かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3at FF
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3 - 暇つぶし2ch400:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 08:50:00 iELZbzmd
>>398
影が薄いとは思わないよ。面白いし。
でも、難しいんじゃない?
元々がしっかりとした科白があって、台詞回しがあって、
その瞬間瞬間の表情があって、…という映像を文字に起こすと、どうしても
台本的になってしまうと思う。
アレンジしにくいんじゃないかな。
そういう意味で、他の1,4,5,6,に比べると、「書いている人のカラー」が
出しにくいんだと思う。

401:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 10:23:18 O5zzJnQC
7AC、未プレイの人は当然NGにしてるだろうし、
プレイ中の人も、今まさにホットな時期なので、
イメージ崩されたくない(良くも悪くも)という理由でNGにしてるのでは?

402:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 22:38:56 gdiP9GfR
別にNGにしてなくてもこのスレはROMに徹する潜伏者が多いから。

403:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/02 00:56:55 h5YqCaYd
>>401
未プレイっていうか未見ね

404:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:21:40 9QX82TOV
ところでまとめサイトの管理人さんは……

405:494 ◆yB8ZhdBc2M
05/11/03 02:34:55 aG2VB03e
みなさんお久しぶりです。
更新一ヶ月半程何もしてなくてすみません・・・。
一応スレには目を通していたんですが、ここ最近どうにも忙しくて更新が滞っていました。
今週は学祭期間中で時間が取れそうなので、また少しずつ更新を開始していこうと思うので宜しくです。

てかタイトルが増えたのでサイトデザインを変更せねば、と。


406:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:39:45 9QX82TOV
おお、いたのか。よかったよかった。
某SS総合保管所の管理人みたいに失踪しちゃったかと思ったよ。
更新マターリがんばってください。

407:FF8
05/11/03 11:39:08 DsCVtIEF
FF8-1

訓練施設に剣戟の音がこだまする様になって、もう一時間近く経つ。
「どうしたスコール、本気を出せよ。
このガーデンにゃ、ガンブレード使いは俺とお前しかいないんだぜ。
これじゃ訓練にならんじゃないか」
荒く息を弾ませながら、それでもサイファーは強がって言う。
「それとも降参するか、おい?」
「それはない!」
安い挑発と知りつつも、俺はムキになってサイファーに切り掛かっていく。
昔からそうだ。俺は昔から、サイファーに対しては対抗意識をムキ出しにして
突っかかっていく性癖がある。
どうしてなのか、それは考えたくないし、どうでもいい事だ。
「そう来なくちゃな。
さすがは”骨のある奴リスト”ランキング上位者よ!」
しばらく止んでいた剣戟の音が、再び訓練施設にこだまする。

408:FF8
05/11/03 11:50:11 DsCVtIEF
FF8-2

ガンブレードを得物としたのは、サイファーの方が先だった。
幼少の頃に見た映画の影響だという。
愛しの姫君を守るために竜と闘う騎士を描いた、ありきたりな物語。
相手を射抜くかの様に、切っ先を真っ直ぐ水平にする独特の構えも、
その映画の主人公を真似たものらしい。
重いガンブレードを水平に、しかも片手持ちで構えるなど、およそ実際的ではない。
が、それを実現たらしめているサイファーの膂力には、侮りがたいものがある。

俺がガンブレードを使う様になったのは、サイファーに対抗するためだと、
多くの人は思っている。勿論サイファーもその一人だ。
今までの俺とサイファーの確執を思えば、それも止むを得ないが、
実際のところそれは無関係だ。
訓練生時代に色々な武器を試してみたが、一番しっくり来たのが
このガンブレードだったというだけの事だ。
が、それは誰も知らない。誰にも言ってないからだ。
別に秘密にしているわけじゃない。ただ単に面倒くさいからだ。
自分の事を知ってもらう、これは面倒なだけではなく、さして意味のない事。
俺は人の事に興味を持たないのと同様、自分の事に興味を持たれたくはない。

409:FF8
05/11/03 12:11:20 DsCVtIEF
FF8-3

あまり知られていない事だが、ひと口にガンブレードと言っても、
実は用途に応じて、様々なバリエーションがある。
俺が扱うガンブレードは「斬撃タイプ」と呼ばれるもの。
相手に切り掛る直前にトリガーを引くと、薬室内の炸薬が爆発し、
剣の峰にある噴出孔から大量のガスが噴出する様になっている。
それが斬撃の威力を後押しするのだ。
一方、サイファーが好んで用いるのは「刺突タイプ」と呼ばれるもの。
これはガスの噴出孔が、剣の峰ではなく剣先にある。
相手を突き刺したと同時にトリガーを引き、相手の体内にガスを送り込んで、
体内から破壊する事を目的としている。

とはいえ今は訓練中であり、ましてや俺とサイファーは確執こそあれ
同じガーデンの訓練生という事もあって、当然ながら安全装置が掛かっている。
だから結局のところ、単なる長剣での斬り結びに過ぎないのだが・・・

410:FF8
05/11/03 12:30:56 DsCVtIEF
FF8-4

一進一退の攻防が続く。いつもの事だ。
互いの手の内は嫌という程知り尽くしている上に、技量も似たり寄ったり。
疲労だけが蓄積されていく。
「ふぅ、埒があかんな」
退くもならず押すもならぬ展開に痺れを切らし、サイファーが漏らす。
「!」
・・・サイファー、肘が見えている・・・
サイファーの様に突きを主体とする剣法では、肘を隠すのがセオリーだ。
突きに対しては、下段から肘を払うのが最も有効とされているからだ。
肘は攻撃の起点であると同時に、唯一の弱点でもあるのだ。
積み重なった疲労で、流石のサイファーにも隙ができた様だ。
無防備になったサイファーの肘を狙い、俺はこれもセオリー通り
下段から払いに行った。
剣筋を見極められぬよう、左掌を奴の顔面に突き出す事も忘れない。
「貰ったぞ、サイファー」

411:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 19:47:57 XbQmueFi
FF8の人うまいね。生意気に批評させてもらう事にした
地の文が続くが飽きさせない出来映えだと思う
もともとの映像を読み手が知ってるという助けはあるが、
それにしても戦闘の描写が巧みだ。映像がちゃんと頭に浮かぶ
きっと書き慣れた人なんだろうな
一人称小説の利点をうまく使えてると思うよ


412:FF8
05/11/04 09:40:01 lqCX/N5C
FF8-5

「甘いっ!」
叫ぶと同時にサイファーは半歩退がり、肘をたたみ込んだ。
俺のガンブレードは虚しく空を切り裂くのみ。
肘を見せたのは隙ではなく、誘いだったのか。
いかに疲労のピークにあるとはいえ、
こんな初歩的なフェイクに引っかかってしまうとは・・・

「かかったなスコール、隙だらけだぜ」
まずい。空振りしたせいで、俺の身体は大きく横に流れている。
体制を立て直す暇を与えまいと、サイファーが突きかかってくる。
先刻俺がしたのと同様、左掌で俺の視野を塞ぎながら・・・
いや、違う、これは!
「ファイアッ!!」
サイファーの左掌から火球が飛んでくる。
ブレードを翳し、かろうじて直撃は免れたが、衝撃で俺の身体は後方へ飛ばされた。

413:FF8
05/11/04 09:58:07 lqCX/N5C
FF8-6

「おっと、魔法は卑怯とか言うなよ、スコール。
これはあくまでも実戦を想定した訓練なんだぜ。魔法に対する備えを怠ってはいかんな」
勝ち誇ってサイファーが言う。
・・・サイファー、嫌な奴だ。
しかし、奴の言うことは正しい。実戦であれば、俺だって魔法を併用するだろう。
「スコール、これは備えを怠ったペナルティーだ!」
叫びながらサイファーはガンブレードを一閃させた。
ガンッ
額に衝撃が走る。
僅かに身を反らし、脳天への直撃は避けることができたが、
それでも額の辺りを大きく切られてしまった様だ。鮮血が滴り落ちる。
「どうした、まさかもう降参てわけじゃないだろうな。
さあ立てよスコール。
もっと俺を熱くさせろ!もっと俺を楽しませろ!」

・・・そこから先の記憶が俺にはない。
気がつくと俺は、医務室のベッドに横たわっていた。

414:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 10:11:33 n8KAPmDG
OPムービーでのスコールvsサイファーを極力忠実に描写しようと努力してみました。
私の意図が上手く成功していればいいのですが。

>>441さん
有難うございます。励みにして頑張ります。

415:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 12:29:04 4eU1kbE0
FF8作者さん、乙そしてGJ!
サイファーが小さいころ見た映画の主人公って、ラグナだよね?
ルブルムドラゴン相手にミニゲームした時の、あれだよね?
それで構えが似てるのか。はじめて気がついた。
原作でそういった描写あったっけ?見落としてたよ。
あっやべー、なんかむしょうにFF8やりたくなってきた。
数年ぶりにプレイしてみよっかな。

416:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/05 13:23:06 6KLYwSFD
>>415
アルティマニアに裏話程度に紹介されてただけだと思う。
勘の鋭い人ならプレイ中に気づくんだろうが、俺もアルティマニア読むまで気づかなかった。

417:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:45:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0247 4章 3節 山間(32)

山頂までには辿り着くための道中には一つの吊り橋が架かっている。
長年放置されていたのかその橋は酷く老朽化し、所々の木々が腐食し、足を載せただけで
崩れてしまいそうであった。
「やっぱりこれを昇らなきゃ駄目なんだろうな」
ぐっと息を飲みながら震えた声を口にするのはパロムだ。
「今更怖じ気づいたの?」
「別に……そんな事はないぜ。この程度の橋なんら問題ないぜ」
「ふーんじゃあ、あんたが一番最初に行く?」
「わっ! 分かったよ、そうするぜ」
そこまで言われたら黙ってわいられなかったのか。覚悟を決めたかのように歩を進み始める。
パロムが足を載せた途端、吊り橋はぶらりと左右へと揺れ動く。
「うわぁわーー! やっぱり怖い!」
猛烈な勢いでパロムはセシル達の元へ引き返してくる。
「あら、やっぱりね」
すっかり怖じ気づいたパロムを見て、意地の悪そうな顔でポロムが笑う。
「仕方ないだろう。怖いものは怖いんだから」
「僕が先に行くから。みんなは僕の後ろに付いてきて」
少しだけ見かねた様子でセシルは切り出す。
「本当か。ありがとよあんちゃん」
パロムはふうといった感じで胸をなで下ろす。
「じゃあ行くよ」
そっと足を踏み出す、またもや橋は大きく揺れ、歩を進めるたびにきしきしと音がし
今にも落ちそうである。

418:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:46:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0248 4章 3節 山間(33)

「二人とも僕に付いてきて。大丈夫、下を見なければ怖くないよ」
「でもよ……」
「ええい、何を怖がっとる! 早く行くぞ」
躊躇を続けるパロムの背を今まで黙っていたテラがぽんっといった感じで押す。
そのまま流されるようにパロムは橋に歩み出す。
「ちょっとじいちゃん! いきなり何すんだよ」
「いいから行くぞ。ここで立ち往生って訳にもいかんからな」
「分かったよ」
急かすテラの言葉を受け、それ以降は黙りきってしまった。

419:299
05/11/06 14:54:15 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0249 4章 3節 山間(34)

橋も終わりにさしかかった頃、前方にははっきりと浮かぶ影が一つ見渡せた。
「ようやく到着か……」
その進むごとにその影ははっきりとその形を露わにしていく。
「!」
その建物まで後少しと言ったところでセシルは一つの気配を感じ、後ろを振り返る。
「何だ! あんちゃん。そんなに構えて?」
だが、後ろには驚いた様子のパロム達が居るだけであった。
「いや、ちょっと悪い気配がしたような気がしてさ……」
「そうか? おいらは何も感じなかったな。ポロムは―」
ポロムが首を立てに振ろうとしたその時、橋がぐらりと左右に大きく揺れる。
「な……なんだよ」
パロムは振り落とされそうになり慌てて身を屈める。
フシュルッルーーー
揺れに合わせるかの様にまた山頂に向かうまでに聞こえたあの声が聞こえてきた。
「どうやら、奴はまだ生きていたようだな」
その声を聞いたテラが確信めいて呟く。
「よ……くも、私を殺してくれたな……」
返答ともつかぬ乾いた声が返ってくる。その声は聞き覚えのある―
「スカルミリョーネ! 何で?!」
確かに倒したはず、どうやって生きていたというのだ?
「グハハァーーアノ程度でこの私がぁーくたばるとでも。
死してなお恐ろしいこの土のスカルミリョーネの力を思い知るがいいっっーーー」
急に地面から現れた泥の様な物質が膨らみ始める。
中心には顔がかたどられていき、体からは大型の魔物の角ほどある牙が幾多も突出し始める。

420:299
05/11/06 15:00:01 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0250 4章 3節 山間(35)

「私をこの様な姿にしたお前らはただでは死なせんぞ! ゆっくりといたぶりながら
この私に刃向かった事を目一杯後悔させてやるぞ!」
言い終わらぬうちに、その歪んだ口から白い煙を吐き出す。
「まずいっ、口を塞げ!」
いち早くその正体に気づいたのかテラは皆に注意を促す。
しかし、その頃にはその煙、何かのガスはセシル達の体を蝕んでいた。
たちまちに体が鉛の様に言うことをきかなくなった。
「これは……」
パロムも苦痛に満ちたような呻きを上げる。どうやらこの症状は自分だけでは
ないのだろう。
「テラ……これは……」
この状況では口を開くことさえも相当な労力を要した。
それでも何とか声を絞り出してテラに訪ねる。
「吸った人間の動きを劣化、停止させるガスじゃ。このままでは……」
「この程度はまだまだ序の口、楽しみはこれからだぞ! 簡単にくたばってもらっては
こちらが困る。ハハハァァーー」
「ふざけんなよ。さっきからおいら達を見下しやがって……なめるなよ。ファイ……」
「ふん、遅いわ」
ガスのせいで緩慢な動作で呪文を詠唱しようとするポロムを牙でなぎ払う。
さらに傍らのテラも弾き飛ばそうともう一つの牙を振るう。
「く!」
その攻撃は決して致命傷となる程、威力の高いものでは無かったが、魔法も自由に扱えぬこの状況ではいちいじるしく
此方が不利であろう。
何とかして打開策を打ち出さねばいけない。

421:299
05/11/06 15:32:17 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0251 4章 3節 山間(36)

「ほらほらっ! どうした? いっその事、このまま麓まで突き落としてやろうか?
そちらの方が苦しまずに死ぬことができるぞ」
崖……
そも言葉に触発されるかのようにセシルは目を下に落とす。
吊り橋を構成する、板と板の隙間からはうっすらともやに覆われた森が見える。
ここから落ちたら一貫の終わりであろう。
「そうだ!」
眼下に見える風景を眺めなが、セシルにはある一つの考えが浮かんだ。
「みんな大丈夫か」
「ええ」
いまだに続く攻防の中ポロムが返答する。
「みんな僕の後ろ、つまり山頂の方まで下がって。この場を何とかやり過ごす方法があるんだ」
そこで一旦言葉を切り、皆の様子を伺う。皆、何を始めるつもりなのか疑問に感じているようだ。
「とにかく見ていて。後、テラ……少し協力してほしいんだ」
後退を始めたテラにセシルが訪ねる。
「僕が指定した場所へ魔法をうってくれないか。威力の低いやつで十分だから」
「それならおいらも手伝うぞ」
パロムが会話に割って入ってくる。
「それじゃあ、お願いしようか。念を押すけど詠唱に時間がかかる魔法だと撃つ前に
つぶされる可能性があるから……」
「逃げられると思うなよ」
話し込んでいる間にもスカルミリョーネはこちらに向かいだんだんとその距離を
詰めてきている。

422:299
05/11/06 15:34:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0252 4章 3節 山間(37)

「二人とも頼んだ!」
セシルが指定したのは橋の途中であった。
「いいのか、あんなところに?」
半信半疑ながらもテラは魔法を撃ち込む。勿論、すぐに撃てるくらいの極小威力のものだ。
次いでパロムもその攻勢に加わる。こちらもテラと同じ魔法を放ったのだが、テラとの経験の差か
僅かに遅れての加勢となった。
「よし、後退だ」
「逃がすか!」
執拗に追跡を続けようとしたスカルミリョーネであったが、セシル達に追いつくことは
できなかった。
橋の一部が急に音を立て崩れ始めたからだ。
「何だと?」
落下せぬように残った部分を掴み、這い上がろうとするがそこが大きなスキとなった。
「よし今の内に攻撃を重ねるんだ!」
セシルの指示が響いた後、テラとパロムの魔法―今度は容赦ない程でかい威力のものが
スカルミリョーネに襲いかかる。更に、セシルの暗黒波が追い打ちを駆ける。
「何と! 計られたのか。こんな古い手段にこの私が―」
この波状攻撃にはさすがの四天王の一人としても相当なダメージがあったようだ。
「おのれ……この私が貴様らごときに……! グ……バァァーー!」
限界がきたらしくスカルミリョーネは大きく体勢を崩し、橋から落下した。
その姿はあっという間に小さくなり、眼下へと消えていった。

423:299
05/11/06 15:41:34 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

「何とか……退けられた」
しばらくの間、下を見ていたポロムが息も絶え絶えと言った感じで声を絞り出す。
「ああ……」
同じく息を切らした様子のセシルが同意を返す。
「そういえば体がさっきよりもだいぶ軽くなったきがするぜ」
今更だと言った感じでパロムが体を動かしながら言う。
確かに先程まで体を支配していた不自由さは殆ど消え失せていた。
それでもこの山の空気は厳しいことこの上ないのだが。
「このガスの効果が薄れて来ておるのだろう。しばらくすればもう何とも感じなくなるはずじゃ」
「そうか。なら安心だ」
テラの説明を背に受けつつ、セシルは目前に見える建物に目を向けた。
それは遠くで見たときよりもさらに美しく輝いている。
「これが試練を受ける場所か……」
自分に課せられた試練。その終着点となる場所。
「でもこの入り口開くのか?」
見る限り建物の扉は堅く閉ざされていた。
強硬な鉄の扉はどんなに力を加えても開きそうにはない。
「ここまで来て、扉が開かないのかよ」
項垂れるパロムの傍らセシルが扉に手をかけようとした時―
「息子よ……」

424:299
05/11/06 15:44:45 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

どこか透明感のある、それでいて懐かしい声がセシルに響いてきた。
「誰だ! それに今何て!?」
息子―確かにそう聞き取れた。
セシルは孤児である。本当の両親というものの記憶を持ち合わせてはいなかった。
自分の中にある一番古い記憶を引きずり出してもバロンでの日々である。
「セシル。どうした?」
急に声を上げたのに驚いたのかテラが訪ねる。
「今、誰かの声が聞こえて―」
「そうか? 私には何も聞こえなかったのだが」
そこまで言ってポロムの方に向き直り返答を求める。
「私も聞こえませんでした……」
「おいらもだ」
合わせるかのようにパロムも首を横に振る。
「じゃあ僕だけに聞こえたのか……」
その時、今までびくりとも動かなかった扉が音を立て横に開いた。
「おいっ! 扉が開いたぜ……」
「どうなっとんだ?」
「行こう……」
戸惑う仲間達を尻目のセシルは歩き出した。
扉が開いたのは偶然ではない。試練が自分を呼んでいるだろう。
そのような確信を持った今のセシルには何ら迷いは無かった。
テラ達もいつもと違うセシルの行動に違和感を抱きつつも後を追い、
建物の中に消えていった。

425:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 16:43:22 q0N7rOgn
やっぱり4が好き

426:299
05/11/06 17:25:21 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0254 4章 3節 山間(39)

「お前が来るのを待っていたぞ……」
今度はよりはっきりと聞こえたその声は間違いなく外で聞こえた声だ。
「聞こえるかポロム?」
「いいえ」
そう言ってポロムは首を横に振る。テラも何も聞こえていないような雰囲気だ。
おそらくはこの声は自分にしか聞こえていないのだろう。
「あなたは……あなたは一体誰なんですか? それに僕を知ってるんですか!」
「我が息子よ……聞いてくれ。今、私にとって悲しい事が起きている。そして
その悲しみはこのままさらに加速していくだろう……」
セシルの疑問を余所に声は語り始める。ずっしとのしかかってくるような重みのある声に
セシルは質問を止め、聞きいってしまう。
「悲しみですか……」
「そうだ。そして今お前に新たなる力を授ける事になる。その事により私はさらなる悲しみに包まれることに
なるだろう。しかし、今はこの手段を用いるしかないのだ。否……私にとってこの方法しか思いつかないのだ。
お前にとって辛い試練になるであろう。だがお前ならきっと乗り越えられるはずだ……頼むぞ」
ふっとその声がとぎれるのと急にセシルの目前に剣が表れたのは殆ど同じであった。
「これは……」
古ぼけているがたいそう高名な剣であったのだろう。その格式高さは失われていない。
そして剣は滑り込むかの様にセシルの右手へと向かう。
その剣はまるで長年、苦楽を共にした愛剣かの様に、セシルの手へ馴染んだ。
「これが新しい力なのか……」
光り輝く剣を握りしめそんな事を考えていると―
突然、剣の光が増しセシル達の視界を奪った。
セシルにとってその光は何か暖かいものに包まれるかの感触であった。
光が弱まり、だんだんと視界が開けてくる。そして誰もが先程までと全く変わってしまった事に目を疑った。

427:299
05/11/06 17:31:19 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0255 4章 3節 山間(40)

「あなたは……セシルさんですの……?」
ポロムは目の前に立つセシルをまるで初対面の人にでもあったかのような顔で見やる。
「あんちゃんなのか!?」
二人が驚くのも無理がなかっただろう、今の自分に起こった事に一番驚いたのはセシル自身であったのだから。
「ああ……そうだよ」
水晶状の物質でつくられた床から反射して見える自分自身の姿をじっくり観察しながら、ゆっくりと口を開いた。
鮮やかな銀色の髪に悟りを開いたかの様な瞳。
そして白を基調とした様相は、先程までの暗黒騎士としての面影は翳りも感じられないほどであった。
「これがパラディンというものか……」
「やりましたわね! セシル様」
「これにて一件落着だな」
皆が嬉しそうに感嘆の声を上げる中、セシルは切り出す。
「まだ終わりでないよ。これからが本番だ」
そう言った後、ゆっくりと声がした方向へと振り返る。
「さあ……血塗られた過去と決別するのだ。今までの自分を克服しなければパラディンの
聖なる力は完璧にお前を受け入れないであろう。打ち勝つのだ暗黒騎士の力に……自分の力に!」
力強いその声が終わると前方に影が人影が現れた。ゆっくりと歩を進め此方へと歩いてくるその影は―
「昔のあんちゃん!」
「一体、どうなっとんだ……?」
紛れもなく暗黒騎士セシルであった。
「どっちが本物なんだ?」
パロムはきょろきょろと二人のセシルを見比べている。
「どっちかな……」
それはセシル自身でさえ容易に答えが導き出せる事ではない。ふいに暗黒騎士が剣を抜きはなった。同じくセシルも剣を抜く。
「セシル! 戦うのか?」
「ああ……」
「テラ、手を出さないでくれ……これは僕に与えられた試練。誰にも干渉される事なく片をつけたいんだ。

428:299
05/11/06 17:32:59 GDo6iYTT
それに今までの過ちを償うためにもこいつを! 暗黒騎士を倒す!」
大切な者を殺されたミシディアの人々、自分を導いてくれた長老、憎しみを堪え、自分を試すと言ったジェシー。
ここで誰かの助けを借りる事は彼らに対する完璧な償いにはならないであろう。そして何より自分自身が
納得しない。
「さあ、行くぞ。暗黒騎士よ……血塗られた運命。ここで断ち切る!」

429:299
05/11/06 17:35:53 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0256 4章 3節 山間(41)

地面を蹴り、暗黒騎士へと斬りかかる。
しかし、向こうは軽くセシルの太刀を受け流す。
それもほぼ確実にセシルに剣の切っ先を見切ってるかのようにだ。
「セシルよ……仮初めでなく本当にその力を手にしたければ剣を納めるのだ。
そして自分の罪を受け入れるのだ」
再び、ささやく様な声が頭に流れ込んできたのは、暗黒騎士の反撃を避け、後退した時だ。
セシルにはその意外な言葉を咄嗟には理解できなかった。にわかには信じられない思いで上を見やる。
目前には今まさに暗黒騎士が迫ろうとしているところだ。迎え撃たねば此方がやられるであろう。
「何故だ……」
目前に迫る自分の闇を振り払う事こそが今の自分に課せられた試練ではないのか。
少なくともセシル自身はそう考えていた。
「相手を倒すことだけでは決して暗黒騎士には勝てんぞ。いずれは闇に取り込まれるであろう」
確かに暗黒騎士の攻撃は幾度と続くが、そのどれもがセシルの動きを的確に分析し、全てを見据えた
かのように正確であった。
そして確実に彼の体から体力と気力を奪っていった。
「ここまでなのか……」
声の真意を理解できぬ自分では勝てぬというのか。この試練に散っていった先人達も教えを理解しなかった
為なのか。頭に様々な考えが浮かび、消えていく。
直後、暗黒騎士の剣先から黒い波動が走る。
今の疲弊しきったセシルではその攻撃を避けることはできなかった。いや、もしも充分な体力を
有していても無駄であったろう。幾多の暗黒波がセシルの体中を切り裂いた。
―暗黒騎士にとってセシルという存在は最もよく知る人物であり、身近な存在であり、その逆も然りであった。
体勢を崩し大きく倒れ伏すセシル。後方には仲間達が心配するかの様な声をかけていたが、既にセシルには
聞こえていなかった。
それでは僕はどうしたらいいんだ……。
最後に浮かんだその思考も次第に切れ切れとなりセシルに意識は薄れていった。

430:299
05/11/06 19:11:49 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0257 4章 3節 山間(42)

だが、墜落する意識化の中で自分に話しかける声がまた一つ。
それも先程までの声ではない。何処か曇りのある声だ。
「どうだ。やはりお前にはできなかったんだ……」
「誰だ……?」
しどろもどろな口調でセシルは訪ねる。
「暗黒騎士……つまりはお前自身と言うことさ……」
つまり先程まで自分が相まみえていたものか。でも、何故すぐに止めを刺さない……
自分はこの試練に敗れ去った。つまりはもう用済みなはず。
「お前にはほとほと呆れたからさ。セシル=ハーヴィ」
見透かした様にその暗黒騎士は言う。
「正しき心を得るだの何だのと行っておきながらこの体たらく。所詮はお前もその程度の覚悟しかなかった
のだな。その癖、中途半端に国家などに背いて……こんな事ならカインの様に自分に素直になった方が幾分か
ましだったのかもな」
暗黒騎士の嘲弄に近い言葉に反論する言葉を今のセシルは持ち合わせていなかった。
「もういいよ……さっさと殺せよ。それが君の成すことなんだろ……」
そうさ……もうどうだっていい。暗黒騎士の指摘は全く持って正論だ。
所詮一人ではバロン等の強大な勢力に立ち向かう事などできやしない。
それに幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとってはパラディン等一生届くことのない高みの存在。
このようなザマだ……今更、ミシディアに戻っても皆自分を蔑むだろう。ジェシーも長老にも申し訳が立たない。
そして仲間達にもなんて言えばいいのだ……
もういい……自分の様な中途半端な人間は排除されるべきなのだろう。
だんだんと喋るのも辛くなってきた、いっそ目を閉じて、意識を闇深くに沈めよう。すぐに楽になれるだろう……

431:299
05/11/06 19:20:08 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0258 4章 3節 山間(43)

「セシル!」
遠くで誰かの呼び声が聞こえた。いや、確証はできない。
「セシル……」
またもやだ。そして今度は少し悲しそうな声。
更に自分を呼ぶ声が幾多にも増える。そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだ。
そしてその中でもセシルの心に深く刻まれたものの声が聞こえてきた。
リディア、ギルバート、それにヤンの声だ。
そうか彼かはみな僕と行動を共にした。そして……
最後までは考えたくは無かった。ただ、確実に言える事はその仲間達は誰もが自分よりも
生き長らえるべきはずだった者達だ。
ヤンには信頼される仲間達が沢山いたし奥さんもその帰りを待っているであろう。
その奥さんの耳にもバロン域の船が消息を絶った事は耳に入ってきてるはずだ。その知らせを聞いた時彼女は
どう思っただろうか?
ギルバートも亡き父に代わり国を率いなければならなかった存在。それなのに……
リディアはまだ幼かった。そしてその少女を守ると自分はオアシスの村で誓ったはず。たった一人の人間を
守ると言う約束さ自分は果たせなかったのだ。つくづく情けない。

432:299
05/11/06 19:24:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0259 4章 3節 山間(44)

謝罪に浸る間もなくセシルの耳に入ってくる声色が変わった、そしてその内容もなにやら自分に
怒っているかのようであった。
「貴様よくここに来れるな!」
「あなたたちのせいで私たちがどれだけ苦しんだか……」
「バロンの…暗黒騎士だー!」
憎悪と恐れに満ちたその声は紛れもなくミシディアの人々である。
そしてその声をセシルは黙って聞いていた。
そうだ。自分は国に背けずに彼らを犠牲にした。その行為は我が身の可愛さ
余っての自己保身に過ぎない。こうして自分の過去を振り返っみれば、つくづく
自分はどうしょうもない人間だ。

―あなたはそんな人ではないわ!―

絶望に暮れるセシルを叱咤するかの様な声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だ。そう随分前から聞いていないがその優しい声は何よりもセシルを癒し、勇気づけた。
だがそれが誰の声だったのかさえ今のセシルには曖昧になってきていた。
ごめんね……思い出せなくて……そうセシルが心で謝ろうとしたとき……

バロンのセシルは―そんな弱音……吐かないはずよ!―

―私の……私の好きなセシルは―自分を蔑むような人間ではないわ―

433:299
05/11/06 19:26:16 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0260 4章 3節 山間(45)

その叫びがセシルの意識の完全に現実へと呼び覚ます。
「ほう……まだ起きあがれるだけの力が残っていたのか」
暗黒騎士の声がする。
ありがとうローザ……僕はまだいける!
彼女がいなければ自分はここで倒れていただろう。
「ああ、まだまだだ」
喉に突き付けられた暗黒騎士の剣を払い立ち上がる。
「だが、お前がこの試練の本当の意を知らん限りは何度やっても同じ事だ」
「何となくだけど……分かったようなするよ」
「何!」」
暗黒騎士の声に珍しく動揺の色が混じった。
「そうさ。答えはそんなに遠くにはなかった。むしろ僕にとって限りなく近いところにあったんだ。
それに今まで気づかなかったなんて……」
「成る程。それで……」
「君がさっきから僕を殺さなかったのは躊躇っていたからじゃなくて、できなかったからなんだ
僕が君に決して勝つことができないように」
「ほう……してそれは何故だ?」
「君は僕という存在に於いて切っても切れない関係にあるからさ」
身じろぎし始める暗黒騎士を見て更に続ける。
「パラディンとは聖なる力、暗黒騎士は闇の力。確かに相反し合うもの同士。だが、この教えは決して
ただ、パラディンとしての力を得る訳じゃない。自分という存在の全てを肯定する事にあるんだ!」
「ふふ……上出来ではないか。気絶している間、一体何があったのかな。まあ、そんな事はどうでもいい。
その悟りを開けたならもう私は用済みだな」
「否、あなたはこれからも僕と一緒に常に歩き続ける。唯、今までどちらが表に出ていたかだけの違いだ」
「ハハハーーーッ! そこまでの考えがあったか。では一緒にさせてもらおうか」
そう言ってセシルの手を掴む。そして吸い込まれるかのようにそのまま消えていく。
「いずれお前が自分を見失ったら再び私が現れるかもしれん、それだけは覚えておけ―」
その言葉の最後の方はもう殆ど聞き取れなかった、しかしもうセシルには言わなくても分かるであろう。

434:299
05/11/06 19:28:10 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0261 4章 3節 山間(46)

「セシルよ……ついにやったようだな」
暗黒騎士が消え去った直後、あの懐かしい声が聞こえてきた。
「私も一部終始を見届けさせてもらったが。見事なものだ」
「いえ……僕だけの力では到底無理でした……」
苦楽を共にした仲間達やローザが居てくれてこそだ。
「これから私の最後の力を託そう。今のお前にら使いこなせるはずだ。それにお節介かもしれんが一つ言葉を……正義よりも正しい事よりも大切な事がある。
この試練を乗り越えたお前になら分かるはず」
「分かりました……」
「それでは私はもう消えよう、行けっ! セシルよ。ゴルベーザを止めるのだ……否止めてくれ。
お願いだ……」
「待って下さい!」
この声にはまだ聞きたい事が沢山あった。自分の事を息子と言ったのは何故だ。
それにゴルベーザの事も知っているようであるが…
だが、もう声からは何も返事は帰ってこなかった。がらんどうとした部屋にセシルは立ちつくしていた。
「やったなセシル」
声が聞こえなくなったのか、テラ達も此方に近づき祝福の言葉を投げかけてくる。
「すごいわ! セシルさん」
「あんたやっぱり……」
「シイッ! それはまだ言わない!」
パラディン姿のセシルに魅入るかの様に見つめていたポロムの顔が少し困ったような表情に変わり、
パロムを諭す。
「でもよポロムさ……」
またもや言い合わそう二人の中でもセシルは先程までの出来事―試練の様相を何度も反芻していた。
「あの感覚、不思議と懐かしかった……あの声は一体?」
その疑問に答える者は今は誰もいない。しかし、自分が今からこの先を進んでいく中で再びこの声の主と関わり
を持つだろうとセシルは確信していた。

435:299
05/11/06 19:32:05 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)

「おおっ……ううっ……」
そんな一行の注目を一気に集めたのが、突如呻きを上げたテラだ。
「どうしました? テラ様」
ポロムが心配し、声を掛ける。
「失われた魔法の数々が思い出せそうじゃ……何かが頭に語り掛けてくる様じゃ……」
そう言ってしばらくは天を仰ぎ見ていたテラではあるが、やがてセシル達の方に向き直り……
「思い出したぞ! 忘れた呪文の数々を! うっ……」
そこまで言ってまた頭を抱える。
「メテオ……? あの光が授けてくれたのか。封印されし最強に黒魔法を!」
あの声の主が授けたのだろう。しかしセシルには既にその声は聞こえていなかった。
「そんな魔法まで! さすがテラ様。これで百人力ですわ」
「ちょっと……ポロム……」
「何?」
その控えめな様子のパロムが珍しかったのか、ポロムが耳を傾ける。
「もう……ばら……ちゃってもいいんじゃ……ない……か」
「ああ、その事ね。分かった」
一瞬険しい顔になったが、すぐに元の表情へと戻る。
「えーと。あの~セシルさん……」
「実はおいら達は……」
改まって二人がが何かを口にしようとするが……
「よしっ! 見ておれよっゴルベーザ! この力を持ってお前を倒しにいくぞ」
その言葉は、テラの叫びによって無惨にもかき消された。
「ゆくぞっ! セシル」
そう言って一気に外へと走り去ってしまう。あの歳の老人の何処にあれほどの体力が残ってるのか
疑いたくなる程にだ。
「あっ! 待って下さいテラ様!」
急に走り出したテラを慌てて後を追うポロム。それにつられるかのようにパロムも外へと向かった。
「ごめんなさいセシルさん。詳しい事はミシディアにでも帰ってからで」
その様子を見て、セシルも外へと出ようよ歩き出す。最後にもう一度だけ、後ろを振り返りこう口にした。
「ありがとう……」

436:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 20:03:06 GDo6iYTT
随分な量になりましたが、FF4です。
パラディン試練に関しては前スレの318さんの解釈を活かして
欲しいと言う意見がありましたので、できるだけその意見を
取り入れてみたつもりです。

437:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 20:07:02 as/HbVO9
素晴らしいです。感無量の一言に尽きます。

それにしても、セシルの髪ってやっぱりパラディンの後に銀色になったんですかね。
暗黒騎士のときに兜を脱いでくれないからはっきりしないとこですよね。
別に指摘してるわけじゃなく、前から疑問だったもので。

久しぶりの4の大量更新、お疲れさまでした。

438:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 21:33:28 48JQImNf
4の人非常にうまいね。またもや批評(というか感想か)を述べに参りました

とても引き込まれた。文章の流れがいい。三人称の流儀をよく理解された方だと思う
三人称にありがちな視点のズレもない。キャラの動きと台詞の流れもうまい
感情の部分は感傷的になりすぎず必要最低限表現できてると思う

長いが読ませる文章だった。文章のテンポというかバランス配分が巧み
もう一度言うが、とても引き込まれました


439:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 09:55:57 /Y3ROLny
デスブリンガー…

440:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 13:10:42 tUawCGC3
ff4楽しく読めた。
438氏の言うとおり視点のズレのないのがいい。
7ac作者さんにはよき手本となろう。

441:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 13:18:52 I5nykIIr
>>440
作者の方々にそういう格差をつけるのはどうかと・・
ともあれ299氏グッジョブ!

442:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 14:00:20 lg9x6+1X
格差というか、批評として許される範囲だと思う。
以下酷評かもしれないが、あえて記す。

7acの作者さん、キャラに対する愛情は伝わってくるんだけど、
それが小説としての質を下げている。

キャラの一挙手一投足にいちいち心情表現を付加してるせいで、
視点がブレすぎて、何を伝えたいのかが分からなくなっている。
結果、テンポも悪くなるし、ダラダラ読まされた感じを受ける。
幹となるものを明確に描かず、枝葉を飾ることに腐心しすぎ。

443:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 14:41:45 tUawCGC3
ついでに評

・ff4
テンポよく、無駄のないすっきりした展開でありながら、
キャラを立たせることに成功している。
ストーリー通りにキャラを動かしているといった感じがなく、
キャラが自由に動き回っているような筆致は見事。
欲を言えば、もう少しバトルシーンに緊張感があってもいいかと。
安心して読める半面、どうしても予定調和の感がぬぐえない。

・ff6
バトルシーンは秀逸。
ビジュアルに訴える筆力、緊迫感ある駆け引きの妙、
サイファーの魔法使用に至るまでのスコ-ル左手の布石など、まことに見事。
欲を言えば、一時間にもわたる激闘の割には、両者の疲労や苦痛について
もうすこし描写があってもいいかと。

444:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 15:19:35 I5nykIIr
どうせなら他のも批評してみてくれー

445:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:15:49 IaxfOKel
正直、書かない人の批評なんて聞きたくない・・。
感想なら聞きたいけど。
自分は批評している、なんて大前提の感想、読んでてうれしいんだろうか・・。

7ACの人の文章、そんなにやじゃないなぁ。
描写が丁寧で、それがテンポ悪いという意見もわかるが、ちゃんと書くぜ!みたいな熱意が好きだ。
続きも楽しみにしてます。

善かれと思ってこの文章はいい、この文章はちょっと、と比較や相対的な意見を書くと、誉められたほうもそうでないほうも居心地悪いものだ。

446:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:17:23 IaxfOKel
はたから見てる(ロムってる)人もね。居心地悪い。

447:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:42:15 e6Kyl7SH
>>445.446
書いてる側の人ですか?そうならば耳を貸しましょう
そうでないなら的外れかもしれない

448:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 21:45:03 S13uCgN4
作品を知らない人がする、指摘だけのレスはここでは不必要だと思う。

449:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 22:33:42 e6Kyl7SH
第三者の意見は書き手に必要
それが次の作品をより楽しく仕上げるし、自身の為にもなる

ただ批評と批判は違う。問題点を指摘するなら打開策を提示すべき
必ず、問題点と打開策をセットにすること!
素人は安易に口を出さんほうがいい

7acの人良いと思うよ。楽しく読めるし意欲に惹かれる
まめさとガッツを兼ね備えた人材。正直頭が下がる
次回作に期待している

450:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 03:40:01 rabNjpOj
>>443
どうでもいいことだけどff6じゃなくてff8だな。

451:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 11:13:21 OUszz8/9
FF6で思い出したけど、433さんはいなくなったなぁ。
あの最後のケフカの話からどこに転んで行くのかが未だに気になる。

452:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 19:07:32 6xe/tyoJ
前提としてやっぱり書いてくれてるんだから感謝してなきゃいけないと思う。
それでいて「こうしたらいいんじゃない?」っていうのは全然ありだと思う。
ただ「この書き方だめ、なってないね」とかいうのはいらないけどね。

FF4さんおつかれです!めちゃ感動しました!
やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。
設定についてのことだけど、セシルは幼少期から暗黒騎士の道を歩んでたの?
王が入れ替わったのは本編始まる少し前のはずだから、それまでは兵には
暗黒騎士を使ってなかったんじゃないかな。
ちなみに>>430の「幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとっては」ってやつね。
とにかく面白かったです。次も楽しみにしてます。

453:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/09 23:50:33 kAzBdZqX
いや、熱意とかガッツとかが凄いのは認めるんだけど、それが裏目に出てるって話なんじゃ…>AC

454:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 09:45:55 Q8vVASTh
>やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。

こういうのは言わないほうがいいと思うな。
褒めてるつもりなんだろうけど、
同時に他の作者を貶めていることに気づいてほしい。

455:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 17:36:29 V+HWyvQ+
貶めてない事に気付いてほしい。
もしFF4の小説が不評だったら貶めてる事になるけどそうじゃないし。
他の作品が面白くないなんて一言も言ってない。

456:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:23:48 AkXmxISY
貶しめていることに気付かない無自覚が正直おそろしい。
文章と言うものは、「こういうつもりで自分は書いた」と言う書き手の自覚は意味がなく、むしろ些末で、
「こう受けとめられる」と言う客観こそがネットにおける社会性だ。
書き手と読み手のギャップが少なければいいけれど、
それは互いに別の価値観があるゆえに常に緊迫を孕んでいて、とても難しい問題だから、
大衆掲示板に意見を書くときは細心の注意を払わなくては…。

先日から、感想の書き方に気を付けようと言う流れがあるなか、
あの文章が貶しめていないとするなら、それは若干優しさに欠けます。
相対的な賛辞のことばしかもたない人間の感想など誰が乞うのです?
貶しめたかどうかと言う一個人の思惑よりも、その感想の書き方に疑問を感じる。
仮にも「真面目にノベライズ」された他人の文章を評するならば、
その評する側も真摯な姿勢でことばを選んでいただきたい。
ふじ

457:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:30:06 vOlD0bRq
ふじってなんだふじって・・・

まぁ、あの褒め方はないよなあと自分も思った。
他の作者がどう思うんだ?と、ひやっとする。

しかしFF4、いいな・・・

458:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:05:51 fFy5TL+2
なんだこの流れ

459:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:08:53 V+HWyvQ+
まあそう言われればそうなのかなと思うけど、そこまで長々と文章書かれるほどのことなのかこれって。
1,2スレ目はこんなの無かったのになー。匿名掲示板なんだし。
まあアンタも他の書き手みたいだから癪に触ったんかもしれんけどね。

460:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:46:01 kxCSjsuv
少し前から気になってたんだが、微妙に釣ってる様なレスするやつが紛れてないか?
スルーしてノベライズを楽しめばいいのにと思う

461:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 00:29:40 zSz53lpn
なんつーか、書き手さん皆様GJ。
自分は筆力ないのでマジ羨ましいです。どうしてもバトルが書けない・・・。


462:297
05/11/11 00:46:50 rcz2kYh6
299さん大作乙です。
後ろ向きなセシルの考え方が総仕上げのように積み重なってて、
いよいよという話の運び方は流石です。
これでやっと長い一段落にさしかかりましたね。

>>461
お互い素人なんだから是非書いて。


463:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 01:02:58 vNG5QWNd
>>461
読みたい。

464:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 11:46:04 Sv7wXisJ
読みたかない。
これ以上、駄文の羅列は御免蒙る。

465:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 12:58:28 y+q/I3ju
いや~
なんか最近トゲトゲつーか険悪だなあ
全体的に書き手が減ってる感があるんだけど
理由はこの辺り?

466:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 14:42:56 DUu3EPlj
かもな。

467:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 17:47:44 6wU0Q4FD
今まとめのFF4読んでるんだけど、なんか本当に良い。クオリティ高いとかそういうのも勿論なんだけど、
ゲームじゃなくて読み物として集中できるから、セリフや描写の一つ一つに感動できて。
ノベライズしてくれてる人たちにすごい感謝。ありがとう!

468:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 22:13:54 oaF62BMD
>>464
露骨過ぎるぞ馬鹿

469:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 10:28:06 YLjl2o1t
不特定多数の耳目が集まる掲示板。
作品を投稿するのは自由だけど、読者が何を言うのも自由だと思う。
その一方、腫れ物に触るように作者の機嫌をとるのもまた自由だが。
たとえそれが批評の名に値しない罵倒の類であったとしても。
それが嫌なら掲示板に投稿などすべきではないよ。
個人のサイトでやればいい。

470:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:08:17 uoXxOl3N
いかにもプギャらしい理論だ

471:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:28:20 YLjl2o1t
プギャと決め付けるのも、もちろん自由。
駄作と罵倒するのが自由であるのと同じ。

472:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 12:01:44 XpZlzH5+
>>469
理論についてはおいといて、
淡々としていてなんか笑った。

473:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 13:26:30 uoXxOl3N
自由と横暴を履き違えるのはよくないな

474:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 19:02:22 eeDKxHpE
さて、このような議論はSSを投下しにくい雰囲気にするから
そろそろ終了して作品が出るまで、みんなROMってようぜ

475:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 22:56:30 pMSClUVQ
賛成~!

476:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 14:09:34 87WBS+ZN0
まったく、凶暴な名無しどもだ
わけがわからんよ

477:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 19:24:53 IZ4AfpAV0
管理人さんはご健勝じゃろか・・
あと5の人とか。

478:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 23:59:08 RphqfPvm0
勝手に感想。

>>FF7AC
実際に見た後で読み返すとその細かさには頭が下がります。
ただ他のレスにもありましたが、もう少し削っても良さそうですね。
そのかわり、FF9みたくATEがあっても面白いかも知れないかなと思ったり。

>>FF8
一人称で語られる戦闘の様子は、緊張感がありながら安定感のある
文章運びで読みやすかったですし、巧いなと思いました。
ラグナの伏線の事はここを読んで気づきました。そんなきめの細かさもGJ!!

>>FF4
未プレイながらも毎度楽しく拝読させて頂いてます。前知識がなくても
すんなり入り込めるあたり、ちゃんとキャラクターの背景も描かれていて
読み物としてFF4に初めて触れる自分のような立場にとっても優しく
丁寧に作り込まれていると言う印象です。

書き手さんGJ!

479:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 00:26:41 hs43zf740
318です。
誤解や混乱を招くような文章投下してすみません。気づかない点をご指摘下さった
>>386には感謝です。
個人的な感想になりますが、身になるレスが多く頂けて嬉しく思います。ありがとうございます。

480:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:31:12 hs43zf740



 他の土地に暮らす者に比べれば慣れているとは言っても、雪道を走るのは楽なこと
ではない。凍結した地面の上に積もった新雪を踏みしめながら、彼は背後に迫る
帝国軍よりも先に炭坑の奥へ辿り着かなければならなかった。
 炭坑を守る最後の切り札、それを解放するのが彼に課せられた任務である。
 走り続ける男の脳裏によみがえるのは、今見たばかりの悪夢の光景。魔導アーマーに
搭乗していたあの無表情の少女は、雪の上に僅かに残った仲間の骨を踏み越えた。
新雪を踏みしめるのとは明らかに違う、骨が砕かれる小さな音が耳から離れない。
 数時間前まで、それは確かに会話を交わしていた仲間だったのに。
(くそっ、化け物め……!)
 思わず足がもつれた。辛うじて転倒は免れたものの、派手に雪を蹴散らしながら大きく
体勢を崩した。それでも炭坑へ向かう足は止めなかった。
 仲間達の命を次々と飲み込んでいった魔導アーマー。あんな化け物に対抗できる力は、
もう1つしか残されていなかった。
 それはこれまで、忌むべき存在として炭坑の奥で眠っていたもの。呼び覚ますためには
自らの命を差し出す覚悟さえも必要とする程の存在。しかし、今となっては頼れるのは
それだけだった。
 帝国に踏みにじられた仲間達の命を、無駄にするわけにはいかない。

 彼は意を決し、檻の向こうの闇を見つめた。

481:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:34:50 hs43zf740

                    ***

 てっきり炭坑の内部はバリケードやトラップなどが仕掛けられ、ナルシェ側は
全力で侵入を阻んでくるだろうと予測していた彼らにとって、炭鉱内はあまりにも
退屈な場所だった。おそらく洞窟に自生しているであろうモンスターに何度か
遭遇しただけで、苦もなくここまで到達することができた。
 炭鉱内ではじめて彼らの行く手に立ちふさがったのは、木で組み上げられただけの、
申し訳程度の防壁だった。
 しかしこんな物では時間稼ぎにもならないだろう。
「俺がやる、下がってろ!」
 男の一人が前へ出て言い放つと、魔導アーマーごと体当たりして木製の防壁を
破壊した。地面に散らばった廃材を踏みつけて、男は前方へ顎をしゃくった。
 そんな相棒の姿を見て、奴らしい力業だな、と、後ろに立っていた男は小さく笑った。
 その直後だった。
 たった今壊したばかりの防壁の先に広がる闇の中から、逃げるように走り出てきた男
―ナルシェのガードと対峙する。

「幻獣はわたさない! ……ユミール、行け!!」

 狂気にも思える叫び声と共にガードが脇へ飛び退くと、背後から突進してきた得体の
知れない―巨大なカタツムリのようにも見える―怪物が魔導アーマー三体の前に
現れた。彼らは反射的にレバーを握り身構える。

482:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:36:33 hs43zf740
「待てよ! コイツは……」
 これまでに見たことのない異様な姿の怪物を目の前に、ビックスが声をあげた。
戦場における彼の知識には全幅の信頼を置いているウェッジは、相棒から
もたらされる情報を黙って待つことにした。
「思い出したぜ!」
「知ってるのか?」
 その問いに頷いたビックスは、左右のレバーを握りしめると視線を前方へ向けた
ままで言葉を発した。今し方見せた豪快さとは打って変わり、慎重な物言いだった。
「以前、雷を食う化け物の話を聞いたことがある……」
 相棒の言葉に、以前どこだかの任務で見た資料の記述を思い出したウェッジが、
記憶の中の記録を辿った。
「殻に強力な電流を蓄えるという……」
「そうだ。殻には手を出すなよ、ウェッジ!」
「わかったぜ!」
 そう言って再び戦闘態勢に入った二人の横で、“少女”は何も語らずにユミールを
見つめていた。
 最初に攻撃を仕掛けたのはビックスだった。こんな局面でもファイアビームを使用する
辺り、筋金入りの横着者なのだろうかと疑いながら相棒を横目で見やったが、パネルを
操作する手を止めることはなかった。
 相棒から遅れること数分、青白い光を纏った冷気の固まりがユミールめがけて一直線に
伸びる。ブリザービームだった。搭載された兵器の性能と、目標物自体が巨大だった事も
手伝って、それは見事に命中し相手にダメージを与えた。
 これで目の前の怪物は魔導アーマーからの攻撃を二度もまともに食らったことになる。
舞い上がった土埃の中に目を凝らし、与えたダメージの大きさを測ろうと試みる。
 しかし、ユミールは倒れていなかった。
 薄々分かっていた事だが、現実を目の当たりにしたビックスのレバーを握る手にうっすらと
汗が滲んだ。こんな風に恐怖と高揚が入り混じった心地を、戦場で味わうのはずいぶん
久しぶりのように思えた。

483:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:39:38 hs43zf740
(……思ってたより歯ごたえがあるな)
 数分、数秒でも早く敵にダメージを与えるためにと選んだファイアビーム。
後に続いたウェッジはねらい通り敵の弱点をつくであろうブリザービームを
選択してくれた。だが、期待していたほどのダメージは与えていないらしい。
ビックスは次の手を決めあぐねていた。
 隣に並んだ“少女”にちらりと視線を送った。無表情のまま、彼女は手元の
パネルを操作している。魔導アーマーの先端にエネルギーが集まり始めた時、
地が唸るような音が耳に届いた。
 音と共に搭乗していた魔導アーマーごと大地が揺れ始めた。ユミールが殻に
身を隠そうとしている、その前兆だと気づいたビックスは声をあげた。
「……待て! 撃つな!!」
 その叫びが無駄になることは分かっている、けれども叫ばずにはいられなかった。
このまま撃てばヤツの殻に直撃してしまう。だが、ひとたび実行した操作の取り消し
機能は搭載されていない。いったん選んだ攻撃を、止めることはできなかった。
 魔導アーマーの強大な力は恐らく設計者自身の予測した以上のものだったはずで、
攻撃を止める場面を想定する必要などなかった。そう言うことだろう。
「……くそっ!」
 俺が設計する時は、コマンドの取り消し機能を搭載してやるのに。と、今さらになって
無駄な反論を呟いてはみたが、事態を変えることはできなかった。
 地鳴りがやんだ直後、“少女”の放った攻撃は見事にユミールの殻に命中する。
程なくして、殻から大量の放電が始まった。
 魔導アーマーに搭乗しているとはいえ、実体は生身の人間である。ユミールの殻から
放たれた電流が、文字通り彼らの身体に落とされる。言葉にならない喘ぎを漏らしながら、
彼らは必死でユミールの反撃に耐え続けた。
 幸か不幸か、体力の半分ほどを削られても彼らはまだ生きている。攻撃がやむと
すぐさま顔を上げた二人は、この魔導アーマーに搭乗して以来、恐らく初めて使うで
あろう機能を実行するべくほぼ同時にパネルを操作し始めた。

484:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:44:51 hs43zf740
 ヒールフォース。搭載された中で唯一の回復機能である。
 しかもこの優れた回復機能のお陰で、搭乗者が一撃必殺の技を食らわない限りほぼ
全快にまで体力を回復することができた。つまり魔導アーマーに乗っていれば無敵を誇る、
まさに最強の戦闘マシーンだと実感する瞬間であった。
「畜生、手がまだ痺れてやがる。もうこんなのはゴメンだぜ」
「……ああ」
 そんな言葉を交わしていると再び大地がうなり声をあげた。今度は殻に隠れていた
ユミール本体が姿を現す前触れだった。
 ビックスは“少女”に向けて命令を下した。それは回復よりも攻撃を優先させるものである。
その声に驚いた表情を向けるウェッジに。
「情でも沸いたのか?」
 と、揶揄するように尋ねた。ウェッジは短い否定の句と共に首を振った。彼曰く、今は
攻撃よりも回復を優先させるべきなのでは? という主張に。
「……とりあえず回復なら俺らでもできる。だが、ヤツには独自の機能が搭載されて
いるだろう?」
 そう言って“少女”を乗せた魔導アーマーを指さした。
「なるほどな」
 やはり戦場での判断能力は相棒の方が優れていると認めざるを得ない。頷いたウェッジが
パネル上の操作をはじめると同時に、横の方から耳障りな機械音が聞こえた。
 ―魔導ミサイルか。
 彼の予想は的中し、少女の搭乗した魔導アーマーからそれが放たれる。少しだけ肩を落とした
“少女”に、疲労を見て取ったウェッジは素直な感想を呟きながらパネル操作を続ける。
「……不死身じゃないのか」
 苦笑しながらレバーを引くと、今度は“少女”に向けてヒールフォースを放った。
 直後に轟音がしたかと思ったら、続くように相棒の声が鼓膜を揺らす。
「おい、見たかウェッジ!!」
 魔導ミサイルの与えたダメージは、これまでのビーム系とは比べ物にならなかった。ビックスの
もくろみが見事に功を奏したのだ。
「殻に閉じこもっちまう前に、一気にケリをつけるぞ!」
 一時はどうなることかと思ったが、やはり魔導アーマーと互角に戦える敵などこの世には
存在しないのだ。

485:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:48:07 hs43zf740
 時間はかかったが、魔導アーマーの性能を発揮するにはこれぐらいが丁度いいのかも
知れない。攻撃の中止機能を追加させる事とあわせて、研究所へ提出する戦闘記録には
そう書こうなどと考えながら、戦闘は幕を閉じた。

                    ***

 炭坑の一番奥深くに、目的の物を見出した一行はその前で立ち止まると、岩の上に
祀られるようにして安置されたそれを見つめた。
「これが……氷づけの幻獣?」
 その不思議な姿形に見とれながら感無量と言わんばかりにため息を吐いた相棒の横で、
ウェッジが不安を露わに呟いた。
「おい! なにか様子が変だ? ……なにか不気味な……」
 言いかけて不意に聞こえた機械音に視線を向ければ、“少女”が幻獣に歩み寄ろうと
前進していた。
 誰からの命令でもなく、“少女”自らの意志で動いた。この“少女”はやはり……。
(生きて……いる)
 兵器などではなく、我々と同じように生身の人間なのではないか。先程の戦闘でも、
ユミールからの反撃を食らった彼女は確かに疲弊した様子を見せていた。自分たちと同じように。
 ―もしかすると……。
 ウェッジの思考を遮るように、不気味な光が炭鉱内を照らし出す。歩み寄る少女を、
まるで氷づけの幻獣が拒んでいるようにも見える。


「な、なんだこの光は! ……うわわわわっー!!!」
 なにも分からぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ウェッジの見た真実を誰も知ることはない。

486:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:52:32 hs43zf740


「な、何だ?! ウェッジ、おい!! どこへ消えた!?」
 ―よせ。なんの冗談だ!?
 彼にとってそれは初めて味わう恐怖だった。戦場に転がっている死の恐怖、そんな
ものには慣れていたはずだった。しかし、今感じているのはそれとは別のものだ。

 ―もしかすると我々は、とんでもない過ちを……。

「あっ、か、かっからだが……」
 なにも知らなぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ビックスの思った真実を誰も知ることはない。

 残された少女は誘われるようにして氷づけの幻獣へ向けて歩を進める。拒むように
何度も光を放つが、この少女には通じなかった。
 通じないどころか、同調するように力が増幅される。行き場を失った魔導エネルギーは
洞窟の岩肌を這うように拡散し、やがて両者の間に戻る。それを繰り返しながら蓄積された
エネルギーを抱えきれなくなった炭鉱内の空気は飽和し、解放を求めて火花を散らす。
 薄暗い洞窟内が真っ赤な閃光に包まれる中で“少女”は意識と、兵器としての存在を失った。

                    ***

 Under the command of Empire
 The strategy failed.

 なお、この任務における炭鉱都市ナルシェからの帰還者は、ゼロ。
 帝国軍司令部の最終報告書には、それだけが記されたという。

                                  -FF6オープニング<終>-
----------
その後、ゲーム本編ではティナ覚醒(433氏プロローグ)に続きます。
長くなりましたが、お付き合いいただき有り難うございました。

487:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 01:18:39 arAlC/Uj0
リアルタイムで読ませていただきましたww

ビックス、ウェッジが悟った真実が何なのか少し気になるけど
読みやすかったし、終わり方もちゃんとしていて良かったよ。
オープニング編が帝国兵側の視点だけじゃなくて、ガード側の視点も書かれているのがとても斬新だった。
こんな感じで続きも見てみたい。

とにかくオープニング編乙!

488:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 11:34:01 drVKFUHL0
ff6-OPさん乙。
前回までと比べて、文章、ボリューム、テンポともに安定している。
視点のズレについてもかなり改善されているが、やはり気になる箇所が散見される。
以下、その所感。

480はナルシェのガードの視点で、481以降はウェッジ視点。
しかし、480、481ともに「彼」「彼等」という代名詞で始まっている。
視点の主が変わったことをハッキリさせる為にも、代名詞は避けたほうがいい。
また、481以降、ウェッジ視点であるはずなのに、ところどころビックス視点が
入り混じっており、違和感を受ける。
前回からの流れでいけば、ビックスの描写はウェッジ視点からのもので統一した方がいい。

489:488
05/11/15 12:17:23 MCajW8Vl0
否定的な意見に傾きすぎた。
以下、評価点。

ユミールとのバトルでは緊張感をうまく演出できている。
取消し機能など、細部の描写にリアリティーを導入しつつも、
冗長と感じさせない様、配分をうまくコントロールできている。
行動に対する理由づけが多いせいで、スピード感には欠けるが、
これは人物造詣のためには、ある程度やむを得ない。
様はバランスの問題なのだが、全体的にうまく統制されている。

490:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 12:19:57 LashVkjJ0
うん、こういう的確なアドバイスは書き手にとっても嬉しいと思うよ?


491:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 15:41:01 fucC2nP00
>488
>480と>481はちゃんと区切りもありますし、「ナルシェ側」という表記もあるので、まあ構わないかと。
ただ、確かに視点のズレが気になるのは確か。具体的な違和感の箇所を指摘、ないし「視点の統一」の方法論をある程度示してあげてはいかがでしょう?

492:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 17:01:13 kElGpWvg0
ちと思ったが、批評に対する批評はやめとかないか?
各人思うとこはそれぞれあるだろうし、きりがないよ。
どれをとって参考にするかは書き手さんの自由だしさ。

オープニングGJです。
433氏の冒頭ともうまくつながりますね。
この具合で本編の続きにも参加していただけると最高です。


493:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 19:56:30 fucC2nP00
視点への言及が不親切と感じた故に書いたまでの事で、荒らす意図はありませんでした。お詫びします。

494:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 21:36:31 pVQtL/IT0
いや、俺も文句言ったわけじゃないんで……ごめんね
またーりROMろう。

495:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 23:46:29 vCEG0Z7S0
視点を変えながら書くのもいいね。
乙でした

496:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/16 23:29:57 +7BjweSRO
保守

497:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 02:21:19 S472HOBC0
久々に覗いてみたのでついでに保守。
いつのまにかすげー盛り上がってんな。
職人さん方、激乙です。全シリーズめちゃ楽しませてもらってます。
あと超亀レスだけど>>243-266、すごすぎる。本編の方でもこれ絡めてほしいな。

498:299
05/11/18 19:36:57 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)

「おい! 向こうから何かが近づいてくるぞ」
「本当か?」
ミシディアの早朝。店先で欠伸を一つして物思いにふける店主の耳に聞こえてきたのは城壁近くにいた
黒魔導師達の話声であった。
「速いぞ、どんどんこちらに近づいてくる」
「あれはチョコボか?」
チョコボ? この大陸にあるチョコボの主な生息地は試練の山の周囲を取り囲む森だけだ。一応、他にも
散在してはいるものの、その規模は大して大きくない。まして人間を背に乗せ走るチョコボは唯でさえ数
が少ないと言うのに。それでは―
起きたばかりでまだはっきりとしない頭で、そこまで考えていると大きな音がしてきた。
これはチョコボの足音だ、大きくなっているということは、ミシディアを目指していると見て間違いない。
やがて足音が止まり、一つの声がする。

499:299
05/11/18 19:37:48 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0263 4章 3節 山間(48)

「よっと」
一声と共に、チョコボから降り、門をくぐるその姿には紛れもなく―
「帰ったのかパロム、ポロム!」
「おう」
森へと帰っていくチョコボに向かって手を振りつつパロムが威勢のいい返事を返す。
「それで……」
暗黒騎士はどうなったのか。それが気になり、訪ねようとした時、二人の近くに見慣れた人物を見た彼は
思わず質問を変更せざるをえなかった。
「あんたは賢者テラ……なのか?」
「ああ」
自分の事に気づいたのかテラはややそっけないといった感じの返答をする。
「何だ、おじちゃんも知ってたのか。何でも凄い高名な人物らしいぜ」
「そうなのか」
続けて最初の疑問を尋ねようとする。しかし、わざわざ質問する必要すらなかった。
「あんたは……」
試練の山から帰還した一行の中、彼が知らない人物が一人混じっていた。それに暗黒騎士の姿が見えない。
と言うことは。
「よう。どうした?」
後ろから声をかけてくる者が一人。ざわめきを聞き取ったのか、偶然に近くを通った。
「ああ。その……」
「どうした? え……」
先程、店主を悩ました光景はこの若い男にも目に入ったらしい。そうして彼もついさっきの店主と同じ
驚き方をした。
「あ……えと……とにかく長老のところへ知らせの行ってくる!」
若い男は言い終わらぬ内に走り出してしまった。

500:299
05/11/18 19:39:29 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0264 4章 3節 山間(49)

若い男が知らせに行った後、すぐにでもセシル達は長老のいる館をへとまぬかれたのであった。
「お急ぎください……噂を聞きつけた方々が集まってくる前に」
セシル達を招待した女官は長老の元へ案内する途中に、そんな事を口走った。
当然、自分が期間するとは思っていなかった者も多いであろう。だが、自分はこうして帰ってきた。
多くの者は先程の男の様に驚くであろうし、実際にその目で本当かどうかを、確認したい人もいるであろう。
それでなくてもただ、興味本位でパラディンの姿を見たいと言う者もいるだろう。
もう少し時間がたつと、その趣の用件で神殿を訪れる者が後を絶たなくなるであろう。そうなればセシルは迂闊
に姿を見せることはできなくなる。
この女官の急げと言う言葉には、そういう意味が含まれているのだ。
「その姿……ご立派です。貴方も自身の中に、迷いを持っていたのですね。でも今は一切の迷いも感じられない。
とても良い表情をしていらっしゃいます」
最後にそう言い残して立ち去っていった。
「セシル殿……よくぞ試練を乗り越えた」
通されたのは神殿の祈りの間である。そこでは初めてあった時と同じように長老が一人佇んでいた。
「それとテラは……何処だ?」
あらかじめの報告を聞いていたのかテラが帰ってきた事を長老は知っていた。
セシル達を一瞥し、その姿が確認できなかった為、そう質問した。
「少し、神殿の中を見させて貰うと言ってましたよ。すぐに来ると言ってました」
「そうか……」
長老は珍しく、落胆した様子で肩を落とす。
セシルが試練をへてパラディンの資格を得た事も充分な話題であったが、テラの帰還もまた、
ミシディアの住人達にとっての重大な知らせであった。
テラはかつてはミシディアに住んでいた。パロムやポロムの弁によると相当名のたつ賢者として通っていた。
長老とも面識があったと見てもおかしくはないだろう。色々つもる話もあるのであろう。

501:299
05/11/18 19:50:16 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0265 4章 3節 山間(50)

「二人は足手まといにはならなかったか?」
気を取り直して長老は訪ねる。
「ええ……それは問題ありませんでした」
むしろ、多くの局面を救って貰ったこの二人には感謝の言葉もない。
「それで……この二人は? 一体」
「ああ! そうか戻ったら話すんだったな。長老……」
そう言ってパロムは長老の方へと向き直った。代わりに話してくれと言ってるようだ。
「では、私の口から話そうか……そもそも私がパロムとポロムをセシル殿のお供につけたのは当然修行を兼ねた
手伝いとしての意味もあるが、もう一つはお主を監視するためだったのだ」
「監視?」
「ちゃんと最後まで試練をなせるかどうかを詳しくな」
「そうですか……」
「だが、その必要も無かったようじゃな。二人ともご苦労であった」
「ごめんなさい。セシル様……黙っていて」
「いや、あんな事までしたんだから疑われない方がおかしいよ」
丁寧に謝罪の礼をするポロムを見て、セシルは特に気にとめていないという趣の言葉を返す。
生真面目な彼女の事だ。黙って関しする事には抵抗があったであろう。
「ですが……」
「もう気にしていないていってるんだから。ここまでにしようぜ」
パロムが言う。ポロムと対照的に、この事に関してはもう特に気にはしていないようだ。

502:299
05/11/18 19:51:23 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0266 4章 3節 山間(51)

「それで、パラディンになった感想はどうだ?」」
重い雰囲気を晴らそうとしてか、長老が話題を切り替える。
「正直、今になっても実感はありません。本当に僕が……って感じで」
その場を取り繕う為の方便でもなければ、遠慮しての事でもない。率直な感想であった。
「それに力に馴染むのには、少しばかり時間がかかりました」
「どういう事だ……」
「ええ、この力を手にしてから下山しようとした時でした。幾度か魔物の群れに遭遇して戦闘に突入する事が
あったのですが、戦おうにも最初はなかなか力を発揮する事ができませんでした」
「ほう……」
長老の反応を待った後、セシルはさらに続けた。
「でも。戦闘を重ねていく内にだんだんと力の使い方が分かってきました。今では特に問題はありませんよ。
おかげで下山してここめで帰ってくるのに結構な時間がかかりましたが」
もし、チョコボに乗らなければもっと時間がかかったであろう。

503:299
05/11/18 19:52:22 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0267 4章 3節 山間(52)

「それと、ちょっと気になることが……」
ふと思い立ったかの様にセシルは口を開く。
「山頂での試練の際、剣を授かったのですが、この剣、よく見てください……」
セシル自身も下山の折、剣を扱っていく中で、偶然にも気づいた事だった。
刃の部分に何か文字らしきものが深く刻み込まれていた。
「幸い、文字が読み取れない事は無かったのですが、何について書かれているのか長老に伺っておきたい
と思いまして」
一度、セシルも全てに眼を通したのだが、今ひとつその言葉が何を意味するものなのかが分からなかった。
だが、長老なら何か分かるかも知れない。
「剣にはこう書かれています……」

504:299
05/11/18 19:53:06 aluXxVi30
龍の口より生まれしもの
天高く舞い上がり光と闇を掲げ
眠りの地にさらなる約束をもたらさん。
月は果てしなき光に包まれ
母なる大地に大いなる恵みと慈悲を与えん。

「これはミシディアに伝わる伝説と同じ内容だ……」
最後まで聞いた長老は
「ちょっと見せてくれ……」
セシルから剣を受け取った長老はその文字を一字一句、丁寧に何度も読み返した。
「間違いない」
「それで、これはどういう意味をさしているんでしょうか?」
断言した長老にセシルは聞き返す。
「ただ、伝説として伝わっているだけであってそれが何を示しているのかまでは現時点では
分かっていないのだ」
「そうですか」
となると、もうミシディアで知ってる者は誰もいないと見た方がいいだろう。
「ミシディアに伝わる起きてではこの伝説の為に祈れと言われている。ひょっとすると今がその時なのかも
しれん」
長老のことば何処か予兆めいていた。

505:299
05/11/18 20:00:19 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0268 4章 3節 山間(53)

沈黙を打ち破るかの様に、扉が開く。
そして遠慮無く中に入ってきたのはテラであった。
「セシル、すまないな。久しぶりに帰ってきたものだからつい懐かしくてな、色々見て回ってしまったのだ」
「久しぶりじゃな」
長老が嬉しそうに声をあげる。
「ああ……」
テラの方は何処か遠慮しがちな態度であった。
さっき町中でテラを見た者達も何かをしっている素振りであった。
テラにとってこのミシディアになんらかの因縁があるのだろうか。
「この爺ちゃん凄いんだぜ! 何たって伝説の魔法。メテオを覚えたんだから」
「メテオだと……」
その単語を聞いた長老の声が裏返った。
「そうだ、セシルがパラディンの試練を超えた時、山頂で聞こえた声が私にも話しかけてきた、
そうして、力を授けてくれた」
「あの魔法の封印が解かれるとは、やはりただ事でない何かが起ころうとしているのか」
「そうかもしれんな……だが、世界の事情がどうあれメテオは私の手の中にある。この力さえあれば
ゴルベーザーも! 奴だけはこの私の手で倒す!」
「テラよ……今のお前は憎しみの力が増大しておる。そのままの状態で戦おうとするとお前自身の身を滅ぼす結果が
待っておるぞ。それにメテオなどと……」
「分かっておるわ! その位の事は……だが、あいつだけは、ゴルベーザだけは何としても!」
激しい口調のテラはこの場にいる全ての人物を黙らせるだけの覇気を感じさせた。
「駄目だ、いくらお前が強くなろうが今の考えでは決して勝つことはできん。周りの状況を見据えるのだ」

506:299
05/11/18 20:01:12 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0269 4章 3節 山間(54)

「おい、長老―」
感情を乱した長老を見たことがないのか、やや取り乱している。
「パロムパロムが口を挟む。
ここまで!」
だが、それ以上はポロムが言わせなかった。
「出ましょ……」
パロムのがここまで感情を崩す事を見たくはなかったのだろう。
この様な場に肩を掴み静かに退出する。
二人には長老はとてもではないが耐えきれなかったのだ。
曲がり角へと消えていく二人の影を見ながら自分も引くべきかとは思ったが、やめておいた。

507:299
05/11/18 20:02:06 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0270 4章 3節 山間(55)

「アンナが……娘が……」
二人が去った頃合いを見計らったようにテラが言う。
「…………」
セシルにもあの時のダムシアンの様相が頭に蘇ってくる。
「娘が殺されたのだ」
ずっしりとしたテラの声はとても短かったが、深い憎しみが秘められている。
「それだけで充分な理由であろう……」
「私怨で戦うというのか! 愚かな……それが、賢者として名を馳せた者の言うことか」
「何とでも言うがいい。ゴルベーザを倒せるのなら、そんな肩書き誰かにくれてやるわ!」
「頑固じゃな。昔と変わっておらん」
何とかと言った感じで長老が口から絞り出す。
「お前もだ。相も変わらずだ」
そこまで言うと、後は口を閉ざしたまま、部屋を出て行った。
「しかし、それではお前はどうなるのだ……」

508:299
05/11/18 20:03:59 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0271 4章 3節 山間(56)

「ああ、セシル殿。ちょっとばかり見苦しいところを見せてしまったな……」
寂しげな様子でテラを見送った後、長老はセシルに切り出す。
「あいつと私は昔からの仲でな。つい本音でやり合ってしまう。仮にも国を統べるものなのに
パロムとポロムもいたというのに……」
「いえ、そんな友人はとっても羨ましいです。本当に……」
もし、自分にもそれだけ他人とうち解けあえたら……カインも。
だが、もう過ぎ去ってしまった事。その日々を取り戻す為にもこの力を手に入れたのだ。
「そうか……有難う」
「何故、テラはミシディアを出て行ったんですか?」
聞いて良いのかどうか迷ったが、今聞かなければもう聞く機会はないだろう。
多少、配慮に欠ける行為だとは思ったが、セシルは思い切って質問した。
「やはり、分かるか」
「一応、テラとの付き合いは長い方ですし、さっき長老とも何処か余所余所しかったですし」
「ミシディアでは日々、魔法の研究が成されていた。過去、多くの偉人達が研究に努めてきた
おかげで、現在でも多くのミシディアの民が魔法を使えるようになった。だが、発展には常に
挫折や犠牲がつきものであった」
いきなり語り始めたので、セシルは最初テラの事を話しているとは気づかなかった。
「テラもこの国の魔法の発展に一役買っていた。若い頃から非常に優秀だったあいつは幾つもの
研究で成功を成し、民からの信頼も相当なものであった。だが、その評価の絶頂の時に事件は
起こった……」

509:299
05/11/18 20:04:52 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0272 4章 3節 山間(57)

身構える間もなく、長老の言葉は続く。
「事件はいたって簡単なものであった。その日、テラは古代魔法の封印を解こうとして、多数の
魔導師を動員していた。だが、研究は失敗。魔法は暴走し、そこにいた多くのものを傷つける事
となった」
「それが原因だったのですか……」
「いや、実験の失敗はミシディアでは珍しくはなかった。それに古代魔法に関する事なら尚更
であった。犠牲者が出ることもあった。この時は幸いにもなかった、その為、住人間の諍いや
テラを始めとした、研究に立ち会った者に恨みを持つものは殆どいなかった」
淡々と語る、長老の話は終わりではなかった。むしろここからが本当に話したい事であったのだろう。
「だが、テラの失敗は多くの住民を落胆させる結果となった。そして日々の研究に勤しむものの自信すら喪失
させてしまった。普通の者であったならそんな事はありえないであろう。しかし、テラだから問題だったのだ。
テラなら出来る、そんな期待に皆すがっていたからだ」
優れた才能を持つ者は一人だけで多大な人間へ影響を与える。しかし、それが必ずしもプラスに
働くとはいえない。それを端的に表した例なのかもしれない。
「誰もテラを恨まなかった。しかし、テラは去っていった。多くの者を傷つけた罪悪感も勿論あったが
それ以上に、落胆する者達を見てはおれなかったのだ」
「…………」
「それは失望したという意味ではない。むしろ皆の期待に応えられなかった自分への戒めであった。
そして、これ以上、自分へ信頼を寄せる者を増やしては民全員への不幸を招く。そう判断したのだ」
テラの存在はミシディアに発展をもたらしたが、それが住人の自らの意思を持つことを阻害していた可能性
にテラ自身は気づいたのだろう。

510:299
05/11/18 20:06:30 aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0273 4章 3節 山間(58)

「勝手な推測だがな……」
長老はそう付け加えた。
「だが、奴の本音くらいは分かる間柄であると自負してるつもりだ」
「誰も止めなかったのですか?」
「引き留めようともしたが、奴は聞き入れなかった。一度決めたらもうその考えを修正する事はない。
奴はそんな性格なのだ。本来なら奴こそミシディアを率いる者だったのだ……」
テラが去った後のミシディアは長老がひきたのだろう。その後どうなったかは、今の町並みを見れば明白だ。
結果的にテラが去ったことはこの国を発展に導いたのかもしれない。
それでもしばらくは住人達にはやるせない思いが残ったであろう。
誰にも罪を問うことが出来なかった。そして皆が優しさと思いやりを持っていた。だが、それが
不幸を呼んだ。そしてその不幸は恨みや、悲しみを誰にもぶつける事ができない。その例をとってみると
この類の不幸は一方的に押し寄せる不幸に比べて、なんともやりきれないものだ。
「これで私の話は終わりだ」
「……有難うございます」
長老にはつらい話をさせてしまった。無駄な詮索などしない方がよかったのかもしれない。
だが、セシルはミシディアの民の持つ、多くの悲しみを少しだけだが、理解できた様な
気がした。それはセシルにとって大きな収穫であった。

511:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:24:26 S472HOBC0
リアルタイム超乙です!

ただ、長文投下だからなだけかもしれませんが、
どこか展開を急いでいるような印象を受けました。
次はいよいよバロンですな。


512:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:34:21 JEdwi+eM0
キタ━━(゚∀゚)━━!!!
あいかわらず長文なのにスラスラ読みやすいです。

513:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 20:42:34 oofwCHMK0
乙です。リアルタイムで見たの初めてだー

514:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/18 23:18:00 ONj9hvlh0
>「パロムパロムが口を挟む。
>ここまで!」

コピペミスかな?

やっぱうまいですね。乙でした。

そういえば本編ではこの長老はテラが死んでも、「愚か者め」としか言わないような冷たい奴だったような気がするけど、
こうやって文章化されると印象変わるね

515:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 12:49:27 E90/j0eE0
次の盛り上がりに向けての繋ぎあるいは布石?
それにしては冗長。
試練を終えたセシルや、長老の想いを深く掘り下げたかった?
それにしては拙速。

前回の出来がよかっただけに、今作を惜しむ。

516:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/19 22:57:12 1xORnM6i0
お、まとめサイトが・・

517:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/20 16:07:01 Pyj8K93G0
あげとく

518:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 07:09:10 gshyjlfd0
>>515
批評に対する批評はしたくないが、
毎回そうやって否定的な評価しか書こうとしないのははっきりいって凄く偉そうでいい印象を持てない

519:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 11:24:43 HunXZlh20
>518スルーしとけよ。
噛みついてる時点であんたも同レベルだぜ

520:299
05/11/21 19:05:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0274 4章 3節 山間(59)

夜中、セシルは神殿を抜け出し夜道を歩いていた。
試練を成し、あとはバロンへと向かうだけだ。その為の手段も確保出来てる。
だが、その前にどうしてもあっておきたい人がセシルにはいた。
本当なら、こんな夜中でなく、もっと早く―できればパラディンになった後、
一番最初にでも会いに行きたかった。
しかし、ミシディアにはまだ、自分を許していない人間がいるだろう。
許したくても、多少の時間つまりは心の整理をしなけれなならない者も多くいる事はセシルも
分かっていた。
そんな者に自分の姿を見せるのは得策では無い。そう判断した為、人通りの多い昼間でなく、
皆が寝静まった時間を選んだのだ。
そして町はずれの墓地にはやはりセシルの求めていた人影が見えた。
黒い法衣をまとったその影は闇に紛れるかのようにしてそこに静かに立っていた。
「やっぱり此処にいたんだ」
その人影に声をかける。
「ジェシー……」
「なんで、ここにいるって分かったんですか……?」
振り返ったその女性はまず最初にそう問うた。
「正直、ここで君に必ず会えるとは思っていなかったよ。でも良かったよ……」
「何がです?」
「もうこの機会を逃してしまったら当分は君に会えないからね」
「そこまでしてもらわなくても結構でしたのに……」
「でも、君と二人で話したかったから。それに……」
「それに?」
「ここが、一番君と話すのに向いていると思ったし」
本当のところ、今まで余計な時間はあったのだし、その時に長老辺りにでもとりついでもらえば
いつでも話す時間を作れたはずだ、

521:299
05/11/21 19:08:04 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0275 4章 3節 山間(60)

「馬鹿ですね……それでもし、私が此処にいなかったらどうするつもりでたの?」
「でも、結局は会えた……」
自分でもえらくいい加減な理屈だとは思ったが、敢えて言った。
「…………」
「…………」
そこまでで会話が途切れた。
「無理をしないでください。そんなに取り繕わなくても、一番言いたい事があるんじゃないですか?」
「明日にはここを発つ……」
促され、いきなり切り出す。
「それだけを言いたくて……」
言葉自体には大きな意味はなかった。他にもお互い、話す事はいくらでもあるはずだ。
だが、もうそれだけで充分だった。今更、謝罪の言葉が意味を成さない事をセシルは悟っていた。
「それじゃあ……」
踵を返し、夜闇に消えようとしたセシルをか細い腕が引き留める。
「私はまだ、あなたと面と向かって話す事はできません。それに今もあなたの事を全て許すこと
もできません。ですが……」

522:299
05/11/21 19:08:58 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0276 4章 3節 山間(61)

セシルは後に続く言葉を待った。
「これからは、これからは少しはあなたみたいな人でも理解していきたいと思います」
「そうか……」
「長老……いえ、父にもいろいろと諭されました。お前も変わらなければならないって。それが全て
分かったとは言い切れないですけど……」
彼女が父の事を話してくれるのはこれが最初であった。
「君は長老の娘だったんだね……」
「はい」
ゆっくりと、それでいて簡潔に応える。
「話してくれて有難う。じゃあ……行くよ」
「では」
今度はジェシーも引き留めなかった。そうしてセシルは去っていった。
短いやりとりであったが、お互いを理解しあうには幾ばくかの時間が必要であろう。
だから、これで良かったのだ。
向かう道は別方向。だがいずれ交わる時もくるであろう。その時には今とは違う何か別の言葉が出てくるかも知れない。
今のセシルにはこれだけで……充分であった。

523:299
05/11/21 19:11:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0277 4章 3節 山間(62)

窓から入ってきた淡い光がセシルが心地よい目覚めを誘う。
セシルはベッドから起きあがり、外の景色を眺める。快晴の青空に昇った太陽が円形状の町を
鮮やかに照らしていた。
「旅立ちには適任の天気だな……」
思わず、楽観的な言葉をこぼす。こんな天気では、彼でなくても口にはだしたくなるであろう。
己の幸運を噛みしめていると、扉を静かに叩く音が一つした。
「どうぞ……」
その声に誘われるかのように扉が開く。
「おはようございます」
その顔には見覚えがあった。
昨日、自分を長老の元へと案内してくれた女官のものだ。
「良く眠れましたか?」
「勿論です」
それは本当であった。彼にとってこの数日間は正に波乱の出来事の連続であった。
ここまで、ゆったりとした寝床で穏やかな心持ちで休息を取れたのは初めてであった。

524:299
05/11/21 19:12:39 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0278 4章 3節 山間(63)

「それで何か御用でしょうか?」
「お荷物が届いています」
一通りの挨拶を終え、用件を尋ねると女官は部屋の前に置かれた一つの包みを指さす。
「これは?」
「武具屋の店主さんから餞別だそうです。重いのでご注意ください」
ここまで持ってくるのも相当な苦労でしたと苦笑する。
セシルもその荷物を持ち上げようとする。それは確かに見た目以上の重さを有していた。
何とか部屋まで運び込み、女官に礼を言って扉を閉める。
持ち込むのも困難であったが、梱包されたその荷物を紐解くのも結構な労力を使用した。
「これは……」
開いた荷物から覗いたものは鎧であった。
それだけでなく、篭手を始めとした防具一式が詰め込まれていた。
そのどれもが渾身を込めた出来であり、丁寧に鍛えられたものであった。
「パラディンの……」
試練の山へ向かう前準備として、武具屋に行った時があった。
その時、店の一番目立つ所に安置されていた、鎧を思い出す。
―これはパラディン用の装備さ! あんたみたいな暗黒騎士には使えるわけがねえ―
店主の皮肉めいた苦笑が思い出される。
「あの時の鎧か? でも何故……」
信じられない気持ちでその鎧を眺めていると、荷物が入っていた箱の奥底に何かが残っている事に
気づく。
拾い上げてみるとそれは小さな紙切れであった。
じっくりと眼を凝らしてみると、文字が刻まれていた。
―頑張れよ―
大雑把な文字でそう書かれていた。
「…………」
ぎゅっと紙切れを握りしめ、懐にしまう。

525:299
05/11/21 19:18:47 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(64)

昨夜の内に、長老から指定されていたのでその場所には直ぐにたどり着けた。
「セシルか?」
既に到着していたテラが声をかける。
「おはよう、テラ。早いんだね」
「良く寝付けなくてな。まあ、復讐を誓った時以来、睡眠と言うものをまともに取ることが
出来なくなってな……」
「そうか……」
「そんなに遠慮をするな。、別に気にしてはおらんよ。ところでその鎧は?」
「ああ、旅立ちの餞別として貰ったんだよ……」
「ほお……なかなか様になっとるぞ」
まじまじと見つめながら、感想を一言。
「はは、有難う……」
町はずれにぽつんとそびえる、一軒の小屋。この魔法国家の神秘的な建物に比べると、明らかに質素な
作りである。
「ここからバロンに行けるのか?」
その事は既に長老から確認済みだった。しかし、今ひとつ実感が沸かなかったので念を押すかのように
聞いてしまう。
「そう思うのも無理はないかもしれんが、このデビルロードと呼ばれた道は昔はバロンとミシディア間の
交易ルートとして、栄えたのだ。今の両国の関係を見れば、とてもじゃないが、想像できん事だがな」
確かにここ数年のバロンは各国に対し、強硬的な姿勢で外交にも臨んでいた。
そうしてその圧力に一番反感を持ったのが、ミシディアであった。
結果、ミシディアはバロンの侵攻の真っ先の的にされてしまった。その時にこの道も閉鎖されてしまったんのだ。
最も現在の世界を見れば、むしろ最初に侵攻された事さえましな事に思えるが。

526:299
05/11/21 19:36:09 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(65)

「過去この場所に空間同士を繋げ、大陸間を自由に移動できる手段を確保するために出来上がったのがこのデビルロードだ。
そもそもこの道が何故デビルロード、つまり悪魔の道などという不吉な名称で呼ばれたかというと、理由が幾つかあるのだ……
一つはこの道を使うのに相当な生命力を犠牲にしたからじゃ。ああ、安心しろ現在は創設時に比べて実験の重ねた結果、
そこまで危険な道では無くなった。
もう一つはこの道を作った後、黒き鎧を纏った男が現れた事に起因している。
当時、その姿を見た者は悪魔が現れたと思ったのだ。しかしそれは誤解であった。そいつは唯の人間であり、その上バロンのものだと
言った。つまり、は成功したと言うことだな。人々はこの道を最初使い、大陸と大陸を一瞬にして移動したその者の名を取って
デビルロードと名付けたのだ。まあ、悪魔とは違ったのだが……」
「バロンから来た黒き鎧の男とは暗黒騎士だったのか?」
長々と続くテラの講釈の終了を見計らって訪ねる。
「詳しいことは私も知らんが、今重うと確かにそうだったのかもしれんな」
かつてのバロンから暗黒騎士がこの道を通ってミシディアまでやってきた。そして今かつて暗黒騎士だった
セシルはバロンに向かおうとしている。これは何かの偶然であろうか。
「既に封印は解かれているんだね」
「ああ、それは問題ない」
「では」
扉を開けようとしたセシルを呼び止める声が一つ、いや、二つあった。
それに続くように草を踏みしめる足音が二つ、二方向から聞こえてくる。
「パロム! それにポロムか!」
現れたその姿に少しだけ驚く。
「見送りに来てくれたのか……」
そう言えば誰の姿も見えない、だが、無理もないだろう。試練を乗り越えたと言え、昨日の今日の出来事である。住人全員が
手を振って見送りとは、そう簡単にはいくまい。
「違うよ。一緒に行くことにしたんだ」
「え!」
セシルとテラが殆ど同じタイミングで声を上げる。
「そんなに驚くなよ……ちゃんと長老から許しは貰ってるぜ」
「そういう事ですわ。以後も宜しくお願いします」

527:299
05/11/21 19:37:36 QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0280 4章 3節 山間(66)

「それで長老は?」
昨日の内に礼は言っておいたが、あの人にはお世話になった。未練がましいかもしれないが、旅立つ直前に、もう一度だけ
顔を合わしておきたいと思った。
「長老は……明朝、祈りの塔に入られました」
「祈りの塔だと!」
「テラ、知ってるのか?」
「ああ……一応はな。詳しくは知らんがそこに入ったとなれば当分は出てこないと言うことだ」
そこまでして、長老は何に祈るのか? だが、セシルはそれを理解していた。
長老も世界……いや、守りたい者の為に戦いを始めたのだ。それはセシル達の様に直接的に手を動かす行為ではないかもしれない。
だが、その行いも一つの戦いである。
それだけで聞けば充分であった。此処にはいないが、長老が自分を全力で見送ってくれているのを感じる事ができた。
「そうか……じゃあ、僕たちも急ごう!」
小屋に入る途中に一度だけ後ろを振り返った。小高いこの場所からは白い町並みが一望できる。
ひょっとしたら、この町のどこから見るよりも美しい光景だったのかもしれない。
長老やジェシーの事が少しだけ、思い出される。しかし、もう迷いは無かった。
「みんな……これから行くバロンは僕の故郷と言っていい場所だ。そして戦いは激しくなる。ひょっとすると
生きて帰れないかも知れない。それでも僕に付いてきてくれるか?」
だが、そんな質問は無駄であった。
「勿論だ」
「今更、水くさいぜ」
「どこまでも」
返事は様々であったが、皆同じ思いだ。
「分かった行こう! バロンへ」
小屋の中、ひっそりと描かれた魔法陣に足を載せる。
途端、視界が揺るぎ始める。ぐにょりと曲がり始める視界の中、セシルはカインやローザ。
そしてゴルベーザの事を考えていた。

528:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 19:58:00 xX13pLR60
夢枕風にティファvsロッズ


面白そう

たまらぬ蹴りであったッ!!!


529:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/21 20:32:38 V1m8xr+H0
ジェシーとのオリジナル会話(・∀・)イイ!!

530:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 02:09:37 5QeVNfTo0
>>FF4
武具屋の餞別に感動。これゲームの中にあるのならなんか人情味あって良いな、FF4。
ジェシーとのやり取りが、完全なる相互理解であなく、相互理解の始まりという感じがして
良いなと思いました。個人的にこの流れだと、今後のテラが気になります。GJ!

531:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 08:46:14 FOjDfLOCO
それよりもヤンが気になる
一体何があったのか

532:FF8
05/11/22 10:49:45 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-1

(スコール・・・スコール・・・)
(誰だ)
(スコール、やっと会えたね)
(誰だ、誰なんだ、あんた)
(忘れちゃった?寂しいな・・・)
(どこかで会ったことが?)
(思い出して。忘れられたままじゃ、寂しいから・・・じゃあね、スコール)
(おい待て)
(思い出したら、いっぱいお話しようね)
(待て、待ってくれ・・・)

「おや、気がついたかい」
保険医のカドワキ先生が、俺の顔を覗き込んで言う。
俺はあたりを見回した。ここは医務室、俺と先生の二人しかいない。
すると今しがたのは夢だったのか。不思議な、夢だ。
俺はベッドから起き上がろうとした。
「!」
激しい眩暈に襲われると同時に、眉間に鈍痛が走る。
「ああ、しばらく寝たた方がいいよ。怪我した場所が場所だからね」
・・・怪我?場所が場所?ああ、そうか・・・
俺はサイファーとバトルしていたのを思い出した。
・・・しかし、なぜここに・・・

533:FF8
05/11/22 11:03:43 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-2

「嫌だねえ、覚えてないてのかい?」
困惑が顔に出たのだろう、カドワキ先生があきれるように言った。
「いいかい、あんたはね・・・」

カドワキ先生が話してくれた内容は、およそ次の通りだった。
あの後、つまりサイファーに眉間を斬られた後、俺は顔面を血で朱く染めながらも、
鬼神のごとき形相でサイファーに斬りかかって行ったのだそうだ。
その太刀筋があまりにも凶刃であったため、これ以上の面倒はご免とばかりに、
サイファーはとっとと逃げ出したという。
それまで二人のバトルを遠巻きに見物していたギャラリーが、
俺を心配して駆け寄ってくれたが、俺はただ「大丈夫、大丈夫」と繰り返すだけ。
しかしどう見ても大丈夫な訳がないという事で、ギャラリーたちは俺を
なだめたりすかしたりしながら、どうにか医務室まで運んで来たのだと。

「まったく、そういう年頃なのかねえ。あんまり無茶するんじゃないよ」
サイファーに行ってくれ。もともと誘ってきたのはアイツの方だ。
”なぁスコール、ちょいと体あっためないか。まさか断ったりしないよな”
そう言われたら、断れない。

534:FF8
05/11/22 11:20:07 Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-3

「余後の心配はなさそうだけど、一応、確認させてもらうよ」
俺の思惑をよそに、カドワキ先生が型通りの質問を始める。
 名前は?・・・スコール・レオンハート
 年齢は?・・・18歳
 所属は?・・・バラムガーデン、SeeD候補生、NO.41269
 担当教官は?・・・

「絶対、あなたかサイファーだと思ったわ」
俺の回答を遮る様に、だしぬけに背後で声がした。声の主を振り返る。
「キスティス先生・・・」
「キスティス先生・・・じゃないわよ。連絡受けて跳んで来たんだから」

キスティス・トゥリープ、俺より一つ上の19歳。俺の担当教官だ。
15歳の時に史上最年少記録でSeeD試験に合格、17歳の若さで教員資格をも取得した、
超エリートだ。才色兼備なだけでなく、気さくで面倒見の良い性格ゆえに、
男女を問わず多くのファンがいる。

「全く何を考えてるのよ。午後からSeeD認定試験があるの、忘れてた訳じゃないでしょうね」
「午後から試験て、本当かい?呆れた子だねぇ・・・」
だから、サイファーに言ってくれ。

535:FF8
05/11/22 11:33:58 MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-4

「それでカドワキ先生、スコールの具合はどうですか」
キスティス先生が尋ねる。
「ああ、もう心配いらないよ。ピンピンしてる。若いってのはいいねぇ」
「そう、良かった」
「でも眉間の傷は一生消えないよ。天下御免の向こう傷ってやつさね」

・・・そうか、一生残るのか、この傷・・・
傷口に手をやりながらも、俺はさほどの衝撃は受けなかった。
俺はSeeD候補生、いずれは戦いの中に身を置く者。
遅かれ早かれ、俺の体は傷で覆われる。

キスティス先生からも何か一言あるかと思っていたが、珍しく何も言わない。
いつもであれば、小姑のようにぶちぶちと小言を連ねるか、
あるいは傷なんて気にするなといった類の励ましの言葉でも掛けて来る筈だが、
いずれにしろ、黙っていてくれる方が、俺にとってはありがたい。
何気なく先生を見やると、口元に手を充てて、驚きを顕わにしている。
俺を想って黙っていたのではないようだ。衝撃で口を訊けないだけだった。

やれやれだ。
これじゃ、誰が負った傷だか判りゃしない。

536:FF8
05/11/22 11:45:04 MbqJAoAu0
申し訳ありません。コピペミスしました。
>>534のラストに、以下の3行を付け足して下さい。

「しかもね、カドワキ先生。この子、炎の洞窟の課題、まだクリアしてないの」
「おやまぁ、ますます呆れたね」
だから今朝やろうと思ってたんだ。それを、サイファーが・・・

537:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 12:15:32 FM0FcYfA0
うまいっ。まんま初期のスコールの雰囲気がよく出てる。ほんとうまい。
このままスコール一人称で行くと面白そうだな。期待して待ってます。

538:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 16:45:27 1ZtTrQmpO
すごいおもしろい!
一人称っていいものなんだねぇ、久々に新鮮な面白さだった!
スコールがすごくよく描けてる!
あの性格は描くのが難しいと思ってたけど、あなたの筆致だと、やなやつじゃなく、自然!あと、全体にくどくなくていい感じ。
頑張って!続き楽しみにしてます!てゆか早くよみたい!

539:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:05:22 XWCMuXbH0
528www 出だしだけ

「母さんはいないのか・・・じゃぁ遊ぼう?」
男は大げさに両手を広げ、挑発的な笑みを浮かべた。
遊ぼう?・・・そういわれて、なんのつもりなの? 
と聞き返すほど私もお嬢様じゃない。
先ほどからの男の言動を見る限り、頭の回線が複数切れているのか
母さん、母さんって、どうみても話が通じる相手ではなさそうだ。
私たちが今いるこの教会には出入り口がひとつしかなく、それも丁度男が立つ位置
によって塞がれてしまっている。
逃げ道は・・・ない。
こちらにはマリンもいる。
いま、この場で、この危険な男を戦闘不能にすること
それが私たちにとっても、一番安全で確実な方法であると思われた。
「いいわ、遊びましょう。マリン下がってなさい」
私はマリンを後ろにやると 半歩前に出て男を睨んだ。
「ティファ・・・」
マリンが心配そうに 声をかける・・・、
「問題ないわ」
私は背中ごしにマリンに返事をしつつ、男を睨み付ける。

540:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/22 21:06:36 XWCMuXbH0
大丈夫、こいつがどんなにでかかろうと、どんなに腕っぷしが強かろうと、ただそれだけだ。
長らく戦闘からは身を引いていたとはいえ
私は師匠に鍛えられたのだ。
2年前の戦いでは、あのセフィロスとも互角に叩きあった
素手でのタイマン それが条件なら誰が相手であろうと負ける気がしなかった・・。
両足を軽く前後に開き、拳を持ち上げる。
左拳が前 右拳が後ろ・・ザンガン流格闘術
蹴りを主体とした総合格闘技
それが私の武器だ。
「ほう! こりゃあ楽しめそうだ」
男は感嘆の声をあげると
大げさに腕を前後に広げ構えた。
フン、楽しめそうだですって?
見てなさい、今にそのへらへらした口を二度と笑えないように叩き潰してやるから
それとも、二度と楽しめないようにあそこを捻り潰してあげましょうか?
凶暴なものが内部で熱を持ちムリムリと膨れ上がっていく…
落ち着け、人に使うのは久しぶりだからって焦っちゃ駄目


541:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 00:59:49 dn2QlHh40
5tenkana...

542:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 10:01:25 j8bdUx7i0
FF8といえばどッかの個人サイトで凄い上手いのがあったよな
ディスク1の最初から終盤までとアルティ戦だけ書いてあるやつ
あれどこだっけ

543:FF8
05/11/23 10:24:35 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-5

「生徒NO。41269、スコール・レオンハートです」
「教員NO.048、キスティス・トゥリープ。私がサポートします」
敬礼と共に、試験管に報告する。
炎の洞窟。最奥部にいるGF・イフリートを倒し、装備可能にする。
それが今回の課題だ。

GF、ガーディアン・フォース。その正体は強大な自律エネルギー体だ。
生体と同様に意識・自我を持っているが、知能はそれほど高くない。
それぞれが持つ特性に応じて、獣や妖精など様々な姿となって現れるが、
大半は確固とした実体を持たず、限られた時間しか実体化できない。
GFに対して力を示し、その力を認められた者は、以後、そのGFと常に
交感できるようになる。俺たちはそれを「GFを装備する」と称しているが、
これにより強大な力を得ることができる。
バトル中にGFを召還することが可能になるだけでなく、GFを媒体として、
各種魔法を自身にジャンクションすることも可能になる。
GFは強力な武器であり、同時に強固な防具でもあるのだ。

「時間を決めなさい。長くもなく、短くもなく、自分に合った時間を」
試験管が重々しい口調で言った。
「10分で構いません」
俺は即答した。傍らにいるキスティス先生が目を丸くしている。
「10分でいいのだね」
「はい」
キスティス先生の意味ありげな目くばせを無視して、俺は答える。
「では、行きなさい」
俺は駆け出した。キスティス先生も後に続く。

544:FF8
05/11/23 10:43:21 flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-6

足元を流れる溶岩が、洞窟内を赤く照らし出す。
しかしその猛烈な熱気ゆえに、視界は常に揺らぎ、遠くまで見通すことはできない。
肌を露出している箇所がチリチリと痛み出し、眉間の傷はズキズキとうめく。
汗は絶え間なく吹き出してくるが、流れ伝う間もなく蒸発してしまう。
炎の洞窟、その名にふさわしい、ここは常軌を逸した世界だ。

「やっぱりあなたとサイファーは別格ね。本当に強いもの」
最奥部へと向かう道すがら、半ば呆れたようにキスティス先生が言う。
「・・・ここの魔物が弱いだけだ」
そう応じつつ、俺は新たな一体を斬り伏せた。これで15体。
実際、ここの魔物はさほど強くない。
種類こそ異なるが、ガーデンの訓練施設にいる魔物と、ほぼ同レベルだ。
サイファーを相手にする方が、よほど手強く、危険だ。
「それはそうなんだけどね・・・なんていうか、ここで、こうやって、
今まで何人もの生徒をサポートして来たんだけど、ほとんどの子は、
普段の実力をなかなか出し切れないものなのよ」
そういうものなのか・・・俺にはよく判らないし、どうでもいい事だ。
「これってやっぱり、私が魅力的だからかしら?」
・・・なに考えてるんだ・・・
「冗談よ、冗談。いつもこうやって生徒をリラックスさせてるの。
でも、あなたには必要なかったみたいね」
・・・くだらない。無視して先へ進もう・・・
そう決め込んだ刹那、洞窟内に凄まじい咆哮が轟きわたった。

545:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/23 23:41:47 U24Tq5+yO
イフリートクル━━(゚∀゚)━━!!!!!

546:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 01:30:04 rJ8K44sH0
8が進んでるな。作者の頑張れ。
そういや、5とACはどうなったのかな。

547:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:11:03 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-7

大地をも揺るがす咆哮を受けて、洞窟が巨大な共鳴装置と化す。
度を越した大音響に、俺たちは堪らず耳を塞いだ。
「いよいよね。ここからが本番よ」
音が止むのを待って、キスティス先生が言う。
先程までとは打って変わって、その表情は真剣だ。
・・・言われずとも分かってる・・・
返事をする代わりに、俺は一気に奥へと駆け出した。

洞窟最奥部、そこには巨大な穴が穿たれていた。
周囲が赤く照らし出される洞窟内にあって、そこだけは漆黒の闇に覆われており、
穴の深さを雄弁に物語っている。
「!」
突如として、その穴から巨大な火柱が噴き出した。
激しい轟音と熱風が塊となって、俺たち二人にぶつかってくる。
吹き飛ばされそうになるのを堪えつつ、火柱を凝視していると、
火柱が徐々に形を変えていくのが見てとれた。
・・・これは・・・
刻々と変化していく火柱は、やがて獣神とでも形容すべき姿となった。
GF・イフリート。
隆々とした筋肉におおわれた、炎の化身、灼熱の巨人。
今までの魔物とは一線を画す、圧倒的なまでの存在感。
『人間ヨ、我ガ前ニ、ソノ力ヲ示セ』
言葉とも思念ともつかぬモノがイフリートから放たれ、赤熱した圧力となって
俺たちに襲い掛かってきた。

548:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:36:10 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-8

五合、六合、七合・・・
イフリートの攻撃を掻い潜りながら、俺は矢継ぎ早にガンブレードをうち振るう。
しかし、確かな手応えは得られない。
イフリートはひるむ様子をまったく見せることなく、新たな攻撃を繰り出してくる。
力任せの強引な攻撃ばかりなので、なんとか凌いでいられるが、
少しでも判断を誤れば、かすっただけでも致死に近いダメージを負うことだろう。

八合、九合、十合・・・
俺の斬撃は的確にヒットしている筈なのだが、イフリートにダメージを負った様子は見られない。
キスティス先生はサポートに徹し、回避と回復に専念している。
時折、冷機魔法を使うこともあるが、それはダメージを狙ったものというより、
赤化した空間の温度を少しでも和らげる事を意図したものだろう。

『ドウシタ、人間ヨ、汝ノ力ハ、ソノ程度カ』
イフリートの嘲るような思念が、熱波となって向かってくる。
相前後するように飛んできた剛腕を紙一重でかわし、俺は新たな斬撃を叩きこむ。
しかし、やはりイフリートにひるむ様子はない。

・・・ほんの一瞬でいい。奴に隙を与えることができたなら・・・

549:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 11:48:22 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-9

『小サキ者ヨ、私ヲ呼ビナサイ』
俺の思考に呼応するように、イフリートとは異なる思念が、どこからか伝わってきた。
・・・これは・・・そうか!
思念の主に思い当たると同時に、俺は精神を集中し、その姿を心に念じた。

俺とイフリートが対峙する、ちょうど中間地点の辺りに、突如として氷の結晶が出現した。
結晶は見る間に巨大化して行き、イフリートとほぼ同じ大きさの、氷の塊と化した。
氷塊が放つ冷機が、イフリートの放つ熱気を相殺していく。
と、出し抜けに氷塊が弾けとんだ。その跡に現れたのは・・・
『ヌウ、コ奴、シヴァヲ従エテオルノカ』
イフリートの驚愕が伝わってくる。
GF・シヴァ。
妖艶な笑みを湛えた、氷の化身、極寒の女王。
シヴァは詠唱しつつ、両手を頭の上で組んだ。そして、詠唱が終わると同時に
組んでいた両手をイフリートに向かって振り降ろす。
冷気が無数の氷の矢となって、イフリートの巨躯に次々と襲い掛かる。
グハァァァァァァッ
絶叫を上げ、大きくのけぞるイフリート。

550:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/24 12:03:33 MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-10

見えた!切望していた、わずかな隙が!
イフリートの顕わになった喉元めがけ、俺は体ごとぶつかって行った。
狙いは誤たず、ガンブレードは深々と突き刺さる。
ウゴォォォォォォッ
悲鳴とも咆哮ともつかぬ叫びを発しながら、イフリートは地響きを立てて倒れた。
イフリートの体を成していたものが、火柱に逆戻りしていく。
『人間ヨ、ソノ力、確カニ見届ケタ。以後、我ガ力ヲ貸ソウ』
言い終わると同時に、火柱は消えてなくなった。

「スコール、見事だったわ」
額の汗をぬぐいながら、キスティス先生が言う。
「やっぱりあなたは別格よ。強すぎるわ。
あなたが”10分”って言った時には、なんて無謀な事をと思ってたんだけど、
まったくの杞憂だったわね」
無謀か・・・その通りかも知れない。
少なくとも、イフリートの力を甘く見ていたのは事実だ。
事前に彼我戦力を正確に把握していたとしたら、10分という選択はなかっただろう。
今後の戒めとしよう。
「さあ、戻りましょう。最短記録、樹立しなくちゃね」
キスティス先生の言葉に頷き返し、俺は入口に向かって駆け出した。


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