FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2at FF
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2 - 暇つぶし2ch181:ある女の肖像 ◆JSHQKXZ7pE
05/11/21 20:12:43 vXN59M/UO
2.
それからはずっと、密かに反ウィニア包囲網を敷くことに持てる力の全てを注ぎ込んでおりま
した。これには父の立場も大きく物言いました。絶対的な王権の前に押し黙ってはおりました
が、本当は私を未来の王妃にしたくて仕方なかったのですから。私はただ、それとは気付かせ
ずに父の野心を煽るだけでよかったのです。そして恥ずべきことに、対外的にはお二方のご結
婚を心から祝福しているふりをしていたのでした。
ですが神様はそんな私の醜い心もお見通しだったのでしょう。ついに罰が下る日がやってきた
のです。

ある夜、城に巨大な影が降り立ちました。竜です。地上最強と言われながらも直に見た者は誰
もいない、伝説の生き物がサザンビーク城のテラスで咆哮しています。私はその時城ではなく
家にいたのですが、その声ははっきりと聞こえました。
「娘を返せ」
と。ではあれがウィニア様の父君か、と思う間もなく新たな声が重なります。
「殺すのなら私だけを殺せ!他の者は巻き込むな!」
エルトリオ様のお声でした。風向きが悪く確とは分かりませんでしたが。
「…いい覚悟だ。我が娘を誑かした報い、その身に受けるがよい!」
「エルトリオ様!」
竜の炎は城一つをも容易く焼き滅ぼすとか。そのようなものを身に受けてはいかにお強いあの
方であってもひとたまりもないでしょう。私は思わず部屋のテラスから身を乗り出して叫んで
おりました。聞こえる筈もないというのに。
が、しかしその後続くと思われた破壊と殺戮の炎は起こりませんでした。時折低く竜が鳴く音
がするばかりで後はしんとして何も聞こえません。居ても立ってもいられなくなってお城へ向
かおうとしたのですが、親に止められてそれは叶いませんでした。
状況が全く分からずただじりじりと城を見上げることしかできぬうち、竜は不意に空へ飛び立
ちました。その背には夜目にも白い何かが乗っています。
「ウィニア!」
ウィニア様でした。城壁に駆け寄るエルトリオ様─これは下からも見えました─を振り返
りつつも、そのまま西の空へと消えて行ったのでした。
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