05/11/08 03:40:01 rabNjpOj
>>443
どうでもいいことだけどff6じゃなくてff8だな。
451:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 11:13:21 OUszz8/9
FF6で思い出したけど、433さんはいなくなったなぁ。
あの最後のケフカの話からどこに転んで行くのかが未だに気になる。
452:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 19:07:32 6xe/tyoJ
前提としてやっぱり書いてくれてるんだから感謝してなきゃいけないと思う。
それでいて「こうしたらいいんじゃない?」っていうのは全然ありだと思う。
ただ「この書き方だめ、なってないね」とかいうのはいらないけどね。
FF4さんおつかれです!めちゃ感動しました!
やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。
設定についてのことだけど、セシルは幼少期から暗黒騎士の道を歩んでたの?
王が入れ替わったのは本編始まる少し前のはずだから、それまでは兵には
暗黒騎士を使ってなかったんじゃないかな。
ちなみに>>430の「幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとっては」ってやつね。
とにかく面白かったです。次も楽しみにしてます。
453:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/09 23:50:33 kAzBdZqX
いや、熱意とかガッツとかが凄いのは認めるんだけど、それが裏目に出てるって話なんじゃ…>AC
454:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 09:45:55 Q8vVASTh
>やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。
こういうのは言わないほうがいいと思うな。
褒めてるつもりなんだろうけど、
同時に他の作者を貶めていることに気づいてほしい。
455:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 17:36:29 V+HWyvQ+
貶めてない事に気付いてほしい。
もしFF4の小説が不評だったら貶めてる事になるけどそうじゃないし。
他の作品が面白くないなんて一言も言ってない。
456:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:23:48 AkXmxISY
貶しめていることに気付かない無自覚が正直おそろしい。
文章と言うものは、「こういうつもりで自分は書いた」と言う書き手の自覚は意味がなく、むしろ些末で、
「こう受けとめられる」と言う客観こそがネットにおける社会性だ。
書き手と読み手のギャップが少なければいいけれど、
それは互いに別の価値観があるゆえに常に緊迫を孕んでいて、とても難しい問題だから、
大衆掲示板に意見を書くときは細心の注意を払わなくては…。
先日から、感想の書き方に気を付けようと言う流れがあるなか、
あの文章が貶しめていないとするなら、それは若干優しさに欠けます。
相対的な賛辞のことばしかもたない人間の感想など誰が乞うのです?
貶しめたかどうかと言う一個人の思惑よりも、その感想の書き方に疑問を感じる。
仮にも「真面目にノベライズ」された他人の文章を評するならば、
その評する側も真摯な姿勢でことばを選んでいただきたい。
ふじ
457:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:30:06 vOlD0bRq
ふじってなんだふじって・・・
まぁ、あの褒め方はないよなあと自分も思った。
他の作者がどう思うんだ?と、ひやっとする。
しかしFF4、いいな・・・
458:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:05:51 fFy5TL+2
なんだこの流れ
459:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:08:53 V+HWyvQ+
まあそう言われればそうなのかなと思うけど、そこまで長々と文章書かれるほどのことなのかこれって。
1,2スレ目はこんなの無かったのになー。匿名掲示板なんだし。
まあアンタも他の書き手みたいだから癪に触ったんかもしれんけどね。
460:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:46:01 kxCSjsuv
少し前から気になってたんだが、微妙に釣ってる様なレスするやつが紛れてないか?
スルーしてノベライズを楽しめばいいのにと思う
461:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 00:29:40 zSz53lpn
なんつーか、書き手さん皆様GJ。
自分は筆力ないのでマジ羨ましいです。どうしてもバトルが書けない・・・。
462:297
05/11/11 00:46:50 rcz2kYh6
299さん大作乙です。
後ろ向きなセシルの考え方が総仕上げのように積み重なってて、
いよいよという話の運び方は流石です。
これでやっと長い一段落にさしかかりましたね。
>>461
お互い素人なんだから是非書いて。
463:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 01:02:58 vNG5QWNd
>>461
読みたい。
464:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 11:46:04 Sv7wXisJ
読みたかない。
これ以上、駄文の羅列は御免蒙る。
465:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 12:58:28 y+q/I3ju
いや~
なんか最近トゲトゲつーか険悪だなあ
全体的に書き手が減ってる感があるんだけど
理由はこの辺り?
466:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 14:42:56 DUu3EPlj
かもな。
467:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 17:47:44 6wU0Q4FD
今まとめのFF4読んでるんだけど、なんか本当に良い。クオリティ高いとかそういうのも勿論なんだけど、
ゲームじゃなくて読み物として集中できるから、セリフや描写の一つ一つに感動できて。
ノベライズしてくれてる人たちにすごい感謝。ありがとう!
468:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 22:13:54 oaF62BMD
>>464
露骨過ぎるぞ馬鹿
469:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 10:28:06 YLjl2o1t
不特定多数の耳目が集まる掲示板。
作品を投稿するのは自由だけど、読者が何を言うのも自由だと思う。
その一方、腫れ物に触るように作者の機嫌をとるのもまた自由だが。
たとえそれが批評の名に値しない罵倒の類であったとしても。
それが嫌なら掲示板に投稿などすべきではないよ。
個人のサイトでやればいい。
470:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:08:17 uoXxOl3N
いかにもプギャらしい理論だ
471:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:28:20 YLjl2o1t
プギャと決め付けるのも、もちろん自由。
駄作と罵倒するのが自由であるのと同じ。
472:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 12:01:44 XpZlzH5+
>>469
理論についてはおいといて、
淡々としていてなんか笑った。
473:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 13:26:30 uoXxOl3N
自由と横暴を履き違えるのはよくないな
474:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 19:02:22 eeDKxHpE
さて、このような議論はSSを投下しにくい雰囲気にするから
そろそろ終了して作品が出るまで、みんなROMってようぜ
475:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 22:56:30 pMSClUVQ
賛成~!
476:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 14:09:34 87WBS+ZN0
まったく、凶暴な名無しどもだ
わけがわからんよ
477:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 19:24:53 IZ4AfpAV0
管理人さんはご健勝じゃろか・・
あと5の人とか。
478:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 23:59:08 RphqfPvm0
勝手に感想。
>>FF7AC
実際に見た後で読み返すとその細かさには頭が下がります。
ただ他のレスにもありましたが、もう少し削っても良さそうですね。
そのかわり、FF9みたくATEがあっても面白いかも知れないかなと思ったり。
>>FF8
一人称で語られる戦闘の様子は、緊張感がありながら安定感のある
文章運びで読みやすかったですし、巧いなと思いました。
ラグナの伏線の事はここを読んで気づきました。そんなきめの細かさもGJ!!
>>FF4
未プレイながらも毎度楽しく拝読させて頂いてます。前知識がなくても
すんなり入り込めるあたり、ちゃんとキャラクターの背景も描かれていて
読み物としてFF4に初めて触れる自分のような立場にとっても優しく
丁寧に作り込まれていると言う印象です。
書き手さんGJ!
479:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 00:26:41 hs43zf740
318です。
誤解や混乱を招くような文章投下してすみません。気づかない点をご指摘下さった
>>386には感謝です。
個人的な感想になりますが、身になるレスが多く頂けて嬉しく思います。ありがとうございます。
480:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:31:12 hs43zf740
他の土地に暮らす者に比べれば慣れているとは言っても、雪道を走るのは楽なこと
ではない。凍結した地面の上に積もった新雪を踏みしめながら、彼は背後に迫る
帝国軍よりも先に炭坑の奥へ辿り着かなければならなかった。
炭坑を守る最後の切り札、それを解放するのが彼に課せられた任務である。
走り続ける男の脳裏によみがえるのは、今見たばかりの悪夢の光景。魔導アーマーに
搭乗していたあの無表情の少女は、雪の上に僅かに残った仲間の骨を踏み越えた。
新雪を踏みしめるのとは明らかに違う、骨が砕かれる小さな音が耳から離れない。
数時間前まで、それは確かに会話を交わしていた仲間だったのに。
(くそっ、化け物め……!)
思わず足がもつれた。辛うじて転倒は免れたものの、派手に雪を蹴散らしながら大きく
体勢を崩した。それでも炭坑へ向かう足は止めなかった。
仲間達の命を次々と飲み込んでいった魔導アーマー。あんな化け物に対抗できる力は、
もう1つしか残されていなかった。
それはこれまで、忌むべき存在として炭坑の奥で眠っていたもの。呼び覚ますためには
自らの命を差し出す覚悟さえも必要とする程の存在。しかし、今となっては頼れるのは
それだけだった。
帝国に踏みにじられた仲間達の命を、無駄にするわけにはいかない。
彼は意を決し、檻の向こうの闇を見つめた。
481:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:34:50 hs43zf740
***
てっきり炭坑の内部はバリケードやトラップなどが仕掛けられ、ナルシェ側は
全力で侵入を阻んでくるだろうと予測していた彼らにとって、炭鉱内はあまりにも
退屈な場所だった。おそらく洞窟に自生しているであろうモンスターに何度か
遭遇しただけで、苦もなくここまで到達することができた。
炭鉱内ではじめて彼らの行く手に立ちふさがったのは、木で組み上げられただけの、
申し訳程度の防壁だった。
しかしこんな物では時間稼ぎにもならないだろう。
「俺がやる、下がってろ!」
男の一人が前へ出て言い放つと、魔導アーマーごと体当たりして木製の防壁を
破壊した。地面に散らばった廃材を踏みつけて、男は前方へ顎をしゃくった。
そんな相棒の姿を見て、奴らしい力業だな、と、後ろに立っていた男は小さく笑った。
その直後だった。
たった今壊したばかりの防壁の先に広がる闇の中から、逃げるように走り出てきた男
―ナルシェのガードと対峙する。
「幻獣はわたさない! ……ユミール、行け!!」
狂気にも思える叫び声と共にガードが脇へ飛び退くと、背後から突進してきた得体の
知れない―巨大なカタツムリのようにも見える―怪物が魔導アーマー三体の前に
現れた。彼らは反射的にレバーを握り身構える。
482:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:36:33 hs43zf740
「待てよ! コイツは……」
これまでに見たことのない異様な姿の怪物を目の前に、ビックスが声をあげた。
戦場における彼の知識には全幅の信頼を置いているウェッジは、相棒から
もたらされる情報を黙って待つことにした。
「思い出したぜ!」
「知ってるのか?」
その問いに頷いたビックスは、左右のレバーを握りしめると視線を前方へ向けた
ままで言葉を発した。今し方見せた豪快さとは打って変わり、慎重な物言いだった。
「以前、雷を食う化け物の話を聞いたことがある……」
相棒の言葉に、以前どこだかの任務で見た資料の記述を思い出したウェッジが、
記憶の中の記録を辿った。
「殻に強力な電流を蓄えるという……」
「そうだ。殻には手を出すなよ、ウェッジ!」
「わかったぜ!」
そう言って再び戦闘態勢に入った二人の横で、“少女”は何も語らずにユミールを
見つめていた。
最初に攻撃を仕掛けたのはビックスだった。こんな局面でもファイアビームを使用する
辺り、筋金入りの横着者なのだろうかと疑いながら相棒を横目で見やったが、パネルを
操作する手を止めることはなかった。
相棒から遅れること数分、青白い光を纏った冷気の固まりがユミールめがけて一直線に
伸びる。ブリザービームだった。搭載された兵器の性能と、目標物自体が巨大だった事も
手伝って、それは見事に命中し相手にダメージを与えた。
これで目の前の怪物は魔導アーマーからの攻撃を二度もまともに食らったことになる。
舞い上がった土埃の中に目を凝らし、与えたダメージの大きさを測ろうと試みる。
しかし、ユミールは倒れていなかった。
薄々分かっていた事だが、現実を目の当たりにしたビックスのレバーを握る手にうっすらと
汗が滲んだ。こんな風に恐怖と高揚が入り混じった心地を、戦場で味わうのはずいぶん
久しぶりのように思えた。
483:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:39:38 hs43zf740
(……思ってたより歯ごたえがあるな)
数分、数秒でも早く敵にダメージを与えるためにと選んだファイアビーム。
後に続いたウェッジはねらい通り敵の弱点をつくであろうブリザービームを
選択してくれた。だが、期待していたほどのダメージは与えていないらしい。
ビックスは次の手を決めあぐねていた。
隣に並んだ“少女”にちらりと視線を送った。無表情のまま、彼女は手元の
パネルを操作している。魔導アーマーの先端にエネルギーが集まり始めた時、
地が唸るような音が耳に届いた。
音と共に搭乗していた魔導アーマーごと大地が揺れ始めた。ユミールが殻に
身を隠そうとしている、その前兆だと気づいたビックスは声をあげた。
「……待て! 撃つな!!」
その叫びが無駄になることは分かっている、けれども叫ばずにはいられなかった。
このまま撃てばヤツの殻に直撃してしまう。だが、ひとたび実行した操作の取り消し
機能は搭載されていない。いったん選んだ攻撃を、止めることはできなかった。
魔導アーマーの強大な力は恐らく設計者自身の予測した以上のものだったはずで、
攻撃を止める場面を想定する必要などなかった。そう言うことだろう。
「……くそっ!」
俺が設計する時は、コマンドの取り消し機能を搭載してやるのに。と、今さらになって
無駄な反論を呟いてはみたが、事態を変えることはできなかった。
地鳴りがやんだ直後、“少女”の放った攻撃は見事にユミールの殻に命中する。
程なくして、殻から大量の放電が始まった。
魔導アーマーに搭乗しているとはいえ、実体は生身の人間である。ユミールの殻から
放たれた電流が、文字通り彼らの身体に落とされる。言葉にならない喘ぎを漏らしながら、
彼らは必死でユミールの反撃に耐え続けた。
幸か不幸か、体力の半分ほどを削られても彼らはまだ生きている。攻撃がやむと
すぐさま顔を上げた二人は、この魔導アーマーに搭乗して以来、恐らく初めて使うで
あろう機能を実行するべくほぼ同時にパネルを操作し始めた。
484:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:44:51 hs43zf740
ヒールフォース。搭載された中で唯一の回復機能である。
しかもこの優れた回復機能のお陰で、搭乗者が一撃必殺の技を食らわない限りほぼ
全快にまで体力を回復することができた。つまり魔導アーマーに乗っていれば無敵を誇る、
まさに最強の戦闘マシーンだと実感する瞬間であった。
「畜生、手がまだ痺れてやがる。もうこんなのはゴメンだぜ」
「……ああ」
そんな言葉を交わしていると再び大地がうなり声をあげた。今度は殻に隠れていた
ユミール本体が姿を現す前触れだった。
ビックスは“少女”に向けて命令を下した。それは回復よりも攻撃を優先させるものである。
その声に驚いた表情を向けるウェッジに。
「情でも沸いたのか?」
と、揶揄するように尋ねた。ウェッジは短い否定の句と共に首を振った。彼曰く、今は
攻撃よりも回復を優先させるべきなのでは? という主張に。
「……とりあえず回復なら俺らでもできる。だが、ヤツには独自の機能が搭載されて
いるだろう?」
そう言って“少女”を乗せた魔導アーマーを指さした。
「なるほどな」
やはり戦場での判断能力は相棒の方が優れていると認めざるを得ない。頷いたウェッジが
パネル上の操作をはじめると同時に、横の方から耳障りな機械音が聞こえた。
―魔導ミサイルか。
彼の予想は的中し、少女の搭乗した魔導アーマーからそれが放たれる。少しだけ肩を落とした
“少女”に、疲労を見て取ったウェッジは素直な感想を呟きながらパネル操作を続ける。
「……不死身じゃないのか」
苦笑しながらレバーを引くと、今度は“少女”に向けてヒールフォースを放った。
直後に轟音がしたかと思ったら、続くように相棒の声が鼓膜を揺らす。
「おい、見たかウェッジ!!」
魔導ミサイルの与えたダメージは、これまでのビーム系とは比べ物にならなかった。ビックスの
もくろみが見事に功を奏したのだ。
「殻に閉じこもっちまう前に、一気にケリをつけるぞ!」
一時はどうなることかと思ったが、やはり魔導アーマーと互角に戦える敵などこの世には
存在しないのだ。
485:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:48:07 hs43zf740
時間はかかったが、魔導アーマーの性能を発揮するにはこれぐらいが丁度いいのかも
知れない。攻撃の中止機能を追加させる事とあわせて、研究所へ提出する戦闘記録には
そう書こうなどと考えながら、戦闘は幕を閉じた。
***
炭坑の一番奥深くに、目的の物を見出した一行はその前で立ち止まると、岩の上に
祀られるようにして安置されたそれを見つめた。
「これが……氷づけの幻獣?」
その不思議な姿形に見とれながら感無量と言わんばかりにため息を吐いた相棒の横で、
ウェッジが不安を露わに呟いた。
「おい! なにか様子が変だ? ……なにか不気味な……」
言いかけて不意に聞こえた機械音に視線を向ければ、“少女”が幻獣に歩み寄ろうと
前進していた。
誰からの命令でもなく、“少女”自らの意志で動いた。この“少女”はやはり……。
(生きて……いる)
兵器などではなく、我々と同じように生身の人間なのではないか。先程の戦闘でも、
ユミールからの反撃を食らった彼女は確かに疲弊した様子を見せていた。自分たちと同じように。
―もしかすると……。
ウェッジの思考を遮るように、不気味な光が炭鉱内を照らし出す。歩み寄る少女を、
まるで氷づけの幻獣が拒んでいるようにも見える。
「な、なんだこの光は! ……うわわわわっー!!!」
なにも分からぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ウェッジの見た真実を誰も知ることはない。
486:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:52:32 hs43zf740
「な、何だ?! ウェッジ、おい!! どこへ消えた!?」
―よせ。なんの冗談だ!?
彼にとってそれは初めて味わう恐怖だった。戦場に転がっている死の恐怖、そんな
ものには慣れていたはずだった。しかし、今感じているのはそれとは別のものだ。
―もしかすると我々は、とんでもない過ちを……。
「あっ、か、かっからだが……」
なにも知らなぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ビックスの思った真実を誰も知ることはない。
残された少女は誘われるようにして氷づけの幻獣へ向けて歩を進める。拒むように
何度も光を放つが、この少女には通じなかった。
通じないどころか、同調するように力が増幅される。行き場を失った魔導エネルギーは
洞窟の岩肌を這うように拡散し、やがて両者の間に戻る。それを繰り返しながら蓄積された
エネルギーを抱えきれなくなった炭鉱内の空気は飽和し、解放を求めて火花を散らす。
薄暗い洞窟内が真っ赤な閃光に包まれる中で“少女”は意識と、兵器としての存在を失った。
***
Under the command of Empire
The strategy failed.
なお、この任務における炭鉱都市ナルシェからの帰還者は、ゼロ。
帝国軍司令部の最終報告書には、それだけが記されたという。
-FF6オープニング<終>-
----------
その後、ゲーム本編ではティナ覚醒(433氏プロローグ)に続きます。
長くなりましたが、お付き合いいただき有り難うございました。
487:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 01:18:39 arAlC/Uj0
リアルタイムで読ませていただきましたww
ビックス、ウェッジが悟った真実が何なのか少し気になるけど
読みやすかったし、終わり方もちゃんとしていて良かったよ。
オープニング編が帝国兵側の視点だけじゃなくて、ガード側の視点も書かれているのがとても斬新だった。
こんな感じで続きも見てみたい。
とにかくオープニング編乙!
488:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 11:34:01 drVKFUHL0
ff6-OPさん乙。
前回までと比べて、文章、ボリューム、テンポともに安定している。
視点のズレについてもかなり改善されているが、やはり気になる箇所が散見される。
以下、その所感。
480はナルシェのガードの視点で、481以降はウェッジ視点。
しかし、480、481ともに「彼」「彼等」という代名詞で始まっている。
視点の主が変わったことをハッキリさせる為にも、代名詞は避けたほうがいい。
また、481以降、ウェッジ視点であるはずなのに、ところどころビックス視点が
入り混じっており、違和感を受ける。
前回からの流れでいけば、ビックスの描写はウェッジ視点からのもので統一した方がいい。
489:488
05/11/15 12:17:23 MCajW8Vl0
否定的な意見に傾きすぎた。
以下、評価点。
ユミールとのバトルでは緊張感をうまく演出できている。
取消し機能など、細部の描写にリアリティーを導入しつつも、
冗長と感じさせない様、配分をうまくコントロールできている。
行動に対する理由づけが多いせいで、スピード感には欠けるが、
これは人物造詣のためには、ある程度やむを得ない。
様はバランスの問題なのだが、全体的にうまく統制されている。
490:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 12:19:57 LashVkjJ0
うん、こういう的確なアドバイスは書き手にとっても嬉しいと思うよ?
491:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 15:41:01 fucC2nP00
>488
>480と>481はちゃんと区切りもありますし、「ナルシェ側」という表記もあるので、まあ構わないかと。
ただ、確かに視点のズレが気になるのは確か。具体的な違和感の箇所を指摘、ないし「視点の統一」の方法論をある程度示してあげてはいかがでしょう?
492:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 17:01:13 kElGpWvg0
ちと思ったが、批評に対する批評はやめとかないか?
各人思うとこはそれぞれあるだろうし、きりがないよ。
どれをとって参考にするかは書き手さんの自由だしさ。
オープニングGJです。
433氏の冒頭ともうまくつながりますね。
この具合で本編の続きにも参加していただけると最高です。
493:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 19:56:30 fucC2nP00
視点への言及が不親切と感じた故に書いたまでの事で、荒らす意図はありませんでした。お詫びします。
494:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 21:36:31 pVQtL/IT0
いや、俺も文句言ったわけじゃないんで……ごめんね
またーりROMろう。
495:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 23:46:29 vCEG0Z7S0
視点を変えながら書くのもいいね。
乙でした
496:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/16 23:29:57 +7BjweSRO
保守
497:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 02:21:19 S472HOBC0
久々に覗いてみたのでついでに保守。
いつのまにかすげー盛り上がってんな。
職人さん方、激乙です。全シリーズめちゃ楽しませてもらってます。
あと超亀レスだけど>>243-266、すごすぎる。本編の方でもこれ絡めてほしいな。
498:299
05/11/18 19:36:57 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)
「おい! 向こうから何かが近づいてくるぞ」
「本当か?」
ミシディアの早朝。店先で欠伸を一つして物思いにふける店主の耳に聞こえてきたのは城壁近くにいた
黒魔導師達の話声であった。
「速いぞ、どんどんこちらに近づいてくる」
「あれはチョコボか?」
チョコボ? この大陸にあるチョコボの主な生息地は試練の山の周囲を取り囲む森だけだ。一応、他にも
散在してはいるものの、その規模は大して大きくない。まして人間を背に乗せ走るチョコボは唯でさえ数
が少ないと言うのに。それでは―
起きたばかりでまだはっきりとしない頭で、そこまで考えていると大きな音がしてきた。
これはチョコボの足音だ、大きくなっているということは、ミシディアを目指していると見て間違いない。
やがて足音が止まり、一つの声がする。
499:299
05/11/18 19:37:48 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0263 4章 3節 山間(48)
「よっと」
一声と共に、チョコボから降り、門をくぐるその姿には紛れもなく―
「帰ったのかパロム、ポロム!」
「おう」
森へと帰っていくチョコボに向かって手を振りつつパロムが威勢のいい返事を返す。
「それで……」
暗黒騎士はどうなったのか。それが気になり、訪ねようとした時、二人の近くに見慣れた人物を見た彼は
思わず質問を変更せざるをえなかった。
「あんたは賢者テラ……なのか?」
「ああ」
自分の事に気づいたのかテラはややそっけないといった感じの返答をする。
「何だ、おじちゃんも知ってたのか。何でも凄い高名な人物らしいぜ」
「そうなのか」
続けて最初の疑問を尋ねようとする。しかし、わざわざ質問する必要すらなかった。
「あんたは……」
試練の山から帰還した一行の中、彼が知らない人物が一人混じっていた。それに暗黒騎士の姿が見えない。
と言うことは。
「よう。どうした?」
後ろから声をかけてくる者が一人。ざわめきを聞き取ったのか、偶然に近くを通った。
「ああ。その……」
「どうした? え……」
先程、店主を悩ました光景はこの若い男にも目に入ったらしい。そうして彼もついさっきの店主と同じ
驚き方をした。
「あ……えと……とにかく長老のところへ知らせの行ってくる!」
若い男は言い終わらぬ内に走り出してしまった。
500:299
05/11/18 19:39:29 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0264 4章 3節 山間(49)
若い男が知らせに行った後、すぐにでもセシル達は長老のいる館をへとまぬかれたのであった。
「お急ぎください……噂を聞きつけた方々が集まってくる前に」
セシル達を招待した女官は長老の元へ案内する途中に、そんな事を口走った。
当然、自分が期間するとは思っていなかった者も多いであろう。だが、自分はこうして帰ってきた。
多くの者は先程の男の様に驚くであろうし、実際にその目で本当かどうかを、確認したい人もいるであろう。
それでなくてもただ、興味本位でパラディンの姿を見たいと言う者もいるだろう。
もう少し時間がたつと、その趣の用件で神殿を訪れる者が後を絶たなくなるであろう。そうなればセシルは迂闊
に姿を見せることはできなくなる。
この女官の急げと言う言葉には、そういう意味が含まれているのだ。
「その姿……ご立派です。貴方も自身の中に、迷いを持っていたのですね。でも今は一切の迷いも感じられない。
とても良い表情をしていらっしゃいます」
最後にそう言い残して立ち去っていった。
「セシル殿……よくぞ試練を乗り越えた」
通されたのは神殿の祈りの間である。そこでは初めてあった時と同じように長老が一人佇んでいた。
「それとテラは……何処だ?」
あらかじめの報告を聞いていたのかテラが帰ってきた事を長老は知っていた。
セシル達を一瞥し、その姿が確認できなかった為、そう質問した。
「少し、神殿の中を見させて貰うと言ってましたよ。すぐに来ると言ってました」
「そうか……」
長老は珍しく、落胆した様子で肩を落とす。
セシルが試練をへてパラディンの資格を得た事も充分な話題であったが、テラの帰還もまた、
ミシディアの住人達にとっての重大な知らせであった。
テラはかつてはミシディアに住んでいた。パロムやポロムの弁によると相当名のたつ賢者として通っていた。
長老とも面識があったと見てもおかしくはないだろう。色々つもる話もあるのであろう。
501:299
05/11/18 19:50:16 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0265 4章 3節 山間(50)
「二人は足手まといにはならなかったか?」
気を取り直して長老は訪ねる。
「ええ……それは問題ありませんでした」
むしろ、多くの局面を救って貰ったこの二人には感謝の言葉もない。
「それで……この二人は? 一体」
「ああ! そうか戻ったら話すんだったな。長老……」
そう言ってパロムは長老の方へと向き直った。代わりに話してくれと言ってるようだ。
「では、私の口から話そうか……そもそも私がパロムとポロムをセシル殿のお供につけたのは当然修行を兼ねた
手伝いとしての意味もあるが、もう一つはお主を監視するためだったのだ」
「監視?」
「ちゃんと最後まで試練をなせるかどうかを詳しくな」
「そうですか……」
「だが、その必要も無かったようじゃな。二人ともご苦労であった」
「ごめんなさい。セシル様……黙っていて」
「いや、あんな事までしたんだから疑われない方がおかしいよ」
丁寧に謝罪の礼をするポロムを見て、セシルは特に気にとめていないという趣の言葉を返す。
生真面目な彼女の事だ。黙って関しする事には抵抗があったであろう。
「ですが……」
「もう気にしていないていってるんだから。ここまでにしようぜ」
パロムが言う。ポロムと対照的に、この事に関してはもう特に気にはしていないようだ。
502:299
05/11/18 19:51:23 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0266 4章 3節 山間(51)
「それで、パラディンになった感想はどうだ?」」
重い雰囲気を晴らそうとしてか、長老が話題を切り替える。
「正直、今になっても実感はありません。本当に僕が……って感じで」
その場を取り繕う為の方便でもなければ、遠慮しての事でもない。率直な感想であった。
「それに力に馴染むのには、少しばかり時間がかかりました」
「どういう事だ……」
「ええ、この力を手にしてから下山しようとした時でした。幾度か魔物の群れに遭遇して戦闘に突入する事が
あったのですが、戦おうにも最初はなかなか力を発揮する事ができませんでした」
「ほう……」
長老の反応を待った後、セシルはさらに続けた。
「でも。戦闘を重ねていく内にだんだんと力の使い方が分かってきました。今では特に問題はありませんよ。
おかげで下山してここめで帰ってくるのに結構な時間がかかりましたが」
もし、チョコボに乗らなければもっと時間がかかったであろう。
503:299
05/11/18 19:52:22 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0267 4章 3節 山間(52)
「それと、ちょっと気になることが……」
ふと思い立ったかの様にセシルは口を開く。
「山頂での試練の際、剣を授かったのですが、この剣、よく見てください……」
セシル自身も下山の折、剣を扱っていく中で、偶然にも気づいた事だった。
刃の部分に何か文字らしきものが深く刻み込まれていた。
「幸い、文字が読み取れない事は無かったのですが、何について書かれているのか長老に伺っておきたい
と思いまして」
一度、セシルも全てに眼を通したのだが、今ひとつその言葉が何を意味するものなのかが分からなかった。
だが、長老なら何か分かるかも知れない。
「剣にはこう書かれています……」
504:299
05/11/18 19:53:06 aluXxVi30
龍の口より生まれしもの
天高く舞い上がり光と闇を掲げ
眠りの地にさらなる約束をもたらさん。
月は果てしなき光に包まれ
母なる大地に大いなる恵みと慈悲を与えん。
「これはミシディアに伝わる伝説と同じ内容だ……」
最後まで聞いた長老は
「ちょっと見せてくれ……」
セシルから剣を受け取った長老はその文字を一字一句、丁寧に何度も読み返した。
「間違いない」
「それで、これはどういう意味をさしているんでしょうか?」
断言した長老にセシルは聞き返す。
「ただ、伝説として伝わっているだけであってそれが何を示しているのかまでは現時点では
分かっていないのだ」
「そうですか」
となると、もうミシディアで知ってる者は誰もいないと見た方がいいだろう。
「ミシディアに伝わる起きてではこの伝説の為に祈れと言われている。ひょっとすると今がその時なのかも
しれん」
長老のことば何処か予兆めいていた。
505:299
05/11/18 20:00:19 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0268 4章 3節 山間(53)
沈黙を打ち破るかの様に、扉が開く。
そして遠慮無く中に入ってきたのはテラであった。
「セシル、すまないな。久しぶりに帰ってきたものだからつい懐かしくてな、色々見て回ってしまったのだ」
「久しぶりじゃな」
長老が嬉しそうに声をあげる。
「ああ……」
テラの方は何処か遠慮しがちな態度であった。
さっき町中でテラを見た者達も何かをしっている素振りであった。
テラにとってこのミシディアになんらかの因縁があるのだろうか。
「この爺ちゃん凄いんだぜ! 何たって伝説の魔法。メテオを覚えたんだから」
「メテオだと……」
その単語を聞いた長老の声が裏返った。
「そうだ、セシルがパラディンの試練を超えた時、山頂で聞こえた声が私にも話しかけてきた、
そうして、力を授けてくれた」
「あの魔法の封印が解かれるとは、やはりただ事でない何かが起ころうとしているのか」
「そうかもしれんな……だが、世界の事情がどうあれメテオは私の手の中にある。この力さえあれば
ゴルベーザーも! 奴だけはこの私の手で倒す!」
「テラよ……今のお前は憎しみの力が増大しておる。そのままの状態で戦おうとするとお前自身の身を滅ぼす結果が
待っておるぞ。それにメテオなどと……」
「分かっておるわ! その位の事は……だが、あいつだけは、ゴルベーザだけは何としても!」
激しい口調のテラはこの場にいる全ての人物を黙らせるだけの覇気を感じさせた。
「駄目だ、いくらお前が強くなろうが今の考えでは決して勝つことはできん。周りの状況を見据えるのだ」
506:299
05/11/18 20:01:12 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0269 4章 3節 山間(54)
「おい、長老―」
感情を乱した長老を見たことがないのか、やや取り乱している。
「パロムパロムが口を挟む。
ここまで!」
だが、それ以上はポロムが言わせなかった。
「出ましょ……」
パロムのがここまで感情を崩す事を見たくはなかったのだろう。
この様な場に肩を掴み静かに退出する。
二人には長老はとてもではないが耐えきれなかったのだ。
曲がり角へと消えていく二人の影を見ながら自分も引くべきかとは思ったが、やめておいた。
507:299
05/11/18 20:02:06 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0270 4章 3節 山間(55)
「アンナが……娘が……」
二人が去った頃合いを見計らったようにテラが言う。
「…………」
セシルにもあの時のダムシアンの様相が頭に蘇ってくる。
「娘が殺されたのだ」
ずっしりとしたテラの声はとても短かったが、深い憎しみが秘められている。
「それだけで充分な理由であろう……」
「私怨で戦うというのか! 愚かな……それが、賢者として名を馳せた者の言うことか」
「何とでも言うがいい。ゴルベーザを倒せるのなら、そんな肩書き誰かにくれてやるわ!」
「頑固じゃな。昔と変わっておらん」
何とかと言った感じで長老が口から絞り出す。
「お前もだ。相も変わらずだ」
そこまで言うと、後は口を閉ざしたまま、部屋を出て行った。
「しかし、それではお前はどうなるのだ……」
508:299
05/11/18 20:03:59 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0271 4章 3節 山間(56)
「ああ、セシル殿。ちょっとばかり見苦しいところを見せてしまったな……」
寂しげな様子でテラを見送った後、長老はセシルに切り出す。
「あいつと私は昔からの仲でな。つい本音でやり合ってしまう。仮にも国を統べるものなのに
パロムとポロムもいたというのに……」
「いえ、そんな友人はとっても羨ましいです。本当に……」
もし、自分にもそれだけ他人とうち解けあえたら……カインも。
だが、もう過ぎ去ってしまった事。その日々を取り戻す為にもこの力を手に入れたのだ。
「そうか……有難う」
「何故、テラはミシディアを出て行ったんですか?」
聞いて良いのかどうか迷ったが、今聞かなければもう聞く機会はないだろう。
多少、配慮に欠ける行為だとは思ったが、セシルは思い切って質問した。
「やはり、分かるか」
「一応、テラとの付き合いは長い方ですし、さっき長老とも何処か余所余所しかったですし」
「ミシディアでは日々、魔法の研究が成されていた。過去、多くの偉人達が研究に努めてきた
おかげで、現在でも多くのミシディアの民が魔法を使えるようになった。だが、発展には常に
挫折や犠牲がつきものであった」
いきなり語り始めたので、セシルは最初テラの事を話しているとは気づかなかった。
「テラもこの国の魔法の発展に一役買っていた。若い頃から非常に優秀だったあいつは幾つもの
研究で成功を成し、民からの信頼も相当なものであった。だが、その評価の絶頂の時に事件は
起こった……」
509:299
05/11/18 20:04:52 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0272 4章 3節 山間(57)
身構える間もなく、長老の言葉は続く。
「事件はいたって簡単なものであった。その日、テラは古代魔法の封印を解こうとして、多数の
魔導師を動員していた。だが、研究は失敗。魔法は暴走し、そこにいた多くのものを傷つける事
となった」
「それが原因だったのですか……」
「いや、実験の失敗はミシディアでは珍しくはなかった。それに古代魔法に関する事なら尚更
であった。犠牲者が出ることもあった。この時は幸いにもなかった、その為、住人間の諍いや
テラを始めとした、研究に立ち会った者に恨みを持つものは殆どいなかった」
淡々と語る、長老の話は終わりではなかった。むしろここからが本当に話したい事であったのだろう。
「だが、テラの失敗は多くの住民を落胆させる結果となった。そして日々の研究に勤しむものの自信すら喪失
させてしまった。普通の者であったならそんな事はありえないであろう。しかし、テラだから問題だったのだ。
テラなら出来る、そんな期待に皆すがっていたからだ」
優れた才能を持つ者は一人だけで多大な人間へ影響を与える。しかし、それが必ずしもプラスに
働くとはいえない。それを端的に表した例なのかもしれない。
「誰もテラを恨まなかった。しかし、テラは去っていった。多くの者を傷つけた罪悪感も勿論あったが
それ以上に、落胆する者達を見てはおれなかったのだ」
「…………」
「それは失望したという意味ではない。むしろ皆の期待に応えられなかった自分への戒めであった。
そして、これ以上、自分へ信頼を寄せる者を増やしては民全員への不幸を招く。そう判断したのだ」
テラの存在はミシディアに発展をもたらしたが、それが住人の自らの意思を持つことを阻害していた可能性
にテラ自身は気づいたのだろう。
510:299
05/11/18 20:06:30 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0273 4章 3節 山間(58)
「勝手な推測だがな……」
長老はそう付け加えた。
「だが、奴の本音くらいは分かる間柄であると自負してるつもりだ」
「誰も止めなかったのですか?」
「引き留めようともしたが、奴は聞き入れなかった。一度決めたらもうその考えを修正する事はない。
奴はそんな性格なのだ。本来なら奴こそミシディアを率いる者だったのだ……」
テラが去った後のミシディアは長老がひきたのだろう。その後どうなったかは、今の町並みを見れば明白だ。
結果的にテラが去ったことはこの国を発展に導いたのかもしれない。
それでもしばらくは住人達にはやるせない思いが残ったであろう。
誰にも罪を問うことが出来なかった。そして皆が優しさと思いやりを持っていた。だが、それが
不幸を呼んだ。そしてその不幸は恨みや、悲しみを誰にもぶつける事ができない。その例をとってみると
この類の不幸は一方的に押し寄せる不幸に比べて、なんともやりきれないものだ。
「これで私の話は終わりだ」
「……有難うございます」
長老にはつらい話をさせてしまった。無駄な詮索などしない方がよかったのかもしれない。
だが、セシルはミシディアの民の持つ、多くの悲しみを少しだけだが、理解できた様な
気がした。それはセシルにとって大きな収穫であった。
511:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:24:26 S472HOBC0
リアルタイム超乙です!
ただ、長文投下だからなだけかもしれませんが、
どこか展開を急いでいるような印象を受けました。
次はいよいよバロンですな。
512:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:34:21 JEdwi+eM0
キタ━━(゚∀゚)━━!!!
あいかわらず長文なのにスラスラ読みやすいです。
513:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:42:34 oofwCHMK0
乙です。リアルタイムで見たの初めてだー
514:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 23:18:00 ONj9hvlh0
>「パロムパロムが口を挟む。
>ここまで!」
コピペミスかな?
やっぱうまいですね。乙でした。
そういえば本編ではこの長老はテラが死んでも、「愚か者め」としか言わないような冷たい奴だったような気がするけど、
こうやって文章化されると印象変わるね
515:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 12:49:27 E90/j0eE0
次の盛り上がりに向けての繋ぎあるいは布石?
それにしては冗長。
試練を終えたセシルや、長老の想いを深く掘り下げたかった?
それにしては拙速。
前回の出来がよかっただけに、今作を惜しむ。
516:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 22:57:12 1xORnM6i0
お、まとめサイトが・・
517:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/20 16:07:01 Pyj8K93G0
あげとく
518:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 07:09:10 gshyjlfd0
>>515
批評に対する批評はしたくないが、
毎回そうやって否定的な評価しか書こうとしないのははっきりいって凄く偉そうでいい印象を持てない
519:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 11:24:43 HunXZlh20
>518スルーしとけよ。
噛みついてる時点であんたも同レベルだぜ
520:299
05/11/21 19:05:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0274 4章 3節 山間(59)
夜中、セシルは神殿を抜け出し夜道を歩いていた。
試練を成し、あとはバロンへと向かうだけだ。その為の手段も確保出来てる。
だが、その前にどうしてもあっておきたい人がセシルにはいた。
本当なら、こんな夜中でなく、もっと早く―できればパラディンになった後、
一番最初にでも会いに行きたかった。
しかし、ミシディアにはまだ、自分を許していない人間がいるだろう。
許したくても、多少の時間つまりは心の整理をしなけれなならない者も多くいる事はセシルも
分かっていた。
そんな者に自分の姿を見せるのは得策では無い。そう判断した為、人通りの多い昼間でなく、
皆が寝静まった時間を選んだのだ。
そして町はずれの墓地にはやはりセシルの求めていた人影が見えた。
黒い法衣をまとったその影は闇に紛れるかのようにしてそこに静かに立っていた。
「やっぱり此処にいたんだ」
その人影に声をかける。
「ジェシー……」
「なんで、ここにいるって分かったんですか……?」
振り返ったその女性はまず最初にそう問うた。
「正直、ここで君に必ず会えるとは思っていなかったよ。でも良かったよ……」
「何がです?」
「もうこの機会を逃してしまったら当分は君に会えないからね」
「そこまでしてもらわなくても結構でしたのに……」
「でも、君と二人で話したかったから。それに……」
「それに?」
「ここが、一番君と話すのに向いていると思ったし」
本当のところ、今まで余計な時間はあったのだし、その時に長老辺りにでもとりついでもらえば
いつでも話す時間を作れたはずだ、
521:299
05/11/21 19:08:04 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0275 4章 3節 山間(60)
「馬鹿ですね……それでもし、私が此処にいなかったらどうするつもりでたの?」
「でも、結局は会えた……」
自分でもえらくいい加減な理屈だとは思ったが、敢えて言った。
「…………」
「…………」
そこまでで会話が途切れた。
「無理をしないでください。そんなに取り繕わなくても、一番言いたい事があるんじゃないですか?」
「明日にはここを発つ……」
促され、いきなり切り出す。
「それだけを言いたくて……」
言葉自体には大きな意味はなかった。他にもお互い、話す事はいくらでもあるはずだ。
だが、もうそれだけで充分だった。今更、謝罪の言葉が意味を成さない事をセシルは悟っていた。
「それじゃあ……」
踵を返し、夜闇に消えようとしたセシルをか細い腕が引き留める。
「私はまだ、あなたと面と向かって話す事はできません。それに今もあなたの事を全て許すこと
もできません。ですが……」
522:299
05/11/21 19:08:58 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0276 4章 3節 山間(61)
セシルは後に続く言葉を待った。
「これからは、これからは少しはあなたみたいな人でも理解していきたいと思います」
「そうか……」
「長老……いえ、父にもいろいろと諭されました。お前も変わらなければならないって。それが全て
分かったとは言い切れないですけど……」
彼女が父の事を話してくれるのはこれが最初であった。
「君は長老の娘だったんだね……」
「はい」
ゆっくりと、それでいて簡潔に応える。
「話してくれて有難う。じゃあ……行くよ」
「では」
今度はジェシーも引き留めなかった。そうしてセシルは去っていった。
短いやりとりであったが、お互いを理解しあうには幾ばくかの時間が必要であろう。
だから、これで良かったのだ。
向かう道は別方向。だがいずれ交わる時もくるであろう。その時には今とは違う何か別の言葉が出てくるかも知れない。
今のセシルにはこれだけで……充分であった。
523:299
05/11/21 19:11:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0277 4章 3節 山間(62)
窓から入ってきた淡い光がセシルが心地よい目覚めを誘う。
セシルはベッドから起きあがり、外の景色を眺める。快晴の青空に昇った太陽が円形状の町を
鮮やかに照らしていた。
「旅立ちには適任の天気だな……」
思わず、楽観的な言葉をこぼす。こんな天気では、彼でなくても口にはだしたくなるであろう。
己の幸運を噛みしめていると、扉を静かに叩く音が一つした。
「どうぞ……」
その声に誘われるかのように扉が開く。
「おはようございます」
その顔には見覚えがあった。
昨日、自分を長老の元へと案内してくれた女官のものだ。
「良く眠れましたか?」
「勿論です」
それは本当であった。彼にとってこの数日間は正に波乱の出来事の連続であった。
ここまで、ゆったりとした寝床で穏やかな心持ちで休息を取れたのは初めてであった。
524:299
05/11/21 19:12:39 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0278 4章 3節 山間(63)
「それで何か御用でしょうか?」
「お荷物が届いています」
一通りの挨拶を終え、用件を尋ねると女官は部屋の前に置かれた一つの包みを指さす。
「これは?」
「武具屋の店主さんから餞別だそうです。重いのでご注意ください」
ここまで持ってくるのも相当な苦労でしたと苦笑する。
セシルもその荷物を持ち上げようとする。それは確かに見た目以上の重さを有していた。
何とか部屋まで運び込み、女官に礼を言って扉を閉める。
持ち込むのも困難であったが、梱包されたその荷物を紐解くのも結構な労力を使用した。
「これは……」
開いた荷物から覗いたものは鎧であった。
それだけでなく、篭手を始めとした防具一式が詰め込まれていた。
そのどれもが渾身を込めた出来であり、丁寧に鍛えられたものであった。
「パラディンの……」
試練の山へ向かう前準備として、武具屋に行った時があった。
その時、店の一番目立つ所に安置されていた、鎧を思い出す。
―これはパラディン用の装備さ! あんたみたいな暗黒騎士には使えるわけがねえ―
店主の皮肉めいた苦笑が思い出される。
「あの時の鎧か? でも何故……」
信じられない気持ちでその鎧を眺めていると、荷物が入っていた箱の奥底に何かが残っている事に
気づく。
拾い上げてみるとそれは小さな紙切れであった。
じっくりと眼を凝らしてみると、文字が刻まれていた。
―頑張れよ―
大雑把な文字でそう書かれていた。
「…………」
ぎゅっと紙切れを握りしめ、懐にしまう。
525:299
05/11/21 19:18:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(64)
昨夜の内に、長老から指定されていたのでその場所には直ぐにたどり着けた。
「セシルか?」
既に到着していたテラが声をかける。
「おはよう、テラ。早いんだね」
「良く寝付けなくてな。まあ、復讐を誓った時以来、睡眠と言うものをまともに取ることが
出来なくなってな……」
「そうか……」
「そんなに遠慮をするな。、別に気にしてはおらんよ。ところでその鎧は?」
「ああ、旅立ちの餞別として貰ったんだよ……」
「ほお……なかなか様になっとるぞ」
まじまじと見つめながら、感想を一言。
「はは、有難う……」
町はずれにぽつんとそびえる、一軒の小屋。この魔法国家の神秘的な建物に比べると、明らかに質素な
作りである。
「ここからバロンに行けるのか?」
その事は既に長老から確認済みだった。しかし、今ひとつ実感が沸かなかったので念を押すかのように
聞いてしまう。
「そう思うのも無理はないかもしれんが、このデビルロードと呼ばれた道は昔はバロンとミシディア間の
交易ルートとして、栄えたのだ。今の両国の関係を見れば、とてもじゃないが、想像できん事だがな」
確かにここ数年のバロンは各国に対し、強硬的な姿勢で外交にも臨んでいた。
そうしてその圧力に一番反感を持ったのが、ミシディアであった。
結果、ミシディアはバロンの侵攻の真っ先の的にされてしまった。その時にこの道も閉鎖されてしまったんのだ。
最も現在の世界を見れば、むしろ最初に侵攻された事さえましな事に思えるが。
526:299
05/11/21 19:36:09 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(65)
「過去この場所に空間同士を繋げ、大陸間を自由に移動できる手段を確保するために出来上がったのがこのデビルロードだ。
そもそもこの道が何故デビルロード、つまり悪魔の道などという不吉な名称で呼ばれたかというと、理由が幾つかあるのだ……
一つはこの道を使うのに相当な生命力を犠牲にしたからじゃ。ああ、安心しろ現在は創設時に比べて実験の重ねた結果、
そこまで危険な道では無くなった。
もう一つはこの道を作った後、黒き鎧を纏った男が現れた事に起因している。
当時、その姿を見た者は悪魔が現れたと思ったのだ。しかしそれは誤解であった。そいつは唯の人間であり、その上バロンのものだと
言った。つまり、は成功したと言うことだな。人々はこの道を最初使い、大陸と大陸を一瞬にして移動したその者の名を取って
デビルロードと名付けたのだ。まあ、悪魔とは違ったのだが……」
「バロンから来た黒き鎧の男とは暗黒騎士だったのか?」
長々と続くテラの講釈の終了を見計らって訪ねる。
「詳しいことは私も知らんが、今重うと確かにそうだったのかもしれんな」
かつてのバロンから暗黒騎士がこの道を通ってミシディアまでやってきた。そして今かつて暗黒騎士だった
セシルはバロンに向かおうとしている。これは何かの偶然であろうか。
「既に封印は解かれているんだね」
「ああ、それは問題ない」
「では」
扉を開けようとしたセシルを呼び止める声が一つ、いや、二つあった。
それに続くように草を踏みしめる足音が二つ、二方向から聞こえてくる。
「パロム! それにポロムか!」
現れたその姿に少しだけ驚く。
「見送りに来てくれたのか……」
そう言えば誰の姿も見えない、だが、無理もないだろう。試練を乗り越えたと言え、昨日の今日の出来事である。住人全員が
手を振って見送りとは、そう簡単にはいくまい。
「違うよ。一緒に行くことにしたんだ」
「え!」
セシルとテラが殆ど同じタイミングで声を上げる。
「そんなに驚くなよ……ちゃんと長老から許しは貰ってるぜ」
「そういう事ですわ。以後も宜しくお願いします」
527:299
05/11/21 19:37:36 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0280 4章 3節 山間(66)
「それで長老は?」
昨日の内に礼は言っておいたが、あの人にはお世話になった。未練がましいかもしれないが、旅立つ直前に、もう一度だけ
顔を合わしておきたいと思った。
「長老は……明朝、祈りの塔に入られました」
「祈りの塔だと!」
「テラ、知ってるのか?」
「ああ……一応はな。詳しくは知らんがそこに入ったとなれば当分は出てこないと言うことだ」
そこまでして、長老は何に祈るのか? だが、セシルはそれを理解していた。
長老も世界……いや、守りたい者の為に戦いを始めたのだ。それはセシル達の様に直接的に手を動かす行為ではないかもしれない。
だが、その行いも一つの戦いである。
それだけで聞けば充分であった。此処にはいないが、長老が自分を全力で見送ってくれているのを感じる事ができた。
「そうか……じゃあ、僕たちも急ごう!」
小屋に入る途中に一度だけ後ろを振り返った。小高いこの場所からは白い町並みが一望できる。
ひょっとしたら、この町のどこから見るよりも美しい光景だったのかもしれない。
長老やジェシーの事が少しだけ、思い出される。しかし、もう迷いは無かった。
「みんな……これから行くバロンは僕の故郷と言っていい場所だ。そして戦いは激しくなる。ひょっとすると
生きて帰れないかも知れない。それでも僕に付いてきてくれるか?」
だが、そんな質問は無駄であった。
「勿論だ」
「今更、水くさいぜ」
「どこまでも」
返事は様々であったが、皆同じ思いだ。
「分かった行こう! バロンへ」
小屋の中、ひっそりと描かれた魔法陣に足を載せる。
途端、視界が揺るぎ始める。ぐにょりと曲がり始める視界の中、セシルはカインやローザ。
そしてゴルベーザの事を考えていた。
528:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 19:58:00 xX13pLR60
夢枕風にティファvsロッズ
面白そう
たまらぬ蹴りであったッ!!!
529:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 20:32:38 V1m8xr+H0
ジェシーとのオリジナル会話(・∀・)イイ!!
530:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 02:09:37 5QeVNfTo0
>>FF4
武具屋の餞別に感動。これゲームの中にあるのならなんか人情味あって良いな、FF4。
ジェシーとのやり取りが、完全なる相互理解であなく、相互理解の始まりという感じがして
良いなと思いました。個人的にこの流れだと、今後のテラが気になります。GJ!
531:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 08:46:14 FOjDfLOCO
それよりもヤンが気になる
一体何があったのか
532:FF8
05/11/22 10:49:45 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-1
(スコール・・・スコール・・・)
(誰だ)
(スコール、やっと会えたね)
(誰だ、誰なんだ、あんた)
(忘れちゃった?寂しいな・・・)
(どこかで会ったことが?)
(思い出して。忘れられたままじゃ、寂しいから・・・じゃあね、スコール)
(おい待て)
(思い出したら、いっぱいお話しようね)
(待て、待ってくれ・・・)
「おや、気がついたかい」
保険医のカドワキ先生が、俺の顔を覗き込んで言う。
俺はあたりを見回した。ここは医務室、俺と先生の二人しかいない。
すると今しがたのは夢だったのか。不思議な、夢だ。
俺はベッドから起き上がろうとした。
「!」
激しい眩暈に襲われると同時に、眉間に鈍痛が走る。
「ああ、しばらく寝たた方がいいよ。怪我した場所が場所だからね」
・・・怪我?場所が場所?ああ、そうか・・・
俺はサイファーとバトルしていたのを思い出した。
・・・しかし、なぜここに・・・
533:FF8
05/11/22 11:03:43 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-2
「嫌だねえ、覚えてないてのかい?」
困惑が顔に出たのだろう、カドワキ先生があきれるように言った。
「いいかい、あんたはね・・・」
カドワキ先生が話してくれた内容は、およそ次の通りだった。
あの後、つまりサイファーに眉間を斬られた後、俺は顔面を血で朱く染めながらも、
鬼神のごとき形相でサイファーに斬りかかって行ったのだそうだ。
その太刀筋があまりにも凶刃であったため、これ以上の面倒はご免とばかりに、
サイファーはとっとと逃げ出したという。
それまで二人のバトルを遠巻きに見物していたギャラリーが、
俺を心配して駆け寄ってくれたが、俺はただ「大丈夫、大丈夫」と繰り返すだけ。
しかしどう見ても大丈夫な訳がないという事で、ギャラリーたちは俺を
なだめたりすかしたりしながら、どうにか医務室まで運んで来たのだと。
「まったく、そういう年頃なのかねえ。あんまり無茶するんじゃないよ」
サイファーに行ってくれ。もともと誘ってきたのはアイツの方だ。
”なぁスコール、ちょいと体あっためないか。まさか断ったりしないよな”
そう言われたら、断れない。
534:FF8
05/11/22 11:20:07 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-3
「余後の心配はなさそうだけど、一応、確認させてもらうよ」
俺の思惑をよそに、カドワキ先生が型通りの質問を始める。
名前は?・・・スコール・レオンハート
年齢は?・・・18歳
所属は?・・・バラムガーデン、SeeD候補生、NO.41269
担当教官は?・・・
「絶対、あなたかサイファーだと思ったわ」
俺の回答を遮る様に、だしぬけに背後で声がした。声の主を振り返る。
「キスティス先生・・・」
「キスティス先生・・・じゃないわよ。連絡受けて跳んで来たんだから」
キスティス・トゥリープ、俺より一つ上の19歳。俺の担当教官だ。
15歳の時に史上最年少記録でSeeD試験に合格、17歳の若さで教員資格をも取得した、
超エリートだ。才色兼備なだけでなく、気さくで面倒見の良い性格ゆえに、
男女を問わず多くのファンがいる。
「全く何を考えてるのよ。午後からSeeD認定試験があるの、忘れてた訳じゃないでしょうね」
「午後から試験て、本当かい?呆れた子だねぇ・・・」
だから、サイファーに言ってくれ。
535:FF8
05/11/22 11:33:58 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-4
「それでカドワキ先生、スコールの具合はどうですか」
キスティス先生が尋ねる。
「ああ、もう心配いらないよ。ピンピンしてる。若いってのはいいねぇ」
「そう、良かった」
「でも眉間の傷は一生消えないよ。天下御免の向こう傷ってやつさね」
・・・そうか、一生残るのか、この傷・・・
傷口に手をやりながらも、俺はさほどの衝撃は受けなかった。
俺はSeeD候補生、いずれは戦いの中に身を置く者。
遅かれ早かれ、俺の体は傷で覆われる。
キスティス先生からも何か一言あるかと思っていたが、珍しく何も言わない。
いつもであれば、小姑のようにぶちぶちと小言を連ねるか、
あるいは傷なんて気にするなといった類の励ましの言葉でも掛けて来る筈だが、
いずれにしろ、黙っていてくれる方が、俺にとってはありがたい。
何気なく先生を見やると、口元に手を充てて、驚きを顕わにしている。
俺を想って黙っていたのではないようだ。衝撃で口を訊けないだけだった。
やれやれだ。
これじゃ、誰が負った傷だか判りゃしない。
536:FF8
05/11/22 11:45:04 MbqJAoAu0
申し訳ありません。コピペミスしました。
>>534のラストに、以下の3行を付け足して下さい。
「しかもね、カドワキ先生。この子、炎の洞窟の課題、まだクリアしてないの」
「おやまぁ、ますます呆れたね」
だから今朝やろうと思ってたんだ。それを、サイファーが・・・
537:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 12:15:32 FM0FcYfA0
うまいっ。まんま初期のスコールの雰囲気がよく出てる。ほんとうまい。
このままスコール一人称で行くと面白そうだな。期待して待ってます。
538:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 16:45:27 1ZtTrQmpO
すごいおもしろい!
一人称っていいものなんだねぇ、久々に新鮮な面白さだった!
スコールがすごくよく描けてる!
あの性格は描くのが難しいと思ってたけど、あなたの筆致だと、やなやつじゃなく、自然!あと、全体にくどくなくていい感じ。
頑張って!続き楽しみにしてます!てゆか早くよみたい!
539:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:05:22 XWCMuXbH0
528www 出だしだけ
「母さんはいないのか・・・じゃぁ遊ぼう?」
男は大げさに両手を広げ、挑発的な笑みを浮かべた。
遊ぼう?・・・そういわれて、なんのつもりなの?
と聞き返すほど私もお嬢様じゃない。
先ほどからの男の言動を見る限り、頭の回線が複数切れているのか
母さん、母さんって、どうみても話が通じる相手ではなさそうだ。
私たちが今いるこの教会には出入り口がひとつしかなく、それも丁度男が立つ位置
によって塞がれてしまっている。
逃げ道は・・・ない。
こちらにはマリンもいる。
いま、この場で、この危険な男を戦闘不能にすること
それが私たちにとっても、一番安全で確実な方法であると思われた。
「いいわ、遊びましょう。マリン下がってなさい」
私はマリンを後ろにやると 半歩前に出て男を睨んだ。
「ティファ・・・」
マリンが心配そうに 声をかける・・・、
「問題ないわ」
私は背中ごしにマリンに返事をしつつ、男を睨み付ける。
540:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:06:36 XWCMuXbH0
大丈夫、こいつがどんなにでかかろうと、どんなに腕っぷしが強かろうと、ただそれだけだ。
長らく戦闘からは身を引いていたとはいえ
私は師匠に鍛えられたのだ。
2年前の戦いでは、あのセフィロスとも互角に叩きあった
素手でのタイマン それが条件なら誰が相手であろうと負ける気がしなかった・・。
両足を軽く前後に開き、拳を持ち上げる。
左拳が前 右拳が後ろ・・ザンガン流格闘術
蹴りを主体とした総合格闘技
それが私の武器だ。
「ほう! こりゃあ楽しめそうだ」
男は感嘆の声をあげると
大げさに腕を前後に広げ構えた。
フン、楽しめそうだですって?
見てなさい、今にそのへらへらした口を二度と笑えないように叩き潰してやるから
それとも、二度と楽しめないようにあそこを捻り潰してあげましょうか?
凶暴なものが内部で熱を持ちムリムリと膨れ上がっていく…
落ち着け、人に使うのは久しぶりだからって焦っちゃ駄目
541:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 00:59:49 dn2QlHh40
5tenkana...
542:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 10:01:25 j8bdUx7i0
FF8といえばどッかの個人サイトで凄い上手いのがあったよな
ディスク1の最初から終盤までとアルティ戦だけ書いてあるやつ
あれどこだっけ
543:FF8
05/11/23 10:24:35 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-5
「生徒NO。41269、スコール・レオンハートです」
「教員NO.048、キスティス・トゥリープ。私がサポートします」
敬礼と共に、試験管に報告する。
炎の洞窟。最奥部にいるGF・イフリートを倒し、装備可能にする。
それが今回の課題だ。
GF、ガーディアン・フォース。その正体は強大な自律エネルギー体だ。
生体と同様に意識・自我を持っているが、知能はそれほど高くない。
それぞれが持つ特性に応じて、獣や妖精など様々な姿となって現れるが、
大半は確固とした実体を持たず、限られた時間しか実体化できない。
GFに対して力を示し、その力を認められた者は、以後、そのGFと常に
交感できるようになる。俺たちはそれを「GFを装備する」と称しているが、
これにより強大な力を得ることができる。
バトル中にGFを召還することが可能になるだけでなく、GFを媒体として、
各種魔法を自身にジャンクションすることも可能になる。
GFは強力な武器であり、同時に強固な防具でもあるのだ。
「時間を決めなさい。長くもなく、短くもなく、自分に合った時間を」
試験管が重々しい口調で言った。
「10分で構いません」
俺は即答した。傍らにいるキスティス先生が目を丸くしている。
「10分でいいのだね」
「はい」
キスティス先生の意味ありげな目くばせを無視して、俺は答える。
「では、行きなさい」
俺は駆け出した。キスティス先生も後に続く。
544:FF8
05/11/23 10:43:21 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-6
足元を流れる溶岩が、洞窟内を赤く照らし出す。
しかしその猛烈な熱気ゆえに、視界は常に揺らぎ、遠くまで見通すことはできない。
肌を露出している箇所がチリチリと痛み出し、眉間の傷はズキズキとうめく。
汗は絶え間なく吹き出してくるが、流れ伝う間もなく蒸発してしまう。
炎の洞窟、その名にふさわしい、ここは常軌を逸した世界だ。
「やっぱりあなたとサイファーは別格ね。本当に強いもの」
最奥部へと向かう道すがら、半ば呆れたようにキスティス先生が言う。
「・・・ここの魔物が弱いだけだ」
そう応じつつ、俺は新たな一体を斬り伏せた。これで15体。
実際、ここの魔物はさほど強くない。
種類こそ異なるが、ガーデンの訓練施設にいる魔物と、ほぼ同レベルだ。
サイファーを相手にする方が、よほど手強く、危険だ。
「それはそうなんだけどね・・・なんていうか、ここで、こうやって、
今まで何人もの生徒をサポートして来たんだけど、ほとんどの子は、
普段の実力をなかなか出し切れないものなのよ」
そういうものなのか・・・俺にはよく判らないし、どうでもいい事だ。
「これってやっぱり、私が魅力的だからかしら?」
・・・なに考えてるんだ・・・
「冗談よ、冗談。いつもこうやって生徒をリラックスさせてるの。
でも、あなたには必要なかったみたいね」
・・・くだらない。無視して先へ進もう・・・
そう決め込んだ刹那、洞窟内に凄まじい咆哮が轟きわたった。
545:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 23:41:47 U24Tq5+yO
イフリートクル━━(゚∀゚)━━!!!!!
546:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 01:30:04 rJ8K44sH0
8が進んでるな。作者の頑張れ。
そういや、5とACはどうなったのかな。
547:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:11:03 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-7
大地をも揺るがす咆哮を受けて、洞窟が巨大な共鳴装置と化す。
度を越した大音響に、俺たちは堪らず耳を塞いだ。
「いよいよね。ここからが本番よ」
音が止むのを待って、キスティス先生が言う。
先程までとは打って変わって、その表情は真剣だ。
・・・言われずとも分かってる・・・
返事をする代わりに、俺は一気に奥へと駆け出した。
洞窟最奥部、そこには巨大な穴が穿たれていた。
周囲が赤く照らし出される洞窟内にあって、そこだけは漆黒の闇に覆われており、
穴の深さを雄弁に物語っている。
「!」
突如として、その穴から巨大な火柱が噴き出した。
激しい轟音と熱風が塊となって、俺たち二人にぶつかってくる。
吹き飛ばされそうになるのを堪えつつ、火柱を凝視していると、
火柱が徐々に形を変えていくのが見てとれた。
・・・これは・・・
刻々と変化していく火柱は、やがて獣神とでも形容すべき姿となった。
GF・イフリート。
隆々とした筋肉におおわれた、炎の化身、灼熱の巨人。
今までの魔物とは一線を画す、圧倒的なまでの存在感。
『人間ヨ、我ガ前ニ、ソノ力ヲ示セ』
言葉とも思念ともつかぬモノがイフリートから放たれ、赤熱した圧力となって
俺たちに襲い掛かってきた。
548:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:36:10 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-8
五合、六合、七合・・・
イフリートの攻撃を掻い潜りながら、俺は矢継ぎ早にガンブレードをうち振るう。
しかし、確かな手応えは得られない。
イフリートはひるむ様子をまったく見せることなく、新たな攻撃を繰り出してくる。
力任せの強引な攻撃ばかりなので、なんとか凌いでいられるが、
少しでも判断を誤れば、かすっただけでも致死に近いダメージを負うことだろう。
八合、九合、十合・・・
俺の斬撃は的確にヒットしている筈なのだが、イフリートにダメージを負った様子は見られない。
キスティス先生はサポートに徹し、回避と回復に専念している。
時折、冷機魔法を使うこともあるが、それはダメージを狙ったものというより、
赤化した空間の温度を少しでも和らげる事を意図したものだろう。
『ドウシタ、人間ヨ、汝ノ力ハ、ソノ程度カ』
イフリートの嘲るような思念が、熱波となって向かってくる。
相前後するように飛んできた剛腕を紙一重でかわし、俺は新たな斬撃を叩きこむ。
しかし、やはりイフリートにひるむ様子はない。
・・・ほんの一瞬でいい。奴に隙を与えることができたなら・・・
549:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:48:22 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-9
『小サキ者ヨ、私ヲ呼ビナサイ』
俺の思考に呼応するように、イフリートとは異なる思念が、どこからか伝わってきた。
・・・これは・・・そうか!
思念の主に思い当たると同時に、俺は精神を集中し、その姿を心に念じた。
俺とイフリートが対峙する、ちょうど中間地点の辺りに、突如として氷の結晶が出現した。
結晶は見る間に巨大化して行き、イフリートとほぼ同じ大きさの、氷の塊と化した。
氷塊が放つ冷機が、イフリートの放つ熱気を相殺していく。
と、出し抜けに氷塊が弾けとんだ。その跡に現れたのは・・・
『ヌウ、コ奴、シヴァヲ従エテオルノカ』
イフリートの驚愕が伝わってくる。
GF・シヴァ。
妖艶な笑みを湛えた、氷の化身、極寒の女王。
シヴァは詠唱しつつ、両手を頭の上で組んだ。そして、詠唱が終わると同時に
組んでいた両手をイフリートに向かって振り降ろす。
冷気が無数の氷の矢となって、イフリートの巨躯に次々と襲い掛かる。
グハァァァァァァッ
絶叫を上げ、大きくのけぞるイフリート。
550:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 12:03:33 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-10
見えた!切望していた、わずかな隙が!
イフリートの顕わになった喉元めがけ、俺は体ごとぶつかって行った。
狙いは誤たず、ガンブレードは深々と突き刺さる。
ウゴォォォォォォッ
悲鳴とも咆哮ともつかぬ叫びを発しながら、イフリートは地響きを立てて倒れた。
イフリートの体を成していたものが、火柱に逆戻りしていく。
『人間ヨ、ソノ力、確カニ見届ケタ。以後、我ガ力ヲ貸ソウ』
言い終わると同時に、火柱は消えてなくなった。
「スコール、見事だったわ」
額の汗をぬぐいながら、キスティス先生が言う。
「やっぱりあなたは別格よ。強すぎるわ。
あなたが”10分”って言った時には、なんて無謀な事をと思ってたんだけど、
まったくの杞憂だったわね」
無謀か・・・その通りかも知れない。
少なくとも、イフリートの力を甘く見ていたのは事実だ。
事前に彼我戦力を正確に把握していたとしたら、10分という選択はなかっただろう。
今後の戒めとしよう。
「さあ、戻りましょう。最短記録、樹立しなくちゃね」
キスティス先生の言葉に頷き返し、俺は入口に向かって駆け出した。
551:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 00:15:09 Tl2U6uMz0
GJ!!
戦闘描写はやっぱりうまいね。
あっけなくすら感じたけど、これくらいあっさりしてた方が続きが期待できる罠www
552:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 00:41:44 39wnMzBZ0
>>FF8
名前入力、洞窟攻略のリミット制限選択など、ゲーム中に登場する選択肢が
違和感なく登場している辺りに感動した。スコール視点ってゲーム自体もそう
だったはずなのに、ノベライズの方が良い印象で読んでいけます。乙です。
553:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 01:32:09 39wnMzBZ0
319です。
ご感想、ご指摘ありがとうございます。視点の固定…は、以前から頂いている課題(ry。
…精進します。
そんな自分ではありますが、書ける部分はリレーにも参加させて頂こうと思います。
リレーはちょっと緊張しますね…。不備などあればご指摘頂けると助かります。
554:FF6
05/11/25 01:38:42 39wnMzBZ0
ff6 - 25 figaro
頭上に広がるのは濃すぎる程の青色、雲一つなく晴れ上がった紺に近い青空の中央で、
煌々と輝いている太陽。
眼下に広がるのは、うねるような起伏と美しい風紋を持った熱砂の海―人の侵入を拒む
でもなく、だが歓迎していると言うには厳しすぎるこの大地に人々がつけた名は、フィガロ砂漠。
吹き抜ける風が生み出す波紋が、砂の芸術を生み出す。そんな砂漠の中で小さくため息を
吐き出した者が居た。
「ふゥ~。ガストラさまの命令とは言え……」
砂漠を渡るという割にはローブなどを羽織っただけの軽装で、顔面に施された必要以上の
厚化粧は、さながら道化師だ。彼は帝国の兵士2人を従えてフィガロ城を目指していた。旅の
一座と言うにはいささか不穏な出で立ちと顔ぶれである。
それもそのはずで、「ガストラ」と言えば今や世界で知らぬ者はいない。圧倒的な軍事力で
世界を支配しようと目論む、ガストラ帝国皇帝その人である。
そうなれば、彼らの正体が旅の一座でないことは明かだ。
途中、小高い砂丘の上で立ち止まると、およそ好意的ではない感想をフィガロ砂漠に向けて
吐き出した。
「まったくエドガーめ! こんな場所にチンケな城を建てやがって。偵察に派遣された私の
身にもなってみやがれ!」
道化師のような化粧を施してはいるが、彼は旅芸人ではなく魔導士だった。先のナルシェ侵攻
作戦、その報告を受けて彼はここへ遣わされたというわけだ。偵察に自分を指名した君主殿を
恨むべきだと思うのだが、そこは権力構造の魔術だ。
ついでに言うと、フィガロ城を建造したのはエドガーではない。八つ当たりも甚だしい独り言で
ある。後ろで控えていた兵士のひとりは、そのとばっちりが来ない事を密かに、だが必死に祈った。
555:FF6
05/11/25 01:39:15 39wnMzBZ0
「ほれ、クツの砂!」
しかしその祈りもむなしく、被害は後ろに控える2人の兵士にも及んだ。熱せられた砂の上に跪き、
差し出された方の靴の砂を払うと、また後方に下がる。
「ハッ! きれいになりました!」
直立不動の姿勢でもって、いま命じられた任務の達成を報告する。どんなに些細な事であっても、
これは帝国軍における掟だ。帝国軍兵である以上、その掟に背くわけにはいかない。
その姿を見届けると、旅芸人風の男は満足そうに高笑いをあげた。
後ろに控える兵士達は表情を変えることなくその背中を見つめていた。へたに機嫌を損ねて
不当な扱いを受けるよりも、そっとしておくのが得策だと言う事を知っているからだ。
旅芸人風の男はひとしきり笑うと、急におとなしくなった。
「つまらん」
おそろしく冷静な声で短く言い捨てると、また黙々と歩き始める。
上官に恵まれなかったうえに、フィガロ砂漠へ偵察に派遣された運の悪い兵士2人は、前を歩く
その男に狂気と恐怖を感じながらも、黙って後についてフィガロ城を目指すのだった。
556:FF6
05/11/25 01:44:04 39wnMzBZ0
ff6 - 26 figaro
「いかがだったかな? 私の城は」
フィガロ城、謁見の間へ戻ってきたティナを出迎えたのは国王エドガーの優美な
笑顔であった。問いかけながら微笑むエドガーの表情は柔らかく、ティナはつられる
ようにして首を縦に動かした。
ティナが口を開こうとした時、背後から聞こえてきた兵士の声が彼女の言葉を遮った。
「エドガー様! 帝国の者が……」
恭しく頭を下げ、状況を告げた兵士の声に、エドガーの表情から笑顔が消える。
「ケフカか!」
そんなエドガーの言葉に、ティナは心の中に小さな痛みを覚えたのだった。
―その名前を、どこかで……?
不安に表情を固くするティナの肩に優しく手を置いたのはエドガーだった。自分の肩に
置かれた手に気づいて顔を上げ、見上げた先にあったフィガロ国王は相変わらず柔らかな
笑みを浮かべている。
「ティナはここで待ってて」
いつからいたのか、隣にはロックの姿がある。ふたりは幾つか言葉を交わしながら、大きな
扉の向こうへと消えていった。
身の丈よりもはるかに大きな扉が閉められると、城内は驚くほど静かだった。
557:FF6
05/11/25 01:48:08 39wnMzBZ0
そんな静まり返った城内で、思い出されるのは今し方聞いたばかりの言葉。ティナの脳裏に
こびりついて離れない、忌まわしい記憶の欠片。
―帝国。ケフカ。……魔導。
その言葉を聞くと胸騒ぎがして、頭が痛くなる。
あのナルシェの雪原で、私を追っていた男達は……。
『帝国の兵士だぞ!』
―そう、私は帝国の兵士だった。
記憶をなくし、たった一人で放り出された薄暗い洞窟。
私を追ってくるナルシェのガード達。
向かってくるモンスターに、無意識のうちにも振り下ろしたナイフ。
モンスターの断末魔を聞けば、洞窟内に押し寄せる静寂。
名前以外のなにもかもが、未だ霧に包まれたようにぼんやりとしている。
けれど。
―私は……。
確実に覚えている。
命の、奪い方を。
----------
マッシュの出自に関して、ゲーム中にフィガロの大臣から聞ける王位継承に関する情報が
書けませんでした。後の方すみません。サウスフィガロor山小屋~コルツ山辺りで…なんとか…。
558:FF6
05/11/25 02:00:22 39wnMzBZ0
ティナは堅く閉ざされた扉を開こうと手を伸ばした。ここにいてはダメだと
強い焦燥感が少女を駆り立てる。
「……お待ち下さい」
背後で聞こえるその言葉にも、構うことはなかった。
しかしどんなに押しても扉はびくともしない。それでも必死で押し開けようと、
ティナは渾身の力を込めて扉を押し続けた。
「……どうか落ち着いて。今あなたが外へ出て行く必要はありません」
静かに告げながら、ティナの腕をつかんだ。不意のことに驚いて顔を向けると、
それはついさっき、案内役を買って出たあの衛兵の一人だと気づく。
「王と、ロック様をお待ちしましょう」
そう言ってさりげなくティナの前に立ちはだかると、扉への道をふさぐ。
彼もまた、柔らかな表情を向けていた。
----------
ff6 - 26 figaro はここまででした、すみません…。
559:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/25 02:12:32 jJsRKDQx0
うーん、前回までの流れだとマッシュの思い出話が続きそうでしたけど、
ここでケフカに話移すのもテンポよくていいかも。とにかくやっぱり上手いですね。
ただあんまテンポよすぎるとゲームやってることが前提じゃないと話について
いけなくなりますからね…、そのへんを考慮していただけると幸いです。乙でしたー。
560:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 12:04:41 al6atAHb0
(・∀・)イイ!!おもしろいぞ!
561: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:11:25 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)
一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ~、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。
562: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:11:59 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)
一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ~、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。
563: ◆m/UlIJepLc
05/11/26 14:15:37 Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0282 4章 4節 これから(2)
太陽は、東から西へと動きながら、世界を順繰りに照らしていく。その光の当たり始めると朝が訪れ、光が去って再び当たるまでの間が夜と呼ばれる。デビルロードで海を渡るついでに、セシルたちはその境目─すなわち夜明けを追い越してしまったのだ。
とはいえ実のところ、はっきりと時間を遡るのはセシルにとっても初めての経験だ。言葉だけではどうにも伝えづらかったのだが、地面に図を描くと、双子はたちまち理解した。
「おもしれ~!
兄ちゃん、色んな事知ってるんだな!」
「本当です。おどろきました!」
「まあ、受け売りだけどね。
ある人から教えてもらったんだ」
赤い翼が設立される前のことだ。飛空挺で遠出をすると、出発前に考えていたよりも日暮れまでの間隔が長い、あるいは短いような気がすると多くの者が気付き出した。古い文献をひっくり返し、このなんとも不思議な、時差という現象の存在を突き止めた。
大昔、デビルロードを用いた交易が活発だった時代には、広く知られていたらしい。
「飛空挺って……思っていたのより、ずっとすごいです。
お日さまを追いかけてゆけるなんて」
「ほんとだよ。やるじゃんか、バロンの連中もさ!
なあ、もしかして、ずっと飛びつづけてたら、ずぅ~~~っと夜にならなかったりするのか!?」
これは思いがけない質問だったので、しばらくセシルは考え込んだ。確かに理屈の上では、それも可能な気はするが。
「さすがにそれは、試してみないとわからないな……。
でもそんなに速く、長い時間を続けて飛べる飛空挺はないんだよ。
君たちが大きくなる頃には、出来てるかもしれないね」
最後の言葉に確証はない。ふたりが目に見えて落胆したので思わず口にしてしまったが、なんといっても飛空挺はまだ新しい技術だ。改良を重ねた末にいったい何が可能となるのか、誰一人わかっていない。
”わしは飛空挺を、人殺しの道具になんぞしたくないんじゃ!”
─思い浮かんだ懐かしい声は、己が目指していく先に不安を抱き始めていた。その予感が現実になっってしまったとき、彼はどれほど嘆いたのだろう。
この子たちの願いを叶える為になら、喜んで知恵を絞ったろうに。
564: ◆HHOM0Pr/qI
05/11/26 14:22:12 Hy98XmYf0
久しぶりに続き描かせてもらいました……って、いきなり連投の上にトリまで間違ってるよorz
それにしても、しばらく離れている間に他シリーズも盛況だわ、まとめサイトは出来てるわで、なんというか感慨深いもんがあります。
565:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 14:26:44 ys4TE1pG0
帰ってキタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀ ゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
相変わらず次への区切り方が上手い!
566:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 18:16:34 MYyAx/aX0
物語はあんまり進んで無いけど乙。
サイトの更新も気長に待ってるのでがんばってください。
567:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/26 19:29:59 al6atAHb0
オリジナル設定がいい味だしてる!
乙!!
568:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/27 13:44:24 qQwEWWdf0
皆さん乙です。ff8作者です。
好意あふれるコメントを多く賜りまして、ずいぶんと励みになっております。感謝。
また他シリーズの作者さんには、多くの刺激を頂きました。これも厚く感謝。
ところで私事ですが、明日から急遽海外出張する事になりまして、当分戻れません。
(因みに私は商社勤務で、海外取引先とのかねあい上、午後出社&午前帰宅の毎日ですので、
平日は午前中しかカキコできません)
なので、ff8シリーズにつきまして、誰かバトンを繋いでいただければと思います。
サブタイトル変更、オリジナルストーリー挿入etc、どうぞ好きになさって下さい。
唯一の縛りは「スコール一人称」てことでw
どうぞよろしく。では。
569:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/27 19:47:50 p47oogp60
パロムポロムの石化イベントを思い出すと、今のこの無邪気で元気な二人が自分を犠牲にするんだなぁと思う。
あれ?目にごみが・・・うっ・・
570:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 11:59:01 4GD6oPBM0
>569
軽いネタバレ。
未プレイの読者だっているだろうに、配慮を欠く。
571:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 18:59:45 W2LEzYfF0
またお前か
572:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 20:39:26 rObpNtpk0
とんでもないネタバレしてやる。
なんと、DQ3のラスボスはゾーマ!
さあ叩け
573:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/28 23:24:19 S+vSNqw40
保守
574:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 00:06:57 ruek9LSXO
>>572
ひどいや! ポカポカ
575:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 09:57:01 QRezJYffO
>>572
鬼畜め!!
576:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 11:43:32 ALyTAAF90
>>572
ネタバレ氏ね!!
577:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 12:17:15 lv03Dqs+0
主人公を助けるために
パロムポロムが石化するとか、ヤンが爆死するとか、
ラストダンジョンは月面とか、おまいらネタバレしすぎだぞ!
578:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 13:15:21 Cn7HAfH+O
みんな、間違っても
GBA版FF4では、パロム、ポロムとかが復活して、最終的にはキャラの入れ替えが出来るなんて言うなよ。
579:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/29 22:25:28 PetJXADb0
>>578
微妙にストーリーのネタバレでないあたりお前の良心を感じた。
つーか荒らしはスルーしようねみんな。俺もか。
580:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 00:38:18 clUzDZQx0
FFでは、3が一番小説化しやすいと思うんだけど(あくまで個人的意見)、
DS版が出たら書いてみようと思う人いるかな?
581:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 00:52:29 SnsuXoeD0
3はデフォルト名が決まってないし各キャラの個性が0に近いからちょっとやりにくいって
意見が初期にあったな。逆にそれがやりやすいって意見もあったけど。
582:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:46:35 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-11
炎の洞窟から帰還した俺は校門でキスティス先生に礼を言うと自室へと帰った。
一般生徒の自室はSEEDの部屋とは違い、二人で一部屋となっている。
ベットはそれぞれあるものの、キッチンを始めとしたダイニングルーム等は同居人との共有であった。
最も、いつも朝早く訓練に行く俺は自分の部屋の同居人と顔を合わせた事は殆ど無かった。
殆どと言うのは朝食の際、何度か顔を合わせたこともあったが、向こうも寡黙な男であり、
一切言葉を交わす事はなかった。
その点は非常に好ましい同居人の恵まれたと思っている。
「まだ時間はあるな……」
部屋の中の時計を見ると、針は十四時を指している。朝のHRによると、受験者は十六時に一階の
ホールに集合だったはず。
後、二時間。
前もって準備はしていたので特にする事がない。
試験を前にして緊張を隠せない者には心の準備がいるだろうが、俺にはこの実地試験は必ず
合格できると言う自信があった。
後はただ時間が来て、与えられた試験をこなすのみだ。
「もう行くか……」
時計が14時半を過ぎた頃に俺は決断した。
583:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:47:51 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-12
自室のクローゼットから学校指定の制服を取り出す。
基本的にガーデン内では授業中を除いては制服の着用は義務づけられていない。
だが、実地試験に於いては例外だ。
ガーデン側は厳しく制服の着用を要求する。
その理由は過去、それも、俺が入学する前の事に起因する。
その時にはまだ、試験時には自由な服装を許可していた。
だが、その年に行われた実地試験でガーデンの生徒が味方側に誤って撃たれるという事件が起こった。
撃たれた生徒は死亡。バラムガーデンの在校生が犠牲になる極めて稀な事件となった。
制服教官からは一度は実地試験という試験を取りやめるべきだという意見もでた。
だが、シド学園長は断固この進言を拒否した。そして翌年以降も実地試験を続ける事を取り決めた。
この取り決めには当時相当な異論が出て、中にはシド学園長は辞任するべきだという意見もあった。
だが、それは普段の信頼ゆえなのか、学園長を支持する者が教官の中にも何人もいた為、最悪の事態は
避けられた。勿論、この問題を放置する程シド学園長も甘くはなかった。
それからは味方同士の相打ちを避ける為、身元が明らかになるようガーデンの制服を着る事を
強制づけたのだ。
特に反発する者はいなく、むしろ今までが異常だったとさえ言う者もいたほどだ。
翌年からはその方法が適用された。
以来、実地試験における犠牲者はゼロである。
584:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:48:48 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-13
一階のホールに付いた俺は空いているベンチに腰掛け時間が来るのを待った。
来たばかりの頃にはまだ殆ど人がいなかったが、それから数十分程の時間を待つことなく、
ホールには試験を受けるであろう生徒とその見送りと思われるであろう人物でごった返していた。
見送りにくる者は後輩であったり、SEEDの先輩であったり、仲の良い同級生であったりと様々ではあった。
しかし、交わす言葉はほぼ同一のものであった。
とてもじゃないが、これからまがりなりにも戦場という場に赴く者の会話とは思えなかった。
だが、それも仕方のない事なのかもしれない。
繰り返すが、先述の事件以降、実地試験におけるガーデン生徒の犠牲者はゼロであった。
それが、生徒達から恐怖心―もしかすると死ぬのではないかと言う恐れを完璧に打ち消してしまっ
ていたのかもしれない。
そもそも実地試験という名目がついてはいるが、内容は後方支援。
要は戦場という場所の空気を体感してこいという程である。
それにバラムガーデンにはGFのジャンクションを許可してある。
これはガーデンの中でもバラムだけの特徴である。
ジャンクション―GFと呼ばれる異境の生物の力を体に宿した者は常人では考えられないような力を
発揮することができる。
これさえあれば多少の危険はものとせず退ける事ができる。少なくともガルバディアの一般兵と戦う事は
容易い。
だが、その代償として記憶に障害がでたりする等と言う症例が見受けられると提唱する者もいるが、
詳しくは定かにされていない。
585:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:50:43 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-14
「よう、スコール!」
物思いにふける俺の肩を軽々しくも叩く者が一人。
「何だ……ゼルか」
振り返った先にあるその顔を見て言う。
「何だとは何だよ」
文句を垂れるこの男はゼル=ディン。
顔に刻まれた刺青模様に逆立った金髪という容姿は端から見たら素行の悪い者に映るかもしれない。
しかし、根は人の良い好青年だ。少なくとも俺の判断ではだ。
それに、いくら装いを変えても小柄な体型に、顔にはまだあどけなさが残っている。
「ところでさ、やっぱり朝の訓練の奴ってお前だったのか?」
「おい……何で知ってる?」
「今更、もうガーデン中に知れ渡ってるぜ。サイファーの奴またやっちまったのかてさ」
何という事だ……常日頃から俺は必要以外の事は口にせず目立たないように努めてきた。だが、
今朝の自体は俺自身に対する無駄な印象を他人に振りまく結果になってしまったのか。
「お前もさ……相手にしなきゃいいんじゃない。あいつの悪評はもう知れ渡ってる。
教官達ですら諦めてるんだしさ。いちいち構ってるのはもうお前だけなんじゃねえの」
俺が落胆するのを見て取ったのかゼルはそんな事を言ってくる。
「いや、あいつが先に仕掛けてきた。それを俺は逃げるわけにはいかないんだ」
そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。
「おいおい……カッコつけすぎだぜ」
ゼルはその意見に少しばかり、呆れたようであった。
586:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 02:51:23 LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-15
無理もないだろう。俺も他人がそんな事を言ってると酔狂な奴だと認識するかもしれない。
自分でもなんとも無茶な事をしてるのか自覚はあるつもりだ。
むしろ、この程度のリアクションで済んだのが不思議なくらいだ。
「ま、わざわざ俺に話してくれたのは嬉しいぜ。お前いっつも無口で何も話てくれないからよ」
別にそこまで親しくしたつもりはない。ただ、思っていた事を少しだけ言ったまでだ。
前述の通り、俺は無意味に人に本音をさらけ出したりはしない。どうせ、ガーデンという空間の中での
一時の付き合いだ。
やがてこの場から皆巣立っていく。今ここで誰かと親しくなったら後の別れが辛くなるに決まってる。
できるだけ身軽でいたい。それが俺の考えだ。
「そういや、俺もこの前サイファーの奴に酷い目に遭わされたんだよなあ……」
それなのにこのゼルという奴は何故か俺に興味を示す。
ガーデンに入ったばかりの頃から、俺は他人との接触をあまり好まなかった。
それを理解してか自然と俺に必要以上に話しかけてくる者は少なくなった。
当然俺自身も望んでいたことであったのでそれで良かった。
だが、こいつ―ゼル=ディンだけは何故か俺に話してくる事を止めなかった。
こいつの性格なら皆とも上手くつきあえるはずだ。そちらの方が奴にも俺にも幸せなはず。
「あいつわざわざガーデンスクウェアにまで現れてさ……挙げ句の果てには大口論。おかげでしばらくは
閉鎖だぜ……お……」
ゼルの話はまで続いていた。しかし、廊下から教官達の影が見えその口を閉ざす。
「教官達が来たみたいだな。じゃあなスコール。お互い合格できるといいな」
激励の言葉を残し、ゼルは去っていった。よく見れば先程まで談笑していた生徒達もすでに集合場所に
集まろうとしている。
俺もベンチを立ち上がりその行列の群れへと加わった。
587:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 03:00:07 LxTde3yG0
>>568さんへ
本編とはちょっと展開を変えましたが、SEED-10以降の続きをかいてみました。
以降は書くかどうか分かりませんが、568さんの続きに期待しています。
がんばってください。
588:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/30 21:28:16 p+ehMLxt0
イイヨイイヨー!
「おねえちゃん」がでてくるのがちょっと唐突だったような気がしたけど、
いい感じに続いてますね。次も待ってます!
589:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 03:34:19 UqpXMRlJ0
ちょっと読み直して思ったんだけど、竜の騎士団の>>251の飛竜の死因のくだり、
九分九厘じゃなくて九割九分じゃないの?なんか文脈的に引っかかったんで
590:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 08:53:35 6agn72LG0
九分九厘まちがいない……みたいな表現方法はあるよ。恐らく口語的に九割が省略されてるんだと思う。
まあ、>251の場合は「九割以上は」、「ほとんどは」、「大半は」 みたいな言い換えの方がすっきりすると思うけどね。
九分九厘と言ってしまうと、99.9%とまで言ってしまってるわけだし。
591:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 11:41:40 ptmT2jnl0
くぶくりん 3 【九分九厘】
〔一〇分のうち一厘を残すだけの意〕ほぼ確実であること。ほとんど。副詞的にも用いる。
「―だめだと思う」「―まで成功した」
三省堂提供「大辞林 第二版」より
592:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 12:07:15 ptmT2jnl0
>そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。
この時点でのスコールって、お姉ちゃん(エルオーネ)のこととか、
孤児院で育ったこととか、G・Fの後遺症で全図忘れちゃってたんじゃない?
違ったらゴメン。
593:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/01 12:22:41 VPVLRBA50
スレチガイだが
昔の単位は、0.1=「分」だった。今は一つ桁がずれて0.1=「割」で0.01=「分」
「実力は五分五分だ」とか「平熱は36度5分」とか、現代でも「分」の桁位置に名残がある
もちろん九分九厘という言葉はあるし、それは99.9%ではなく99%の事である
まぁ熟語なんで、べつに99.9%とか99%とかそんな細かい違いはどうでもいいのだが
594:589
05/12/01 17:47:49 UqpXMRlJ0
つまり特に問題ないってことなのね。
たいへん失礼しました。
>592
確かに。
あと、初期のスコールにしてはちょっとばかし愛想がいいような気がする。
でもGJです。
595:FF6
05/12/03 01:55:15 Rfb//lS70
ff6 - 27 figaro
―どうすればそんな顔で笑えるの?
目の前に立ちはだかって扉の前をふさぐ衛兵から視線を離せずに、ティナは
不可解に思う。
たとえ過去の記憶を持たなくても。自分以外の女性達が普通に抱く感情を持て
なくても。
―私は、他の人たちが持たない“力”を、持っている……。
そのぐらいは分かっている。そして、いま置かれている状況も。
ナルシェで目覚めたあの時と一緒なのだろうと思った。
この扉の外では、私を捕まえようと必死になっている人達がる。そして、扉の外へ
出ていったロック達は、ナルシェにいたあの老人と同じ事をしようとしている。
―また、ひとりで逃げなければならないの?
恐かった。
放り出されてしまうことが。
拠となる過去の記憶を持たず、休まる場所を知らず。
また、ひとりで走り続けなければならない。
―そうなるぐらいなら……。
596:FF6
05/12/03 01:56:38 Rfb//lS70
「……開けて、下さい」
胸を満たしあふれ出た思いが、口の外へと押し出された。けれど小さく掠れた声は、
意味を持った言葉として相手に伝わるほどの力を持たなかった。それを知って、
ティナはもう一度口を開く。
「お願いです。その扉を開けて下さい」
自分の前に立つ衛兵をまっすぐに見つめた。彼女のあまりにも純粋で真っ直ぐ向け
られてくる視線に、衛兵は思わず一歩後ずさる。
「不安なお気持ちは分かります。ですが、王とロック様は必ず……」
衛兵の口から気休めに取り繕った言葉が漏れたが、先が続かなかった。ティナは
一歩前へ進み出る。どうやら追い詰められているのは衛兵の方だった。
そのときである。
「お待ち下さい」
ティナの背後から聞こえてきたのは、他の誰よりも落ち着きのある声だった。ゆっくりと
語られる言葉の一つ一つに力が宿っているような、そんな不思議な響きで、ティナは
思わず振り返る。
声の主はフィガロの大臣だと名乗り、頭を下げた。
彼はずっと―ティナがここへ連れてこられた時から―後ろに控えていたのだが、
自分から何かを語ったり主張したのは今がはじめてだった。
「エドガー様はこの城のことを細部までよくご存知でいらっしゃる。それは、このフィガロという
国そのものを熟知しているということなのです」
突然なにを言い出すのかと、ティナはじっと大臣を見つめる。
「あなたは先程、神官長からお話を伺っていましたね?」
その名を聞いてティナの脳裏に浮かんだのは饒舌なる老女―そう、彼女のことだ。
大臣からの問いに頷き返すと、あの部屋で神官長が語っていた事を思い出そうとして、
ティナは瞼を閉じた。
597:FF6
05/12/03 02:01:12 Rfb//lS70
ff6 - 28 figaro [About 10 years ago....]
『マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ』
瞼の奥にはあの神官長の姿と、その後ろに並んだ2つのベッドが浮かんだ。
「私の顔の皺だって、まだもうちょっと少なかった頃の話よ」と、神官長は過
去のフィガロを語ってくれた。
***
帝国のフィガロへの侵攻はね、あの頃が一番激しかったんだよ。
……フィガロは小国で領土のほとんどが砂漠だと言っても、機械技術は世界に
誇れる国だからね。帝国が目を付けるのも無理はない。
帝国が欲していたのは領土じゃない、フィガロの持つ技術。
だから、とても卑劣なやり方でもってこのフィガロを侵略しようとしたのよ。
……ああ、ごめんなさいね。この話をするとどうしても……。
本当にごめんなさいね、私のことなんかはどうだって良いわ。話を戻すわね。
帝国が取った方法というのが、国王の暗殺だった。先代フィガロ国王、つまり
現国王エドガーの父君にあたるお方だね―を亡き者にして、かわりに傀儡を
置こうとしたの。
分かるかい? 帝国の息のかかった者を王として送り込もうとしたんだよ。
もちろん、王ってのは世襲―親から代々血のつながりを持った者が王位を
継いでいくわけだから、いきなり余所から国王を迎えることはできない。
つまり、帝国と結託して国王を暗殺し、帝国の意のままに動こうとする……
この国の内部に……。
……。
自分の父親を殺された者の気持ちっていうのは、少し想像してみれば分かると
思うけど、その父親を殺したのは……帝国と……。
…………。
ああもう、ごめんなさいね。
598:FF6
05/12/03 02:12:35 Rfb//lS70
奴らは、誰にも……城の中にいる人間にすら気づかれないように、先代国王を
亡き者にする必要があった。
先代国王はある時、ご自分の身に危険が迫っていることにお気づきになられた。
そこである日、ふたりの息子を呼んだの。近い将来、ご自分が世を去った時の
ために。
ひとりが現国王のエドガー。
あの子は器用で、昔から機械いじりが大好きでね。頭の回転も速かったのよ。
―即位された今だから言うわけじゃないけど、国王向きだと思うわよ。あとは
口説き癖さえ直してくれればねぇ……。まあ、彼は父君に呼ばれた時すでに、
ある程度の事情を察していたんだろうね。
もうひとりが双子の弟のマッシュ。
この子は体も小さくて、大人しい子だったよ。だけど、とても家族思い……いいえ、
家族だけじゃなく誰にでも優しくて、純粋な子だったわ。
『兄貴、おやじ突然どうしたんだろう? 後継ぎの話なんかしだして……』
マッシュはね、父君が息を引き取るその瞬間まで……いいえ、この世を去った後も
信じようとしなかった、父君を手に掛ける者がいたなんて。
599:FF6
05/12/03 02:16:01 Rfb//lS70
それに、……。
この私も、マッシュを傷つけてしまったの……。あの日以来、マッシュの笑顔を
見てないわ。今はどこでどうしているかしら……。
……まあ、たいへんもうこんな時間! あなたを長く引き留めてしまったわ
ね。年寄りのおしゃべりに付き合ってくれてありがとう。
さあ、もう行きなさい。
***
そんな話をしてくれた神官長の表情は、思い出したくなかった。彼女の顔に
深く刻まれた皺は、ここへ至るまでに歩んできた苦悩の痕跡なのだろうと、朧気
ながらに感じたからだ。
話を終える頃には、そんな彼女の皺がいっそう深くなっていた。
口に出す厳しい言葉とは裏腹に、日々増え続ける女中達を見つめている彼女
の方が、よほど生き生きとして見えた。
----------
書いていてやっぱりリレーは難しいと感じました。配慮不足でスマソ。
改めて神官長に命を吹き込んだ297さんは凄いなと思った次第です。
600:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/03 02:18:10 3X6lpg6J0
リアルタイム乙
601:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/03 21:05:19 r4c7gOVZ0
乙! ティナが回想をしている雰囲気がすごいいい味出してます!
前回から続けて読むと、神官長には敬語を使い通して欲しかった気もしましたが、
しかし大臣はなにを話そうとしてるのかな……。
602:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 11:32:15 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-16
「どうしたの、スコール。深刻な顔して」
集合場所へと歩を進める俺に並んで、キスティス先生が言う。
・・・深刻な顔?俺が?
俺の顔はいつもこんなだろ、教官ならそれくらい分かれよ。
「何か悩み事でもあるの?」
再び先生が問う。が、構っちゃいられない。
「・・・別に」
「・・・別に」
あしらうつもりで言った言葉を、綺麗にハモられてしまった。
俺の答えを予期していたというのか・・・不愉快だ。
キスティス先生は口に手をあてて笑っている。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「おかしい?ちがうちがう、嬉しいの。生徒を少しだけ理解できた。
だから、嬉しかったの」
理解できただと?冗談じゃない。
この程度の事で、いったい何を理解できたというのか。
「俺はそんなに単純じゃない」
「じゃあ、話してよ。あなたの事、もっと話して」
だから、何でそうなるんだ?
「先生には関係ないだろ」
「・・・・関係ないだろ」
また、ハモられた・・・ますます不愉快だ。
603:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 11:57:56 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-17
その後しばらくの間、キスティス先生は執拗に俺に話しかけてきたが、俺は取り合わなかった。
しかし逃げ出すことも適わず、結局二人そろって集合場所に到着する。
「・・・あ、いたいた。ゼル。ゼル・ディン!こっちに来て」
シャドーボクシングしているゼルを見つけ、キスティス先生が大声で呼んだ。
「何だい先生?・・・よお、スコールも一緒か」
派手なバック転をかましながら近づいてくる。
キスティス先生にゼル・ディン・・・二人ともタイプは異なれど、
人のプライベートに首を突っ込みたがる点は、よく似ている。
俺の苦手なタイプだ。
「あなたたち、今日の実地試験では同じB班よ」
・・・冗談だろ・・・
「そうか、よろしくなスコール!」
陽気なゼルは俺の感傷など頓着せず、握手を求めてくる。
「先生、実地試験は三人一組だろ?あと一人は?」
ゼルの握手を無視しつつ、俺は先生に訊ねた。
「それなんだけどね・・・実は、サイファーなの」
「そりゃ嘘だろっ!悪い冗談だぜ!」
ゼルが大声で喚く。俺も喚きたいくらいだ。
「変更はできないわよ」
先生がピシャリとはねつけるように言った。
604:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 12:20:53 rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-18
「マジかよ、よりによってサイファーと同じ班ってか」
「何だ、俺がどうかしたのか?」
ゼルのぼやきに呼応するように、背後で声がした。
「げ、サイファー・・・い、いや、何でもねぇよ」
「フン!」
いつもと同じく自信たっぷりの表情で、サイファーが鼻を鳴らす。
傍らには取り巻きの風神と雷神もいた。風紀委員勢ぞろいってわけだ。
「サイファー、あなたがB班の班長よ。頑張ってね」
「先生よぅ、俺は”頑張れ”って言われるのが一番嫌いなんだよ」
キスティス先生の言葉にプライドを傷つけられたかの様にサイファーが応ずる。
「そういうのは、出来の悪い生徒に言ってやってくれ」
「なるほど・・・サイファー、頑張ってね♪」
・・・痛烈だ。先生もやる時にはやる。
傍らではゼルが小さくガッツポーズをしている。正直な男だ。
サイファーはと見ると、小さく肩を震わせながら、怒りと恥辱に堪えていた。
「・・・キスティス先生をリストに加えておけ」
俯いたまま、声を絞り出すように言った。
風神・雷神が怒りに燃えた目で頷く。
リスト・・・例の『ホネのある奴リスト』のことか?
それはともかく、ゼルとサイファー、そして俺・・・
やれやれだ、前途多難な試験になりそうだ。
605:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/12/04 12:28:12 rDw5Ku7y0
ご無沙汰してました、FF8作者です。
思いのほか仕事がはかどって、昨日かえって来ました。
とりあえず帰りの機内でメモ書きしたものを投稿させていただきます。
>>582-586さん、リレーありがとうございます。
本編の大筋にそって書いてくださったお陰でつなぎやすかったです。感謝。
今後もいつにてもリレー参加してください。
606: ◆HHOM0Pr/qI
05/12/04 22:47:16 7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0283 4章 4節 これから(3)
「なにをつまらん話をしておる!
特にセシル、おぬしは今の状況がわかっておらんのか!!」
がつがつ、がづっ。
憤怒に顔を染めたテラが、杖で三人を打ち据える。
「なるべく目立たぬようにすると、申し合わせておったではないか!
こんなところで下らぬことをダラダラと……少しは頭をつかわんか!」
「テラ様、どうか落ち着いて!」
「じいちゃんの怒鳴り声のほうがまずいって!」
言っていることはもっともなのだが、自分はともかく、双子まで本気で殴るのはやりすぎだ。なるべく子供たちに打撃が行かないよう体で庇いながら、嵐の通過を待つ。
長く耐える必要はなかった。いくら頑健であろうとも、老人であることに変わりはない。デビルロードの影響もあってか、すぐにテラは息を切らし、その場にすわり込んだ。
いくら理由を尋ねても口を利かず、息を整え立ち上がってもまだ無言を通すテラに、セシルたちも根負けして場所を移すことにした。
みっつほど角を越えた先には共用の井戸があり、周辺が小さな広場となっている。朝一番の水を汲みに来た人々が、そこで列を作っていた。
異様なほど、静かだった。
音はある。風が生む葉擦れの音、桶に空けられる水の音、木と石が触れ合う音。水槽の縁に陣取った小鳥たちのまばらな囀り。だが人の声がない。
二十人近い女性が集まっているというのに、雑談はおろか、軽い挨拶さえ交わされていないのだ。
「……なんか、気味悪いな」
率直な感想を告げるパロムの声も、別人のように大人しい。セシルの目から見ても、やはり、荒んだ印象は否めなかった。
みな一様に顔を伏せ、黙々と自分の作業だけをこなして足早に去っていく。脇道との境に立つセシルたちに注目する者もない。たまにこちらを見たとしても、関わり合いを避けるように顔を背ける。
その女性も最初は同じように、無言のまま通り抜けようとした。セシル達が潜む路地を数歩ゆき過ぎて、あわてたように踵を返す。見開かれた眼は、まっすぐセシルへと向けられていた。