05/08/22 15:15:53 37/iqvHU
むかしローレシアのモョモト王子は、魔法で織られた絹のつばさ、
『風のマント』を身にまとい、塔の頂から飛び立った。
眼下に荒れ狂う海峡は、竜のあぎとの名のごとく、
すべてを飲み込む貪欲な渦、行き交う船も絶えてない。
ドラゴンの角の一方から他へ、モョモト王子は空を飛ぶ、
不撓不屈の勇気を胸に。
モョモト王子は空を飛ぶ。
愛と勇気は友だちさ、でも一人じゃない。
右手にサマルトリアのトンヌラ王子、
左手にムーンブルクの犬姫をつなぎ、
海上を三人でグライディン。
「すばらしく気持ちがいい」
とトンヌラ王子。
「勇者がトべるって本当だな」
「やみつきになりそう」
と犬姫。
「船なんかいらないわ。もっともっと」
あまり二人がはしゃぐので、モョモト王子も男気を出した。
海峡を越えてさらに飛ぶ、目指すルプガナがみるみる近づく。
ところが不思議な魔法のつばさ、『風のマント』も限界だった。
あまり長時間展開していると、太陽熱で溶けてしまう。
「なんかやばいぞ。失速してないか」
「きゃー! きゃー!」
最後の力で二人を森に放り出し、モョモトの翼は空中分解した。
つばさ奪われモョモトは、
落ちて命を失った。いや、危うく死ぬところだった。