かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3at FF
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3 - 暇つぶし2ch324:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 03:11:23 1nfm7X2s
おお~クオリティ高ぇなぁ
まず思ったのが、6のOPって地の文でも全く色褪せてないんだな。
ビッグスウェッジの会話も少ない量で読み手の好奇心をそそるようになってるし
ゲーム然としてないとでもいうんだろうか
けどそう思えるのは確実に作者さんの引き立てがあるからなんだよ
セリフそのままが逆に嬉しかった

ってわけで文句なしのGJだ。なんかもうありがとう

325:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 03:15:12 eJ50sJn+
すげえ並行して連載してるな!
作者陣ハゲ乙です!

326:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 10:20:45 e5IksQgR
おい、FF6を頭から書き始めた馬鹿!
>>5にあるまとめサイト見て来いや。
すでに途中まで進行してる物語をまた初めから書く奴があるか。
やりたきゃ先達に敬意を表して、続きから始めろや。


327:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 14:50:17 V97UFe5m
よく知らないが抜けてるとこかいたんじゃないのか?

328:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 17:48:49 7tCXLOyt
ごめん、釣り糸が見えてる

329:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 18:10:39 jTTnIcAv
クマー

330:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 18:11:50 fqzsEtE3
スレGJ

331:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 19:49:43 co/4sB1z
>>319で断りを入れてるんだしそんなに怒らなくても。

332:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 22:11:08 YiyRqXI6
いくらなんでもオープニングまるごと端折るのはどうかと思うけどなw

> ストーリーの最初から最後まで完全小説化

なんだし。

333:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 13:06:06 e7dbnGxE
細かいことは正直どうでもいいと言ってみる
クマー

334:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 13:17:46 70Cr/Gvt
同意
クマー


335:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 15:00:02 ZahsFhC2
全くゲームと同じ展開をなぞるのも嫌だと言う意見も
あるので大きく本編を逸脱した展開にならなければ多少の
改変も有っても良いと思う。
今まで書かれた1、4、5も書き手のオリジナル部分が好評を博している
事も珍しくはない。

336:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 17:40:15 +HERIgWL
つうかそういうのの判定のためにも297氏が短編書いてくれてんじゃん。
オリジナル要素マンセー。

337:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/23 14:24:21 QHnV4Pkj
FF8書こうかと思ったけど、よく考えたらストーリー把握し切れてないからやめとく

338:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:46:45 nrEHS00s

先に仕掛けたのはティファだ。
ロッズの懐に目にも止まらない素早さで飛びこみ、ニヤニヤ笑いつづける顔面に右ストレートを繰り出したのだ。
しかし、先読みされていたらしく、左腕のシールド状の武器で楽々と受け止められてしまう。
右腕と左腕で取っ組み合ったまま2秒間硬直するが、ロッズが力任せに振り解いた。

そこに僅かな隙が生じた。

瞬間、ティファは左の掌をロッズの頬めがけて叩きつける。
ぐぉ、という呻き声を上げて怯む大男に、間髪を入れず右、左と連続して掌底を浴びせた。掌打ラッシュ。
たまらず後退したロッズに走って詰め寄り、今度はハイキックを出す。避けられた。
ロッズが反撃に転じる。一瞬だけ隙だらけになったティファの顔を狙って左腕のパイルバンカーを突き出してきた。
顔面を捉える寸前でその先端を掴んで受け止めるが、その瞬間、彼女の全身に電流が流れた。

思わぬ衝撃に、後ろへと吹き飛ばされるティファ。
体勢を整えられず、花畑の真ん中に落下する。
立ちあがって前を睨むと、ロッズが左腕のクローを顔の前に掲げて笑っていた。
デュアル・ハウンド。
金属製の手甲の両端に、伸縮する2本のロケットのようなトゲが装着されているという外見で、
シールドとパイルバンカーの両方の役割を果たすその武器は、スタンガンのような機能も備えている。
足を前に突き出した格好でロッズの少し手前に着地してそのまま滑り、足払いするが、彼は大きく跳んで回避した。
すかさず床に手をついて立ちあがり、追う。
ロッズが着地し、背後を振り返ったとき、ティファの左拳がミリ単位の距離に迫っていた。

したたかに殴り飛ばされたロッズが、そのまま教会の端の壁に激突する。
彼は、追撃してくるティファと間合いを取ろうとバックステップした。
が、ティファは壁や柱を蹴って跳び、彼よりも遥かに速い動きで詰め寄り、あっという間に肉薄する。
ロッズが迎え撃つ暇も与えず、
右脚で顎を蹴り上げ、そのまま顔面に踵落とし、さらに流れるような動作でサマーソルト・キックを浴びせた。

339:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:47:48 nrEHS00s

怯み、顔を押さえながら後ずさるロッズ。
ティファがさらに追い討ちをかけようとする。
が、ロッズはティファが叩きつけてくる肘鉄を左腕で受け止め、また取っ組み合いになる。
ロッズは今度は振り払わずに、かわりに左腕のデュアル・ハウンドを放電させた。
予想していなかった攻撃に仰け反るティファ。その隙を逃さず、ロッズは彼女のわき腹に強烈な蹴りをいれ、壁に叩きつけた。
次いで、横殴り気味にデュアル・ハウンドを繰り出すが、ティファは危うい所でしゃがみ、避けた。
パイルバンカー状の2本のトゲが、派手な音を立てて壁に突き刺さった。
間髪入れずに、ティファはロッズの首筋を引っ掴み、背にしていた壁を右脚で蹴りつけ、彼もろとも低く跳躍する。
そのまま、空中でロッズの胸の辺りに左足を押しつけ、
――教会の中央辺りの床に、思いきり叩きつけた。
だが、ロッズも負けてはいない。
彼を叩きつけた反動で跳び去ろうとするティファの脚を右腕で掴むと、
そのまま豪快に振り回して2,3度礼拝客用の長椅子に叩きつけ、さらに教会の奥のほうへとぶん投げたのだ。
派手なジャイアントスイングで投げ飛ばされたティファは、今度は空中で体勢を整え。
花畑のすぐ後ろの石壁に、しっかり足と手をついて「着地」した。
花が、旋風で舞い散った。
睨み合う2人。
ロッズはまた笑っていた。

ティファは壁に脚を突っ張り、ロッズ目掛けて再び跳んだ。
電光石火。
ロッズが迎撃のパイルバンカーを放った。間に合わない。
ジャンプした次の瞬間には、ティファはロッズの顔面を右手で鷲掴みにしていた。
「―いやーーーーーーーっっ!!」
一声叫び、大男を掴んで引きずりながら教会を疾走するティファ。
出入り口の扉の辺りまで来ると、ティファは彼を放り投げ、自分も追うように跳躍。
空中で再びロッズの顔を鷲掴みにすると、目についた柱の根元を狙って投げ飛ばした。
悲鳴を上げながら、ロッズはその柱に激突し、倒壊する柱の瓦礫に埋められていった。
メテオストライク。
瓦礫の山と化した柱のなれの果てを背に、ティファは華麗に着地した。

340:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:49:01 nrEHS00s

勝った。
崩れ去った柱を一瞥し、ティファはそう思った。
マリンも同じ考えだったようで、「ティファ!」と叫び、笑いながらこちらへ走り寄ってくる。
ティファも微笑み、膝と腰を曲げてマリンと視線の高さを同じにしたその時、場違いな音が辺りに響いた。

パン パパパパーパーパーパッパパー♪

あまりに場違いすぎて、ティファもマリンも一瞬、動きが止まった。
周囲を見まわす。また鳴った。
その時、ティファはこの音の正体がやっとわかった。
…携帯電話の着信音。
そして、その着信音が聞こえてくる方向は――
ティファが慌てて振り返るのとほぼ同時に、ロッズが瓦礫を吹き飛ばして再び現れた。

3,4回目のコールでやっと携帯の通話ボタンを押した。
「…ここじゃねえなぁ」
携帯を耳に押し当て、暫くしてから、ロッズ。
「泣いてねぇよ!!」
今度は怒鳴りだした。その後、何故かティファとマリンを拗ねた表情で睨みつける。
「…わかった」
心なしか、声も拗ねていた。
そして、「連れてく」と短く告げて電話を切った。

ティファは脈絡が全くわからない会話に少し面食らっていたが、それ以前に大男の健在ぶりに驚いていた。
リミット技をしこたま叩きこんだのに、ダメージを受けた様子はおろか、傷一つみられないからだ。
ロッズは気だるげに首をコキコキと回している。
「…続きだ」
これまた気だるげに言うと、再び格闘の構えに入った。

341:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:50:01 nrEHS00s

また睨み合う、ティファとロッズ。
今度はロッズが先手を打った。
丁度足下にあった長椅子の残骸を、ティファとマリン目掛けて思いきり蹴り飛ばしたのだ。
マリンが悲鳴を上げ、頭を押さえてその場にしゃがんだ。
弾丸のような速度で迫る長椅子を、ティファは裏拳で弾き飛ばす。
が、跳ね返した長椅子の先からは、ロッズの姿が消えていた。
訝る間もなく、当のロッズがティファの背後に回り込んでいた。
速すぎる。
それまでとは明らかに違う動き。
ティファは何が起こったのかよくわからなかった。
ただはっきりしているのは、背中に彼のデュアル・ハウンドが押し当てられている事だけだ。

放電。

あまりに突然だった攻撃に対処できず、前につんのめるようにして倒れるティファ。
しかし、ロッズは彼女が床に倒れこむ前に、その首筋を引っ掴み、さらに掴んだまま手近な柱に押しつける。
また放電。
首をしっかり掴まれているため、今度はそれまでのように吹き飛ばされなかったが、変わりに後ろの柱が粉々に砕けた。
そのまま乱暴にティファを投げ捨てるロッズ。
すでに反撃どころか抵抗の余力すら奪われていたティファは、力なく花畑の中心あたりに倒れこんだ。
うう、と倒れたまま呻き声をあげるティファにロッズが歩み寄り、馬乗りになる。
そしてとどめを刺そうと、その端正な顔にパイルバンカーを押し当てたその時、彼の頭に何かが投げつけられた。

マリンだった。
訝しげな声をあげて振りかえると、彼女は唇をぎゅっと結び、敢然とした眼でロッズを睨みつけていた。
ロッズはそのあまりにもささやかな抵抗に笑ったが、少女の背後にあるものと、
自分に何が投げつけられたのかを知った時、もっと邪悪な笑みを浮かべた。
マリンの背後で、金属製の箱に詰められている物。
それは、紛れも無く、マテリア。星の力を秘めた結晶。
ロッズはティファを放し、危険な笑みを浮かべたまま、マリンの方へとゆっくり歩み寄った

342:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:51:36 nrEHS00s

たちまち、マリンの顔が恐怖に染まる。
ロッズの筋肉質な体は、彼女と比べるとあまりにも大きい。
ゴツ、ゴツ、という大袈裟な足音が、余計に恐怖感を煽る。
ティファは起き上がろうとしているが、出来ない。
「…逃げて!!」
叫んだが、どうしようもなかった。

同じ頃。
復興都市エッジのある路地で、デンゼルが額に鋭い痛みを覚えた。

たまらず、額を押さえてその場にうずくまった。
暫くそうしていると、痛の波がひいた。
ティファとマリンが「ちょっと出かけてくる」と言い残してセブンスへブンを出てから、2時間も経っていた頃だ。
デンゼルは2人とも店を空けるとき、こうしてこっそり外を出歩いていた。
出歩くと言っても、これといった目的があるわけではない。ただうろうろと歩き回るだけだ。
たった独りでバーの子供部屋に取り残されるのが、怖くてしかたなかったからだ。
マリンもティファも傍にいてくれない時にベッドでじっとしていると、額の星痕が体力を徐々に奪っていくのがわかる。
暗い、じめじめした、厭な重圧が、小さく弱い身体の全体にのしかかるのを感じる。
デンゼルはその着々と忍び寄ってくる死の足音が怖くて、街に出て、人々が行き交う足音で耳を塞いでいるのだった。

額を指でなぞってみる。まだちくちくと痛む。
顔をしかめて座り込み、そろそろ帰ろうかなどと考えていると、目の前に誰かが現れた。
女の子だった。歳はデンゼルとあまり変わらないだろうか。
「…君も星痕だよね?」
出し抜けに訊いてきた。見ると彼女も、モーグリのぬいぐるみを持った右腕から首筋にかけて、星痕の黒い痣を持っていた。
「行こ。治してくれるんだって」
デンゼルが口を開く前に言うと、少女は彼の手を引いて、強引にどこかへと連れ去ってしまった。

343:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:52:51 nrEHS00s

連れて行かれた先には、一台のトラックがあった。
その荷台には、デンゼルとほぼ同年代の子供達が、次々と乗りこんでいる。
ぬいぐるみの少女もデンゼルを一瞥すると、さっさと乗りこんでしまう。
星痕を、治してくれる。
この苦痛を、取り除いてくれる。
苦しみつづける彼らにとって、それは耐えがたい魅力だった。デンゼルも例外ではなかった。
ティファやマリンのことは、何故だか、気にならなかった。
彼はその場に立ち尽くしていたが、暫くすると、トラックの方へとまっすぐ歩み寄って行った。

これが、リユニオンの力か。
トラックから少し離れた所から、子供達が次々と集まってくる光景を眺めながら、ぼんやり考えた。
街に溢れる孤児の一人に声をかけたら、それが噂になって火のように伝播していき、
1時間もしない内にトラックに乗りきれないほどの人数が集まった。
星痕を宿しているという事は、つまり”母さん”の思念を宿しているという事。
やはり、本能的なレベルで働きかけるのだろう。
いまや集まった子供達は、数十人ほどが押し合いへし合いしながらやっと荷台に収まっている状態だ。
フン、と短く鼻を鳴らすと、ヤズーはトラックの運転席に滑り込んでエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

344:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:54:32 nrEHS00s

クラウドが教会に現れたのは、それからだいぶ時間がたった頃だった。
破壊し尽くされた教会を訝しげに見まわした彼は、教会の中に茂る花畑の上に倒れている人影を見つける。
ティファだった。
慌てて駆けより、彼女を抱き起こすクラウド。意識がない。
「…ティファ?」
呼びかけてみる。応えない。
「ティファ!!」
強く呼びかける。すると、閉じていた目がうっすらと開かれ、黒い瞳にクラウドの顔が映った。
「遅いよ…」
それだけ言う。弱りきり、かすれた声だった。
「誰にやられた?」「…知らない奴」
相変わらず弱りきった声で、短く答えるティファ。だが、次の瞬間に「マリン!?」と叫び、勢いよく体を起こした。
そして、また気を失ってしまった。
すかさず辺りを見まわすクラウド。
だが、教会のどこにもマリンの姿はない。ついでに、マテリアを入れておいた箱も消えている。

「くそっ!」
毒づいたが、その直後、クラウドの左腕に激しく鋭い痛みが走った。
とっさに右手で左腕を押さえる。と、左腕を包む布から、黒い膿が滲んだ。
黒く汚い膿はそのまま腕を伝って落ち、花を汚した。
同時に、先程のサブリミナルのような光景が頭の中に閃いては消える。しかし、今度は少し違った。見覚えのある光景だ。
それは、炎につつまれているあいつの姿。
不気味で危険な笑みを浮かべて、炎の中に消えて行くあいつの姿。
「―セ―フィ…」
その名が、口をついて出てくる。
一瞬だけ、全く別なイメージが割りこんだ。これまでとは全く違う、清らかな湖の光景が。
目を閉じていた事に気づき、開くクラウド。
クラウドとティファは、花畑の中に倒れていた。
花畑と言っても、教会の花畑ではない。どこか、全く違う場所。
クラウドは、再び目を閉じた。
狼が、見ていた……

345:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:56:41 nrEHS00s
せっかく指摘してもらった冗長さが直ってない、戦闘は本編をまんまコピー、展開早すぎ…文章化って難しい・・・

346:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/24 03:44:22 0cznNYvL
乙です。んな悲観するほどじゃないですよ。
十分読ませる文章です。
むしろあんま卑屈になると叩かれやすい・・頑張ってー。

347:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/24 23:00:00 sKgDQY3L
>>345
作中で描かれている細かい動作が入っていて丁寧に描写しているなと思います。
肉弾戦の様子が緊張感あって(・∀・)イイ!

教会でのバトルシーンではスロー・ストップモーションの多用と、花やピアノアレンジのBGM
といった視聴覚効果がふんだんに使われていましたよね。
その分、それらにすべて文章だけで太刀打ちするのは難しいように感じます。(自分は)
そこで、あの作品ではあまり見られなかった心理描写を入れてみてはどうでしょうか?

モーションがゆっくりになる場面(たとえば跳び去るティファの脚をロッズがつかむシーン)で、
捕らえられたティファの心情を入れてみたりだとか。
せっかく場面がゆっくりになったのだから、ここら辺で視点をマリンにしてみるのもアリかな、とか。
(あんな激しい戦闘で、マリンはどうやってそれらの被害から免れるべく協会内を逃げたのか、とか)
決して本筋から逸れることにはなりませんし、非力なマリンの目を通して見た二人の戦闘を描写すれば、
さらに緊張感が増したりするかな、などと思えるのです。
そう言った面を取り入れていくことが逆に、文章化のうまみな気もします。
(特にこの先のシーンは戦闘などの動的要素よりも会話から四者の心情を描く方に重点を置きやすいかなと。
その分、映像として見たときは戦闘シーンのように派手さがないのでそのまま文章化すると単調になるかも)
…まとまりなく長々書いてスマソ。
単に自分が読んでみたいFF7ACノベライズ像を書いただけかも知れないので、あんまり気にしなくてもいいかも(w。

348:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/25 15:11:53 nKt5fD7d
保守

349:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 12:28:47 V3qfNeSE
・ボリューム配分
 表現したいエピソード、シーンを絞り、それ以外は思い切って軽く流す。
 思い入れのあまり全てを描こうとすると、冗長になり却って何も伝わらない。
 読者に伝えたいことを事前に明確にしておくこと。

・キャラクターの心理描写
 いわゆる「神の視点」の濫用は極力避ける。
 全キャラについて等しく心理描写を行うのは、上述と同様、
 却ってぼやけてしまう。
 主人公から見て恋愛、敬意、畏怖の対象となるキャラについては、
 むしろ主人公の視点からの描写に留めると、緊張感を維持できる。
 進行上心理描写が必要な場面でも、可能な限り行動描写のみで
 行間を読ませるなどの工夫をすると良い。

350:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 12:36:55 p0VhgTMc
何だか偉そうな物言いでごめん。
決して7ACの作者さんにダメ出ししてるわけじゃない。
自分が原稿持ち込みに行くたびに編集者から指摘くらうことを
そのまま書いちゃった。

351:349=350
05/10/26 12:38:40 p0VhgTMc
あれ、ID変わってるけど349=350です。

352:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 15:54:36 cPE749NX
>>349
作家志望の方?
それなら是非参加していただきたいなぁ。

353:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:07:47 8+L3mp81
職人さんちょっと過疎ってきた?
まあ強制はできませんが。文書くのしんどいしねw。

354:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:42:43 4lD5BKe3
すいません、返信遅れました。

>>346
どうもです。
そう言ってもらえると励みになります。

>>347-350
貴重なアドバイス、ありがとうございます。
文章はできるだけスマートに、ですか…参考になります。
心理描写…は実を言うと苦手なのですが、早速取り入れて見ようと思います。

355:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:43:50 4lD5BKe3
あ、忘れましたけどAC描いてる者です。

356:297
05/10/27 23:45:13 vP5qLrG6
ff6 - 21 figaro

「お待ちなさい」

 鋭い声に振り向くと、声に違わず厳しい面持ちの老女がティナと兵士を睨んでいた。
「これは…神官長様」
 些か気を浮かせていた兵士は声を取り直し、深く頭を垂れた。ティナが自分もそれに
習うべきか迷っているうちに、老女はさらに言葉を詰める。
「そちらの女性はどなたです?」
 チラリとティナを一瞥してから、老女は鋭い視線を兵士に戻す。
「は。こちらは、エドガー様の…」
「あぁ! もう結構、聞いた私が馬鹿でした!」
 苛立たしい、うんざりだという仕草で頭を振る老女。そしてまたチラリとティナを見た。
「あなたはもう下がって結構です。他に仕事が無いわけでもないでしょう?」
「は……ですが、こちらの方のご案内を…」
「この方のことは私が責任を持ってお引き受けします。さあ!」
 凄みを利かされて、寡黙な兵士は足早に引き上げていった。どうやら神官長と呼ばれる
この女性は、ここではとても発言力のある人物らしい。
 ……でも、どうして?
 ティナはますます困惑するばかりだった。というのは、人の感情の機微に疎い彼女にも、
先程からちらちらとこちらを窺う老女の視線は、明らかに敵意のそれであると分かっていた
からだ。
 どうしてこの人は、怒っているんだろう?
「……それで!」
 二人きりになると、老女の口調はますます棘を帯びる。
「一体あなたはどこの街から連れてこられたのですか!?」
「え…?」



357:297
05/10/27 23:48:09 vP5qLrG6
ff6 - 22 figaro
  

「まったくあの子と来たら……本当に見境の無い!
 先週に三人もつれ込んだばかりと思ったら、今日また一人!」
「……あの」
 何を言っているのかさっぱり分からない。
 それでも老女は呆気にとられているティナを意ともせずに捲し立てていく。
「いえ、何も言わなくて結構。あなたの仰りたいことなどようくわかっておりますとも!
 でもね、女中なんてこの城にはもう、箒で掃いて捨てるほどいるのよ。
 あぁ! いっそ本当に掃き捨てられたら!!」
「……私は」
「ええ、もちろんそうだからといって、あなたに仕事が無いわけではありませんよ。
もっとも余っているわけでもありませんがね、とにかく」
「あの……ちょっと!」
「あら…なんです?」
 冷たい視線が刺さる。
 ティナは咳払いをして、押し戻されそうになった言葉をなんとか絞り出した。
「……その、私は……、ナルシェの街でロックという人が、私を助けてくれて………
 それで、彼に連れられて、一緒にここに……」

 ……だめ、うまく説明できない。
 ティナは困り果てて俯いた。なぜと言われても、彼女自身どうして自分がここにいるのか
分かっていないのだから、説明など出来るはずもない。
 ところが、意外にも老女は言葉をとめて黙っていた。ティナが恐る恐る顔を上げると、  
「まあ…、まあまあ!」
 老女がその顔一杯に、驚きと、歓喜の色を広げていた。
「ああ、ごめんなさい! 私としたことが、とんだ勘違いをしてしまって!」
「……?」
 やっぱり、ティナにはよくわからなかった。



358:297
05/10/27 23:49:23 vP5qLrG6
ff6 - 23 figaro


「ロックね…、あの人は立派な若者よ。とても思いやりがあって、分別もあって……、
 エドガーにも見習ってもらいたいものだわ!」
 先程までとは打って変わって、彼女の口調はすっかり親しげに満ちたものに変わってる。
その変貌に驚いているティナに気づいたのか、老女はもう一度頭を下げた。
「あぁ……本当にごめんなさい。でも、分かっていただけるかしら。
 あなたもこの城の至るところで……見たでしょう? あの女中たちを……」
 ティナはようやく頷いた。
 それは兵士に案内をされている間に彼女自身も気になっていたことだ。つまり、城中の
どこに目を向けても映る、女性たちの姿にである。その女性たちは、みんなエドガーが
方々の街から連れてきた手合いなのだそうだ。
 そうして際限なく増えていく女性たちの管理で、さぞかしこの老女は日々骨を折っている
のだろう。そこにやってきたティナの姿に、兵士の「エドガー様の…」の一言である。
彼女が早とちりをするのも無理はないというものだ。

「あぁ……それで。あなたはここにしばらく滞在されるのかしら?」
 そんな事情を伝えてから、ふと老女は口調を改めた。
 彼女の声に先程の険しさが戻りかけているのを察して、ティナはすこし緊張した。
「…いえ、ご迷惑をおかけするわけにもいきませんし。できるだけ早く、出て行こうと…」
 この返事に、老女はいよいよ気を良くしたようだった。
「まぁ、まぁ、まぁ! そんなご遠慮なさることは無いのよ!
 あなたのような理性的な方なら、いつまでだっていてくださって構わないんですからね。
 そうだわ、あなたさえよければ、私の部屋においでになってくださっても……!」
 子供のようにまくしたてる老女の喜びぶりに驚きながら、ティナはクスと笑った。
 きっとこの城にいるのは、彼女がうんざりするほど華やかな女性たちばかりなのだろう。
 そして、その人たちはきっと、先程のエドガーの言葉にも頬を染めて喜ぶことが出来る
ような人たちなのだろう。



359:297
05/10/27 23:50:18 vP5qLrG6
ff6 - 24 figaro


「この部屋はね、エドガーが子供のころに使っていた部屋なのよ。
 あの人が王位を継いでからは、私にこの部屋を譲ってくれたの」
 招き入られた神官長の部屋の中。二人分のお茶を煎れながら、老女は嬉しそうに話す。
「婆やなら、このベッドでも十分な大きさだろう、ですって! 馬鹿にしてるのよ!」
 そうやって腹を立ててみせる彼女は、けれどそれがエドガーの紛れもない愛情の表現だと
もちろんちゃんと知っているようだった。
 部屋を見回してみる。老女はその印象通り慎ましい生活を好むようで、小さな部屋には
よく整頓されており質素な空気が満ちている。でもよく見ると本棚に童話が入っていたり、
壁に背比べのような傷がついていたり、確かに昔はそこに子供がいたという名残がたくさん
残っていた。
 ふと、ティナは首を傾げた。
「二つありますね」
「え?」
「ベッド、二つありますね」
 老女はしわがれた笑顔に、少し淋しさを混ぜてティーカップを置いた。
「……えぇ。エドガーには双子の弟がいたのよ」
「双子?」
「そう……、双子といってもね、似ているようでちっとも似てなくて……」
「……エドガーの双子」
「マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ」
 口端を歪ませながら、彼女はそっとベッドに手を伸ばした。愛おしさに溢れた彼女の
手つきは、まるでそこに小さな子供が眠っているような錯覚をティナに思わせた。



360:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:11:24 YdjoDXsL
久々のFF6グッジョブ!

あとトンベリもGJwww

361:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:35:27 16Xi/yJW
乙。神官もこうやって個性を持って書かれるといいな。
ファミコンだと没個性になっちゃう。というか、容量上掘り下げられないもんね

362:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:35:30 b5ZGWDsB
トンベリもってどういう意味?

363:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:43:48 YdjoDXsL
>362
■トンベリ復讐ものがたり■
スレリンク(ff板)


364:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 01:46:50 DX5KglEZ
319です。
>>324
ありがとうございます。
>>356-359
神官長がまさに生きてるって感じがして読んでると嬉しくなってきました。
さり気なく描かれるフィガロの案内役兵士も細かいなと。
この勢いであのケッコン娘も出て来たらエライ事になりそうだ…(w。


未プレイの方(または解釈によって)は混乱させる文章かも知れませんが、
FF6オープニング(ティナ覚醒前)補足文>>323の続きを投下させて頂きます。

365:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:52:30 DX5KglEZ



 彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。

 こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
状況が揃っている事を思い知った。
 さすがナルシェだ。これまで帝国が侵攻作戦を展開しようとしても、容易に落とせる
都市ではないのが頷ける。
 しかし裏を返せば、そんな都市へ派兵された我々はいわば精鋭なのだ。そう思えば
自然と士気もあがる。
「この娘を先頭にして突っ込む。ザコには構うな。行くぞ!」
 兵器でありながらそれを「娘」と呼んだ自分に苦笑しながら、彼は前方に視線を向けた。
頭部の高い位置で結われた少し珍しい色の髪の毛が揺れ、露出した肩は少女のそれらしく
華奢だった。その後ろ姿だけを見れば、彼女は紛れもなく人間であるはずなのに。


 彼らは“少女”を先頭にして隊列を組みナルシェの中心部へと足を進めた。

366:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:54:29 DX5KglEZ

                    ***

 これまで帝国同盟にも反帝国組織にも加わらず、中立の立場を貫いて来たナルシェ。
蒸気機関と炭坑の発展に裏付けられた富と、ナルシェの民である事への誇りが、この
都市の独立を支えてきた。
 家々の戸は吹雪から室内を守るために堅く閉ざされ、わざと細く作られた道路は
外敵の侵入に備えたつくりだった。常に降る雪と吐き出される煙とで、視界は良好とは
言えない。しかしそれさえも都市防衛の一環だ。
 そんなナルシェを守る屈強の『ガード』達は、たった三名の侵入者に愕然となる。街の
入り口に見た侵入者の姿が、南方大陸三国を武力で制圧したと噂に聞く、帝国軍の
魔導アーマーだったからだ。
 反帝国組織リターナーとか言う連中が最近、長老に「近々ナルシェに帝国が攻めてくる」
などと言ってきたらしいのだが、どうやらそれは事実のようだった。建物の陰に隠れ、
一部始終をうかがっていた先陣隊の一人が、勇気を奮い起こして立ち上がる。頬に触れる
風が、刺すように冷たく感じた。横に並ぶ者も、彼に倣って立ち上がる。
 彼らを支えているのは、ナルシェのガードたる誇り。

 ―己の誇りにかけて、この都市を守ってみせる。

 ふたりは誓うように頷き合って、メインストリートへと飛び出していった。

367:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:55:36 DX5KglEZ

                    ***

「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで……」
 戒厳令下の都市、外をうろつく者はいない。普段は人々が行き交うこの場所が、
一瞬にして戦場へと変貌する。
 帝国軍魔導アーマー部隊の三人と、炭鉱都市のガード二名が対峙する―ナルシェ
市街地を舞台にした戦いが、静かに幕を開けた。
 しかし、この戦闘が長く続くはずもなかった。数でも劣性だったガード達には敗走の
選択肢さえも与えられなかった。魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装して
いるとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
 武器を振るうどころか、叫ぶ間もなく命を落としたガード二名の亡骸は灰となって、
そのままナルシェの雪と混じり合い音もなく消えていった。
 ナルシェでの初めての交戦。その勝利にも三人は特に言葉を交わすこともなく、メイン
ストリートを北上し続けた。
 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。



 二番隊として控えていた男達は、建物の隙間から仲間達の最期をこの目で見届けた。
 魔導アーマーの凄まじい力をまざまざと見せつけられて、本能的な恐怖心から踏み
出そうとする足が震える。
 ―死ぬかも知れない。いいや、確実に……。
 それでも、彼らは戦わなければならない。なぜならば彼らは、選ばれた誇り高きガードで
あるから。
 ふたりは意を決しメインストリートに向けて走り出す。角を曲がり魔導アーマー三体を
視認すると、縛めていたシルバリオを放った。二頭は怯むことなくまっすぐに敵めがけて
突進していった。

368:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:00:39 DX5KglEZ

                    ***

「ナルシェは、俺達ガードが守る!!」
 ガード達が言い放った声が遠くに聞こえた。魔導アーマーが通りの中央で立ち止まり、
横合いから飛び出してきた獣との戦闘に入る。
 魔導アーマーに立ち向かった生物は、死以外の道を選べない。
 しかし魔導アーマーの搭乗者には、与える死の方法を選ぶ事ができた。
 いつかファイアビームを好んで使う相棒に、その理由を尋ねたところ「操作がいちばん
簡単だから」と返事が返ってきたのを思い出した。現に今も、彼はそれを使って敵を撃退
していた。
 実際のところ操作に特別な違いはない。ただ、パネルの並び順が違うだけだ。手元の
レバーに一番近いのがファイアビームというだけで、彼はそれを好んで使うのだ。相棒の
横着ぶりにはさすがに呆れて物も言えない。
 そんなことを考えていた彼は、ふとあることを思いついた。
 男達ふたりの搭乗する魔導アーマーと、“少女”が搭乗する魔導アーマーの性能には
大きな差があった。彼は好奇心から“少女”にその能力を発揮させる事を命じたのだった。
 そのひとつが『魔導ミサイル』。帝国空軍機などに搭載されているものとほぼ同型の
ミサイルで、発射には膨大な魔導エネルギーが必要とされるはずだ。事実、そのエネルギー
補填用の装置だけでも、魔導アーマーの何倍もの大きさになる。
 それをここに―人ひとりがようやく搭乗できるほどの魔導アーマーに組み込めたのは、
やはり搭乗者自身から魔導エネルギーを補充する事が可能だからなのだろうか。生きる
兵器……この娘だからこそ、と言うわけか。しかし残念ながら魔導アーマーの構造は
軍部の最高機密であり、彼らがその真相を知ることは一生ない。
 無表情のまま手元を動かし、“少女”は命じられた通りの行動を起こした。ミサイル発射の
轟音と直後の閃光とともに、戦闘はあまりにも早すぎる決着を迎えた。残されたガード
ふたりの足が僅かに怯む様子を見せた。しかし、それでも突撃をやめることはなかった。

369:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:03:51 DX5KglEZ
 こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
 もはや魔導アーマーの搭乗者に相手の命を奪うという感覚は薄れ、足元のペダルと
手元のレバーやパネルを間違いなく操作するという作業でしかなくなりつつあった。
 相変わらず相棒は、ファイアビームばかりを使っている。しかし今さらそんなことを指摘
したところで何も始まらない。彼は黙って二人の後について歩き続けた。


 作業をこなしながら進軍を続ける。ここまで来ると建物が間近に迫ってくるほど道幅は
細くなっていた。最後尾を歩いていたウェッジが振り返ると、後ろに控えていたガード達が
武器を構えた。
 先に声をあげたのは、彼らの方だった。
「よし! はさみうちだっ!!」
 仲間達の敗戦を見てもまだ懲りていないのか、それとも自棄になっているのだろうか。
僅かばかり考えたが、いつも結論が出る前に戦闘は終わってしまう。相棒が言っていた通りの
ザコだ、たしかに構うほどのものではない。
 そうやって人知れず自分を納得させながら、手元のパネルを操作する。レバーを引いた次の瞬間、
耳障りな機械音と共に雪の大地がオレンジ色に照らし出された。アーマーの先端から赤黒い閃光が
伸び、目の前の生物を飲み込んだ。
 ファイアビームだった。


 またしばらく北上を続けると、周囲の景色が変わり始めた。煙を吐き出す煙突や立ち並ぶ
家々ではなく、むき出しの岩場が目立つようになったのを見て、自分たちの目的である炭坑へ
着実に近づいているのだと知る。

370:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:10:31 DX5KglEZ

                    ***

「炭坑の守りをかためろ!!」
 悲壮なまでの叫び声を、やはり遠くに聞いたような気がした。目の前に現れたのは
これまでにない多勢だ。おまけに人間だけではなくメガロドルクまでいる。普通に考えれば、
こんなモンスターまで手懐けているナルシェの防衛機構には驚かされるところだ。
 しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。
 彼らの操る魔導アーマーの足元で、数分前までは命を持っていたものが雪の上に積もった。
“少女”の搭乗した魔導アーマーが、その上を歩く。


 そんな少女の顔を、脳裏に焼き付ける者が居た。
 目の前で次々に仲間を殺されていった男は絶望を振り払うように、炭坑を守る最後の砦を
解き放つため、その場を離れ駆けだした。


 こうして、前進を続ける彼らの前に立ちふさがる者はいなくなった。ここまで見せつけてやれば、
いい加減逃げたのだろう。逃げるのが自然だ。今まで向かってきた奴らの方が異常とも言える。
 やがて前方には黒く口を開けた炭坑の姿が見えてきた。組まれた足場から察するに、それほど
古い物でないことが伺える。
 三人は入り口の前で一度立ち止まる。
「情報によれば、新たに掘った炭坑から氷づけの幻獣が出てきたらしい……と
いうことは、この奥か?」
 不安や疑問というのではなく、確認という意味で相棒に問う。問われた男は頷いて前進を促した。


 “少女”以外のふたりにとって、この炭坑が二度と出られない闇への入り口になるのだとも知らずに。


----------
コマンド入力が面倒くさかったのは自分だけかも知れません、ごめんなさい。

371:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 02:17:26 YdjoDXsL
神経質な方はウェッジかな?
ファイアビームの描写が兵士の「仕事柄」を思わせて凄く良い。
テンポもいいし、文章かなり上手いですね。

ただ細かいんですけど、入り口で魔導アーマーの姿は確認してるのに、
>「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで…」
は、ちょっと引っかかるかな、と思いました。乙です。

372:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 21:02:03 vdg6WbHu
>>370
乙。
確かに、最初やった時はあんなに早くいなくなるとは思ってなかったから、
ティナのすべての技を見ることはなかったなw
>>371
帝国の侵略がとうとうこのナルシェにまでのびてきたのかってことじゃないのかな

373:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/29 19:07:48 NJe3ngRL
>>370
乙です。
どっかで見たことある文体だと思ったら恋する小説スレの6書きさんジャマイカ(゚∀゚)
向こうのスレの作品も読ませてもらってますです。
ちなみに、俺もナルシェではファイヤービームばっかり使ってました。

それはそうと、AC投下させてもらいます。

374:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:09:54 NJe3ngRL

不意に、意識が取り戻された。
目を開けると、それはどこかの寝室、そのベッドの上。
壁に、クラウドとティファの子供らしい似顔絵があることから、セブンスへブンの寝室だとわかった。
クラウドは起きあがると、隣のベッドにティファが、意識を失ったまま横たわっているのを見つける。
……また、助けられなかった?
そこまで思い至ったクラウドの胸中に一つの感情が滲み出す。それは、後悔。
どうすることもできず立ち尽くし、ティファの安らかな顔を見つめるクラウド。その背後に、2人の男が立っていた。

「…重かったぞ、と」
クラウドが振りかえる。そこにいたのは、レノとルードだった。
「…あんた、子供達と住んでいるって話だったよな」
クラウドが口を開く前に、ルードが話し出す。
その抑揚のない口調に伴う重苦しさに、クラウドは厭な予感を感じる。
「空っぽだ。どこにもいねえよ」
その予感を裏切ることなく、レノがお手上げだと言う風に言った。
「…どこにも、いない?」
まだ後悔の念に沈みながら、クラウドが復唱する。
タークスの2人は沈黙で答えた。重い空気が、あたりに充満する。
「…いいのか?」
やがて、ルードが短く訊いた。
「俺は…」
のろのろと答えようとしたクラウドは、そこで言葉に窮してしまった。
――俺は…なんだ?
俺はどうしたらいい?どうしろって言うんだ?人ひとり助けられない、この俺に?
またも、沈黙が辺りの空気を支配する。ルードがもう一度「いいのか?」と訊いたが、それでも口を開かない。開けない。

たっぷり20秒間待った後、レノは失望したようなため息をついた。
「じれったいぞ、と」
煮え切らないクラウドにそれだけ言い捨てると、全ての興味を失ったように寝室から出て行く。
ルードもサングラス越しにクラウドを冷たく一瞥すると、後に続いた。ドアを閉める音が、いやに大きかった。
クラウドは何もせず、何も言わず、その場に立ち尽くしたまま2人を見送った。

375:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:12:00 NJe3ngRL

日が暮れた。
クラウドはまだセブンスへブンの寝室にいて、窓から月を眺めていた。綺麗な満月だった。
タークスの2人と短い会話を交してから、ずっとそこにいたのだ。
ティファの身を案じて。否、案じるふりをして。あるいは、どうするべきか決めかねているふりをして。
彼女が呻き声をあげ、ようやく目覚めたのは、それからだいぶ後のことだ。

目を覚ますと、そこはセブンスへブンの寝室だった。
もう夜だった。慌てて起きあがる。
クラウドがいた。
彼は起きあがったティファの顔をちらりと見たが、すぐに窓の外に視線を戻し。
「レノ達が探している」とだけ告げた。ティファは「そう…」と呟いてうつむいた。
寝室に何度目かの沈黙がおりた。虫の鳴く音が、どこからか聞こえてくる。
「星痕症候群…だよね?」
暫くして、うつむいたまま、ティファが口を開いた。
クラウドは何も言わず窓の外を眺めている。その沈黙は、肯定の証。
「やっぱり…」とティファが沈んだ心で絶望的に呟くと、クラウドは
「…治療法がない」とだけ言った。その声もまた、絶望的な響きを伴っていた。
――でも、ちょっと待って。
ティファは顔を上げた。
――だから、逃げるの?
「でも、デンゼルは頑張ってるよね?」
――小さい子供だって、耐えてるのに?戦ってるのに?
「このまま死んでもいい…なんて思ってる?」
――なのに、あなたは逃げるの?
「逃げてないで、一緒に闘おう?みんなで助け合って、頑張ろう?」
このままじゃ、みんないたずらに苦しいだけだ。あなただって、マリンだって、デンゼルだって、もちろん、私だって。
まだ背を向けているクラウドに、ティファは必死に訴えかける。
しかし、それでもクラウドはこちらを見ない。応えない。
「…本当の家族じゃないから、ダメか」
石のように黙り込む彼に、ティファは諦めたように締めくくった。
すると、クラウドはやっと口を開いた。

376:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:13:34 NJe3ngRL

「俺には…誰も助けられないと思うんだ」
暗く、重く、絶望的な声。
「家族だろうが…仲間だろうが…誰も…」
――ああ、それで…
そこまで言ってまた黙るクラウドの背から視線を放し、ティファはまたうつむいた。
――まだ、あなたはあの事を…

「…ズルズル ズルズル」
何度目かの沈黙の後、やはりティファが口を開いた。
失望したような、諦めきったような、うんざりしたような、そんな声。
クラウドがやっと振りかえると、ティファはクラウドに背を向けていた。
「ズルズル ズルズル!」
また言う。先程よりも少し大きい声だった。
その後の言葉を、意外な人物が引き継いだ。

「いつまで引きずってんだよ、と」
その声のした方に、クラウドとティファは同時に振り向く。
いつのまにか、タークスの2人が寝室の中に戻ってきていた。
「見つからないの!?」
すがるようにティファが訊く。
「銀髪の奴らが連れてった。目撃者がいたぞ、と」
レノが落ちつかなげに部屋を歩き回りながら、答える。
「行き先は?」今度がクラウドが、この時ばかりは急き込んで訊く。
「忘らるる都」ルードが答える。
「…アジトだ」
彼は腕を組んで壁に寄りかかって立ったまま、付け加えた。

その後、ティファ、レノ、ルードの3人が、意味ありげな視線をクラウドに送る。
その視線の意味する所を、クラウドは解かっていた。
暫く沈黙した後、彼は口を開いた。

377:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:16:09 NJe3ngRL

「…頼む…」
短く、それだけ言った。
その一言は、その場にいた3人を大いに面食らわせた。
ティファもレノも、ポーカーフェイスのルードでさえも、半ば驚いたような、半ば呆れたような顔でクラウドを見た。
「俺はルーファウスと話してくる」
そう続けるクラウド。それは戦えない、闘いたくないと言う意思表示。
「逃げないで!」
間髪いれずに、ティファが悲痛に訴える。
「わかるよ?
 子供達を見つけても、何も出来ないかもしれない」
言葉を続けるティファ。
クラウドは彼女に背を向けたまま、居心地悪そうにしだしたタークスの2人を見ながら聞く。
「もしかしたら、また取返しのつかないことになるかもしれない」
レノはルードを押して部屋を出ようとしているが、ルードはそんなレノを逆に押しのけて部屋から出さない。滑稽な図だった。
「それが怖いんでしょ?」
…図星だ。
「でも、もっと今を、色んなことを受け止めてよ」
ティファの説得は続く。
「重い?だってしかたないよ。重いんだもん」
彼女はクラウドにとってもっとも触れられたくない部分に触れた。
「一人で生きていける人意外は我慢しなきゃ。
 ひとりぼっちはいやなんでしょ?出ないくせに、電話は手放さないもんね」
また、図星を突かれた。クラウドは喋り終えた彼女を背に、ただ黙って立ち尽くしていた。

ティファの言った事は正しい。どこまでも正しい。
俺だって、それぐらいは解かってる。少なくとも、解かってるつもりだ。
でも、ティファ…俺は…俺は…

クラウドが何も言えないでいると、漫才のような押し問答をやめたレノが、またため息をついた。
「アジト…お前が行けよ、と」
それだけ言って、ルードと共に部屋から出ていってしまった。

378:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/29 19:18:54 NJe3ngRL
本編とちょっとシーンの順番が変わりますが、セブンスへブンの会話をほぼ一通り書きました。

379:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 17:53:33 Giitfl+H
>>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった

380:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 19:10:26 64NqQNxH
そんな細かい突っ込みせんでもw

381:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 19:55:00 qCzlHGar
その文章だけ取り立てておかしいとも思えんけど。
粉雪程度に阻まれんなよwwwヨワスwwwって事?

382:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 20:17:49 qCzlHGar
むしろ”まともに行く手を阻む物が何もない”って事なんだろうけどさ。

383:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 23:47:46 qD0EiYsY
保守


384:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 23:51:40 SdgnkeFv
>>379
お前が何を言いたいのかさっぱりわからん。
普通に良い描写じゃないか。

385:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 02:11:52 jRe714Tz
ACグッジョブ!
いいな、なんかティファの態度が切ない。

386:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 08:15:46 Gdub4NdN
 横からになりますが、その一文が後の文章と矛盾を孕んでいるという事でしょう。多分。

>>382さんの解釈が正しければ、
 進軍を阻むもの > 粉雪、細い通路、煙、侵入者であること(土地に対する知識の不足)
 ”粉雪だけ”ではない。よって矛盾。

 あるいは、
>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 という一文は後の文章と違い、ナルシェ到着後の描写ではないという解釈も可能ですが、
それではナルシェの難攻不落を表現するという文頭の意図からは浮いた意味のない文章だということになります。
 この場合調整は必要ですが、下記のような文章の流れならば可。

 それまで彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 しかし、ナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。

387:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 12:23:24 X6dNAsx9
>こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
>以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
>魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
>蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
>状況が揃っている事を思い知った。

と書いておきながら、

>魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装しているとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
> 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。
>こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
>しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。

などと書いてしまう矛盾。
凝った言い回しやレトリックなど、小手先の技術におぼれ、
プロット、筋道を明確にするのを怠った報いか。

388:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 13:26:28 PM5d5IuD
書いてるのは(おそらく)素人なわけだし、そんなに重箱の隅をつつかなくても…。
プロの小説家・漫画家だって、かなり矛盾だらけのものを発表してる人いるし。
ていうか例えばFF7なんて、小説でこそないが、あんなに売っといて本編が矛盾だらけジャマイカ? 昔文章化しようとして、あまりの穴の多さに挫折したよ…


389:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 13:41:03 Gdub4NdN
>387
 そこには矛盾点ありませんよ。
 「不利な状況をものともしない魔導アーマーの力」という表現の軸はズレていません。

>>386で書いた部分も、最初の一文の時間的配置が曖昧であるゆえに矛盾を孕むように感じさせるだけで、根本的な矛盾というわけではありません。
 むしろ作者さんのチェック(時制、語句、視点、誤字・脱字など)が少々甘いゆえのミスでしょう。そういったミスは(請われもしないのに指摘するつもりはありませんが)他にもありますしね。

>>388
 ですね。

390:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 17:42:51 jRe714Tz
>363
他スレの話は持ち出すなよ。
向こうでは名無しで投稿してたんだから、察しろ。

391:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 18:16:58 P+oD/Ymw
どうでもいい事で揚げ足とってやたらめったらに流れ悪くしようとしてるのがいるな

392:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 18:51:39 SbHms85P
それだけ賑わってるって事だ。

393:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 19:24:39 r4ExQ8qk
そんな賑わい方いやだ…

394:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 20:31:28 56DzSntx
そんな板じゃないんだから勝手にやらせてくれよってこった。
書いてる人たちだってプロじゃねえんだ文句言うな。

395:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 20:41:34 SbHms85P
まあまあマターリ汁
そんな物言いじゃ雰囲気悪くなる一方なんじゃ…

396:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 21:20:33 DSXkOjO0
でもここは、プロにも見劣りしないような作品を作るぐらいの意気込みで
真面目に書いていくスレだからな。ある程度の批評はあった方が良いと思う。
もちろんそれと同じように賞讃もしていくべきだろうが。

ちなみに俺は、粉雪の描写、問題ないと思ったけど。

397:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 22:16:22 P+oD/Ymw
批評と揚げ足取りとは全然違うからな
その辺の区別をしっかりつけていきたい

398:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 07:14:10 Y9lxbWU6
それはそうと、ACって頻繁に投下してる割には陰薄いな
やっぱりみんなNGに入れて見ないようにしてるんだろうか

399:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 08:17:30 X2vcbHg/
新作期待あげ

400:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 08:50:00 iELZbzmd
>>398
影が薄いとは思わないよ。面白いし。
でも、難しいんじゃない?
元々がしっかりとした科白があって、台詞回しがあって、
その瞬間瞬間の表情があって、…という映像を文字に起こすと、どうしても
台本的になってしまうと思う。
アレンジしにくいんじゃないかな。
そういう意味で、他の1,4,5,6,に比べると、「書いている人のカラー」が
出しにくいんだと思う。

401:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 10:23:18 O5zzJnQC
7AC、未プレイの人は当然NGにしてるだろうし、
プレイ中の人も、今まさにホットな時期なので、
イメージ崩されたくない(良くも悪くも)という理由でNGにしてるのでは?

402:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 22:38:56 gdiP9GfR
別にNGにしてなくてもこのスレはROMに徹する潜伏者が多いから。

403:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/02 00:56:55 h5YqCaYd
>>401
未プレイっていうか未見ね

404:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:21:40 9QX82TOV
ところでまとめサイトの管理人さんは……

405:494 ◆yB8ZhdBc2M
05/11/03 02:34:55 aG2VB03e
みなさんお久しぶりです。
更新一ヶ月半程何もしてなくてすみません・・・。
一応スレには目を通していたんですが、ここ最近どうにも忙しくて更新が滞っていました。
今週は学祭期間中で時間が取れそうなので、また少しずつ更新を開始していこうと思うので宜しくです。

てかタイトルが増えたのでサイトデザインを変更せねば、と。


406:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:39:45 9QX82TOV
おお、いたのか。よかったよかった。
某SS総合保管所の管理人みたいに失踪しちゃったかと思ったよ。
更新マターリがんばってください。

407:FF8
05/11/03 11:39:08 DsCVtIEF
FF8-1

訓練施設に剣戟の音がこだまする様になって、もう一時間近く経つ。
「どうしたスコール、本気を出せよ。
このガーデンにゃ、ガンブレード使いは俺とお前しかいないんだぜ。
これじゃ訓練にならんじゃないか」
荒く息を弾ませながら、それでもサイファーは強がって言う。
「それとも降参するか、おい?」
「それはない!」
安い挑発と知りつつも、俺はムキになってサイファーに切り掛かっていく。
昔からそうだ。俺は昔から、サイファーに対しては対抗意識をムキ出しにして
突っかかっていく性癖がある。
どうしてなのか、それは考えたくないし、どうでもいい事だ。
「そう来なくちゃな。
さすがは”骨のある奴リスト”ランキング上位者よ!」
しばらく止んでいた剣戟の音が、再び訓練施設にこだまする。

408:FF8
05/11/03 11:50:11 DsCVtIEF
FF8-2

ガンブレードを得物としたのは、サイファーの方が先だった。
幼少の頃に見た映画の影響だという。
愛しの姫君を守るために竜と闘う騎士を描いた、ありきたりな物語。
相手を射抜くかの様に、切っ先を真っ直ぐ水平にする独特の構えも、
その映画の主人公を真似たものらしい。
重いガンブレードを水平に、しかも片手持ちで構えるなど、およそ実際的ではない。
が、それを実現たらしめているサイファーの膂力には、侮りがたいものがある。

俺がガンブレードを使う様になったのは、サイファーに対抗するためだと、
多くの人は思っている。勿論サイファーもその一人だ。
今までの俺とサイファーの確執を思えば、それも止むを得ないが、
実際のところそれは無関係だ。
訓練生時代に色々な武器を試してみたが、一番しっくり来たのが
このガンブレードだったというだけの事だ。
が、それは誰も知らない。誰にも言ってないからだ。
別に秘密にしているわけじゃない。ただ単に面倒くさいからだ。
自分の事を知ってもらう、これは面倒なだけではなく、さして意味のない事。
俺は人の事に興味を持たないのと同様、自分の事に興味を持たれたくはない。

409:FF8
05/11/03 12:11:20 DsCVtIEF
FF8-3

あまり知られていない事だが、ひと口にガンブレードと言っても、
実は用途に応じて、様々なバリエーションがある。
俺が扱うガンブレードは「斬撃タイプ」と呼ばれるもの。
相手に切り掛る直前にトリガーを引くと、薬室内の炸薬が爆発し、
剣の峰にある噴出孔から大量のガスが噴出する様になっている。
それが斬撃の威力を後押しするのだ。
一方、サイファーが好んで用いるのは「刺突タイプ」と呼ばれるもの。
これはガスの噴出孔が、剣の峰ではなく剣先にある。
相手を突き刺したと同時にトリガーを引き、相手の体内にガスを送り込んで、
体内から破壊する事を目的としている。

とはいえ今は訓練中であり、ましてや俺とサイファーは確執こそあれ
同じガーデンの訓練生という事もあって、当然ながら安全装置が掛かっている。
だから結局のところ、単なる長剣での斬り結びに過ぎないのだが・・・

410:FF8
05/11/03 12:30:56 DsCVtIEF
FF8-4

一進一退の攻防が続く。いつもの事だ。
互いの手の内は嫌という程知り尽くしている上に、技量も似たり寄ったり。
疲労だけが蓄積されていく。
「ふぅ、埒があかんな」
退くもならず押すもならぬ展開に痺れを切らし、サイファーが漏らす。
「!」
・・・サイファー、肘が見えている・・・
サイファーの様に突きを主体とする剣法では、肘を隠すのがセオリーだ。
突きに対しては、下段から肘を払うのが最も有効とされているからだ。
肘は攻撃の起点であると同時に、唯一の弱点でもあるのだ。
積み重なった疲労で、流石のサイファーにも隙ができた様だ。
無防備になったサイファーの肘を狙い、俺はこれもセオリー通り
下段から払いに行った。
剣筋を見極められぬよう、左掌を奴の顔面に突き出す事も忘れない。
「貰ったぞ、サイファー」

411:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 19:47:57 XbQmueFi
FF8の人うまいね。生意気に批評させてもらう事にした
地の文が続くが飽きさせない出来映えだと思う
もともとの映像を読み手が知ってるという助けはあるが、
それにしても戦闘の描写が巧みだ。映像がちゃんと頭に浮かぶ
きっと書き慣れた人なんだろうな
一人称小説の利点をうまく使えてると思うよ


412:FF8
05/11/04 09:40:01 lqCX/N5C
FF8-5

「甘いっ!」
叫ぶと同時にサイファーは半歩退がり、肘をたたみ込んだ。
俺のガンブレードは虚しく空を切り裂くのみ。
肘を見せたのは隙ではなく、誘いだったのか。
いかに疲労のピークにあるとはいえ、
こんな初歩的なフェイクに引っかかってしまうとは・・・

「かかったなスコール、隙だらけだぜ」
まずい。空振りしたせいで、俺の身体は大きく横に流れている。
体制を立て直す暇を与えまいと、サイファーが突きかかってくる。
先刻俺がしたのと同様、左掌で俺の視野を塞ぎながら・・・
いや、違う、これは!
「ファイアッ!!」
サイファーの左掌から火球が飛んでくる。
ブレードを翳し、かろうじて直撃は免れたが、衝撃で俺の身体は後方へ飛ばされた。

413:FF8
05/11/04 09:58:07 lqCX/N5C
FF8-6

「おっと、魔法は卑怯とか言うなよ、スコール。
これはあくまでも実戦を想定した訓練なんだぜ。魔法に対する備えを怠ってはいかんな」
勝ち誇ってサイファーが言う。
・・・サイファー、嫌な奴だ。
しかし、奴の言うことは正しい。実戦であれば、俺だって魔法を併用するだろう。
「スコール、これは備えを怠ったペナルティーだ!」
叫びながらサイファーはガンブレードを一閃させた。
ガンッ
額に衝撃が走る。
僅かに身を反らし、脳天への直撃は避けることができたが、
それでも額の辺りを大きく切られてしまった様だ。鮮血が滴り落ちる。
「どうした、まさかもう降参てわけじゃないだろうな。
さあ立てよスコール。
もっと俺を熱くさせろ!もっと俺を楽しませろ!」

・・・そこから先の記憶が俺にはない。
気がつくと俺は、医務室のベッドに横たわっていた。

414:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 10:11:33 n8KAPmDG
OPムービーでのスコールvsサイファーを極力忠実に描写しようと努力してみました。
私の意図が上手く成功していればいいのですが。

>>441さん
有難うございます。励みにして頑張ります。

415:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 12:29:04 4eU1kbE0
FF8作者さん、乙そしてGJ!
サイファーが小さいころ見た映画の主人公って、ラグナだよね?
ルブルムドラゴン相手にミニゲームした時の、あれだよね?
それで構えが似てるのか。はじめて気がついた。
原作でそういった描写あったっけ?見落としてたよ。
あっやべー、なんかむしょうにFF8やりたくなってきた。
数年ぶりにプレイしてみよっかな。

416:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/05 13:23:06 6KLYwSFD
>>415
アルティマニアに裏話程度に紹介されてただけだと思う。
勘の鋭い人ならプレイ中に気づくんだろうが、俺もアルティマニア読むまで気づかなかった。

417:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:45:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0247 4章 3節 山間(32)

山頂までには辿り着くための道中には一つの吊り橋が架かっている。
長年放置されていたのかその橋は酷く老朽化し、所々の木々が腐食し、足を載せただけで
崩れてしまいそうであった。
「やっぱりこれを昇らなきゃ駄目なんだろうな」
ぐっと息を飲みながら震えた声を口にするのはパロムだ。
「今更怖じ気づいたの?」
「別に……そんな事はないぜ。この程度の橋なんら問題ないぜ」
「ふーんじゃあ、あんたが一番最初に行く?」
「わっ! 分かったよ、そうするぜ」
そこまで言われたら黙ってわいられなかったのか。覚悟を決めたかのように歩を進み始める。
パロムが足を載せた途端、吊り橋はぶらりと左右へと揺れ動く。
「うわぁわーー! やっぱり怖い!」
猛烈な勢いでパロムはセシル達の元へ引き返してくる。
「あら、やっぱりね」
すっかり怖じ気づいたパロムを見て、意地の悪そうな顔でポロムが笑う。
「仕方ないだろう。怖いものは怖いんだから」
「僕が先に行くから。みんなは僕の後ろに付いてきて」
少しだけ見かねた様子でセシルは切り出す。
「本当か。ありがとよあんちゃん」
パロムはふうといった感じで胸をなで下ろす。
「じゃあ行くよ」
そっと足を踏み出す、またもや橋は大きく揺れ、歩を進めるたびにきしきしと音がし
今にも落ちそうである。

418:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:46:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0248 4章 3節 山間(33)

「二人とも僕に付いてきて。大丈夫、下を見なければ怖くないよ」
「でもよ……」
「ええい、何を怖がっとる! 早く行くぞ」
躊躇を続けるパロムの背を今まで黙っていたテラがぽんっといった感じで押す。
そのまま流されるようにパロムは橋に歩み出す。
「ちょっとじいちゃん! いきなり何すんだよ」
「いいから行くぞ。ここで立ち往生って訳にもいかんからな」
「分かったよ」
急かすテラの言葉を受け、それ以降は黙りきってしまった。

419:299
05/11/06 14:54:15 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0249 4章 3節 山間(34)

橋も終わりにさしかかった頃、前方にははっきりと浮かぶ影が一つ見渡せた。
「ようやく到着か……」
その進むごとにその影ははっきりとその形を露わにしていく。
「!」
その建物まで後少しと言ったところでセシルは一つの気配を感じ、後ろを振り返る。
「何だ! あんちゃん。そんなに構えて?」
だが、後ろには驚いた様子のパロム達が居るだけであった。
「いや、ちょっと悪い気配がしたような気がしてさ……」
「そうか? おいらは何も感じなかったな。ポロムは―」
ポロムが首を立てに振ろうとしたその時、橋がぐらりと左右に大きく揺れる。
「な……なんだよ」
パロムは振り落とされそうになり慌てて身を屈める。
フシュルッルーーー
揺れに合わせるかの様にまた山頂に向かうまでに聞こえたあの声が聞こえてきた。
「どうやら、奴はまだ生きていたようだな」
その声を聞いたテラが確信めいて呟く。
「よ……くも、私を殺してくれたな……」
返答ともつかぬ乾いた声が返ってくる。その声は聞き覚えのある―
「スカルミリョーネ! 何で?!」
確かに倒したはず、どうやって生きていたというのだ?
「グハハァーーアノ程度でこの私がぁーくたばるとでも。
死してなお恐ろしいこの土のスカルミリョーネの力を思い知るがいいっっーーー」
急に地面から現れた泥の様な物質が膨らみ始める。
中心には顔がかたどられていき、体からは大型の魔物の角ほどある牙が幾多も突出し始める。

420:299
05/11/06 15:00:01 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0250 4章 3節 山間(35)

「私をこの様な姿にしたお前らはただでは死なせんぞ! ゆっくりといたぶりながら
この私に刃向かった事を目一杯後悔させてやるぞ!」
言い終わらぬうちに、その歪んだ口から白い煙を吐き出す。
「まずいっ、口を塞げ!」
いち早くその正体に気づいたのかテラは皆に注意を促す。
しかし、その頃にはその煙、何かのガスはセシル達の体を蝕んでいた。
たちまちに体が鉛の様に言うことをきかなくなった。
「これは……」
パロムも苦痛に満ちたような呻きを上げる。どうやらこの症状は自分だけでは
ないのだろう。
「テラ……これは……」
この状況では口を開くことさえも相当な労力を要した。
それでも何とか声を絞り出してテラに訪ねる。
「吸った人間の動きを劣化、停止させるガスじゃ。このままでは……」
「この程度はまだまだ序の口、楽しみはこれからだぞ! 簡単にくたばってもらっては
こちらが困る。ハハハァァーー」
「ふざけんなよ。さっきからおいら達を見下しやがって……なめるなよ。ファイ……」
「ふん、遅いわ」
ガスのせいで緩慢な動作で呪文を詠唱しようとするポロムを牙でなぎ払う。
さらに傍らのテラも弾き飛ばそうともう一つの牙を振るう。
「く!」
その攻撃は決して致命傷となる程、威力の高いものでは無かったが、魔法も自由に扱えぬこの状況ではいちいじるしく
此方が不利であろう。
何とかして打開策を打ち出さねばいけない。

421:299
05/11/06 15:32:17 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0251 4章 3節 山間(36)

「ほらほらっ! どうした? いっその事、このまま麓まで突き落としてやろうか?
そちらの方が苦しまずに死ぬことができるぞ」
崖……
そも言葉に触発されるかのようにセシルは目を下に落とす。
吊り橋を構成する、板と板の隙間からはうっすらともやに覆われた森が見える。
ここから落ちたら一貫の終わりであろう。
「そうだ!」
眼下に見える風景を眺めなが、セシルにはある一つの考えが浮かんだ。
「みんな大丈夫か」
「ええ」
いまだに続く攻防の中ポロムが返答する。
「みんな僕の後ろ、つまり山頂の方まで下がって。この場を何とかやり過ごす方法があるんだ」
そこで一旦言葉を切り、皆の様子を伺う。皆、何を始めるつもりなのか疑問に感じているようだ。
「とにかく見ていて。後、テラ……少し協力してほしいんだ」
後退を始めたテラにセシルが訪ねる。
「僕が指定した場所へ魔法をうってくれないか。威力の低いやつで十分だから」
「それならおいらも手伝うぞ」
パロムが会話に割って入ってくる。
「それじゃあ、お願いしようか。念を押すけど詠唱に時間がかかる魔法だと撃つ前に
つぶされる可能性があるから……」
「逃げられると思うなよ」
話し込んでいる間にもスカルミリョーネはこちらに向かいだんだんとその距離を
詰めてきている。

422:299
05/11/06 15:34:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0252 4章 3節 山間(37)

「二人とも頼んだ!」
セシルが指定したのは橋の途中であった。
「いいのか、あんなところに?」
半信半疑ながらもテラは魔法を撃ち込む。勿論、すぐに撃てるくらいの極小威力のものだ。
次いでパロムもその攻勢に加わる。こちらもテラと同じ魔法を放ったのだが、テラとの経験の差か
僅かに遅れての加勢となった。
「よし、後退だ」
「逃がすか!」
執拗に追跡を続けようとしたスカルミリョーネであったが、セシル達に追いつくことは
できなかった。
橋の一部が急に音を立て崩れ始めたからだ。
「何だと?」
落下せぬように残った部分を掴み、這い上がろうとするがそこが大きなスキとなった。
「よし今の内に攻撃を重ねるんだ!」
セシルの指示が響いた後、テラとパロムの魔法―今度は容赦ない程でかい威力のものが
スカルミリョーネに襲いかかる。更に、セシルの暗黒波が追い打ちを駆ける。
「何と! 計られたのか。こんな古い手段にこの私が―」
この波状攻撃にはさすがの四天王の一人としても相当なダメージがあったようだ。
「おのれ……この私が貴様らごときに……! グ……バァァーー!」
限界がきたらしくスカルミリョーネは大きく体勢を崩し、橋から落下した。
その姿はあっという間に小さくなり、眼下へと消えていった。

423:299
05/11/06 15:41:34 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

「何とか……退けられた」
しばらくの間、下を見ていたポロムが息も絶え絶えと言った感じで声を絞り出す。
「ああ……」
同じく息を切らした様子のセシルが同意を返す。
「そういえば体がさっきよりもだいぶ軽くなったきがするぜ」
今更だと言った感じでパロムが体を動かしながら言う。
確かに先程まで体を支配していた不自由さは殆ど消え失せていた。
それでもこの山の空気は厳しいことこの上ないのだが。
「このガスの効果が薄れて来ておるのだろう。しばらくすればもう何とも感じなくなるはずじゃ」
「そうか。なら安心だ」
テラの説明を背に受けつつ、セシルは目前に見える建物に目を向けた。
それは遠くで見たときよりもさらに美しく輝いている。
「これが試練を受ける場所か……」
自分に課せられた試練。その終着点となる場所。
「でもこの入り口開くのか?」
見る限り建物の扉は堅く閉ざされていた。
強硬な鉄の扉はどんなに力を加えても開きそうにはない。
「ここまで来て、扉が開かないのかよ」
項垂れるパロムの傍らセシルが扉に手をかけようとした時―
「息子よ……」

424:299
05/11/06 15:44:45 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

どこか透明感のある、それでいて懐かしい声がセシルに響いてきた。
「誰だ! それに今何て!?」
息子―確かにそう聞き取れた。
セシルは孤児である。本当の両親というものの記憶を持ち合わせてはいなかった。
自分の中にある一番古い記憶を引きずり出してもバロンでの日々である。
「セシル。どうした?」
急に声を上げたのに驚いたのかテラが訪ねる。
「今、誰かの声が聞こえて―」
「そうか? 私には何も聞こえなかったのだが」
そこまで言ってポロムの方に向き直り返答を求める。
「私も聞こえませんでした……」
「おいらもだ」
合わせるかのようにパロムも首を横に振る。
「じゃあ僕だけに聞こえたのか……」
その時、今までびくりとも動かなかった扉が音を立て横に開いた。
「おいっ! 扉が開いたぜ……」
「どうなっとんだ?」
「行こう……」
戸惑う仲間達を尻目のセシルは歩き出した。
扉が開いたのは偶然ではない。試練が自分を呼んでいるだろう。
そのような確信を持った今のセシルには何ら迷いは無かった。
テラ達もいつもと違うセシルの行動に違和感を抱きつつも後を追い、
建物の中に消えていった。

425:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 16:43:22 q0N7rOgn
やっぱり4が好き

426:299
05/11/06 17:25:21 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0254 4章 3節 山間(39)

「お前が来るのを待っていたぞ……」
今度はよりはっきりと聞こえたその声は間違いなく外で聞こえた声だ。
「聞こえるかポロム?」
「いいえ」
そう言ってポロムは首を横に振る。テラも何も聞こえていないような雰囲気だ。
おそらくはこの声は自分にしか聞こえていないのだろう。
「あなたは……あなたは一体誰なんですか? それに僕を知ってるんですか!」
「我が息子よ……聞いてくれ。今、私にとって悲しい事が起きている。そして
その悲しみはこのままさらに加速していくだろう……」
セシルの疑問を余所に声は語り始める。ずっしとのしかかってくるような重みのある声に
セシルは質問を止め、聞きいってしまう。
「悲しみですか……」
「そうだ。そして今お前に新たなる力を授ける事になる。その事により私はさらなる悲しみに包まれることに
なるだろう。しかし、今はこの手段を用いるしかないのだ。否……私にとってこの方法しか思いつかないのだ。
お前にとって辛い試練になるであろう。だがお前ならきっと乗り越えられるはずだ……頼むぞ」
ふっとその声がとぎれるのと急にセシルの目前に剣が表れたのは殆ど同じであった。
「これは……」
古ぼけているがたいそう高名な剣であったのだろう。その格式高さは失われていない。
そして剣は滑り込むかの様にセシルの右手へと向かう。
その剣はまるで長年、苦楽を共にした愛剣かの様に、セシルの手へ馴染んだ。
「これが新しい力なのか……」
光り輝く剣を握りしめそんな事を考えていると―
突然、剣の光が増しセシル達の視界を奪った。
セシルにとってその光は何か暖かいものに包まれるかの感触であった。
光が弱まり、だんだんと視界が開けてくる。そして誰もが先程までと全く変わってしまった事に目を疑った。

427:299
05/11/06 17:31:19 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0255 4章 3節 山間(40)

「あなたは……セシルさんですの……?」
ポロムは目の前に立つセシルをまるで初対面の人にでもあったかのような顔で見やる。
「あんちゃんなのか!?」
二人が驚くのも無理がなかっただろう、今の自分に起こった事に一番驚いたのはセシル自身であったのだから。
「ああ……そうだよ」
水晶状の物質でつくられた床から反射して見える自分自身の姿をじっくり観察しながら、ゆっくりと口を開いた。
鮮やかな銀色の髪に悟りを開いたかの様な瞳。
そして白を基調とした様相は、先程までの暗黒騎士としての面影は翳りも感じられないほどであった。
「これがパラディンというものか……」
「やりましたわね! セシル様」
「これにて一件落着だな」
皆が嬉しそうに感嘆の声を上げる中、セシルは切り出す。
「まだ終わりでないよ。これからが本番だ」
そう言った後、ゆっくりと声がした方向へと振り返る。
「さあ……血塗られた過去と決別するのだ。今までの自分を克服しなければパラディンの
聖なる力は完璧にお前を受け入れないであろう。打ち勝つのだ暗黒騎士の力に……自分の力に!」
力強いその声が終わると前方に影が人影が現れた。ゆっくりと歩を進め此方へと歩いてくるその影は―
「昔のあんちゃん!」
「一体、どうなっとんだ……?」
紛れもなく暗黒騎士セシルであった。
「どっちが本物なんだ?」
パロムはきょろきょろと二人のセシルを見比べている。
「どっちかな……」
それはセシル自身でさえ容易に答えが導き出せる事ではない。ふいに暗黒騎士が剣を抜きはなった。同じくセシルも剣を抜く。
「セシル! 戦うのか?」
「ああ……」
「テラ、手を出さないでくれ……これは僕に与えられた試練。誰にも干渉される事なく片をつけたいんだ。

428:299
05/11/06 17:32:59 GDo6iYTT
それに今までの過ちを償うためにもこいつを! 暗黒騎士を倒す!」
大切な者を殺されたミシディアの人々、自分を導いてくれた長老、憎しみを堪え、自分を試すと言ったジェシー。
ここで誰かの助けを借りる事は彼らに対する完璧な償いにはならないであろう。そして何より自分自身が
納得しない。
「さあ、行くぞ。暗黒騎士よ……血塗られた運命。ここで断ち切る!」

429:299
05/11/06 17:35:53 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0256 4章 3節 山間(41)

地面を蹴り、暗黒騎士へと斬りかかる。
しかし、向こうは軽くセシルの太刀を受け流す。
それもほぼ確実にセシルに剣の切っ先を見切ってるかのようにだ。
「セシルよ……仮初めでなく本当にその力を手にしたければ剣を納めるのだ。
そして自分の罪を受け入れるのだ」
再び、ささやく様な声が頭に流れ込んできたのは、暗黒騎士の反撃を避け、後退した時だ。
セシルにはその意外な言葉を咄嗟には理解できなかった。にわかには信じられない思いで上を見やる。
目前には今まさに暗黒騎士が迫ろうとしているところだ。迎え撃たねば此方がやられるであろう。
「何故だ……」
目前に迫る自分の闇を振り払う事こそが今の自分に課せられた試練ではないのか。
少なくともセシル自身はそう考えていた。
「相手を倒すことだけでは決して暗黒騎士には勝てんぞ。いずれは闇に取り込まれるであろう」
確かに暗黒騎士の攻撃は幾度と続くが、そのどれもがセシルの動きを的確に分析し、全てを見据えた
かのように正確であった。
そして確実に彼の体から体力と気力を奪っていった。
「ここまでなのか……」
声の真意を理解できぬ自分では勝てぬというのか。この試練に散っていった先人達も教えを理解しなかった
為なのか。頭に様々な考えが浮かび、消えていく。
直後、暗黒騎士の剣先から黒い波動が走る。
今の疲弊しきったセシルではその攻撃を避けることはできなかった。いや、もしも充分な体力を
有していても無駄であったろう。幾多の暗黒波がセシルの体中を切り裂いた。
―暗黒騎士にとってセシルという存在は最もよく知る人物であり、身近な存在であり、その逆も然りであった。
体勢を崩し大きく倒れ伏すセシル。後方には仲間達が心配するかの様な声をかけていたが、既にセシルには
聞こえていなかった。
それでは僕はどうしたらいいんだ……。
最後に浮かんだその思考も次第に切れ切れとなりセシルに意識は薄れていった。

430:299
05/11/06 19:11:49 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0257 4章 3節 山間(42)

だが、墜落する意識化の中で自分に話しかける声がまた一つ。
それも先程までの声ではない。何処か曇りのある声だ。
「どうだ。やはりお前にはできなかったんだ……」
「誰だ……?」
しどろもどろな口調でセシルは訪ねる。
「暗黒騎士……つまりはお前自身と言うことさ……」
つまり先程まで自分が相まみえていたものか。でも、何故すぐに止めを刺さない……
自分はこの試練に敗れ去った。つまりはもう用済みなはず。
「お前にはほとほと呆れたからさ。セシル=ハーヴィ」
見透かした様にその暗黒騎士は言う。
「正しき心を得るだの何だのと行っておきながらこの体たらく。所詮はお前もその程度の覚悟しかなかった
のだな。その癖、中途半端に国家などに背いて……こんな事ならカインの様に自分に素直になった方が幾分か
ましだったのかもな」
暗黒騎士の嘲弄に近い言葉に反論する言葉を今のセシルは持ち合わせていなかった。
「もういいよ……さっさと殺せよ。それが君の成すことなんだろ……」
そうさ……もうどうだっていい。暗黒騎士の指摘は全く持って正論だ。
所詮一人ではバロン等の強大な勢力に立ち向かう事などできやしない。
それに幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとってはパラディン等一生届くことのない高みの存在。
このようなザマだ……今更、ミシディアに戻っても皆自分を蔑むだろう。ジェシーも長老にも申し訳が立たない。
そして仲間達にもなんて言えばいいのだ……
もういい……自分の様な中途半端な人間は排除されるべきなのだろう。
だんだんと喋るのも辛くなってきた、いっそ目を閉じて、意識を闇深くに沈めよう。すぐに楽になれるだろう……

431:299
05/11/06 19:20:08 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0258 4章 3節 山間(43)

「セシル!」
遠くで誰かの呼び声が聞こえた。いや、確証はできない。
「セシル……」
またもやだ。そして今度は少し悲しそうな声。
更に自分を呼ぶ声が幾多にも増える。そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだ。
そしてその中でもセシルの心に深く刻まれたものの声が聞こえてきた。
リディア、ギルバート、それにヤンの声だ。
そうか彼かはみな僕と行動を共にした。そして……
最後までは考えたくは無かった。ただ、確実に言える事はその仲間達は誰もが自分よりも
生き長らえるべきはずだった者達だ。
ヤンには信頼される仲間達が沢山いたし奥さんもその帰りを待っているであろう。
その奥さんの耳にもバロン域の船が消息を絶った事は耳に入ってきてるはずだ。その知らせを聞いた時彼女は
どう思っただろうか?
ギルバートも亡き父に代わり国を率いなければならなかった存在。それなのに……
リディアはまだ幼かった。そしてその少女を守ると自分はオアシスの村で誓ったはず。たった一人の人間を
守ると言う約束さ自分は果たせなかったのだ。つくづく情けない。

432:299
05/11/06 19:24:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0259 4章 3節 山間(44)

謝罪に浸る間もなくセシルの耳に入ってくる声色が変わった、そしてその内容もなにやら自分に
怒っているかのようであった。
「貴様よくここに来れるな!」
「あなたたちのせいで私たちがどれだけ苦しんだか……」
「バロンの…暗黒騎士だー!」
憎悪と恐れに満ちたその声は紛れもなくミシディアの人々である。
そしてその声をセシルは黙って聞いていた。
そうだ。自分は国に背けずに彼らを犠牲にした。その行為は我が身の可愛さ
余っての自己保身に過ぎない。こうして自分の過去を振り返っみれば、つくづく
自分はどうしょうもない人間だ。

―あなたはそんな人ではないわ!―

絶望に暮れるセシルを叱咤するかの様な声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だ。そう随分前から聞いていないがその優しい声は何よりもセシルを癒し、勇気づけた。
だがそれが誰の声だったのかさえ今のセシルには曖昧になってきていた。
ごめんね……思い出せなくて……そうセシルが心で謝ろうとしたとき……

バロンのセシルは―そんな弱音……吐かないはずよ!―

―私の……私の好きなセシルは―自分を蔑むような人間ではないわ―

433:299
05/11/06 19:26:16 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0260 4章 3節 山間(45)

その叫びがセシルの意識の完全に現実へと呼び覚ます。
「ほう……まだ起きあがれるだけの力が残っていたのか」
暗黒騎士の声がする。
ありがとうローザ……僕はまだいける!
彼女がいなければ自分はここで倒れていただろう。
「ああ、まだまだだ」
喉に突き付けられた暗黒騎士の剣を払い立ち上がる。
「だが、お前がこの試練の本当の意を知らん限りは何度やっても同じ事だ」
「何となくだけど……分かったようなするよ」
「何!」」
暗黒騎士の声に珍しく動揺の色が混じった。
「そうさ。答えはそんなに遠くにはなかった。むしろ僕にとって限りなく近いところにあったんだ。
それに今まで気づかなかったなんて……」
「成る程。それで……」
「君がさっきから僕を殺さなかったのは躊躇っていたからじゃなくて、できなかったからなんだ
僕が君に決して勝つことができないように」
「ほう……してそれは何故だ?」
「君は僕という存在に於いて切っても切れない関係にあるからさ」
身じろぎし始める暗黒騎士を見て更に続ける。
「パラディンとは聖なる力、暗黒騎士は闇の力。確かに相反し合うもの同士。だが、この教えは決して
ただ、パラディンとしての力を得る訳じゃない。自分という存在の全てを肯定する事にあるんだ!」
「ふふ……上出来ではないか。気絶している間、一体何があったのかな。まあ、そんな事はどうでもいい。
その悟りを開けたならもう私は用済みだな」
「否、あなたはこれからも僕と一緒に常に歩き続ける。唯、今までどちらが表に出ていたかだけの違いだ」
「ハハハーーーッ! そこまでの考えがあったか。では一緒にさせてもらおうか」
そう言ってセシルの手を掴む。そして吸い込まれるかのようにそのまま消えていく。
「いずれお前が自分を見失ったら再び私が現れるかもしれん、それだけは覚えておけ―」
その言葉の最後の方はもう殆ど聞き取れなかった、しかしもうセシルには言わなくても分かるであろう。

434:299
05/11/06 19:28:10 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0261 4章 3節 山間(46)

「セシルよ……ついにやったようだな」
暗黒騎士が消え去った直後、あの懐かしい声が聞こえてきた。
「私も一部終始を見届けさせてもらったが。見事なものだ」
「いえ……僕だけの力では到底無理でした……」
苦楽を共にした仲間達やローザが居てくれてこそだ。
「これから私の最後の力を託そう。今のお前にら使いこなせるはずだ。それにお節介かもしれんが一つ言葉を……正義よりも正しい事よりも大切な事がある。
この試練を乗り越えたお前になら分かるはず」
「分かりました……」
「それでは私はもう消えよう、行けっ! セシルよ。ゴルベーザを止めるのだ……否止めてくれ。
お願いだ……」
「待って下さい!」
この声にはまだ聞きたい事が沢山あった。自分の事を息子と言ったのは何故だ。
それにゴルベーザの事も知っているようであるが…
だが、もう声からは何も返事は帰ってこなかった。がらんどうとした部屋にセシルは立ちつくしていた。
「やったなセシル」
声が聞こえなくなったのか、テラ達も此方に近づき祝福の言葉を投げかけてくる。
「すごいわ! セシルさん」
「あんたやっぱり……」
「シイッ! それはまだ言わない!」
パラディン姿のセシルに魅入るかの様に見つめていたポロムの顔が少し困ったような表情に変わり、
パロムを諭す。
「でもよポロムさ……」
またもや言い合わそう二人の中でもセシルは先程までの出来事―試練の様相を何度も反芻していた。
「あの感覚、不思議と懐かしかった……あの声は一体?」
その疑問に答える者は今は誰もいない。しかし、自分が今からこの先を進んでいく中で再びこの声の主と関わり
を持つだろうとセシルは確信していた。

435:299
05/11/06 19:32:05 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)

「おおっ……ううっ……」
そんな一行の注目を一気に集めたのが、突如呻きを上げたテラだ。
「どうしました? テラ様」
ポロムが心配し、声を掛ける。
「失われた魔法の数々が思い出せそうじゃ……何かが頭に語り掛けてくる様じゃ……」
そう言ってしばらくは天を仰ぎ見ていたテラではあるが、やがてセシル達の方に向き直り……
「思い出したぞ! 忘れた呪文の数々を! うっ……」
そこまで言ってまた頭を抱える。
「メテオ……? あの光が授けてくれたのか。封印されし最強に黒魔法を!」
あの声の主が授けたのだろう。しかしセシルには既にその声は聞こえていなかった。
「そんな魔法まで! さすがテラ様。これで百人力ですわ」
「ちょっと……ポロム……」
「何?」
その控えめな様子のパロムが珍しかったのか、ポロムが耳を傾ける。
「もう……ばら……ちゃってもいいんじゃ……ない……か」
「ああ、その事ね。分かった」
一瞬険しい顔になったが、すぐに元の表情へと戻る。
「えーと。あの~セシルさん……」
「実はおいら達は……」
改まって二人がが何かを口にしようとするが……
「よしっ! 見ておれよっゴルベーザ! この力を持ってお前を倒しにいくぞ」
その言葉は、テラの叫びによって無惨にもかき消された。
「ゆくぞっ! セシル」
そう言って一気に外へと走り去ってしまう。あの歳の老人の何処にあれほどの体力が残ってるのか
疑いたくなる程にだ。
「あっ! 待って下さいテラ様!」
急に走り出したテラを慌てて後を追うポロム。それにつられるかのようにパロムも外へと向かった。
「ごめんなさいセシルさん。詳しい事はミシディアにでも帰ってからで」
その様子を見て、セシルも外へと出ようよ歩き出す。最後にもう一度だけ、後ろを振り返りこう口にした。
「ありがとう……」

436:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 20:03:06 GDo6iYTT
随分な量になりましたが、FF4です。
パラディン試練に関しては前スレの318さんの解釈を活かして
欲しいと言う意見がありましたので、できるだけその意見を
取り入れてみたつもりです。

437:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 20:07:02 as/HbVO9
素晴らしいです。感無量の一言に尽きます。

それにしても、セシルの髪ってやっぱりパラディンの後に銀色になったんですかね。
暗黒騎士のときに兜を脱いでくれないからはっきりしないとこですよね。
別に指摘してるわけじゃなく、前から疑問だったもので。

久しぶりの4の大量更新、お疲れさまでした。

438:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 21:33:28 48JQImNf
4の人非常にうまいね。またもや批評(というか感想か)を述べに参りました

とても引き込まれた。文章の流れがいい。三人称の流儀をよく理解された方だと思う
三人称にありがちな視点のズレもない。キャラの動きと台詞の流れもうまい
感情の部分は感傷的になりすぎず必要最低限表現できてると思う

長いが読ませる文章だった。文章のテンポというかバランス配分が巧み
もう一度言うが、とても引き込まれました


439:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 09:55:57 /Y3ROLny
デスブリンガー…

440:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 13:10:42 tUawCGC3
ff4楽しく読めた。
438氏の言うとおり視点のズレのないのがいい。
7ac作者さんにはよき手本となろう。

441:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 13:18:52 I5nykIIr
>>440
作者の方々にそういう格差をつけるのはどうかと・・
ともあれ299氏グッジョブ!

442:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 14:00:20 lg9x6+1X
格差というか、批評として許される範囲だと思う。
以下酷評かもしれないが、あえて記す。

7acの作者さん、キャラに対する愛情は伝わってくるんだけど、
それが小説としての質を下げている。

キャラの一挙手一投足にいちいち心情表現を付加してるせいで、
視点がブレすぎて、何を伝えたいのかが分からなくなっている。
結果、テンポも悪くなるし、ダラダラ読まされた感じを受ける。
幹となるものを明確に描かず、枝葉を飾ることに腐心しすぎ。

443:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 14:41:45 tUawCGC3
ついでに評

・ff4
テンポよく、無駄のないすっきりした展開でありながら、
キャラを立たせることに成功している。
ストーリー通りにキャラを動かしているといった感じがなく、
キャラが自由に動き回っているような筆致は見事。
欲を言えば、もう少しバトルシーンに緊張感があってもいいかと。
安心して読める半面、どうしても予定調和の感がぬぐえない。

・ff6
バトルシーンは秀逸。
ビジュアルに訴える筆力、緊迫感ある駆け引きの妙、
サイファーの魔法使用に至るまでのスコ-ル左手の布石など、まことに見事。
欲を言えば、一時間にもわたる激闘の割には、両者の疲労や苦痛について
もうすこし描写があってもいいかと。

444:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 15:19:35 I5nykIIr
どうせなら他のも批評してみてくれー

445:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:15:49 IaxfOKel
正直、書かない人の批評なんて聞きたくない・・。
感想なら聞きたいけど。
自分は批評している、なんて大前提の感想、読んでてうれしいんだろうか・・。

7ACの人の文章、そんなにやじゃないなぁ。
描写が丁寧で、それがテンポ悪いという意見もわかるが、ちゃんと書くぜ!みたいな熱意が好きだ。
続きも楽しみにしてます。

善かれと思ってこの文章はいい、この文章はちょっと、と比較や相対的な意見を書くと、誉められたほうもそうでないほうも居心地悪いものだ。

446:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:17:23 IaxfOKel
はたから見てる(ロムってる)人もね。居心地悪い。

447:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 20:42:15 e6Kyl7SH
>>445.446
書いてる側の人ですか?そうならば耳を貸しましょう
そうでないなら的外れかもしれない

448:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 21:45:03 S13uCgN4
作品を知らない人がする、指摘だけのレスはここでは不必要だと思う。

449:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/07 22:33:42 e6Kyl7SH
第三者の意見は書き手に必要
それが次の作品をより楽しく仕上げるし、自身の為にもなる

ただ批評と批判は違う。問題点を指摘するなら打開策を提示すべき
必ず、問題点と打開策をセットにすること!
素人は安易に口を出さんほうがいい

7acの人良いと思うよ。楽しく読めるし意欲に惹かれる
まめさとガッツを兼ね備えた人材。正直頭が下がる
次回作に期待している

450:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 03:40:01 rabNjpOj
>>443
どうでもいいことだけどff6じゃなくてff8だな。

451:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 11:13:21 OUszz8/9
FF6で思い出したけど、433さんはいなくなったなぁ。
あの最後のケフカの話からどこに転んで行くのかが未だに気になる。

452:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/08 19:07:32 6xe/tyoJ
前提としてやっぱり書いてくれてるんだから感謝してなきゃいけないと思う。
それでいて「こうしたらいいんじゃない?」っていうのは全然ありだと思う。
ただ「この書き方だめ、なってないね」とかいうのはいらないけどね。

FF4さんおつかれです!めちゃ感動しました!
やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。
設定についてのことだけど、セシルは幼少期から暗黒騎士の道を歩んでたの?
王が入れ替わったのは本編始まる少し前のはずだから、それまでは兵には
暗黒騎士を使ってなかったんじゃないかな。
ちなみに>>430の「幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとっては」ってやつね。
とにかく面白かったです。次も楽しみにしてます。

453:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/09 23:50:33 kAzBdZqX
いや、熱意とかガッツとかが凄いのは認めるんだけど、それが裏目に出てるって話なんじゃ…>AC

454:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 09:45:55 Q8vVASTh
>やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。

こういうのは言わないほうがいいと思うな。
褒めてるつもりなんだろうけど、
同時に他の作者を貶めていることに気づいてほしい。

455:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 17:36:29 V+HWyvQ+
貶めてない事に気付いてほしい。
もしFF4の小説が不評だったら貶めてる事になるけどそうじゃないし。
他の作品が面白くないなんて一言も言ってない。

456:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:23:48 AkXmxISY
貶しめていることに気付かない無自覚が正直おそろしい。
文章と言うものは、「こういうつもりで自分は書いた」と言う書き手の自覚は意味がなく、むしろ些末で、
「こう受けとめられる」と言う客観こそがネットにおける社会性だ。
書き手と読み手のギャップが少なければいいけれど、
それは互いに別の価値観があるゆえに常に緊迫を孕んでいて、とても難しい問題だから、
大衆掲示板に意見を書くときは細心の注意を払わなくては…。

先日から、感想の書き方に気を付けようと言う流れがあるなか、
あの文章が貶しめていないとするなら、それは若干優しさに欠けます。
相対的な賛辞のことばしかもたない人間の感想など誰が乞うのです?
貶しめたかどうかと言う一個人の思惑よりも、その感想の書き方に疑問を感じる。
仮にも「真面目にノベライズ」された他人の文章を評するならば、
その評する側も真摯な姿勢でことばを選んでいただきたい。
ふじ

457:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 18:30:06 vOlD0bRq
ふじってなんだふじって・・・

まぁ、あの褒め方はないよなあと自分も思った。
他の作者がどう思うんだ?と、ひやっとする。

しかしFF4、いいな・・・

458:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:05:51 fFy5TL+2
なんだこの流れ

459:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:08:53 V+HWyvQ+
まあそう言われればそうなのかなと思うけど、そこまで長々と文章書かれるほどのことなのかこれって。
1,2スレ目はこんなの無かったのになー。匿名掲示板なんだし。
まあアンタも他の書き手みたいだから癪に触ったんかもしれんけどね。

460:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/10 19:46:01 kxCSjsuv
少し前から気になってたんだが、微妙に釣ってる様なレスするやつが紛れてないか?
スルーしてノベライズを楽しめばいいのにと思う

461:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 00:29:40 zSz53lpn
なんつーか、書き手さん皆様GJ。
自分は筆力ないのでマジ羨ましいです。どうしてもバトルが書けない・・・。


462:297
05/11/11 00:46:50 rcz2kYh6
299さん大作乙です。
後ろ向きなセシルの考え方が総仕上げのように積み重なってて、
いよいよという話の運び方は流石です。
これでやっと長い一段落にさしかかりましたね。

>>461
お互い素人なんだから是非書いて。


463:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/11 01:02:58 vNG5QWNd
>>461
読みたい。

464:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 11:46:04 Sv7wXisJ
読みたかない。
これ以上、駄文の羅列は御免蒙る。

465:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 12:58:28 y+q/I3ju
いや~
なんか最近トゲトゲつーか険悪だなあ
全体的に書き手が減ってる感があるんだけど
理由はこの辺り?

466:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 14:42:56 DUu3EPlj
かもな。

467:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 17:47:44 6wU0Q4FD
今まとめのFF4読んでるんだけど、なんか本当に良い。クオリティ高いとかそういうのも勿論なんだけど、
ゲームじゃなくて読み物として集中できるから、セリフや描写の一つ一つに感動できて。
ノベライズしてくれてる人たちにすごい感謝。ありがとう!

468:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/12 22:13:54 oaF62BMD
>>464
露骨過ぎるぞ馬鹿

469:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 10:28:06 YLjl2o1t
不特定多数の耳目が集まる掲示板。
作品を投稿するのは自由だけど、読者が何を言うのも自由だと思う。
その一方、腫れ物に触るように作者の機嫌をとるのもまた自由だが。
たとえそれが批評の名に値しない罵倒の類であったとしても。
それが嫌なら掲示板に投稿などすべきではないよ。
個人のサイトでやればいい。

470:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:08:17 uoXxOl3N
いかにもプギャらしい理論だ

471:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 11:28:20 YLjl2o1t
プギャと決め付けるのも、もちろん自由。
駄作と罵倒するのが自由であるのと同じ。

472:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 12:01:44 XpZlzH5+
>>469
理論についてはおいといて、
淡々としていてなんか笑った。

473:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 13:26:30 uoXxOl3N
自由と横暴を履き違えるのはよくないな

474:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 19:02:22 eeDKxHpE
さて、このような議論はSSを投下しにくい雰囲気にするから
そろそろ終了して作品が出るまで、みんなROMってようぜ

475:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/13 22:56:30 pMSClUVQ
賛成~!

476:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 14:09:34 87WBS+ZN0
まったく、凶暴な名無しどもだ
わけがわからんよ

477:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 19:24:53 IZ4AfpAV0
管理人さんはご健勝じゃろか・・
あと5の人とか。

478:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/14 23:59:08 RphqfPvm0
勝手に感想。

>>FF7AC
実際に見た後で読み返すとその細かさには頭が下がります。
ただ他のレスにもありましたが、もう少し削っても良さそうですね。
そのかわり、FF9みたくATEがあっても面白いかも知れないかなと思ったり。

>>FF8
一人称で語られる戦闘の様子は、緊張感がありながら安定感のある
文章運びで読みやすかったですし、巧いなと思いました。
ラグナの伏線の事はここを読んで気づきました。そんなきめの細かさもGJ!!

>>FF4
未プレイながらも毎度楽しく拝読させて頂いてます。前知識がなくても
すんなり入り込めるあたり、ちゃんとキャラクターの背景も描かれていて
読み物としてFF4に初めて触れる自分のような立場にとっても優しく
丁寧に作り込まれていると言う印象です。

書き手さんGJ!

479:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/15 00:26:41 hs43zf740
318です。
誤解や混乱を招くような文章投下してすみません。気づかない点をご指摘下さった
>>386には感謝です。
個人的な感想になりますが、身になるレスが多く頂けて嬉しく思います。ありがとうございます。

480:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:31:12 hs43zf740



 他の土地に暮らす者に比べれば慣れているとは言っても、雪道を走るのは楽なこと
ではない。凍結した地面の上に積もった新雪を踏みしめながら、彼は背後に迫る
帝国軍よりも先に炭坑の奥へ辿り着かなければならなかった。
 炭坑を守る最後の切り札、それを解放するのが彼に課せられた任務である。
 走り続ける男の脳裏によみがえるのは、今見たばかりの悪夢の光景。魔導アーマーに
搭乗していたあの無表情の少女は、雪の上に僅かに残った仲間の骨を踏み越えた。
新雪を踏みしめるのとは明らかに違う、骨が砕かれる小さな音が耳から離れない。
 数時間前まで、それは確かに会話を交わしていた仲間だったのに。
(くそっ、化け物め……!)
 思わず足がもつれた。辛うじて転倒は免れたものの、派手に雪を蹴散らしながら大きく
体勢を崩した。それでも炭坑へ向かう足は止めなかった。
 仲間達の命を次々と飲み込んでいった魔導アーマー。あんな化け物に対抗できる力は、
もう1つしか残されていなかった。
 それはこれまで、忌むべき存在として炭坑の奥で眠っていたもの。呼び覚ますためには
自らの命を差し出す覚悟さえも必要とする程の存在。しかし、今となっては頼れるのは
それだけだった。
 帝国に踏みにじられた仲間達の命を、無駄にするわけにはいかない。

 彼は意を決し、檻の向こうの闇を見つめた。

481:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:34:50 hs43zf740

                    ***

 てっきり炭坑の内部はバリケードやトラップなどが仕掛けられ、ナルシェ側は
全力で侵入を阻んでくるだろうと予測していた彼らにとって、炭鉱内はあまりにも
退屈な場所だった。おそらく洞窟に自生しているであろうモンスターに何度か
遭遇しただけで、苦もなくここまで到達することができた。
 炭鉱内ではじめて彼らの行く手に立ちふさがったのは、木で組み上げられただけの、
申し訳程度の防壁だった。
 しかしこんな物では時間稼ぎにもならないだろう。
「俺がやる、下がってろ!」
 男の一人が前へ出て言い放つと、魔導アーマーごと体当たりして木製の防壁を
破壊した。地面に散らばった廃材を踏みつけて、男は前方へ顎をしゃくった。
 そんな相棒の姿を見て、奴らしい力業だな、と、後ろに立っていた男は小さく笑った。
 その直後だった。
 たった今壊したばかりの防壁の先に広がる闇の中から、逃げるように走り出てきた男
―ナルシェのガードと対峙する。

「幻獣はわたさない! ……ユミール、行け!!」

 狂気にも思える叫び声と共にガードが脇へ飛び退くと、背後から突進してきた得体の
知れない―巨大なカタツムリのようにも見える―怪物が魔導アーマー三体の前に
現れた。彼らは反射的にレバーを握り身構える。

482:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:36:33 hs43zf740
「待てよ! コイツは……」
 これまでに見たことのない異様な姿の怪物を目の前に、ビックスが声をあげた。
戦場における彼の知識には全幅の信頼を置いているウェッジは、相棒から
もたらされる情報を黙って待つことにした。
「思い出したぜ!」
「知ってるのか?」
 その問いに頷いたビックスは、左右のレバーを握りしめると視線を前方へ向けた
ままで言葉を発した。今し方見せた豪快さとは打って変わり、慎重な物言いだった。
「以前、雷を食う化け物の話を聞いたことがある……」
 相棒の言葉に、以前どこだかの任務で見た資料の記述を思い出したウェッジが、
記憶の中の記録を辿った。
「殻に強力な電流を蓄えるという……」
「そうだ。殻には手を出すなよ、ウェッジ!」
「わかったぜ!」
 そう言って再び戦闘態勢に入った二人の横で、“少女”は何も語らずにユミールを
見つめていた。
 最初に攻撃を仕掛けたのはビックスだった。こんな局面でもファイアビームを使用する
辺り、筋金入りの横着者なのだろうかと疑いながら相棒を横目で見やったが、パネルを
操作する手を止めることはなかった。
 相棒から遅れること数分、青白い光を纏った冷気の固まりがユミールめがけて一直線に
伸びる。ブリザービームだった。搭載された兵器の性能と、目標物自体が巨大だった事も
手伝って、それは見事に命中し相手にダメージを与えた。
 これで目の前の怪物は魔導アーマーからの攻撃を二度もまともに食らったことになる。
舞い上がった土埃の中に目を凝らし、与えたダメージの大きさを測ろうと試みる。
 しかし、ユミールは倒れていなかった。
 薄々分かっていた事だが、現実を目の当たりにしたビックスのレバーを握る手にうっすらと
汗が滲んだ。こんな風に恐怖と高揚が入り混じった心地を、戦場で味わうのはずいぶん
久しぶりのように思えた。

483:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:39:38 hs43zf740
(……思ってたより歯ごたえがあるな)
 数分、数秒でも早く敵にダメージを与えるためにと選んだファイアビーム。
後に続いたウェッジはねらい通り敵の弱点をつくであろうブリザービームを
選択してくれた。だが、期待していたほどのダメージは与えていないらしい。
ビックスは次の手を決めあぐねていた。
 隣に並んだ“少女”にちらりと視線を送った。無表情のまま、彼女は手元の
パネルを操作している。魔導アーマーの先端にエネルギーが集まり始めた時、
地が唸るような音が耳に届いた。
 音と共に搭乗していた魔導アーマーごと大地が揺れ始めた。ユミールが殻に
身を隠そうとしている、その前兆だと気づいたビックスは声をあげた。
「……待て! 撃つな!!」
 その叫びが無駄になることは分かっている、けれども叫ばずにはいられなかった。
このまま撃てばヤツの殻に直撃してしまう。だが、ひとたび実行した操作の取り消し
機能は搭載されていない。いったん選んだ攻撃を、止めることはできなかった。
 魔導アーマーの強大な力は恐らく設計者自身の予測した以上のものだったはずで、
攻撃を止める場面を想定する必要などなかった。そう言うことだろう。
「……くそっ!」
 俺が設計する時は、コマンドの取り消し機能を搭載してやるのに。と、今さらになって
無駄な反論を呟いてはみたが、事態を変えることはできなかった。
 地鳴りがやんだ直後、“少女”の放った攻撃は見事にユミールの殻に命中する。
程なくして、殻から大量の放電が始まった。
 魔導アーマーに搭乗しているとはいえ、実体は生身の人間である。ユミールの殻から
放たれた電流が、文字通り彼らの身体に落とされる。言葉にならない喘ぎを漏らしながら、
彼らは必死でユミールの反撃に耐え続けた。
 幸か不幸か、体力の半分ほどを削られても彼らはまだ生きている。攻撃がやむと
すぐさま顔を上げた二人は、この魔導アーマーに搭乗して以来、恐らく初めて使うで
あろう機能を実行するべくほぼ同時にパネルを操作し始めた。

484:FF6オープニング:ナルシェ懸軍
05/11/15 00:44:51 hs43zf740
 ヒールフォース。搭載された中で唯一の回復機能である。
 しかもこの優れた回復機能のお陰で、搭乗者が一撃必殺の技を食らわない限りほぼ
全快にまで体力を回復することができた。つまり魔導アーマーに乗っていれば無敵を誇る、
まさに最強の戦闘マシーンだと実感する瞬間であった。
「畜生、手がまだ痺れてやがる。もうこんなのはゴメンだぜ」
「……ああ」
 そんな言葉を交わしていると再び大地がうなり声をあげた。今度は殻に隠れていた
ユミール本体が姿を現す前触れだった。
 ビックスは“少女”に向けて命令を下した。それは回復よりも攻撃を優先させるものである。
その声に驚いた表情を向けるウェッジに。
「情でも沸いたのか?」
 と、揶揄するように尋ねた。ウェッジは短い否定の句と共に首を振った。彼曰く、今は
攻撃よりも回復を優先させるべきなのでは? という主張に。
「……とりあえず回復なら俺らでもできる。だが、ヤツには独自の機能が搭載されて
いるだろう?」
 そう言って“少女”を乗せた魔導アーマーを指さした。
「なるほどな」
 やはり戦場での判断能力は相棒の方が優れていると認めざるを得ない。頷いたウェッジが
パネル上の操作をはじめると同時に、横の方から耳障りな機械音が聞こえた。
 ―魔導ミサイルか。
 彼の予想は的中し、少女の搭乗した魔導アーマーからそれが放たれる。少しだけ肩を落とした
“少女”に、疲労を見て取ったウェッジは素直な感想を呟きながらパネル操作を続ける。
「……不死身じゃないのか」
 苦笑しながらレバーを引くと、今度は“少女”に向けてヒールフォースを放った。
 直後に轟音がしたかと思ったら、続くように相棒の声が鼓膜を揺らす。
「おい、見たかウェッジ!!」
 魔導ミサイルの与えたダメージは、これまでのビーム系とは比べ物にならなかった。ビックスの
もくろみが見事に功を奏したのだ。
「殻に閉じこもっちまう前に、一気にケリをつけるぞ!」
 一時はどうなることかと思ったが、やはり魔導アーマーと互角に戦える敵などこの世には
存在しないのだ。


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