05/12/18 20:42:09 Utt11/rB0
あ、ちなみにDQⅢものです。
「シヴァよ、支度は整ったようだな」
教会の屋根裏の自室で旅の準備を終えたぼくの背中に、養父である神父が声を掛けた。
「はい。後は開門を待ってエリスと共に城へ赴き、国王陛下に出立のご挨拶を」
「オルテガの娘か…早いものだ。あの娘も、もう今日で十六になるのだな」
アリアハンの英雄オルテガ。この街で彼の名を知らぬ者はいない。
彼の一人娘のエリスとは幼馴染みで、一つ年上の彼女とぼくは姉弟のように育った。
捨て子だったぼくが虐められようものなら、勝気な彼女は必ず飛んできて庇ってくれた。
「シヴァは教会の子よ。その証拠にいじめたら天罰が下るわ」
相手が例え年上でも、自分よりはるかに体格の良い男の子でも、彼女は決して物怖じしなかった。
「たとえば、あたしに痛い目に合わされたり…とかね?」
滅多に抜きはしないものの、いつも肌身離さない練習用の銅の剣。そして父親仕込みの、大人にも引けを取らない剣術の腕。
それに裏打ちされた自信は、力と数が頼みの虐めっ子たちさえ黙らせるには充分であった。
「またいじめられたら、いつでも言うのよ!」
エリスは強い。誰にも負けない。
あの日まで、幼いぼくは何の疑いもなくそう思っていた。
だが。
あれは今から八年前。王都アリアハンに一通の知らせが届いた。
ネクロゴンドに突如現れた魔王を討伐するため単身その根城に向かったオルテガが、配下の魔物との激闘の末に火山の火口に叩き落されて消息を絶ったという、事実上の訃報であった。