FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2at FF
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2 - 暇つぶし2ch57:犯罪
05/09/19 15:53:41 9WoHQDpV
ガーデンブルグ国に男はいない。統治も軍旅も耕作もすべて女が行っている。
幼くして即位した現女王は、糸繰りの技も機織りも、あるいは詩歌管弦、文学・哲学にも
まったく心を向けず、ひたすら手痛い戦闘と、風切って野を駆けることばかりを考えていた。
まとった紫衣を細腰できつく帯し、背に矢筒を負い槍を手にして
女王の日々の楽しみといえば、鹿だの猪だの、山野の野生動物を打ち殺すことばかり。
城を囲む深森に獣を追うとき、畑々の麦穂を縫って走るとき、
束ねた髪は背になびき、吐息も軽く駆けゆけば、
サンダルの足裏は地に触れず、あたかも空中に飛ぶようであり、
しなやかな身体の躍動に、国中の女たちはみな戸を出でて驚嘆しつつ眺める。
弓矢を置いて樹に立て掛け、前髪を払って汗をぬぐえば、
衣を通して上下する、わずかな胸の膨らみははじめて分かる。
岩に腰つけて足先を揺らせば、すっきりとした脚線はあらわに伸びて
女たちは驚き、女王は朗らかに笑い返す。このようにガーデンブルグの民は女王を崇拝していた。

ガーデンブルグ国に男はいない。鎖国して余所者を閉め出していたが、
一日、永の沈黙を破り、この国に訪れる客があった。
世界を旅する勇者と聞いて、国中の女たちが見物に来る。
緑の髪の少年は美しく、その旅と冒険、魔法と戦闘の物語は、うら若き女王を心から楽しませた。
王国に伝わる宝物の盾、金銀の数々を気前よく贈っても、旅人たちはまた行ってしまう。
少年は女王の華奢な手を取ってくちづけた。一夜来たり、また去りゆく。

その夜、城内で犯罪があった。女王のシスターが朝起きると、大切な十字架がなくなった。
勇者一行は法廷に引き出された。女王の治めるこの国に、あえて大罪を犯すものはいない。
そう、盗みは死罪。盗まれた『ブロンズの十字架』の代わりに、彼ら全員の身を磔に架けよ。
あおざめ震える仲間たち。

少年は毅然と立ち、反論した。
「僕たちが真犯人を捕まえてみせます。仲間の誰かを人質に取ってもらえませんか」

女王ははにかんで、微笑んだ。
「あなたがわたしの人質よ。もしも裏切ったら、命はないわ」



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