かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3at FF
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3 - 暇つぶし2ch300:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 01:25:42 b47JAJXc
>>299氏GJ!
スカルミリョーネ復活クルー((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
どんな描写になるのか楽しみ。

301:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 01:35:28 NJrkhVRV
acの人も299も乙


302:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 01:48:10 vMEoVWVD

ティファとマリンはミッドガル5番街スラム跡地にある、もとは教会だった廃墟を訪れていた。
星痕に苦しむデンゼルを置いてくるのは気が引けたが、ティファにはどうしてもここで確かめたい事があった。
マリンはというと、教会の奥のほうにある花畑に嬉しそうに走りよっていった。
スラム街の跡地にある花畑。それがこの教会を、特別な場所にしている由縁だった。
ミッドガルのやせ細った大地に、10年以上も前から花が咲いていると言う事自体がすでにこの上なく珍しいことだ。
それに、2年前のあの日、メテオの直撃でミッドガルが崩壊した時も、この花畑は生き延びていた。
しかし、復興に奔る人々の目には、この小さな奇跡は映っていない。
ティファ自身、この教会に来たのはほぼ2年ぶりだった。

ティファはざっと教会の中を見渡し、探していたものをすぐに見つけた。
それは、花畑の傍らに散らばっている、人がそこで寝起きしたという痕跡。
それは、自分達の許を去ったクラウドがここを寝床にしていたという痕跡。
クラウドがここに来ていると、ティファは以前から人づてに聞いていた。
でも、こんなに近くにいただなんて、思いもしなかった。
ティファがそれに歩み寄ると、マリンもついてきた。
「クラウドはここに住んでるの?」
彼女もティファと同じ事を考えたらしい。
「そう…みたい、だね」
しかしティファは、これがとても「住んでいる」とは言えなかった。
荒れた床に、申し訳程度に敷かれた寝藁。小奇麗に巻かれた寝袋。
その傍らには金属製の箱―中身は恐らく、彼がユフィから預かったマテリアだろう。
マリンが箱を指差して「何?」と訊いたが、ティファは曖昧に微笑んで開けさせなかった―と、
これまた申し訳程度に置かれた木箱。その上には欠けた食器が数個置かれていた。
ここに垣間見られる、クラウドの素朴で孤独な暮らしを思うと、ティファは胸が痛くなった。

しかも、それだけではなかった。
マリンが、木箱の近くに落ちていた、使い古された包帯を見つけたからだ。
「デンゼルと同じ!クラウドも病気なの?」
黒い膿の跡が残された包帯を見て、マリンが叫ぶ。
それは、紛れもなく、クラウドが星痕症候群に冒されている証拠だった。

303:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 01:49:45 vMEoVWVD

「言ってくれればいいのに…」
不安げなマリンの視線を受け止めながら、ティファは切なげにそれだけ言う。
これについても、なんとなく察しはついていた。
言ってさえくれれば、私やマリンが支えられたのに。
なのに、クラウドは独りで重病を患った体を引きずって出ていってしまった…
「病気だから、出ていったの?」
そう訊いてくるマリンの声は、どうしようもなく悲しそうだった。
「ひとりで、戦う気なんだよ…」
「戦う?」「違う」
ティファは曖昧な答えをマリンに返したが、すぐに訂正する。
あることに思い至ったからだ。
「戦う気なんか無いんだ…」
彼は戦っているのではない。逃げているのだ。

「…ティファ?」
ふとティファが我に返ると、マリンが心配そうに見ていた。
そんな彼女に、ティファは無理に明るい笑顔を作り、言った。
「マリン、帰ろう?」
「やだ!クラウドに会いたい!」
しかし、少女は拗ねるように言った。
そう、マリンもまた、ティファやデンゼルと同じように、押しつぶされそうな毎日に耐えているのだ。
ティファはそれをまた切なく思って、「そうだよね…」と頭を垂れた。
「…会いたいよね?」「うん」
帰ってきたのは、どこまでも素直な声。
「ね、会ったらどうしようか?」
私が弱気じゃいけない。そう思ったティファは、また笑顔を作って、明るい話題を振った。
「一緒に帰る!」「その前に」
ティファはいたずらっぽく微笑んだ。
「お説教だね」
「賛成!」
マリンの朗らかな声が、辺りに響いた。

304:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 01:51:21 vMEoVWVD

カダージュはドアを荒々しく開けると、正面に待ち構えていたレノを蹴り飛ばした。
レノはそのままもんどりって反対側の壁に激突し、苦しげに呻いた。
部屋に入る。瞬間、真横から大男が肉薄してくる。ルード。
しかしカダージュは彼のほうを見ようともせず、こともなげに右腕を伸ばし、彼の頭を鷲掴みにした。
ルードはその腕を払いのけようとしたが、出来なかった。
彼の頭を掴んだ右手に、とんでもない握力が加わったからだ。
頭蓋骨が砕けるのではないかと思われるほどの圧力。ちなみに、カダージュは左利きだ。
苦痛を訴えるルードの声が次第に甲高くなり、サングラスにヒビが入った頃、レノの真上へその巨体を投げ捨てる。
そして、部屋の中央で、微動だにせず鎮座していたルーファウスに向き直った。

「ウソは嫌いだな」
甘く、シニカルな声。しかしどこまでも危険な声。
「悪かった。今度こそ正直に話そう」
赤子の手を捻るかのごとく倒されたタークスの二人のほうをみながら、ルーファウス。
「あれはお前達から逃げる途中、ヘリから落としたらしい。…全く…間の抜けた話だ。」
「 本 当 に ? 」
声色に脅しをきかせるカダージュ。
「…誓って」
即座に、ルーファウスが答える。
「じゃあ、これに誓ってよ」
言うとカダージュは、ルーファウスに背を向け、ある物を彼に投げ渡した。
足下に落ちたものを見た瞬間、布の下で無表情を決めこんでいたルーファウスの顔が、怒りで僅かにひきつる。
それは、レノとルード以外の、あと2人のタークスの、血に染まったIDカードだった。
「…目的はなんだ?」声を少し太くして、ルーファウス。
「母さんの力が必要なんだ…」彼に背を向けたまま、カダージュ。
「リユニオンには、どーしても」
「リユニオン…」
ルーファウスが復唱する。
リユニオン(再結合)。それは人間に、いやこの星にとって最も忌むべき言葉の一つ。
遥か昔に空からきた厄災、その最も象徴的な言葉だ。

305:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 01:58:16 vMEoVWVD

「母さんの細胞を貰った仲間が一箇所に集まるんだ。そして星に復讐するんだよ」
うろうろとルーファウスの前を右往左往しながら、カダージュは週末の楽しい計画でも話すようだった。
「準備は着々と進んでるけど…ほら、誰かさんが母さんを隠しちゃったからさぁ」
一旦言葉を切り、まだ動けないでいるレノとルードに目をやる。
「準備だと?」
ルーファウスはカダージュの言葉の端を鋭く取り上げる。彼らの目的をさらに深く知るためだ。
「星痕…社長もよく知ってるよね?」
カダージュは短く答えて、ルーファウスの右腕に軽く手を添える。それだけで彼は腕に激痛を感じた。
クラウドが火傷だと思った右腕の痣は、実は火傷ではない。
ルーファウスもまた、星痕を抱えていたのだった。
「ライフストリームの中で、母さんの遺伝子念が頑張ってるおかげなんだ」
誇らしげに語るカダージュ。しかし、ここから先はその声が少し震えた。
「それなのに…それなのに僕達は母さんの居場所すら知らない」
嘆くカダージュを見据え、ルーファウスはまだ痛みの残る右手の指がピクリと動くのを押さえられなかった。
―おまえの目は節穴か。馬鹿め―
カダージュのこの一言の面白さときたら、無表情を保ちつづけるのが大変だったほどだ。
だが、幸いにもそのどれにも彼は気がつかなかったようだ。
「情けないけど、仕方がないんだよ。僕達は思念体だからさぁ。
 母さんを見つけて細胞をわけてもらわない限り、元通りにはなれない」
ルーファウスの眼前に詰め寄り、続ける。
「思念と星痕だけじゃたりないんだ。本当の、リユニオンにはね」
話がすこしばかり飛躍し過ぎて、、ルーファウスは混乱した。
思念体とは?本当のリユニオンとはなんだ?お前達は何を企んでいる?
「…なんの話だ」
もっと深い所へ話を持って行こうと、ルーファウスが訊いた。

306:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 01:59:16 vMEoVWVD

すると、一瞬だけ、本当に一瞬だけ、それまでカダージュの顔に張りついていた甘い笑顔の仮面が剥がれた。
そこにあったのは凶暴性を向き出しにした顔。世界の全てを憎んでいるような、邪悪な顔。
「社長…気づいてるんだろ?」
言うと、彼は突然ルーファウスの目の前に跪いた。まるで忠誠を誓う騎士の様に。
そして、視線を上目使いでルーファウスと目を合わす。その時、ルーファウスは彼の目が、なぜか蒼色に見えた。
瞬間、ルーファウスは右腕に、先ほどとは比較にならない痛みを感じた。
同時に、こちらを見るカダージュの顔が、彼以外の誰かの顔の面影と重なる。
長い銀髪、冷たく蒼い、刺すような眼。それは紛れもなく――

ドスッ。
クラウドは、倒されていたザックスの墓標を地面に刺しなおした。
「お前の分まで生きよう。そう決めたんだけどな」
そして、彼の形見のバスターソードに、誰にも聞かれない呟きを漏らした。いつものことだった。
もう、俺は長くないかもしれない。
そんなことをぼんやりと考え始めたのは、どのくらい前からだったか。
左腕を蝕む星痕は日に日に大きくなっていくし、それに伴って心はだんだん空虚になっていく。
もう1年と半年以上もみんなには会ってない。このまま死んで霧のように消えてしまうのも、それはそれでいいかもな。
最近では、そんな自虐的な考えも芽生え始めた。
自分勝手なのはわかっていた。だが、彼は今更どうすればいいのかわからなかった。
着実に体を蝕む不治の病、2年近くも絶縁状態になっている仲間、かつての罪。
彼もまた、苦しんでいた。

307:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 02:00:31 vMEoVWVD

ふと、目を閉じ、旧友との思い出に思考を巡らせる。
ザックス。クラウドが神羅カンパニーの兵士だった頃に、唯一人、親友と呼べた人物。
(ソルジャーになりたい?がんばれよ!)
力強く励ましてくれた、彼の横顔が目に浮かぶ。
(おい、気分はどうだ?)
…これは輸送トラックの中で乗り物酔いした時だったか。
(なあ、ミッドガルについたら…)
この時、奇妙な事が起こった。
思い出に浸っているクラウドの脳裏に、なにか、全く知らない映像が割り込んできたのだ。
誰かが眼前に跪き、上目使いでこちらを見ている。淡いグリーンのその人物の瞳が、次の瞬間、深い蒼色に変わった。
(トモダチ、だろ?)
ザックスの思い出と謎のヴィジョンがごちゃ混ぜになる。
左腕が灼けるように痛む。足がふらつく。なんとか立っていようとする。無駄な努力に終わった。
見知らぬ誰かの顔が他の誰かの顔と重なる。それは忘れもしない、あいつの顔。
―セフィ(クラウド、逃げろ!)
ザックスの叫び声が脳内に響く。クラウドは目を開けた。天地が逆転していた。
その風景を見たのを最後に、頭の中が真っ白になった。

同じ頃。
マリンは上機嫌で、鼻歌を歌いながら花をいじっていた。
ティファの方は少し不機嫌で、壁に寄りかかって腕を組んでいた。
教会を訪れてから早一時間。クラウドが現れる気配はない。バーにほったらかしにしたデンゼルの事も心配になってきた。
もう今日は諦めよう。そう思ったティファがマリンにそろそろ帰ろうと声をかけようとした、その時。
教会の扉が、バタンと荒々しい音を立てて、乱暴に開かれた。
「あっ!」と声を上げ、開け放たれた扉に駆け寄る。が、ティファが途中で制した。
現れた人物は、クラウドではなかったからだ。

308:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/18 02:03:06 vMEoVWVD

入ってきたのは大柄な男だった。
銀の髪を角刈りにし、左腕になにやら危険そうな武器を装備している。
ドスン、ドスンと大袈裟な足音を響かせながらやってくる男に対し、
ティファとマリンは、寄り添うようにして後退した。
しばらくして、男は膝を折り、視線の高さをマリンと同じにしてから、言った。

「遊ぼうか」
マリンは怖がるような目つきを男に投げつけた。
「…そうか、嫌か」
残念そうに呟くと、今度は「母さんは?」と訊いてきた。
ティファには男が何を言っているのか全くわからない。当然といえば当然だ。
一方で男の方は、足下に広がる花畑をなにやら厭そうな目つきで見ていた。
何だろうかと訝っていると、やがて「くせぇ!」と吐き捨てるように言い放った。
それからティファ達に向き直り、もう一度訊いた。
「なあ、母さんは?」
「誰もいないわよ!」
今度はティファが即座に言い返す。
すると男はなぜか泣きそうな顔をした後で、「じゃあ、遊ぼう」と、今度はティファに向かって言ってきた。
…どうも話が通じる相手ではないらしい。それに、何やら危険だ。
そう感じたティファは、マリンに何処かへ隠れているよう耳打ちし。
ハーフパンツのポケットから、黒いレザーグローブを取り出して填めると、ファイティングポーズを取った。
バーに強盗や盗人が現れた時は、ティファはいつもこうする。
「こりゃあ楽しみだ」
それを見た銀髪の男、ロッズも、格闘の構えに入る。

ティファは深く息を吸った。
一瞬の沈黙。静寂。そして、戦いの火蓋は唐突に切って落とされた。

309:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 10:01:55 1fGHm0a9
なんか冗長になってきてるな。
量より質を求めたい。

310:久々にFF5
05/10/18 17:04:41 8iqkv18T
FF5 58  北の山1

カーウェンから北へ向かい、鬱葱とした森を抜けた先にその山はあった。
「ここが北の山か・・・」
バッツは入り口からだんだん視線を上にやった。
頂上に行けば行くほど濃い霧が立ち込めている。
一見して入り口は静かで物音もしない。
しかし4人にとってそれが逆に得体の知れない不気味さとなっている。

「よし、さっさと行こうぜ」
ファリスが仲間、そして自分に気合を入れるかのように大きく声を出す。

北の山――
なんとも単純で無機質な名前をつけられた山は怪物の巣窟と化し、
今や人が登山を出来る環境ではない事は4人の目に明らかだった。

「一応、道は整備されてるようじゃのう」
ガラフが恐る恐る辺りを探っている。薄暗く、土や草の独特な匂いが立ち込めている。
「とにかく急ぎましょう!」
レナは飛竜の事を思うと一刻も早く頂上に辿り着きたかった。

311:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 17:07:34 8iqkv18T
FF5 59 北の山2

山の探索を開始したさっきより緊張感から開放されていた。
襲ってくるモンスターを順調に退けていったからである。
ここに辿り着くまで様々な場所を探検し、戦闘のスキルも自然と上がっている。
「俺たちって結構やるじゃん!」
バッツは浮かれ気分だ。
「おい、気は抜くんじゃないぞ」
「わかってるって」
ファリスがお調子者に釘を刺す。海賊としての経験はこの冒険にしっかりと活きている。

そして山の中腹に差し掛かった時だった。
「・・・!あれは?」
ガラフの視界になにやら花らしきものが見える。
「もしかして飛竜草か!」
そう言いながらバッツは花の方へ向かって走り出した。
「あっ!バッツ!それは・・・」
レナが慌てて止めようとしても遅かった。その花はすでにバッツの手の中に収まっていた。
「ん~、なんか傷を治す草にしては色が変だし・・・それになんか・・・あ、れ・・・?」
だんだんバッツの様子がおかしくなる。呂律が回っていない。指先が麻痺しだした。
「おいバッツ!」
3人が慌てて駆け寄る。バッツの顔が花の色と同じように変色していき、倒れた。

312:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 17:08:30 8iqkv18T
「バッツ、これは毒草よ!」
レナがやっとバッツにこの草の正体を伝える。毒々しい紫色をしている。
「第一、まだ頂上じゃないし、どう見ても色がおかしいだろう?」
ファリスがお調子者に釘を刺す。しかし、『ぬかに釘』である事を感じてる。
「ほれ、毒消しじゃ」
ガラフが半分呆れたようにバッツを治癒する。

「・・・よし、ぐずぐずしてらんないな!さっさと行こう!」
バッツは回復してすぐ何事も無かったかのように先へ進もうとする。
しかしその顔は少し赤く、バツが悪そうだ。
「ふぅ、調子の良いやつじゃ・・・」
ガラフが苦笑しながら呟く。しかし不思議とこの無鉄砲さに心が和んでいた。

313:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 17:09:34 8iqkv18T
FF5  60  北の山3

「だいぶ上の方まで来たな」
ファリスが辺りの景色を見回している。
もう地上は遥か下。ここへ来る為に抜けてきた森も雲に覆われて見えない。
山の上のせいか、風は地上よりかは吹いていた。

「ん?あれ、なんだ?なんか落ちてる」
バッツが目ざとく前方に落ちてる物を確認した。
「どうやら兜のようじゃが・・・」
「!」
「あっ!レナ!」
レナがとっさに兜に駆け寄る。
「これは・・・お父様の兜?何でこんな所に・・・」
レナが手にした兜には確かに見慣れたタイクーンの紋章がはっきりと刻まれていた。
間違いなく父の物と分かる。
父の兜がここにあると言う事は、父が最近までここに居たという事。
レナはそう信じたかった。

「きゃっ!!」
「「「レナッ!」」」
兜を抱え感傷に浸っていたレナに非常の毒矢が襲い掛かった。
3人は慌てて駆け寄る。
「ほら、毒消しじゃ!」
ガラフは急いでレナに毒消しを含ませる。
「罠だったのか?」
バッツは急いで剣を手に持ち戦闘体制に入る。
「ああ、しかもタチが悪そうだな・・・」
ファリスはこちらにゆっくり向かってくる人影を確認していた。

314:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 17:12:10 8iqkv18T
あっさりしすぎたかな。書き方は相変わらず下手です。

315:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 19:21:01 vMEoVWVD
>>309
どうもです。
冗長…ですか。やっぱりあれやこれや詰め込もうとしすぎたかな…?
今後は気をつけます。

316:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 20:27:26 ySF2g1d6
盛り上がって参った!
みんないいですよー、フオー。

317:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/18 23:39:39 JgqN5fwf
良スレ(・∀・)ハケーン
職人さんたちに期待sage

318:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/19 00:17:50 Fh8peCqV
>>299
プチメテオキターーーーーー!!
奮い立ちました!GJ!
パラディンの儀式イベント、めっさ楽しみにしています!

ちなみに自分はスカルミリョーネ(第1、第2形態)は無意味に強がりまくって最大化力のファイラで
焼き付くしますた。

319:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 00:26:34 Co/87GAs
昨日このスレを久々に覗いたらいつの間にかノベライズ作品が増えてて(・∀・)イイ!


ところでFF6のノベライズで、オープニング部分(ビックスとウェッジと??????の場面)が
抜けているようなので、僭越ながらそこを補うような文章を投下させて頂こうと思います。
スレとして「リレーになってないよ」等、問題があればご指摘いただければ幸いです。

320:FF6オープニング:ナルシェ行軍
05/10/21 00:28:47 Co/87GAs



 Command to the Empire Force in particular.
 Commence to launch the attack on Narche,
 the coal mines city.

 帝国軍特別指令
 炭鉱都市「ナルシェ」への侵攻作戦開始

                    ***

 魔大戦の記憶など、とうに失くしてしまった人間達が犯す過ちの始まりにして、
終焉へ向けた死の行進。あるいは、神々の呪縛からこの世界が解放されるための
戦の始まりか。
 どちらにしても、その記念すべき第一歩を踏み出そうとする三人の者達が、雪原に
立つ。魔導アーマーに搭乗した彼らの前には、延々と広がる白い大地の先に小さく
揺れる灯火が見えた―炭鉱都市・ナルシェの灯りだ。

 大地を埋め尽くす屍。どす黒く濁ったその色は、生命の持つ本来の輝きを覆い
隠し人々に恐怖と絶望をもたらす色。
 空から降り注ぐ粉雪が、大地を真っ白に染め上げる。長い時間をかけてゆっくりと、
その陰惨な光景を白一色に変えていく。目映いほどの白に埋め尽くされてしまえば、
その後にはまるで何事もなかったかの様に静寂が訪れる。その色は人々に忘却と
かりそめの平穏をもたらす色。
 空を見上げれば、どんよりと灰色の雲が広がっている。地上に差し込もうとする光を
遮り、空を支配する色。それは見えない未来への不安を煽り人々を混乱へ導く色。
 灰色の雲の隙間から、遠くに雷光が見えた。降りしきる雪に飲み込まれ、音は
届かない。

 炭鉱都市・ナルシェ。
 そこは忘却と繁栄に彩られた都市。

321:FF6オープニング:ナルシェ行軍
05/10/21 00:31:00 Co/87GAs

    魔大戦
    すべてを焼きつくした、その戦いが
    終わった時、世界から
    「魔法」という力が消え去った

    そして1000年…
    鉄、火薬、蒸気機関
    人々は機械の力を使い、世界を
    よみがえらせた

 ナルシェの大地に積もった雪がごとく、1000年という時間は人々の記憶の上に
降り積もり、あの大きな惨劇を覆い隠してしまったのだ。
 人々が忘却と引き替えに得たのは、繁栄。
 裏返せば、忘却の上に成り立つのが繁栄。
 だから忘れることが罪なのではない。

    今またここに、伝説となった
    「魔法」の力を復活させ
    その強大な武力によって
    世界を支配しようとする者がいる…

    人はまた
    そのあやまちを
    くり返そうとしているのか…

                    ***


322:FF6オープニング:ナルシェ行軍
05/10/21 00:35:24 Co/87GAs
「あの都市か?」
 装備したゴーグルとマスクをはずして、魔導アーマーに搭乗している男の一人が
問う。足元は覆われているものの、上半身は直接外気に晒されているため、吐き
出した言葉が一瞬にして白く凍り付く。
「魔大戦で氷づけになった1000年前の幻獣か……」
 問われた方の男が答える。あくまでも任務遂行上、必要な知識としてしか知らされ
ていない言葉を口にしながら。今、自分たちが触れようとしているものの正体を、
このときの彼らが知る由もない。
 そして自分たちがやろうとしている事の意味もまた、彼らが知ることはなかったの
だった。
「またガセじゃねえのか?」
 そう言って男は鼻で笑うと、瞬く間に白い息が広がる。「こんなの別になんでもな
い、いつもの任務だ。そんなに力むなよ」と、長年チームを組んできた相棒に向けて
助言してやった。
 その言葉に男は素直に頷いた。
「……だが、あれの使用許可が出るくらいだ。かなり、たしかな情報だろう」
 言いながら足元のペダルを踏み込み、アーマーごと方向転換して後ろにいた
“少女”と正面から向き合った。
「生まれながらに魔導の力を持つ娘か……。魔導アーマーに乗った兵士50人を、
たった3分で倒したとか。……恐ろしい」
 しかし男が“少女”に向ける視線は人間に向けられるそれとは明らかに違う色を
帯びていた。巨大な力への恐れ、殺戮を繰り返すだけの存在に対する侮蔑―
戦地に立てば、一瞬でかき消えてしまうほどの小さな感情だったが、自分たちが
搭乗する魔導アーマーに向けるそれと似ている。
 隠せないほどの不安が男の表情を曇らせた。顔面を覆う装備を外してはいな
かったが、そこは長年チームを組んで来た経験で表情など見なくても分かるのだ。
 不安がる相棒に、男は豪快に一笑したあとで言い放った。

323:FF6オープニング:ナルシェ行軍
05/10/21 00:41:42 Co/87GAs
「大丈夫。頭のかざりの力で思考は止まっているはずだ。俺達の命令で思い通り
に動く」
 自分たちにとって目の前に存在する“少女”は、ヒトの形をした兵器に過ぎない。
男はそんな風に言い切って、不安の色を浮かべる相棒に笑いかけたのだった。
 そうして、彼は外していた装備を装着し直すと、腕を振り上げた。
「東からまわりこむ。行くぞ!」

 静寂に沈む雪原に、魔導アーマーの稼働音が響き渡った。
 三体の魔導アーマーが目指すのは、炭鉱都市ナルシェ。
 二度と還れなくなるとも知らず、男達は軍部の命に従い任務へと赴く。
 一世一代の戦いの場へと、死の行軍を続ける。彼らの歩みを止められる者は、
誰もいない。




----------
その後自分はユミール戦でタイミングが合わず全滅しました。
…投下しておいてなんですが、中途半端ですみません。

324:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 03:11:23 1nfm7X2s
おお~クオリティ高ぇなぁ
まず思ったのが、6のOPって地の文でも全く色褪せてないんだな。
ビッグスウェッジの会話も少ない量で読み手の好奇心をそそるようになってるし
ゲーム然としてないとでもいうんだろうか
けどそう思えるのは確実に作者さんの引き立てがあるからなんだよ
セリフそのままが逆に嬉しかった

ってわけで文句なしのGJだ。なんかもうありがとう

325:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 03:15:12 eJ50sJn+
すげえ並行して連載してるな!
作者陣ハゲ乙です!

326:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 10:20:45 e5IksQgR
おい、FF6を頭から書き始めた馬鹿!
>>5にあるまとめサイト見て来いや。
すでに途中まで進行してる物語をまた初めから書く奴があるか。
やりたきゃ先達に敬意を表して、続きから始めろや。


327:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 14:50:17 V97UFe5m
よく知らないが抜けてるとこかいたんじゃないのか?

328:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 17:48:49 7tCXLOyt
ごめん、釣り糸が見えてる

329:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 18:10:39 jTTnIcAv
クマー

330:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 18:11:50 fqzsEtE3
スレGJ

331:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 19:49:43 co/4sB1z
>>319で断りを入れてるんだしそんなに怒らなくても。

332:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/21 22:11:08 YiyRqXI6
いくらなんでもオープニングまるごと端折るのはどうかと思うけどなw

> ストーリーの最初から最後まで完全小説化

なんだし。

333:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 13:06:06 e7dbnGxE
細かいことは正直どうでもいいと言ってみる
クマー

334:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 13:17:46 70Cr/Gvt
同意
クマー


335:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 15:00:02 ZahsFhC2
全くゲームと同じ展開をなぞるのも嫌だと言う意見も
あるので大きく本編を逸脱した展開にならなければ多少の
改変も有っても良いと思う。
今まで書かれた1、4、5も書き手のオリジナル部分が好評を博している
事も珍しくはない。

336:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/22 17:40:15 +HERIgWL
つうかそういうのの判定のためにも297氏が短編書いてくれてんじゃん。
オリジナル要素マンセー。

337:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/23 14:24:21 QHnV4Pkj
FF8書こうかと思ったけど、よく考えたらストーリー把握し切れてないからやめとく

338:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:46:45 nrEHS00s

先に仕掛けたのはティファだ。
ロッズの懐に目にも止まらない素早さで飛びこみ、ニヤニヤ笑いつづける顔面に右ストレートを繰り出したのだ。
しかし、先読みされていたらしく、左腕のシールド状の武器で楽々と受け止められてしまう。
右腕と左腕で取っ組み合ったまま2秒間硬直するが、ロッズが力任せに振り解いた。

そこに僅かな隙が生じた。

瞬間、ティファは左の掌をロッズの頬めがけて叩きつける。
ぐぉ、という呻き声を上げて怯む大男に、間髪を入れず右、左と連続して掌底を浴びせた。掌打ラッシュ。
たまらず後退したロッズに走って詰め寄り、今度はハイキックを出す。避けられた。
ロッズが反撃に転じる。一瞬だけ隙だらけになったティファの顔を狙って左腕のパイルバンカーを突き出してきた。
顔面を捉える寸前でその先端を掴んで受け止めるが、その瞬間、彼女の全身に電流が流れた。

思わぬ衝撃に、後ろへと吹き飛ばされるティファ。
体勢を整えられず、花畑の真ん中に落下する。
立ちあがって前を睨むと、ロッズが左腕のクローを顔の前に掲げて笑っていた。
デュアル・ハウンド。
金属製の手甲の両端に、伸縮する2本のロケットのようなトゲが装着されているという外見で、
シールドとパイルバンカーの両方の役割を果たすその武器は、スタンガンのような機能も備えている。
足を前に突き出した格好でロッズの少し手前に着地してそのまま滑り、足払いするが、彼は大きく跳んで回避した。
すかさず床に手をついて立ちあがり、追う。
ロッズが着地し、背後を振り返ったとき、ティファの左拳がミリ単位の距離に迫っていた。

したたかに殴り飛ばされたロッズが、そのまま教会の端の壁に激突する。
彼は、追撃してくるティファと間合いを取ろうとバックステップした。
が、ティファは壁や柱を蹴って跳び、彼よりも遥かに速い動きで詰め寄り、あっという間に肉薄する。
ロッズが迎え撃つ暇も与えず、
右脚で顎を蹴り上げ、そのまま顔面に踵落とし、さらに流れるような動作でサマーソルト・キックを浴びせた。

339:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:47:48 nrEHS00s

怯み、顔を押さえながら後ずさるロッズ。
ティファがさらに追い討ちをかけようとする。
が、ロッズはティファが叩きつけてくる肘鉄を左腕で受け止め、また取っ組み合いになる。
ロッズは今度は振り払わずに、かわりに左腕のデュアル・ハウンドを放電させた。
予想していなかった攻撃に仰け反るティファ。その隙を逃さず、ロッズは彼女のわき腹に強烈な蹴りをいれ、壁に叩きつけた。
次いで、横殴り気味にデュアル・ハウンドを繰り出すが、ティファは危うい所でしゃがみ、避けた。
パイルバンカー状の2本のトゲが、派手な音を立てて壁に突き刺さった。
間髪入れずに、ティファはロッズの首筋を引っ掴み、背にしていた壁を右脚で蹴りつけ、彼もろとも低く跳躍する。
そのまま、空中でロッズの胸の辺りに左足を押しつけ、
――教会の中央辺りの床に、思いきり叩きつけた。
だが、ロッズも負けてはいない。
彼を叩きつけた反動で跳び去ろうとするティファの脚を右腕で掴むと、
そのまま豪快に振り回して2,3度礼拝客用の長椅子に叩きつけ、さらに教会の奥のほうへとぶん投げたのだ。
派手なジャイアントスイングで投げ飛ばされたティファは、今度は空中で体勢を整え。
花畑のすぐ後ろの石壁に、しっかり足と手をついて「着地」した。
花が、旋風で舞い散った。
睨み合う2人。
ロッズはまた笑っていた。

ティファは壁に脚を突っ張り、ロッズ目掛けて再び跳んだ。
電光石火。
ロッズが迎撃のパイルバンカーを放った。間に合わない。
ジャンプした次の瞬間には、ティファはロッズの顔面を右手で鷲掴みにしていた。
「―いやーーーーーーーっっ!!」
一声叫び、大男を掴んで引きずりながら教会を疾走するティファ。
出入り口の扉の辺りまで来ると、ティファは彼を放り投げ、自分も追うように跳躍。
空中で再びロッズの顔を鷲掴みにすると、目についた柱の根元を狙って投げ飛ばした。
悲鳴を上げながら、ロッズはその柱に激突し、倒壊する柱の瓦礫に埋められていった。
メテオストライク。
瓦礫の山と化した柱のなれの果てを背に、ティファは華麗に着地した。

340:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:49:01 nrEHS00s

勝った。
崩れ去った柱を一瞥し、ティファはそう思った。
マリンも同じ考えだったようで、「ティファ!」と叫び、笑いながらこちらへ走り寄ってくる。
ティファも微笑み、膝と腰を曲げてマリンと視線の高さを同じにしたその時、場違いな音が辺りに響いた。

パン パパパパーパーパーパッパパー♪

あまりに場違いすぎて、ティファもマリンも一瞬、動きが止まった。
周囲を見まわす。また鳴った。
その時、ティファはこの音の正体がやっとわかった。
…携帯電話の着信音。
そして、その着信音が聞こえてくる方向は――
ティファが慌てて振り返るのとほぼ同時に、ロッズが瓦礫を吹き飛ばして再び現れた。

3,4回目のコールでやっと携帯の通話ボタンを押した。
「…ここじゃねえなぁ」
携帯を耳に押し当て、暫くしてから、ロッズ。
「泣いてねぇよ!!」
今度は怒鳴りだした。その後、何故かティファとマリンを拗ねた表情で睨みつける。
「…わかった」
心なしか、声も拗ねていた。
そして、「連れてく」と短く告げて電話を切った。

ティファは脈絡が全くわからない会話に少し面食らっていたが、それ以前に大男の健在ぶりに驚いていた。
リミット技をしこたま叩きこんだのに、ダメージを受けた様子はおろか、傷一つみられないからだ。
ロッズは気だるげに首をコキコキと回している。
「…続きだ」
これまた気だるげに言うと、再び格闘の構えに入った。

341:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:50:01 nrEHS00s

また睨み合う、ティファとロッズ。
今度はロッズが先手を打った。
丁度足下にあった長椅子の残骸を、ティファとマリン目掛けて思いきり蹴り飛ばしたのだ。
マリンが悲鳴を上げ、頭を押さえてその場にしゃがんだ。
弾丸のような速度で迫る長椅子を、ティファは裏拳で弾き飛ばす。
が、跳ね返した長椅子の先からは、ロッズの姿が消えていた。
訝る間もなく、当のロッズがティファの背後に回り込んでいた。
速すぎる。
それまでとは明らかに違う動き。
ティファは何が起こったのかよくわからなかった。
ただはっきりしているのは、背中に彼のデュアル・ハウンドが押し当てられている事だけだ。

放電。

あまりに突然だった攻撃に対処できず、前につんのめるようにして倒れるティファ。
しかし、ロッズは彼女が床に倒れこむ前に、その首筋を引っ掴み、さらに掴んだまま手近な柱に押しつける。
また放電。
首をしっかり掴まれているため、今度はそれまでのように吹き飛ばされなかったが、変わりに後ろの柱が粉々に砕けた。
そのまま乱暴にティファを投げ捨てるロッズ。
すでに反撃どころか抵抗の余力すら奪われていたティファは、力なく花畑の中心あたりに倒れこんだ。
うう、と倒れたまま呻き声をあげるティファにロッズが歩み寄り、馬乗りになる。
そしてとどめを刺そうと、その端正な顔にパイルバンカーを押し当てたその時、彼の頭に何かが投げつけられた。

マリンだった。
訝しげな声をあげて振りかえると、彼女は唇をぎゅっと結び、敢然とした眼でロッズを睨みつけていた。
ロッズはそのあまりにもささやかな抵抗に笑ったが、少女の背後にあるものと、
自分に何が投げつけられたのかを知った時、もっと邪悪な笑みを浮かべた。
マリンの背後で、金属製の箱に詰められている物。
それは、紛れも無く、マテリア。星の力を秘めた結晶。
ロッズはティファを放し、危険な笑みを浮かべたまま、マリンの方へとゆっくり歩み寄った

342:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:51:36 nrEHS00s

たちまち、マリンの顔が恐怖に染まる。
ロッズの筋肉質な体は、彼女と比べるとあまりにも大きい。
ゴツ、ゴツ、という大袈裟な足音が、余計に恐怖感を煽る。
ティファは起き上がろうとしているが、出来ない。
「…逃げて!!」
叫んだが、どうしようもなかった。

同じ頃。
復興都市エッジのある路地で、デンゼルが額に鋭い痛みを覚えた。

たまらず、額を押さえてその場にうずくまった。
暫くそうしていると、痛の波がひいた。
ティファとマリンが「ちょっと出かけてくる」と言い残してセブンスへブンを出てから、2時間も経っていた頃だ。
デンゼルは2人とも店を空けるとき、こうしてこっそり外を出歩いていた。
出歩くと言っても、これといった目的があるわけではない。ただうろうろと歩き回るだけだ。
たった独りでバーの子供部屋に取り残されるのが、怖くてしかたなかったからだ。
マリンもティファも傍にいてくれない時にベッドでじっとしていると、額の星痕が体力を徐々に奪っていくのがわかる。
暗い、じめじめした、厭な重圧が、小さく弱い身体の全体にのしかかるのを感じる。
デンゼルはその着々と忍び寄ってくる死の足音が怖くて、街に出て、人々が行き交う足音で耳を塞いでいるのだった。

額を指でなぞってみる。まだちくちくと痛む。
顔をしかめて座り込み、そろそろ帰ろうかなどと考えていると、目の前に誰かが現れた。
女の子だった。歳はデンゼルとあまり変わらないだろうか。
「…君も星痕だよね?」
出し抜けに訊いてきた。見ると彼女も、モーグリのぬいぐるみを持った右腕から首筋にかけて、星痕の黒い痣を持っていた。
「行こ。治してくれるんだって」
デンゼルが口を開く前に言うと、少女は彼の手を引いて、強引にどこかへと連れ去ってしまった。

343:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:52:51 nrEHS00s

連れて行かれた先には、一台のトラックがあった。
その荷台には、デンゼルとほぼ同年代の子供達が、次々と乗りこんでいる。
ぬいぐるみの少女もデンゼルを一瞥すると、さっさと乗りこんでしまう。
星痕を、治してくれる。
この苦痛を、取り除いてくれる。
苦しみつづける彼らにとって、それは耐えがたい魅力だった。デンゼルも例外ではなかった。
ティファやマリンのことは、何故だか、気にならなかった。
彼はその場に立ち尽くしていたが、暫くすると、トラックの方へとまっすぐ歩み寄って行った。

これが、リユニオンの力か。
トラックから少し離れた所から、子供達が次々と集まってくる光景を眺めながら、ぼんやり考えた。
街に溢れる孤児の一人に声をかけたら、それが噂になって火のように伝播していき、
1時間もしない内にトラックに乗りきれないほどの人数が集まった。
星痕を宿しているという事は、つまり”母さん”の思念を宿しているという事。
やはり、本能的なレベルで働きかけるのだろう。
いまや集まった子供達は、数十人ほどが押し合いへし合いしながらやっと荷台に収まっている状態だ。
フン、と短く鼻を鳴らすと、ヤズーはトラックの運転席に滑り込んでエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

344:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:54:32 nrEHS00s

クラウドが教会に現れたのは、それからだいぶ時間がたった頃だった。
破壊し尽くされた教会を訝しげに見まわした彼は、教会の中に茂る花畑の上に倒れている人影を見つける。
ティファだった。
慌てて駆けより、彼女を抱き起こすクラウド。意識がない。
「…ティファ?」
呼びかけてみる。応えない。
「ティファ!!」
強く呼びかける。すると、閉じていた目がうっすらと開かれ、黒い瞳にクラウドの顔が映った。
「遅いよ…」
それだけ言う。弱りきり、かすれた声だった。
「誰にやられた?」「…知らない奴」
相変わらず弱りきった声で、短く答えるティファ。だが、次の瞬間に「マリン!?」と叫び、勢いよく体を起こした。
そして、また気を失ってしまった。
すかさず辺りを見まわすクラウド。
だが、教会のどこにもマリンの姿はない。ついでに、マテリアを入れておいた箱も消えている。

「くそっ!」
毒づいたが、その直後、クラウドの左腕に激しく鋭い痛みが走った。
とっさに右手で左腕を押さえる。と、左腕を包む布から、黒い膿が滲んだ。
黒く汚い膿はそのまま腕を伝って落ち、花を汚した。
同時に、先程のサブリミナルのような光景が頭の中に閃いては消える。しかし、今度は少し違った。見覚えのある光景だ。
それは、炎につつまれているあいつの姿。
不気味で危険な笑みを浮かべて、炎の中に消えて行くあいつの姿。
「―セ―フィ…」
その名が、口をついて出てくる。
一瞬だけ、全く別なイメージが割りこんだ。これまでとは全く違う、清らかな湖の光景が。
目を閉じていた事に気づき、開くクラウド。
クラウドとティファは、花畑の中に倒れていた。
花畑と言っても、教会の花畑ではない。どこか、全く違う場所。
クラウドは、再び目を閉じた。
狼が、見ていた……

345:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/24 00:56:41 nrEHS00s
せっかく指摘してもらった冗長さが直ってない、戦闘は本編をまんまコピー、展開早すぎ…文章化って難しい・・・

346:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/24 03:44:22 0cznNYvL
乙です。んな悲観するほどじゃないですよ。
十分読ませる文章です。
むしろあんま卑屈になると叩かれやすい・・頑張ってー。

347:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/24 23:00:00 sKgDQY3L
>>345
作中で描かれている細かい動作が入っていて丁寧に描写しているなと思います。
肉弾戦の様子が緊張感あって(・∀・)イイ!

教会でのバトルシーンではスロー・ストップモーションの多用と、花やピアノアレンジのBGM
といった視聴覚効果がふんだんに使われていましたよね。
その分、それらにすべて文章だけで太刀打ちするのは難しいように感じます。(自分は)
そこで、あの作品ではあまり見られなかった心理描写を入れてみてはどうでしょうか?

モーションがゆっくりになる場面(たとえば跳び去るティファの脚をロッズがつかむシーン)で、
捕らえられたティファの心情を入れてみたりだとか。
せっかく場面がゆっくりになったのだから、ここら辺で視点をマリンにしてみるのもアリかな、とか。
(あんな激しい戦闘で、マリンはどうやってそれらの被害から免れるべく協会内を逃げたのか、とか)
決して本筋から逸れることにはなりませんし、非力なマリンの目を通して見た二人の戦闘を描写すれば、
さらに緊張感が増したりするかな、などと思えるのです。
そう言った面を取り入れていくことが逆に、文章化のうまみな気もします。
(特にこの先のシーンは戦闘などの動的要素よりも会話から四者の心情を描く方に重点を置きやすいかなと。
その分、映像として見たときは戦闘シーンのように派手さがないのでそのまま文章化すると単調になるかも)
…まとまりなく長々書いてスマソ。
単に自分が読んでみたいFF7ACノベライズ像を書いただけかも知れないので、あんまり気にしなくてもいいかも(w。

348:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/25 15:11:53 nKt5fD7d
保守

349:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 12:28:47 V3qfNeSE
・ボリューム配分
 表現したいエピソード、シーンを絞り、それ以外は思い切って軽く流す。
 思い入れのあまり全てを描こうとすると、冗長になり却って何も伝わらない。
 読者に伝えたいことを事前に明確にしておくこと。

・キャラクターの心理描写
 いわゆる「神の視点」の濫用は極力避ける。
 全キャラについて等しく心理描写を行うのは、上述と同様、
 却ってぼやけてしまう。
 主人公から見て恋愛、敬意、畏怖の対象となるキャラについては、
 むしろ主人公の視点からの描写に留めると、緊張感を維持できる。
 進行上心理描写が必要な場面でも、可能な限り行動描写のみで
 行間を読ませるなどの工夫をすると良い。

350:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 12:36:55 p0VhgTMc
何だか偉そうな物言いでごめん。
決して7ACの作者さんにダメ出ししてるわけじゃない。
自分が原稿持ち込みに行くたびに編集者から指摘くらうことを
そのまま書いちゃった。

351:349=350
05/10/26 12:38:40 p0VhgTMc
あれ、ID変わってるけど349=350です。

352:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 15:54:36 cPE749NX
>>349
作家志望の方?
それなら是非参加していただきたいなぁ。

353:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:07:47 8+L3mp81
職人さんちょっと過疎ってきた?
まあ強制はできませんが。文書くのしんどいしねw。

354:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:42:43 4lD5BKe3
すいません、返信遅れました。

>>346
どうもです。
そう言ってもらえると励みになります。

>>347-350
貴重なアドバイス、ありがとうございます。
文章はできるだけスマートに、ですか…参考になります。
心理描写…は実を言うと苦手なのですが、早速取り入れて見ようと思います。

355:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/26 20:43:50 4lD5BKe3
あ、忘れましたけどAC描いてる者です。

356:297
05/10/27 23:45:13 vP5qLrG6
ff6 - 21 figaro

「お待ちなさい」

 鋭い声に振り向くと、声に違わず厳しい面持ちの老女がティナと兵士を睨んでいた。
「これは…神官長様」
 些か気を浮かせていた兵士は声を取り直し、深く頭を垂れた。ティナが自分もそれに
習うべきか迷っているうちに、老女はさらに言葉を詰める。
「そちらの女性はどなたです?」
 チラリとティナを一瞥してから、老女は鋭い視線を兵士に戻す。
「は。こちらは、エドガー様の…」
「あぁ! もう結構、聞いた私が馬鹿でした!」
 苛立たしい、うんざりだという仕草で頭を振る老女。そしてまたチラリとティナを見た。
「あなたはもう下がって結構です。他に仕事が無いわけでもないでしょう?」
「は……ですが、こちらの方のご案内を…」
「この方のことは私が責任を持ってお引き受けします。さあ!」
 凄みを利かされて、寡黙な兵士は足早に引き上げていった。どうやら神官長と呼ばれる
この女性は、ここではとても発言力のある人物らしい。
 ……でも、どうして?
 ティナはますます困惑するばかりだった。というのは、人の感情の機微に疎い彼女にも、
先程からちらちらとこちらを窺う老女の視線は、明らかに敵意のそれであると分かっていた
からだ。
 どうしてこの人は、怒っているんだろう?
「……それで!」
 二人きりになると、老女の口調はますます棘を帯びる。
「一体あなたはどこの街から連れてこられたのですか!?」
「え…?」



357:297
05/10/27 23:48:09 vP5qLrG6
ff6 - 22 figaro
  

「まったくあの子と来たら……本当に見境の無い!
 先週に三人もつれ込んだばかりと思ったら、今日また一人!」
「……あの」
 何を言っているのかさっぱり分からない。
 それでも老女は呆気にとられているティナを意ともせずに捲し立てていく。
「いえ、何も言わなくて結構。あなたの仰りたいことなどようくわかっておりますとも!
 でもね、女中なんてこの城にはもう、箒で掃いて捨てるほどいるのよ。
 あぁ! いっそ本当に掃き捨てられたら!!」
「……私は」
「ええ、もちろんそうだからといって、あなたに仕事が無いわけではありませんよ。
もっとも余っているわけでもありませんがね、とにかく」
「あの……ちょっと!」
「あら…なんです?」
 冷たい視線が刺さる。
 ティナは咳払いをして、押し戻されそうになった言葉をなんとか絞り出した。
「……その、私は……、ナルシェの街でロックという人が、私を助けてくれて………
 それで、彼に連れられて、一緒にここに……」

 ……だめ、うまく説明できない。
 ティナは困り果てて俯いた。なぜと言われても、彼女自身どうして自分がここにいるのか
分かっていないのだから、説明など出来るはずもない。
 ところが、意外にも老女は言葉をとめて黙っていた。ティナが恐る恐る顔を上げると、  
「まあ…、まあまあ!」
 老女がその顔一杯に、驚きと、歓喜の色を広げていた。
「ああ、ごめんなさい! 私としたことが、とんだ勘違いをしてしまって!」
「……?」
 やっぱり、ティナにはよくわからなかった。



358:297
05/10/27 23:49:23 vP5qLrG6
ff6 - 23 figaro


「ロックね…、あの人は立派な若者よ。とても思いやりがあって、分別もあって……、
 エドガーにも見習ってもらいたいものだわ!」
 先程までとは打って変わって、彼女の口調はすっかり親しげに満ちたものに変わってる。
その変貌に驚いているティナに気づいたのか、老女はもう一度頭を下げた。
「あぁ……本当にごめんなさい。でも、分かっていただけるかしら。
 あなたもこの城の至るところで……見たでしょう? あの女中たちを……」
 ティナはようやく頷いた。
 それは兵士に案内をされている間に彼女自身も気になっていたことだ。つまり、城中の
どこに目を向けても映る、女性たちの姿にである。その女性たちは、みんなエドガーが
方々の街から連れてきた手合いなのだそうだ。
 そうして際限なく増えていく女性たちの管理で、さぞかしこの老女は日々骨を折っている
のだろう。そこにやってきたティナの姿に、兵士の「エドガー様の…」の一言である。
彼女が早とちりをするのも無理はないというものだ。

「あぁ……それで。あなたはここにしばらく滞在されるのかしら?」
 そんな事情を伝えてから、ふと老女は口調を改めた。
 彼女の声に先程の険しさが戻りかけているのを察して、ティナはすこし緊張した。
「…いえ、ご迷惑をおかけするわけにもいきませんし。できるだけ早く、出て行こうと…」
 この返事に、老女はいよいよ気を良くしたようだった。
「まぁ、まぁ、まぁ! そんなご遠慮なさることは無いのよ!
 あなたのような理性的な方なら、いつまでだっていてくださって構わないんですからね。
 そうだわ、あなたさえよければ、私の部屋においでになってくださっても……!」
 子供のようにまくしたてる老女の喜びぶりに驚きながら、ティナはクスと笑った。
 きっとこの城にいるのは、彼女がうんざりするほど華やかな女性たちばかりなのだろう。
 そして、その人たちはきっと、先程のエドガーの言葉にも頬を染めて喜ぶことが出来る
ような人たちなのだろう。



359:297
05/10/27 23:50:18 vP5qLrG6
ff6 - 24 figaro


「この部屋はね、エドガーが子供のころに使っていた部屋なのよ。
 あの人が王位を継いでからは、私にこの部屋を譲ってくれたの」
 招き入られた神官長の部屋の中。二人分のお茶を煎れながら、老女は嬉しそうに話す。
「婆やなら、このベッドでも十分な大きさだろう、ですって! 馬鹿にしてるのよ!」
 そうやって腹を立ててみせる彼女は、けれどそれがエドガーの紛れもない愛情の表現だと
もちろんちゃんと知っているようだった。
 部屋を見回してみる。老女はその印象通り慎ましい生活を好むようで、小さな部屋には
よく整頓されており質素な空気が満ちている。でもよく見ると本棚に童話が入っていたり、
壁に背比べのような傷がついていたり、確かに昔はそこに子供がいたという名残がたくさん
残っていた。
 ふと、ティナは首を傾げた。
「二つありますね」
「え?」
「ベッド、二つありますね」
 老女はしわがれた笑顔に、少し淋しさを混ぜてティーカップを置いた。
「……えぇ。エドガーには双子の弟がいたのよ」
「双子?」
「そう……、双子といってもね、似ているようでちっとも似てなくて……」
「……エドガーの双子」
「マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ」
 口端を歪ませながら、彼女はそっとベッドに手を伸ばした。愛おしさに溢れた彼女の
手つきは、まるでそこに小さな子供が眠っているような錯覚をティナに思わせた。



360:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:11:24 YdjoDXsL
久々のFF6グッジョブ!

あとトンベリもGJwww

361:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:35:27 16Xi/yJW
乙。神官もこうやって個性を持って書かれるといいな。
ファミコンだと没個性になっちゃう。というか、容量上掘り下げられないもんね

362:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:35:30 b5ZGWDsB
トンベリもってどういう意味?

363:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 00:43:48 YdjoDXsL
>362
■トンベリ復讐ものがたり■
スレリンク(ff板)


364:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 01:46:50 DX5KglEZ
319です。
>>324
ありがとうございます。
>>356-359
神官長がまさに生きてるって感じがして読んでると嬉しくなってきました。
さり気なく描かれるフィガロの案内役兵士も細かいなと。
この勢いであのケッコン娘も出て来たらエライ事になりそうだ…(w。


未プレイの方(または解釈によって)は混乱させる文章かも知れませんが、
FF6オープニング(ティナ覚醒前)補足文>>323の続きを投下させて頂きます。

365:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:52:30 DX5KglEZ



 彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。

 こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
状況が揃っている事を思い知った。
 さすがナルシェだ。これまで帝国が侵攻作戦を展開しようとしても、容易に落とせる
都市ではないのが頷ける。
 しかし裏を返せば、そんな都市へ派兵された我々はいわば精鋭なのだ。そう思えば
自然と士気もあがる。
「この娘を先頭にして突っ込む。ザコには構うな。行くぞ!」
 兵器でありながらそれを「娘」と呼んだ自分に苦笑しながら、彼は前方に視線を向けた。
頭部の高い位置で結われた少し珍しい色の髪の毛が揺れ、露出した肩は少女のそれらしく
華奢だった。その後ろ姿だけを見れば、彼女は紛れもなく人間であるはずなのに。


 彼らは“少女”を先頭にして隊列を組みナルシェの中心部へと足を進めた。

366:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:54:29 DX5KglEZ

                    ***

 これまで帝国同盟にも反帝国組織にも加わらず、中立の立場を貫いて来たナルシェ。
蒸気機関と炭坑の発展に裏付けられた富と、ナルシェの民である事への誇りが、この
都市の独立を支えてきた。
 家々の戸は吹雪から室内を守るために堅く閉ざされ、わざと細く作られた道路は
外敵の侵入に備えたつくりだった。常に降る雪と吐き出される煙とで、視界は良好とは
言えない。しかしそれさえも都市防衛の一環だ。
 そんなナルシェを守る屈強の『ガード』達は、たった三名の侵入者に愕然となる。街の
入り口に見た侵入者の姿が、南方大陸三国を武力で制圧したと噂に聞く、帝国軍の
魔導アーマーだったからだ。
 反帝国組織リターナーとか言う連中が最近、長老に「近々ナルシェに帝国が攻めてくる」
などと言ってきたらしいのだが、どうやらそれは事実のようだった。建物の陰に隠れ、
一部始終をうかがっていた先陣隊の一人が、勇気を奮い起こして立ち上がる。頬に触れる
風が、刺すように冷たく感じた。横に並ぶ者も、彼に倣って立ち上がる。
 彼らを支えているのは、ナルシェのガードたる誇り。

 ―己の誇りにかけて、この都市を守ってみせる。

 ふたりは誓うように頷き合って、メインストリートへと飛び出していった。

367:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 01:55:36 DX5KglEZ

                    ***

「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで……」
 戒厳令下の都市、外をうろつく者はいない。普段は人々が行き交うこの場所が、
一瞬にして戦場へと変貌する。
 帝国軍魔導アーマー部隊の三人と、炭鉱都市のガード二名が対峙する―ナルシェ
市街地を舞台にした戦いが、静かに幕を開けた。
 しかし、この戦闘が長く続くはずもなかった。数でも劣性だったガード達には敗走の
選択肢さえも与えられなかった。魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装して
いるとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
 武器を振るうどころか、叫ぶ間もなく命を落としたガード二名の亡骸は灰となって、
そのままナルシェの雪と混じり合い音もなく消えていった。
 ナルシェでの初めての交戦。その勝利にも三人は特に言葉を交わすこともなく、メイン
ストリートを北上し続けた。
 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。



 二番隊として控えていた男達は、建物の隙間から仲間達の最期をこの目で見届けた。
 魔導アーマーの凄まじい力をまざまざと見せつけられて、本能的な恐怖心から踏み
出そうとする足が震える。
 ―死ぬかも知れない。いいや、確実に……。
 それでも、彼らは戦わなければならない。なぜならば彼らは、選ばれた誇り高きガードで
あるから。
 ふたりは意を決しメインストリートに向けて走り出す。角を曲がり魔導アーマー三体を
視認すると、縛めていたシルバリオを放った。二頭は怯むことなくまっすぐに敵めがけて
突進していった。

368:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:00:39 DX5KglEZ

                    ***

「ナルシェは、俺達ガードが守る!!」
 ガード達が言い放った声が遠くに聞こえた。魔導アーマーが通りの中央で立ち止まり、
横合いから飛び出してきた獣との戦闘に入る。
 魔導アーマーに立ち向かった生物は、死以外の道を選べない。
 しかし魔導アーマーの搭乗者には、与える死の方法を選ぶ事ができた。
 いつかファイアビームを好んで使う相棒に、その理由を尋ねたところ「操作がいちばん
簡単だから」と返事が返ってきたのを思い出した。現に今も、彼はそれを使って敵を撃退
していた。
 実際のところ操作に特別な違いはない。ただ、パネルの並び順が違うだけだ。手元の
レバーに一番近いのがファイアビームというだけで、彼はそれを好んで使うのだ。相棒の
横着ぶりにはさすがに呆れて物も言えない。
 そんなことを考えていた彼は、ふとあることを思いついた。
 男達ふたりの搭乗する魔導アーマーと、“少女”が搭乗する魔導アーマーの性能には
大きな差があった。彼は好奇心から“少女”にその能力を発揮させる事を命じたのだった。
 そのひとつが『魔導ミサイル』。帝国空軍機などに搭載されているものとほぼ同型の
ミサイルで、発射には膨大な魔導エネルギーが必要とされるはずだ。事実、そのエネルギー
補填用の装置だけでも、魔導アーマーの何倍もの大きさになる。
 それをここに―人ひとりがようやく搭乗できるほどの魔導アーマーに組み込めたのは、
やはり搭乗者自身から魔導エネルギーを補充する事が可能だからなのだろうか。生きる
兵器……この娘だからこそ、と言うわけか。しかし残念ながら魔導アーマーの構造は
軍部の最高機密であり、彼らがその真相を知ることは一生ない。
 無表情のまま手元を動かし、“少女”は命じられた通りの行動を起こした。ミサイル発射の
轟音と直後の閃光とともに、戦闘はあまりにも早すぎる決着を迎えた。残されたガード
ふたりの足が僅かに怯む様子を見せた。しかし、それでも突撃をやめることはなかった。

369:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:03:51 DX5KglEZ
 こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
 もはや魔導アーマーの搭乗者に相手の命を奪うという感覚は薄れ、足元のペダルと
手元のレバーやパネルを間違いなく操作するという作業でしかなくなりつつあった。
 相変わらず相棒は、ファイアビームばかりを使っている。しかし今さらそんなことを指摘
したところで何も始まらない。彼は黙って二人の後について歩き続けた。


 作業をこなしながら進軍を続ける。ここまで来ると建物が間近に迫ってくるほど道幅は
細くなっていた。最後尾を歩いていたウェッジが振り返ると、後ろに控えていたガード達が
武器を構えた。
 先に声をあげたのは、彼らの方だった。
「よし! はさみうちだっ!!」
 仲間達の敗戦を見てもまだ懲りていないのか、それとも自棄になっているのだろうか。
僅かばかり考えたが、いつも結論が出る前に戦闘は終わってしまう。相棒が言っていた通りの
ザコだ、たしかに構うほどのものではない。
 そうやって人知れず自分を納得させながら、手元のパネルを操作する。レバーを引いた次の瞬間、
耳障りな機械音と共に雪の大地がオレンジ色に照らし出された。アーマーの先端から赤黒い閃光が
伸び、目の前の生物を飲み込んだ。
 ファイアビームだった。


 またしばらく北上を続けると、周囲の景色が変わり始めた。煙を吐き出す煙突や立ち並ぶ
家々ではなく、むき出しの岩場が目立つようになったのを見て、自分たちの目的である炭坑へ
着実に近づいているのだと知る。

370:FF6オープニング:ナルシェ進軍
05/10/28 02:10:31 DX5KglEZ

                    ***

「炭坑の守りをかためろ!!」
 悲壮なまでの叫び声を、やはり遠くに聞いたような気がした。目の前に現れたのは
これまでにない多勢だ。おまけに人間だけではなくメガロドルクまでいる。普通に考えれば、
こんなモンスターまで手懐けているナルシェの防衛機構には驚かされるところだ。
 しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。
 彼らの操る魔導アーマーの足元で、数分前までは命を持っていたものが雪の上に積もった。
“少女”の搭乗した魔導アーマーが、その上を歩く。


 そんな少女の顔を、脳裏に焼き付ける者が居た。
 目の前で次々に仲間を殺されていった男は絶望を振り払うように、炭坑を守る最後の砦を
解き放つため、その場を離れ駆けだした。


 こうして、前進を続ける彼らの前に立ちふさがる者はいなくなった。ここまで見せつけてやれば、
いい加減逃げたのだろう。逃げるのが自然だ。今まで向かってきた奴らの方が異常とも言える。
 やがて前方には黒く口を開けた炭坑の姿が見えてきた。組まれた足場から察するに、それほど
古い物でないことが伺える。
 三人は入り口の前で一度立ち止まる。
「情報によれば、新たに掘った炭坑から氷づけの幻獣が出てきたらしい……と
いうことは、この奥か?」
 不安や疑問というのではなく、確認という意味で相棒に問う。問われた男は頷いて前進を促した。


 “少女”以外のふたりにとって、この炭坑が二度と出られない闇への入り口になるのだとも知らずに。


----------
コマンド入力が面倒くさかったのは自分だけかも知れません、ごめんなさい。

371:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 02:17:26 YdjoDXsL
神経質な方はウェッジかな?
ファイアビームの描写が兵士の「仕事柄」を思わせて凄く良い。
テンポもいいし、文章かなり上手いですね。

ただ細かいんですけど、入り口で魔導アーマーの姿は確認してるのに、
>「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで…」
は、ちょっと引っかかるかな、と思いました。乙です。

372:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/28 21:02:03 vdg6WbHu
>>370
乙。
確かに、最初やった時はあんなに早くいなくなるとは思ってなかったから、
ティナのすべての技を見ることはなかったなw
>>371
帝国の侵略がとうとうこのナルシェにまでのびてきたのかってことじゃないのかな

373:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/29 19:07:48 NJe3ngRL
>>370
乙です。
どっかで見たことある文体だと思ったら恋する小説スレの6書きさんジャマイカ(゚∀゚)
向こうのスレの作品も読ませてもらってますです。
ちなみに、俺もナルシェではファイヤービームばっかり使ってました。

それはそうと、AC投下させてもらいます。

374:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:09:54 NJe3ngRL

不意に、意識が取り戻された。
目を開けると、それはどこかの寝室、そのベッドの上。
壁に、クラウドとティファの子供らしい似顔絵があることから、セブンスへブンの寝室だとわかった。
クラウドは起きあがると、隣のベッドにティファが、意識を失ったまま横たわっているのを見つける。
……また、助けられなかった?
そこまで思い至ったクラウドの胸中に一つの感情が滲み出す。それは、後悔。
どうすることもできず立ち尽くし、ティファの安らかな顔を見つめるクラウド。その背後に、2人の男が立っていた。

「…重かったぞ、と」
クラウドが振りかえる。そこにいたのは、レノとルードだった。
「…あんた、子供達と住んでいるって話だったよな」
クラウドが口を開く前に、ルードが話し出す。
その抑揚のない口調に伴う重苦しさに、クラウドは厭な予感を感じる。
「空っぽだ。どこにもいねえよ」
その予感を裏切ることなく、レノがお手上げだと言う風に言った。
「…どこにも、いない?」
まだ後悔の念に沈みながら、クラウドが復唱する。
タークスの2人は沈黙で答えた。重い空気が、あたりに充満する。
「…いいのか?」
やがて、ルードが短く訊いた。
「俺は…」
のろのろと答えようとしたクラウドは、そこで言葉に窮してしまった。
――俺は…なんだ?
俺はどうしたらいい?どうしろって言うんだ?人ひとり助けられない、この俺に?
またも、沈黙が辺りの空気を支配する。ルードがもう一度「いいのか?」と訊いたが、それでも口を開かない。開けない。

たっぷり20秒間待った後、レノは失望したようなため息をついた。
「じれったいぞ、と」
煮え切らないクラウドにそれだけ言い捨てると、全ての興味を失ったように寝室から出て行く。
ルードもサングラス越しにクラウドを冷たく一瞥すると、後に続いた。ドアを閉める音が、いやに大きかった。
クラウドは何もせず、何も言わず、その場に立ち尽くしたまま2人を見送った。

375:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:12:00 NJe3ngRL

日が暮れた。
クラウドはまだセブンスへブンの寝室にいて、窓から月を眺めていた。綺麗な満月だった。
タークスの2人と短い会話を交してから、ずっとそこにいたのだ。
ティファの身を案じて。否、案じるふりをして。あるいは、どうするべきか決めかねているふりをして。
彼女が呻き声をあげ、ようやく目覚めたのは、それからだいぶ後のことだ。

目を覚ますと、そこはセブンスへブンの寝室だった。
もう夜だった。慌てて起きあがる。
クラウドがいた。
彼は起きあがったティファの顔をちらりと見たが、すぐに窓の外に視線を戻し。
「レノ達が探している」とだけ告げた。ティファは「そう…」と呟いてうつむいた。
寝室に何度目かの沈黙がおりた。虫の鳴く音が、どこからか聞こえてくる。
「星痕症候群…だよね?」
暫くして、うつむいたまま、ティファが口を開いた。
クラウドは何も言わず窓の外を眺めている。その沈黙は、肯定の証。
「やっぱり…」とティファが沈んだ心で絶望的に呟くと、クラウドは
「…治療法がない」とだけ言った。その声もまた、絶望的な響きを伴っていた。
――でも、ちょっと待って。
ティファは顔を上げた。
――だから、逃げるの?
「でも、デンゼルは頑張ってるよね?」
――小さい子供だって、耐えてるのに?戦ってるのに?
「このまま死んでもいい…なんて思ってる?」
――なのに、あなたは逃げるの?
「逃げてないで、一緒に闘おう?みんなで助け合って、頑張ろう?」
このままじゃ、みんないたずらに苦しいだけだ。あなただって、マリンだって、デンゼルだって、もちろん、私だって。
まだ背を向けているクラウドに、ティファは必死に訴えかける。
しかし、それでもクラウドはこちらを見ない。応えない。
「…本当の家族じゃないから、ダメか」
石のように黙り込む彼に、ティファは諦めたように締めくくった。
すると、クラウドはやっと口を開いた。

376:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:13:34 NJe3ngRL

「俺には…誰も助けられないと思うんだ」
暗く、重く、絶望的な声。
「家族だろうが…仲間だろうが…誰も…」
――ああ、それで…
そこまで言ってまた黙るクラウドの背から視線を放し、ティファはまたうつむいた。
――まだ、あなたはあの事を…

「…ズルズル ズルズル」
何度目かの沈黙の後、やはりティファが口を開いた。
失望したような、諦めきったような、うんざりしたような、そんな声。
クラウドがやっと振りかえると、ティファはクラウドに背を向けていた。
「ズルズル ズルズル!」
また言う。先程よりも少し大きい声だった。
その後の言葉を、意外な人物が引き継いだ。

「いつまで引きずってんだよ、と」
その声のした方に、クラウドとティファは同時に振り向く。
いつのまにか、タークスの2人が寝室の中に戻ってきていた。
「見つからないの!?」
すがるようにティファが訊く。
「銀髪の奴らが連れてった。目撃者がいたぞ、と」
レノが落ちつかなげに部屋を歩き回りながら、答える。
「行き先は?」今度がクラウドが、この時ばかりは急き込んで訊く。
「忘らるる都」ルードが答える。
「…アジトだ」
彼は腕を組んで壁に寄りかかって立ったまま、付け加えた。

その後、ティファ、レノ、ルードの3人が、意味ありげな視線をクラウドに送る。
その視線の意味する所を、クラウドは解かっていた。
暫く沈黙した後、彼は口を開いた。

377:FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN
05/10/29 19:16:09 NJe3ngRL

「…頼む…」
短く、それだけ言った。
その一言は、その場にいた3人を大いに面食らわせた。
ティファもレノも、ポーカーフェイスのルードでさえも、半ば驚いたような、半ば呆れたような顔でクラウドを見た。
「俺はルーファウスと話してくる」
そう続けるクラウド。それは戦えない、闘いたくないと言う意思表示。
「逃げないで!」
間髪いれずに、ティファが悲痛に訴える。
「わかるよ?
 子供達を見つけても、何も出来ないかもしれない」
言葉を続けるティファ。
クラウドは彼女に背を向けたまま、居心地悪そうにしだしたタークスの2人を見ながら聞く。
「もしかしたら、また取返しのつかないことになるかもしれない」
レノはルードを押して部屋を出ようとしているが、ルードはそんなレノを逆に押しのけて部屋から出さない。滑稽な図だった。
「それが怖いんでしょ?」
…図星だ。
「でも、もっと今を、色んなことを受け止めてよ」
ティファの説得は続く。
「重い?だってしかたないよ。重いんだもん」
彼女はクラウドにとってもっとも触れられたくない部分に触れた。
「一人で生きていける人意外は我慢しなきゃ。
 ひとりぼっちはいやなんでしょ?出ないくせに、電話は手放さないもんね」
また、図星を突かれた。クラウドは喋り終えた彼女を背に、ただ黙って立ち尽くしていた。

ティファの言った事は正しい。どこまでも正しい。
俺だって、それぐらいは解かってる。少なくとも、解かってるつもりだ。
でも、ティファ…俺は…俺は…

クラウドが何も言えないでいると、漫才のような押し問答をやめたレノが、またため息をついた。
「アジト…お前が行けよ、と」
それだけ言って、ルードと共に部屋から出ていってしまった。

378:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/29 19:18:54 NJe3ngRL
本編とちょっとシーンの順番が変わりますが、セブンスへブンの会話をほぼ一通り書きました。

379:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 17:53:33 Giitfl+H
>>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった

380:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 19:10:26 64NqQNxH
そんな細かい突っ込みせんでもw

381:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 19:55:00 qCzlHGar
その文章だけ取り立てておかしいとも思えんけど。
粉雪程度に阻まれんなよwwwヨワスwwwって事?

382:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 20:17:49 qCzlHGar
むしろ”まともに行く手を阻む物が何もない”って事なんだろうけどさ。

383:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 23:47:46 qD0EiYsY
保守


384:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/30 23:51:40 SdgnkeFv
>>379
お前が何を言いたいのかさっぱりわからん。
普通に良い描写じゃないか。

385:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 02:11:52 jRe714Tz
ACグッジョブ!
いいな、なんかティファの態度が切ない。

386:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 08:15:46 Gdub4NdN
 横からになりますが、その一文が後の文章と矛盾を孕んでいるという事でしょう。多分。

>>382さんの解釈が正しければ、
 進軍を阻むもの > 粉雪、細い通路、煙、侵入者であること(土地に対する知識の不足)
 ”粉雪だけ”ではない。よって矛盾。

 あるいは、
>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 という一文は後の文章と違い、ナルシェ到着後の描写ではないという解釈も可能ですが、
それではナルシェの難攻不落を表現するという文頭の意図からは浮いた意味のない文章だということになります。
 この場合調整は必要ですが、下記のような文章の流れならば可。

 それまで彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 しかし、ナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。

387:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 12:23:24 X6dNAsx9
>こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
>以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
>魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
>蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
>状況が揃っている事を思い知った。

と書いておきながら、

>魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装しているとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
> 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。
>こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
>しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。

などと書いてしまう矛盾。
凝った言い回しやレトリックなど、小手先の技術におぼれ、
プロット、筋道を明確にするのを怠った報いか。

388:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 13:26:28 PM5d5IuD
書いてるのは(おそらく)素人なわけだし、そんなに重箱の隅をつつかなくても…。
プロの小説家・漫画家だって、かなり矛盾だらけのものを発表してる人いるし。
ていうか例えばFF7なんて、小説でこそないが、あんなに売っといて本編が矛盾だらけジャマイカ? 昔文章化しようとして、あまりの穴の多さに挫折したよ…


389:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 13:41:03 Gdub4NdN
>387
 そこには矛盾点ありませんよ。
 「不利な状況をものともしない魔導アーマーの力」という表現の軸はズレていません。

>>386で書いた部分も、最初の一文の時間的配置が曖昧であるゆえに矛盾を孕むように感じさせるだけで、根本的な矛盾というわけではありません。
 むしろ作者さんのチェック(時制、語句、視点、誤字・脱字など)が少々甘いゆえのミスでしょう。そういったミスは(請われもしないのに指摘するつもりはありませんが)他にもありますしね。

>>388
 ですね。

390:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 17:42:51 jRe714Tz
>363
他スレの話は持ち出すなよ。
向こうでは名無しで投稿してたんだから、察しろ。

391:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 18:16:58 P+oD/Ymw
どうでもいい事で揚げ足とってやたらめったらに流れ悪くしようとしてるのがいるな

392:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 18:51:39 SbHms85P
それだけ賑わってるって事だ。

393:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 19:24:39 r4ExQ8qk
そんな賑わい方いやだ…

394:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 20:31:28 56DzSntx
そんな板じゃないんだから勝手にやらせてくれよってこった。
書いてる人たちだってプロじゃねえんだ文句言うな。

395:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 20:41:34 SbHms85P
まあまあマターリ汁
そんな物言いじゃ雰囲気悪くなる一方なんじゃ…

396:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 21:20:33 DSXkOjO0
でもここは、プロにも見劣りしないような作品を作るぐらいの意気込みで
真面目に書いていくスレだからな。ある程度の批評はあった方が良いと思う。
もちろんそれと同じように賞讃もしていくべきだろうが。

ちなみに俺は、粉雪の描写、問題ないと思ったけど。

397:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/31 22:16:22 P+oD/Ymw
批評と揚げ足取りとは全然違うからな
その辺の区別をしっかりつけていきたい

398:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 07:14:10 Y9lxbWU6
それはそうと、ACって頻繁に投下してる割には陰薄いな
やっぱりみんなNGに入れて見ないようにしてるんだろうか

399:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 08:17:30 X2vcbHg/
新作期待あげ

400:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 08:50:00 iELZbzmd
>>398
影が薄いとは思わないよ。面白いし。
でも、難しいんじゃない?
元々がしっかりとした科白があって、台詞回しがあって、
その瞬間瞬間の表情があって、…という映像を文字に起こすと、どうしても
台本的になってしまうと思う。
アレンジしにくいんじゃないかな。
そういう意味で、他の1,4,5,6,に比べると、「書いている人のカラー」が
出しにくいんだと思う。

401:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 10:23:18 O5zzJnQC
7AC、未プレイの人は当然NGにしてるだろうし、
プレイ中の人も、今まさにホットな時期なので、
イメージ崩されたくない(良くも悪くも)という理由でNGにしてるのでは?

402:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/01 22:38:56 gdiP9GfR
別にNGにしてなくてもこのスレはROMに徹する潜伏者が多いから。

403:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/02 00:56:55 h5YqCaYd
>>401
未プレイっていうか未見ね

404:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:21:40 9QX82TOV
ところでまとめサイトの管理人さんは……

405:494 ◆yB8ZhdBc2M
05/11/03 02:34:55 aG2VB03e
みなさんお久しぶりです。
更新一ヶ月半程何もしてなくてすみません・・・。
一応スレには目を通していたんですが、ここ最近どうにも忙しくて更新が滞っていました。
今週は学祭期間中で時間が取れそうなので、また少しずつ更新を開始していこうと思うので宜しくです。

てかタイトルが増えたのでサイトデザインを変更せねば、と。


406:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 02:39:45 9QX82TOV
おお、いたのか。よかったよかった。
某SS総合保管所の管理人みたいに失踪しちゃったかと思ったよ。
更新マターリがんばってください。

407:FF8
05/11/03 11:39:08 DsCVtIEF
FF8-1

訓練施設に剣戟の音がこだまする様になって、もう一時間近く経つ。
「どうしたスコール、本気を出せよ。
このガーデンにゃ、ガンブレード使いは俺とお前しかいないんだぜ。
これじゃ訓練にならんじゃないか」
荒く息を弾ませながら、それでもサイファーは強がって言う。
「それとも降参するか、おい?」
「それはない!」
安い挑発と知りつつも、俺はムキになってサイファーに切り掛かっていく。
昔からそうだ。俺は昔から、サイファーに対しては対抗意識をムキ出しにして
突っかかっていく性癖がある。
どうしてなのか、それは考えたくないし、どうでもいい事だ。
「そう来なくちゃな。
さすがは”骨のある奴リスト”ランキング上位者よ!」
しばらく止んでいた剣戟の音が、再び訓練施設にこだまする。

408:FF8
05/11/03 11:50:11 DsCVtIEF
FF8-2

ガンブレードを得物としたのは、サイファーの方が先だった。
幼少の頃に見た映画の影響だという。
愛しの姫君を守るために竜と闘う騎士を描いた、ありきたりな物語。
相手を射抜くかの様に、切っ先を真っ直ぐ水平にする独特の構えも、
その映画の主人公を真似たものらしい。
重いガンブレードを水平に、しかも片手持ちで構えるなど、およそ実際的ではない。
が、それを実現たらしめているサイファーの膂力には、侮りがたいものがある。

俺がガンブレードを使う様になったのは、サイファーに対抗するためだと、
多くの人は思っている。勿論サイファーもその一人だ。
今までの俺とサイファーの確執を思えば、それも止むを得ないが、
実際のところそれは無関係だ。
訓練生時代に色々な武器を試してみたが、一番しっくり来たのが
このガンブレードだったというだけの事だ。
が、それは誰も知らない。誰にも言ってないからだ。
別に秘密にしているわけじゃない。ただ単に面倒くさいからだ。
自分の事を知ってもらう、これは面倒なだけではなく、さして意味のない事。
俺は人の事に興味を持たないのと同様、自分の事に興味を持たれたくはない。

409:FF8
05/11/03 12:11:20 DsCVtIEF
FF8-3

あまり知られていない事だが、ひと口にガンブレードと言っても、
実は用途に応じて、様々なバリエーションがある。
俺が扱うガンブレードは「斬撃タイプ」と呼ばれるもの。
相手に切り掛る直前にトリガーを引くと、薬室内の炸薬が爆発し、
剣の峰にある噴出孔から大量のガスが噴出する様になっている。
それが斬撃の威力を後押しするのだ。
一方、サイファーが好んで用いるのは「刺突タイプ」と呼ばれるもの。
これはガスの噴出孔が、剣の峰ではなく剣先にある。
相手を突き刺したと同時にトリガーを引き、相手の体内にガスを送り込んで、
体内から破壊する事を目的としている。

とはいえ今は訓練中であり、ましてや俺とサイファーは確執こそあれ
同じガーデンの訓練生という事もあって、当然ながら安全装置が掛かっている。
だから結局のところ、単なる長剣での斬り結びに過ぎないのだが・・・

410:FF8
05/11/03 12:30:56 DsCVtIEF
FF8-4

一進一退の攻防が続く。いつもの事だ。
互いの手の内は嫌という程知り尽くしている上に、技量も似たり寄ったり。
疲労だけが蓄積されていく。
「ふぅ、埒があかんな」
退くもならず押すもならぬ展開に痺れを切らし、サイファーが漏らす。
「!」
・・・サイファー、肘が見えている・・・
サイファーの様に突きを主体とする剣法では、肘を隠すのがセオリーだ。
突きに対しては、下段から肘を払うのが最も有効とされているからだ。
肘は攻撃の起点であると同時に、唯一の弱点でもあるのだ。
積み重なった疲労で、流石のサイファーにも隙ができた様だ。
無防備になったサイファーの肘を狙い、俺はこれもセオリー通り
下段から払いに行った。
剣筋を見極められぬよう、左掌を奴の顔面に突き出す事も忘れない。
「貰ったぞ、サイファー」

411:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/03 19:47:57 XbQmueFi
FF8の人うまいね。生意気に批評させてもらう事にした
地の文が続くが飽きさせない出来映えだと思う
もともとの映像を読み手が知ってるという助けはあるが、
それにしても戦闘の描写が巧みだ。映像がちゃんと頭に浮かぶ
きっと書き慣れた人なんだろうな
一人称小説の利点をうまく使えてると思うよ


412:FF8
05/11/04 09:40:01 lqCX/N5C
FF8-5

「甘いっ!」
叫ぶと同時にサイファーは半歩退がり、肘をたたみ込んだ。
俺のガンブレードは虚しく空を切り裂くのみ。
肘を見せたのは隙ではなく、誘いだったのか。
いかに疲労のピークにあるとはいえ、
こんな初歩的なフェイクに引っかかってしまうとは・・・

「かかったなスコール、隙だらけだぜ」
まずい。空振りしたせいで、俺の身体は大きく横に流れている。
体制を立て直す暇を与えまいと、サイファーが突きかかってくる。
先刻俺がしたのと同様、左掌で俺の視野を塞ぎながら・・・
いや、違う、これは!
「ファイアッ!!」
サイファーの左掌から火球が飛んでくる。
ブレードを翳し、かろうじて直撃は免れたが、衝撃で俺の身体は後方へ飛ばされた。

413:FF8
05/11/04 09:58:07 lqCX/N5C
FF8-6

「おっと、魔法は卑怯とか言うなよ、スコール。
これはあくまでも実戦を想定した訓練なんだぜ。魔法に対する備えを怠ってはいかんな」
勝ち誇ってサイファーが言う。
・・・サイファー、嫌な奴だ。
しかし、奴の言うことは正しい。実戦であれば、俺だって魔法を併用するだろう。
「スコール、これは備えを怠ったペナルティーだ!」
叫びながらサイファーはガンブレードを一閃させた。
ガンッ
額に衝撃が走る。
僅かに身を反らし、脳天への直撃は避けることができたが、
それでも額の辺りを大きく切られてしまった様だ。鮮血が滴り落ちる。
「どうした、まさかもう降参てわけじゃないだろうな。
さあ立てよスコール。
もっと俺を熱くさせろ!もっと俺を楽しませろ!」

・・・そこから先の記憶が俺にはない。
気がつくと俺は、医務室のベッドに横たわっていた。

414:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 10:11:33 n8KAPmDG
OPムービーでのスコールvsサイファーを極力忠実に描写しようと努力してみました。
私の意図が上手く成功していればいいのですが。

>>441さん
有難うございます。励みにして頑張ります。

415:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/04 12:29:04 4eU1kbE0
FF8作者さん、乙そしてGJ!
サイファーが小さいころ見た映画の主人公って、ラグナだよね?
ルブルムドラゴン相手にミニゲームした時の、あれだよね?
それで構えが似てるのか。はじめて気がついた。
原作でそういった描写あったっけ?見落としてたよ。
あっやべー、なんかむしょうにFF8やりたくなってきた。
数年ぶりにプレイしてみよっかな。

416:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/05 13:23:06 6KLYwSFD
>>415
アルティマニアに裏話程度に紹介されてただけだと思う。
勘の鋭い人ならプレイ中に気づくんだろうが、俺もアルティマニア読むまで気づかなかった。

417:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:45:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0247 4章 3節 山間(32)

山頂までには辿り着くための道中には一つの吊り橋が架かっている。
長年放置されていたのかその橋は酷く老朽化し、所々の木々が腐食し、足を載せただけで
崩れてしまいそうであった。
「やっぱりこれを昇らなきゃ駄目なんだろうな」
ぐっと息を飲みながら震えた声を口にするのはパロムだ。
「今更怖じ気づいたの?」
「別に……そんな事はないぜ。この程度の橋なんら問題ないぜ」
「ふーんじゃあ、あんたが一番最初に行く?」
「わっ! 分かったよ、そうするぜ」
そこまで言われたら黙ってわいられなかったのか。覚悟を決めたかのように歩を進み始める。
パロムが足を載せた途端、吊り橋はぶらりと左右へと揺れ動く。
「うわぁわーー! やっぱり怖い!」
猛烈な勢いでパロムはセシル達の元へ引き返してくる。
「あら、やっぱりね」
すっかり怖じ気づいたパロムを見て、意地の悪そうな顔でポロムが笑う。
「仕方ないだろう。怖いものは怖いんだから」
「僕が先に行くから。みんなは僕の後ろに付いてきて」
少しだけ見かねた様子でセシルは切り出す。
「本当か。ありがとよあんちゃん」
パロムはふうといった感じで胸をなで下ろす。
「じゃあ行くよ」
そっと足を踏み出す、またもや橋は大きく揺れ、歩を進めるたびにきしきしと音がし
今にも落ちそうである。

418:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 14:46:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0248 4章 3節 山間(33)

「二人とも僕に付いてきて。大丈夫、下を見なければ怖くないよ」
「でもよ……」
「ええい、何を怖がっとる! 早く行くぞ」
躊躇を続けるパロムの背を今まで黙っていたテラがぽんっといった感じで押す。
そのまま流されるようにパロムは橋に歩み出す。
「ちょっとじいちゃん! いきなり何すんだよ」
「いいから行くぞ。ここで立ち往生って訳にもいかんからな」
「分かったよ」
急かすテラの言葉を受け、それ以降は黙りきってしまった。

419:299
05/11/06 14:54:15 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0249 4章 3節 山間(34)

橋も終わりにさしかかった頃、前方にははっきりと浮かぶ影が一つ見渡せた。
「ようやく到着か……」
その進むごとにその影ははっきりとその形を露わにしていく。
「!」
その建物まで後少しと言ったところでセシルは一つの気配を感じ、後ろを振り返る。
「何だ! あんちゃん。そんなに構えて?」
だが、後ろには驚いた様子のパロム達が居るだけであった。
「いや、ちょっと悪い気配がしたような気がしてさ……」
「そうか? おいらは何も感じなかったな。ポロムは―」
ポロムが首を立てに振ろうとしたその時、橋がぐらりと左右に大きく揺れる。
「な……なんだよ」
パロムは振り落とされそうになり慌てて身を屈める。
フシュルッルーーー
揺れに合わせるかの様にまた山頂に向かうまでに聞こえたあの声が聞こえてきた。
「どうやら、奴はまだ生きていたようだな」
その声を聞いたテラが確信めいて呟く。
「よ……くも、私を殺してくれたな……」
返答ともつかぬ乾いた声が返ってくる。その声は聞き覚えのある―
「スカルミリョーネ! 何で?!」
確かに倒したはず、どうやって生きていたというのだ?
「グハハァーーアノ程度でこの私がぁーくたばるとでも。
死してなお恐ろしいこの土のスカルミリョーネの力を思い知るがいいっっーーー」
急に地面から現れた泥の様な物質が膨らみ始める。
中心には顔がかたどられていき、体からは大型の魔物の角ほどある牙が幾多も突出し始める。

420:299
05/11/06 15:00:01 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0250 4章 3節 山間(35)

「私をこの様な姿にしたお前らはただでは死なせんぞ! ゆっくりといたぶりながら
この私に刃向かった事を目一杯後悔させてやるぞ!」
言い終わらぬうちに、その歪んだ口から白い煙を吐き出す。
「まずいっ、口を塞げ!」
いち早くその正体に気づいたのかテラは皆に注意を促す。
しかし、その頃にはその煙、何かのガスはセシル達の体を蝕んでいた。
たちまちに体が鉛の様に言うことをきかなくなった。
「これは……」
パロムも苦痛に満ちたような呻きを上げる。どうやらこの症状は自分だけでは
ないのだろう。
「テラ……これは……」
この状況では口を開くことさえも相当な労力を要した。
それでも何とか声を絞り出してテラに訪ねる。
「吸った人間の動きを劣化、停止させるガスじゃ。このままでは……」
「この程度はまだまだ序の口、楽しみはこれからだぞ! 簡単にくたばってもらっては
こちらが困る。ハハハァァーー」
「ふざけんなよ。さっきからおいら達を見下しやがって……なめるなよ。ファイ……」
「ふん、遅いわ」
ガスのせいで緩慢な動作で呪文を詠唱しようとするポロムを牙でなぎ払う。
さらに傍らのテラも弾き飛ばそうともう一つの牙を振るう。
「く!」
その攻撃は決して致命傷となる程、威力の高いものでは無かったが、魔法も自由に扱えぬこの状況ではいちいじるしく
此方が不利であろう。
何とかして打開策を打ち出さねばいけない。

421:299
05/11/06 15:32:17 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0251 4章 3節 山間(36)

「ほらほらっ! どうした? いっその事、このまま麓まで突き落としてやろうか?
そちらの方が苦しまずに死ぬことができるぞ」
崖……
そも言葉に触発されるかのようにセシルは目を下に落とす。
吊り橋を構成する、板と板の隙間からはうっすらともやに覆われた森が見える。
ここから落ちたら一貫の終わりであろう。
「そうだ!」
眼下に見える風景を眺めなが、セシルにはある一つの考えが浮かんだ。
「みんな大丈夫か」
「ええ」
いまだに続く攻防の中ポロムが返答する。
「みんな僕の後ろ、つまり山頂の方まで下がって。この場を何とかやり過ごす方法があるんだ」
そこで一旦言葉を切り、皆の様子を伺う。皆、何を始めるつもりなのか疑問に感じているようだ。
「とにかく見ていて。後、テラ……少し協力してほしいんだ」
後退を始めたテラにセシルが訪ねる。
「僕が指定した場所へ魔法をうってくれないか。威力の低いやつで十分だから」
「それならおいらも手伝うぞ」
パロムが会話に割って入ってくる。
「それじゃあ、お願いしようか。念を押すけど詠唱に時間がかかる魔法だと撃つ前に
つぶされる可能性があるから……」
「逃げられると思うなよ」
話し込んでいる間にもスカルミリョーネはこちらに向かいだんだんとその距離を
詰めてきている。

422:299
05/11/06 15:34:40 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0252 4章 3節 山間(37)

「二人とも頼んだ!」
セシルが指定したのは橋の途中であった。
「いいのか、あんなところに?」
半信半疑ながらもテラは魔法を撃ち込む。勿論、すぐに撃てるくらいの極小威力のものだ。
次いでパロムもその攻勢に加わる。こちらもテラと同じ魔法を放ったのだが、テラとの経験の差か
僅かに遅れての加勢となった。
「よし、後退だ」
「逃がすか!」
執拗に追跡を続けようとしたスカルミリョーネであったが、セシル達に追いつくことは
できなかった。
橋の一部が急に音を立て崩れ始めたからだ。
「何だと?」
落下せぬように残った部分を掴み、這い上がろうとするがそこが大きなスキとなった。
「よし今の内に攻撃を重ねるんだ!」
セシルの指示が響いた後、テラとパロムの魔法―今度は容赦ない程でかい威力のものが
スカルミリョーネに襲いかかる。更に、セシルの暗黒波が追い打ちを駆ける。
「何と! 計られたのか。こんな古い手段にこの私が―」
この波状攻撃にはさすがの四天王の一人としても相当なダメージがあったようだ。
「おのれ……この私が貴様らごときに……! グ……バァァーー!」
限界がきたらしくスカルミリョーネは大きく体勢を崩し、橋から落下した。
その姿はあっという間に小さくなり、眼下へと消えていった。

423:299
05/11/06 15:41:34 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

「何とか……退けられた」
しばらくの間、下を見ていたポロムが息も絶え絶えと言った感じで声を絞り出す。
「ああ……」
同じく息を切らした様子のセシルが同意を返す。
「そういえば体がさっきよりもだいぶ軽くなったきがするぜ」
今更だと言った感じでパロムが体を動かしながら言う。
確かに先程まで体を支配していた不自由さは殆ど消え失せていた。
それでもこの山の空気は厳しいことこの上ないのだが。
「このガスの効果が薄れて来ておるのだろう。しばらくすればもう何とも感じなくなるはずじゃ」
「そうか。なら安心だ」
テラの説明を背に受けつつ、セシルは目前に見える建物に目を向けた。
それは遠くで見たときよりもさらに美しく輝いている。
「これが試練を受ける場所か……」
自分に課せられた試練。その終着点となる場所。
「でもこの入り口開くのか?」
見る限り建物の扉は堅く閉ざされていた。
強硬な鉄の扉はどんなに力を加えても開きそうにはない。
「ここまで来て、扉が開かないのかよ」
項垂れるパロムの傍らセシルが扉に手をかけようとした時―
「息子よ……」

424:299
05/11/06 15:44:45 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

どこか透明感のある、それでいて懐かしい声がセシルに響いてきた。
「誰だ! それに今何て!?」
息子―確かにそう聞き取れた。
セシルは孤児である。本当の両親というものの記憶を持ち合わせてはいなかった。
自分の中にある一番古い記憶を引きずり出してもバロンでの日々である。
「セシル。どうした?」
急に声を上げたのに驚いたのかテラが訪ねる。
「今、誰かの声が聞こえて―」
「そうか? 私には何も聞こえなかったのだが」
そこまで言ってポロムの方に向き直り返答を求める。
「私も聞こえませんでした……」
「おいらもだ」
合わせるかのようにパロムも首を横に振る。
「じゃあ僕だけに聞こえたのか……」
その時、今までびくりとも動かなかった扉が音を立て横に開いた。
「おいっ! 扉が開いたぜ……」
「どうなっとんだ?」
「行こう……」
戸惑う仲間達を尻目のセシルは歩き出した。
扉が開いたのは偶然ではない。試練が自分を呼んでいるだろう。
そのような確信を持った今のセシルには何ら迷いは無かった。
テラ達もいつもと違うセシルの行動に違和感を抱きつつも後を追い、
建物の中に消えていった。

425:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/11/06 16:43:22 q0N7rOgn
やっぱり4が好き

426:299
05/11/06 17:25:21 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0254 4章 3節 山間(39)

「お前が来るのを待っていたぞ……」
今度はよりはっきりと聞こえたその声は間違いなく外で聞こえた声だ。
「聞こえるかポロム?」
「いいえ」
そう言ってポロムは首を横に振る。テラも何も聞こえていないような雰囲気だ。
おそらくはこの声は自分にしか聞こえていないのだろう。
「あなたは……あなたは一体誰なんですか? それに僕を知ってるんですか!」
「我が息子よ……聞いてくれ。今、私にとって悲しい事が起きている。そして
その悲しみはこのままさらに加速していくだろう……」
セシルの疑問を余所に声は語り始める。ずっしとのしかかってくるような重みのある声に
セシルは質問を止め、聞きいってしまう。
「悲しみですか……」
「そうだ。そして今お前に新たなる力を授ける事になる。その事により私はさらなる悲しみに包まれることに
なるだろう。しかし、今はこの手段を用いるしかないのだ。否……私にとってこの方法しか思いつかないのだ。
お前にとって辛い試練になるであろう。だがお前ならきっと乗り越えられるはずだ……頼むぞ」
ふっとその声がとぎれるのと急にセシルの目前に剣が表れたのは殆ど同じであった。
「これは……」
古ぼけているがたいそう高名な剣であったのだろう。その格式高さは失われていない。
そして剣は滑り込むかの様にセシルの右手へと向かう。
その剣はまるで長年、苦楽を共にした愛剣かの様に、セシルの手へ馴染んだ。
「これが新しい力なのか……」
光り輝く剣を握りしめそんな事を考えていると―
突然、剣の光が増しセシル達の視界を奪った。
セシルにとってその光は何か暖かいものに包まれるかの感触であった。
光が弱まり、だんだんと視界が開けてくる。そして誰もが先程までと全く変わってしまった事に目を疑った。

427:299
05/11/06 17:31:19 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0255 4章 3節 山間(40)

「あなたは……セシルさんですの……?」
ポロムは目の前に立つセシルをまるで初対面の人にでもあったかのような顔で見やる。
「あんちゃんなのか!?」
二人が驚くのも無理がなかっただろう、今の自分に起こった事に一番驚いたのはセシル自身であったのだから。
「ああ……そうだよ」
水晶状の物質でつくられた床から反射して見える自分自身の姿をじっくり観察しながら、ゆっくりと口を開いた。
鮮やかな銀色の髪に悟りを開いたかの様な瞳。
そして白を基調とした様相は、先程までの暗黒騎士としての面影は翳りも感じられないほどであった。
「これがパラディンというものか……」
「やりましたわね! セシル様」
「これにて一件落着だな」
皆が嬉しそうに感嘆の声を上げる中、セシルは切り出す。
「まだ終わりでないよ。これからが本番だ」
そう言った後、ゆっくりと声がした方向へと振り返る。
「さあ……血塗られた過去と決別するのだ。今までの自分を克服しなければパラディンの
聖なる力は完璧にお前を受け入れないであろう。打ち勝つのだ暗黒騎士の力に……自分の力に!」
力強いその声が終わると前方に影が人影が現れた。ゆっくりと歩を進め此方へと歩いてくるその影は―
「昔のあんちゃん!」
「一体、どうなっとんだ……?」
紛れもなく暗黒騎士セシルであった。
「どっちが本物なんだ?」
パロムはきょろきょろと二人のセシルを見比べている。
「どっちかな……」
それはセシル自身でさえ容易に答えが導き出せる事ではない。ふいに暗黒騎士が剣を抜きはなった。同じくセシルも剣を抜く。
「セシル! 戦うのか?」
「ああ……」
「テラ、手を出さないでくれ……これは僕に与えられた試練。誰にも干渉される事なく片をつけたいんだ。

428:299
05/11/06 17:32:59 GDo6iYTT
それに今までの過ちを償うためにもこいつを! 暗黒騎士を倒す!」
大切な者を殺されたミシディアの人々、自分を導いてくれた長老、憎しみを堪え、自分を試すと言ったジェシー。
ここで誰かの助けを借りる事は彼らに対する完璧な償いにはならないであろう。そして何より自分自身が
納得しない。
「さあ、行くぞ。暗黒騎士よ……血塗られた運命。ここで断ち切る!」

429:299
05/11/06 17:35:53 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0256 4章 3節 山間(41)

地面を蹴り、暗黒騎士へと斬りかかる。
しかし、向こうは軽くセシルの太刀を受け流す。
それもほぼ確実にセシルに剣の切っ先を見切ってるかのようにだ。
「セシルよ……仮初めでなく本当にその力を手にしたければ剣を納めるのだ。
そして自分の罪を受け入れるのだ」
再び、ささやく様な声が頭に流れ込んできたのは、暗黒騎士の反撃を避け、後退した時だ。
セシルにはその意外な言葉を咄嗟には理解できなかった。にわかには信じられない思いで上を見やる。
目前には今まさに暗黒騎士が迫ろうとしているところだ。迎え撃たねば此方がやられるであろう。
「何故だ……」
目前に迫る自分の闇を振り払う事こそが今の自分に課せられた試練ではないのか。
少なくともセシル自身はそう考えていた。
「相手を倒すことだけでは決して暗黒騎士には勝てんぞ。いずれは闇に取り込まれるであろう」
確かに暗黒騎士の攻撃は幾度と続くが、そのどれもがセシルの動きを的確に分析し、全てを見据えた
かのように正確であった。
そして確実に彼の体から体力と気力を奪っていった。
「ここまでなのか……」
声の真意を理解できぬ自分では勝てぬというのか。この試練に散っていった先人達も教えを理解しなかった
為なのか。頭に様々な考えが浮かび、消えていく。
直後、暗黒騎士の剣先から黒い波動が走る。
今の疲弊しきったセシルではその攻撃を避けることはできなかった。いや、もしも充分な体力を
有していても無駄であったろう。幾多の暗黒波がセシルの体中を切り裂いた。
―暗黒騎士にとってセシルという存在は最もよく知る人物であり、身近な存在であり、その逆も然りであった。
体勢を崩し大きく倒れ伏すセシル。後方には仲間達が心配するかの様な声をかけていたが、既にセシルには
聞こえていなかった。
それでは僕はどうしたらいいんだ……。
最後に浮かんだその思考も次第に切れ切れとなりセシルに意識は薄れていった。

430:299
05/11/06 19:11:49 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0257 4章 3節 山間(42)

だが、墜落する意識化の中で自分に話しかける声がまた一つ。
それも先程までの声ではない。何処か曇りのある声だ。
「どうだ。やはりお前にはできなかったんだ……」
「誰だ……?」
しどろもどろな口調でセシルは訪ねる。
「暗黒騎士……つまりはお前自身と言うことさ……」
つまり先程まで自分が相まみえていたものか。でも、何故すぐに止めを刺さない……
自分はこの試練に敗れ去った。つまりはもう用済みなはず。
「お前にはほとほと呆れたからさ。セシル=ハーヴィ」
見透かした様にその暗黒騎士は言う。
「正しき心を得るだの何だのと行っておきながらこの体たらく。所詮はお前もその程度の覚悟しかなかった
のだな。その癖、中途半端に国家などに背いて……こんな事ならカインの様に自分に素直になった方が幾分か
ましだったのかもな」
暗黒騎士の嘲弄に近い言葉に反論する言葉を今のセシルは持ち合わせていなかった。
「もういいよ……さっさと殺せよ。それが君の成すことなんだろ……」
そうさ……もうどうだっていい。暗黒騎士の指摘は全く持って正論だ。
所詮一人ではバロン等の強大な勢力に立ち向かう事などできやしない。
それに幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとってはパラディン等一生届くことのない高みの存在。
このようなザマだ……今更、ミシディアに戻っても皆自分を蔑むだろう。ジェシーも長老にも申し訳が立たない。
そして仲間達にもなんて言えばいいのだ……
もういい……自分の様な中途半端な人間は排除されるべきなのだろう。
だんだんと喋るのも辛くなってきた、いっそ目を閉じて、意識を闇深くに沈めよう。すぐに楽になれるだろう……

431:299
05/11/06 19:20:08 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0258 4章 3節 山間(43)

「セシル!」
遠くで誰かの呼び声が聞こえた。いや、確証はできない。
「セシル……」
またもやだ。そして今度は少し悲しそうな声。
更に自分を呼ぶ声が幾多にも増える。そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだ。
そしてその中でもセシルの心に深く刻まれたものの声が聞こえてきた。
リディア、ギルバート、それにヤンの声だ。
そうか彼かはみな僕と行動を共にした。そして……
最後までは考えたくは無かった。ただ、確実に言える事はその仲間達は誰もが自分よりも
生き長らえるべきはずだった者達だ。
ヤンには信頼される仲間達が沢山いたし奥さんもその帰りを待っているであろう。
その奥さんの耳にもバロン域の船が消息を絶った事は耳に入ってきてるはずだ。その知らせを聞いた時彼女は
どう思っただろうか?
ギルバートも亡き父に代わり国を率いなければならなかった存在。それなのに……
リディアはまだ幼かった。そしてその少女を守ると自分はオアシスの村で誓ったはず。たった一人の人間を
守ると言う約束さ自分は果たせなかったのだ。つくづく情けない。

432:299
05/11/06 19:24:58 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0259 4章 3節 山間(44)

謝罪に浸る間もなくセシルの耳に入ってくる声色が変わった、そしてその内容もなにやら自分に
怒っているかのようであった。
「貴様よくここに来れるな!」
「あなたたちのせいで私たちがどれだけ苦しんだか……」
「バロンの…暗黒騎士だー!」
憎悪と恐れに満ちたその声は紛れもなくミシディアの人々である。
そしてその声をセシルは黙って聞いていた。
そうだ。自分は国に背けずに彼らを犠牲にした。その行為は我が身の可愛さ
余っての自己保身に過ぎない。こうして自分の過去を振り返っみれば、つくづく
自分はどうしょうもない人間だ。

―あなたはそんな人ではないわ!―

絶望に暮れるセシルを叱咤するかの様な声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だ。そう随分前から聞いていないがその優しい声は何よりもセシルを癒し、勇気づけた。
だがそれが誰の声だったのかさえ今のセシルには曖昧になってきていた。
ごめんね……思い出せなくて……そうセシルが心で謝ろうとしたとき……

バロンのセシルは―そんな弱音……吐かないはずよ!―

―私の……私の好きなセシルは―自分を蔑むような人間ではないわ―

433:299
05/11/06 19:26:16 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0260 4章 3節 山間(45)

その叫びがセシルの意識の完全に現実へと呼び覚ます。
「ほう……まだ起きあがれるだけの力が残っていたのか」
暗黒騎士の声がする。
ありがとうローザ……僕はまだいける!
彼女がいなければ自分はここで倒れていただろう。
「ああ、まだまだだ」
喉に突き付けられた暗黒騎士の剣を払い立ち上がる。
「だが、お前がこの試練の本当の意を知らん限りは何度やっても同じ事だ」
「何となくだけど……分かったようなするよ」
「何!」」
暗黒騎士の声に珍しく動揺の色が混じった。
「そうさ。答えはそんなに遠くにはなかった。むしろ僕にとって限りなく近いところにあったんだ。
それに今まで気づかなかったなんて……」
「成る程。それで……」
「君がさっきから僕を殺さなかったのは躊躇っていたからじゃなくて、できなかったからなんだ
僕が君に決して勝つことができないように」
「ほう……してそれは何故だ?」
「君は僕という存在に於いて切っても切れない関係にあるからさ」
身じろぎし始める暗黒騎士を見て更に続ける。
「パラディンとは聖なる力、暗黒騎士は闇の力。確かに相反し合うもの同士。だが、この教えは決して
ただ、パラディンとしての力を得る訳じゃない。自分という存在の全てを肯定する事にあるんだ!」
「ふふ……上出来ではないか。気絶している間、一体何があったのかな。まあ、そんな事はどうでもいい。
その悟りを開けたならもう私は用済みだな」
「否、あなたはこれからも僕と一緒に常に歩き続ける。唯、今までどちらが表に出ていたかだけの違いだ」
「ハハハーーーッ! そこまでの考えがあったか。では一緒にさせてもらおうか」
そう言ってセシルの手を掴む。そして吸い込まれるかのようにそのまま消えていく。
「いずれお前が自分を見失ったら再び私が現れるかもしれん、それだけは覚えておけ―」
その言葉の最後の方はもう殆ど聞き取れなかった、しかしもうセシルには言わなくても分かるであろう。

434:299
05/11/06 19:28:10 GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0261 4章 3節 山間(46)

「セシルよ……ついにやったようだな」
暗黒騎士が消え去った直後、あの懐かしい声が聞こえてきた。
「私も一部終始を見届けさせてもらったが。見事なものだ」
「いえ……僕だけの力では到底無理でした……」
苦楽を共にした仲間達やローザが居てくれてこそだ。
「これから私の最後の力を託そう。今のお前にら使いこなせるはずだ。それにお節介かもしれんが一つ言葉を……正義よりも正しい事よりも大切な事がある。
この試練を乗り越えたお前になら分かるはず」
「分かりました……」
「それでは私はもう消えよう、行けっ! セシルよ。ゴルベーザを止めるのだ……否止めてくれ。
お願いだ……」
「待って下さい!」
この声にはまだ聞きたい事が沢山あった。自分の事を息子と言ったのは何故だ。
それにゴルベーザの事も知っているようであるが…
だが、もう声からは何も返事は帰ってこなかった。がらんどうとした部屋にセシルは立ちつくしていた。
「やったなセシル」
声が聞こえなくなったのか、テラ達も此方に近づき祝福の言葉を投げかけてくる。
「すごいわ! セシルさん」
「あんたやっぱり……」
「シイッ! それはまだ言わない!」
パラディン姿のセシルに魅入るかの様に見つめていたポロムの顔が少し困ったような表情に変わり、
パロムを諭す。
「でもよポロムさ……」
またもや言い合わそう二人の中でもセシルは先程までの出来事―試練の様相を何度も反芻していた。
「あの感覚、不思議と懐かしかった……あの声は一体?」
その疑問に答える者は今は誰もいない。しかし、自分が今からこの先を進んでいく中で再びこの声の主と関わり
を持つだろうとセシルは確信していた。


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