05/07/25 23:51:17 Md0y9ov4
300get
301:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 18:30:23 PYN9Ul6N
圧縮の間隔が短くなってる…気を付けないと。
と言って雑談できるようなネタは何もない。
うーん、ミーティアの水着は何色がいい?
…こんなくだらんネタしか思い付かん。
302:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 21:10:05 pTe1MxB6
水着の色は黒がいいなぁ(*´ー`)
ちょいハイレグで。
303:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 21:13:40 QfuqSiMu
>>301
自分は白がいいかなぁ。
みーたんの黒髪には白が映えると思うし。
水着で髪を結い上げたりしたらもう・・・(*´Д`)
>>299
「あるきかた」いよいよ出るんだね。
そういえば、ドラクエ8の4コマはもう何冊か出てるのかな?
みーたんはネタバレになるせいか、何だか公式物では永遠に出てきそうにない・・・
304:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 22:28:55 KMCEBjWN
白地に紺の柄付きで。
髪はアップで。
305:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:09:52 13QxqL5U
貧乳みーたんはやっぱり水着の中にパット仕込んで、
足りない胸を補ったりしているんだろうか…。
306:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:11:53 13QxqL5U
あ、色は青系統も可愛いと思う。
ビキニよりワンピースがいいかな。
307:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:18:37 dqErfDkl
フリルたっぷりでボリュームアーップ!かもしれんw
寒色系がかわいいかもね。
逆に踊り子の服みたいなオレンジとかはイマイチな気がする。
308:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:25:27 dqErfDkl
おおっ、IDがdqじゃん!記念にもう一回書き込んでしまえw
ワンピースだと体形まるわかりだぞ。ナイチチがますます強調されるとオモ。
むしろビキニで視線を散らすのじゃ!
309:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 01:30:27 31zQrtRm
待て待て。今305がいい事を言った。
パットが入っているみーたんの胸に、エイトが「…んっ?」
萌える(*´Д`)
310:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 11:09:34 9HaVokTU
ミーたんは巨乳ではないがナイチチでもなく美乳だと主張してみる。
アンダーが分かりずらいのとゼシカとの比較で目立たないけど
普通にCあると思うんだが。
311:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 22:17:48 GkubdKvu
あんまりみーたんを貧乳とかナイチチ言わん方いいぞ。
ほれ、向こうで槍を構えてジゴスパの準備している奴がいるw
312:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/28 00:06:29 tBgjEIHp
じゃあ、貧乳とか言わずに「ささやかな胸元」とか「慎ましやかな膨らみ」とか。
>>308
ワンピースだと体形まるわかり…そうなのか。
しかしみーたんは胸元がちょっと寂しいくらいで、普通以上にスタイルはイケてると思うが。
313:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/28 09:36:59 jspuUdRb
リアルのパートナーも微乳だなあ。俺は、やっぱり微乳好きなのか・・・・。
314:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 08:11:25 mEfQvtXc
あげ
315:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 11:46:23 ggjwLZqh
ブロリーの究極技がギガティックミーティアな件
316:周允 ◆EoZJlWK/TE
05/07/29 11:51:45 ClMfgAPl
>>315
Gigatic Meteorですかw
317:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 19:13:17 raC7fTwk
URLリンク(rerere.servebeer.com)
みーたんはあれで丁度いいんだよ。
318:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 00:25:50 uyHdtFMJ
>317
どこキャプってんだよw
でもみーたん言われているほど貧乳じゃない。
通常EDで「はい」選択の後、手を取り合うシーンのみーたん、いい感じであるよ。
身体自体が細いから迫力はないけど、個人的にあれくらいがすきだ。
319:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 03:03:54 Cr137D6m
863 名前: 名無しさん@どーでもいいことだが。 [sage] 投稿日: 2005/07/29(金) 23:02:15 ID:UtYzcd4f
DQ8のとあるノマカプスレに時々沸くオヴァ臭プンプンする小姑自治厨がウザイ。
某カプと違って厨が居なくて荒れなくて平和だと思ってたのに
奴らのせいでギスギスしだした。
馴れ合いをちょっと注意しただけでもギャーっと噛み付く。
他の某板に巣食ってるリア厨ぽい厨とはまた違った感じの厨だ。
320:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 11:20:42 in/0P+5H
>>317
左の方がイイ。
321:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 14:22:22 Jf/Kjr2y
品のいい胸。品乳。
322:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 20:14:58 xxHetfPa
美しい胸。美乳。
323:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 13:13:22 fMuXzn/S
オパーイがイパーイ
324:小ネタ6 ◆nefbuGknog
05/07/31 15:06:38 mwnx2xIO
「いなくなって初めてゼシカのありがたみってもんが
じわじわと 身にしみてくるぜ。 」
「まったくでがすなぁ。あの胸は反則でがすよ。」
「オレも初めて見たときは胸に水風船でも入れてんのかと
見まちがったくらいだからな。」
「………」
「お前だっていくら姫さん一筋でもちょっとくらい
あの胸に心が動くことがあったんじゃないのか?
正直に言ってみろよ」
「いや別に」
「兄貴はククールと違って真面目なんでやんすよ!ね!」
「女の子は胸より脚だろう?」
「すまないがその持論からゼシカより姫さんがいいとなる理由を
なるべく詳しく教えろっつーか教えてくださいお願いします」
「ハ、ハレンチでがす!ハレンチでがすよ!!」
325:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 15:07:18 mwnx2xIO
ムラムラしてやった。
主姫なら何でもよかった。
今は反省している。
すんません今思考がギャルゲー風味です。
各コネタ間のつながりはありません。全然。全く。
つーかこれ主姫か?
326:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 17:16:07 pwabyc03
>324
ちょっと待て!見たんか?見たんだな?!
…くうーっ、羨ましいぜエイト!
チチもいいが脚も大事だよな!
327:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 17:28:47 0ONBr6mA
考えてみたらミーティアの足は神秘のベールに包まれているな!
旅の間馬車を引いて、さぞかし引き締まった美脚なんだろうなぁ!
くそー(*´Д`)ハァハァ
328:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 20:51:06 mwnx2xIO
これを書くに当たって最初にしたことは
この会話が町の中だということを確認することでしたw
>>327
見えないからこそ想像の余地はいくらでも(*´Д`)ハァハァ
329:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/01 23:47:03 q2Qo+PlN
むおーっ!絵板にみーたんの水着姿が!
(*´Д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
描いた方GJ!×10
330:香りの呪縛 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/02 22:30:35 607NLpnP
城は活気に溢れていた。
もうすぐあの方の十八回目の誕生日がやってくる。その準備に皆、忙しくしていた。
今年は例年にも増して盛大に執り行われるはずだった。
「この城で祝われる最後の誕生日になられるはずだからね。王様もお力が入っていらっしゃる
よ」
と、同僚は言っていた。
最後の誕生日…分かっていた。分かっていたはずだった。あの方は古い約束に従っていつかは
嫁ぐためにこの城を出て行ってしまうと。そして誰かの、僕以外の誰かの妻になると、頭では
理解していたつもりだった。
でも実際にその現実を突き付けられると、後頭部を激しく打たれたかのような衝撃に目が眩む。
それにそんな約束があろうがなかろうが、あの方はいつかどこかの王族か大貴族と結婚するに
決まっている。一介の近衛兵である僕がどうしてこの国の王女にして正統な王位継承者である
あの方と結ばれることがあるだろう。そんなことはお伽話の中でしか起こらないことなのだか
ら。
懸命に自分の心を落ち着かせようとしたけど、
「どうした?唇が真っ青じゃないか。どこか具合でも悪いのか?」
と気付かれてしまった。何と言ってその場を取り繕ったのか覚えてないけど
「何か悪い物でも食べたんじゃないのか?具合悪いなら無理するな」
と心配される。
「大丈夫です。それよりほら、向こうに入道雲が」
と無理に微笑んで同僚の意識を逸らせ、切り抜けた。
331:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:31:59 607NLpnP
今夜は非番だったので、夕食の後そっと兵舎を抜け出してとある場所に足を向けた。そこはか
つてあの方と見つけた古い見張り場だった。何も無い小さな空間だったけどミーティアはとて
もその場所が気に入っていて度々そこへ行っては遊んだものだった。
そして誰にも言ったことはなかったけど、今日は僕の誕生日でもあった。それは、ミーティア
と決めたこと。あの方と初めて出会った日、誕生日も覚えていなかった僕に
「じゃあ今日がエイトのお誕生日よ」
と言ってくれて、それからずっとその日が誕生日だった。小さい時は一緒にお祝いの真似事な
んてしていたけどいつの頃からかそんなことはしなくなって─できなくなって、ただ今日が僕
の誕生日だという事実だけが残っている。
何も起こりはしないと分かっている。それでもかつて一緒に遊んだ思い出の場所で誕生日の夕
べを過ごしたいという感傷的な気持ちがそこへと足を向けさせた。
使われていない通路を抜けて最後の扉を開けると、涼しい海からの風が僕の頬を撫でた。崩れ
て残骸だけになった石組みにもたれて座ると、昼間の熱の残りが心地よかった。
ちょうど西向きに海に面しているため、夕映えの彼方、微かに大聖堂の島の影が見える。行っ
たことはないけど、どんな場所かは知っている。
「法皇様がいらっしゃる場所は雲の上で、突き出した岩の上にお屋敷があるんですって」
記憶の中でミーティアが息を潜めるかのように僕に言っている。そしてその場所こそあの方の
婚儀が行われる場所なのだと聞いた。王族同士の婚儀に際して法皇様直々に祝福を垂れるのだ
と。
332:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:33:25 607NLpnP
皆、婚礼の供に志願している。ミーティア付きのメイドはもちろん、間近で護衛してきた近衛
兵の同僚たちも。主人の晴れの姿を見たいのだろう。
でも、僕は行かない。志願しない。
それは最後に一目、あの方の姿を見たいとは思う。でも他の人のものになるミーティアを見て、
平静でいられる自信がない。臣下の僕が主人の姫を恋い慕っているなんてあってはならない話
なのだから。
サヴェッラから目を背け、夕闇に覆われつつある遠い水平線を見遣った。今日も海は穏やかで
打ち寄せる波の音も遠く微かに聞こえるばかり。嵐の夜、地の底から轟くような音を立てて荒
れ狂うものと同じ海だとはとても思えない。僕の両親と、記憶を奪った海だとは。
どんな人だったんだろう、僕の両親は。嵐の朝、助け出された僕に突き付けられた最初の現実
は「両親を失った」だった。だけど両親の顔すら覚えていない僕にとっては色々な人から「海
で両親を失って可哀想に」と言われても居心地の悪い思いしか感じない。
僕は、一体何者なんだろう。どこから来て、どこに行こうとしていたのか。今となってはもう
知る術もない。
333:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:35:42 607NLpnP
僕は一つ溜息を吐いて立ち上がった。せっかくの誕生日だというのにこんな辛気くさいことば
かり考えている自分にうんざりしてしまったこともあったから。けれど背後から軽やかに近付
く足音に僕はその場に釘付けになる。
「エイト」
振り向かなくても分かる。探すまい、その音を聞き分けようとすまいと思い、でも探さずには、
追わずにはいられないミーティアの足音。
「ここにいたのね」
衣擦れとともにふんわりと花の香りが漂う。身に纏う絹、いつも使っている鈴蘭の香水、そし
てミーティアの肌の匂いが混ざり合い、僕の心を掻き乱す。
いつまでも背を向けているのは失礼に当たる。僕は顔を伏せたまま振り返り、片膝を着いた。
顔さえ見なければ何とかなると思ったから。けれどもドレスの裾から覘く白く華奢な足が目に
飛び込んできて、結局狂おしい程の想いに囚われてしまう。
「いえ、もう戻ろうと思っていたので」
戻らなければ。二人きりになってはならないから。
「そう…」
会話が途切れ、気まずい沈黙が広がる。僕はミーティアが顔を俯けた隙に横をすり抜けようと
した。
「では、これで」
「あ、待って」
ミーティアの手が僕の袖を捉える。思わず顔を上げてしまい、目が合った。
「お誕生日おめでとう。エイト」
微笑みとともに小さな包みが差し出される。
「ですが…」
受け取れない。個人的な贈り物をもらう訳には、と思い固辞しようとした。
「お願い、受け取って。嫌だったら後で捨てていいから」
声が震えていた。ミーティアの望んでいることは知っている。いつも一緒にいたい。昔のよう
に話したり、一緒にどこかに遊びに行きたい、と。
でももう無理だ。僕が望んでいることは骨の折れんばかりにきつく抱き合い口づけを交わす、
ということなのだから。
でもそれは絶対に叶わぬこと、叶ってはならぬこと。ならばせめて傷つけないように。
「お気遣いありがとうございます。謹んでお受けいたします」
334:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:40:53 607NLpnP
受け取ろうとして一瞬手が触れ合った。しなやかで滑らかな肌の感触が僕の掌に残る。僕は思
わずその手を包み込んでしまった。
「あ…」
唇から零れた吐息混じりの声の甘さ。僕の手の中にあるミーティアの手はたおやかで柔らかな
感触なのになぜか痛みすら感じた。
「エイト…あの…」
「…失礼いたしました」
ミーティアが手を引き抜く。その顔は今にも泣き出しそうだった。
「ご…ごめんなさい。あの…戻ります」
そう言うと裾を翻しあの方は行ってしまった。大気にその香しい匂いだけを残して。
長い夏の日も暮れ、夜露が降り始めたので兵舎に戻った。自分の寝床に入り、先程貰った包み
をこっそり開く。気が急いたせいか中身がはらりと落ちる。慌てて拾い上げたそれはバンダナ
だった。かつて二人でこっそりトラペッタへ行った時、変装のためにミーティアの頭に被せた
真っ赤なストールと同じ色。
(ミーティア…)
懐かしさと共に後悔の念が湧き上がる。あの時もっと大事にしておけばよかった、二人の時間。
隅に小さく刺繍された僕の名を見つけた時、それは一層強まった。
もう帰らない日々を思い返してみても仕方がない。僕は人に見られることに怯えつつバンダナ
にそっと口づけを落とし、枕上にきちんと畳み直して置いた。もう遅かったので横たわり、目
を瞑る。
と、その時ミーティアの気配を感じた。さっき貰ったバンダナからあの方の残り香が静かに匂
い立つ。
(ミーティア!)
離れたくない。ずっと一緒にいたい。でもそんなことを思っても仕方ないんだ。
(ミーティア…)
この先何かの拍子に今のように思い出が甦り、その度に懐かしさで胸が締め付けられる思いを
するんだろうか。それはあの方が行ってしまった後も続くんだろうか。それに僕はただ堪えて
いくしかないんだろうか。
ミーティア、あなたが行ってしまったら、僕の想いは一体どこへ行けばいいんだろう…
(終)
335:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:48:22 607NLpnP
エイトがトロデーンに来るまでの話はまたいつか…
336:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:59:40 iA10PbeR
ハッピーエンドになるを知ってるからこういう悲恋ぽい話も読めるんだな~ってオモタ
337:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/03 21:25:20 R5HWOWM+
乙です!
◆JSHQKXZ7pEさんが書かれているのは、短編SSのようでいて
他板、他スレに投下されてる分も含めての大長編小説なんだなぁ、と今更ながらに思いました。
時系列に並べて読み直してみたら「ああ、ここであの伏線が」って分かって面白いかも。
338:有海
05/08/04 19:02:25 o87QK+BT
札幌 すすきの 19:30
チャゴス「ミーティアーー」
マネキン「???」
ミーティア「美味くいったわね」
エイト「逃げよう」
チャゴス「動かない」
ミーティアのマネキンだった
ホテル日航 PM20:30
ミーティア「かわいいわ、お父様とエイト」
トロデ「ほら、エイトやってみるぞ」
3人は24:00まで遊んでた
339:有海
05/08/04 19:09:23 o87QK+BT
翌朝 紀伊國屋書店 AM8:00
ミーティアは初心向け ピアノレッスンというの読んだ
トロデは料理テキスト20本読んだ
エイトは愛・地球博の公式ガイドブックを読んだ
大丸札幌店 AM10:00
トロデーン城 AM12:00
B3F 錬金釜工房
金の錬金釜 完成
日本列島 PM1:00~翌朝8:00
340:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/04 19:48:39 mzv8A1Wb
感想どもです。
>336
悲恋ぽいけど最終的にはハッピーエンド、っていうのが書いている中で大きいかも。
そこが主姫萌えポイントのような気がする。
>337
確かに書いている話はほとんどが繋がっています。例外は今のところ一つだけ。
が、時系列は…その、色々矛盾することが見えてちょっとなあ。
気付いているのは一つあるんだけど他の人の眼ではもっとあるに違いない。
341:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/05 01:48:20 TCFP9dUz
鳥山の描いたミーティアイラスト見てみたいな・・・
いつか公開してくれないかな
342:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/05 17:18:54 tPaFddli
>330
泣いた
URLリンク(www.uploda.org)
343:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/06 01:04:43 kYVcp+Um
ここのスレの住人はあるきかた買ったのだろうか
気になるところ
344:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/06 21:56:15 fBnF5fO/
>>343
ずばり、買いですか?
345:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:01:50 yo/QjMIp
ミーティアファンはよしておいた方が…
346:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:19:51 QrOrz3ba
姫様名前すら登場してません…orz
347:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:34:19 xRU9/DYR
なんなんだろう、この情報規制っぷりはね…
348:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:46:21 bs+BpVdQ
じゃあやっぱりフィギャもでないんだろうなー…
349:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:27:52 p9Fhv3g3
夏と言えば海!夏と言えば山!夏と言えば怪談!
っつーことで怖い話?行きます。
350:百物語 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/09 21:29:37 p9Fhv3g3
「あー暑い暑い。暑くてやってらんねー」
野宿の火の向こう側でククールがぶつぶつ言っている。
「そんな暑苦しい格好しているからじゃない。もっと身軽な服装すれば?」
ゼシカの意見はもっともだ。確かに全身を隈無く被うククールの装備は暑そうだし。魔法のビ
キニを着ているゼシカは涼しそうで正直羨ましい。
「じゃ、ゼシカ一緒に寝てくれよ」
「え?」
「伊達男の宿命ってやつかな、オレは女と同衾する時しか脱がないのさ。もちろんゼシカもは」
「マヒャド!」
「わーっ………」
狙いは正確、覚え立ての呪文がククールに炸裂した。
「あー…こりゃまた見事に凍っているでがすね」
ヤンガスがククールの氷の像をこんこん、と叩く。「わーっ」という顔のまま凍っているそれ
は見物だった。そのまま息が詰まってしまったらまずいし呪文で溶かそうかと思ったんだけど、
すぐに顔の周りから溶けてきて「出せ出せー!」という形に口が動き出したのでそのままにし
ておくことにした。
「手加減してやってよ、ゼシカ。でも暑い、っていうのには同感だよ」
「本当ね。夜になってもこんなに暑いなんて」
「こんな時は涼しくなる話をするでがすよ」
「もしかして…怪談?」
「そうでがす」
「うむ、よいかもしれんな」
「げっ、おっさん、いつの間に!」
「ワシも暑いんじゃ。今夜はここで怖い話で涼もうぞ」
(…マジかよ)
氷の中のククールの口がそう動いたような気がした。
「あら、いいかも。じゃ、一人一人順々に怖い話をしていくっていうのはどうかしら」
「そうだね、涼しくなっていいかもね」
(おいこら!いつまでオレを凍らせておくつもりなんだよ!)
「ではあっしから…」
※ ※ ※
351:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:30:55 p9Fhv3g3
それはあっしが盗賊駆け出しだった頃の話でがす。
パルミド近くの海岸に幽霊船が出ると言う噂がありやした。かつて商船が海賊に襲われて、積
み荷を渡すくらいなら、と自ら船を沈めたんでがす。それが化けて出るんだとか。
それを聞き付けたゲルダのやつが
「そういうところにはお宝ががっぽりあるに違いないよ」
と探りに行く気になっちまって…あっしはそういうところに行くのは気が進まなかったんでが
すが
「あんた口ばっかりだね。お宝が目の前にあるのに行かないなんて盗賊じゃないよ」
そこまで言われてしまったら男として行くしかねえ。覚悟を決めて付いていったでがす。
月のない夜でげした。生温い風が吹き付けて一層いやーな気分になったでがす。
海岸にはぼやーっと光る船らしき影があるじゃねえでがすか。
「何だい、何も出て来やしないじゃないか」
早速甲板に上がり、ふん、とゲルダが鼻で笑った時でげす。
「俺の船で何してやがる!」
突然背後ででかい声を出され、あっしらは飛び上がりやした。
「で、出たーっ!」
「何さ、幽霊船でお化けが出るなんて当たり前だろ。びびってるんじゃないよ」
とか言いつつもゲルダの声は震えています。
「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと出てけ!」
そいつに襟首をひっ掴まれまずあっしが海に放り出されやした。続いてゲルダが。
「もう来るんじゃねえー。それから人を幽霊呼ばわりするんじゃねえー」
甲板から声がして船はさっさと行ってしまいやした。
「…行っちまったぜ」
呆然と見送るあっしはいきなりぽかりと殴られたんでがす。
「なーにが行っちまったぜ、だよ。あんたがぼやぼやしていたせいでせっかくのお宝がフイに
なっちまったじゃないのさ。どうおとしまえ付けてくれるんだい!」
あっしには幽霊よりもその時のゲルダの顔の方が怖かったでがすよ。
※ ※ ※
352:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:32:20 p9Fhv3g3
「あ、ククール、溶けたんだ」
「溶けたんだ、じゃねえ。必死で溶かしたんだよ。まだ足元は凍っているんだ」
「涼しくてよかったでしょ。どう、私の呪文の威力は」
「こんな涼しさは嫌だーっ!」
「…あっしの話はスルーでげすかね」
「あっ、ごめんごめん。ちょっと涼しくなったかな?で、その船は一体何だったの?」
「うう、兄貴は優しいでげす…
今思うに多分夜釣りの船か何かだったんじゃねえかと」
「じゃ、次は私ね」
「(くそー、怖い話はあんまり好きじゃないんだが。でも足元凍ってて逃げられねえ)どんな
話か楽しみだな」
…微妙にククールの顔が引き攣っているような気がするなあ。ま、いいか。ゼシカはどんな話
なんだろう。正直に言ってヤンガスの話は惚気にしか聞こえなかったよ。
※ ※ ※
353:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:33:41 p9Fhv3g3
私が小さい時にサーベルト兄さんと聞いた話よ。
ポルトリンクは港町だったから船乗りさんたちから色んな話を聞かせてもらったの。その中で
も特別怖かった話ね。
航海した先で久しぶりに陸に上がったとある船乗りさんがいたの。旧友と酒を呑み、楽しい時
間を過ごしてさて寝るか、と宿屋のベッドに寝転がったその時。
「寒いね、兄さん」
「そうだね、でも一緒にいれば寒くないよ」
という子供の会話が聞こえてきたの。
隣室の声が聞こえるような安宿にするんじゃなかった、と思ったんだけど、よく考えたら季節
は夏、むしろ今夜みたいな暑い日だったらしいのよ。
それでも気のせいかも、と思い直してまた寝ようとしたの。
「本当に寒いね」
「でも我慢しようね」
もしかしたら窓の外に誰かいるのかも、と船乗りは外を見たの。でも誰もいなかった。深酒し
過ぎだと思ってもう何が何でも寝てやろうとしたその時。
「誰か僕たちのベッドにいるよ」
「じゃあその人にくっついてあったまろう」
そう聞こえた途端!
男は冷たい手のような物で─それも二組─身体を掴まれ動けなくなってしまったの。
「あったかいねえ」
「あったかいねえ」
声も出せなくなって、朝になって宿の主人が中々起きてこないからって様子を伺いにきた時に
は男はすっかり冷えきっていたんですって。
※ ※ ※
354:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:35:25 p9Fhv3g3
「おおっ、怖い、怖いでげす」
「何かすごくひんやりしたよ」
「ふっ、そそそれくらいどどどうってことないさ」
「じゃ、次はククールね」
「お、おう」
「楽しみじゃのう」
※ ※ ※
それはオレがとある貴族の館に寄付金集めに行った時の話だ。旦那が留守とかでそこの奥方が
オレに色目を送ってくる。なかなかの美女でまんざらでもなかったものだから、つい、誘いに
乗ってしまったんだな。
でまあ広間のソファでアレコレしていたら突然扉がバーンと開いて留守のはずの旦那が斧持っ
て乱入してきたんだよ。奥方も
「あーれー、この人に襲われたんざますー」
とか言って逃げを打つし。
いやー、あれには参った。どうやってその場から逃げたのか自分でも覚えてねえ。
※ ※ ※
「…どこが怖いのよ」
「美人局でがすな。別の意味で怖いでげす」
「つつもたせ?」
「あ、兄貴は知らなくてもいいでげす」
「うわーっ、オレともあろう者が美人局なんかに引っ掛かったのかー!」
「自業自得よね。こんなやつは放っておきましょ」
「では次はワシが」
「お城には怖い話がいっぱいありそうでがすからねえ。楽しみでがす」
※ ※ ※
355:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:37:31 p9Fhv3g3
それは姫が生まれる直前のことじゃ。
寝苦しい暑い夜のことじゃった。あまりの暑さに眠れなかったワシはテラスで涼もうとして廊
下を歩いておった。妃は休んでおったのでワシ一人じゃったよ。
と、角を曲がったところで不審な人影を見つけたのじゃ。
「誰じゃ」
誰何するとその影はゆっくりとワシの方に振り返った。
「気の毒にの」
それは女、白いドレスを纏った見覚えのない貴婦人じゃった。ワシはその声を聞いた瞬間すーっ
と汗が引いたぞ。
「汝らの最後の子はなんと過酷な運命を背負っていることよ」
女は歌うかのようにそのようなことを言ったのじゃ。
「お、お主は誰じゃ。ここがワシの城と知っておるのか」
ここはワシの城、不審な者を見過ごす訳にはいかん、と思ったのじゃが…
「妾の名か」
ふ、と笑ったように思えた。が、それはこちらの背筋を凍らせるような笑みでの、さすがのワ
シも足が震えたもんじゃ。
「時を告げにきたと申せば誰か分かるじゃろ」
※ ※ ※
「そう言って女は掻き消えたのじゃ」
「だっ、誰だったの?」
「我がトロデーンの王族が死期を迎える時に時々現れるという白い貴婦人だったのじゃ」
「で、でもおっさんは生きているでがす」
「ワシじゃなくて妃だったのじゃよ。その時はそれとは分からんかったがの。その後難産の末
姫の誕生と引き替えに身罷った時それと知ったのじゃ」
そんな話があったんだ。あちらでミーティアが俯いている。
「ではエイト、おぬしも怖い話を頼むぞよ」
「はい」
そんな悲しい話の後だとすごく辛い。どんな話をすればいいんだろう。
※ ※ ※
356:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:39:08 p9Fhv3g3
僕が廊下で見張りしている時、ふと何かの気配を感じて振り返ったんだ。でも何もいなかった。
気のせいかな、と思って見張りを続けようとした時、その音がした。
カサコソカサコソ…
はっと振り返ると奴がいた。そう、でっかいゴキブリが!
慌てて手にしていた槍で退治しようとしたんだけどそれをかいくぐりこちらに向かって来る。
僕もいい加減混乱しててさ、滅多打ちしていたら今度はそいつがいきなり飛んできたんだ。
※ ※ ※
「何とか打ち落としたけど脂汗出たよ」
「…何っつーかこれもまた別の意味で怖い話だな」
「それはすごく嫌ーっ」
「そうか。じゃ、出た時はオレが守ってやるよ」
懲りないなあ、ククールも。ちょっとからかってやろうかな。
「あっ、あそこにゴ」
「うわーっ!」
「…何よ、『守ってやる』とか言った端から全力で逃げているじゃないの」
一瞬のうちに10mは逃げたククールを見遣りながらゼシカがふんと鼻であしらった。
「あー、ククールも前途多難でがすねえ」
(終)
357:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:54:07 p9Fhv3g3
本当に怖い話が読みたかった方、ごめんなさい。
各々怖いものは違う、ということで。
それぞれの話のうち、ヤンガス、ゼシカ、トロデの話は一応元ネタ有りです。
358:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 23:27:05 pNsNJ65n
面白かった。でもゴキはべた過ぎだw
>その後難産の末姫の誕生と引き替えに身罷った
これもこの先複線になるのかな。
359:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 13:13:31 zDQ8O1Ga
IDがDQ8になりました。ばんざ~い!!
360:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 14:54:21 2lV7lSg1
すまん、一瞬DQ801に見えたorz
361:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 17:09:41 Ka2JZ7Qc
惜しいなw
数字板なら神IDだったのに
362:357
05/08/10 21:59:13 Cv15QcCY
感想どうもありがとうございます。
主姫要素少なくってすみません。
>358
それは秘密ですw
363:357
05/08/11 22:00:00 mxW3IZM4
さらにミス発見orz
>252の冒頭、ククールの台詞
「どこが怖い話だよ。単なる惚気話じゃねーか」
が抜けてます。本当に申し訳ありませんでした。
364:流星の姫君 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/13 00:03:13 jjj6T5Km
>>350-356「百物語」続き
「王様、もう夜半を過ぎました。そろそろお休みになられた方が」
怪談話で一頻り盛り上がった(正確にはククールの怯えっぷりなんだけど)後、僕たちは火を
囲んで休むことにした。しばらくすると規則正しい寝息やいびきが始まる。僕は今夜の見張り
だったので起きていたけど、火の向こうで王様がまだ星を眺めていた。
「ん?そうか、そうであったな」
八日の月は西に沈み、もう真夜中を過ぎたことを示している。
と、北東の空に一瞬鋭く銀色に光り駆けていくものが見えた。また一つ、さらに一つ。
「そうか…もうその時期であったな」
目で追いながら王様が呟く。
「姫が生まれたのもこのように星の降る夜じゃったの…あれは初冬だったが…」
「王様?」
「先程の話で思い出してしもうたわい」
王様はあの方の耳を憚るかのようにひそやかに話し始めた。
※ ※ ※
難産になるだろうということは前々から予測しておったのじゃ。医者からも、
「もう二度と身籠ってはなりません」
と言われておったからの。
にも拘らず、
「トロデーンの世継ぎを、あなたの血を分けた子を産まずしてどうして妃の務めを果たせましょ
う」
と言うての。
結局妃は姫を産むことはできたものの、そのまま亡くなってしもうた。
「この子を幸せにしてやってくださいませ」
という遺言だけ残しての。
※ ※ ※
365:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 00:04:25 UJpW6HQ9
「その言葉を思えばこそ、あの縁組も最良のものに思えたのじゃが…」
そう仰って一つ溜息を吐いた。
「のう、エイト。おぬしはどう思う?より間近にあの王子を見ておろうが」
突然の問いに僕は何も答えられなかった。でも突然であろうとなかろうと答えられただろうか?
『チャゴス王子様は性根腐ってます。お止めになられた方が。あれでは姫様もお幸せにはなれ
ないでしょう』
とはとても言えない。
「…聞いても詮無きことじゃったな。これはワシの独り言じゃ」
無言で俯く僕を気遣ってくださったのか王は一人頷くと
「さて、ワシはもう寝るとするかの」
と馬車の中へ入ってしまわれた。
なおも星は流れる。次々に、絶え間なく。
暗黒神の野望は絶対に阻止してやる。そして王とあの方の呪いは何としても解く。
だから一つだけ願ってもいいだろうか。
あの方の、幸せを…
(終)
366:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 00:05:51 UJpW6HQ9
明日の夜はペルセウス流星群が最もよく見えるんだそうです。
一時間に40~60個の流れ星が見えるとか。見える方角と時間はほぼ文中のとおり。
ちなみにみーたんの流星群は獅子座流星群の方です。
お暇な方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
367:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 21:44:05 3nF4mob2
乙です。伏線早速キタ━(゚∀゚)━!
>『チャゴス王子様は性根腐ってます。』
心の中では毒舌エイトワロタ。
ウチからだと北東の方向は一番街明かりが明るいから何も見えないポ…。
368:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:02:58 EBMbchqE
最近ここ活気ないね
サミシス(・ω・`)
369:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:09:04 cpzjw546
ずっと下のほうに下がってるからでは?
370:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:10:26 UU0UqoaW
ミーたん関連スレがここだけなんだら一切関係ない。スレ一覧で検索かければここしかかからないんだから。
371:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:12:50 cpzjw546
ホンとだ。人大杉で来れないっていうわけでもなさそうだしね。
372:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:52:59 MAeeBMj2
ここに限らず、DQ8関連のスレは全体的に過疎ってると思う。
住人がコミケ等で忙しいんじゃないかな。
373:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 20:24:40 eF3bAOoa
ようするにネタがないんだよなぁ~。
374:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 21:13:56 zYrIStNM
活気ないってぇ?
コンスタントにSS投下されてるジャンかよ
滅多に書き込まないけど一応見てますよ>書き手の人
375:366
05/08/14 22:30:04 nVa58wHs
お盆ならではの忙しさに漸く帰還。
読んでくださった方、どうもありがとうございました。
>367
ただ今伏線消化モードですw
>374
ありがとうございます。励みになります。
376:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 09:39:11 6ncn27Yv
保守sage。目指せ最下層。
377:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:52:14 TWz15iFs
>>74-78「荒野の幻影」のミーティアバージョンで一つ。
始めに注意
・エイト?がちょっとひどいかも
378:湖畔の幻影 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/16 19:53:29 TWz15iFs
エイト、どこに行ってしまったの。
七人の賢者の末裔の最後の一人、サヴェッラの法皇様をお守りしようと館に乗り込んだあなた
は帰って来なかった。一緒に行きたかったのに、
「危ないのでどうかこちらでお待ちを」
と言われて船で待っていたのに。
業を煮やしたお父様が危険を冒してサヴェッラの門前町で聞いて来た話は最悪の結果だった。
「法皇様が襲われた」
「真っ黒な犬とそれを操る四人の旅人に」
「ニノ大司教が裏で糸を引いていたらしい」
「あわやという時にマルチェロ様がお助けしたらしいが、その夜更けに崖から落ちてお亡くな
りに」
「滅多なことは言えんが、胸に刺し傷があったとか」
「何ということじゃ…」
フードを目深に被り人ならぬ肌の色を見せないようにしながら人々の噂話を立ち聞きして来た
お父様はがっくりとうなだれていた。
「暗殺の疑いを掛けられておってはただでは済むまい。…いや、教会は死罪を公には認めては
おらんからそれだけはあるまいが…」
そう、公には死罪はない。けれども拷問はあるという。そしてそれによって死んでしまっても
罪には問われない。異端審問など最終的には「悔い改めて神に召されし」と公表されるけれど、
それはつまり拷問によって亡くなったということ。
さらにトロデーンにはなかったけれど、数百回もの杖打ち等死罪同然の刑もあるとか。対外的
には死罪はないけれど余計に陰惨な刑ばかり。私も、お父様も口にはしなかったけれどそれを
恐れていた。どんなに強くてもエイトたちは只人、もしそんなことになっていたなら…
ああ駄目、そんな暗いことを考えては。でも、私、エイトを失ってしまったら生きて行けない。
お願い、無事でいて!
※ ※ ※
379:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:54:29 TWz15iFs
漸く煉獄島に送られたという情報を掴むことができた。生きてはいるのだと安堵したものの、
しかしそれは困った事態だった。そこは教会の管轄地、世俗の権は及ばない。この姿ではどう
にかしたくともどうしようもないのだけれど。
迂闊に島に近付くことはできず、成す術もなく沖合から様子を窺う日々が続く。異変があれば
すぐに行けるように。
そんな状態が一週間程続いたある夜のことだった。
私はいつの間にか湖の畔に立っていた。トロデーンの城門からすぐの木立の中にある小さな湖
に。懐かしさに二、三歩踏み出して人の姿に戻っていることに気付く。
こんな時はエイトに逢える。誰の目を憚ることなくエイトだけを見詰めることができる。安否
の分からないあなたの消息を聞くことができる、と嬉しくなって辺りを見回した。
湖の向こう側、木立の中に赤いものが見え隠れしている。そう、あれは私が贈ったバンダナ。
渡した時にあまりに素っ気無かったので、嫌だったのではと密かに恐れていた。
でもあの災厄の後、旅姿で現れたあなたの頭にはあのバンダナが巻かれていた。そして
「どこまでもお供いたします」
と言ってくれた。呪われて悲しく辛い思いをしていたはずだったのに、舞い上がらんばかりに
嬉しかったことを覚えている。
エイトだわ、間違いなく。こちらに背を向け潅木に半分隠されていても分かる。でも何をして
いるのかしら?ぼんやりしているのなら驚かしてしまおうかしら。
380:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:56:38 TWz15iFs
と、なるべく音を立てないようにして近付く。どうやって驚かそうかと考えていたけれど、は
た、と足が止まった。
エイトは一人ではなかった。さっきは見えなかったけれど斜後ろのこの角度からならば見える。
こちらに背を向けるエイトの胸にはゼシカさんがしっかりと抱かれていた。いいえ、抱いてい
ただけではない。二人は…口づけを…交わし合っている…
その瞬間頭の中が真っ白になってしまった。とりあえずその場を立ち去らなければ、と身を翻
した途端、うっかり小枝を踏んで予想以上に大きな音が響く。はっと口を覆う私と何事かと顔
を上げたゼシカさんの目が合ってしまった。
「ねえ…」
「ん?」
「姫様が見ているわよ」
逃げたかった。けれども根でも生えてしまったかのように脚が震え動かない。
「気にしないでいいよ。どうせ馬でしょ」
続くエイトの言葉が私の血を凍らせる。
「ううん、人の姿になっているわよ」
「だから何?自分で『エイトにはエイトの人生があるのよ』って言ってたくせに夢の中まで追
い回されてうんざりしているんだ」
凍りついたように動けない私の身体を言葉がさらに鞭打つ。
「見せつけてやろうよ。もう二度と僕たちの邪魔をしないように」
「いやぁん、エイトったら、いやらしいんだからぁん」
「旅が終わったら結婚しよう。だから、さ」
もう駄目。全身の力を振り絞ってその場から走り去ることしかできなかった。
381:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:57:54 TWz15iFs
走って走って、息が詰まり目が眩んで木の根か何かに躓き、叩き付けられるように転んでしまっ
た。でもその痛みよりもさっきエイトから投げ付けられた言葉の方が痛い。
これは夢、不安な私の心が見せるただの幻影、そう思ってみてもただ、辛い。エイトの言葉は
どれも本当のことだったから…
私がサザンビークに嫁げばいつかエイトは誰かと結婚するだろう。でも私にはそれを止める権
利なんてない。それはエイトの人生なのだから。
頭では分かっているの。でも…
「覗き見するなんていけない子だね、ミーティア」
突然頭上から声が降ってくる。涙を拭うと目の前にエイトの靴があった。
「エ、エイト?」
慌てて半身を起こすとエイトがしゃがんで私の顔を覗き込む。
「ミーティアがいけないんだよ。僕の気持ちも知らないで行ってしまうんだから」
指が顎に掛かる。意地悪な光を湛えた瞳が近付く。
「そうだ、お嫁に行ってしまう前に味見しちゃおうかな」
気持ち悪い。触らないで。
「い、嫌…触らないで…」
「どうして?僕が好きなんでしょ?後生大事に守ってみてもあんなのに奪われるだけなんだよ」
「駄目…」
エイトの顔がますます近付く。
「それっぽく見せる方法なんていくらでもあるんだってね。そうすればいいだけじゃない?」
「嫌よ!触らないで!」
顎に掛かった手を払い除け、体勢を崩した隙に立ち上がる。
「だってあなたはエイトじゃないもの。指一本だって触られたくないわ!」
「ミーティア…」
哀れっぽい声を出して足に縋ろうとする。そんなのエイトじゃないわ!私は裾を払い、一歩下
がって叫んだ。
「私の心はエイトただ一人のもの、他の誰にも渡しはいたしません!
さあ、分かったならどこへなりと消えなさい、忌わしい化け物よ!」
※ ※ ※
382:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:58:30 TWz15iFs
…と、自分の嘶きで目が覚める。私の異変に気付いたお父様が駆け寄って来てくれた。
「姫や、怖い夢でも見たのかの?ほれ、冷たい水を汲んできてやったぞ」
お父様の心遣いが勿体無くも嬉しく、水を飲んだ。その冷たさに心が落ち着く。
でも本当に怖かった。夢であってもあのまま篭絡されていたら、と思うと今更ながら身が震え
てくる。
「それにしてもいつまでぼんやり捕まっているつもりなんじゃ。とっとと逃げ出してくればよ
いものを。姫に心細い思いをさせおって」
ごめんなさい、お父様。こんなことでご心配お掛けして。それでなくても大変な時なのに。
「もう一ヶ月じゃ。ワシはもう待ちくたびれたぞい」
今日も船で島の近くから様子を窺う。何かあったらすぐに駆け付けられるように。
エイト、無事でいて。そして早く戻ってきて。弱った私の心を叱って…
(続く?)
383:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 20:00:00 TWz15iFs
このままではエイトが最低過ぎるんでもう少し続きます。
384:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 22:26:33 Eu98eUDQ
エイトひでえ…(つД`)
たとえ姫の夢(妄想?)の産物だとしても許せん。
385:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 22:28:18 Eu98eUDQ
お?IDにドラクエでた。記念カキコ。
続きをひたすら待つ。
386:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 22:35:00 CLo7ylJP
GJです。
続きも楽しみ
387:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 23:27:27 3NGcGPjS
>383
なんつーか、もうネタ大放出状態ですな。
続きを楽しみにしてますですよ。
388:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/17 00:19:30 FfR+rtJg
おや。
いつの間にか最下層ではないですか。
389:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/17 02:00:47 yovJiBKD
させるかぁ!
390:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/17 21:43:12 jFChu99Y
>383-387
感想どもです。
エイトには次で挽回させますんでよろしくお付き合いください。
>387
ネタっていうか伏線とっとと片付けようモードですかね。
391:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 01:58:37 dyyyDN5W
◆JSHQKXZ7pE氏の続きを待ちつつ、ひとつ投げかけてみる。
長いけど、…誰もいないし、いいかな。
392:彼女と彼の事情 ◆nw3zSJjQag
05/08/19 02:00:43 dyyyDN5W
ある日の昼下がり、ミーティア姫は近衛隊長の部屋の扉を軽く叩いた。
「ミーティアです。入ってもよろしいかしら?」
この城には彼女を妨げる扉など存在しない。けれど彼女は入室する前に必ず許可を求めた。
扉の向こうで「どうぞ」と優しい声が応える。この瞬間が好きだ。彼が自分の呼びかけに
応えてくれ、受け入れてくれる、この瞬間。ミーティアは大きく息をついて扉を開ける。
弾むような足取りで入ってくる彼女を部屋の主は柔らかい微笑みで迎えた。
「我が執務室へようこそ」
「…お仕事中にごめんなさい」
机に積み上げられた書類の束を見てミーティアが申し訳なさそうに言うと、エイトは
「構わないよ。暇ってほどじゃないけど忙しいわけでもないから」
おどけるように言ってぽん、と書類に印章を押す。
「あのね…少しの間、ここにいてもいい?」
「もちろん」
エイトがふわりと笑って頷くとミーティアの表情も喜びに輝いた。「…ありがとう」
彼女は窓際の長椅子に腰を降ろし、クッションを引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
大きなふかふかのクッションと共に長椅子に収まり、仕事をする彼を見守る。
これまでに何度こうしてきただろう。少なくとも彼の部屋にお気に入りのクッションを
持ち込むぐらいにはお馴染みの光景になっていた。
クッションに頬を埋めながら机に向かうエイトを見つめる。彼は書類に目を通し、済んだ
ものから印章を押していた。かさかさと紙の擦れる音、ぽんと印の押される音が均等な
リズムで繰り返される。それはとても素早く単調に繰り返されるので、本当に全ての
書類に目を通しているのかと危ぶんだが、印章をペンに持ち替えて書き込んだりしている
ところを見ると、やはりきちんと文面を読み取ってはいるらしい。
黙々と作業を続けるエイト。彼は一旦集中すると周りが見えなくなるからミーティアが
傍にいても気を散らせることがない。
だからそれに甘え、じっとエイトの横顔を見つめる。
見慣れているはずなのに見飽きることがない。このままずっと彼を見つめていたい。
会話なんて交わさなくてもいい。自分にとって一番重要なのは彼の存在なのだから。
彼が傍にいるということ。彼の傍にいられるということ。その喜びだけ。―だけど。
393:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:01:37 dyyyDN5W
それでもまだ…不安なのだ。サヴェッラの一件からひと月あまりが過ぎようというのに。
あの婚姻は破談になったのに。これからもずっとエイトと同じ道を歩いていけるのに。
彼に約束をもらって、お互いの心が決して離れないことも知っているのに。…それ故に。
時々、この幸福が怖くなる。あまりに幸せすぎるから、もしかするとこれは全て自分の
妄想の産物なのではないかと疑い、現実を確認するために彼の元へと足を運ぶ。
扉の向こうで彼の声を聞くとほっとする。自分を迎える柔らかな笑顔を見て安心する。
大丈夫、彼はずっと“ここ”にいてくれるから―。
エイトはペンを印章に持ち替える。俯いた時に長い前髪が目にかかり、それをうわの空で
かき上げた。近衛隊長の制服の袖口からすらりとした手首が覗く。ミーティアは思わず
立ち上がって彼に歩み寄った。
「…姫?」きょとんと見上げるエイトの袖を軽くつまんで引っ張る。
「脱いで」
「はい?」
エイトはぱちぱちと瞬きをし、次の瞬間、大きくのけぞった。
「―ってそんな、いくら二人きりでもそれはやっぱり然るべき場合によると思うよ!」
「上着を脱ぐのに然るべき場合って?」
「ああ、上着ね。上着だけ、ね。はいはい。…いや別に期待してたわけじゃないけどさ」
わけの分からないことをぶつぶつ呟きながらエイトは制服の上着を脱いだ。
「姫って時々、思わせ振りな態度とるからなあ。今イチ天然か確信か見極めつかないし」
まだぐちぐち言うのを無視してミーティアは彼の腕を取った。袖口のボタンを外し、
そのままシャツの袖をするすると巻き上げた。三度ほど巻くともう片方の腕も取り、
同じように巻いた。そうして満足そうににっこり微笑む。
「旅をしている間に気付いたの」
何を、と小首をかしげて尋ねるエイト。仕事を中断させたことは咎めない。幼い頃から
彼女に振り回されるのには慣れている。
「エイトは腕まくりが似合うっていうこと」
「それはつまり…常に長袖を着て腕まくりしていなさいと言いたいわけかな」
「だってミーティアはエイトの腕が大好きなんですもの」
そう言ってミーティアは身をかがめるとエイトの腕に抱きつき、彼の肩に頭を寄せた。
394:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:02:39 dyyyDN5W
「……腕だけ?」
一瞬の沈黙の後、ミーティアはゆっくり頭を上げた。エイトは疑わしげに黒い瞳を半眼に
している。ミーティアはくす、と笑って彼の腕の中に華奢な身体をすべり込ませると、
その膝の上にふわりと座った。
「大好きよ、エイト」
「それで?」
彼のまなざしに期待が満ちるのを認め、ミーティアは微笑みを浮かべたままそっと片手を
伸ばした。エイトが身体を傾けてくる。彼の瞳を見つめながらその頬に―
ぺたん、と印章を押してやった。
「……そうきたか」
エイトはがっくりと机に突っ伏した。ミーティアは涼やかな笑い声をあげて彼の膝から
ぴょんと飛び降りた。
「まだまだ修行が足りませんね、近衛隊長」
「どうせ姫様には敵いませんよ」
拗ねた口調で言いながらエイトは洗面所に消えた。ミーティアはその背中を見送ると
彼が座っていた椅子に腰を降ろした。机の上に投げ出されたままのペンを取り上げて、
エイトがよくそうするように指の間で回してみようとした。…何度試しても上手くできない。
諦めてペン立てに戻そうとした時、「…あら?」
ペン立ての一番右端に刺さっているのは羽根ペンではなく、ただの羽根だった。
淡い紫色の羽根。どこか見覚えのあるそれは光にかざすと虹色に輝いた。
ああそうだ、と不思議な色の羽根を様々な角度で眺めながら思う。子供の頃は鳥に憧れて
いたっけ。翼があれば城の外へ出られるのに、と空を見上げてはため息ばかりついていた。
エイトに出会うまでは―。
遊び相手すらいない、勉強だけの毎日が嫌で嫌でたまらなかったけれど、彼の存在が全て
を変えてくれた。そうしていつしか空を見上げることを忘れてしまったのだった。
自分の幸せはいつでも傍にいてくれたから。―それは今でも変わらずに。
一度は遠く離れてしまったように思われたが、今、二人の道は重なっている。
あの長い長い旅を終えて、確かに掴んだ現実。この羽根は―その証だ。
そうね。何も不安に思うことはないのよね。ミーティアは小さく微笑んだ。
―誰もわたしから彼を取りあげることなんてできないもの。
395:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:04:55 dyyyDN5W
洗顔を済ませたエイトはミーティアへ歩み寄ろうとして、ふと足を止めた。
彼女はじっと羽根に見入っている。真剣な表情の彼女を見て彼は優しい笑みを浮かべた。
「綺麗だろ」
その声にミーティアははっと顔を上げた。そしていたずらっぽく笑う。
「あら、やっとわたしの幸せが戻ってきたわ」
「いつもそうでありたいね」
ミーティアが自分の椅子に座っているのでエイトは机の端に腰掛けた。
「ねぇ、これは神鳥レティスの羽根でしょう」
「正真正銘レティスの羽根だよ。ちょっと加工してあるけどね」
「あなたがこんなものを持っているなんて知らなかったわ」
エイトは子供のように足をぶらぶらさせながら、
「実はついこの間まで忘れてたんだ。誰にも内緒で袋に入れっぱなしにしてたから」
「どこで拾ったの?やっぱりレティシアかしら」
「拾ったんじゃないよ。抜いたんだ」
「エイト」ミーティアはあぜんと呟いた。「いつの間にそんなことを…」
「そう言えばあの時、目の前に暗黒神なんてものが浮かんでたっけ」
「…呆れた。決戦の最中に神鳥の羽根を引き抜くなんて」
「余裕の表れだと思ってほしいなぁ」
机に腰掛けたまま腕と同時に足を組み、ふっと笑うその仕草が意味もなく決まっていて
何だか格好良かった。―見惚れている場合じゃなくて!ミーティアはふるふると首を
振る。流されては駄目よ、ミーティア。彼は何かをとぼけようとしているんだから。
「どうして羽根が欲しかったの?それもわざわざ神鳥から引き抜いてまで」
「暗黒神を倒した記念に」
エイトはすらっと答えた。そんな彼をミーティアは上目遣いにじっと見つめる。
「…本当?」
近衛隊長は勢いよく机から降りるなり、びしっと姿勢を正した。
「白状すると、本当は錬金の材料にしたかったからです」
そして茶目っ気たっぷりに「よくわかったね」と首をかしげた。―勝った。
「ミーティアはエイトのことなら何でもお見通しなのよ」
そう言いながら得意げに羽根を振ってみせた。幼い頃からずっと誰よりも一番近くで
エイトを見てきたのだ。彼の性格は熟知している。
396:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:06:35 dyyyDN5W
「…なるほど」
エイトはそっと謎めいた微笑みを浮かべた。ミーティアはそれを見逃さない。
「まだ何かミーティアに隠している事があるのね」
「ないよ」
「本当に?」
にこにこしているエイトの顔をミーティアは下から覗き込んだ。お互いの視線が絡むと
エイトの口元から笑みが消えた。
「君に隠し事なんかしないよ」
彼はゆっくりと片手を伸ばし、ミーティアの髪に触れた。そうして優しく梳いていく。
その間ミーティアはじっと彼の瞳を見つめていた。
「まだ疑ってるの?」
「……いいえ」
彼の瞳から視線が外せないだけ。まっすぐに自分だけを見つめてくれるその黒い瞳から。
不意にエイトの手が止まった。髪から離れてそっと頬を撫でる。同時にミーティアの
心臓がとくんと跳ねた。
「エイト…?」
彼は両手で彼女の小さな顔を包み込んで、わずかに身をかがめた。ミーティアが胸を
高鳴らせながら瞳を閉じようとし
―たところで両手を離し、そのままぱんっと打ち鳴らす。
「きゃっ」
「はーい、時間切れー」
「……え?」
ミーティアは椅子の上で身をすくませたまま、大きな瞳をまたたかせた。…時間切れ?
「もうすぐ読書会の始まる時間ですよね、姫様」
時計を示してエイトはいたずらっぽく笑った。そんな彼にミーティアは頬を膨らませる。
「さっきのお返しのつもりね」
「あれ、もしかして何か期待してたのかな?」
挑発的に言い返される。ミーティアは一度彼を軽く睨み、つんとそっぽを向いた。
397:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:09:05 dyyyDN5W
エイトは含み笑いをしながら彼女に両手を差し伸べ、その身体を軽々と抱き上げた。
「さて、椅子を返してもらいますよ」
「その代わりにこれをもらっていきます」
ミーティアは澄ました顔で神鳥の羽根を唇に押し当てた。エイトは彼女を優しく絨毯の
上に立たせる。そして丁寧に一礼をした。
「姫様の仰せのままに」
「よろしい」
ミーティアはにっこり笑って頷くと、軽い足取りで扉へと向かう。大事そうに羽根を
握りしめて。エイトはゆっくり彼女の後に続いた。
扉の取っ手を掴むとミーティアは顔だけを振り向かせて、
「お仕事の邪魔をしてごめんなさい。…どうしてもあなたの顔が見たくなったの」
「わかってるよ。それに…」
エイトはふわりと笑った。「俺だって君の傍にいたいんだから」
その言葉にミーティアは眉根を寄せた。
「そんなこと言って。いつも会いに行くのはミーティアの方よ。たまにはあなたから
会いに来てくれてもいいのではなくて?」
「俺が会いたいと思った時に君が来てくれるんだよ。これぞ以心伝心。ラブラブだね」
ミーティアは無言で彼の額を平手打つ。ぺち。
「いて」
「本当にもう…いつからこんな調子のいい人になってしまったのかしらね」
ミーティアは大きく扉を開け、長い髪とドレスの裾を翻して部屋を出た。少しだけ背中を
前倒しにして足早に歩いていく。いつもの慎み深い王女の歩き方ではない。
そんな彼女を見送りながらエイトは愛おしそうに微笑んだ。確かに王女としての気品溢れる
高貴な彼女にも憧れを抱いてはいるが、それ以上に幼い頃から自分の前で無邪気に振る舞う
おてんば姫の方がもっとずっと好きなのだ。
「―さ、仕事仕事」
398:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:11:24 dyyyDN5W
机に戻り、書類をさばきながらミーティアのことを思う。
公務の合間に自分の部屋を訪れる彼女。その本当の理由を実はずっと以前から知っていた。
知ってはいても彼女の抱く不安は彼女自身の問題だから、自分がしてやれることといえば、
彼女の目の届くところにいてその呼びかけに応えることだけだった。それが歯がゆかった
けれど―。そっと額を撫でる。あの様子を見ると、どうやら彼女の屈託は晴れたようだ。
神鳥の羽根がそのきっかけになったのか。神鳥の羽根といえば。―あれは危なかった。
彼女に嘘はつけないから、つい本当のことまで話してしまいそうになった。
神鳥レティスから羽根を引き抜いた理由を。
暗黒神を倒した記念にとか、錬金の材料にしたかったとかそれも確かにその通りなのだが、
もうひとつの真実は―。
タンバリンを叩くか、ベホマズンを唱えることしかさせてもらえずに、拗ねて神鳥の羽根を
むしっていたのだ。ぶちぶちと。地獄からいかずちを呼び寄せ続けるククールを横目に。
―最後ぐらいギガブレイクをたたき込んでやろうと思ってたのに、ゼシカ(グリンガムの
ムチ装備・バイキルトでコーティング)の双竜打ちでとどめだなんて…。
そんなこと、絶対ミーティアには言えない。…いや、言いたくない。
そう、ミーティアに隠し事はないが―黙っている事なら、いくらでもあったりするのだ。
例えば最近では、自称「エイト隊長のファン」を名乗るメイドからお手製の焼き菓子を
もらってしまったこととか、そこのバスケットの中で丸くなって眠るトーポが実は竜神族の
長老で自分の祖父であることとか、旅の途中では、錬金に目がくらんでミーティアの
ガーターベルトを材料にしてしまい、ベルガラックにて再びガーターベルトを手に入れて
へこんだこととか、その腹いせに、当時覚えてもいなかったギガデインを盛大に放って
ククール(エロスの弓装備)をぶちのめしたこととか、女盗賊ゲルダのアジトで更にまた
ガーターベルトを手に入れてしまって、その夜は眠れなかったこととか…等々。
399:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 02:13:27 dyyyDN5W
「隠し事」と「黙っている事」との違いは何だろう。
書類の束を揃えながらエイトは薄く微笑む。
「全くの秘密」と「知られてもいいが絶対に自分からは言いたくないこと」―だ。
それでは、と考えを巡らせる。「姫君の恋人にとって必要な事」とは。
―度胸、はったり、そして…開き直り、だな。
くすくす笑いながら印章を印章入れにしまう。
ふたを閉めると、それはぽくん、と間抜けな音を立てた。
(終)
400:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 08:36:39 oXaFw6XD
GJ!
エイトのキャラクターがすごく好き。ミーティアもカワイイ。
萌えだけじゃなく、話も面白かったです。
401:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 09:42:57 +hK2ic02
うわ…すごい萌え。
2人の日常会話っていいね。
しかし主人公達スレと続けて読むとなんだかなーだなw
402:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 11:06:20 c9anuThV BE:36129233-
>>401
8主「呼びましたか?」
403:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 13:45:01 HbIXGKeU
5主「俺にもあんな初々しい時代があったな・・・」
404:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 15:53:29 j0w8XnyO
ミーティアのガーターベルト(((゚Д゚))))ガクガクブルブル
405:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 20:42:31 GQ/saUqo
うおおおお~っエイトもミーティアもイイ!
ちゃんと仕事をしているエイトが最高。クッションに顔をうずめるミーたん萌え。
GJ!!
でもタンバリンとベホマズンって(涙)
そういやうちの主はなにやってたっけな。やっぱりベホマズンとギガブレだった。
ククールには賢者の石とタンバリンを持たせていたので忙しかった。
懐かしいなぁ。
406:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 21:10:35 UwQyb7Ns
読んで下さった方、感想下さった方、どうもありがとうございます。
なんかハッシュと腐乱バニラ国王もいるけど。
うわはい、萌えたと言ってもらえたよ。
ハグもないちゅーもない、あるのは寸止めのみなのに…。嬉しいです。
今回のテーマは「そこに萌えはあるのか?」でしたから。
それでは、また何か思いついたらひっそりこっそり置いていきます。
407:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/19 23:12:26 sp/ooPlR
>406
そこに萌えはあったぞ!それも禿萌えで。
ただ、鳥の羽は哺乳類の毛と違い血管が通っているので無理に抜くとかなり痛いらしいぞ。
そう言えばうちも一周目はベホマズン係だった。
スキル配分ミスっててラプですら大苦戦w
タンバリンは行動順の都合でクックルだったけど。
408:406
05/08/20 01:20:52 fJqc+6P3
>>407
>鳥の羽は
ククールがジゴスパーク連発で剣をがすがす突き立ててるから、
10本や20本引き抜いても分からないんじゃないかなーと。…抜きすぎか。
409:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/20 14:18:02 u++O06JA
レティス「エイト・・・エイト・・・痛いです。」
レティス「(`・ω・´)ぶち殺すぞ」
410:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:15:09 uottmPwL
>>74-78「荒野の幻影」、>>378-382「湖畔の幻影」の続き
411:夢よりも確かなもの ◆JSHQKXZ7pE
05/08/21 12:17:21 uottmPwL
目を、逸らされた。
煉獄島から漸く脱出してきた四人が、お父様と一緒に船に乗り込んで来る。出迎える私と目が
合った瞬間、エイトは俯いた。
気のせいよね…と思ってみたけれど明らかに私の目を避けている。一ヶ月にも及ぶ幽閉生活で
汚れている自分を恥じているのかと思ってみたのだけれど、そうではないような気がする。
夢だと思っていたけれど実は本当のことだったのかもしれない。人の姿をしていない、その上
誰か他の人との結婚が決まっていてそれを動かしようもない人より、誰だって自由な立場の人
の方がいいに決まっている。それにゼシカさんは女の私の目から見てもとても魅力的なのだし…
そう思い始めると急にそれが確定事項のように思えてくる。ククールさんにはつんけんしてい
るのにエイトに対しては優しいゼシカさん。エイトもいつも気を付けて装備を整えてあげてい
る。最初は女の身で魔物と戦いながらの旅なのだし、装備がちゃんとしていないと命に関わる
からそうしてあげている、エイトは気が利く、優しい人だと思っていたの。でも本当は違って
いた。見ていないけれどもう分かったわ、新たな街に着く度に二人で楽しく買い物しているっ
てこと!
こんな時表情を持たない馬の姿でよかったと思う。本当は声を上げて泣いてしまいそうだった
から。でもこんなことで悲しそうな様子を見せたくはない。特にエイトにだけは。
確信してしまうと再会の喜びも萎んでしまった。お父様と矢継ぎ早に情報を交換し合っている
四人を後目に、さり気ない風を装って隅の方へそっと退く。素知らぬふりをして海の方を眺め
る。でも本当は何も見えていなかった。
「姫様…」
低い声で呼び掛けられる。エイトだった。
「ご迷惑お掛けして申し訳ございませんでした」
いつもと変わらぬ様子だったので少し落ち着きを取り戻した。けれどその礼儀正しさこそがゼ
シカさんを選んだ証のように思えてならない。
「あの…本当に申し訳ございません。僕の判断の誤りでこんなことになってしまって」
そんなことなんて気にしていないわ。
「あの…姫様…」
気を遣っていただかなくてもいいの。本当はゼシカさんの傍に早く戻りたいのでしょう!
「姫様?」
耳を伏せ顔を背ける私にエイトはただ溜息を吐くばかりだった。
412:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:18:26 uottmPwL
※ ※ ※
あの夢のことがあって最初は甲板で出迎えてくれたあの方と目を合わせるのが怖かった。その
澄んだ瞳に何もかも見通されるのではないか、と思って。でもあの方の姿を見たいという思い
を抑えることはできず、王様と話し合いながらもちらちらとあの方の姿を窺っていた。最初は
ミーティアも嬉しそうに僕たちの話を聞いていた。なのに、途中からだんだんうなだれてきて
ついには隅の方へ引っ込んでしまった。
あまりに悲しそうだったので、そっと近付いて一ヶ月もの無礼をお詫びしたんだけど埒が開か
ない。まさかあの夢を共有していたんじゃ…いや、でも、あの夢の中のミーティアは僕の願望
から造り出された幻影だった筈。もしかしてどこかから見ていらしたんだろうか。それなら辻
褄は合う。最初は嬉しそうになさっていたのは腑に落ちないけど。
でもあんなことをしているのを見たらきっと嫌な気持ちになるに違いない。それも自分にそっ
くりな人に。
謝っておいた方がいいのかな。でも何て言えばいいんだろう。
「あんなところをお見せして申し訳ございませんでした」
「あれは本意じゃなかったんです」
…だめだ、どれもなっていやしない。見せなければ何をしてもいい、って訳じゃないだろうに。
きっと「見ていないところでそういうことしているのね」って思われてしまう。
ああもう、どうしたらいいんだ!
※ ※ ※
413:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:19:51 uottmPwL
すみません、ちょっと都合で後でまたうpします…
414:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:51:04 uottmPwL
(続き)
サヴェッラで聞いた話から考えて、杖はどうやらマルチェロが持っているようだった。まずは
奴から杖を取り戻そう、とみんなの意見が一致した。全ての賢者の魂を吸い取った状態でまた
封印できるかどうかは分からないけど、でもそれが一番いい方法だと信じて。
彼は法皇位を継ぐため既にサヴェッラを出てしまっている。そこで僕たちも後を追って聖地ゴ
ルドへと向かった。
ゴルドに着くと、明日がその法皇就任式だとかでいつもにも増して混雑している。就任式の前
に取り戻したかったんだけど騎士団の連中に阻止されてしまった。式の前で警備が厳しくなっ
ている。今夜はあきらめ、明日に賭けることにした。
皆疲れているし今夜はちゃんとした寝床で寝たかったんだけど、宿はもう満員だった。
「平気平気。変なハンモックより船の寝床の方がいいわ」
「大体ここやサヴェッラの宿はぼったくり過ぎでげす。泊まる気にゃなれねえでがすよ」
「だな。ハンモックで一人五十ゴールドなんてぼったくりバーも真っ青だぜ」
なので今夜は船着き場に船を泊めその中で、ということになった。簡単な料理を作って食べ─
それでも久しぶりの温かい料理は有り難かった─、早目に床に着く。船なので王様も一緒に寝
床に入られた。
415:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:54:10 uottmPwL
その夜更け。
僕はなぜか目を覚ました。疲れていたはずだったのに。そしてそのまま眠れなくなってしまっ
た。寝床は暑苦しく、とてもまた眠りに就く気にはなれない。仕方なく夜風にでも当たろうか
と思って甲板に出た。
静かな夜だった。ただ寄せては返す波の音ばかり。明日戦いが待っているとはとても思えない。
でも波の音に耳を傾けるうち、ふと異変に気付く。
あの方がいない。天気のいい夜はいつも甲板で星を見ていらっしゃるのに。
辺りを見回すと近くの波打ち際に佇んでいる姿が見えた。ああ、ミーティアも眠れないんだろ
うか、波の打ち寄せる様子でも見たかったのかもしれない、と思ったんだけど、どうも様子が
おかしい。その姿から深い悲しみと異様なまでの緊迫感が漂っている。
と、海に向かって一歩踏み出そうとした。
「ミーティア!様!」
つい昔のように呼んでしまい、慌てて敬称を付けた。ミーティアははっとこちらを見たけど、
すぐに頭を廻らし海の中に進んで行こうとする。
「何をなさっておいでです?!」
船のタラップを降りるのももどかしく、途中で飛び下りて水を跳ね飛ばしながら浅瀬を走る。
水に足を取られ転びそうになりながらも何とか辿り着く。もう僕の腰の深さの所まで来ていた。
腕を広げ行く手を遮りながら問いかける。
「いかがなさったのです?このままでは溺れてしまいます」
聞かないふりをして深みへと歩いて行こうとする。このままでは危ない、何が何でも止めさせ
ようと頚を抱き、踏ん張ってそれ以上進ませまいとした。
「お止めください、どうか!」
僕を払い除けようと頚を振り、あの方は進もうとする。下は砂地で踏ん張りが効かず、僕はそ
のままずるずると深みへと押されていった。
416:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:56:14 uottmPwL
「ミーティア!」
もう顎を挙げていないと口に水が入ってくる、そんな深さまで押されてしまった時思わず叫ん
でいた。「姫様」とお呼びしなければならないことも忘れて。
「もしかして死にたいんですか!そんなこと僕が許しません!」
一瞬歩みが止まった。深い悲しみを湛えた瞳が僕を見遣る。
「どうしてもと仰るのならば、僕を殺してからになさってください。姫様にならば本望です!
さあ!」
何としても思い止まらせたくて叫ぶ。今、自分が何を言っているのか、何をしているのかよく
分からないままに。
「どうなさいました?死にたいのでしょう?だったら僕もお供いたします。城を出る時申し上
げましたでしょう、『どこまでもお供いたします』って!」
歩みは完全に止まっていた。
「いつまでも呪いを解くことができずにいる僕にお腹立ちなのは分かります。ですがどうかお
時間を。必ず、この身に代えても呪いを解く方法を見つけ出しますから…」
見上げると泣き出しそうな顔をしているように見えた。
「不甲斐ない僕をお許しください。愛想を尽かせてくださって結構です。でも僕は最後までお
供すると心に誓いました。例え姫様が嫌だと仰ってもお供いたします」
見上げているうち、ミーティアは小さく溜息を吐いた。何か言いた気に。
「泉に参りましょうか?」
抱かれていた身体がぴくりと動いたかと思うと、ミーティアは激しく首を横に振った。
「その姿ではお苦しいでしょう、行きませんか。いくらでもお話を伺います」
馬の姿では泣くことすらできない。泉で人の姿に戻られた方がいい、と思ったんだけど…腕の
中のミーティアの心臓は激しく脈打っているし、少しでも楽にして差し上げたかった。
「僕にご不満があるのでしたらどうぞ仰ってください、だから泉に行きましょう」
今度も横に首が振られる。でも穏やかになった息遣いが落ち着きを取り戻しつつあることを示
していた。
417:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:57:54 uottmPwL
「どうかお一人で…どこかに行ってしまわないでください…」
呟く僕の頭の上にミーティアの頭が乗せられる。はっとしたけどすぐに頚をしかと抱き直した。
もう絶対に離すまいと。
傍目にはただ馬とそれにしがみついているだけの僕たちの姿。でもどんなに姿が変わろうとも
誰よりも慕わしく、何よりも大切なあの方に違いはない。今だけ、今だけはこのままで…
でも潮は静かに満ちてさざ波が僕の顔を濡らし始めた。それでも構わず頚を抱き続けていると
不意にバンダナが引っ張られる。見上げるとあの方の目が微笑んでいた。
「…戻りましょうか。潮も満ちて来たことですし」
そう言って腕を離すとミーティアは身体の向きを変えた。いつものようにそっと肩に手を掛け
るととことこと─水の中だから音はしなかったけど─陸に向かって歩き出した。
陸に戻ったのはいいんだけど、塩水に浸かっていたせいで何もかも濡れてぶよぶよだ。せっか
くの美しい芦毛も艶を失ってしまっている。
「どこかで身体を洗わないと」
と言ってもゴルドのある島はほとんどが荒れ地だ。水は女神像の横を滝となって落ちた後、地
中へと吸い込まれてしまう。
「船に戻りませんか、水もありますし」
でも首は横に振られた。僕もまだ船には戻りたくなかったし、いいかな。
「では水をこちらに持って参ります」
それも首を横に振る。
「そのままでは塩だらけになってしまわれますよ」
と言うと困ったような様子を見せた。
「…では少しだけ歩きましょうか」
※ ※ ※
418:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 12:59:11 uottmPwL
ごめんなさい、ごめんなさい、エイト。
わがままだった私を許して。弱いミーティアの心を叱って。自分の心に振り回されてあなたを
失ってしまうところだったわ。なのにどうして、こんな酷い私に優しくするの。
泉には行きたくない、いいえ、行けないと思ったの。あんなにぐちゃぐちゃな気持ちのまま行っ
たらただもう泣くしかできなかったもの。それに何を口走ってしまうかも分からなかった。
ずっと思い悩むうち、「私の存在が何もかもいけないのかもしれない」という気持ちになって
しまって。あの時はもう、自分の存在を消し去ることばかり考えていた。私を止めようとする
あなたの言葉も口先だけのことだとばかり思っていた。本当は違っていたのに!
お父様への忠誠にせよ、…何にせよ、私を案じてくれる心は真実のこと。なのに気付けなかっ
た。気付こうとしなかった。自分の心の暗闇にばかり囚われて何も見えなくなっていた。
「どこまでもお供いたします」
…そうよ、あの時その言葉に勇気づけられてどこまででも旅して行けると思ったのではなかっ
たの?
もう悲しい夢に惑わされないから。ただあなたの背中だけを見詰め付いていくわ。どこまでだっ
て付いていくわ。今改めて心に誓い直したから。
419:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 13:00:09 uottmPwL
少しだけ、ということで一緒に浜辺を歩いていた時、ちょっと立ち止まって隣のエイトをちら、
と見遣った。エイトも私を見返して微笑んでくれる。嬉しくなってまた歩こうとした時、低く
呼びかけられた。
「あの…姫様…」
つい人の時の癖で顔をエイトの方に向ける。
「お名前でお呼びしてもよろしいですか」
息が止まりそうだった。あんなに何度もお願いしてもなかなか変えようとはしてくれなかった
のに。
「ミーティア様」
エイト!
「どこまでもお供いたします」
どこまでだって付いて行きます!
「ミーティア様」
何度でも呼んで。自分の名前がこんなに美しいものだなんて知らなかった。
「僕の…あ…心を、永遠に捧げます」
身体が震える程嬉しい。
「ミーティア様?」
私の心も永遠にあなたのものよ、エイト。もう自分の心が産み出す闇に惑わされないから。
頚を差し伸べる。塩っぱい匂いのするエイトの前髪を掻き分ける─
月夜の浜辺、白い馬が青年の額に顔を寄せ、前髪の毛繕いのような仕種をしていた。青年もそ
の馬の頭に腕を廻し、もう一方の手で髦を梳き遣っている。浜辺の二人の姿を見た人は誰も、
いなかった。
(終)
420:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 16:22:35 cyvQJdop
乙です!
荒野の幻影のアレをミーティアに見られたと思ったら、そりゃ顔も見られないわな~。
異色の連作面白かったです。
421:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/21 23:50:16 ULhsyUMF
姫…
そんなに思い詰めないで…(つД`)
422:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/22 21:59:11 dOsn+U94
感想どもです。
>420
エイトはあの時点で「やだ」って言いつつかなりいい思いしてたんでヒヤヒヤしてもらいました。
代わりにみーたんがちょっと気の毒だったかな…
>421
自分の中で考えているうちに悪い方へ行ってしまう、思考のデフレスパイラル状態でしたね。
いろいろな方とネタ被ってしまったかもしれません。
もしそう思っている方がいらっしゃいましたらお詫び申し上げます。
423:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/24 21:52:23 jQHD2Gwl
そう言えばまとめサイトもうすぐ10000HITだね。
日頃お世話になっているし何かお祝いしたいなあ。
とはいえたいしたことはできないけど。
何か希望はありますか。>中の人
424:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/25 01:36:45 H/3l+u/E
わあ、本当だ。もうすぐだねぇ。
こりゃめでたい。
425:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/27 00:24:39 +F0nvBxs
保守
426:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/27 22:45:29 +F0nvBxs
危なかった…
今回の圧縮でかなりのスレが落ちちゃったよ。千一夜とか。
夜中にふと思いついて保守しておいてよかった。
と言いつつもいい話題がなくて申し訳ない。
427:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/27 23:08:10 AExfo81/
>>423
ここの住人が読みたいもののリクエストを聞いてみるのはどうですか?
2ヶ月以上放置したままで申し訳ないです。
来週くらいにはアップできるようにしときます。
428:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/27 23:33:51 UGHYZpx4
>423
負担のかからないようにやってくださって結構ですよ。
まとまった形でssが読めるというだけでもこちらとしては大変ありがたいことです。
>読みたいもののリクエスト
お題みたいな感じになるのかなあ。やったことないけど楽しそうだ。
それとも前のスレだったっけ、「ちょっぴりおてんばみーたん」みたいなお題がくるのかなw
ちょっと考えておこうっと。
429:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/28 11:33:53 dgji6WE9
9932hitだよ。
430:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/29 01:20:00 1QincUiM
今行ってみたら9980hitでありました。
431:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/29 18:37:28 zIceFfR4
ふらっとまとめサイト行ったら10000踏んじゃった…
432:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/29 18:59:47 nw+Ob5UO
>431
おめ!
よーし、パパ頑張って431氏好みのSSうpしちゃうぞ…
すまん、できるかどうかも分からない約束はするもんじゃないな。
それにしてもめでたい。
433:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/30 00:10:50 Q7GFhHzv
というわけで。
431氏、何かリクしてみては?
434:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/30 01:04:44 CoCkhDcE
>431
うん。何かあったらぜひ。
435:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/31 02:15:37 ZZ9hxsrx
何かないか、何かないか…。
って、気付けばもうすぐ最下層。
寂しい…(つД`)
436:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/31 21:20:14 hHodT+3n
まとめサイトさんいつもありがとうございます!
そして1万ヒットおめでとうございます。
437:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/31 23:35:36 JnoAYfcv
リク来ないな…
ないならこちらで書いてしまってもいいかな?
今ちょっとへべれけなんで今夜はむりぽだけど、明日か明後日には。
438:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 01:12:06 VdaZgu9d
リクないんだったら、前スレのあれやって欲しいな。
>破瓜が発覚。結婚式中止。ミーティア反逆罪で打ち首寸前にエイト乱入。そして・・・
439:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 04:25:53 bnjNBvAd
ぽっきあげ
━━一
440:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:46:26 F8/iqTkU
勝手ながらまとめサイト10000HitおめでとうSS置いて行きます。
なお、都合上前編後編に分けさせていただきます。
441:温泉に行こう!(前編) ◆JSHQKXZ7pE
05/09/01 22:48:34 F8/iqTkU
「パンパカパーン!おめでとうございまーす!」
旅の途中、息抜きに(正確には景品目当てで)立ち寄ったベルガラックのカジノ。階段を登り
扉を開いた途端、僕たちは盛大なファンファーレと立ち並ぶバニーさんたちに出迎えられ、面
喰らった。
「なっ、何、これ!?」
「あら、エイトたちじゃない。ひさしぶりね」
「これは奇遇だな。よくよく縁があるらしい」
驚く僕たちにフォーグさんとユッケさんが近寄ってくる。
「私たちがカジノを引き継いで君たちがちょうど一万人目のお客様なのだ」
「そうそう。で、お兄ちゃんと話し合って一万人目のお客様を温泉に招待しようってことになっ
たのよ」
「へえ…」
確かにカジノが再開してからずいぶん繁盛しているようだ。
「いやそれにしても君たちとはな。企画してよかったよ」
「でも温泉なんてあったか?」
「いや、あっしも聞いたことねえでがす」
「そりゃそうよ。なんてったってあたしたちが新しく作ったんですもの」
「カジノで楽しんだ後は温泉でリラックスしてもらおうと思ってね」
「ふーん…」
「で、どうするでがす?決戦前に英気を養うでがすか?」
「うーん…」
長い旅でみんな疲れているだろうし、最後の戦いに備えて休養も必要かもしれない。でも本当
に休養が必要なのは…
「…あの、それ、ちょっと待ってもらえませんか?」
「んー、いいけど?」
怪訝そうな顔をする二人に言った。
「今は先を急ぐ旅の途中なんです。今日ここに寄ったのもグリンガムの鞭が欲しかったからで。
温泉は全部終わってからにしたいんです」
※ ※ ※
442:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:52:07 F8/iqTkU
旅が無事終わり、その後のごたごたも片付いてその話をみんなにしたらあっという間に温泉ツ
アーが決定した。
「どんな温泉なのかしらね」
「トロデのおっさんは誘わなかったんでがすか?」
「うん、誘ってみたんだけど、『若いモン同士楽しんで来りゃええ』って」
皆で温泉に行きませんか、と誘ったんだ。神経痛にもいいらしいし。でもあっさり断られてし
まった。
「…おぬしらがいちゃついているところなぞ見たくないわい…」
と聞こえたような気がしたけど、まあいいか。
「じゃ、今回は五人ね。エイト、姫様、ヤンガス、ククール、私の」
「うん、そうだよ」
「どんな温泉なんでがしょうねえ。楽しみでがす」
「有閑マダム…」
ククールがぶつぶつ呟いている。ここに来てゼシカがメラゾーマ連発したりすると困るのでちょっ
と突いてみた。
「うん?」
我に返ったククールにそっと囁く。
「涎、拭いた方いいよ」
「それにしても変わった建物ね。エイトの故郷のような…でもちょっと違うかしら」
「本当ねえ。初めて見たわ」
幸いククールの呟きは聞こえなかったようだ。何事もなかったかのようにあちらでミーティア
たちが話している。
「おおっ、出迎えのお姉ちゃん方も変わった服着てるでがす」
「これはこれでいいな。色っぽいぜ」
出迎えてくれる人たちはみなピンク色のお揃いの服を着ている。制服なのかな?でも見たこと
のない形だった。強いて言うなら竜神族の民俗衣装にちょっと似てる、かも。
「ようこそ竜探究の宿、空海土(そらしど)へ。本日は皆様の貸しきりでございます」
へえ。それはすごいや。あ、ククールには残念だったか。でも余計なごたごたがなくなってい
いかも。
「お部屋に御案内いたします。お荷物は後でお部屋にお運びいたしますので、どうぞそのまま
で。それからお履物はそちらにお預けください」
443:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:54:32 F8/iqTkU
えっ、靴脱ぐの?裸足で歩くんだ。
「危なかったでがす。最初履いていた靴下に穴開いてたんでがすよ」
こそっとヤンガスが呟いた。
「くそっ、こんなことになるなら早く言ってくれよ」
ククールは向こうでブーツを脱ぐのに手間取っている。
「裸足で歩くなんて初めてよ」
隣のミーティアが嬉しそうに言う。ちょっとはしゃぎ気味だ。
「大丈夫?冷たくない?」
「ううん、平気よ。気持ちいいわ」
「うん、そうだね」
板の上、そして草で編んだ敷物の上を裸足で歩く感触は慣れてしまうと気持ちよかった。
「当旅館は異国の雰囲気を味わって頂こうというコンセプトの元に設計されております。御不
審な点がございましたらなんなりとお申し付けくださいませ」
靴を脱ぐのもその一環か。
「こちらがお部屋でございます」
あれ、椅子がないよ。ああ、レティシアみたいに円座に座るのか。もしかして寝床もそうかな。
ミーティアは大丈夫だろうか。
「御婦人方は隣のお部屋でございます。お部屋同士でお話しする場合はそちら零番の紐をお引
きください。私どもをお呼びになる場合は一番の紐で」
便利だなあ。トロデーンにも付けてみようかなあ。
「お召し替えなさいますか?」
「「「へっ?」」」
唐突な言葉に三人とも目が丸くなる。
「当旅館ではお客様にお寛ぎ頂けるよう、浴衣のサービスを行っております」
ゆかた?何だろう、それ。
「御婦人方もお召し替えなさっていらっしゃいます」
じゃ、着てみるか。
「あ、オレはパス」
「何だよ、付き合い悪いなあ」
「あっしは着てみるでがす。何事も挑戦してみるでがす!」
ごそごそごそごそ…
444:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:55:46 F8/iqTkU
「みんな、着替え終わった?」
ひょい、とゼシカが顔を出した。えんじ色の地に山百合の花が大胆に散らされた柄の『ゆかた』
を着ている。
「おお、ゼシカの姉ちゃんなかなかいいでがすよ」
「ミーティアは?」
と聞くと扉の陰からすっと頭が覗いた。
「出ておいでよ」
「変じゃないかしら」
そう言いながらミーティアが姿を現す。紺色の地にあやめかな?それとも菖蒲かも、がすっき
りしていて可愛らしい。
「うん、似合っててとってもかわいいよ」
大きな声で言うのはちょっと恥ずかしいので近寄ってこそっと囁く。でも途端に頬を染められ
て、結局バレバレだ。せっかく周りは見てないふりしてくれていたのに。
「そっ、それじゃ温泉に入りに行こうか。…ククール、やっぱりそのままで行くの?」
「おう」
腰に手をやって格好付けているんだけど、裸足に赤い騎士団の服ではいかにも間抜けな感じだ
よ。
それではまずは温泉だ!
445:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:57:34 F8/iqTkU
宿自慢の温泉は確かに凄かった。
「すごいねえ」
浴場に足を踏み入れた僕たちは口をあんぐりと開いた。いろんな種類のお風呂にすごく広い露
天風呂。向こうの方には砂風呂まである。
「もう何でもありだな」
早速みんなで露天風呂に入ってみることにした。
「外でお風呂に入るなんて、って最初は思っていたんだけど結構いいね」
「風が涼しくて気持ちいいでがすよ」
「それにしてもここはどこなんだろうなあ。ベルガラックからルーラみたいなのであっという
間に飛ばされてしまったし」
「まあ細かいことは気にすんなって。いいところだってのは間違いねえんだし」
「うん、そうだね」
と僕がヤンガスの言葉に相槌を打った時だ。気に留めていなかった垣根の向こうから「うふふ」
という笑い声が聞こえてきた。
「ん?あれは?」
小さく「姫…お肌す…」とか「ゼシカさ…胸直に…」とか切れ切れに聞こえる。
「お、おい、もしかしてこの垣根の向こうは女湯か?」
浅いところで寝そべっていたククールが急に身を起こした。そしてひそひそ声で僕たちに話し
掛けてくる。
「そのようでがすねえ」
ヤンガスは我関せず、といった風情で湯に浸かっている。
「つーことはあれか?この向こうにゼシカのナマチチがあるんだな!?」
興奮し過ぎだろ、それは。っていうかなぜそこで垣根の方に行くんだ?
「趣味悪いなあ。大体そんな覗きなんかしなくても見放題な生活しているんじゃないの?」
「いや、それはそれ、これはこれだ。男のロマンってやつさ。…と、この岩に登れば見えるか
も…」
全く懲りないなあ。どうせ顔出した途端ゼシカにメラゾーマ食らって終わりに決まっているの
に。
…って、ゼシカだけじゃないんだった!ミーティアもいるのに!ククールなんかにあの玉のお
肌を見られてたまるか!
446:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 22:58:47 F8/iqTkU
うわ、どうしよう。ギガデインはまずいよな、みんな感電してしまう(お湯に浸かっているか
ら)。といって剣も槍も持ってないし。
あ、あ、どうしよう、もう岩によじ登ってるよ。手元にあるのは…手桶?えーい、うまくいく
かどうか分からないけど投げてやれ!
「えいっ!」
バコッ!見事ククールの後頭部に命中
「でっ」
ポカッ!返る手桶がもう一回、今度は額に当たる。
「ふがっ!わーっ」
ザッバーン!
「初めて見たでげす…」
旅の途中、覚えたものの結局一度も使わなかったクロスカッターだ。
「一度も実戦で使わなかったから忘れたかと思っていたんだけど、案外上手くいくもんだね」
「ぶへっ、お湯飲んじまったぜ。邪魔すんなよ、エイト。せっかくいいところだったのに」
文句を言いながらククールが立ち上がる。
「こんなのバレたら後で全員マダンテの刑だよ。ここまで来てそんなの嫌だからね」
「ちょっとー」
垣根の向こうからゼシカの声がした。
「騒がしいけど何かあったのー?」
「ううん、何でもないよー」
「何でもねえでがすー」
慌ててヤンガスと返事する。ふうー、危ない危ない。
「エイトー、露天風呂ってとっても気持ちいいわー」
あ、ミーティアだ。
「うん、とーっても気持ちいいねー」
と返事をした後でヤンガスが妙ににやにやしているのに気付いた。
「見られたくなかったんでげすね…兄貴…」
「何だ、そういうことか。あ、待てよ。つーことは姫さ…」
「今日はかがやくチーズを食べようか、トーポ。で、そこの人かちかちにしてやってよ」
(続)
447:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 23:08:19 F8/iqTkU
何つーか…アホアホですみません。
旅館の名前なんてマヌケの極みだし。
>>438
あの話…正直皆さんの考えの方が読んでておもしろかったっけ。
あの時点では書けないと思っていたんだけど今思い返してみると行けるかも。
少し長くなりそうだし、他の話も交えながらになりそうですがいいですか。
はい
いいえ
448:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/01 23:31:45 2KR6fgLw
どうぞいっちゃってください。
楽しみに待ってます。
449:温泉に行こう!(後編) ◆JSHQKXZ7pE
05/09/02 19:50:38 3tdhScXj
ちょっとしたごたごたもあったけど温泉にも入ったし、豪勢な夕食も堪能できて大満足だ。
さすがに日中あれだけ騒いだせいか、部屋に戻った途端二人はばったりと眠り込んでしまった。
でも僕はまだ眠くなかったし、こっそり寝床から抜け出して部屋を出る。
「エイト」
と、そこにミーティアがいた。本当は夕食後こっそり耳打ちしていたんだ。
「秘密のお風呂があるんですって?」
「うん。ちっちゃいけどそういうのがあるんだってよ」
そっと促して手を繋ぎ、そこへ向かう。
「昼間の露天風呂、とっても気持ちよかったわ。トロデーンにもああいうお風呂、作れないか
しら」
よっぽど気に入ったんだろうなあ。普段は何かを気に入ったとか気に入らないとかはっきり言
わないんだよね。何か言ったことに対して何が起きるかを考えて、軽々しく口にしないように
しているらしいんだ。
「どうだろう。でもトロデーンにも温泉があればいいのにね」
「本当に。そうすればお父様も温泉に入れるのに」
そんなことを話しているうちに「隠し湯」と書いてある看板の前に着いた。
「ここ?」
「うん」
そこは今までと打って変わって薄暗くて細い廊下だった。僕は看板を裏返してからそのまま進
む。すこし行くと小さな脱衣所に辿り着いた。扉があって、ここも露天風呂みたいだ。
「ここも露天風呂なのね、きっと」
「うん、そうみたいだね」
ミーティアは何かを探す風だ。
「どうしたの?」
「あの…ここ、一つしかないのかしら…」
ためらいがちにそう呟く。
「うん。一緒に入ろう」
「でも…人が来たら…」
「大丈夫。来ないよ。看板を裏返しておくと、他の人は入れないんだって」
そう言ったんだけどまだ何だか恥ずかしそうにしている。
「でも…」
「いつも一緒に入っているでしょ」
450:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 19:51:19 3tdhScXj
「……」
そうやって恥ずかしそうにされると僕も何だか恥ずかしいじゃないか。
「さ、濡れないように髪結ぶから」
恥ずかしいのを振り払うように、努めて元気よくそう言ってミーティアの黒髪を丁寧に編んで
結い上げる。と、ほっそりとしたうなじが姿を現した。見慣れているはずなんだけど、でも何
だかいつもよりも格段に色っぽい。今着ているゆかたのせいかな。
「ありがとう、エイト」
振り返るミーティアの横顔も美しい。
「エイト?」
ついうっかり見蕩れてしまった。いかんいかん。
「入ろうか」
451:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 19:52:24 3tdhScXj
隠し湯というだけあって湯舟ははっきり言って小さい。二人で入ろうと思うと抱き合った状態
でないと入れなさそうだった。
「狭くないかしら?先にエイトが入った方がいいかしら」
ミーティアも気付いた。でもそれがいいんだ。そうでなかったら一緒に入るメリットなんてな
いし。
「いいからいいから」
「えっ?あっ、きゃっ」
戸惑うミーティアの身体と一緒にお湯を被り、抱き締めたまま湯舟に浸かった。最初は落ち着
きなく身じろぎばかりしていたけど、漸く落ち着く体勢を見つけたのか僕の頚に腕を廻し胸に
もたれるようにして息を吐く。
「気持ちいいね…」
「ええ、とっても…」
傍から見れば「お風呂で何をしている!」と言われそうな状態だったけど、不思議といやらし
い気持ちにはならなかった。ただ、安らかで、幸せな気持ちだった。
「不思議…とっても穏やかで幸せな気持ちなの…」
僕の胸の中でミーティアが呟く。ああ、ミーティアも同じことを感じているんだ…
「僕も…」
お湯は温かかったけど、剥き出しの肩が冷え始めている。僕はお湯を掬ってミーティアの肩に
掛けてやり、腕を肩に廻して冷えないようにしてやった。
「ありがとう、エイト」
ミーティアが頬に口づけする。そして同じように腕を廻して僕の肩を冷やさないようにしてく
れた。
「ありがとう、ミーティア。温かいよ」
「本当に、いつまでもこうしていたいの…」
「うん…」
せせらぎの音と虫の音ばかりが聞こえ、時間だけが静かに過ぎていく。
452:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 19:53:35 3tdhScXj
「そろそろ戻ろうか?のぼせてしまうし」
「ええ、そうね」
ミーティアはちょっと残念そうだったけど、いつまでも入っている訳にもいかないことは分かっ
ているので、素直に頷いた。
湯舟から上がり、手近にあった柔らかな布でミーティアの身体を包み込み、優しく水気を拭っ
た。眼を瞑り、小さな子供に戻ったかのように僕の手に身を委ねているミーティアがただもう
愛おしくて丁寧に丁寧に拭いてやる。
身体を拭き終わると今度はミーティアが僕の身体を拭いてくれた。僕も何だか子供に戻ってし
まったかのような感じがする。
一生懸命僕の身体を拭いているミーティアを見ていたら目が合った。「なあに?」と言いた気
なその目に笑いかけ、額にちょん、と口づけを落とす。
「どうしたの?」
「ん…ありがとう」
「どういたしまして」
澄まして答えるミーティアが可愛らしくてぷっと吹き出した。
「戻ろう。今日はここに来てよかったね」
「ええ、本当に。また来たいわ」
ミーティアは深く頷く。
「今度来る時はもっと人が増えているかもしれないわね」
その言葉の意味するところが頭に届くまで、ちょっと時間がかかった。
「えっ」
澄ました顔でミーティアが続ける。
「あら、お父様のことよ」
山の宿の夜は深々と更けていくのだった。
(終)
453:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 19:57:08 3tdhScXj
ただバカップルが書きたかった。今はは(ry
保守代わりにでもなれば幸いです。
454:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 20:15:07 yuZEL56b
ん~激しくGJ!
もうちょっと湯舟の中のいちゃいちゃを読みたかったような気もするけど
それを書かないのが花というものなのかな
とにかく㌧
455:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 20:43:06 Rh3OCtwm
タッタ
456:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/02 21:27:33 P9Tgufoe
エイトはチンコ立たなかったのかと(ry
457:453
05/09/02 22:41:22 3tdhScXj
読んでくださいましてありがとうございました。
>454
ほっとくと腐乱バニラ国王化しそうだったw
いちおう公共の場なので「一緒にお風呂に入った」ということで。
>456-457
さー?その辺の事情は個人のご想像にお任せします。
458:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/03 12:55:35 x2YAs219
まとめサイト更新しました。
保管忘れや間違いなどがありましたら連絡ください。
05/09/03 Part3 170 - 452までの13作品を保管 (現在106作品)
◆JSHQKXZ7pE氏
二人の冒険 , 星の夜 , 真夏の午後 , 二人の南の島 , 香りの呪縛 , 百物語
流星の姫君 , 湖畔の幻影 , 夢よりも確かなもの , 温泉に行こう!
◆nw3zSJjQag氏
ああっ女神像さまっ , 彼女と彼の事情
◆nefbuGknog氏
小ネタ6
459:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/03 13:03:39 7WeIleNc
>>458
まとめサイトさん乙です!
お忙しいところをいつもありがとうございます。
>>457
>せせらぎの音と虫の音ばかりが聞こえ、時間だけが静かに過ぎていく。
>「そろそろ戻ろうか?のぼせてしまうし」
この間が妙に艶っぽくて妄想を働かせるのには十分でございました。
GJ!!
460:453
05/09/03 16:17:17 WM0Ju+gG
まとめサイト様
いつもありがとうございます。
毎回感謝しております。
>459
あの空白は妄想してもらうために入れたものなので、じゃんじゃんしちゃってくださいw
461:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/04 23:49:15 n1hbxBFB
あと一歩でエロパロ板行きですねw
ともかくGJ!
462:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/05 00:58:23 uVW0UxDN
>>461で初めてエロパロ板の存在を知ったw
463:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/05 22:14:48 CFniWuvk
>461
感想ありがとうございます。
確かに今回ぎりぎりの線だったかも。
何でそうなったかな…風呂入っている「だけ」なんだけどな…
>462
エロパロ板は大人になってからw
464:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/06 22:36:49 /V6BCriY
前スレで「性描写はどこまでOKか」っていう話があって、結論が出たよね。
このスレの住人に聞きたいんだけどもう一つ規制されるべき残虐行為の描写はどの辺りまで?
例えば、
誰かに殴られたり蹴られたりする(具体的に血が出た描写なし)
↓
モンスターと戦って怪我(具体的に血が出た描写なし)←この辺りまではOKか?
↓
↓
↓
エロじゃないガチ拷問(魔女裁判並)←多分絶対駄目
その境目はどこか?
皆さんの意見を是非参考にしたいです。
よろしくおながいします。
465:個人的には
05/09/07 00:15:48 BxVvPaCZ
「拷問に有ったらしい事実を後で話に聞く」←おk
「拷問の様子を描写する」←((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
466:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/07 20:38:12 g23J4Kdz
拷問がそのSSに必要不可欠なものなら書きたいように書けばいいと思う。
このスレに相応しい程度加減は自分で判断しる。
467:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/07 22:13:44 hNin/9LZ
つURLリンク(fs.pics.enc.or.jp)
468:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/07 23:45:39 iUpwWqVX
>467
読んでみた。とても参考になったよ。thx
だけどちょっと待て。
>乳房の3/4程度までが見えるような服装をしている人物の画像・映像。
ゼシカは!?ゼシカはレベル1なのかっ!?
469:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/08 00:22:21 MxyLcFkF
いや、レベル1じゃなくてレベル5
ごめん
470:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/08 01:37:01 Zk21ZjiR
>469
マジレスすると3/4まで露出してないからレベル0かと。
谷間のところが開いてないし。
471:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 03:04:16 H+o9D5bQ
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
FFばかりやっていると、脳細胞の発達に遅れが見られるということが
最新の脳研究でわかりました。
FFもいいですが、ドラクエもやりましょう。
ドラクエの攻略サイトを集めてみました。
これで、FFもドラクエも両方やりましょう。
URLリンク(rich-life.sakura.ne.jp)
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
472:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 22:26:56 X4u+i6RA
>>438氏のリク「サヴェッラの夜」の続き行きます。
【注意】
・しばらく鬱展開が続きます。
・暴力描写が入る場合があります(今回はありませんが)。
473:二人に捧げるRequiem ◆JSHQKXZ7pE
05/09/09 22:28:04 X4u+i6RA
1.Dies irae
意識の遠くで誰かが何かを叫んでいる。
いいんだ、もう。何もかも終わったんだから。あの指輪一つでどうにかなると思っていた自分
が愚かだったんだし。
ミーティアは行ってしまう。もう会えなくなるということは分かっているけど顔を合わせるの
も辛い。あの男に、サザンビークの王子であるというだけでミーティアの夫となるあの男にい
いようにされてしまうのだと思うと嫉妬で胸が灼けつきそうだ。
「あ、兄貴!早く起きてくだせえ、逃げるんでがす!」
ヤンガスの声だ。それと同時に激しく揺すぶられる。
「早く、兄貴、逃げ…ぐへっ!」
肩に掛けられていた手が急に無くなり、代わりに「どすん」という鈍い音がして、ヤンガスの
声がしなくなった。何事かとうっすら目を開けた僕の鼻先に何かが突き付けられている。それ
が抜き身の剣であることに気付くまで数秒かかった。
「トロデーン王国近衛隊長、エイトだな」
それは誰何(すいか)ではなく、断定だった。その制服はサザンビークのもの。僕の寝台は兵
たちによってびっしりと取り囲まれていた。
「先程トロデーン王女の部屋から出てきたという密告があった」
見られていたのか!自分の血が一気に冷たくなったように感じた。
「サザンビーク王室に対する不敬罪、姦通罪、並びにサザンビーク王位の転覆を謀った大逆罪
の疑いによって逮捕する。
おとなしく縛に付け!」
僕に切先を向ける男が逮捕状を読み上げるうち、自分が異常なまでに落ち着いていくのを感じ
た。元より自分の犯した罪の重さは充分承知している。罰─それも死罪だ─を受ける覚悟はつ
いている。だが。
「あ、兄貴…」
兵の後ろではヤンガスがおろおろとしている。周りの人までも巻き込んでしまった…
474:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 22:29:31 X4u+i6RA
持っていた武器、防具の全てを取り上げられ、後ろ手に縛られて宿を連れ出された。
周りはがっちり固められ、逃げ出す隙もない。もっとも、そのつもりなんてなかったけど。
「兄貴、あっしも…ぐへっ」
背後でヤンガスが兵に追い払われ、蹴っ飛ばされた音がする。ごめん、これ以上はもう止めて
くれ。ヤンガスお前まで捕まってしまう。
「ゼシカ!ヤンガスを頼む!」
林立する槍の向こうにちらりとゼシカの姿が見えたのでそう叫ぶ。途端に背後から柄で小突か
れた。
「こらっ、黙って歩け!」
「兄貴!」
悲鳴に近い叫び声を上げ、ヤンガスがまた僕に近寄ろうとする。それをゼシカが駆け寄って押
し止める様子がちらっと見えた。
「駄目。お願いだからもう止めて。今は、…だから、ね」
必死で説得するゼシカの声がする。最後の方はよく聞き取れなかったけど。それに納得してく
れたのかヤンガスは漸く追うのを諦めてくれたようだった。
結婚式を見に来た人々は突然のこの出来事に唖然としていた。華やかな雰囲気は消し飛び、代
わってサザンビーク兵と聖堂騎士団の団員が物々しく歩き回っている。その様子に怯えつつも
僕たちを遠巻きに見ていた。そのうち事情が知れ渡ったのか冷たい囁きと嘲りの眼差しが僕に
突き刺さりだす。それでも僕はただ前だけを見詰めていた。罪を恥じるべき相手はこの中には
いないのだから。
そうやって階段のところまで来た時だった。急に辺りがざわめいて人垣が割れる。と、階段の
上から同じような一団が姿を現した。
「トロデーンの売女め!」
「阿婆擦れの雌犬が!」
人波の中から中央の人影に向かって罵声が投げ付けられる。そこにはミーティアがいた。いつ
ものドレスを着て、昂然と頭を上げこちらに向かってくる。辺りを払う威厳に満ち溢れた様子
にいつか罵声も尻すぼみになり、やがてしんと静まり返った。
475:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 22:31:20 X4u+i6RA
「トロデーン王女を護送いたす!」
あちらの先触れがそう告げる。僕たちの方は立ち止まり、その一団に先を譲ろうとした。
ああ、ミーティアは縛られてはいない。よかった、あの細い手首に荒縄は辛いだろうから…で
も、僕のせいであのような辱めを受けるなんて。
その時ミーティアと視線がぶつかった。静かな眼差しだった。鏡の
ようにしんと静まりかえった。
ふと、絶望的なあの夜の中、幾度となくミーティアが僕の目を覗き込んだのを思い出した。愛
撫の手の中にあっても、そうやって見詰められる度に僕は碧の瞳に吸い込まれるかのように動
けなくなってしまい、否応無しに自分の心と向き合わされたことを。
いかに自分がミーティアを必要としていたか、主命という名のもとに自分の心を偽り続けてき
たかということ、それがどんなにミーティアの心を傷つけてきたのかということを、その中で
知った。そしてミーティアもまた、婚約者のいる身、という立場に逃げて自分に向き合ってこ
なかったということも。
今、階段を下ってくるミーティアが僕の心を見通す。そしてまた、僕もミーティアの心を見通
す。僕は、悔いてはいなかった。あなたと通じたことを。そしてその罪故に汚辱の淵に置かれ
たことを。
打ち首だろうが火刑だろうが臆することがあるだろうか。己が何を為したのかは分かっている。
後悔するとしたらあなたまでを巻き込んだことただ一つ。
見詰めあううち、ミーティアの一団は通り過ぎて行った。「そら、歩け」とばかりにまた頭を
小突かれる。言われなくとも歩く、と思った時だった。
「エイト!姫様を助けたかったら死に急ぐんじゃねえぞ!」
振り返ろうとしたが槍の穂先に阻まれた。でも誰の声かは分かる。ククールだ。でもなぜこん
な時に?大体助けることなんて可能なんだろうか?この破滅の日の中で。
※ ※ ※
476:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 22:33:06 X4u+i6RA
私は何も悔いてはいない。
すれ違いざま、私はそう心の中でエイトと語らっていた。
エイトと一緒ならばどこまででも行く。それが例え永遠の業火に焼かれ続ける道であっても。
むしろその方が好ましい。エイトのいない天国よりもエイトと一緒の地獄の方が慕わしい、と。
私たちは見張られていた。サザンビークの女官がエイトが部屋に入ったのも出て行ったのも見
ていたのだ。
夜明けと同時にサザンビーク側の女官たちが私の休む部屋へ入ってきて、寝台を改める。私た
ちの罪の印がそこにまざまざと残されてた。
「トロデーン王女ミーティア様、速やかにお召し替えを」
有無を言わせぬ口調に怯えたのは今までお世話してくれたメイドさんの方だった。
「姫様…」
「悪いのは全て私です。あなた方には何の咎もありません」
ただ申し訳なく思うのは世話をしてくれたメイドさんたち。どうか言い逃れして。私に全ての
罪を押し付けて。そしてお父様…ごめんなさい、育ててくださったご恩を踏みにじった悪い娘
で。
着替えが終わると同時にサザンビークの兵が部屋に入ってきて私に告げた。
「サザンビーク王室に対する不敬罪、姦通罪、並びに大逆罪の疑いにより拘束いたす。速やか
に参られよ!」
大逆!そんな!ではエイトは?
…いいわ、大逆罪で火刑ならそれで構わない。エイトを処刑するのならば私も一緒に火刑台へ。
エイトの妻として誇り高く死にましょう。燃え盛る焔がきっと、私たちの罪を焼き尽くしてく
れる筈。白いさらさらとした灰になるまで燃え尽きれば、きっと…
(続く)
477:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/09/09 22:42:18 X4u+i6RA
補足
Dies irae【でぃえす・いれ】
ラテン語。怒りの日と訳される。神の怒りが下る日のこと。
モーツァルトのレクイエムでのこの曲はそれと知らず聞き知っている人も多いのでは(バトロワとか)
478:名無しさん@そうだ選挙に行こう
05/09/10 21:24:58 rGG9Y1Wx
>>477
リクエストに応えてくださってありがとうございます。
有り得ない話と分かっているのに、すごく面白いです。ドキドキします!
続きも楽しみにしています。
479:名無しさん@そうだ選挙に行こう
05/09/10 22:40:58 3Tm8nZSm
>478
そう言っていただけると大変嬉しいです。励みになります。
正直、やらかしたかと思っていたんで。
全く別の話になって戸惑った方も多かったのでは、と。
今後もよろしくお願いいたします。