05/07/05 06:02:18 YSqLISmg
「ブライ殿、このパーティには致命的な弱点がある。そうは思われぬか?」
ライアンはカップに注がれた酒を軽くあおると、隣の席に座る老爺に話しか
けた。
ここはエンドールの酒場である。ライアンとブライはカウンター席に陣取っ
て、二人ちびちびと酒を飲んでいた。もうすでに夜も更けて久しい。もちろん、
エンドールの酒場が活気を失う時間でもなかったが、旅の疲れもあってか彼ら
の他の仲間たちはすでに各自の部屋に引き上げていた。
「はて、弱点とな?」
酒が入っていることもあるのか、ライアンの口調は少々愚痴めいた響きを伴
っているようだ。
サントハイム王宮付きの魔法使いは、わずかに眉をひそめた。
彼らのパーティはかなりの大所帯だ。寄せ集めとはいえ、直接攻撃要員、攻
撃支援要員、補助・回復要員、出納係と数はそろっており、それぞれ成長の余
地は多分にあるもののバランス自体、悪くはない。
ブライがそう指摘すると、ライアンは軽く首を振った。
「そういう事ではないのです。なんというのかこう……」
言い淀んで、ライアンは自らのピンと伸び上がったひげの先を指先でしごい
た。
「そう。言うなれば若い者たちに向上心が足りぬのではないかと思うのです。
まあ、市井の者であれば、そういう事に心行き届かぬのも仕方あるまいと納得
もできるのですが……」