かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3at FF
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3 - 暇つぶし2ch129:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:37:17 MmLUBC8j
FF5  41  漂流

さっきの戦いから1、2時間が経ち、辺りは暗くなり、海は鮮やかな青から漆黒の闇のように変わっていた。
主を失った船はただその波の流れに身を委ねるしかなかった。

「ファリスは……」
「ふむ。今は、そっとして置いてやるのが良いじゃろう…」
バッツはシルドラを紹介するファリスの生き生きとした顔を思い出していた。
もし自分があんな状況になったら?自分も良き『相棒』がいる。
ボコを待たせっぱなしにしている事を後悔し、反省し、何事もないよう祈るしかなかった。

ファリスはただ黙って俯いていた。自分の『兄弟』同然のシルドラが目の前で、いなくなった。
波に飲み込まれてゆくシルドラの悲しそうな瞳をファリスはただ見ているしかなかった。
「ファリス…」
レナはそんなファリスを前にしてどう声をかけてやればいいか分からなかった。
そんな時、ふとファリスのある言葉を思い出し、それに倣ってファリスに声をかける。
「大丈夫よ…シルドラは、きっと生きてる…。絶対に死んではいないわ…」
ファリスはただ下を向いて黙っていた。

130:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:39:54 MmLUBC8j
FF5  42  船の墓場

一夜が明け、バッツ達が目を覚ました。ここがたまたまウォルスだったら良いのにな、なんて期待してみる。
甲板に出てみると向こう側まであたり一面、船の山。しかも、どれも完全に朽ちている。
当たり前だが、淡い期待は外れた。
「船の墓場か…」
「なんだ?その物騒な名前は?」
ファリスは海賊をやっていただけあって知っていた。
「漂流した船が集まって出来たアンデットの巣窟だ」
「うわ、そりゃめんどくさいなぁ」
トゥールを経ってかなりの時間が経過している。バッツはもうそろそろ町や村で休みたかった。
突然のアクシデントにより、ウォルスにいるどころか、よく分からない場所に来ている。
バッツはテンションが下がるのを感じ、気を引き締めなおした。
「とにかく、ここを脱出だな」

レナはファリスがいつも通りのファリスになって安心していた。
シルドラを一時的にでも失った彼のショックは大きいはずなのに。

スケルトン、カルキュルスル、アンデットラスク、サイコへッズと
得体の知れない不気味な魔物もバッツ達は労せずサクサク倒してゆく。
昨日のカーラボスと比べたら当然の事だ。
そうして順調に進んで行くと、途中からどっぷりと海水に浸かっている部分に差し掛かった。
「あ、こりゃここ通らないと駄目っぽいなぁ」
「仕方ないのう」
「じゃあ、行きましょう」
「ぬ、濡れちまうなぁ……」
4人は濡れるのは嫌だが、ここを抜ける為にはしょうがないとしぶしぶ自分に言い聞かせていた。
「(…ファリスは動揺が大きいのう…なんでじゃろう?)」
ガラフはファリスだけが目がやたらと泳いでいるのを見逃さなかった。
「(…もしかして、やっぱり…)」
ガラフのあるひとつの疑惑は核心に迫りつつあった。

131:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:41:20 MmLUBC8j
FF5  43  ファリスの秘密

「お、やっと休めそうな所に来たようじゃ」
ガラフの顔が明るくなる。今までの朽ちていてボロボロだった場所に比べ、ここは比較的しっかりしていた。
「じゃあ服を乾かすか。ずぶ濡れだもんな」
かなりの間海水に浸かった所を歩いてきた為、全身が濡れている。
「私は隣の部屋で乾かすわ。見ちゃ駄目よ!」
レナが言葉を強める。
「だ~いじょうぶだって。覗きやしないよ」
バッツが少し苦笑しながらそう答えた。

「火が必要だなぁ。ファリス、ファイアの魔法をしてくれ」
しかしファリスは黙って立っているだけだ。
「おい、ファリス?どうした?」
バッツは不思議そうに尋ねる。
「え?あ、ああ、ファイアね、はいはい、………ファイア!」
そうしてあたたかい火がバッツとガラフを照らす。
「おー、あたたかいのう…」
「ファリスも早く乾かせよ!そのままでいると風邪引くぞ!」
バッツが当然のようにファリスに呼びかける。
さっきからファリスは積極的に服を乾かそうとしていない。
「い、いや、俺はこのままでいいよ…」
ファリスがあきらかに動揺しながら答える。声の調子もいつものファリスじゃない。
「(…やはり…)」
トルナ運河の戦いから続いたガラフの疑惑は確信に変わる。
「な~に言ってんだよ!裸になるのが恥ずかしいとか?そんな事言ってらんないだろう?」
バッツが調子よくそう言いながらファリスの服を脱がそうとする。
「だから、良いってば!」
ファリスは言葉を強くする。
「良くは無いっての!さっさと脱げって!」
「いいからさぁっ!」
押し問答が続いていた。

132:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:42:01 MmLUBC8j
FF5  44  ファリスの秘密2

バッツとファリスの押し問答が続いている中、ガラフが切り出した。
「もういいじゃろう?ファリス…」
ガラフが優しくファリスに問い掛ける。バッツは一体何のことか分からない。
ファリスは目を合わそうとしない。バッツは不思議そうにファリスを見る。
「何言ってんだ?ガラフ?」
「ああ、バッツ…これはわしの勘じゃがな…」
ガラフはゆっくりとした調子で静かに語る。
「ファリスは、多分…」


「女じゃ」







133:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:43:16 MmLUBC8j


「ええええぇえぇぇぇえええぇぇぇぇええぇぇえっっ!!!!!」
バッツが今までに無いぐらい驚く。
それも当然の事だ。ファリスは男だと思っていたからだ。
「どうしたの?」
服を乾かし終えたレナも戻ってきた。
当の本人はさっきからずっと一点を見つめ、動かない。
「自分の口から話してくれ…どうしてお主がそんな風になったのかは、わしにも分からん」
ガラフは相変わらず優しい口調だ。
暫く間をおいてファリスが話し始めた…

「確かに、俺は女だ。でも小さい頃海賊に拾われたから、男のフリをしてたんだ…」
「なんでまた?」
「だって、海賊は男の世界だ。いくら拾われたとは言え女じゃ、馬鹿にされるに決まってるからな…」
ファリスは初めて自分を語りだした。
「(今まで素っ気無い風だったのは、隠し事があったから…?)」
レナはそう思った。それとも、本当の性格なのか。それは、これから分かる事。
「ま、まぁ別にいいよ、どっちでもさぁ。ファリスがファリスである事に変わりないだろう?」
かなりの驚きを見せたバッツが慌ててフォローの言葉をファリスにかける。
「でもなあ!女だからって馬鹿にすんなよ!」
「大丈夫だって。女だからって馬鹿にすること事態無いよ」
バッツはフォローの言葉を続ける。
「よし、もう寝るぞ!」
そう言ってファリスは部屋の隅にあるベットに寝転んだ。

134:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:43:56 MmLUBC8j
「でもさ、ガラフは何でファリスが女って分かったんだ?」
バッツがファリスに聞こえないように小さく話す。
「よく考えてみぃ。今までの事を」
「今までの事?」
「そうじゃ。トゥールで酒場に居るファリスに情報を伝えようとしたら…」
「そう言えば…」
バッツは思い当たる節があった。あの時ときめいた女性はファリスだったと言う事だ。
「それに、運河の魔物は女しか狙わないと言う情報もあったしのう…」
「え?そんな情報あったっけ?」
やはり、バッツはすっかり忘れていた。そのことにガラフは少々呆れ気味だった。

135:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:45:52 MmLUBC8j
FF5  45  船の墓場2

ファリスが女だったと言う事実発覚から一夜。
また、いつもの様に変わらない4人の変わらない旅が始まった。

途中、海賊が遺していったと思われる、貴重な世界地図を手に入れるなど、収穫もあった。
そして、やっと出口が見えてきたと言う所で辺りに不穏な空気が立ち込める。
「なんか、嫌な感じだな…」

辺りが暗くなると、そこに突然1人の女性が現れた。
「バッツ…こっちへおいで…」
それはバッツの母だった。バッツは何も言わず母の前へゆっくり移動していった。
「おい!バッツ!あきらかにおかしいぞ!バッツ!」
ガラフの呼びかけにもバッツは応じない。
そしてさらにタイクーン王まで現れた。
「こっちへ来なさい…」
レナはその言葉に誘われるように父の前に移動してゆく。
ファリスもレナを気にかけついていってしまう。
「おい、バッツ!レナ!ファリス!おかしいと思わんのか!」
ガラフは3人に大声で呼びかけるが反応が無い。
そこへ金髪の女の子が現れた。
「おじいちゃん、こっちに来て…」
「誰じゃ…?思いだせん…」
ガラフは記憶喪失の為、目の前の女の子を誰か認識する事が出来なかったのだ。

そこへ、青いドレスに身を包んだ謎の女が現れた。

136:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:46:42 MmLUBC8j
「命を吸い取られるがいい…私達の仲間になるのだ!」
「くそっ!やはり罠だったか!おぬし、何者だ!」
「ほう…私の術にかからぬとは…」
その女は少し意外といった表情でガラフを見る。
しかし、すぐに余裕の笑みを浮かべて自己紹介した。
「私はセイレーン。3人の命は貰った。邪魔をしなければ、お前は返してやろう」
「そうはいかん!」
冷静にとんでもない事を言い放つ。ガラフはセイレーンと戦う決意をした。
「何故、その3人を守る?」
セイレーンがガラフの気持ちを弄ぶかのように嘲笑いながら尋ねる。

「わしの…仲間だからじゃ!」
ガラフはセイレーンに力強く言い放った。
「惑わされるな!みんな目を覚ませ!」
そう言ってガラフは3人の頬を強く叩き、文字通り叩き起こした。
気がついた3人はガラフの方へ歩み寄る。
「「「ガラフ!」」」
「礼は後じゃ、奴が来るぞ!」
「おのれっ!覚悟!」

137:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:47:41 MmLUBC8j
FF5  46  船の墓場3

「スロウ!」
戦闘に入ると突然、セイレーンが魔法を唱えた。
「うっ?体が重たい…」
魔法をかけられたファリスがそう呟く。
「どうやらその名の通りの魔法の様じゃな」
「とりあえず、攻撃しまっせ!うりゃっ!」
『ズシャァ!』
またもバッツが最初の一撃を放つ。まさに、猪突猛進。後先を全く考えてない。
「うっ!」
セイレーンがよろめく。
昨日のカーラボスとの戦いでは得られなかった手ごたえにバッツは意外な感じを受けた。
「ガラフ、一気に行くぞ!」
「ああ、分かっておる!」
ガラフはすばやい動きで拳をお見舞いする。
『ドガガガガッ!』
「うぅ!」
またもよろめくセイレーン。ガラフはこの勝負が案外早く決着する事を予想した。

138:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:48:45 MmLUBC8j
「…ファイア!」
動きが鈍ったファリスがようやく魔法を唱えた。
『ボウゥ!』
しかし、全く効いていない様だ。
「ふっ、私に魔法は効かないよ!」
挑発するセイレーン。しかし、直接攻撃は効いており、その顔に余裕は無かった。
「せっかく、唱えたのに…」
ファリスは落胆した。次の攻撃も、いつもの倍以上の時間がかかってしまうからだ。

「えいっ!」
『ボカッ!』
戦闘向けじゃない白魔導士のレナでさえ、フレイルでの攻撃は中々の威力を見せた。
「おのれ…やはりこのままではキツイか…」
セイレーンはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
「バッツ!あれは!」
「な、なんだ!?」
セイレーンの体の色が見る見るうちに変化していったのである。
またしても、毒々しい赤色だった。

139:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:49:37 MmLUBC8j
FF5  47  船の墓場4

赤い肌へと変貌したセイレーンはガラフに近づき、ぎゅうっと抱きしめた。
「うっ?ぐぁぁっ!」
「ガラフ!大丈夫か?」
ガラフはかなりの傷を負い、さらに毒にかかってしまった。
「う、わしを気にかけるぐらいなら早く奴を…倒すのじゃ…」
ガラフは今にも倒れてしまいそうだったが、
モンクの特徴でもある体力の多さに助けられていた。

「くっそー、さっさと倒れろ!」
バッツが気合を入れて斬りかかる。
『ザシュ』
しかし、さっきより手ごたえが無い。姿が変わり強さも増したのか。
バッツはそう感じた。
「ちッ…何か奴に弱点はあるのか…」
「…姿が変わったのなら、もう一回やってみるか…」
ファリスは呟く。さっきは魔法が効かなかった。もしかしたら、今回はいけるかもと思ったのである。
スロウで動きを鈍らされてる分、考える時間がたくさんあった。
しかし、まだ動きが鈍いままだ。
「…もうちょっとだな…」
ファリスは歯がゆい思い出自らの体を動かしている。

140:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:50:59 MmLUBC8j
「ぐあっ!」
「きゃぁ!」
一方、残りの3人はレナの回復魔法でしのぎながらも防御力の高まった相手に打開策を見つけられないでいた。
「キリが無いな…」
「しかし、奴の体力も無限なわけあるまい…」
ガラフはまだ毒に犯されたままだ。それでも、セイレーンを倒すべく攻撃の手を緩める事は無い。
「ホラホラ、どうしたい?さっきまでの威勢は何処へいったんだい?」
打つ手無しのバッツ達を笑い飛ばすセイレーン。
「…ファイア!」
そこへまたしてもセイレーンへ炎が飛んでいった。
「ファリス!炎は効かな…」
レナがそう忠告しようとしたその時だった。
「ぐわあああぁっ!」
「え?」
そう、さっきは全く効かなかったファイアが今回はまともに効いたのである。
「…よっしゃ!…どうやら、、、変化して、、、弱点が見えた、、、ようだな、、、」
ファリスはスローなままそう言ってしてやったりの笑みを浮かべる。
「いいぞ!ファリス!」
バッツはファリスに威勢のいい言葉をかける。
そして、さらにレナが閃く。
「(…もしかして…)」
そして閃いた後すぐに魔法をかける。
「ケアル!」
それは、回復魔法だった。しかし、味方にではなくセイレーンに向けてかけていた。
「お、おい、相手を回復させんなよっ!」
バッツが慌てて止めに入る。
「いや、これで良いはずよ…」
レナが慎重に成り行きを見守る。
「う?力が、吸い取られていく…?」
セイレーンは一気に大量の体力を奪われて焦った。
「まさか、あいつ、アンデッドなのか?」
「ええ、赤い時は、そのようね」

141:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:51:36 MmLUBC8j
FF5  48  船の墓場5

「ばれてしまったか…やむをえん!」
セイレーンはまた元の姿に戻った。アンデットと言う事がばれてしまったからに他ならない。
「もとの姿に戻った!チャンスだ!」
バッツはすかさず剣で斬りつける。
『ザシュッ!』
「ぐあああああっ!」
どんどんセイレーンの体力が無くなってゆく。もう、こうなれば勝負は決まった。
「ふー、お主、今までで一番手強い相手じゃったぞ… だが、これで終わりじゃあっ!」
『ドカドカドカドカッ!』
毒に犯されたままのガラフが渾身の拳を喰らわす。
「ぐあああああああああっ!こんな事が…!!!」

その言葉を最後にセイレーンは息絶え、消え去った。

142:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:53:06 MmLUBC8j
FF5  49  船の墓場6

「はぁー、やっと倒したかぁ…」
バッツは喜ぶ気力もなくなっていた。それほど強い相手だったからだ。
「でも、回復魔法で体力が奪われるなんて…」
アンデットの皮肉さをレナは感じていた。

「それにしても、あの幻から目を覚ましてくれたガラフに感謝しなきゃ、だな」
「なーに、たいしたことは…しと、らん…」
そう言いかけてガラフは倒れた。まだ彼の体には毒が残っている。
「ガラフ!」
「大丈夫か!」
ガラフを心配するレナとファリス。
「あ、そうだ」
思いだしたかのようにポケットから毒消しを取り出し、ガラフに与えるバッツ。
ガラフはすぐに毒が消え、元気を取り戻した。
「ふー、やっと楽になった…と言うより、なんで戦闘中に毒消しを使わなかったんじゃ!?」
「え、だって『わしの事よりあいつを倒せ』とか何とか言ってたじゃない」
「そりゃ、そうじゃが…仲間がピンチなら真っ先に助けんかい!」
ガラフは捲し立てる。さっきまで毒に犯されていたとは思えないほど、元気な口調だ。
「まぁまぁ、今回はガラフのおかげって事で…  ありがとうな」
バッツから出た意外な言葉にガラフは動きが止まり、照れくさそうに笑みを浮かべた。
「あ、照れてるのか?」
「いや、照れてなんかないわい!」
ガラフはそう言って照れてることを隠した。
それが返って照れていることを強調してしまい、バッツ、レナ、ファリスは自然と笑った。
「お、おい、笑うな!もうそこが出口じゃ。さっさとこんな所抜けるぞ!」

こうして一行はやっと船の墓場を脱出した…

143:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/18 20:53:40 MmLUBC8j
はい、今日は以上です。かなり多い…

144:評
05/09/19 12:19:55 MFVaZqkR
平坦で単調。
盛り上がりに欠ける。
もっとメリハリをつけるといい。
ストーリーをダラダラと追っかけてるだけでは駄目。
大胆な割愛や逆順、回想など、時系列に拘らない工夫が必要。

視点がぶれすぎ。
キャラを等しく扱ってるせいで、キャラ立ちが弱く、ぼんやりした印象。
特定のキャラの視点を貫くなどした方が読者を引き込みやすい。
誰がどこまで知っているのか、どんな情報・感情を共有してるのか、
相関図を作ってハッキリさせると良い。

ともかく乙。
続きを期待している。

145:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/19 14:20:14 EWHcgQJV
なんだか手厳しい…
>>FF5書きさん、お疲れ様!
うーん、見方を変えると、>>144の意見も確かにそうなのかも
しれないけど、「特定のキャラへの思い入れが」が見えないのは、
書き手としてはいいことなのかもしれない。
(前スレ最後で>>433のFF6で荒れたのも、多分、これが原因かと思う。
私は、別に>>433がそうだったって言ってるわけじゃないけど)
でも、なさ過ぎると、確かに流れるように読んでしまうかな。

あとは、>>144の言うとおり、もう少し、メリハリがあれば、いいかな?
割愛・逆順・回想など。
(>>144、きつい事書いてるなあと思いつつ、指摘自体は的を射てるなあ)

でも、お疲れ様。
続き楽しみにしてます。

146:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/19 17:35:53 yQrKwAFX
まあ厳しい感じはするけど俺も>>144に同意かな。

とにかく、量を沢山書くことより練りこまれたストーリーを作った方がいいかと思われ。

147:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/19 18:00:10 WuFSwQYA
キャラへの思い入れは必要だろう。要は物語のバランスの問題だろうけど。
なんにせよFF5書きさんには頑張ってもらいたい。ここはまったり進行だし。

148:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/19 22:39:19 qwnqRUuK
 一人で書いている分、粗が目立ちやすいというのはあるな。


149:144
05/09/20 10:44:20 zVmScoaX
申し訳ない。
自分は創作文芸板の住人で、あちらの板のノリでコメントしてしまった。
あっちの板は作家志望が集まって、作品を発表&互いに批評しあうというスタイルなんだけど、
その雰囲気をこちらに持ち込んでしまったのはこちらのミスだ。
荒らす意図はさらさらないが、結果として荒らしてしまった。
重ねて謝る、本当に申し訳ない。

150:FF5書き ◆ujT2O/oVh6
05/09/20 13:35:57 D/StrHTN
>>149
ご指摘どうもです。
駄目な所は自分じゃ分からないですし・・・
メリハリがないのは流れを把握する為、ゲームと同時進行で書いていたからかもしれません。
あと、別に荒れていないですよ。

ただ、正直、自分が今まで書いて来た以上のものをこれから書くってのも難しいです。
今まで書いてきた感じのものが自分の精一杯なもので・・・

なので、無責任かもしれませんが、他の書き手さん募集します。
一応このスレはリレー形式でやるってのもありますし。

なんか自分勝手で、読んでくれてる方には大変申し訳ないです。
いままでちょっとでも読んでくださった方、大変感謝です。
では。


151:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/20 18:34:49 viZzpjSV
>>149
別に問題ないと思う。このスレだって「真面目」に創作していくコンセプトなんだから
質を追求するのはむしろ必要なはずだ。

いや、偉そうでごめんなさい。作者陣乙です。

152:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/20 19:36:35 Vhs/OY+L
>>150
てゆーかゲームまんまのセリフ回し変えて擬音無くせばかなり化けると思うよ
諦めないで頑張って

いやマジで

153:299
05/09/22 01:23:03 ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0235 4章 3節 山間(20)

「何者だ!」
テラはその影に向けて疑問を言い放った。
急遽。姿を現した影は、一見すると粗末なローブを来た男の様に見えた。
いや、男とは言い切れないかったかもしれない。
何故なら、対峙したこの男からは生きている感じがまったく感じられなかった。
まるで冷たい死体が突然動き出したかのように冷徹な雰囲気であった。
「いかにも……私はゴルベーザ様に使える四天王の一人、土のスカルミリョーネ。
暗黒騎士とその仲間達よ……貴様達の息の根を止めに来てやったぞ!」
テラの疑問を悟ったかの様なタイミングでその男―スカルミリョーネは丁重に自己紹介を始めた。
「ゴルベーザ……」
やはり自分を……狙っているのか。でもどうして?
もしかするとファブールに自らが出陣してきたのも指揮をとる為でなく、セシルに会いにきたのかもしれない。
バロンを手にするだけなら、一介の暗黒騎士―それも国を追われたものなどを
いちいち相手にするのは何故だろう? ここまで固執するのには理由があるはず……
「おい、いいからそこをどけろよ! おいら達は急いでるんだぞ」
思考に浸るセシルをよそにパロムはローブの男へ抗議をする。
「ふふふ……パラディンの試練を受けるつもりだろ。だが、そうはさせんぞ。
ふふふ……」
「無視すんなよ! 何が可笑しいんだよ」
高笑いを続けるスカルミリョーネに頭に来たのかパロムが声を荒げる。
「ふふふ……ははははは……」
「くーーー何なんだよ!」
「パロム! 危ない」
地団駄を踏むパロムに突如、側面から何者かが飛びかかってきた。

154:299
05/09/22 01:24:19 ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0236 4章 3節 山間(21)

「え……わっ!」
襲いかかってきたのはアンデットであった。腐食し、今にも崩れ落ちそうな腕をパロムに叩きつけてくる。
咄嗟に横に飛に回避しようとするが、振り下ろされたではポロムの脇腹をかすめた。
そのままパロムはドサッと勢いよく地面に倒れ込んだ。
「大丈夫!」
「ああ……何とか。くっ!」
慌てて駆け寄るポロムを安心させるかのように口を開く。だが、ダメージを負った脇から血が流れ始めている。
「じっとしてて、結構な傷よ」
ポロムは直ぐにでも立ち上がろうとする彼の体を押さえ白魔法の詠唱に入る。
「はははーーーっ! 思ったよりも素早いのだな」
「あったりめーだよ! いつも長老に追い回されていたからな。逃げ足だけは誰にも負けねえ……ぜ…」
勇んで言葉を返すパロムだが、最後の方は言葉にならなかった。顔は青く、かなりの無茶をしている事がうかがえる。
「じっとしてるんだ、パロム。こいつは僕らで何とかする」

155:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/22 01:25:08 ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0237 4章 3節 山間(22)

「さて……まだこんなものではないぞ」
そう言ってスカルミリョーネが指を鳴らす。途端、音を待ってましたといわんばかりに岩陰からさらに数人のアンデットが現れる。
「パロムを襲ったのはそいつらか!」
視点の定まらぬ虚空の目をみやりセシルは確信めいた様子で呟く。
「ふふ……察しがいい」
「でも……何故?」
道中、セシル達は何度もこの山の霊気に取り憑かれたアンデット達と戦ってきた。
そのモノ達の動作はいずれも緩慢で特に苦戦する事もなかったのだ。
しかし、先程パロムを襲ったアンデットの動きは目を疑うかのような速さであった。
「教えてやろうか。このアンデット達は私が直接指示を出している。本能だけで行動する
唯のアンデット達と一緒にすると痛い目をみるぞ」
セシルの疑問を感じ取ったのかスカルミリョーネは説明する。そして一息ついて、最後にこう付け加える。
「さて、暗黒騎士よ……その剣では私のアンデット達は倒せないよ。どうするかな?」
「!」
今まで心の何処かに置き去りにしていたものを暴かれた気分になった。
セシルは鞘に納められ、静かに佇む相棒を見やった。
巨鳥をも一太刀で息の根を止めてしまうデスブリンガーだが、やはり暗黒剣である。
生なきものたちには全くと言っていいほど効果がない。
「ふふ……どうするかな……」
ローブの奥、誰も伺い知る事のできない口が密かに緩んだ。

156:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/22 09:35:34 hQwcZNY4
299氏

GJ!!

157:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/23 00:44:55 Chvfp8RG
>>299
いいなぁ、書こうと思ったんだけど、
実際書くとなるとかなり難しいよね。乙でした。
>>五書き
他の書いてる人のもみながらがんばって。
書く量がかなり多いから、楽しみです。
>>433
前スレで色んな意見でたけど楽しみにしてる人はいっぱいいると思います。

158:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/24 21:33:39 qQjPCOmz
5の続き書いてるんだけど出来たら投下してもいいよね。
ちなみに前書いてた方とは違う者です。
ヽ(;´Д`)ノ甘口評価ヨロスコ

159:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 11:51:56 ZzThdVbW
DQ8-1 プロローグ1

トロデーン王国。
北東の大陸のほぼ全てを領し、トラペッタ、リーザス、ポルトリンクなどの街や、
南部にある砂漠地帯を含む、広大かつ強大な王国だ。
俺の名はエイト。
王国近衛軍の末端に籍を置いている。
王国に事あらば、王の直轄軍として戦場を駆け巡る身だが、この平和なご時世、
やることといえば王都トロデーン城の哨戒や王族の身辺警護くらいのものだ。
「近衛兵エイト、どこかっ?」
遠くで俺を呼ぶ声がする。まずい、鬼軍曹だ。
「星の数より飯の数」と言われる軍隊にあっては、軍属30年という経歴は圧倒的な存在感を持つ。
貴族出身のエリート中隊長ですら一目置く存在だ。
「エイト、参上しましたっ。哨戒任務、異常ありません!」
全速で駆け寄って、敬礼しつつ声高に報告する。
もちろん息も切らさない。
たとえ苦しくとも、近衛兵たるもの顔に出してはいかん。鬼軍曹の鉄壁の教えだ。
「報告よし!」
返礼する軍曹。
「近衛兵エイト、現時刻を以って哨戒任務を解く。
兵団長どのがお呼びだ、急行せよっ、駆け足!」
「はっ!」
良かった、お叱りじゃなかった・・・しかし兵団長が俺を呼ぶとは、
また例の件だろうか?
兵団長の元へと駆けながら、俺は少し面倒な気分だった。

160:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 11:55:23 ZzThdVbW
>>8を読んで、DQ8のノベライズは可と判断したんですけど、駄目っすか?
駄目ならもういたしませんので、そう言って下さい。

161:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 11:57:40 cRzHMkow
>>159
うわ、楽しみ。是非おながいします!
駄目なら別スレで・・・??

162:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 11:57:42 dHzwAn7Y
あげ

163:158
05/09/25 12:07:17 KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (50) 「飛竜」1

生ける屍、アンデッド達の巣窟となっていた『船の墓場』から脱出したバッツ達は、まず地図を広げた。
もともと放浪の旅人であったバッツや、海賊の頭をつとめていたファリスは、
慣れた手つきで太陽の位置や、時刻などから大まかな現在位置を特定した。
「トルナ運河を越えて、そのまま流された。オレが知る海流の流れ、太陽の位置と時刻からして・・・この辺りだ」
そう言ってファリスは地図のある地点を指差した。
トルナ運河から東、水のクリスタルがあるウォルス地方から北に位置する地域。
ファリスの後ろから地図を見ていたレナが説明を加える。
「ここから南へ行くとカーウェンという港町が見えてくるはずよ。でも、ここから徒歩ではウォルスへは行けないわね・・・」
「でもカーウェンは港町なんだろ?だったら近くのウォルスに船が出ているかも・・」
このバッツの言葉に返されたのは、溜め息だった。
「忘れたのか、風が止まってしまったいま、船は走れないんじゃ」
「あ、そっか。俺達はシルドラの力で船を動かしていたんだったな。そのシルドラも今は・・」
「バッツ!!」
迂闊な言葉に檄を飛ばしたのはレナだった。
怪物によって海に引きずりこまれた海龍シルドラは、ファリスの無二の親友だった。
「・・・悪い・・・」
目を伏せていたファリスは、顔を上げて笑った。
「別にいいさ。今はこれからのこと、だろ?」
「・・・ああ、そうだな!」

164:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 12:08:52 KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (51) 「飛竜」2

「今日はここでキャンプを張ろう。幸い見晴らしもよくてモンスターも寄り付いてる様子は無い」
結局、明日カーウェンへ向かい、その後の方針はそれから決める事にした。

ファリスが持ち前のリーダーシップを発揮して、野宿経験のほとんどないレナとガラフを指導していた。
「ガラフは、さっきあそこの林の奥にあった沢に水を汲みにいってくれ。レナはオレと火を起こすための薪を拾いに行くぞ」
「うむ、まかされた」
「はい」
ガラフは太い竹で出来た水筒を数本抱え持って林へ入っていった。
レナは最初こそ戸惑ってはいたが、今はピクニック気分のようだ。
「俺はここで見張りをしてるよ」
バッツをキャンプに残し、ファリスとレナは先ほどガラフが入っていった林へと入っていった。

薪拾いをしている間、レナは故郷タイクーン城について話していた。

「・・・それで中庭の花が春になると一斉に咲き始めるの。テラスに出ると凄くいい香りがするのよ」
仕事が忙しくて、花の香りを楽しむなんてあまりできないけどね。と最後に付け加えた。
ファリスは、レナの話を聞きながら、彼女の胸元に光るペンダントを盗み見ていた。
「そう、そのテラスには、世界で最後の1頭になった飛竜がいるんだけど・・・」
『世界で一頭しかいない最後の竜』、見たことのないはずのその姿を、何故か自分は知っている。記憶の片隅に。
「お父様が風の神殿へ飛んで行ったきりね、タイクーンに戻っていればいいのだけど・・・」
レナが心配そうに俯く。それほどに大切なのだろう。友人、いや、家族のように思っているかもしれない。
自分と、シルドラのように。
「へぇ、飛竜か、その背に乗ってみたいもんだね」
レナが笑顔に戻る。
「そうでしょ?空から下を見ると何もかもが小さく見えるのよ。まるで魔法のレビテト・・・じゃなくて、ミニマムをかけたようなの。
 ・・・何故かしら、この話をすると決まって魔法を間違えるのよね・・・」

165:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 12:10:08 KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (52) 「飛竜」3

ファリス達が帰ってすぐに夜の帳が落ち始め、4人は焚き火を囲んで夕食をとっていた。
ファリスが(黒焦げにしないよう)弱いサンダーで痺れさせたところを仕留めた野鳥の肉と、
レナが帰り際に摘んだ食べられる野草と薬草で作ったスープだった。

「さて、ここらで俺達の旅の目的を確認したいんだが」
切り出したのはバッツだった。
「各クリスタルを管理する者に風のクリスタルのことを伝え、クリスタルのエネルギーを増幅する装置を止めてもらう、だよな」
ええ、とレナ。
「クリスタルが砕けてしまうと、風は止まり、水は輝きを失い、火の力は弱まり、土は痩せる」
「クリスタルは、文字通り世界の命ってわけだ」
レナが続けて言う。
「火のクリスタルはカルナック、水のクリスタルはウォルスが管理してるわ。まずはウォルスね」
「む?土のクリスタルは、一体どこに管理されておるんじゃ?」
その当然の疑問に、レナは口を濁した。
「それが、わからないのよ。だからもちろんエネルギー増幅装置も取り付けられていないはずだから大丈夫だとは思うけど」
会話を締めくくったのはファリスだった。
「とにかく目前の事を考えよう。まず明日はカーウェンに行き、そこからウォルスへわたる方法を探る。いいな?」
場の全員が頷いた。

夜の帳は完全に落ち、二人ずつ交代で見張りを立て、就寝することにした。

166:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 12:13:36 KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (53) 「飛竜」4

バッツは普段から旅生活なので、落ち着いて眠ってしまった。
ガラフも老体に疲れが溜まったのだろう、深い眠りについている。
ファリスとレナが今は見張りをしているが、レナはファリスに背中を預け、うとうとと眠ってしまった。
ファリスのほうから「今日くらいは眠れ」と言ったのだが。

一人眠れないファリスは、ある予感とともに夜を過ごしていた。
自分の幼少時の記憶が戻るかもしれない、という予感。
その鍵を握っているのは、自分の背で眠っている少女。

パシン、と、小さく自分の頬を叩く。
(今は今のことだけ考えなきゃ。これからは重大な意味を持つ旅をすることになる。これまでとは違う・・・)
ぶるっと体が震えた。寒さのせいか、武者震いか、それとも・・・
夜は更ける。

翌朝は快晴となり、一行は早々に南に向かって出発し、正午を過ぎて一時間したころ、カーウェンへ到着した。

カーウェンへの道すがら、何度かモンスターと遭遇したが、何とか無事に切り抜ける事が出来た。
内海を挟んで西側のタイクーン地方とは違う、屈強な野獣型のモンスター達だったが、
彼らより恐ろしい巨大怪鳥ウイングラプターや、運河の怪物カーラボスとの戦い、
何よりあの不気味なアンデッド達の中をかいくぐって来たのだ。恐怖など元より無かった。

「割と活気のある町で良かった。情報が集まりやすいから」
宿を確保して、買い物を済ませたバッツ達はさっそく情報を集めに回った。

167:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/25 12:15:46 KZLr2UYa
サバイバルとか旅とかの知識は0なんでそこら辺適当になってます。スマソヽ(;´Д`)ノ
それと前書いていた方、もし書き途中だったとかでしたらほんとすいません。
その際は気にせず貼り付けてくださいな。

168:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/26 10:20:31 ug46IY19
DQ8-2 プロローグ2

兵団長の幕舎に着く。
門衛に来旨を告げると、すぐに中へと通された。
「ああ、堅苦しい挨拶は抜きだ」
機先を制して兵団長は言う。
あらかじめ人払いを命じていたのだろう、幕舎には俺と兵団長の2人きりだ。
「いかがなさいました?」
人払いされてることもあって、俺はくだけた口調で話しかけた。
他人が見たら、ことにあの鬼軍曹が見たら、俺は即座に営倉送りだろうな。

俺にとって、兵団長は親代わりに近い存在だ。
俺は捨て子。拾ってくれたのが兵団長夫婦というわけだ。
そして俺を城の小間使いとして斡旋してくれた。
子宝に恵まれなかったせいもあって、兵団長夫婦は何かにつけて俺を目にかけ、
可愛がってくれた。
貴族出身の家柄ゆえ、拾い子の俺を家族として迎える訳にはいかなかったが。
素性の知れぬ俺が、貴族の子弟を中心に構成される近衛軍に入隊できたのも、
ひとえに兵団長のお陰なのだ。
いや、あとひとつ、別の理由があるにはあるが・・・

俺の思索をよそに、兵団長が話を続ける。
「うむ、実はまた、姫君がな・・・」
ああ、やっぱりだ。俺は気が重くなった。

169:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/27 10:54:14 Zgtlf4f8
DQ8-3 プロローグ3

「またですか。今度はいったい何なんです?」
更にくだけた口調で問いかける。これも親代わりの兵団長への孝行なのだ。
子のいない兵団長には、親として振舞いたくともその機会がない。
が、俺と接する時だけは、親子を疑似体験できる。
父親として俺と接することが嬉しいのだ。それゆえの人払いなのだ。
「ああ、『なんだか胸騒ぎがする、エイトをこれへ』との仰せだ」
「そんな、俺はもう城の小間使いではないんですよ」
親孝行のつもりで、俺はさらに甘えてみせた。
兵士の返答には「はい」と「いいえ」の二つだけ、これも鬼軍曹鉄壁の教えだ。
上官、しかも兵団長に三等兵が口応えするなんて、軍曹どのが知ったら、
最低でも地獄のレンジャー特訓7日間は難くない。
「まあそう言うな、エイトよ」
満更でもなさそうな表情で兵団長は続ける。
「城には姫君と年の近い者が少ない。お前はその数少ない一人。
しかも幼馴染みとして、色々と目を掛けて貰って来たではないか」
・・・確かにその通りだ、俺が近衛軍に入隊できたのも、兵団長の後ろ盾とは別に、
姫君が俺を出来るだけ近くに置きたいと所望したせいでもあるからだ。

170:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/27 11:14:49 Zgtlf4f8
DQ8-4 プロローグ4

「それにだな」
父親の顔になって兵団長は続ける。
「王族の身辺警護も、近衛兵の大切な役目のひとつなのだよ」
「そんな、たかが胸騒ぎ、警護の必要などありませんよ」
「甘えるなエイト!」
口調とは裏腹に、兵団長の顔には満面の笑みが。
「これは命令だ、よいな、即刻姫君のもとに出頭せよっ、駆け足!」

「ミーティア姫、か・・・」
姫君の居室へと駆けながら、俺は姫の事を想う。
幼い頃のミーティア姫は、わがままで腕白でイタズラ好きで、俺は散々振り回されてきた。
高貴な純白のドレスから突き出た、痩せぎすで陽に焼けて真っ黒な肌・・・
それが思春期に差し掛かる頃から、心身ともに急に変化し始めた。
清楚で控えめでおしとやか、肌は抜けるように白く、その美貌は近隣諸国にまで轟いている。
あまりの変貌振りに、俺はついていけないところがある。
姫の美貌にフラフラと吸い寄せられそうになる時もあれば、
昔うけた陰湿なイタズラを思い起こし、顔も見たくないと思ってみたり・・・
正直、俺は姫に対して、どういう感情を持っているのか、よくわからない・・・

171:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/27 11:27:06 Zgtlf4f8
DQ8-5 プロローグ5

「!」
回廊まで差し掛かった時、突き上げるような揺れに襲われた。
同時に、周囲が怪しげな光に満たされる。
いったい何があったのか?
ゴゴゴゴゴ・・・
遠くから地鳴りの様な低い音が聞こえてくる。
俺は音源を探った。
城の中心部のようだ。もしやミーティア姫の居室?
地鳴りは徐々に音量を上げている。
まるで何かがこちらへ近づいてくるようだ。
次の瞬間、緑色の塊のようなものが、俺目掛けて突っ込んできた。
よける暇もなく、俺は緑色の塊に弾き飛ばされた。
何なんだ、いったい・・・
薄れゆく意識の中で、俺は姫君の身を案じていた。
姫、ミーティア姫・・・
暗転。


172:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/27 11:38:44 Zgtlf4f8
以上でプロローグ終わりです。
次回からはいよいよ本編突入したいと思ってます。

173:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/28 17:06:10 auWnmU/V
保守

174:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/28 21:20:37 J5VHoA2a
みんなGJ!
なんだかちょっと見ないうちに新しい人たちが出てきて、
いい感じに勢いついてて良いなあ!

はじめにFF5書いてた人、また気が向いたら戻ってきて欲しいな。

ところで297さんと433さんはどこに…orz
433さんは嫌気さしちゃったんかな…
それだったらなんとなくわかるけど、297さんまで一緒に消えなくっても…

175:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/28 23:50:53 IiBVQk68
◆HHOM0Pr/qI氏もだな…
297氏はシドの出てくるくだりが最高だった。

176:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/29 09:46:18 F9PqA1Mf
でもリレースレだし書き溜めしてるのかも

177:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/29 21:22:45 kGfv7bJn
書き手には原因不明のスランプがしばしばあるものです

178:297
05/09/30 00:41:19 /8cNpEj9
いろいろどうも……でも単に受験だったりします(´・ω・`)
連載中のみなさん頑張ってください。

179:299
05/09/30 02:02:50 n72fyiO4
何と、受験生だったんですか。
その歳であれだけの内容を書いてたとは。
いやはや…凄いです。
では、落ち着いたらいつでも戻ってきて下さい。
自分も読むのを楽しみにしてます。

180:297
05/09/30 03:40:02 /8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0238 4章 3節 山間(23)

 と、鞘にかけたまま動かないセシルの手を、突然テラの杖がしたたかに打ち据えた。
「セシル! 何を迷っておる!!」
「テラ……!」
「おぬしに出来ることなど一つしかないじゃろうが! ならばそれをやれッ!!」
 テラの杖が一転して弧を描き、中空に陣を描いた。その軌跡が光を発した、と思った次の瞬間、
円陣からいくつもの火球が飛び出し、迫りかけていたアンデッドたちの顔を焼き焦がした。
連中は間の抜けた仕草でしばらく火のついた自分の顔を叩いていたが、やがてその火が消えて
しまうと、またもこちらに迫ってきた。頼みの綱である魔法も、ほとんど効いてはいないようだ。
いよいよなす術がない、セシルが肩を落としかけると、再びアンデッドたちに炎が襲いかかった。
 驚いてセシルは横を見る。テラの横顔には微塵ほどの迷いも無く、既に次なる魔法の詠唱を
行っていた。落ち窪んだ瞳の中に映る炎が、セシルの躊躇を包みこんだ。
 その眼差しが逸れたときには、彼の剣は鞘から解き放たれていた。
「くらえぇ!!」
 デスブリンガーの闇が踊った。獣が喰らいつくような凄まじい暗黒波が、アンデッドの死肉を
駆け抜ける。たちまち死者たちは後方に吹き飛ばされ、力無く辺りに転がった。テラの炎で焦げ
固まっていた部分が弾け飛び、一匹の首が落ちた。
「おぉ、おぉ……!」
 後ろに控えるスカルミリョーネが仰々しく感嘆の声を上げる。そしてひとしきり感慨に耽ると、
彼はパチンと指を打ち鳴らした。それを合図に、またもアンデッドたちは起き上がった。
首を落とされた一匹も自分の頭を拾い上げると、平然と歩きだす。
「無駄、無駄。そんなものでは私の息子たちは殺せんよ」
 ことさら愉快そうに笑う魔道士に、セシルは剣を突き構えて静かに言い放った。
「それはこちらも同じことだ、スカルミリョーネ」


 ──不意にスカルミリョーネの笑みが消えた。





181:297
05/09/30 03:41:13 /8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0239 4章 3節 山間(24)

 その沈黙と同時に、周囲のアンデッドたちの動きまで止まってしまった。いや、正確には
止まっているわけではない。彼らは立ち尽くしたまま、まるで痙攣でもするかのように、
カタカタと身体を震わせていた。それも皆が皆、振り子のように同じ波長で揺れていた。
 その中心に、分厚いローブに包まれて、身じろぎすらしない影がいた。

「!!!」

 セシルたちは目を疑った。
 いきなりスカルミリョーネが大きく身を逸らしたと思った途端、その小さな身体がメキメキと
異形に膨れ上がり、ローブの下で暴れだしたのだ。やがて彼の身体の隆起は地面にも伝わりだす。
固い岩盤の地が波のようにうねり、その流れがローブの内側に流れ込んで、スカルミリョーネは
ますます膨れ上がってゆく。勢いは増しこそすれ、いっこうに衰える様子を見せない。
 アンデッドたちは、今や恐怖にのたうち回るがごとく強烈に震えていた。スカルミリョーネは
まだ大きくなる。ついにセシルの身の丈の二、三倍ほどにまで膨れ上がったとき、アンデッドの
一匹が弾け飛んだ。

 パチパチ、と枯れた葉を擦り合わせるような音で彼らはふっと我に返った。
 いつのまにかスカリミリョーネが拍手を贈っていたのだ。やはり小柄な姿で。
 周囲のアンデッドは、気味の悪いうなり声をあげて、フラフラと立っていた。その数はさっき
までと変わらない。首を切られた一匹が、なんとかまた身体にくっつけようと悪戦苦闘していた。
「素晴らしい」
 敬服と嘲りを均等に含むような、そろぞらしい声。
 拍手をやめると、スカルミリョーネはまたあの笑みを始めた。
「流石はゴルベーザ様のお目に止まった男、なかなか楽しませてくれる。
 だが……、その時間稼ぎがどこまで続くものかな…………クカカカ」




182:297
05/09/30 03:45:04 /8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0240 4章 3節 山間(25)

 残念ながらスカルミリョーネの言葉は的を得ていた。戦局は一時は均衡状態に持ち越されたが、
不利を抱えているのは明らかにセシルたちの方だった。彼らはこうして抗戦しているうちにも、
刻一刻と体力を消耗している。その一方で、疲れを知らないアンデッドたちはじわりじわりと
着実にその距離を詰めてくるのだ。このまま続けば結果は火を見るより明らかである。
 守る二人もそのことはわかっていて、先程から慌ただしく考えを巡らせているのだが、押し迫る
緊迫の最中のためか、いっこうに策が浮かばない。隣を見るもテラの方も同様らしく、しわがれた
額に焦燥の汗が照っていた。
 セシルの額にも汗がたれ始めた。
 こうしていても埒があかない。これ以上の体力の消耗は、避けた方がいいのではないか。
そんな不安が過り、無意識の内にセシルは剣を下ろしかけていた。

(このまま続けて!)

 背後にいたポロムが、風を切るような鋭い声でそれを止めた。
(ポロム…?)
(やめないで、テラ様だけでは防ぎきれませんわ!)
(だがこのままでは勝てない! これじゃどのみち時間稼ぎにしかならないんだ!)
(そう、あいつの言う通りです。ですから、その時間稼ぎをしてください!)
(──なんだって…!?)
 目を瞬いているセシルに背を向けると、どういうわけか彼女は自分の杖をローブの懐にしまい
こんでしまうと、立ち上がりざまにパロムの肩を小突いた。
(いけるわね、パロム?)

 顔を伏せたまま、苦しそうに胸を抑えていたパロムの口の一端が、不敵に持ち上がる。

「いったいオイラを誰だと思ってんだ?」



183:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/30 08:14:40 I01VZGnP

受験がんばってね。

184:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/30 17:46:44 sS+EdLVA
ふたりがけクル━━(゚∀゚)━━ッ!!!!

185:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 01:08:46 ZJtt4Gn8
悪いことは言わないから勉強しとけ。

186:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 11:57:46 5Z6Xtzqz
不自然な一行空け、改めた方がいいと思うよ。

187:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 14:43:59 be+Wy8p6
不自然というよりも読みやすいように配慮しているだけだろ。

188:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 15:27:49 dYZP//e7
携帯から見てると見難いのかな。
オレはこのままのほうが読みやすいけどな

189:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 19:34:23 ZJtt4Gn8
その辺は賛否両論なところだろうな。
文脈に応じて印象変わるよな……まぁ本職の作家なわけでもないし、いろいろと試行錯誤してるんだろう。
けど>>182は俺もちょっと見難い。

190:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 19:54:58 joNq4i/j
自分はこのままのほうが読みやすいんだが・・・・。

191:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 20:24:45 3qfUGQ8S
わたしも特に不自然とは思いませんでした…。

192:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/01 21:11:56 3Xki44S6
まぁ書く人が書きやすいようにでいいんじゃない?
「不自然」にはかんじなかったし

193:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/02 00:05:36 QCI6hrqq
受験生と知った途端みんな優しくなるw

194:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/02 13:08:08 gkeBMx4H
ageついでにだが、FF4又移植されるんだね。
URLリンク(www.legal-speed.com)

195:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 10:11:04 1ZfmUcNP
DQ8-5 エピローグ1

目が覚めると、俺は城の回廊に倒れ伏していた。
明るい。回廊の窓から陽光が差し込んでいる。
随分と長い間、このままでいたような気がする。

俺は何をやっていたのか?
どれ程の時が経過したのだろう?

しばらくそのままの状態でそんなことを考えていたが、
次の瞬間、全てを思い出した。

姫!ミーティア姫は?

急いで身を起こそうとするが、体が言うことを聞かない。
何とか立ち上がったものの、猛烈な立ちくらみに襲われた。
やはり相当の永きに渡って眠っていたようだ。
しかし今は姫の身が気に掛かる。
俺は自身の身体を引きずるようにして、姫の居室へと急いだ。
突如、ワーッという歓声が沸き起こった。どうやら庭園らしい。
俺は回廊から身を乗り出して、庭園を見下ろした。

あれは・・・姫!

人々の歓喜の輪が徐々に縮まっていくその中心には、トロデ王の御する馬車があり、
そこから姿を現したのは、紛れもないミーティア姫であった。
いったいどうなっているのか?

196:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 10:51:48 1ZfmUcNP
DQ8-6 エピローグ2

ここはトロデーン城の庭園。今は宴の真っ盛りだ。
振舞われたブドウ酒を舐めながら、俺は今回の騒動を振り返った。
トロデ王が語ったのは、まさに驚天動地の物語だった。

道化師ドルマゲスが、城の至聖所に侵入して神器の杖を奪い、城に呪いをかけたこと。
その呪いのせいで、城にいたものは悉く植物に姿を変えられてしまったこと。
俺が気を失う直前に見たものは、杖が発する呪いの蔦だったこと。
トロデ王とミーティア姫は、幸いにも結界のお陰で、植物になることはなかったが、
王は魔物に、姫は白馬に姿を変えられてしまったこと。
城の呪いを解くべく、王と姫はドルマゲス探索の旅にでたこと。
そして、何といっても俺が驚いたのは、呪いを解いた最大の功労者が、
幼馴染のアハトだったということだ。

197:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 11:03:45 1ZfmUcNP
DQ8-7 エピローグ3

アハトは、俺と同じみなしごだ。
俺と同じく城兵に拾われ、小間使いとして仕えた後に近衛軍に入隊した。
アハトは無口で無表情で、いつも何を考えているか良くわからない。
ネズミに名前をつけてペットにしているという、本当に変わった奴だ。
当然友人も少ないが、境遇が似ているせいもあって、俺とは気が合った。
そのアハトが、城に降りかかった呪いを解いたというのだから、本当に良く判らない。

「ああ、丁度よい機会じゃ、皆の者よう聞けい」
俺の思案をよそに、トロデ王が声高に叫ぶ。
「今回のアハトの働き、まことにもって見事であった。
アハトの功に報いるため、ワシは今ここに、
アハトとミーティア姫との結婚を宣言する!」
城内が一段と大きな歓声に包まれた。

なんてことだ・・・あのアハトが、姫と・・・
・・・今回は俺の出番はなかっったってわけか、やれやれだぜ・・・
俺は城兵に混じって酔い痴れることにした。

            (完)

198:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 13:09:14 mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (54) 「飛竜」5

「・・・ったく」
「タイクーンのやつらはいったい何を・・」
がやがやと騒がしいここは、カーウェンの町のパブである。
酒、料理、煙草、汗。これらが入り混じった臭いが充満している。

そのカウンター席に、バッツ達四人の姿があった。
手にはそれぞれ、酒の入ったグラスがあった。
「注文して酒飲んで、マスターの気前良くしてからでないとちゃんとした情報が聞けないぜ」
という、自分が飲みたいだけという魂胆が丸見えのファリスの言葉に乗せられてしまっていた。
まあ、言う事も確かではあるのだが。

仕事が一段落したのか、パブのマスターがバッツ達に水を差し出した。
「あんたら冒険者かい、どっから来たんだ、こんな船以外の交流がほとんど無い町によ」
「タイクーン地方さ、まあ色々あって船が流されて、船の墓場から命辛々脱出したんだ」
バッツが出された水を一気に飲み干してから言った。
「あんなとこから!あんたらまさか幽霊じゃねえだろうな、ハハハ」
「ところでマスター、オレ達ウォルスに行きたいんだけどよ。何か方法ねえか?」
ファリスが遠い席から、白ワインを空けながら言った。
マスターは目を伏せ、溜め息をついた。
「悪いがそれは今は無理だな。船が出れないのは知ってるだろ。空でも飛べない限りな」
「そうか・・・」
先ほどバッツ達は港にも行ってみたが、東の山々から降りる風も、海から上がる風も本当に微々たるものだった。
ファリスがふと、周りを見て言った。
「まだ昼間だってのに、なんでこんなに客が?」
「彼らは漁師さ。まあ、今回ばかりはどうしようもねぇからな」
バッツ達はここでの情報収集を諦め、渋るファリスを連れて帰ることにした。

199:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 13:10:27 mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (55) 「飛竜」6

パブのドアを開けたときだった。
「きゃっ!」
バッツの目の前に人型の物が飛び出してきた。どしんという音と共にバッツとぶつかり、
その人は地面に尻餅をついた。
「あっ、だいじょうぶですか!」
バッツに起こしてもらったその女性は、取り乱した風もなく頭を下げた。
「申し訳ありません。急いでいたものですから」
はあ、とバッツ。
「こんなパブにか?」
ファリスがマスターに聞かれたら皿を投げられそうな事を言った。
「ええ、うちの主人ったら、竜が北の山に飛んでいくのを見た!なんて町中に言いふらしているんですよ!
でも皆当然信じませんから、どうせまたこのパブの二階でいじけているに違いありません!」
豪気な奥さんで、ご主人がかわいそうだな、などとバッツ達が思っていると。
「本当ですか!?」
突然レナが身を乗り出した。
「その話!詳しく聞かせていただけませんか!」
女性はきょとんとして、目を丸くした。
「えぇ、あんな胡散臭い男の話をですか?・・・まあ私から何か言える訳じゃないし、
ここの二階にいるだろうから、どうせなら直接話を聞いてやってください。
・・・あ、それと私が家で待ってるって伝えておいてくださいね」
レナの勢いに毒気を抜かれたのか、まくしたてて喋り終えるとその女性は何事もなかったように踵を返した。

「どうしたんじゃ、心当たりがあるのか?」
パブ店内に戻りながらガラフは先頭を歩くレナに聞いた。レナは自分でも気づかぬまま早足になって答える。
「その人が見たって言う竜、その話が本当なら、多分間違いなく、お父様の飛竜だと思う」
「それって、昨日話してた」
ファリスの言葉にええ、とレナが頷く。四人は頑丈に作られた木製の階段を上った。
そこには、椅子に座りがくっとうな垂れた男性がいた。

200:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 13:18:07 mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (56) 「飛竜」7

「なんだい・・・?わりいけど下で飲んでくんねえか、俺は一人になりてぇんだ」
男は大きな体をうな垂れたまま、四人のほうを見ずに言った。
どうやら町中の人に言ったはいいが町中の人に信じてもらえず、相当落ち込んでいるようだった。
バッツが一歩前へ出る。
「なあ、あんた北の山へ竜が飛んでいったのを見たらしいな。その事を聞きたいんだ」
途端に目を輝かせて男はがたっと立ち上がった。
「あんたら俺の話を聞いてくれんのか!おお、ここへ来てやっと信じてくれる人間が来てくれるとは!」
こんな調子のいい人間の話が本当なのか、分からなかったがとりあえず話を聞くことにした。
「うっはっは、まあ座ってくれや。どこから喋ったもんかな・・・」
話を聞いてくれるのが嬉しいらしく、バッツ達四人のことを何者なのかも聞かなかった。
バッツ達が席につくと、男は待ちかねたように喋りだした。
「今日の早朝のことなんだが、俺は港の荷物の整理をしてたんだ。そしたらよ、西から
何かが飛んできたんだ。最初は気にも止めなかった、鳥かなんかだと思ってたからな」
男は髭をもさもさといじりながら、思い出しながら話している。
「だが近づいてくるにつれ、鳥なんかじゃねえ、ありゃ竜じゃねえかって思って追いかけ
たんだ。あいつは町の北を通って北の山へ消えていった。俺は目がいいんだ!確かだぜ!」
間髪入れずにレナが質問した。
「その竜、えっと・・・そう、鎧を纏っていませんでしたか?」
「おお!嬢ちゃんあの竜を知ってんのか?確かにそうだったよ」
「間違いない、お父様の飛竜だわ」
バッツがレナに尋ねる。
「その飛竜は、俺達四人を乗せて飛べるんじゃないか?」
「ウォルスまでだって楽に飛べるはずよ」
ガラフが頷きながら歓喜した。
「うむ、上出来じゃ!では明日、北の山を目指すとしよう」
誰も異論は唱えなかった。次の目的地が決まったところで、バッツ達は宿に戻る事にした。
「そうだ、おっさん、あんたの奥さんが家で待ってるそうだ」
この伝言に、男はぎょっとなった。と思うと初めて見たときのようにがくっとうな垂れた。
「あぁ~、明日からトイレ掃除一週間かなぁ。それならまだいいか・・・」
バッツ達は思わず苦笑した。

201:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 13:19:05 mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (57) 「飛竜」8

宿に戻ったバッツ達はこれからの事を話しながら夕食をとっていた。
その中で、レナは一人沈黙を守っていた。
「・・・・・・・・・・・・」
その様子を訝しげに見ていたファリスが、レナに聞いた。
「なあレナ、さっきから黙ってどうしたんだよ。何か知ってることがあるなら少しでも話してくれ」
「・・・・・・・・・うん」
カチャ、とフォークを置くと、観念したように話し出した。
「あの山にはね、『飛竜草』という草が生えているの」
三人の視線がレナに集まった。
「飛竜は、傷を負ったり病気になるとその草を食べて治すの。飛竜草は飛竜にとってあらゆる
病気・怪我の特効薬なのよ。でもその代わり、飛竜の治療はその草でしか出来ない・・・」
「飛竜がその飛竜草が生えてる北の山に向かったってことは・・・」
「怪我か病気、ともかく治療が必要な状態ってことだな」
こくり、とレナが頷いた。皆の顔がわずかに曇る。
レナは、飛竜が四人も人を乗せて飛べないかもしれない、という事実を、皆の為に敢えて
隠していたのだった。
「明日は、出来るだけ早く出発しよう。飛竜草ってのがあるらしいから大丈夫だとは思うが、
早く行って看てやったほうがいいだろう」
しかし彼らにこれ以外の手立てはもはや無い。
ならば五分五分の可能性に賭けて、飛竜を探しに行くしかなかった。

その後彼らは翌日に備えてすぐにベッドに入った。
様々な疲れからか、四人の意識はすぐに夜の闇に溶けていった。

202:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 13:26:32 mhs5j4pp
>>166の続きです。
ヽ(´Д`;)ノヴァー 目に見えてクオリティが下がってしまいますた。
題名とかⅣの真似をさせていただいてますが問題ないですかね。
5はもともとストーリーの奥深さ、キャラの個性が弱いんでやりにくいっすと言い訳してみるテスツ。
まあもともとSSなんてこれが初めてなんでsうわ何をするやm・・くぁw背drftgyふじこl;p@:「」

203:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 14:33:55 g6SyyThl
乙乙!
いいよいいよー、読みやすい。次も期待してまっせ!

ところでDQの方、エピローグって……これで終わりなの?

204:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/03 15:57:11 mhs5j4pp
エイト≠主人公
アハト=主人公 っていうことかと。

205:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/04 21:22:35 gwG4WPe6
保守

206:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/05 05:08:36 7MvTlxqJ
FF6ノベライズスレって落ちた?

207:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/05 10:15:27 gYN6LC++
DQ8のプロローグ書いた者ですが、エピローグは僕ではありません。
いくらリレー小説とはいえ、これはないよ・・・

208:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/05 11:40:34 r31BUM1L
>>207
やっぱそうか。びっくりしたw
それならとりあえず>195-197はおいといて、続き頑張ってください。

209:下手だけどさ
05/10/05 17:13:16 3eW+kmil
かつて、この世界を愛し
この世界の仲間達と共に過ごした人々へ、
再び集いしこの時を捧ぐ―


足の下で、土埃が舞い上がり、夏の初めの爽やかな空気に溶け込んでいく。
赤銅色の前髪が視界を覆うたびに頭を一振りする。
子供達はそれをかっこいいと言う。だが、まだ幼く髪も短い彼らには少し早い。

荒野を駆け抜けて行く。
彼らと共に遠い昔歩んだ道を、子供達と共に。
目指すのは、ミッドガルの見える崖の淵。あの男の恩人が死んだ場所。
遥か後ろには、戦友たちの眠る花畑がある。
その地には妻も待っている。
クラウド、ティファ、バレット、シド、ユフィ、ヴィンセント、ケット・シー。
そこは、あの日の7人の為の楽園―「7th heaven」

ミッドガルを見下ろして、彼は、大きく吼えた。
その咆哮は、偉大で、逞しく、そして何処か悲しそうな泣き声のようだった。
それは、荒廃し、緑に覆われたミッドガルの中に長く響き渡っていた。


210:下手だけどさ
05/10/05 17:13:47 3eW+kmil
子供部屋 小さな看護婦


うぅ……

苦しげな声に、はっとして目を覚ました。
目の前の子供用のベッドに寝るデンゼルが、痛みで目を覚ましたようだ。
彼の額を覆うガーゼが黒く汚れて布団に落ちた。
看病の途中で寝てしまったのは今日が初めてだ。
遅くまで店に出ていたティファを気遣い、慣れない徹夜をして看病したせいだろう。
重たそうに腕を上げて、額に触れるデンゼル。
少し顔をしかめた後、少し顔をずらしてこちらを向くと、
「なあ マリン?どうなってる?」
と、掠れた声で聞いてきた。
きっと、怖いのだろう。
真っ黒に濡れた額を元に戻す方法は、見つかっていない。
星痕症候群。悪魔のような病気。
なす術も無く、子供達の多くはその痛みと体力を奪う力に倒れて行く。
彼の額も、前に見たときよりほんの少し酷くなって来ている。
泣きたくなった。でも、それは彼を絶望させるだけだ。
泣きそうになりながら、ほんの少しだけ笑った。
(神様、お願いです。もし居るのなら。
お願いです。どうかデンゼルを連れて行かないでください。)



211:下手だけどさ
05/10/05 17:14:28 3eW+kmil
酒場 看板娘の一日の始まり


ティファは小さな溜息を吐いた。
小さな小さなその溜息は、天井の空調設備と手元のコップの擦れる音に簡単に隠れる。
(クラウド……まだ、帰ってこないのかな?)
食器洗い機で取れなかった汚れに水をつけて、やや乱暴に擦りながらぼんやりと思う。
携帯を所持しているくせに、常に留守電。一方的にこちらの報告しか聞かない。
(……寂しいくせに)
それは、誰に向けられた言葉だったのだろう?
出ないくせに携帯を手放さないクラウド。
そんな彼を引き止めも追いもしない自分。
遠慮して甘えてこないデンゼル、マリン、孤児達。
エッジの場末のバー、セブンスヘブンの中には寂しさが蔓延しているようだ。
洗い終えたコップを戸棚に仕舞う。
食器洗い機からいくつかコップを新しく掴み出し、綺麗な物は横に置き、汚れがある物は水をためたボウルの中に突っ込んで、細く水を流しながら洗い始める。

ルルルルル……ルルルルル……

すぐに顔を上げる。そして、すぐに顔を下に戻す。
クラウドからの連絡ではない。二階の小さな事務所の電話だ。運び屋を営むクラウドへの依頼だろう。
「……もうここには居ないんですよー」
ぼそりと呟いても電話相手には通じない。諦めて手を拭き、荒い足取りで二階へと向かい、デンゼルの様子をすれ違いざまに見ながら事務所へ。旧型の電話の受話器を取った。
「はい ストライフ・デリバリー・サービスです。当社はなんでも……どちら様ですか?」
馴れ馴れしく話し掛けてきた相手に問うと、軽い口調で長ったらしく説明を始めだした。怪訝に思いながら聞いていると、相手の横から割って入った低い声が告げる。
その名に、小さく笑った。二年ぶりの名前だ。
覚えている、その口調を真似る。かつては敵対した者の口癖。
「覚えてるぞ、と」

212:下手だけどさ
05/10/05 17:15:26 3eW+kmil
ミッドガル 孤独では無かった者の墓標


ザックスは、ソルジャーの中では最高ランクである、ソルジャー1stだった。
そして、流れる黒い長髪とそのあっさりとした性格で、誰よりも人気があった。
でも、俺は、そんな彼を見殺しにしてしまった。
エアリスは、ザックスを待ち続けていた。彼の死を伝えられた彼女は、どんな顔をしていたんだろう。
そしてエアリスをも、俺は見殺しにした。
きっと、2人が死んで悲しむ人達はたくさんいた。
俺は、彼らに会ったとき、どんな顔をすればいいんだろう?

「俺さ、お前に許されるのかな?」
男の墓標を、静かに見つめる。錆にまみれたバスターソードは、ザックスの形見だ。
目を、閉じる。2人の笑顔がフラッシュバックする。
同時に、電撃のように頭が一瞬痛み、よろけて、後ろに止めていた愛車に寄りかかってしまった。
幸いきっちりとスタンドが固定してあったため、その巨大な黒塗りのバイクが倒れる事は無かった。
低くうめく。じっとしているとすぐに痛みは引いた。
光の差し込まない、暗い曇天をそのまま真っ直ぐに見つめる。
それが何だか自分のようで笑えて来た。口の端で笑った。笑った気がしなかった。そういえば最近笑っていない。
笑えるくせに、笑顔を隠して心を閉ざしてしまっている。
何時だったか。ティファに言われた事があった。
そういえば、ティファから伝言があったなぁ、とぼんやりと考えた。
ユフィやバレットからの伝言は耳が痛くなるが、ティファからの伝言はそれ以上に頭が痛くなる。
愛車に座り直し、ハンドルにぶら下げた携帯に手を伸ばした。

213:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/05 20:11:56 JWrVwu/i
7も始まったか乙。

>>206
落ちたよ結構前に。新しく立てようか?

214:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/05 20:14:09 r31BUM1L
グッジョブ。これってAC?

215:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 05:10:15 C6RM2+Wv
ちょっと思ったんだけど、これから来る人または書く人がわかりやすいように、
短編の規制とか決めておいた方がいいんじゃないかな。これまでにも質問あったし。

んで、スレのコンセプトとか既にでてる意見からすると、
 ・まだノベライズされきっていない部分を抽出した短編は不可
 ・既にノベライズされた部分に基づき、筋に反しないような短編は可
 ・登場人物とは別に、ゲームの世界背景だけを用いた短編は可(exまとめサイトの魔列車編)


……と大体こんな感じで問題ないと思うんだけど、ひとつ聞きたいのが、

 ・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編

これはどうなるんだろう。一応は補完部分に反しないことになりそうなもんだが…。
それとも、ノベライズの本筋とは別物の短編を書く事自体、そもそもスレ違いなのかなぁ。
長々と失敬。

216:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 08:55:47 V6MiaTZ/
>>213
亀レスだが頼む
>>215
未収録エピソードはぜひ見たい

217:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 13:01:52 wXp8Guy9
敢えて言わせてもらうと、
DQ8のエピローグ、結構面白かったよ。
ミステリーで言うところの「叙述トリック」って奴だね。
あ、うまいこと一本取られたぜって感じだった。

が、リレー小説スレに投稿する作品として、適しているとは言えないな。
もう少し節度を持った作品作りを心掛けて欲しい。
次回作、期待してるからね。

218:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 13:06:01 olVop48p
DQ8の小説は、ちゃんと投下できる場所があるからそこでした方が喜んでもらえるぜ。

千一夜スレッドか、小説を書いてみるスレッドとか。

219:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 23:46:23 bouzR8lW
>>216
立てたよ
スレリンク(ff板)

220:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/06 23:47:05 bouzR8lW
ついでにageとく

221:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/07 12:01:54 dc1HNIW3
乙。でもボロクソ言われてるな…

222:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/07 12:22:35 WtN9jdbz
個人的にはこっちのFF6が盛り上がってくれればそれで言うこと無いな。
向こうのスレ他のシリーズのキャラが出てるのがちょっと嫌だったし。

223:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/07 17:06:37 DxvdZxwe
>>215
ゲーム中で直接の描写はなかったが設定や台詞だけで説明されてる場面とかキャラの過去とかは多いからね。特にFFには。
そういう掘り下げがあってこそのノベライズだと思う。ていうかそうじゃないとわざわざ文章化する意味が無い。

224:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/07 17:13:37 WtN9jdbz
>>223
同意だけど>>215が言いたいのはそれを短編として投稿していいか、という話だろう。
個人的にはいいと思うけど、判定難しそうだな……。

225:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/08 20:57:22 8HKntcd2
待つ

226:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 16:00:28 GzdYSvyu
FF2は公式に出てるからアウト?

227:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 18:12:45 uUUUa1jX
>>226
あの小説はそんなに評判よくないし、
別に書いてみてもいいんじゃないかな?
FFだし。

228:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 20:49:21 gbI84008
>>227
コンセプトで、公式の小説が出てるものはあえてこの板住人がノベライズする必要はない
と言っている

229:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 21:12:14 SvryzBiR
>>228
その理由はプロの作品にはかなわないということから来ている。
つまりそれを上回る自信があるなら、例外的ではあるが書いてもいいんじゃないか?
おれはその小説読んでないけど、パンデモニウム等の重要イベントはしょってるって聞いたし、
つまり小説の方はストーリーを最初から最後まで完全小説化という方のコンセプトに反してるわけで
まあ書き手のやる気次第だろ

230:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 21:19:18 gbI84008
そうかもしれんがただなあ、
FF2の小説はゲームのシナリオライター本人が書いてるんだよ
だったらもうそれはFF2の公式のひとつ(プロの仕事)として認めて
名無し住人が手を出す必要はないと思う

231:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/09 22:02:08 pS5IDHLt
なるほどなぁ。
ところで……管理人さん不在だな………。

232:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/10 02:17:37 5Nv1m7gP
まとめサイト、最近更新されてないね。
忙しいのかな

233:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/10 10:15:00 1gUbnRi7
別に書きたければ書けばいいよ。
無いよりあったほうがいいじゃない。そこまで強制する必要ないよ。

234:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/10 21:12:24 rXZca3Oc
あげ

235:勝手にACの続きを書いてみた
05/10/11 05:03:26 PrXoaeT7

折り畳み式の携帯を開き、ここ数日分の伝言を順に再生していく。
もう指が覚えてしまっているほど慣れた作業だ。
というか、携帯の機種を変えてからそれしかしていないような気がする。

「リーブです。元気ですかぁ?
 クラウドさん、たまにはそっちから連絡してくれてもいいんちゃう?
 ティファさんにこの前会いましたけど、心配してま…」
「…クラウドさぁー、ホントにいつになったら留守電解除すんだよ?
 まあいいや、それより…」

最近はこんな内容のものがほとんどだ。
無理もない。
クラウドはかれこれ一年半以上も自分から連絡を取らず、ただ聞くだけの態度に徹しているのだから。
それだけの為に持っている携帯なら、いっそのこと湖にでも捨ててしまえと思ったことが何度もあるが、出来ない。
携帯を失うと、彼と仲間との接点が一つも無くなってしまうからだ。
そうかといって、こちらから積極的に電話をかけて、彼らと連絡を取り合おうとも思わない。
何をしているのか、何処にいるのかを、彼らに知られたくないのだ。
なんとも中途半端な自分を惨めな気分で笑いながら、クラウドは伝言を聞いては次の伝言を再生していった。
もちろん、本当に笑ったわけではない。笑うような仕草をしてみただけだ。
そうしている内に、最後の伝言になった。ティファからだ。
再生する。いつもと比べて、かなり簡潔な内容だった。
「ヒーリンにいるレノから電話があったよ。急いで来てくれって。
 クラウド…元気にしてるの?」
ツー。メッセージは、以上です。

その伝言を受け取った時、クラウドは少し面食らった。
レノ…丸2年ぶりに聞く名前だ。それにクラウド達とは敵対しているはずの人物。
そんな奴が俺になんの用だ?
しかもヒーリンと言えばなかなか高級な別荘地ではないか。あいつ、そんなところで何してるんだ?
疑問が次々浮かんでくる中、クラウドはゴーグルをかけ、バイクのエンジンを吹かした。
直接会って確かめるのが一番すっきりするだろう。

236:勝手にACの続きを書いてみた
05/10/11 05:05:14 PrXoaeT7

クラウドがヒーリンを目指してバイクを走らせてから数分後、
地面に突き刺さった墓標代わりのバスターソードの前に、3台のバイクが現れた。
3台とも、クラウドのものに近い―つまり、ありえないほど巨大な―サイズで、
車体の外観はどことなく生物的だった。
バイクがバスターソードを囲むように停車する。
中央のバイクに乗っていた男が、邪魔臭そうに墓標を蹴り飛ばした。
バイクを駆って現れた3人は、みな髪は銀色で、上から下まで黒一色のスーツに見を包んでいる。
彼らは暫くの間、眼前に広がる、荒廃しきったミッドガルを眺めていた。

「なあカダージュ、あれが兄さんの街か?」
流れるような長い髪を揺らし、鋭く冷たい眼を持った3人の内の一人が問う。
「ああ…」カダ―ジュと呼ばれた男が答えた。
3人の中では最も小柄で、美少女にも見違えそうな童顔だが、瞳に宿る狂気の色は3人の中で最も強い。
「歓迎してくれると思うか?」
最初に声を発した長髪が、申し訳程度にまた訊いた。
「無理、無理」少し笑いながら、カダ―ジュ。
「ハッ、泣くなよヤズー」
それまで無言だった男が、からかうように言った。他の2人と比べてかなり筋肉質で、大柄な男だ。
「母さんも一緒なんだよな?」
大柄な男を無視し、ヤズーが念を押すように問う。
「どうかな…」カダ―ジュの答えは自信が無さそうだった。
「泣くなよロッズ」
今度はヤズーがからかう番だった。見ると、ロッズと呼ばれた大男はしゃくりあげ、泣き出している。
その時、カダ―ジュが遠くに何かを見つけ、言った。
「ほら、兄さんだ」
ヤズーはカダ―ジュが視線を送っている先を鋭く見やり、ロッズも間抜けな声を上げて泣き止むと、同じようにした。
その視線の先には、バイクに乗って遠ざかっていくクラウドの後ろ姿。

それを見て謎の3人組は一様ににやりと笑った。ヤズーとロッズは邪悪な笑顔のまま顔を見合わせると、
エンジンを派手に吹かし、急発進した。

237:勝手にACの続きを書いてみた
05/10/11 05:08:17 PrXoaeT7
書きながらちょっと思ったけど
ACの戦闘ってあれがこーなってそれがあーなってって感じの展開が細かく決まってるから
ほかのと比べてちょっと自由度低そうだね

238:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/12 15:59:17 4HblozTw
保守

239:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/13 20:00:41 +Q7VGFVZ
誰もいなくなっちゃったのか?

240:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/13 20:08:44 K2uTcu+x
>>236続きキボン!

241:297
05/10/13 23:56:16 xePae7Cx
>>215の意見が気になるので短編一個かいてみた。
あとAC乙ですー。

242:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/13 23:58:51 oUyt4JmY
>>241
何の短編?

243:竜の騎士団
05/10/13 23:58:52 xePae7Cx
 
 東西に広くその身を連ねる、雄大な山脈の山合から差し込む朝日を受けて、その城は目覚める。
積み上げられた石壁は宵闇の黒から本来の灰色へ、やがて輝くような銀に染まり、見惚れるような
美しい城郭の全貌を燦然と見せつける。その変化が終わらないうちに、尖塔の一つから勇ましい
ラッパの音が響き渡り、たちまち静まりきっていた城内に兵士達の波が溢れかえる。諸外国にその
圧倒的なまでの威を誇る、超軍事国家バロンの夜明けである。
 城下は強固な城塞で守られ、さらにその周囲を広大な海と険しい山脈地帯が囲んでおり、天然の
要塞は外敵の侵入を許さない。また同時に豊富な山川は地に実りを与え、湿潤な気候と豊饒な土が
齎してくれる恩恵は、一国の民が享受しきるにはあまりあるほどである。これら全てのおかげで、
バロンの民は今日も安らかな朝を迎えることができるのだ。だが、このような理想的な環境を手に
するまでには、もちろん容易ならざる道のりがあった。
 もともとバロン地方は魔物のはびこる大地であった。そこに多くの勇猛な部族達が決死の覚悟で
入り込んできたのだ。魔物達から土地を奪った後も彼らの争いが終わることはなく、豊かな土地を
巡って次々と戦が繰り返された。長い戦乱の歴史、その果てについに勝ち残った部族こそが、彼ら
バロンの民だった。
 それを「血塗られた歴史だ」と非難する国もあれば、「栄光の軌跡だ」と褒め讃える国もある。
バロンに生きる人々は、そのどちらでもない。そこは祖先が守ってきた土地であり、また彼らが
守るべき土地であるというだけだ。
 魔物達もこの地を諦めたわけではなく、山陰の奥深くに息を潜めながらも、自分達の領地を取り
戻そうと常に目を光らせている。このため例え争いの無い時でも、バロンの軍備が怠られるような
ことは決してない。
 そのバロンの軍隊は主に陸軍、海軍、空軍の三部隊で構成され、各部隊はさらに複数の兵団に
分かれている。比較的弱戦力である海軍は、海兵団や傭兵団。兵士達の大多数を占める陸軍は、
陸兵団、騎兵団、魔道士団、近衛兵団などで組織されている。そして、強大なバロン軍の中でも
ずば抜けた戦力を誇るのが空軍であり、この部隊はたった二つの兵団で構成されている。



244:竜の騎士団
05/10/14 00:02:07 xePae7Cx
 そしてもう一つが、竜騎士団である。

 彼ら竜騎士は、鍛え抜かれた鋭い槍技、そして見上げるような城壁も一飛びに超える驚異的な
脚力を以て戦うが、もうひとつ、飛空艇に勝るともそうは劣らない強力な武器を持っている。
それが彼らを竜騎士と呼ばしめる由縁、空を馳せる王者、飛竜である。彼らは竜と共に戦うのだ。
 実はバロンの祖が生き残れたのも、この飛竜と言う生物のおかげだ。少数民族であったバロンが
この地の征服者になることができたのも、彼らの助けがあってこそであった。
 古の時から変わらず竜と共に生き、死んでゆく誇り高き竜騎士達。そしてその頂点に立つ男こそ
他でもないセシルの親友、カイン=ハイウィンドである。

 ところで、「カイン=ハイウィンド」という名は彼の本名ではない。
 ハイウィンドとは、空を知り、風を知り、そして竜を知る者の証。歴代の竜騎士団団長にのみ
受け継がれてゆく、偉大なる称号なのだ。
 歴代のハイウィンド達は皆その名に恥じぬ素晴らしい騎士で、よく空を知り、よく風にその身を
乗せて、またよく竜を愛した。そして先代のハイウィンド──つまりカインの父親も、もちろん
例外ではなかった。
 彼は長い歴史の中でも抜きん出た英雄と讃えられるほどの人物で、その実力はもちろんのこと、
誰からも慕われる素晴らしい指揮官だった。温厚で仁愛に満ちた人格はいつも周囲を落ち着かせ、
朗らかな顔に染め、それでいてひとたび槍を振るえば、その勢いたるやさながら鬼神のごとき
凄まじいものだというのだから、部下達はいっそう敬服を深めるばかりであった。
 だが世に英雄と呼ばれる人間の多くがそうであるように、彼にも幸福ならざる結末が用意されて
いた。あるとき治安維持のため魔物の討伐の任に赴いた先で、彼は小さなカインを遺したまま、
戦死してしまったのだ。まだ齢三十にも満たない若さである。誰にとっても、早すぎる死だった。

 人間の価値はその人物の葬儀を見れば判ると言う。王も参列した厳かな葬儀では、同列していた
大勢の騎士達が咽び泣いた。彼らの涙の一雫ずつに、団長の高潔な人柄が窺い知れたことだろう。



245:竜の騎士団
05/10/14 00:03:41 xePae7Cx

 もっとも彼の死はある時期まで公にされなかった。当時バロンはまだ開発段階であった飛空艇の
発展に力を入れており、ミスリルとの交易を押し進めている最中だったのだ。優秀な軽金属である
ミスリルはそれだけ扱いが難しく、繊細な技術を持つミスリル人達の協力が不可欠だった。しかし
小心な彼らは軍国であるバロンに警戒を抱いており、交渉はなかなかうまくまとまらず、それでも
慎重に慎重を重ね、王自らも何度か訪問し、ようやく交易の確立にこじつけていた、その折りへの
急報だったのだ。
 この時期に国内のゴタゴタなどが知れて、折角まとまりかけていた交易が延期などということに
なってしまっては元も子もない。王は慚愧の念を飲み込んで、彼の死を伏せることにした。
 治安上の問題もあった。当然その頃の竜騎士団はバロンの最たる戦力であり、団長の急死とも
あればその影響は国の内側だけに留まらない。たちまち周辺の豪族などは活気づき、それに伴って
魔物も騒ぎだすだろう。いずれにせよ、当分は漏らしたくない事実であったということだ。
 結果、このことは竜騎士団と、各兵団の団長にのみ知らされるところとなった。
 そして、もう一つだけ。
 王の念頭には、幼いカインの存在があった。

 七歳を迎えたばかりのカインは、二年前に実の母親を病で亡くしていた。生前の母親は理知的で
穏やかな女性であり、カインもとてもよく懐いていた。それだけに、彼女が死んだときの悲しみも
大きかった。それは五歳の少年にはあまりに受け入れ難い事実で、光に満ち満ちていたカインの
世界は一変してしまった。彼は大好きな槍も捨てて、父親とも口を聞かず、ろくな食事も摂ろうと
せずに、毎日部屋にこもったままベッドの上で泣き伏せるようになった。父親にもどうすることも
できなかった。叱ったり慰めたりしたところでどうにかなるようなことではない。結局、彼自身も
深い悲しみを抱えながら、ただ時の流れに任せるしかなかった。

246:竜の騎士団
05/10/14 00:04:30 5KjLTY+Q
 そんなカインを救ってくれたのは、幼馴染みのローザと、やがて学校で出会ったセシルだった。
ローザは毎日カインを見舞い、懸命に辛抱強く彼の心を癒した。そしてセシルは、彼のやさぐれた
心に再び槍への熱意の火を灯し、離別の悲しみからカインを遠ざけた。
 二年の歳月。時折、かすかな陰りを見せはするものの、ようやくカインの顔に昔の陽気が戻って
きだしていたのだ。
 それなのに。
 そんなカインに父の死を知らせればどうなるか。母の死を乗り越えたばかりの少年は、もう一度
肉親の死を乗り越えることが出来るのだろうか。かつて槍を捨てたように、今度こそ彼は自分の
生すら捨ててしまうのではないだろうか。王は躊躇した。
 既にその頃から大器の片鱗を見せていたカインには将来への期待も高く、できることなら時を
経て、彼が自ら事実を悟ってなおその悲しみに耐えることができるようになるまで待ちたかった。
 以前のバロン王ならば、例えカインを憂う気持ちはあろうとも、仮にも騎士の息子である人間に
そんな甘えは必要ないと思ったかもしれない。だが、セシルというかけがえのない存在を得て、
父親の心を知ったいま、彼にはそれがとても他人事には思えなかったのだ。

 しかし、そんな王よりも、もっとカインの身を案じている人間がひとりいた。


 さて、指導者を失ったとはいえ、依然として竜騎士団はバロンの周辺警備の要である。任務には
それまで以上の気負いであたる必要があり、任務をこなしていく以上、暫定的にでも次の団長を
取り決める必要があった。
 密かに行われた団長の葬儀から数日後。竜騎士団の団員達は騎士団副長の指示のもと、飛竜の
厩舎に集まっていた。厩舎と言っても、牛馬などを養う通常のそれとは規模が比べ物にならない。
何しろ住んでいるのが巨大な飛竜であるから、建物の方も厩舎というにはあまりに立派な代物に
なってしまい、団員達の間では「聖堂」などと呼ばれている。彼らがいかに飛竜を神聖視している
かがわかるというものだ。
 その聖堂の中心には、装飾を施された絢爛な台座が置かれている。飛竜の王座だ。
 玉座には、息をのむような美しい浅葱色の巨体を悠々と構えて、彼らの王が居座っていた。


247:竜の騎士団
05/10/14 00:05:04 5KjLTY+Q
「──では、これより継承の儀を執り行う」
 副長が整列した団員達に向かって宣言する。そう、竜騎士団の長を決めるのは彼ら竜騎士達では
なく、飛竜の王の意志なのだ。すなわち王がその背を許した人間こそハイウィンドの名を冠するに
相応しいということである。この規則のため、騎士団内にはもちろん階級の上下があるものの、
王の心次第で下級団員が団長となった例も過去に何度か見られる。
 副長は静かに王座に進み出た。団員の間に緊迫が走り、気づけば堂内の他の飛竜達も静かに
儀式の様子をうかがっていた。王が首をもたげ、透き通った瞳で彼をじっと見据えた。副長は、
ゆっくりと距離を詰めていった。
 この副長も、実は一角の人物である。寡黙で思慮深い彼は、常に冷静に物事の先を見渡すことの
できる智謀の持ち主で、有能な補佐官としてよく故団長を助けた。補佐官とはいえ、先代の頃には
故団長と同じ階級にあり、彼もまた有望な団長候補の一人と謳われていた。もっとも、彼がその
力を示す前に、王は別の人間を選んでしまったのだが。
 副長はさらに歩を進める。王は先程と変わらず身を横たえたまま微動だにしない。やがて二人の
距離は手を触れられるほどにまで近づいた。団員達は息をするのも忘れて、台上に見入っていた。
触れられれば、それはつまり許されたということである。いよいよという距離まで近づき、副長は
ゆっくりと手を伸ばした。かつては与えられなかった称号。ハイウィンドの名。それが今や目前に
あるのだ。この時ばかりは、冷静な彼の胸も激しく高鳴った。しかし、それはごく数瞬のこと。
彼はすぐに心を静まり返らせた。飛竜は人の心の波を敏感に察する。あくまで安らかに、落ち着き
はらった動作で手を伸ばしてゆく。
 そして彼の指がついに飛竜の身体を撫ぜた──と思われたとき、副長は素早く身を引いた。
一瞬遅れて王の尾が鞭のように撓り、彼のいた場所を叩きつける。後ろの団員達から思わず深い
嘆息がこぼれた。

 王は彼を選ばなかった。



248:竜の騎士団
05/10/14 00:06:27 xePae7Cx

 無理もない。むしろ当然の結果といえた。そもそも飛竜は、一生のうち一人の人間にしか心を
許さない。しかも成長すればするほど彼らは頑になる。そのため、通常は新たな王の誕生と、
主人の認識の儀式をもって竜騎士団長の位を継承することになっていた。それでも副長ならば、
あるいは──という一抹の希望があったのだが。彼ほどの男が認められなかった以上、
他に挑もうとする者もほとんどいなかった。
 結局その後にわずかな数人が挑み、最後の一人は逃げ遅れて尾撃の餌食になるという苦々しい
顛末をもらって、先行きに暗い影を残しながら儀式は中断に終わった。

 翌日から、とりあえず儀式については保留することにして、次期団長の取り決めについての
会議が開かれることになった。
 が、これがいっこうにまとまらなかった。
「ともかく早急に団長を決める必要があります。西方への遠征も控えているのですから」
「そうはいっても、我々の一案だけで裁ききれるほど容易い問題でもありますまい」
「王に決めていただいては如何か? 飛竜の王が裁かぬ以上、我らの王にご決断を仰ぐべきかと」
「王はこの件に関与しないと言われている。騎士団が解決すべき問題だと仰せだ」
「ならば私は副長殿をお立てしたい。副長殿ならば人格、能力ともに申し分無いでしょう」
「お待ちください! 継承の儀は初代の頃から守られてきた鉄の掟!
 それをないがしろにするのは、騎士団の教えに背く振る舞いではありませんか?」
「しかし儀式は行った! だが現に飛竜は主を選ばなかったでしょう」
「今は産卵期で、飛竜も気が立っております。時期を見て再度儀式を行えば……!」
「悠長な話だ! 早急な対処が必要であると申し上げたはずですぞ!」
「それは儀式に挑まなかった貴公の申し上げる所ではないでしょう!」
「そちらこそ、負け惜しみではないのか!?」
「何をッ!!」
 こんな具合である。
 次の日以後も、飽きもせずに毎回同じような議論の応酬の繰り返し。副長は、馬鹿馬鹿しいやら
苛立たしいやらでほとほとうんざりしていた。


249:竜の騎士団
05/10/14 00:07:20 xePae7Cx
 彼の頭を痛ませているのはそれだけではない。このところよく耳にする、団長の死についての
噂がそれだ。団員達が団長は暗殺されたのではないかなどと騒いでいるらしいのである。そんな
話が広まるにしても、良くも悪くも団長は皆に愛されていたということなのだろうが。
 だが、指揮官を失って騎士団に強い結束が必要とされている時期であるだけに、それを内側から
崩すような真似を見過すわけにはいかない。まことしやかな噂の類いを耳にする度に、副長は強く
部下を叱責した。自分が悪意ある噂の標的にされているらしいこともまた気に食わなかったが、
彼が真実案じていたのは、何かのはずみでその誹謗がカインの耳に入ることだった。
 副長は団長の急死以来、実によくカインを気遣った。ほとんど毎日のように、足繁くカインの
もとに赴き、近頃では自宅よりもカインの家にいることの方が多いくらいだった。
 というより、そこはもはや彼の家でもあった。彼は団長の死後すぐに、養う者のいなくなった
カインの後見を王に申し出ていたのだ。

 それは副長という立場にあった彼の忠誠心からの行為だったのだろうか?

「こんにちはご子息」
「こんにちは、フクチョウ」
 その日も学校帰りのカインを捕まえ、そのまま家路をともにした。
 ご子息、という言葉の意味を解していない様子のカインは初め、私の名はカインです、などと
主張していたものだったが、やがてそのルールに気がついたらしく、素直に彼をフクチョウと
呼ぶようになった。副長はこのやりとりが大好きだった。
「傷だらけのところをみると、どうやら槍の稽古の帰りですかな?」
「うん、またセシルと訓練をしたのです。今日は私の方が負けてしまいました」
 すこし悔しそうに、けれどどこか誇らしそうに語るカインの横顔を見ながら、副長は内心で舌を
巻いた。生まれ持った天賦の才に加え、玩具の代わりに槍を使い続けてきたカインの成長ぶりは、
その幼少の頃から良く見知っている。技だけなら、もはや騎士団の下級団員すら打ち負かせるほど
だろう。
 そのカインを負かすとは……。
 子供というのはまったく末恐ろしい。そう思う自分は随分年をとったものだなと、ふいに何だか
可笑しくなり、笑った。カインも笑った。



250:竜の騎士団
05/10/14 00:07:51 5KjLTY+Q
「でも私もだいぶ上達したと思います。父上にもぜひ見ていただきたいものです。今度の遠征は
随分と長いようですから、お稽古を付けていただくのが待ち遠しいです」
 かりそめの陽気がうすれ、また副長の心にいつもの罪悪感がたちこめだした。
 父はもういない。何度も何度も顔を合わせながら、彼にはどうしてもこの子にその残酷な事実を
告げることができないでいた。

「任せてよいのだな」
 後見を申し出たとき、王は副長にそう尋ねた。くたびれた目尻にいっそう皺を寄せ、王は冷たい
押しつぶすような眼差しを副長にぶつける。静かな威圧が、言葉以上に雄弁に問いかけた。
 時期を得てカインに事実を告げると言う大任。それを委ねてよいのだな、と。
 彼は即座に頷いた。
 だが、実際それはあまりに重い役目だった。第一、事実を告げればその重圧はそのままカインに
のしかかるのだ。副長は隣を歩くカインに目をやる。視線に気づいたカインは、無邪気な笑顔で
それに応えた。この笑顔を曇らすことなど、どうして自分に出来るはずがあろうか。
 彼は本当にカインを良く知っていたのだ。しわくちゃな顔で泣きわめく赤子の頃も、槍を支えに
立ちだした頃も、そして母を失った苦しみに悶えていた頃も、ずっと見ていた。初めてゴブリンを
倒したときも側にいた。入学式に参列した時などは、本当に我が子のような気すらしたものだ。
 けれど、カインは彼の息子などではない。たとえ副長が後見を引き受けようとも、カインが父の
死を知らない以上、彼はカイン=ハイウィンドであり続ける。そしてカインがそれを知ったとき、
彼が何を選ぶかは誰にも分からない。

 まだ早い。
 そうしてまた、彼はいつものいいわけを心の中でつぶやいた。まだ早い、と。
 その言葉が通用しなくなる時期は、すぐに訪れると分かっていながら。
 そして今日も、空っぽのあの家にカインと歩いていくのだ。


251:竜の騎士団
05/10/14 00:08:41 xePae7Cx
「それではご子息、いっそのこと、これを機に父上を追い抜かしてしまってはどうです? 
 お帰りになったお父上がさぞ驚かれることでしょう」
 その提案は、カインの幼心に火をつけたようだった。
「そうだ! 今のうちなんだ!」
 言葉遣いに気をつけるのも忘れ、興奮した様子で槍を振り回しながらカインは駆け出す。
その様子をとても愛おしく思いながら、副長は淋しげなため息を漏らした。
「フクチョウ、お願いします! 稽古を付けてください!」
「もちろん喜んで。ただし、夕食を食べ終わってからですよ」
 にわかに夕日が沈みだし、城下を歩く二人の先に真っ赤な影を引いていた。


「しばしよろしいか? ひとつ気になったことがあるのだが…」
 相も変わらず煮え切らない会議の最中、一人が唐突に口を開いた。
「いったい誰が飛竜の世話をされているのか?」
 同席していた一同ははっと驚き、顔を見合わせた。
 飛竜は恐ろしく誇り高く、そしてまた忠実な生き物である。主人以外の一切の者を受け入れず、
誰も近づけようとしない。であるから、飛竜の世話は当然その主君にしかできない役目である。
そして、子を産み主人に先立たれ、役目を果たした飛竜は食することもせず、ついにはそのまま
息絶えてしまう。本来ならば長命な飛竜が、その気高さゆえに自ら死を選ぶのだ。
 一般にあまり知られていない事実だが、恐ろしいことにバロンにおける飛竜の死因の九分九厘は
「餓死」である。固い鱗に覆われた強靭な肉体は魔物の鋭い爪も通さず、疫病も彼らを蝕むことは
出来ない。飛竜を傷つけられるのは、彼ら自身の内に光る、「誇り」と言う刃だけなのである。
 加うるに、若き王竜にはまだ子がいなかった。王の血縁が絶たれては取り返しがつかない。
 飛竜の身を案じた団員達はすぐに会議を中止し、すぐに聖堂に向かった。ところが、台座に王の
姿はなかった。厩番に尋ねてみても飛竜はどこかに飛び去っていったきり戻ってこないと言う。
そう聞いてとくに焦る様子もなく、騎士達は聖堂を後にした。忠義深い飛竜が、しかもその王が、
わけもなくバロンを遠く離れるようなことはあり得ない。となれば自ずとその行方も絞られる。
副長はよく知っている道を部下を連れて、城外のハイウィンド家に向かった。


252:竜の騎士団
05/10/14 00:11:57 5KjLTY+Q
 夜分、それもだしぬけに騎士団の重鎮達がやってきたものだから、初老の女中はひどく驚き、
すっかり取り乱してしまった。飛竜はどこにいるかと声高に問いつめると、震える声で中庭に
案内された。庭に出た一同は、息をのんだ。
 そこには果実を食みながら静かに横たわる飛竜と、小さな少年の姿があった。

 皆、唖然としていた。カインは自分をみつめる大人たちに気づき、ぺこりと頭を下げてから、
彼らの見守る前で飛竜に果実をあてがった。
「……ご子息、どうやってその飛竜を手なずけたのです」
 副長が代表して聞いた。カインは落ち着きはらって答えた。
「いいえ、手なずけてなどおりません。私は父の帰りを待っておりました。それでどうやら、
父の竜も同じのようでした。ですからこうして二人で待っているだけです」
 カインが飛竜の首筋をなでてやると、竜は穏やかに喉を鳴らした。 
 騎士達はそれでもなお信じがたいという表情で立ち尽くしていた。その中で副長がただひとり、
その身を深く恥に染めていた。
 何ということだろう。自分はいったい何年もの間、竜と共に生きてきたのか……。
 この若々しい竜は知らないのだ。己が主君の死を。未だに主の帰りを待ち続けているのだ。
それを新たな主人に従わせようなどと、屈辱もいい所である。誇り高い飛竜が二心など抱こう
はずもなかった。
 なんと自分は浅はかで、傲慢だったことか。……それなのにこの子は……カインは…。
「──ご子息、とんだ夜分にお邪魔をいたしました。これにて我々は失礼いたします」
 顔を上げた副長が一礼してその場を去ると、呆然としていた男達も我に返り、その後に続いて
ちらほらと引き上げていった。
 カインは黙って飛竜にもたれこんだまま、ぼうっと空を見つめていた。
 不思議と、その瞳は飛竜のそれととてもよく似ていた。



253:竜の騎士団
05/10/14 00:12:40 5KjLTY+Q

 それからひと月ほどがたったある日のこと。
「副長! 外を!!」
 血相を変えた部下が執務室にかけこみ、副長を外に連れ出した。
 まもなく耳に入ってきた巨大な羽ばたきの音で彼は事態を察した。
「ご子息!」
 優雅な白い両翼を広げた飛竜の王が、その背にカインをのせて飛んでいた。
(──信じられない! 飛竜が主人以外の人間を背に乗せるなど!)
 しかし現実にカインは竜の首を撫でて誘導すると、副長のそばまでゆっくりと近づいてきた。
「フクチョウ、父を捜して参ります。どうかご心配なさらないでください」
「カインッ!!」
 思わずその名を呼び止めた時には、既に飛竜は空の彼方を泳いでいた。
 ──言えなかった。あの子に事実を、言えなかった。
 しばし立ち尽くしてから、彼はやっと思い立って自分の飛竜を呼び寄せようとしたが、すぐに
やめた。彼の竜では王に追いつけるはずもなかった。
 

 数日後。

 帰ってきたカインは異様だった。
 

「ご子息……」
 カインは飛び去った時と同じ、訓練場に戻ってきた。既に集まっていた騎士達を押しのけ、
広場の中心にいるカインの姿を見ると副長は思わず声を漏らした。
 ひどい有様だった。たった数日前まで陽気に溢れていた顔は、いまや生気を失った土気色で、
丸みを帯びていた頬は痩せこけて骨が浮き出ている。大きな瞳は落ち窪み、灯火の消えたような
哀しい色に染まっていた。──あの時と同じだ。

254:竜の騎士団
05/10/14 00:13:28 5KjLTY+Q
 だが、ひとつだけ違う。カインはうずくまりながら、一本の槍を抱え込んでいた。その場の
誰一人としてその槍に見覚えのないものはいない。切っ先だけでなくその柄までを黒ずんだ血糊に
染めた長槍は、彼らの団長、カインの父のものだった。
 そんなカインと槍を包み込むように、飛竜がその身を寄せていた。
「………」
 はじめに、途方もない無力感。次に思い出したような責任感が、そして洪水のようにおしよせた
言葉がめまぐるしく副長の頭をかき回した。
 恐れていたことが現実となってしまった。とうとうカインを守ってやることが出来なかった。
 悔いたところで今さらどうにもならないだろう。今はただこの子を救いだせる言葉が欲しい。
 だが何を言ってやればいいのだ。いや、何か言う権利が自分にはあるのだろうか。
 わからない。誰か教えてくれ。私はどうすればいいんだ。どうすればこの子の力になれる……。

 困惑しながら目を伏せていた副長は、ふいに背後で騎士達がざわめくのを感じた。
 顔を上げると、いつのまにかカインは立ち上がっていた。そしてぎこちない手つきで槍を返し、
その切っ先をゆっくりと顔に近づけた。
「よせッ!!」
 危険を感じた副長は槍を取り上げようと駆け寄りかけたが、彼の予想に反してカインは刃先の
血を拭っただけで、すぐに槍を握り直すと、そっと飛竜の首筋に手を這わせた。そして彼の首に
かけられた一条の金色の綱を断ち切った。飛竜の王たる印、そしてその束縛を解き放ったのだ。
 その場の全員が呆気にとられた。王から王へと受け継がれる偉大な勲章を、ほんの七歳の子供が
あっさりと切ってしまったのだ。飛竜自身も戸惑っているようだった。訝しげに首をひねったり、
身をよじったりして、そのうち足下のカインに目を向けた。カインが頷いてやる。すると竜は
勢いよく飛び上がり、雄大な両翼をはためかせて遥か上空を舞い踊った。主人を失った悲しみと、
自由を与えられた歓び、その両方に彼は高々と雄叫びをあげた。


255:竜の騎士団
05/10/14 00:15:16 5KjLTY+Q
 その様子を見上げ、カインはほんの少しだけ笑った。そして副長に向き直った。
「フクチョウ。ご心配をおかけしました……」
「…ご子息……」
「父の………槍です」
 両手で槍を差し出すと、少年は深々と頭を下げた。彼がそうしたまま、しばらくの時が流れた。
副長の心にはまたいくつもの言葉が駆け巡った。慰め、謝罪、賞讃、そしてそれらは全部、やがて
ひとつの想いに溶けていった。何も必要な言葉などない。ただ誇らしかった、なぜなら。
顔を上げたカインは、もう幼子ではない精悍な男子の面構えになっていたから。

 再び羽ばたきが近づき、見上げると飛竜が戻ってきていた。忠臣である飛竜は、自由をその翼に
与えられてなお、迷っているようだった。
 そんな飛竜を後押ししてやるように、カインは淋しげに首を振った。

 だが、彼は飛び去らなかった。じっと宙に浮いたまま、カインを見つめていた。
 カインはもう一度首を振る。そうして手で示した。お前は自由なんだよ。空に帰るんだ。
 けれど、飛竜は深い穏やかな真紅の目にカインを映し続け、やがて再び声を上げた。そして
カインのもとに降り立つと、頭を垂れて双瞼を閉じた。
 

 王は、カインを認めたのだ。



256:竜の騎士団
05/10/14 00:21:26 5KjLTY+Q

 騎士達はうち震えていた。
 ある者は胸に手を当て、ある者は槍を掲げ、またある者は感服の涙を流していた。
 彼らは同じ竜と生きるものとして、幼いカインに対する畏敬の念を隠せなかった。
 そしてこの日、副長の提案と共に、バロン竜騎士団全員の賛をもってある決定が下された。

『バロン竜騎士団団長は不在とする!
 カイン=ハイウィンドが竜騎士となるその時まで!』


 当然ながら前例のないのことであったが、騎士団全員のたっての願いともあり、王もこれを
認めた。彼もまた王である前にひとりの騎士だった。
 また、もちろんこの決定はカインに知らされることはなかった。慢心かあるいは重圧か、その
どちらにしてもカインに与える理由はなかったし、カインならば必ず自ずから相応しい騎士に
なるだろうと誰もが確信していた。
 そのカインだが、このことがあってから彼は少しばかり無口になり、昔ほど感情を外に出さない
ようになった。もっとも彼と親しい人間からしてみれば、中身はちっとも変わってなどいないと
いうことらしかったが。
 それからハイウィンド家はそのまま残された。副長はカインに後見の旨を告げ、自分の邸宅に
移住することもできると話したが、カインは家に残りたいと言った。副長もその方がいいと思った
らしく、カインはまた空っぽの家に帰る日々を送った。それでも彼らはたびたびお互いの邸宅を
行き来したし、カインはすっかり彼を父親として受け入れていた。傍目にも、二人は本当の親子の
ように見えた。
 副長は事実上の団長という地位にありながら、長きにわたって補佐という名目を守り続けた。
彼はことあるごとに団長と言う言葉を口にし、常に自分の上に指揮官がいるように振るまった。
はじめそれはひどく奇妙に見えたが、いつのまにか団員達も見えない指揮官を信頼するように
なっていった。騎士団は不思議な結束で力強く保たれていた。
 そしてカインが竜騎士となったその日、架空の指揮官は現実となったのだ。



257:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/10/14 00:40:10 Yyy4taEY
・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編
ってやつですね。
>>297
カインかっこいいよ
Gj

258:297
05/10/14 00:42:27 5KjLTY+Q
ごめん、回線不調。まだ終わってない……。

あと>>244投稿ミスしました。


 一つは言わずと知れた飛空艇団、通称「赤い翼」だ。空を覆い尽くす鋼鉄の船団から落とされる
爆撃はいかなる堅固な城塞もたちどころに粉砕し、暗黒騎士セシルが率いる精鋭騎士団は無敵を誇る。
 そしてもう一つが、竜騎士団である。



ではもう少し続きを。

259:297
05/10/14 00:43:19 5KjLTY+Q

 竜騎士団の入団式。
 この年の式はバロンの歴史に刻まれる一日となった。

 若き見習い騎士達はひとりずつのその名を呼ばれ、彼らの所属を申し伝えられる。名を呼ばれた
青年達は次々と壇上に上がり、騎士勲章を受け取ると、まだ幼さの残る顔を誇らしげに輝かせて、
各々の隊の列に散っていった。
 ところが、カインの名だけが呼ばれない。
 そして、
「続いて騎士団長任命の式典を行う」
 途端に会場内の騎士達が一斉に立ち上がった。どうやら事情を聞いていたらしい新人騎士も
すぐに立ち上がり、何も知らない者だけが慌ててそれに習った。式典進行の騎士は、再び声を
張り上げる。
「竜騎士カイン=ハイウィンド、前へ!!」
 驚きながらも前に進み出るカインの目に、壇上で待つ副長の姿が映った。そうして壇に上がった
カインが礼をしようとした時、それを遮るように副長は深く跪いた。 
「副長……! これは……!?」
「お待ちしておりました、団長」
 驚くカインに、副長は優しく事実を告げる。
「団長? まさか…!?」
「そうです。我々はあの日から、ずっと貴方をお待ちしていたのです。
 ………長い間でした。これでようやく肩の荷が降りた思いです」
「お待ちください! そんなっ、私はそのような器では!」
「いいえ、貴方は長として必要な資質を全て備えられている。それでも足りぬと言うのなら、
どうか我々に貴方をお支えさせていただきたい」
「ですが……副長…」
「さあ、この槍をお返ししましょう。これは貴方が持つべきものです」
 副長は一本の槍を差し出す。忘れるはずもない、幼い日の彼自身が見つけ出した槍だ。
 彼の手はあの時よりもずっと大きくなったのに、槍はなおいっそう長く重々しく感じられた。



260:竜の騎士団
05/10/14 00:44:44 5KjLTY+Q

「団長、後ろをご覧なさい」
 振り返ると、背後には整然と立ち並ぶ騎士達の姿があった。よく知った顔も、嫌いな顔もあり、
幼い頃に憧れた者の顔もあった。誰一人として彼より若いものなどいない。その全員が、自分に
敬礼をしているのだ。カインは身震いした。
「副長……彼らが私などを認めるはずがありません。私には……」
「ご子息」
 副長は、彼ら二人だけの間の暖かい口調で囁いた。
「貴方はご自分の名をお忘れか?」

 そうして彼は、カインの持つ槍の柄をゆっくりとなぞった。槍は美しく磨き上げられており、
そして、かつては血糊で見えなかった、柄に刻まれているその文字をカインは見た。

 ハイウィンド。

 胸が震えた。先程の震えとは違う。身体の底から、突き上げるような震え。
 血が騒いでいるのだ。カインは悟った。そして槍を強く握りしめると、ふいにその重みは風の
ように消え失せた。
 ハイウィンドの血が、カインの右腕を高々と押し上げた。
「──騎士団に栄光あれ!!!」
『騎士団に栄光あれ!!!』
 騎士達は沸いた。若き騎士達はその威容に見惚れ、往年の団員達は懐古に胸を焦がした。
 誰もが確信していた。竜騎士団は不滅だ。誇り高き騎士団に、栄光あれ。

 王を失った竜達は、あらたな王の帰還に雄々しく吼えた。




261:竜の騎士団
05/10/14 00:47:20 5KjLTY+Q
 式典が終わり、にぎやかな祝宴の幕が開いた。街中の酒屋から集めてきた酒樽をひっくり返し、
一同浴びるように飲みまくる。厳正な規律を重んじる騎士団とはいえ、この日だけは無礼講だ。
熟練の隊長も、青臭い見習い騎士も、まるで百年の友のように肩を組んで酒を飲み交わす。
 そのうち壇上に人が集まりだした。宴会恒例の時間が訪れたのである。竜騎士団の入団式では、
新人騎士達が練習仕合を披露することになっているのだ。もちろん既にかなり酔いが回った頃合に
行われるから、素面なら見れたものじゃない泥仕合がほとんどになってしまうのだが、祝酒の肴と
しては十分というものだ。
 もっとも今年はカインがいたため、かなり一方的な展開が繰り広げられた。同年代どころか、
城内を探してもほとんど無双の腕前を持つカインである。多少酔っていても、その凄まじい槍技は
粗を見せない。流石は団長よ、と観衆も大いに沸き立っていた。
 そして、最後に壇上に上がった一人によって、観客はさらに盛り上がる。
「……胸をお借りしてよろしいですかな、団長?」
「望むところです、副長……!」
 一礼を交わし、副長とカインは向き合う。槍を構えたまま彼らは微動だにしない。お互いが機を
窺いあっているのだ。いつしか騒いでいた一同もぐっと壇上に釘付けになっていた。
 勝負は一瞬で終わった。
 目にも止まらぬ速さで突き出された槍は、互いの武器を寸分無く捉え、キインと鋭い音を立てて
頭上高く二本の槍が舞った。相打ちだ。
「とうとう追いつかれてしまいましたな」副長が悔しげな顔をつくり、頭をかいてみせる。
「酒のおかげでしょう」
 笑いあい、二人は握手を交わした。
 素晴らしい試合に一同惜しみない喝采を贈り、後はもう日が暮れるまでひたすら飲んだ。
 副長も彼にしては本当に珍しく、どっぷりと酔っていた。彼に付き合わされていたカインは、
後ろの方で伸びている。やがて宴は全員での団歌熱唱で幕を引き、皆千鳥足で夜道を引き上げ、
残りのものはその場で泥のように眠った。
 空では星がひときわ美しく光っていた。


 そしてその夜。


 副長は自決した。


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