筋があまりにも凶刃であったため、これ以上の面倒はご免とばかりに、
サイファーはとっとと逃げ出したという。
それまで二人のバトルを遠巻きに見物していたギャラリーが、
俺を心配して駆け寄ってくれたが、俺はただ「大丈夫、大丈夫」と繰り返すだけ。
しかしどう見ても大丈夫な訳がないという事で、ギャラリーたちは俺を
なだめたりすかしたりしながら、どうにか医務室まで運んで来たのだと。

「まったく、そういう年頃なのかねえ。あんまり無茶するんじゃないよ」
サイファーに行ってくれ。もともと誘ってきたのはアイツの方だ。
”なぁスコール、ちょいと体あっためないか。まさか断ったりしないよな”
そう言われたら、断れない。

534:FF8
05/11/22 11:20:07 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-3

「余後の心配はなさそうだけど、一応、確認させてもらうよ」
俺の思惑をよそに、カドワキ先生が型通りの質問を始める。
 名前は?・・・スコール・レオンハート
 年齢は?・・・18歳
 所属は?・・・バラムガーデン、SeeD候補生、NO.41269
 担当教官は?・・・

「絶対、あなたかサイファーだと思ったわ」
俺の回答を遮る様に、だしぬけに背後で声がした。声の主を振り返る。
「キスティス先生・・・」
「キスティス先生・・・じゃないわよ。連絡受けて跳んで来たんだから」

キスティス・トゥリープ、俺より一つ上の19歳。俺の担当教官だ。
15歳の時に史上最年少記録でSeeD試験に合格、17歳の若さで教員資格をも取得した、
超エリートだ。才色兼備なだけでなく、気さくで面倒見の良い性格ゆえに、
男女を問わず多くのファンがいる。

「全く何を考えてるのよ。午後からSeeD認定試験があるの、忘れてた訳じゃないでしょうね」
「午後から試験て、本当かい?呆れた子だねぇ・・・」
だから、サイファーに言ってくれ。

535:FF8
05/11/22 11:33:58 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-4

「それでカドワキ先生、スコールの具合はどうですか」
キスティス先生が尋ねる。
「ああ、もう心配いらないよ。ピンピンしてる。若いってのはいいねぇ」
「そう、良かった」
「でも眉間の傷は一生消えないよ。天下御免の向こう傷ってやつさね」

・・・そうか、一生残るのか、この傷・・・
傷口に手をやりながらも、俺はさほどの衝撃は受けなかった。
俺はSeeD候補生、いずれは戦いの中に身を置く者。
遅かれ早かれ、俺の体は傷で覆われる。

キスティス先生からも何か一言あるかと思っていたが、珍しく何も言わない。
いつもであれば、小姑のようにぶちぶちと小言を連ねるか、
あるいは傷なんて気にするなといった類の励ましの言葉でも掛けて来る筈だが、
いずれにしろ、黙っていてくれる方が、俺にとってはありがたい。
何気なく先生を見やると、口元に手を充てて、驚きを顕わにしている。
俺を想って黙っていたのではないようだ。衝撃で口を訊けないだけだった。

やれやれだ。
これじゃ、誰が負った傷だか判りゃしない。

536:FF8
05/11/22 11:45:04 MbqJAoAu0
申し訳ありません。コピペミスしました。
>>534のラストに、以下の3行を付け足して下さい。

「しかもね、カドワキ先生。この子、炎の洞窟の課題、まだクリアしてないの」
「おやまぁ、ますます呆れたね」
だから今朝やろうと思ってたんだ。それを、サイファーが・・・

537:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 12:15:32 FM0FcYfA0
うまいっ。まんま初期のスコールの雰囲気がよく出てる。ほんとうまい。
このままスコール一人称で行くと面白そうだな。期待して待ってます。

538:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 16:45:27 1ZtTrQmpO
すごいおもしろい!
一人称っていいものなんだねぇ、久々に新鮮な面白さだった!
スコールがすごくよく描けてる!
あの性格は描くのが難しいと思ってたけど、あなたの筆致だと、やなやつじゃなく、自然!あと、全体にくどくなくていい感じ。
頑張って!続き楽しみにしてます!てゆか早くよみたい!

539:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:05:22 XWCMuXbH0
528www 出だしだけ

「母さんはいないのか・・・じゃぁ遊ぼう?」
男は大げさに両手を広げ、挑発的な笑みを浮かべた。
遊ぼう?・・・そういわれて、なんのつもりなの? 
と聞き返すほど私もお嬢様じゃない。
先ほどからの男の言動を見る限り、頭の回線が複数切れているのか
母さん、母さんって、どうみても話が通じる相手ではなさそうだ。
私たちが今いるこの教会には出入り口がひとつしかなく、それも丁度男が立つ位置
によって塞がれてしまっている。
逃げ道は・・・ない。
こちらにはマリンもいる。
いま、この場で、この危険な男を戦闘不能にすること
それが私たちにとっても、一番安全で確実な方法であると思われた。
「いいわ、遊びましょう。マリン下がってなさい」
私はマリンを後ろにやると 半歩前に出て男を睨んだ。
「ティファ・・・」
マリンが心配そうに 声をかける・・・、
「問題ないわ」
私は背中ごしにマリンに返事をしつつ、男を睨み付ける。

540:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:06:36 XWCMuXbH0
大丈夫、こいつがどんなにでかかろうと、どんなに腕っぷしが強かろうと、ただそれだけだ。
長らく戦闘からは身を引いていたとはいえ
私は師匠に鍛えられたのだ。
2年前の戦いでは、あのセフィロスとも互角に叩きあった
素手でのタイマン それが条件なら誰が相手であろうと負ける気がしなかった・・。
両足を軽く前後に開き、拳を持ち上げる。
左拳が前 右拳が後ろ・・ザンガン流格闘術
蹴りを主体とした総合格闘技
それが私の武器だ。
「ほう! こりゃあ楽しめそうだ」
男は感嘆の声をあげると
大げさに腕を前後に広げ構えた。
フン、楽しめそうだですって?
見てなさい、今にそのへらへらした口を二度と笑えないように叩き潰してやるから
それとも、二度と楽しめないようにあそこを捻り潰してあげましょうか?
凶暴なものが内部で熱を持ちムリムリと膨れ上がっていく…
落ち着け、人に使うのは久しぶりだからって焦っちゃ駄目


541:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 00:59:49 dn2QlHh40
5tenkana...

542:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 10:01:25 j8bdUx7i0
FF8といえばどッかの個人サイトで凄い上手いのがあったよな
ディスク1の最初から終盤までとアルティ戦だけ書いてあるやつ
あれどこだっけ

543:FF8
05/11/23 10:24:35 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-5

「生徒NO。41269、スコール・レオンハートです」
「教員NO.048、キスティス・トゥリープ。私がサポートします」
敬礼と共に、試験管に報告する。
炎の洞窟。最奥部にいるGF・イフリートを倒し、装備可能にする。
それが今回の課題だ。

GF、ガーディアン・フォース。その正体は強大な自律エネルギー体だ。
生体と同様に意識・自我を持っているが、知能はそれほど高くない。
それぞれが持つ特性に応じて、獣や妖精など様々な姿となって現れるが、
大半は確固とした実体を持たず、限られた時間しか実体化できない。
GFに対して力を示し、その力を認められた者は、以後、そのGFと常に
交感できるようになる。俺たちはそれを「GFを装備する」と称しているが、
これにより強大な力を得ることができる。
バトル中にGFを召還することが可能になるだけでなく、GFを媒体として、
各種魔法を自身にジャンクションすることも可能になる。
GFは強力な武器であり、同時に強固な防具でもあるのだ。

「時間を決めなさい。長くもなく、短くもなく、自分に合った時間を」
試験管が重々しい口調で言った。
「10分で構いません」
俺は即答した。傍らにいるキスティス先生が目を丸くしている。
「10分でいいのだね」
「はい」
キスティス先生の意味ありげな目くばせを無視して、俺は答える。
「では、行きなさい」
俺は駆け出した。キスティス先生も後に続く。

544:FF8
05/11/23 10:43:21 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-6

足元を流れる溶岩が、洞窟内を赤く照らし出す。
しかしその猛烈な熱気ゆえに、視界は常に揺らぎ、遠くまで見通すことはできない。
肌を露出している箇所がチリチリと痛み出し、眉間の傷はズキズキとうめく。
汗は絶え間なく吹き出してくるが、流れ伝う間もなく蒸発してしまう。
炎の洞窟、その名にふさわしい、ここは常軌を逸した世界だ。

「やっぱりあなたとサイファーは別格ね。本当に強いもの」
最奥部へと向かう道すがら、半ば呆れたようにキスティス先生が言う。
「・・・ここの魔物が弱いだけだ」
そう応じつつ、俺は新たな一体を斬り伏せた。これで15体。
実際、ここの魔物はさほど強くない。
種類こそ異なるが、ガーデンの訓練施設にいる魔物と、ほぼ同レベルだ。
サイファーを相手にする方が、よほど手強く、危険だ。
「それはそうなんだけどね・・・なんていうか、ここで、こうやって、
今まで何人もの生徒をサポートして来たんだけど、ほとんどの子は、
普段の実力をなかなか出し切れないものなのよ」
そういうものなのか・・・俺にはよく判らないし、どうでもいい事だ。
「これってやっぱり、私が魅力的だからかしら?」
・・・なに考えてるんだ・・・
「冗談よ、冗談。いつもこうやって生徒をリラックスさせてるの。
でも、あなたには必要なかったみたいね」
・・・くだらない。無視して先へ進もう・・・
そう決め込んだ刹那、洞窟内に凄まじい咆哮が轟きわたった。

545:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 23:41:47 U24Tq5+yO
イフリートクル━━(゚∀゚)━━!!!!!

546:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 01:30:04 rJ8K44sH0
8が進んでるな。作者の頑張れ。
そういや、5とACはどうなったのかな。

547:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:11:03 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-7

大地をも揺るがす咆哮を受けて、洞窟が巨大な共鳴装置と化す。
度を越した大音響に、俺たちは堪らず耳を塞いだ。
「いよいよね。ここからが本番よ」
音が止むのを待って、キスティス先生が言う。
先程までとは打って変わって、その表情は真剣だ。
・・・言われずとも分かってる・・・
返事をする代わりに、俺は一気に奥へと駆け出した。

洞窟最奥部、そこには巨大な穴が穿たれていた。
周囲が赤く照らし出される洞窟内にあって、そこだけは漆黒の闇に覆われており、
穴の深さを雄弁に物語っている。
「!」
突如として、その穴から巨大な火柱が噴き出した。
激しい轟音と熱風が塊となって、俺たち二人にぶつかってくる。
吹き飛ばされそうになるのを堪えつつ、火柱を凝視していると、
火柱が徐々に形を変えていくのが見てとれた。
・・・これは・・・
刻々と変化していく火柱は、やがて獣神とでも形容すべき姿となった。
GF・イフリート。
隆々とした筋肉におおわれた、炎の化身、灼熱の巨人。
今までの魔物とは一線を画す、圧倒的なまでの存在感。
『人間ヨ、我ガ前ニ、ソノ力ヲ示セ』
言葉とも思念ともつかぬモノがイフリートから放たれ、赤熱した圧力となって
俺たちに襲い掛かってきた。

548:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:36:10 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-8

五合、六合、七合・・・
イフリートの攻撃を掻い潜りながら、俺は矢継ぎ早にガンブレードをうち振るう。
しかし、確かな手応えは得られない。
イフリートはひるむ様子をまったく見せることなく、新たな攻撃を繰り出してくる。
力任せの強引な攻撃ばかりなので、なんとか凌いでいられるが、
少しでも判断を誤れば、かすっただけでも致死に近いダメージを負うことだろう。

八合、九合、十合・・・
俺の斬撃は的確にヒットしている筈なのだが、イフリートにダメージを負った様子は見られない。
キスティス先生はサポートに徹し、回避と回復に専念している。
時折、冷機魔法を使うこともあるが、それはダメージを狙ったものというより、
赤化した空間の温度を少しでも和らげる事を意図したものだろう。

『ドウシタ、人間ヨ、汝ノ力ハ、ソノ程度カ』
イフリートの嘲るような思念が、熱波となって向かってくる。
相前後するように飛んできた剛腕を紙一重でかわし、俺は新たな斬撃を叩きこむ。
しかし、やはりイフリートにひるむ様子はない。

・・・ほんの一瞬でいい。奴に隙を与えることができたなら・・・

549:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:48:22 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-9

『小サキ者ヨ、私ヲ呼ビナサイ』
俺の思考に呼応するように、イフリートとは異なる思念が、どこからか伝わってきた。
・・・これは・・・そうか!
思念の主に思い当たると同時に、俺は精神を集中し、その姿を心に念じた。

俺とイフリートが対峙する、ちょうど中間地点の辺りに、突如として氷の結晶が出現した。
結晶は見る間に巨大化して行き、イフリートとほぼ同じ大きさの、氷の塊と化した。
氷塊が放つ冷機が、イフリートの放つ熱気を相殺していく。
と、出し抜けに氷塊が弾けとんだ。その跡に現れたのは・・・
『ヌウ、コ奴、シヴァヲ従エテオルノカ』
イフリートの驚愕が伝わってくる。
GF・シヴァ。
妖艶な笑みを湛えた、氷の化身、極寒の女王。
シヴァは詠唱しつつ、両手を頭の上で組んだ。そして、詠唱が終わると同時に
組んでいた両手をイフリートに向かって振り降ろす。
冷気が無数の氷の矢となって、イフリートの巨躯に次々と襲い掛かる。
グハァァァァァァッ
絶叫を上げ、大きくのけぞるイフリート。

550:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 12:03:33 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-10

見えた!切望していた、わずかな隙が!
イフリートの顕わになった喉元めがけ、俺は体ごとぶつかって行った。
狙いは誤たず、ガンブレードは深々と突き刺さる。
ウゴォォォォォォッ
悲鳴とも咆哮ともつかぬ叫びを発しながら、イフリートは地響きを立てて倒れた。
イフリートの体を成していたものが、火柱に逆戻りしていく。
『人間ヨ、ソノ力、確カニ見届ケタ。以後、我ガ力ヲ貸ソウ』
言い終わると同時に、火柱は消えてなくなった。

「スコール、見事だったわ」
額の汗をぬぐいながら、キスティス先生が言う。
「やっぱりあなたは別格よ。強すぎるわ。
あなたが”10分”って言った時には、なんて無謀な事をと思ってたんだけど、
まったくの杞憂だったわね」
無謀か・・・その通りかも知れない。
少なくとも、イフリートの力を甘く見ていたのは事実だ。
事前に彼我戦力を正確に把握していたとしたら、10分という選択はなかっただろう。
今後の戒めとしよう。
「さあ、戻りましょう。最短記録、樹立しなくちゃね」
キスティス先生の言葉に頷き返し、俺は入口に向かって駆け出した。

551:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 00:15:09 Tl2U6uMz0
GJ!!
戦闘描写はやっぱりうまいね。
あっけなくすら感じたけど、これくらいあっさりしてた方が続きが期待できる罠www

552:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 00:41:44 39wnMzBZ0
>>FF8
名前入力、洞窟攻略のリミット制限選択など、ゲーム中に登場する選択肢が
違和感なく登場している辺りに感動した。スコール視点ってゲーム自体もそう
だったはずなのに、ノベライズの方が良い印象で読んでいけます。乙です。

553:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 01:32:09 39wnMzBZ0
319です。
ご感想、ご指摘ありがとうございます。視点の固定…は、以前から頂いている課題(ry。
…精進します。


そんな自分ではありますが、書ける部分はリレーにも参加させて頂こうと思います。
リレーはちょっと緊張しますね…。不備などあればご指摘頂けると助かります。

554:FF6
05/11/25 01:38:42 39wnMzBZ0
ff6 - 25 figaro


 頭上に広がるのは濃すぎる程の青色、雲一つなく晴れ上がった紺に近い青空の中央で、
煌々と輝いている太陽。
 眼下に広がるのは、うねるような起伏と美しい風紋を持った熱砂の海―人の侵入を拒む
でもなく、だが歓迎していると言うには厳しすぎるこの大地に人々がつけた名は、フィガロ砂漠。
 吹き抜ける風が生み出す波紋が、砂の芸術を生み出す。そんな砂漠の中で小さくため息を
吐き出した者が居た。
「ふゥ~。ガストラさまの命令とは言え……」
 砂漠を渡るという割にはローブなどを羽織っただけの軽装で、顔面に施された必要以上の
厚化粧は、さながら道化師だ。彼は帝国の兵士2人を従えてフィガロ城を目指していた。旅の
一座と言うにはいささか不穏な出で立ちと顔ぶれである。
 それもそのはずで、「ガストラ」と言えば今や世界で知らぬ者はいない。圧倒的な軍事力で
世界を支配しようと目論む、ガストラ帝国皇帝その人である。
 そうなれば、彼らの正体が旅の一座でないことは明かだ。
 途中、小高い砂丘の上で立ち止まると、およそ好意的ではない感想をフィガロ砂漠に向けて
吐き出した。
「まったくエドガーめ! こんな場所にチンケな城を建てやがって。偵察に派遣された私の
身にもなってみやがれ!」
 道化師のような化粧を施してはいるが、彼は旅芸人ではなく魔導士だった。先のナルシェ侵攻
作戦、その報告を受けて彼はここへ遣わされたというわけだ。偵察に自分を指名した君主殿を
恨むべきだと思うのだが、そこは権力構造の魔術だ。
 ついでに言うと、フィガロ城を建造したのはエドガーではない。八つ当たりも甚だしい独り言で
ある。後ろで控えていた兵士のひとりは、そのとばっちりが来ない事を密かに、だが必死に祈った。

555:FF6
05/11/25 01:39:15 39wnMzBZ0
「ほれ、クツの砂!」
 しかしその祈りもむなしく、被害は後ろに控える2人の兵士にも及んだ。熱せられた砂の上に跪き、
差し出された方の靴の砂を払うと、また後方に下がる。
「ハッ! きれいになりました!」
 直立不動の姿勢でもって、いま命じられた任務の達成を報告する。どんなに些細な事であっても、
これは帝国軍における掟だ。帝国軍兵である以上、その掟に背くわけにはいかない。
 その姿を見届けると、旅芸人風の男は満足そうに高笑いをあげた。
 後ろに控える兵士達は表情を変えることなくその背中を見つめていた。へたに機嫌を損ねて
不当な扱いを受けるよりも、そっとしておくのが得策だと言う事を知っているからだ。
 旅芸人風の男はひとしきり笑うと、急におとなしくなった。
「つまらん」
 おそろしく冷静な声で短く言い捨てると、また黙々と歩き始める。
 上官に恵まれなかったうえに、フィガロ砂漠へ偵察に派遣された運の悪い兵士2人は、前を歩く
その男に狂気と恐怖を感じながらも、黙って後についてフィガロ城を目指すのだった。

556:FF6
05/11/25 01:44:04 39wnMzBZ0
ff6 - 26 figaro


「いかがだったかな? 私の城は」
 フィガロ城、謁見の間へ戻ってきたティナを出迎えたのは国王エドガーの優美な
笑顔であった。問いかけながら微笑むエドガーの表情は柔らかく、ティナはつられる
ようにして首を縦に動かした。
 ティナが口を開こうとした時、背後から聞こえてきた兵士の声が彼女の言葉を遮った。
「エドガー様! 帝国の者が……」
 恭しく頭を下げ、状況を告げた兵士の声に、エドガーの表情から笑顔が消える。
「ケフカか!」
 そんなエドガーの言葉に、ティナは心の中に小さな痛みを覚えたのだった。
 ―その名前を、どこかで……?
 不安に表情を固くするティナの肩に優しく手を置いたのはエドガーだった。自分の肩に
置かれた手に気づいて顔を上げ、見上げた先にあったフィガロ国王は相変わらず柔らかな
笑みを浮かべている。
「ティナはここで待ってて」
 いつからいたのか、隣にはロックの姿がある。ふたりは幾つか言葉を交わしながら、大きな
扉の向こうへと消えていった。
 身の丈よりもはるかに大きな扉が閉められると、城内は驚くほど静かだった。

557:FF6
05/11/25 01:48:08 39wnMzBZ0
 そんな静まり返った城内で、思い出されるのは今し方聞いたばかりの言葉。ティナの脳裏に
こびりついて離れない、忌まわしい記憶の欠片。

 ―帝国。ケフカ。……魔導。

 その言葉を聞くと胸騒ぎがして、頭が痛くなる。
 あのナルシェの雪原で、私を追っていた男達は……。

『帝国の兵士だぞ!』

 ―そう、私は帝国の兵士だった。

 記憶をなくし、たった一人で放り出された薄暗い洞窟。
 私を追ってくるナルシェのガード達。
 向かってくるモンスターに、無意識のうちにも振り下ろしたナイフ。
 モンスターの断末魔を聞けば、洞窟内に押し寄せる静寂。
 名前以外のなにもかもが、未だ霧に包まれたようにぼんやりとしている。
 けれど。

 ―私は……。

 確実に覚えている。
 命の、奪い方を。 



----------
マッシュの出自に関して、ゲーム中にフィガロの大臣から聞ける王位継承に関する情報が
書けませんでした。後の方すみません。サウスフィガロor山小屋~コルツ山辺りで…なんとか…。

558:FF6
05/11/25 02:00:22 39wnMzBZ0


 ティナは堅く閉ざされた扉を開こうと手を伸ばした。ここにいてはダメだと
強い焦燥感が少女を駆り立てる。
「……お待ち下さい」
 背後で聞こえるその言葉にも、構うことはなかった。
 しかしどんなに押しても扉はびくともしない。それでも必死で押し開けようと、
ティナは渾身の力を込めて扉を押し続けた。
「……どうか落ち着いて。今あなたが外へ出て行く必要はありません」
 静かに告げながら、ティナの腕をつかんだ。不意のことに驚いて顔を向けると、
それはついさっき、案内役を買って出たあの衛兵の一人だと気づく。
「王と、ロック様をお待ちしましょう」
 そう言ってさりげなくティナの前に立ちはだかると、扉への道をふさぐ。
 彼もまた、柔らかな表情を向けていた。
----------


ff6 - 26 figaro はここまででした、すみません…。

559:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 02:12:32 jJsRKDQx0
うーん、前回までの流れだとマッシュの思い出話が続きそうでしたけど、
ここでケフカに話移すのもテンポよくていいかも。とにかくやっぱり上手いですね。
ただあんまテンポよすぎるとゲームやってることが前提じゃないと話について
いけなくなりますからね…、そのへんを考慮していただけると幸いです。乙でしたー。

560:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 12:04:41 al6atAHb0
(・∀・)イイ!!おもしろいぞ!

561: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:11:25 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)

一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ~、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
 時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。


562: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:11:59 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)

一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ~、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
 時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。


563: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:15:37 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0282 4章 4節 これから(2)

太陽は、東から西へと動きながら、世界を順繰りに照らしていく。その光の当たり始めると朝が訪れ、光が去って再び当たるまでの間が夜と呼ばれる。デビルロードで海を渡るついでに、セシルたちはその境目─すなわち夜明けを追い越してしまったのだ。
とはいえ実のところ、はっきりと時間を遡るのはセシルにとっても初めての経験だ。言葉だけではどうにも伝えづらかったのだが、地面に図を描くと、双子はたちまち理解した。
「おもしれ~!
 兄ちゃん、色んな事知ってるんだな!」
「本当です。おどろきました!」
「まあ、受け売りだけどね。
 ある人から教えてもらったんだ」
赤い翼が設立される前のことだ。飛空挺で遠出をすると、出発前に考えていたよりも日暮れまでの間隔が長い、あるいは短いような気がすると多くの者が気付き出した。古い文献をひっくり返し、このなんとも不思議な、時差という現象の存在を突き止めた。
大昔、デビルロードを用いた交易が活発だった時代には、広く知られていたらしい。
「飛空挺って……思っていたのより、ずっとすごいです。
 お日さまを追いかけてゆけるなんて」
「ほんとだよ。やるじゃんか、バロンの連中もさ!
 なあ、もしかして、ずっと飛びつづけてたら、ずぅ~~~っと夜にならなかったりするのか!?」
これは思いがけない質問だったので、しばらくセシルは考え込んだ。確かに理屈の上では、それも可能な気はするが。
「さすがにそれは、試してみないとわからないな……。
 でもそんなに速く、長い時間を続けて飛べる飛空挺はないんだよ。
 君たちが大きくなる頃には、出来てるかもしれないね」
最後の言葉に確証はない。ふたりが目に見えて落胆したので思わず口にしてしまったが、なんといっても飛空挺はまだ新しい技術だ。改良を重ねた末にいったい何が可能となるのか、誰一人わかっていない。
”わしは飛空挺を、人殺しの道具になんぞしたくないんじゃ!”
─思い浮かんだ懐かしい声は、己が目指していく先に不安を抱き始めていた。その予感が現実になっってしまったとき、彼はどれほど嘆いたのだろう。
この子たちの願いを叶える為になら、喜んで知恵を絞ったろうに。

564: ◆HHOM0Pr/qI
05/11/26 14:22:12 Hy98XmYf0
久しぶりに続き描かせてもらいました……って、いきなり連投の上にトリまで間違ってるよorz

それにしても、しばらく離れている間に他シリーズも盛況だわ、まとめサイトは出来てるわで、なんというか感慨深いもんがあります。

565:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 14:26:44 ys4TE1pG0
帰ってキタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀ ゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
相変わらず次への区切り方が上手い!

566:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 18:16:34 MYyAx/aX0
物語はあんまり進んで無いけど乙。
サイトの更新も気長に待ってるのでがんばってください。


567:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 19:29:59 al6atAHb0
オリジナル設定がいい味だしてる!
乙!!

568:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/27 13:44:24 qQwEWWdf0
皆さん乙です。ff8作者です。
好意あふれるコメントを多く賜りまして、ずいぶんと励みになっております。感謝。
また他シリーズの作者さんには、多くの刺激を頂きました。これも厚く感謝。

ところで私事ですが、明日から急遽海外出張する事になりまして、当分戻れません。
(因みに私は商社勤務で、海外取引先とのかねあい上、午後出社&午前帰宅の毎日ですので、
平日は午前中しかカキコできません)
なので、ff8シリーズにつきまして、誰かバトンを繋いでいただければと思います。
サブタイトル変更、オリジナルストーリー挿入etc、どうぞ好きになさって下さい。
唯一の縛りは「スコール一人称」てことでw
どうぞよろしく。では。

569:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/27 19:47:50 p47oogp60
パロムポロムの石化イベントを思い出すと、今のこの無邪気で元気な二人が自分を犠牲にするんだなぁと思う。
あれ?目にごみが・・・うっ・・

570:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 11:59:01 4GD6oPBM0
>569
軽いネタバレ。
未プレイの読者だっているだろうに、配慮を欠く。

571:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 18:59:45 W2LEzYfF0
またお前か

572:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 20:39:26 rObpNtpk0
とんでもないネタバレしてやる。

なんと、DQ3のラスボスはゾーマ!
さあ叩け

573:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 23:24:19 S+vSNqw40
保守

574:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 00:06:57 ruek9LSXO
>>572
ひどいや! ポカポカ

575:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 09:57:01 QRezJYffO
>>572
鬼畜め!!

576:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 11:43:32 ALyTAAF90
>>572
ネタバレ氏ね!!

577:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 12:17:15 lv03Dqs+0
主人公を助けるために
パロムポロムが石化するとか、ヤンが爆死するとか、
ラストダンジョンは月面とか、おまいらネタバレしすぎだぞ!

578:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 13:15:21 Cn7HAfH+O
みんな、間違っても
GBA版FF4では、パロム、ポロムとかが復活して、最終的にはキャラの入れ替えが出来るなんて言うなよ。

579:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 22:25:28 PetJXADb0
>>578
微妙にストーリーのネタバレでないあたりお前の良心を感じた。
つーか荒らしはスルーしようねみんな。俺もか。

580:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 00:38:18 clUzDZQx0
FFでは、3が一番小説化しやすいと思うんだけど(あくまで個人的意見)、
DS版が出たら書いてみようと思う人いるかな?

581:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 00:52:29 SnsuXoeD0
3はデフォルト名が決まってないし各キャラの個性が0に近いからちょっとやりにくいって
意見が初期にあったな。逆にそれがやりやすいって意見もあったけど。

582:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:46:35 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-11

炎の洞窟から帰還した俺は校門でキスティス先生に礼を言うと自室へと帰った。
一般生徒の自室はSEEDの部屋とは違い、二人で一部屋となっている。
ベットはそれぞれあるものの、キッチンを始めとしたダイニングルーム等は同居人との共有であった。
最も、いつも朝早く訓練に行く俺は自分の部屋の同居人と顔を合わせた事は殆ど無かった。
殆どと言うのは朝食の際、何度か顔を合わせたこともあったが、向こうも寡黙な男であり、
一切言葉を交わす事はなかった。
その点は非常に好ましい同居人の恵まれたと思っている。
「まだ時間はあるな……」
部屋の中の時計を見ると、針は十四時を指している。朝のHRによると、受験者は十六時に一階の
ホールに集合だったはず。
後、二時間。
前もって準備はしていたので特にする事がない。
試験を前にして緊張を隠せない者には心の準備がいるだろうが、俺にはこの実地試験は必ず
合格できると言う自信があった。
後はただ時間が来て、与えられた試験をこなすのみだ。
「もう行くか……」
時計が14時半を過ぎた頃に俺は決断した。

583:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:47:51 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-12

自室のクローゼットから学校指定の制服を取り出す。
基本的にガーデン内では授業中を除いては制服の着用は義務づけられていない。
だが、実地試験に於いては例外だ。
ガーデン側は厳しく制服の着用を要求する。
その理由は過去、それも、俺が入学する前の事に起因する。
その時にはまだ、試験時には自由な服装を許可していた。
だが、その年に行われた実地試験でガーデンの生徒が味方側に誤って撃たれるという事件が起こった。
撃たれた生徒は死亡。バラムガーデンの在校生が犠牲になる極めて稀な事件となった。
制服教官からは一度は実地試験という試験を取りやめるべきだという意見もでた。
だが、シド学園長は断固この進言を拒否した。そして翌年以降も実地試験を続ける事を取り決めた。
この取り決めには当時相当な異論が出て、中にはシド学園長は辞任するべきだという意見もあった。
だが、それは普段の信頼ゆえなのか、学園長を支持する者が教官の中にも何人もいた為、最悪の事態は
避けられた。勿論、この問題を放置する程シド学園長も甘くはなかった。
それからは味方同士の相打ちを避ける為、身元が明らかになるようガーデンの制服を着る事を
強制づけたのだ。
特に反発する者はいなく、むしろ今までが異常だったとさえ言う者もいたほどだ。
翌年からはその方法が適用された。
以来、実地試験における犠牲者はゼロである。

584:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:48:48 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-13

一階のホールに付いた俺は空いているベンチに腰掛け時間が来るのを待った。
来たばかりの頃にはまだ殆ど人がいなかったが、それから数十分程の時間を待つことなく、
ホールには試験を受けるであろう生徒とその見送りと思われるであろう人物でごった返していた。
見送りにくる者は後輩であったり、SEEDの先輩であったり、仲の良い同級生であったりと様々ではあった。
しかし、交わす言葉はほぼ同一のものであった。
とてもじゃないが、これからまがりなりにも戦場という場に赴く者の会話とは思えなかった。
だが、それも仕方のない事なのかもしれない。
繰り返すが、先述の事件以降、実地試験におけるガーデン生徒の犠牲者はゼロであった。
それが、生徒達から恐怖心―もしかすると死ぬのではないかと言う恐れを完璧に打ち消してしまっ
ていたのかもしれない。
そもそも実地試験という名目がついてはいるが、内容は後方支援。
要は戦場という場所の空気を体感してこいという程である。
それにバラムガーデンにはGFのジャンクションを許可してある。
これはガーデンの中でもバラムだけの特徴である。
ジャンクション―GFと呼ばれる異境の生物の力を体に宿した者は常人では考えられないような力を
発揮することができる。
これさえあれば多少の危険はものとせず退ける事ができる。少なくともガルバディアの一般兵と戦う事は
容易い。
だが、その代償として記憶に障害がでたりする等と言う症例が見受けられると提唱する者もいるが、
詳しくは定かにされていない。

585:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:50:43 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-14

「よう、スコール!」
物思いにふける俺の肩を軽々しくも叩く者が一人。
「何だ……ゼルか」
振り返った先にあるその顔を見て言う。
「何だとは何だよ」
文句を垂れるこの男はゼル=ディン。
顔に刻まれた刺青模様に逆立った金髪という容姿は端から見たら素行の悪い者に映るかもしれない。
しかし、根は人の良い好青年だ。少なくとも俺の判断ではだ。
それに、いくら装いを変えても小柄な体型に、顔にはまだあどけなさが残っている。
「ところでさ、やっぱり朝の訓練の奴ってお前だったのか?」
「おい……何で知ってる?」
「今更、もうガーデン中に知れ渡ってるぜ。サイファーの奴またやっちまったのかてさ」
何という事だ……常日頃から俺は必要以外の事は口にせず目立たないように努めてきた。だが、
今朝の自体は俺自身に対する無駄な印象を他人に振りまく結果になってしまったのか。
「お前もさ……相手にしなきゃいいんじゃない。あいつの悪評はもう知れ渡ってる。
教官達ですら諦めてるんだしさ。いちいち構ってるのはもうお前だけなんじゃねえの」
俺が落胆するのを見て取ったのかゼルはそんな事を言ってくる。
「いや、あいつが先に仕掛けてきた。それを俺は逃げるわけにはいかないんだ」
そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。
「おいおい……カッコつけすぎだぜ」
ゼルはその意見に少しばかり、呆れたようであった。

586:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:51:23 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-15

無理もないだろう。俺も他人がそんな事を言ってると酔狂な奴だと認識するかもしれない。
自分でもなんとも無茶な事をしてるのか自覚はあるつもりだ。
むしろ、この程度のリアクションで済んだのが不思議なくらいだ。
「ま、わざわざ俺に話してくれたのは嬉しいぜ。お前いっつも無口で何も話てくれないからよ」
別にそこまで親しくしたつもりはない。ただ、思っていた事を少しだけ言ったまでだ。
前述の通り、俺は無意味に人に本音をさらけ出したりはしない。どうせ、ガーデンという空間の中での
一時の付き合いだ。
やがてこの場から皆巣立っていく。今ここで誰かと親しくなったら後の別れが辛くなるに決まってる。
できるだけ身軽でいたい。それが俺の考えだ。
「そういや、俺もこの前サイファーの奴に酷い目に遭わされたんだよなあ……」
それなのにこのゼルという奴は何故か俺に興味を示す。
ガーデンに入ったばかりの頃から、俺は他人との接触をあまり好まなかった。
それを理解してか自然と俺に必要以上に話しかけてくる者は少なくなった。
当然俺自身も望んでいたことであったのでそれで良かった。
だが、こいつ―ゼル=ディンだけは何故か俺に話してくる事を止めなかった。
こいつの性格なら皆とも上手くつきあえるはずだ。そちらの方が奴にも俺にも幸せなはず。
「あいつわざわざガーデンスクウェアにまで現れてさ……挙げ句の果てには大口論。おかげでしばらくは
閉鎖だぜ……お……」
ゼルの話はまで続いていた。しかし、廊下から教官達の影が見えその口を閉ざす。
「教官達が来たみたいだな。じゃあなスコール。お互い合格できるといいな」
激励の言葉を残し、ゼルは去っていった。よく見れば先程まで談笑していた生徒達もすでに集合場所に
集まろうとしている。
俺もベンチを立ち上がりその行列の群れへと加わった。

587:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 03:00:07 LxTde3yG0
>>568さんへ
本編とはちょっと展開を変えましたが、SEED-10以降の続きをかいてみました。
以降は書くかどうか分かりませんが、568さんの続きに期待しています。
がんばってください。

588:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 21:28:16 p+ehMLxt0
イイヨイイヨー!
「おねえちゃん」がでてくるのがちょっと唐突だったような気がしたけど、
いい感じに続いてますね。次も待ってます!

589:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 03:34:19 UqpXMRlJ0
ちょっと読み直して思ったんだけど、竜の騎士団の>>251の飛竜の死因のくだり、
九分九厘じゃなくて九割九分じゃないの?なんか文脈的に引っかかったんで

590:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 08:53:35 6agn72LG0
九分九厘まちがいない……みたいな表現方法はあるよ。恐らく口語的に九割が省略されてるんだと思う。
まあ、>251の場合は「九割以上は」、「ほとんどは」、「大半は」 みたいな言い換えの方がすっきりすると思うけどね。
九分九厘と言ってしまうと、99.9%とまで言ってしまってるわけだし。


591:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 11:41:40 ptmT2jnl0
くぶくりん 3 【九分九厘】

〔一〇分のうち一厘を残すだけの意〕ほぼ確実であること。ほとんど。副詞的にも用いる。
「―だめだと思う」「―まで成功した」

三省堂提供「大辞林 第二版」より

592:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 12:07:15 ptmT2jnl0
>そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。

この時点でのスコールって、お姉ちゃん(エルオーネ)のこととか、
孤児院で育ったこととか、G・Fの後遺症で全図忘れちゃってたんじゃない?
違ったらゴメン。

593:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 12:22:41 VPVLRBA50
スレチガイだが
昔の単位は、0.1=「分」だった。今は一つ桁がずれて0.1=「割」で0.01=「分」
「実力は五分五分だ」とか「平熱は36度5分」とか、現代でも「分」の桁位置に名残がある

もちろん九分九厘という言葉はあるし、それは99.9%ではなく99%の事である
まぁ熟語なんで、べつに99.9%とか99%とかそんな細かい違いはどうでもいいのだが

594:589
05/12/01 17:47:49 UqpXMRlJ0
つまり特に問題ないってことなのね。
たいへん失礼しました。

>592
確かに。
あと、初期のスコールにしてはちょっとばかし愛想がいいような気がする。
でもGJです。

595:FF6
05/12/03 01:55:15 Rfb//lS70
ff6 - 27 figaro


 ―どうすればそんな顔で笑えるの?
 目の前に立ちはだかって扉の前をふさぐ衛兵から視線を離せずに、ティナは
不可解に思う。
 たとえ過去の記憶を持たなくても。自分以外の女性達が普通に抱く感情を持て
なくても。
 ―私は、他の人たちが持たない“力”を、持っている……。
 そのぐらいは分かっている。そして、いま置かれている状況も。

 ナルシェで目覚めたあの時と一緒なのだろうと思った。
 この扉の外では、私を捕まえようと必死になっている人達がる。そして、扉の外へ
出ていったロック達は、ナルシェにいたあの老人と同じ事をしようとしている。

 ―また、ひとりで逃げなければならないの?

 恐かった。
 放り出されてしまうことが。
 拠となる過去の記憶を持たず、休まる場所を知らず。
 また、ひとりで走り続けなければならない。
 ―そうなるぐらいなら……。


596:FF6
05/12/03 01:56:38 Rfb//lS70
「……開けて、下さい」
 胸を満たしあふれ出た思いが、口の外へと押し出された。けれど小さく掠れた声は、
意味を持った言葉として相手に伝わるほどの力を持たなかった。それを知って、
ティナはもう一度口を開く。
「お願いです。その扉を開けて下さい」
 自分の前に立つ衛兵をまっすぐに見つめた。彼女のあまりにも純粋で真っ直ぐ向け
られてくる視線に、衛兵は思わず一歩後ずさる。
「不安なお気持ちは分かります。ですが、王とロック様は必ず……」
 衛兵の口から気休めに取り繕った言葉が漏れたが、先が続かなかった。ティナは
一歩前へ進み出る。どうやら追い詰められているのは衛兵の方だった。
 そのときである。
「お待ち下さい」
 ティナの背後から聞こえてきたのは、他の誰よりも落ち着きのある声だった。ゆっくりと
語られる言葉の一つ一つに力が宿っているような、そんな不思議な響きで、ティナは
思わず振り返る。
 声の主はフィガロの大臣だと名乗り、頭を下げた。
 彼はずっと―ティナがここへ連れてこられた時から―後ろに控えていたのだが、
自分から何かを語ったり主張したのは今がはじめてだった。
「エドガー様はこの城のことを細部までよくご存知でいらっしゃる。それは、このフィガロという
国そのものを熟知しているということなのです」
 突然なにを言い出すのかと、ティナはじっと大臣を見つめる。
「あなたは先程、神官長からお話を伺っていましたね?」
 その名を聞いてティナの脳裏に浮かんだのは饒舌なる老女―そう、彼女のことだ。
 大臣からの問いに頷き返すと、あの部屋で神官長が語っていた事を思い出そうとして、
ティナは瞼を閉じた。

597:FF6
05/12/03 02:01:12 Rfb//lS70
ff6 - 28 figaro [About 10 years ago....]


『マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ』
 瞼の奥にはあの神官長の姿と、その後ろに並んだ2つのベッドが浮かんだ。
「私の顔の皺だって、まだもうちょっと少なかった頃の話よ」と、神官長は過
去のフィガロを語ってくれた。

                    ***

 帝国のフィガロへの侵攻はね、あの頃が一番激しかったんだよ。
 ……フィガロは小国で領土のほとんどが砂漠だと言っても、機械技術は世界に
誇れる国だからね。帝国が目を付けるのも無理はない。
 帝国が欲していたのは領土じゃない、フィガロの持つ技術。
 だから、とても卑劣なやり方でもってこのフィガロを侵略しようとしたのよ。
 ……ああ、ごめんなさいね。この話をするとどうしても……。
 本当にごめんなさいね、私のことなんかはどうだって良いわ。話を戻すわね。
 帝国が取った方法というのが、国王の暗殺だった。先代フィガロ国王、つまり
現国王エドガーの父君にあたるお方だね―を亡き者にして、かわりに傀儡を
置こうとしたの。
 分かるかい? 帝国の息のかかった者を王として送り込もうとしたんだよ。
 もちろん、王ってのは世襲―親から代々血のつながりを持った者が王位を
継いでいくわけだから、いきなり余所から国王を迎えることはできない。
 つまり、帝国と結託して国王を暗殺し、帝国の意のままに動こうとする……
この国の内部に……。
 ……。
 自分の父親を殺された者の気持ちっていうのは、少し想像してみれば分かると
思うけど、その父親を殺したのは……帝国と……。
 …………。
 ああもう、ごめんなさいね。

598:FF6
05/12/03 02:12:35 Rfb//lS70
 奴らは、誰にも……城の中にいる人間にすら気づかれないように、先代国王を
亡き者にする必要があった。
 先代国王はある時、ご自分の身に危険が迫っていることにお気づきになられた。
 そこである日、ふたりの息子を呼んだの。近い将来、ご自分が世を去った時の
ために。
 ひとりが現国王のエドガー。
 あの子は器用で、昔から機械いじりが大好きでね。頭の回転も速かったのよ。
―即位された今だから言うわけじゃないけど、国王向きだと思うわよ。あとは
口説き癖さえ直してくれればねぇ……。まあ、彼は父君に呼ばれた時すでに、
ある程度の事情を察していたんだろうね。
 もうひとりが双子の弟のマッシュ。
 この子は体も小さくて、大人しい子だったよ。だけど、とても家族思い……いいえ、
家族だけじゃなく誰にでも優しくて、純粋な子だったわ。

『兄貴、おやじ突然どうしたんだろう? 後継ぎの話なんかしだして……』

 マッシュはね、父君が息を引き取るその瞬間まで……いいえ、この世を去った後も
信じようとしなかった、父君を手に掛ける者がいたなんて。

599:FF6
05/12/03 02:16:01 Rfb//lS70
 それに、……。
 この私も、マッシュを傷つけてしまったの……。あの日以来、マッシュの笑顔を
見てないわ。今はどこでどうしているかしら……。


 ……まあ、たいへんもうこんな時間! あなたを長く引き留めてしまったわ
ね。年寄りのおしゃべりに付き合ってくれてありがとう。
 さあ、もう行きなさい。

                    ***

 そんな話をしてくれた神官長の表情は、思い出したくなかった。彼女の顔に
深く刻まれた皺は、ここへ至るまでに歩んできた苦悩の痕跡なのだろうと、朧気
ながらに感じたからだ。
 話を終える頃には、そんな彼女の皺がいっそう深くなっていた。

 口に出す厳しい言葉とは裏腹に、日々増え続ける女中達を見つめている彼女
の方が、よほど生き生きとして見えた。



----------
書いていてやっぱりリレーは難しいと感じました。配慮不足でスマソ。
改めて神官長に命を吹き込んだ297さんは凄いなと思った次第です。

600:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/03 02:18:10 3X6lpg6J0
リアルタイム乙

601:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/03 21:05:19 r4c7gOVZ0
乙! ティナが回想をしている雰囲気がすごいいい味出してます!
前回から続けて読むと、神官長には敬語を使い通して欲しかった気もしましたが、
しかし大臣はなにを話そうとしてるのかな……。

602:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 11:32:15 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-16

「どうしたの、スコール。深刻な顔して」
集合場所へと歩を進める俺に並んで、キスティス先生が言う。
・・・深刻な顔?俺が?
俺の顔はいつもこんなだろ、教官ならそれくらい分かれよ。
「何か悩み事でもあるの?」
再び先生が問う。が、構っちゃいられない。
「・・・別に」
「・・・別に」
あしらうつもりで言った言葉を、綺麗にハモられてしまった。
俺の答えを予期していたというのか・・・不愉快だ。
キスティス先生は口に手をあてて笑っている。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「おかしい?ちがうちがう、嬉しいの。生徒を少しだけ理解できた。
だから、嬉しかったの」
理解できただと?冗談じゃない。
この程度の事で、いったい何を理解できたというのか。
「俺はそんなに単純じゃない」
「じゃあ、話してよ。あなたの事、もっと話して」
だから、何でそうなるんだ?
「先生には関係ないだろ」
「・・・・関係ないだろ」
また、ハモられた・・・ますます不愉快だ。

603:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 11:57:56 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-17

その後しばらくの間、キスティス先生は執拗に俺に話しかけてきたが、俺は取り合わなかった。
しかし逃げ出すことも適わず、結局二人そろって集合場所に到着する。
「・・・あ、いたいた。ゼル。ゼル・ディン!こっちに来て」
シャドーボクシングしているゼルを見つけ、キスティス先生が大声で呼んだ。
「何だい先生?・・・よお、スコールも一緒か」
派手なバック転をかましながら近づいてくる。
キスティス先生にゼル・ディン・・・二人ともタイプは異なれど、
人のプライベートに首を突っ込みたがる点は、よく似ている。
俺の苦手なタイプだ。
「あなたたち、今日の実地試験では同じB班よ」
・・・冗談だろ・・・
「そうか、よろしくなスコール!」
陽気なゼルは俺の感傷など頓着せず、握手を求めてくる。
「先生、実地試験は三人一組だろ?あと一人は?」
ゼルの握手を無視しつつ、俺は先生に訊ねた。
「それなんだけどね・・・実は、サイファーなの」
「そりゃ嘘だろっ!悪い冗談だぜ!」
ゼルが大声で喚く。俺も喚きたいくらいだ。
「変更はできないわよ」
先生がピシャリとはねつけるように言った。

604:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 12:20:53 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-18

「マジかよ、よりによってサイファーと同じ班ってか」
「何だ、俺がどうかしたのか?」
ゼルのぼやきに呼応するように、背後で声がした。
「げ、サイファー・・・い、いや、何でもねぇよ」
「フン!」
いつもと同じく自信たっぷりの表情で、サイファーが鼻を鳴らす。
傍らには取り巻きの風神と雷神もいた。風紀委員勢ぞろいってわけだ。
「サイファー、あなたがB班の班長よ。頑張ってね」
「先生よぅ、俺は”頑張れ”って言われるのが一番嫌いなんだよ」
キスティス先生の言葉にプライドを傷つけられたかの様にサイファーが応ずる。
「そういうのは、出来の悪い生徒に言ってやってくれ」
「なるほど・・・サイファー、頑張ってね♪」
・・・痛烈だ。先生もやる時にはやる。
傍らではゼルが小さくガッツポーズをしている。正直な男だ。
サイファーはと見ると、小さく肩を震わせながら、怒りと恥辱に堪えていた。
「・・・キスティス先生をリストに加えておけ」
俯いたまま、声を絞り出すように言った。
風神・雷神が怒りに燃えた目で頷く。
リスト・・・例の『ホネのある奴リスト』のことか?
それはともかく、ゼルとサイファー、そして俺・・・
やれやれだ、前途多難な試験になりそうだ。

605:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 12:28:12 rDw5Ku7y0
ご無沙汰してました、FF8作者です。
思いのほか仕事がはかどって、昨日かえって来ました。
とりあえず帰りの機内でメモ書きしたものを投稿させていただきます。
>>582-586さん、リレーありがとうございます。
本編の大筋にそって書いてくださったお陰でつなぎやすかったです。感謝。
今後もいつにてもリレー参加してください。

606: ◆HHOM0Pr/qI
05/12/04 22:47:16 7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0283 4章 4節 これから(3)

「なにをつまらん話をしておる!
 特にセシル、おぬしは今の状況がわかっておらんのか!!」
がつがつ、がづっ。
憤怒に顔を染めたテラが、杖で三人を打ち据える。
「なるべく目立たぬようにすると、申し合わせておったではないか!
 こんなところで下らぬことをダラダラと……少しは頭をつかわんか!」
「テラ様、どうか落ち着いて!」
「じいちゃんの怒鳴り声のほうがまずいって!」
言っていることはもっともなのだが、自分はともかく、双子まで本気で殴るのはやりすぎだ。なるべく子供たちに打撃が行かないよう体で庇いながら、嵐の通過を待つ。
長く耐える必要はなかった。いくら頑健であろうとも、老人であることに変わりはない。デビルロードの影響もあってか、すぐにテラは息を切らし、その場にすわり込んだ。
いくら理由を尋ねても口を利かず、息を整え立ち上がってもまだ無言を通すテラに、セシルたちも根負けして場所を移すことにした。
みっつほど角を越えた先には共用の井戸があり、周辺が小さな広場となっている。朝一番の水を汲みに来た人々が、そこで列を作っていた。
異様なほど、静かだった。
音はある。風が生む葉擦れの音、桶に空けられる水の音、木と石が触れ合う音。水槽の縁に陣取った小鳥たちのまばらな囀り。だが人の声がない。
二十人近い女性が集まっているというのに、雑談はおろか、軽い挨拶さえ交わされていないのだ。
「……なんか、気味悪いな」
率直な感想を告げるパロムの声も、別人のように大人しい。セシルの目から見ても、やはり、荒んだ印象は否めなかった。
みな一様に顔を伏せ、黙々と自分の作業だけをこなして足早に去っていく。脇道との境に立つセシルたちに注目する者もない。たまにこちらを見たとしても、関わり合いを避けるように顔を背ける。
その女性も最初は同じように、無言のまま通り抜けようとした。セシル達が潜む路地を数歩ゆき過ぎて、あわてたように踵を返す。見開かれた眼は、まっすぐセシルへと向けられていた。

607: ◆HHOM0Pr/qI
05/12/04 22:52:54 7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0284 4章 4節 これから(4)

「セシル様……」
年齢は四十近くだろうか、呆然と彼の名を呼んだ女性の顔を、セシルはまじまじと見つめた。小豆色のエプロンドレスと、愛嬌のある丸い輪郭にはぼんやりとだが覚えがある。
「もしかして、ファレルの……?」
「ああ、やはり、お戻りになられたんですね……!」
セシルの返答に、女性は目尻に涙を浮かべ、何度もうなずいた。
「セシル様が旅立たれてからというもの、陛下はますます厳しくなられて……
 少しでも逆らった人は、片っ端から捕えられてしまうのです。
 奥様は一日中バラの手入ればかりなされて、本当に、もう、どうしていいか……」
「シャーロット」
数年ぶりの再会だったが、ひとたび記憶が刺激されれば、女性の名前を思い出すのは簡単だった。ただセシルが覚えている彼女はいつも陽気で、こんな弱音など吐いたことはない。
……主人が招いた客を相手に、愚痴を聞かせる使用人など何処を探しても居なかろうが。
「も、申し訳ありません」
セシルの呼びかけを制止と捉えたのか、シャーロットは口を噤み、半分だけ中身の入った水瓶を所在なげに抱えなおした。誤解だが、セシルも特に訂正はしない。
話を切り上げ、城に向かおうとしてセシルは異変に気がついた。
広場の端から、ざわめきが迫ってくる。草食獣の群れが互いに警告しあうように、人から人へと緊張が伝播し、空気の色を塗り替えた。
潮が引くように群集が道をあけ、異変の源とセシルたちの間が一直線に結ばれる。人垣が誘う視線の先には、ファブールのモンク僧。それも旧知の顔である。
「ヤンじゃないか、無事だったのか!」
続けざまの思わぬ再会に、セシルの顔が綻ぶ。しかしそれは、ヤンの険しすぎる表情と、彼に付き従う近衛兵の姿が目に入るまでの、ほんのわずかな間に過ぎなかった。

608: ◆HHOM0Pr/qI
05/12/04 22:55:34 7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0285 4章 4節 これから(5)

「お前は!」
「パラディンになったからわからないのか?
 僕だ、セシルだ!」
パロム、ポロムはもちろんだが、テラとヤンの間にも面識はない。彼が見知っている相手はセシルだけだ。
もしかしたら。祈るような気持ちでセシルは名乗りをあげた。
「わからいでか! 探したぞセシル!
 バロン王に逆らう犬め!」
「なんだよ、そっちこそバロンの犬じゃ……」
「パロム!!」
予期した通りの返答に落胆する暇もなかった。悪態の途中で尻餅をついたパロムの頭上を、黒い疾風が薙ぎ払う。ヤンが繰り出した蹴りの鋭さは、以前と比べて些かの遜色もない。それどころか、力強さを増してさえいた。
カインがそうであったように。
「ふん、それなりに骨はあるようだ」
「ヤン、君まで……」
以前に見せた、流れるような連撃を繰り出そうとはせず、再びセシルたちと距離をあけて構えを取るヤン。全身から殺気がたちのぼり、膨れ上がった筋肉が黒ずんだ肌を押し上げる。手加減を期待できる雰囲気ではない。
この場での説得をあきらめ、セシルは剣を抜いた。仲間は後ろに下がらせる。接近戦に弱い魔道士と、格闘に秀でたモンク僧。一度懐に入られたら、まともに呪文を唱えることも出来まい。
だが、ヤンから離れたことで、セシルと3人の間に空白が生まれてしまった。2人のバロン兵が割って入るに十分な隙が。
「……かかれ」
当然のようにヤンが命令を下し─
「はっ!」
当然のように、バロンの兵が従う。
それを契機に周囲で悲鳴が巻き起こり、遠巻きに様子を見ていた野次馬が我先にと逃げ出した。

609:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 23:14:30 rLKSZ+Tf0
>605
お帰りー。
機内でメモとは、殊勝なことでw
>606
おお、なんかまたオリキャラ出てきましたね。
戦う場所も酒場じゃなくなってますね、わくわく。

610: ◆HHOM0Pr/qI
05/12/05 00:00:06 7cpRJBSw0
引き続き捏造度が高めですが、ちょこっとイベントも進みました。

ff8作者さん、予想外の復帰おめっとうございます。8は未プレイなので注目しています。
582-586氏の文章も、ガーデン内部の日常や人間関係がわかりやすく描かれているので助かります。

ff6もいよいよ独自の掘り下げが盛り上がってきましたね~。

>565
真面目にノベライズスレよ、私は帰ってきた!!
レスごとの区切りは、連載ものの引きを意識しておりますです。

>566
……大変お待たせしています。色々と。すいません。

>567
そういっていただけると嬉しいです。RPGの世界の形ってよく議論の対象になるし、そっとしておくかどうかかなり迷ったので。
ただ4の世界は実際ゲーム中で映像が出てくるので、やっぱり時差はあるんだろうなぁ、と。
緯度とか南北回帰線とか地軸の傾きとかは知りません。知りませんってば。

>609
早速の感想どうもです。
セシル以外はジジイと子供とおっさん、とただでさえ華がないパーティーなのに、その上おばさんですよ……
場所が変わったのは、「子供連れで酒場に行くなよ!」という教育的配慮と「いちいち敵に見つかりに行くなよ!」という本音が交錯した結果です。


そうそう、今回出てきたシャーロットおばさんですが、最低限のプロフィールはもう出してしまったので、お好きなように使ってください>他の書き手さん方

611:299
05/12/05 00:01:31 B1hBa9bW0
>>◆HHOM0Pr/qIさん
お久しぶりです。
こうして返信するのは今回が初めてになりますが、毎度
不自然ない話の進行にはただ感心するばかりです。
オリジナルキャラの「シャーロット」はローザ一家の使用人でしょうか?
会話から察するに、なにやら母君も穏やかでない様子。

612:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/05 00:05:36 w5588Xvb0
と思ったら、上で言及されてますね。
被っちゃいました…

613:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/05 18:53:48 1ouSORyY0
まとめサイトがまた新しくなってるよ

614:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/05 22:07:21 kVXA5DxSO
竜の騎士団がUPされてたね

615:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/05 22:47:06 zkZMdcgU0
◆HHOM0Pr/qIさんGJ!そしてお帰り!
これで4の基盤となる御三方が揃ったなあ、激しく期待してまつ

管理人さんも乙ー
本編の方の更新も頑張ってください
ところで竜の騎士団、副長がカインの母親に恋い焦がれてた辺りのくだりが消えてる・・?

616:494 ◆yB8ZhdBc2M
05/12/05 23:04:05 N0ZQWWUM0
>>615
すみません、その部分コピペするのわすれてました。
今修正しました。
◆HHOM0Pr/qIさんお帰りなさいませ。
4の作者陣が揃って良かったです。
良い作品期待しております。
他の作者さん方も頑張ってください、こちらも更新頑張ります。

617:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/07 16:05:19 XP8Jsf0bO
保守

618:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/07 23:30:12 oWeZJaw+0
保管庫乙ですー。
最近リニューアルが活発ですね。

619:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/07 23:41:51 5H/rywhT0
保守

620:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/08 01:50:00 VvLLKoVt0
そろそろ次スレの季節かな?

621:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/08 01:52:01 WJ06S3Jx0
448KBだし、まだいいんじゃないか?


622:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/08 02:01:49 VvLLKoVt0
そだな

623:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/10 11:41:02 vUG6urUq0
保守。

624:299
05/12/12 14:48:24 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0286 4章 4節 これから(6)

堅牢な鎧を纏った兵士が一気に距離を詰めて、後方のテラ達に襲いかかろうとする。その様子は
正に、蹂躙するかのような勢いだ。
「みんな! 今助ける―」
遅れて加勢しようと踵を返し、歩を進めようとするセシルであったが、後方つまり先程までセシル
向き合っていた相手はそれを許すほど迂闊ではない。
すぐさま、振り返りヤンの攻撃に備えようとするがその時には既に寸前まで迫っている。
しまった―!
咄嗟に回避行動に移るが、あまりにも急すぎるため、セシルは大幅に体制を崩し、地面に腰をつく。
だが、予期していた追撃がこない。
「何故だ!」
スキとみなし、すぐに立ち上がり剣を握り直すが、疑問が潰える事はない。
「このまま倒してはつまらぬからな……だが、次はこうはいかんぞ」
理由はどうあれ、命拾いをしたということか。要は情けをかけられたというべきか。
「安心しろ、奴らには手を出させん」
そう言ってセシルの後ろへ顎をしゃくる。
釣られるかのようにして眺めた視線の先には、兵士達が大太刀を振るっている所だ。
「その為にお前の仲間達の相手をしてもらっている。これでいいだろう」
一騎打ち。第三者の加勢を許さぬのだろう。
「分かったよ……」
何時になく、神妙な声色でセシルは同意する。
ちらりとテラ達の様子を伺う。相変わらず兵士の強撃は圧倒されるばかりの勢いであるが、三人とも上手く立ち
回っているようだ。兵士は攪乱され、疲労の色が見て取れる者もいる。
だが、即座に唱えた微力の魔法では手にした大盾に空しく弾かれるだけだ。
強大な魔法を撃つには場所にも状況にも恵まれていない。決着には時間を有しそうではあった。
このまま上手く、凌いでくれ。
心の中でそう願い、ヤンに向き直る。

625:299
05/12/12 14:57:38 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0287 4章 4節 これから(7)

「では……」
それを返答と受け取ったのか、攻撃は再開される。
今度はセシルとて万全の覚悟を持っての攻勢である、事前のようなスキをみせるまでもない。
だが、それでもファブールのモンク僧の中でも屈指の実力と断言できるこの男の技とぶつかりあうのは
一筋縄ではいかぬ事であった。
次々と技と技を組み合わせ、それを断続的にうちつつける。
それでいて単調でなく、複雑化したそれは大きなダメージを与えはしなくとも、受け手の体力を確実に
削ぎ落としていく。一連の行動にはスキというものが全く存在しない。
モンク僧は速さを活かし、己の肉体を武器に戦う者である。
鎧を着込み、剣を手にし、それらの武器を最大限に使用して敵を退けるセシルのような重騎士のような者
にとって相性の悪い相手なのかもしれない。
実力が同じ程度であるのなら尚更だ。
一進一退の攻防であるが、性質上ヤンが押している。
見る者を圧倒させるかのような瞬速の拳がセシルの鎧を打ち据える。
どうすれば……
続く打撃はセシルでなければとうの昔に根を上げていただろう。そんなセシルでもこの状況から反撃に転じる
事は容易くはない。
それに、相手はあつての仲間だ。向こうは手加減無くとも、こちらには最低限ヤンへのダメージを抑えなければ
ならないという前提がさらに両者の対決を一方的なものにしている。
「どうした! この程度か!?」
その有様に呆れたのかヤンは挑発と取れる発言をした。
「ヤン! 止めてくれっ! ここで僕たちがぶつかりのは無意味だ!」
触発され口から出る言葉は自分でも分かるほど意味をなさないものであった。
「何の事を言ってるのか皆目見当がつかんな!」
今のヤンにとってセシルの存在はかつて志を共にした仲間であるという
認識はからきしないのだろうか。

626:299
05/12/12 16:17:08 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0288 4章 4節 これから(8)

「じゃあ、この場を引いてくれるだけで良い」
「ふざけたことを!」
セシルの説得を弾くかの様に脚からの技が旋回する。
その攻撃はセシルの顔をかすめる。
「!」
それだけでも外れたとは思えないほどの威力だ。セシルは小さな悲鳴を漏らす。
「ならば!」
太刀を横に薙ぎ、何とかヤンを後退させる。
同時に自分も後方へと下がる。距離ができた。
接近戦に持ち込まれなければ多少の余裕は生まれるであろう。その間に体力を回復しつつ、策を練ろうという
企てであった。
しかし、セシルは誤算をしていた。モンク僧は遠距離に於いても攻撃の手段を持っていることを……
ヤンは地面を蹴り、勢いをつけ脚を前面にして飛びかかってくる。
威力こそ通常の蹴りに比べると落ちるが、加速をつけたその攻撃の効果範囲は広い。
生半可な回避行動では逃げ切れないであろう。
迷っていては駄目だ!
覚悟を決めて強襲するヤンを剣で迎え撃つ。
防御しても今のセシルにはマイナスに働くだけだ。それならばいっそ打って出よう。そう判断した。
咄嗟の決断であったが、一応の成功を成した。
剣先を振るった一撃にヤンは直撃し、大きく後ろへと跳ね返った。
「やっとやる気になったようだな……」
受けた傷を抑えつつ、顔に笑みをつくる。

627:299
05/12/12 17:02:34 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0289 4章 4節 これから(9)

「ヤンとはやり合いたくはないが……迷うだけではだめだ」
「そうでなくてはな」
理由はどうであれ、親愛なる友と剣を交えるのは誰にとっても耐えきれない事である。
カインの時も相当の決心をしたが、まだ万全でなかったのかもしれない。
だが、あれからの短期間の間、自分には目まぐるしいことの連続であった。
その中でセシルの想いも数多くの交錯を経て、変化があった。
迷うならば戦うな。それが、どんな相手でも。以前の様な負け方は決してしてはならない。
だが、目前の敵を単純に退けてはだめだ。
試練を乗り越えた自分にならあるいは……
攻撃は相変わらず厳しかったが、迷いを忘れ全力で立ち向かうセシルには不足はなかった。。
連撃には堅固な守りで対応し、一撃の重さに賭ける。実直な一撃は迷いの太刀とは違い、正確さがある。
「さっきとは別人のようだな!」
攻撃をやり過ごしながらもセシルは反撃をする。
描かれた剣閃がヤンの鋼の肉体を掠める。
「はは……いいぞ! いいぞぉ……!」
ヤンの技は確かに厳しかったが、戦う中、一つの変化が見られた。
最初は漫然の怒りと殺気があったが、それがだんだんと薄れつつあるのだ。
もしかするとこうしてぶつかり会う事で、かつてのヤンを取り戻せるかもしれない。
そのような確信を持ち剣を振るい続ける。相手の憎しみは殺意だけを断ち切るかのように……

628:299
05/12/12 17:22:39 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0290 4章 4節 これから(10)

「は!」
何度目かの攻撃を受け止めヤンの声は曇りの無き明確なものであった。そう、直前までとは違う。
「セシル……殿か……?」
「気づいたのか!」
「ああ……自分が何処にいるのか、何をしていたのかは……あの時以降の記憶がまるで思い出せないが……
邪悪なる気配が私に何かを囁きかけていたような気がする」
あの時とはファブールを出航した時の事を指しているのだろう。
「記憶喪失だったのか?」
「おそらくはな。だが、今のセシル殿からは以前、行動を共にした時とは違う事は分かる。どうやら
迷いを克服できたようですな……」
「ヤン……」
穏やかな口調に思わず自分の声も震える。
「前にも言ったと思うが私は剣術の疎い、だが、セシル殿は間違いなく強くなられた。肉体的にも精神的にもな
良い太刀筋でいらっしゃる……」
評する声を聞きつつセシルは剣を収めようとする。
「さて、この状況をどうするかだな……」
「ヤン様!」
テラ達と戦闘を繰り広げていた兵士達がこちらにやってくる。
「どうした?」
ヤンはセシルの時とは違い、暗い声で応対する。つまりはこの兵士達を率いてたときの声だ。
「すいません。奴らを捕らえられませんでした。何分素早い者であって……」
「そうか。良かった」

629:299
05/12/12 17:54:02 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0291 4章 4節 これから(11)

「は?」
片割れの兵士が疑問とも自問ともつかぬ声を上げる。
無理もないであろう。普通は叱りの声が飛んでくると思ったのだろう。しかし、実際は咎めなしどころ
か安堵に近い声を漏らしたのだから。
その上、声の調子が急に変わった事も彼を驚かせた要因の一つであった。
疑問の暇も無く、彼にはもう一つの災いが降りかかる。
急に視界が回る。
今まで町を見ていた目が、今は空を見上げている。
「これは……」
自分がヤンの足払いを受けて転ばされたと気付いたのは、地面の体が付いた後であった。
「あぐっ!」
「ヤン……様! これは一体どういうおつもりなのですか!」
痛みに呻く彼の代わりにもう一人の兵士が疑問を代弁する。
「見ての通りだ。今を持って私はバロンから抜けさせてもらう!」
「裏切るというのか!」
「そう取って貰って構わない」
「く……」
しばらく考えていたのだろうが、やがて意を決したかのように剣を抜く。
「ここで引くわけにはいかない……」
その声に呼応するかのように、救援に表れた他の兵士達も剣を抜く。
「あなたがいくら凄い実力を持とうが、今は随分と疲弊している。それにもう一人も……この数を相手に
して勝てますかな?」
見る限り兵士は五人。それも近衛兵である。

630:299
05/12/12 18:07:33 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0292 4章 4節 これから(12)

近衛兵団に所属するその兵士達の主な任は王の護衛である。
国家の中心人物の信頼を全に受けるこの兵士達の選定には厳重な試験が有り、陸軍の中でも屈指の
実力者を中心の組織されている。
単純に剣を交えるのならセシルやカインにも引けを取らない者達ばかりであろう。
その近衛兵が四人。状況は向こうに傾いている。
だが、そんな中でセシルとヤンの表情は比較的穏やかである。
「手伝ってもらえるか、セシル殿?」
「勿論だよ……」
「では行くぞ!」
「くっ……」
その余裕な有り様に少しばかりたじろぎつつも近衛兵の一人は剣を払ってきた。
「!」
だが剣を振るった後、その兵士は驚愕した。
確かに捕らえたと思ったヤンが忽然と姿を消していたからだ。
満身の剣の一撃は石で舗装された道を砕き地面を露出させるだけにとどまった。
慌てて視線をあちこちに巡らした兵士には更なる混乱が襲う。
上空、朝日を背にした影が自分達の方向へ降下してきたからだ。
兵士達にとっては身軽に戦いの場を駆けめぐる者を見たのは初めてであったのだろう。瞬時に剣撃を
跳躍して回避した芸当に思わず迎撃する事も忘れてしまう。

631:299
05/12/12 18:21:36 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0293 4章 4節 これから(13)

ヤンはすかさず兵士達の中心に着地、未だ空を見上げる兵士達に一気に接近し、一撃を繰り出す。
大盾の内側から放たれた攻撃は鎧越しに、大きな打撃を与える。
一人が倒れるのを確認するとヤンはすぐさま次の対象に移る。
そうしてまた同じ攻撃を繰り出す。
「く……離れろ!」
開幕後、あっという間に半分の兵士を倒されたの兵士は咄嗟にそんあ命を出すが、彼らは一つ重大な事を
失念していた。
「かかったな」
見ると、セシルが兵士の一人の目前まで迫っていた。
たちまちの内にセシルは剣を振るい、兵士の剣を遥か彼方へはじき飛ばす。
キィインと金属のぶつかり会う音と共に、剣は弧を描き、飛んでいく。
拾いに行くにはかなりのスキになるだろう。
「これで戦えるのは一人だけだ。どうする……?」
「くっ!」
勝ち目がないと思ったのだろう。一人が踵を返すと、次々と身を翻していった。
倒れていた者も何とか立ち上がりそれに続いた。もう抵抗する気力もないようであった。
「セシル殿……逃がして良かったのか?」
その姿を見送りながらヤン。
「彼らを叩いても何も出やしないよ……本当の敵はもっと別の所にいるんだ……」
「そうですか……」
それ以上は何も追求せず、ヤンは地面へとへたり込んだ。
続く、戦いに疲れたのだろう。
セシル自体も疲労を感じ流れる汗を拭う。

632:299
05/12/12 18:23:59 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0294 4章 4節 これから(14)

「礼を言っておかねばなるまいな……」
「え?」
お互い大分の体力が戻ってきたときヤンが突然切り出す。
「私は操られていたのかもしれん……ゴルベーザという者に」
あのカインという者の様になと付け加える。
「だが、確かにいえるのは私は記憶喪失の所を利用されたのだ……」
セシルは黙ってそれに聞き入った。
「今になって言うことができるが、私はゴルベーザという者にもの凄い憎しみを持っていた。祖国の者を
無惨に殺し、クリスタルを奪っていったあの男に。そして王もあのような有様に……」
「ヤン……」
「私怨に支配されていた。今ではそう思っている。あの時、王にセシル殿との同行を進言したのも、あいつを
この手で倒したいと思っていたからなのだ。記憶を失ってもその怒りは消えていなかったのかもしれない……
そこにゴルベーザはつけ込んだのであろう。あろうことか私は憎むべき相手の手助けを……そう思うと今でも
悔しい想いは消えない」
ヤンは立ち上がる。
「だが、今の気持ちでは決して勝つこと等は……今のセシル殿の太刀を受けたらそう思った」
セシルの方に向き直る。そして言う。
「もう一度、あなたと一緒に戦いたい。過ちを犯してしまった事は認めるので―」

633:299
05/12/12 18:28:51 O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0295 4章 4節 これから(15)

「止めてよ。ヤン」
「セシル殿……」
それが拒絶の言葉に聞こえたのか、ヤンは落胆の表情をする」
「いやっ! そういう事じゃなくて……今更そんなに改まって言われても困るって言いたかっただけだよ……」
慌てて、セシルも訂正する。
「つまりは!」
「うん。これからも宜しく!」
そう言って手を差し伸べる。
「はい!」
ヤンは喜んでセシルの手をがっしりと握る。
「流石はセシル殿! 嬉しいですぞ!」
「だからそんなに固くならないで。君が生きていただけでも僕は嬉しいよ……それにそんなに特別視
なしないでくれ……」
「分かりました」
お手上げだといわんばかりにヤンは顔を赤める。
「それとヤン……」
「はい」
「ギルバートとリディアはどうなったか知らないか?」
これだけはセシルは今でも責任を感じていた事であった。
「リディア殿なら……」
「知ってるのか!」
「海に沈んだ後、意識が消えかける前に確かに見ました。あの船を襲った怪物に飲み込まれていった……」
「な……!」
そのヤンの言葉はセシルを凍り付かせるには充分すぎる位衝撃的なものであった。
「可哀相な事をした……」
「ではギルバートは!?」
ヤンは首を振る。
「分かった」
せめてギルバートだけは―祈るような気持ちであった。

634:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/12 18:31:27 O9+lnhPw0
以上です。
随分と時間をかけた投下となってしまいました。
申し訳ありません。

635:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/12 18:39:27 GMPKSex80
リアルタイム乙です!
にしても4時間書き続ける気力が凄いですw
ただ、差し出がましいようですができればテキストにまとめて
一括送信した方がいいと思います……。
しかし戦闘描写やっぱうまいですね。

636:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/13 08:30:12 tvQblhinO
(* ゚Д゚)おぉぉ乙!
FF4がやりたくなった!

637:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/13 14:33:21 U5Xtuv1M0
>>FF8
スコール視点がコントローラー握ってFF8プレイしている時の自分自身と
うまく重なってくれるような展開の仕方には、いつ見ても感心させられます。
もうずいぶん前のことなのに、ゼル登場時のムービー見た時の心境が
スコール通して蘇って来ました。さり気なく相関関係をおさらいする展開の
11-15の展開も、運びとして巧いなと思いました。

>>FF4
静かな中の再会の描写から、一気に戦いの場面へと繋ぐ連携が本当に
凄いと思った。やっぱりこのスレの根幹を成しているノベライズだと感じる
一方で、GBA版が出たら間違いなく買おうとしている自分がいる。購買意
欲(と言うよりも実際はFF4への興味ですが)を持たせるような書き方なの
は、仕様なのかなと疑うほどにw



とにかく乙です。

638:FF6 :ナルシェ援軍
05/12/13 14:45:19 U5Xtuv1M0
ff6 - 07.5 narche


 モーグリという生物の生態については研究途上であり、未だに解明されていない
部分も多い。
 一般的にモーグリは警戒心の強い動物として知られている。人間に懐く事は
ほとんどなく、相手が自分に危害を加えないと分かるまでは近づくことはもちろん、
人前に姿を見せようとすらしない。そのため、こちらから手を出さなければモーグリが
攻撃して来る事はないと言って良い。
 また愛くるしい見た目とは裏腹に、いったん攻撃性をむき出しにすると、どちらかが
倒れるまで攻撃をやめない獰猛な一面を持っている。遭遇すること自体きわめて稀
だが、万が一にでも出会してしまった場合、むやみに手を出すのは危険だ。
 主な生息域は寒冷地の洞窟などで、現在ではナルシェ炭坑の奥地のみが確認
されている。体中を覆う白い体毛は、恐らくそういった環境に適応した進化を経て
得たものなのだろう。
 群で生活し、リーダーを頂点とした独自のモーグリ社会を築いていることから、
彼らの知能は相当に高いものと推測される。
 そんなモーグリの生態について一番の謎とされているのが、背の部分に生えて
いる「ハネ」の様な形状の器官だ。鳥やその他昆虫類などの持つそれと同様の機能を
有するのかは謎である。しかし筆者の知りうる限りでは、モーグリが空を飛んでいる
という記録などは他のどの文献などを調べても見あたらない。このことから、空を飛ぶ
ための器官ではないというのが主流の説である。そうなると、この器官は何のために
存在しているのだろうか。
 モーグリについての謎は、ここに記した他にもたくさんある。そしてそのどれもが、
解き明かされないままである。

                    ***

 自称トレジャーハンターことロック=コールは職業柄、世界各地の文献を目にする。
もっとも、彼には彼自身の目的があって様々な文献(それこそ古文書から研究書物など)
を漁るのだが、モーグリについて書かれた物は珍しいと、今でも記憶に焼き付いている。
ロックにとってモーグリに関する知識の多くはこの文献の記述を拠にしていた。


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