05/07/06 19:09:22 a2cZP3EK
「さて」
王がエイトの方へ向き直りました。
「すまんかったの」
「あっ、あの、いっ、いいえ、恐れ入ります」
突然の王の謝罪にエイトは慌てながらも頭を下げました。
「どうも最近ネズミの害がひどくての…姫と食べようと思って取っておいたクッキーが食われ
てしもたのじゃよ」
「まあ」
「おまけにフンまでされてしもうて、頭に血が上ってな…」
しゅんとする王様にミーティア姫は近寄って手を重ねました。
「お父様、ごめんなさい。わがままを言ってしまって」
「いいんじゃ、いいんじゃよ。じゃが…」
余程がっかりしたのか肩を落とした様はいつもより小さく見えます。
「ま、鍛冶方にネズミ捕りの罠を多く作るよう命じておいたから、少しはましになるじゃろ。
それまでの辛抱じゃ」
自分を奮い立たせるようにそう言うと、
「さて、仕事に戻るかの。今日も書類がたくさんあるし」
と、椅子に戻ります。
「お父様、お仕事中ごめんなさい。お昼はご一緒できるかしら」
「うむ、今日は大丈夫じゃと思うぞ」
「はいお父様、ではお昼に」
再び仕事に没入していく王の頬に一つ接吻して姫は部屋を出て行きました。エイトも急いで王
に深くお辞儀して従います。
201:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 19:11:43 a2cZP3EK
「お父様、かわいそう。あんなにたくさんお仕事があって」
「そうですね」
部屋を出たところでミーティア姫が小さく呟きました。
「なのに楽しみにしていらしたお菓子をかじられてしまったらお怒りになるのも仕方ないわ」
「…」
隣でエイトが考え込んでいるようです。
「どうしたの、エイト?」
「…何とかできないかな、と思いまして」
「何とかって?」
「ネズミを捕まえられないかな、って」
「えっ」
エイトの思いがけない言葉に姫は驚きました。知り合ってこのかた、エイトが自分から何かし
よう、と言い出したことはなかったからです。
「じゃ、ミーティアも手伝うわ」
今度はエイトが驚く番でした。知り合ってからずっと、ミーティア姫はそれはそれは優雅でおっ
とりとしていて、先程のように声を荒気るようなことすら一度もなかったのに、ネズミ退治を
手伝うと言うのですから。
「だ、駄目です、姫様」
「駄目じゃなくってよ。だってここはお父様とミーティアのおうちですもの」
胸を張って答える姫は大層可愛らしくありましたが、それはそれ、これはこれ。
「だって姫様のドレスとか泥んこになってしまうかもしれませんし…」
「お散歩用の服があるもの。それにエイト、『姫様』じゃなくて『ミーティア』と呼んでって
言っているでしょ?」
「でも…」
エイトは困りました。周囲の大人たちからは「きちんと『姫様』とお呼びするように」と厳し
く申し付けられています。もちろんエイトはそれを守らなきゃ、と思ってはいるのです。です
が王はともかく姫と友達になってしまった今、そう呼ぶのは難しいことでした。
けれどももしミーティア姫の言う通りに「ミーティア」と呼んでいるところを他の人に聞かれ
たら…板挟みになってエイトは小さく溜め息をつきました。
202:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 19:12:45 a2cZP3EK
「いいでしょ?」
ミーティア姫は重ねて聞いてきます。その碧の瞳に覗き込まれ、エイトはつい、頷いてしまい
ました。
「…でも危なくなったらすぐ逃げてください、お願いします」
「ええ、大丈夫よ」
にっこりと笑いかけられてエイトはどぎまぎしてしまいました。でも言うべきことは言わない
と、としっかりした口調で続けます。
「絶対お守りいたします。…じゃ僕、仕事に戻ります」
とは言ったものの、エイトにはミーティア姫を巻き込むつもりはありませんでした。何と言っ
てもこの城のお姫様です。どんな危険があるか分からないのに連れていくことはできない、と
エイトは考えました。ネズミはどんな病気を持っているのか分かったものではありません。そ
んなネズミに噛まれたりしたら大変なことになるでしょう。
(夜になったら一人でしよう)
エイトはそう決心しました。
そうと決まれば仕事はさっさと片付けてしまおう、とばかりに掃除の手を速めます。その様子
をミーティア姫は怪訝そうに見ていたのでした。
(続)
203:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 19:22:57 a2cZP3EK
すみません、長々と…
まだ冒険にすらなっていないし。
よろしくお願いいたします。
204:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 20:33:34 9QXFEVz8
GJ!
ミーちゃんもエイトもかあいいなぁ(*´д`*)
205:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 21:04:11 +Yxr/1kO
な、なんてかわいいんだ(*´Д`)
206:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/06 22:29:02 amhVYwkz
しかし菓子を食べたネズミを捕まえろってトロデ無茶すぎw
207:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 18:57:21 BUsNeKao
七夕ということで、「願い」をテーマにひとつ書いてみました。
208:ああっ女神像さまっ ◆nw3zSJjQag
05/07/07 18:57:40 BUsNeKao
ゴルドの町を出たところでククールが言った。
「トロデ王は女神像にお参りしてこいなんて言ってたが、お前らホントに願い事なんて
したわけ?…あんなの聖地のシンボルってだけで、祈っても御利益なんてないんだぜ」
「わたしはお祈りなんてしてないわよ。女神像の前で決意を改めただけ。必ずこの手で
サーベルト兄さんの仇を取りますって。神様にすがろうなんて思わないわ。だって願いは
自分の手で叶えるものでしょ」
「願いは自分の手で叶える…か。なるほど、ゼシカらしいな」
「アッシは祈るどころか、一刻も早くあの女神様から離れたいでげすよ」
「何だよヤンガス。顔色悪いぞ」
「あんな神々しいお姿を見てると居心地が悪くてたまらないでげす。昔の悪事が胸を
刺すでがす。罪悪感がいっぱいで後ろめたいでげす」
「…そんなこと言われると、過去に何をやってたのかめちゃくちゃ気になるのよねぇ」
「あ。逃げた」
ヤンガスはせかせかした足取りで一行の先へ出ると、先頭で何故か嬉々として剣を構えた
エイトを追い抜きざま、彼の腕をがしっと掴んで、
「さ!エイトの兄貴!さっさとトロデのおっさんのところに戻るでげす!」
「え。いやちょっと待ったヤンガス。あそこの岩陰にゴールドマンらしき姿が―」
「今のアッシにはゴールドマン狩りする余裕なんてないでがすよ!」
「こっちだって余裕ないんだよ!俺の財布はすっからかんだ!」
「全部おさいせんにつぎ込んだからでげすよ!自業自得でがす!」
「おいおい、あいつマジでポケットマネー全部おさいせんに出したのかよ?」
「出したのよ。しかも金塊まで差し出そうとしたから思わず覚えてもいないマダンテを
放ってしまったわ」
「うわ、おっかねー。オレ、その場にいなくてよかったー」
「何言ってるのよ。その後が大変だったんだから。エイトを蘇生させたくてもここの僧侶は
能なしばっかりで蘇生呪文使えないし、仕方なくキメラの翼でふしぎな泉へ飛んでエイトに
水ぶっかけてまたここに戻ってきたのよ。まったく、あんたのいないおかげで…」
「いやその…悪かったな」
「この先のことを考えるとやっぱりわたしも覚えた方がいいかしらね、ザオリク…」
「…………」
209:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 19:00:01 BUsNeKao
「―なあエイト。お前、何を祈ったんだよ」
襟首をヤンガスに掴まれてずるずると引きずられていくエイトに、ククールは気のない
口調で問いかけた。
「それはもちろん―」
「―エイト!」
「あ、陛下。それに姫様も」
魔物の姿をした王はてってって、と妙に可愛げのある走り方でやって来た。その後ろから
白馬の姿をした姫君が優雅な歩みで続く。
「これ、エイト!わしの分もちゃーんと女神像にお参りしてきたろうな?」
「もちろんです、陛下」
エイトはヤンガスの手を振り払い、近衛兵らしく主君の前でびしっと姿勢を正した。
「うむ。ならばよい」
「おさいせんもきちんと奉納してきました」
「よくやったなエイトよ。―これで次はカジノで大当たりが出るはずじゃ!」
「御意にございます」
「…なんでがしょ。兄貴を遠くに感じるでげすよ」
「カジノの願掛けに有り金はたいてたら世話ないわね」
「オレさぁ、あの主従を見てるとトロデーンが滅びたのも納得できるんだよな…」
そんなことを呟いてしまったククールは、白馬の燃えるような瞳に睨まれてこそっと
エイトの背後に避難した。そのまま八つ当たり気味に彼の頭を小突く。
「お前って時々アホになるな。錬金ビンボーのくせに有り金全部はたきやがって」
「一生のお願いなんだ。おさいせんは奮発しないと」
「お前って奴は…。ゼシカのマダンテまで食らっておきながら、カジノで一発当てる
ことが一生の願いだってのかよ」
「それはうちの王様の願いだってば」
「じゃあ、お前のは?」
「―陛下と姫様が一日も早く元のお姿に戻れますように…」
「やっぱりアホだな」
ククールはもう一度ぱしっと頭をはたいてやった。
210:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 19:04:42 BUsNeKao
「それはお前の為すべき事だろうが。…ゼシカも言ってたぜ、自分の願いは自分の手で
叶えるものだって」
「…ああ。それはそうなんだけど」
「今さら神頼みなんかするんじゃねーよ、近衛兵」
今度は彼の背中を叩き、ククールはルーレットの勝利法について熱く議論している三人の
輪の中に入っていった。
エイトはぽつんと一人取り残される。そんな彼に白馬が優しく寄り添った。
どうしたの、とでも言うように首をかしげる彼女にエイトは「何でもありませんよ」と
あいまいな笑みを向けた。そしてそっと視線を外す。
願いというものは誰かに叶えてもらうものではない。
ゼシカやククールに言われるまでもなく自分もそう思っている。
けれど、叶えることのできない願いも確かにあるのだ。
それは。
「―おい、エイト。そんなところで何をぼさっとしておる」
主君の呼びかけで我に返る。
「早うルーラを唱えんか。さっさとベルガラックへ行くぞ。今宵はカジノでオールナイト
フィーバーじゃ!」
「はいっ」
行きましょうかと白馬に微笑みかけ、仲間の元へと駆け寄りながら、肩越しにちらりと
女神像を振り返った。
211:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 19:07:14 BUsNeKao
ククールにはごまかしたが、自分が本当に願ったことは別にある。
それはどんなに頑張っても決して叶えることのできないもので。
だからこそ、聖なる女神像に打ち明けずにはいられなかった。
…願うだけなら許されるだろうと思うから。
―ああ、女神像様。このエイト、一生のお願いです。
この手では叶えられない、一生の願い。
それは。
―どうか呪いの解けた姫様とラブラブな関係になれますように。
勇者の一行が女神像の真実を知るまでには、まだしばらくの時が必要だった…。
(終)
212:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 19:09:53 BUsNeKao
聖地ゴルドへ初めて行った後のつもりで。
ヤンガス、トロデ王の台詞はなかまコマンドのものをいじってます。
213:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 20:04:42 A0nqgAEF
や、やられたー!
実は自分も書いてたんだ。>七夕ネタ
仲間の会話がいい感じっすね。覚えてもいないマダンテってw
そしてラブラブっすかw
もう充分ラブラブだと思っているのは自分だけ?
214:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 21:15:51 yvU5YBgc
>212
乙です。ラブラブすかw
願うならいっそのこと「ミータンとチャゴスの縁談が無くなっていますように」でw
>213
待ってまつよ('A`)ノシ
215:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 21:17:37 asGuPxrr
すごいなぁ本当にこういう仲間会話がありそうだ。
面白かったよ。ハゲ萌えた!
216:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 21:21:59 XQa+BY2w
エイトは「大事な主君だよ」と言っていて
姫様は「私たちお友達ですわ」と言っていて
お互いこっそりラブラブになりたいと思っていて
周りの仲間は「これでラブラブでないって言うんなら
ラブラブってどんなだよいい加減にしろ」と思っていたりw
217:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 22:04:07 A0nqgAEF
恐ろしく気が引けるんですがやっぱり今日投下します。
旧暦七夕って手もあるんですが文中に矛盾が出てしまうので。
218:星の夜 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/07 22:06:13 A0nqgAEF
その夜僕は突然に呼び出された。急いで近衛兵の制服に着替え、三階へ向かう。
「ごめんなさい、エイト。急に呼び出してしまって」
三階の部屋の前でミーティアが待っていた。普段着の彼女はいつもにも増して悲しげだったの
で、つい何の用か聞きそびれてしまった。
「ちょっとお散歩したいの。それでお供をお願いしたくて」
「こんな夜に、ですか?」
確かに一緒に歩けるのは嬉しい。でも正式な婚約者のいるミーティアが他の男―それも若い―
と夜更けに二人きりというのは人聞きの悪いことだと頭の隅の小さな声が警告する。
「…ええ、星を見たいと思って」
小さな声でそう言う。
「ですが」
「お願い」
ただならぬ気迫に僕はもう何も言えなかった。その眼の中に必死の光を見てしまったから…
「そんなに時間は取らせません」
「…分かりました」
僕がそう答えた途端、ミーティアの顔がぱっと輝いた。そう、越えてはならない境界があると
いうことを忘れてしまいそうになるくらいに。
「では参りましょう」
僕の気持ちを掻き乱したとも知らず、ミーティアは歩き出す。僕も自分を取り戻そうとしつつ、
従った。
僕たちは城の東翼、宝物庫の奥にある小さなバルコニーに出た。見張りには適さないこの場所
には衛兵の姿はない。庭の篝火は遠く、月齢一日の月はとうに西の空へと沈んでただ星明かり
ばかり。
そんな夜に人気のない場所でミーティアと二人きり、という事実に思い当たってしまって僕は
ますます落ち着かない。
「懐かしいわ…」
夢見るようにミーティアが口を開いた。
「覚えているかしら、エイト?昔魔術師のおじいさんにお願いして一緒に星を見たのよね」
覚えている…あれは確か九つの時。図書館で一緒に星の本を読むうちミーティアがどうしても
実際に見てみたくなって、星座にも詳しい城仕えの魔術師に頼み込んで夜中に星を見たのだっ
た。
219:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 22:09:40 A0nqgAEF
「本で見たのと違って、実際にはこんなにたくさんの星があるってあの時初めて知ったのよ」
「はい。…あの時はおじいさんにいろんな話を聞かせてもらって」
「そうだったわよね…」
懐かし気にそう言うとそのまま黙って空を見上げる。あの時も天頂高く天の川が流れ、夏の星々
が輝いていた。その下で聞いた星の物語。もう戻らない、子供だった頃…
ふと見ると、涙がミーティアの頬を伝っていた。
「どこへ行っても、星の姿は同じよね…」
呟きが零れる。咄嗟に返答できずにいると、
「戻りましょうか。あまり夜更かしさせては申し訳ありませんものね」
とやけに快活に言う。けれどもその瞳は潤んだままで、僕はつい目を反らしてしまった。
「はい」
何とか答えて―我ながら間抜けだと思ったけど―扉に手を掛けた時、夜風がミーティアの呟き
を運んで来た。
「星たちでさえ、一年に一度は逢うことできるのに…」
もう二度と、二度とこんな夜に二人きりになるまい。いつか必ず、自分の想いを打ち明けてし
まうだろうから。越えてはならぬものがあるということを忘れてしまうだろうから。
今ならばまだ、自律できるはず。誰かのものになったミーティアを見ても堪えられる。きっと…
(終)
220:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 22:16:13 A0nqgAEF
みーたん正式婚約直後ぐらいの話で。
暗い話ですみません…
>>204-206
かわいいと言っていただけてほっとしています。
トロデのわがままはまあネタなんでw
旅の途中もあったっけ、まさにゴルドのおさい銭話w
221:212
05/07/07 22:24:05 KN4HTgXY
>220
うっひゃあ、213って◆JSHQKXZ7pEさんでしたか。
せつなく、しんみりとしたお話でした。まさに七夕にふさわしい。
…ギャグネタ先に出してて良かった。これの後には出せん。
そして>213-216
感想ありがとうございました。
>214
どうもうちのエイトさんはチャゴス王子のことは眼中になさそうです。
>216
「僕たち」「私たち」
二人、手を握り合って、
「「とっても仲良しなんです」」
―あくまでも「仲良し」だと言い張る二人ということで。
…本当は完全シリアスな話になるはずだったのに、挫折してギャグに
逃げました。主姫色薄い話なのに萌えたと言って頂けて嬉しいです。
222:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 22:25:32 qMUqqRLs
二連続でSSきたー
>>211
エイトたちは勇者じゃないってばよ!!
223:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 22:37:55 KN4HTgXY
>222
うわ、やっぱりつっこまれた!
話の締めにいいかと思って「勇者」と入れちゃったんですよね…。
224:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 23:30:37 asGuPxrr
2話連続でキタ━(゚∀゚)━ !!
切ない二人もイイ!
お星様いい夜をありがとう。
225:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 23:36:18 t61fJv+y
「勇者」は職種ではなく生き様や志が重要という説もあるから
困難な旅を成し遂げたエイト一行は勇者と言っても差し支えない。
トロデ「そう、だからワシ達も勇者なのじゃ!」
ミー「ワシ達ということはまさか私も勇者なのですか?」
226:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/07 23:55:20 9h6hUBmr
>>225
陛下、あんまり自分で言うもんじゃないですよそういうの。
227:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/08 23:02:31 ZblkU4c6
スターウォーズで戦っているヨーダの姿がトロデ王に見えた件について
228:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/08 23:26:32 iEfd3IzA
URLリンク(www.tcnweb.ne.jp)
229:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/08 23:30:00 bbe/BwOO
>>228
物体解体画像。PC無害。精神的有害。
230:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/09 00:51:20 YzuG9eUY
>>227
アナキンとパドメ姫の禁断の愛を見てたら、
エイトとミーティア思い出した。やっぱお姫様との禁断の恋は王道だなあ
231:二人の冒険 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/10 16:06:12 qYJXkU+h
>>170-173、>>199-202続き
3.
夕食の片付けも終わり、仕事から開放されたエイトは昼間のうちに隠しておいた手燭と火打ち
石を持って寝床へ潜りました。もちろん眠るつもりはありません。
そのうち他の大人たちも寝床に入り、規則正しく寝息をたて始めました。
(よし)
エイトは他の人を起こさないように静かに起き上がり、手早く着替えました。そして用意して
いたものを持って部屋を出ました。
(ここまでは大丈夫…)
「遅かったのね」
急に声がしてエイトは飛び上がらんばかりに驚きました。
「今夜はもう寝ちゃったのかと思っていたのよ」
ミーティア姫でした。昼間言った通りいつもの絹製のドレスではなく、麻製の―もちろん庶民
の服に使われるものとは比べ物にならない程上質でしたが―散歩服を着ております。
「姫様…こんな遅くにどうして。お部屋に戻られては」
エイトは慌てながらも姫には部屋に戻ってもらおうとしました。
「一人でネズミ退治しようと思っていたでしょ?」
ミーティア姫の指摘は図星で、エイトはもじもじと下を向いてしまいました。
「駄目よ、昼間約束したでしょ?一緒にしようねって」
「でも…」
「ドレスが汚れたって平気よ。それにほら!」
そう言って姫は手にしていた小さな袋から葉っぱのようなものを取出しました。
「やくそうと毒消し草よ。昼間に神父様にもらってきたの。エイトは持ってないかも、って思っ
て」
確かにエイトは持っていませんでした。そんなに高価なものではありませんが子供の小遣いで
は手痛い出費になるので買うのをあきらめていたのです。
「それに一人より二人の方が何かあった時にいいと思うの」
ミーティア姫は真剣にエイトを説得します。
232:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 16:08:02 qYJXkU+h
確かに姫の言う通りでした。城内の人通りの多い所ならともかく、人気のない場所で怪我して
しまったら見つかるまでそこでじっとしているしかありません。それに子供一人いなくなった
ところで誰が真剣に捜してくれるでしょう。多分傷が治るまで―もしかしたら死んでしまうま
で―その場にいなければならないかもしれないのです。
「分かりました。でも危なくなったら僕はいいから逃げてください」
仕方なくエイトはそう言いました。
「いいわ。でも逃げるんじゃなくて助けを呼びに行くのよ。それでいい?」
ミーティア姫に押し切られるようにエイトは頷きます。
「う、うん。じゃなかった、はい」
「『うん』でいいのよ」
ミーティア姫の言葉で二人は顔を見合わせて笑い合いました。
「じゃ、行きましょ。灯を点けて」
「ううん、灯はまだ」
エイトの言葉にミーティア姫は怪訝そうな顔をします。
「どうして?真っ暗で何も見えないと思うわ」
「ネズミは明るいところが大嫌いなんです」
「えっ、そうなの?!」
つい声が高くなった姫にエイトは「しーっ」と指を唇にしました。
「ウサギなんかもだよ…です。夜になると動き始めるんですよ」
一緒に歩きながらエイトはそう話してあげました。ミーティア姫は本の中でしかそういった動
物を知りません。お城にネズミ捕り用のネコはいましたがそれはそれは無愛想で、子供が近寄
ろうものなら「フーッ」と威嚇され、追い払われてしまいます。
ですから姫にとってエイトの飼っているトーポは初めて目近で見る動物なのでした。
「そうだったの…トーポは昼間でも元気よね」
「うん、ちょっと変わってるん…変わっているんです、こいつ。本当はネズミじゃないのかも」
トーポはエイトのポケットから眠そうに頭を出していましたが、慌てたように中に潜り込みま
した。
「でも昼間元気な方がうれしいわ。だって一緒に遊べるんですもの」
233:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 16:10:35 qYJXkU+h
「うん」
エイトは頷くだけにしました。さっきからきちんとした言葉遣いがし難くなってつい普通の話
し方になってしまいます。
(気を付けなきゃ、お姫様なんだし)
「ところでどこを探すの?」
そんなエイトの気も知らずミーティア姫が聞いてきました。
「ち、厨房かな…」
「はいっ。じゃ出発!」
エイトの言葉にとても嬉しそうに姫が頷きます。昼間会う時はとてもお行儀よくていて笑う時
もにっこりと微笑むだけなのに、今夜は活き活きとして快活な様子でした。
(でもかわいいや)
エイトもちょっぴり幸せな気持ちで他愛もない話をひそひそとしながら厨房へ向かったのでし
た。
夜更けの厨房は静まり返り、真っ暗でした。けれども灯無しでここに来たおかげで二人には暗
がりを見通すことができます。
「ね、エイト、あれ」
姫の指差す先、石臼の周りをうろつく小さな影があります。
「ネズミ…?」
にしてはちょっと大きいような気がします。何だろう、とそうっとエイトたちが近付いた途端、
その影はさっと逃げてしまいました。
「逃げられた…」
「そこの棚の陰に入っていったみたい」
「うん」
二人で棚をずらしてみると、そこには扉がありました。
234:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 16:11:34 qYJXkU+h
「こんなところに扉があったなんて」
下の方にかじって開けたような穴があります。きっとこの奥にネズミの巣があるに違いありま
せん。扉には鍵は掛かっておらず、押すと音もなく開きました。先は真っ暗で埃っぽい臭いが
します。
「い、行く?」
「い、行くわ」
二人で顔を見合わせ「ごっくん」と唾を飲み込みました。
「じゃ、行こう」
扉をくぐり抜けると本当に真っ暗のようです。用意していた手燭に火を点し、二人は奥へと進
むことにしました。
(続)
235:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 16:16:41 qYJXkU+h
後二、三回で終わる予定です。
七夕ネタ読んでいただきありがとうございました。
しばらくぶりに大人エイト目線だったんで微妙に変なところはご容赦ください。
236:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 21:25:07 snici5Jx
切ないのもいいけどカワイイのいいなぁ(*´Д`)
237:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 21:52:07 zTtxSS8t
乙です!
この二人は何才くらいだろう。かわいいなぁ。
238:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 22:21:14 qYJXkU+h
読んでいただきありがとうございました。
>238
いちおうエイトがトロデーンに来て、ミーティアと友達になってすぐぐらいを想定しています。
1.の料理長さんと侍従さんの会話中にその辺の事情を織り込んでおります。
なので二人とも7、8歳ぐらいでしょうか。
239:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/10 22:52:53 qYJXkU+h
あっ、自己レスしちゃったよ。
すみません、上のは>237宛です。
240:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/11 01:00:44 2ykWnLlP
そこはかとなくレヌール城を探検する主ビアな雰囲気が醸し出されてて(・∀・)イイ!!
241:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/11 22:54:38 ude8QTZs
>240
あは、そうです。>レヌール城
あれ自体子供の時なぜか怖かった廃屋の探険、みたいなことを連想させる話でした。
大人になってしまうとちっとも怖くないんですけどね。
これもそんな感じです。
242:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 01:33:16 XD7eEUvB
◆JSHQKXZ7pE氏!2chで「萌」という言葉を理解したのはあなたのssでした。これからもガンガッて下さい。応援してます!
243:二人の冒険
05/07/13 21:30:23 8XDplXrz
>>170-173、>>199-202、>>231-234続き
4.
扉をくぐるとすぐに階段が始まっていました。
「エイト、あれ」
ミーティア姫の指差す先には厚く積もった埃に混じって白い─石臼から溢れた小麦粉が付いた
のでしょう─足跡が点々と続いています。
「うん。追いかけよう」
エイトは手燭を掲げ先に進むことにしました。蜘蛛の巣が張り巡らされていて、それも埃塗れ
ときたものですから打ち払わなければなりません。
エイトは、先程厨房を出る前にミーティア姫が、
「何か被った方がよくないかしら?」
と思い付いたことに感謝しました。早速二人でおばさんの三角巾を拝借し、さらに「埃を吸う
とよくないから」と口を覆ってたちまち怪し気な二人組が完成したのです。
でもそのおかげで埃も蜘蛛の巣も我慢できそうです。エイトは蜘蛛の巣を払いながら慎重に階
段を降りていきました。ミーティア姫もぴったり後に続きます。
階段はすぐに終わり、長い廊下が続いていました。埃は相変わらず凄まじいものでしたが進む
につれて蜘蛛の巣は少なくなり、大分楽に進めるようになりました。
ふと、エイトは妙なことに気付きました。今まで知らなかったこの廊下ですが、厚く積もった
埃の下は誰かたくさんの人がずっと使って滑らかになった石畳のようです。乏しい灯で周りの
様子を窺うときちんとした燭台が据え付けられており、かつては頻繁に使われていたことが窺
えます。
244:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 21:32:19 8XDplXrz
「あ、分かれ道よ」
姫の指差す先には上へ行く階段とまだ続く廊下がありました。
「どっちだろう」
粉は大分落ちてしまって足跡を辿ることが難しくなっています。では埃の上に残る足跡で、と
思ったのですが動物の物と思わる足跡がいくつも重なっていて、乏しい明かりではどれが新し
い物か判別できません。
「何となくそっちだと思うんだけど…」
エイトは廊下の奥を指差しました。
「でもこっちの階段もちょっと昇って様子を見てみない?」
「ええ、いいわ」
二人は階段を昇って行きましたが、探索はすぐに終わりました。
「何の音?」
エイトが怪訝そうに言った途端、ミーティア姫が声を噛み殺して笑い始めました。
「お、お父様のいびきだわ。最近疲れていらっしゃるから…」
どうやらこの先はトロデ王の部屋、もしくはその近くに出るようです。
「も、戻ろうか」
エイトも釣られてぷっと吹き出しながら階段を降りようとしたその時でした。
「ミーティアや…」
突然自分の名前を呼ばれたミーティア姫は飛び上がります。
「可哀想に…自分の母君も覚えてはおらん…」
トロデ王の寝言にはっとしてエイトは姫の顔を覗き込みました。でも姫は何も言いません。
「…行きましょ」
短く言うとミーティア姫は裾を翻します。
「…かわいそうじゃないもの」
ややあって姫は口を開きました。
「ミーティアにはお父様がいるもの。それにエイトだって」
「…うん」
エイトにはただ頷くことしかできませんでした。覚えている限りエイトには両親がいませんで
したから…
「さびしくなんてないわ。ね?」
にっこりと笑いかけるその顔を見て、エイトはさらに「ちゃんと守らなくっちゃ」と思ったの
でした。
245:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 21:33:48 8XDplXrz
でもこれで一つ謎が解けました。ネズミはこの通路を使ってトロデ王の部屋の食べ物をつまみ
食いしていたのです。
「後で扉をしっかり塞ぐようにお父様にお話ししなくちゃ」
いつもの元気を取り戻してくすくすと笑いながら姫はそう言いました。
「うん、厨房のところも直さないとね」
「そうよね。ミーティアも聞いたことがあってよ。どこかのお城だったかしら?ネズミの運ん
できた病気でみんな死んでしまったって」
ポケットから頭を出していたトーポでしたが、その言葉にしょんぼりしたかのようにヒゲをだ
らりと下げました。
「あっ、ごめんなさい。トーポはいいの。だってエイトのお友達ですもの」
「チュ」
小さな鳴き声とともにヒゲもぴんとなったようです。
「トーポって不思議よね。ミーティアたちの話していること全部分かっているみたい」
「トーポは特別なんだ」
エイトは何だかとても嬉しくなりました。自分ではなく自分の友達が誉めらるというのも嬉し
いことなんだと初めて知ってのです。そして気の向くままトーポとの出会いや助けてもらった
ことなどを姫に話したのでした。
「…それで僕の首元をトーポが温めてくれてたんだよ」
「まあ、本当に賢いのね」
トーポは何だか誇らし気です。エイトはそんなトーポを撫でてやりながら
「うん、すごく大切な友達なんだ。だから昼のこと…やだったな…」
と言いました。
「そうよね…」
昼間、自分の友達が─間接的にせよ─非難されているのを見てミーティア姫は悲しくて嫌な気
持ちになったのを思い出しました。
「でも汚名挽回するよ」
「それを言うなら汚名返上、名誉挽回でしょ」
「あ、そうだった」
笑い声が使われなくなって久しい廊下に響き渡ります。ミーティア姫は改めて気付きました。
自分がここにいるのは濡れ衣を着せられた友達のためなのだ、と。
246:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 21:34:56 8XDplXrz
廊下は長く、ところどころに分かれ道がありました。「違うかな?」とは思っても一応その先
も確かめていたので相当な距離を歩いたことでしょう。普段そんなに長く歩かないミーティア
姫はそろそろ足が痛くなってきました。
「大丈夫?」
遅れがちになるミーティア姫を気にしてエイトが手を差し伸べます。
「大丈夫よ、これくらい」
姫はそんなことを言いますが、歩き方がおかしくなっています。お姫様の履くような華奢な靴
は長距離を歩くのには向いていません。どうやら靴擦れしてしまったようです。
「ほら、ミーティア、おんぶするから」
エイトは腰を屈めて「さあ」と言うように手を後ろに伸ばします。
「あ、ありがとう」
ミーティア姫は一瞬目を見開きましたが、恐る恐るエイトの首に手を廻しました。何しろ人に
背負われるなんてことは今までなかったのですから。
エイトは灯を持っているせいでちょっとよろめきましたが、踏ん張って何とか立ち上がりまし
た。が、片手が塞がっているのでどうも安定がよくありません。姫はそれに気付きました。
「灯、持つわね」
「ありがとう、すごく助かるよ」
伸ばされた手に灯を渡し、姫に道を照らしてもらいながらエイトは姫を背負って廊下を進んだ
のでした。
(続)
247:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 21:42:05 8XDplXrz
あ、トリ忘れてたよ。◆JSHQKXZ7pEです。何やってんだかな。すみません。
>>242
萌えていただけたのなら嬉しいです。
248:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 22:41:50 eHeJVyn3
>>247
今までたくさん書かれてこられた中で、今回のものはがらりと雰囲気が
変わっていて、しかもとってもかわいくて面白いです!
続きも楽しみにしています。
249:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/13 23:13:45 Uut7+eWo
>「でも汚名挽回するよ」
>「それを言うなら汚名返上、名誉挽回でしょ」
なんてタイムリーなネタをw
250:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/14 09:42:08 fn/tEaVE
age
251:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/14 22:52:49 s4C5OLwo
>248
>がらりと雰囲気が
主姫の子供時代話って誰が語るのかがいつも自分の中で大問題でして…
自分の子供の時を思い出してみてもまともに筋道だった話ができるようになったのって
小学3,4年生ぐらいからだったように思うんですよね。
さらにいつもの「トロデーンのメイドさんの語る」は使えないしw
なので今回だけ誰の視点でもないお話形式みたいなのにしています。
でもですます調って難しい…
>249
いつか使ってやろうと狙ってましたw
252:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/14 23:54:50 zf9nqULk
>>251
乙です!
子供時代の話では今回のが一番好きです。子供エイトの敬語に萌える(*´Д`)
253:二人の冒険 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/15 19:53:30 D9e8MW4/
>>170-173、>>199-202、>>231-234、>>243-246続き
5.
廊下はどこまでも続くかに思われました。でも急に折れ曲がり、扉─これも下部に穴が開いて
いました─を開けた途端、冷たい風と波の音が二人の顔を撫でていきます。真っ暗な通路の向
こうに星明かりが見えて廊下の終わりを告げていました。エイトの背中から滑り降り、顔の覆
いを取りながらミーティア姫が辺りを見回します。
「まあ、こんなところがあったなんて」
そこは断崖の中腹に開けた正に猫の額ほどの狭い空間でした。けれどもどこからか水を得てい
るのか野の花がたくさん咲いています。
「あっ!」
その中央にさっきから追い求めていたネズミがでんと座っていました。でもその大きさたるや
ウサギぐらいはありそうです。
「おい」
「わっ、しゃべった!」
「ど、どうしましょう。夢じゃないわよね」
二人で顔を見合わせ、怖ず怖ずとながらまず話し掛けたのはミーティア姫でした。
「あなたはだあれ?ここで何しているの?」
「ふっふっふっ」
姫の問いに大ネズミは不敵に笑いました。
「聞いて驚くな、泣く子も黙る大怪盗、怪傑大ネズミたあ、あっしのことよ!」
「…知ってる?」
「…知らないわ」
大ネズミは大見得を切りましたが反応は今一つだったようです。
「ぐ、ぐふっ」
二人の反応の薄さに大ネズミは深く深く落ち込んでしまいました。
「あ、ごめんね、大ネズミのおじさん」
「おじ…せめて怪傑大ネズミと呼んでくれ、子供たちよ」
「う、うん」
「わ、分かったわ。それでおじ…怪傑大ネズミさんはここで何しているの?」
ミーティア姫に問いかけられ大ネズミは急にヒゲをだらりと下げました。
254:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 19:55:53 D9e8MW4/
「見ての通りあっしは旅の途中で」
(そうだったの?)
(そうだったんだ)
「一夜の宿としてこの場所を見つけたはいいが」
(よくここを見つけたわよね)
(うん、だってここ上からも下からもすごい崖だよ)
子供たちのひそひそ話は気にも留めず大ネズミは受難の歴史を述べ続けます。
「うっかり拾い食いした魚の骨が喉に刺さって難儀していたところよ」
「まあかわいそう」
「それ、抜けないの?」
エイトが聞くと大ネズミは頷きました。よく見ると毛艶も悪くすっかり憔悴していて、ずいぶ
ん長い間刺さってたようです。
「抜いてあげるよ」
隣でミーティア姫がはっと息を呑み、「エイト」と呟いた気配がしましたがお構い無しに近寄
り、
「ちょっと見せて。痛くしたらごめんね」
と大きく口を開く大ネズミの喉を覗き込みました。
大ネズミはなすがままになっています。手燭の明かりだけでは見えないかな、と思ったのです
が喉の横にぶらぶらとしている骨が見えました。
「あった!…ごめん、おえってなるかも。ちょっと我慢してね」
エイトは鋭い前歯を避け、口の横から指を入れて骨を軽く突いてみました。が、外れそうにあ
りません。釣り針のように引っ掛かっているようです。
「じゃ、抜くよ…いち、にの、さん!」
「ふがっ」
気合一番、うまく引っこ抜けましたが今度は血がどんどん出てきました。
「大ネズミさん、これ使って。人間用だから効くかどうか分からないけれど」
ミーティア姫が思い付いたように小袋から薬草を取り出して大ネズミに渡します。
「ぶふぇっ!うええ、血ィ飲んじまった。でもありがとよ、お嬢ちゃん、お兄ちゃん。おかげ
で助かったぜ」
薬草を口に含んで飲み下すと傷はたちまち癒えました。
255:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 19:57:42 D9e8MW4/
「こんな骨が刺さっていたんだね」
エイトの手に摘まれたその骨は本物の釣り針のように返しが付いていて、刺さったら簡単には
抜けそうにありません。
「こんなのが刺さっていやがったのか…ちきしょうめっ!」
大ネズミは忌々し気にそう言うとエイトから骨を受け取り、ポーンと海へ放り投げました。
「それにしても助かったぜ。礼を言わせてもらう」
「ところで怪傑大ネズミさん、もしかしてお父様のクッキー食べたりしなかった?」
ミーティア姫がにこにこしつつも鋭く問い掛けます。その件をすっかり忘れていたエイトははっ
としました。
「いや、その…そうでぃ、あっしが食っちまったんで」
「怪傑なのに?」
「普段はそんなしょぼいことはしねえ」
エイトの質問は大ネズミの誇りを刺激したようです。急に饒舌になりました。
「痩せても枯れてもあっしは怪盗、こっそりつまみ食いなんていうケチな真似はしねえ。だが
よ、あの忌々しい骨のやつが喉に引っ掛かってからろくな物は食えねえし、集中力は無くなる
しで仕方なく、ってやつさ」
「まあ、気の毒に。でもお父様はクッキーを食べたネズミを処刑しろっておっしゃっているの
よ。おまけにエイトのネズミまで疑われて」
姫の言葉に大ネズミはしゅんとなりました。
「そいつは済まなかった。あっしはもう、この城では盗みはしねえ。
こいつはさっきのお礼の品だ。クッキーを食べた部屋の隅っこに落ちてたぜ」
そう言ってきらきらと輝く石の付いた指輪をエイトに渡すと、
「それじゃ、あばよ!」
と一声叫んで垂直に切り立つ崖を一気に駆け上がり、消えていったのでした。
256:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 19:59:00 D9e8MW4/
「…すごいねえ」
「…すごかったわねえ」
呆然とその妙技に見蕩れていた二人の口からそんな言葉が同時に出て、顔を見合わせぷっと吹
き出しました。
「こんなすてきな場所があったなんて。ミーティア、ここが大好き」
「うん、僕も」
もう夜明けのようです。空は白み始め、鳥たちの鳴き交わす声が聞こえてきました。
「戻ろう、ミーティア」
「ええ、エイト」
いつの間にかエイトは姫を「ミーティア」と呼んでいたようです。あまりに自然だったので、
指摘するのも変に思えてミーティア姫は黙っていましたが内心とても嬉しく思っていました。
漸く本当の友達になれたのだ、と実感できたのですから。
(続)
257:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 20:00:10 6rYex+V9
モェッ
258:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 20:08:16 D9e8MW4/
ようやくここまでこぎつけた!
後一回で終われる…はず。
よろしくお付き合いください。
259:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 21:50:03 ZYSbc1vC
スレリンク(ff板:200-204番)
260:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/15 23:11:39 QclymRaf
>>258
乙です。
ねずみがしゃべったのはちょっとビクーリしたよ。
最終回がんがってください!
261:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/16 23:52:03 TwyKSz4U
感想どうもありがとうございます。
>>252
好きだと言われたから7月15日はエイト記念日w
>>260
>ねずみが
それは今回のMy秘密テーマに関わる部分だ…
気付かれてしまったw
262:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:03:16 1wkod0uM
ラスト行きます。
263:二人の冒険 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/17 11:04:35 1wkod0uM
>>170-173、>>199-202、>>231-234、>>243-246、>>253-256、続き
6.
手燭の蝋燭が燃え尽きる頃、二人は漸く厨房に辿り着きました。厨房はすでに大騒ぎになって
おりました。
「ひ、姫様ぁー!」
あちらでミーティア姫付きのメイドが泣き崩れたかと思えば、
「エイト、このバカタレがっ!」
こちらで料理長が怒鳴ります。
「まず王様にご無事をお知らせせよ!」
「はっ!」
侍従の言葉に兵士が走っていきました。
「エイト、すぐに王様の部屋へ行きなさい。姫様はお着替えになってご朝食を」
侍従がエイトに向かってそう言いかけましたが、すぐ姫に遮られました。
「いいえ、ミーティアもお父様のお部屋へ行きます。どうしてもお話ししなければならないこ
とがあるの」
「はっ!」
「じゃ、行きましょ、エイト」
「うんっ!」
二人は手を繋いで元気よく厨房を出て行きました。その様子を他の者たちは唖然として見送り
ます。どちらかと言えばエイトは愛想のない、暗い子供のように思われておりましたから。
264:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:05:48 1wkod0uM
トロデ王は寝室におりました。昨夜扉越しにいびきを聞いてしまったことを思い出してエイト
は吹き出しそうになりましたが、何とか神妙な顔をこしらえます。
「エイト、おぬしは昨夜一晩中何をしておったのじゃ。その上姫を連れ回して」
王の目が二人をじろじろと眺め回します。エイトの服たるや埃と蜘蛛の巣塗れ。靴もふわふわ
した埃がいっぱい付いていて、まるで綿でも履いているかのように見えます。慌てて頭を覆っ
ていた三角巾を取りましたが、その途端埃がぱっと舞い上がりました。それに較べてミーティ
ア姫は服が少し汚れていたものの大したことはありません。
「お父様、ミーティアは」
「姫に聞いておるのではないぞ」
王は厳しい調子で姫の言葉を遮り、
「さあ、どうなのじゃ」
と詰問しました。
「王様、…あの、昨夜は申し訳ありませんでした。王様のクッキーを食べた犯人を捕まえたく
て一晩中追いかけていたんです」
「うむ」
エイトは怖ず怖ずと話し始めました。厳しい様子は崩さないものの、王は先を促します。
「それで夜中に一人でこっそりネズミ退治しようと思っていたんですが」
「ミーティアが『どうしても』ってついていったの」
「それで、見つかったのか?」
ミーティア姫の言葉を敢えて無視して王は問い掛けます。隣でミーティア姫がしゅんとしてい
るのが分かりましたが、エイトは話し続けました。
「はい、古い廊下に逃げ込んだのをずっと追いかけて、その出口の崖のところにいました」
「海側からの外敵を見張るために作られた廊下と見張り場じゃな。それで」
「とっても大きなネズミでした。食べ物に困って仕方なくつまみ食いしたみたいです。
でも出て行ったから、もうつまみ食いはされません」
エイトはネズミと話したことについては言いませんでした。大人が信じてくれるとは思えませ
んでしたから。そして大ネズミから渡された指輪を差し出しました。「王の部屋で拾った」と
言っていたのできっと王のものに違いないと思ったからです。
265:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:08:19 1wkod0uM
「うむ、そうか。…む?むむむっ?!」
王の目はその指輪に釘付けになりました。
「その指輪、どこで拾ったのじゃ?」
「はい、あの…その大ネズミさんからもらいました。おわび…のつもりだったのかも…」
エイトの言葉はだんだん尻窄みになって消えました。王があまりも食い入るようにその指輪を
見詰めていて気詰まりになってしまったからです。
「なんと…そんなことになっておったとは…」
漸く発せられた王の言葉は揺らいでおりました。見るとその目には涙が浮かんでいます。
「亡き妃の指輪じゃ…結婚後最初の誕生日に贈って妃は気に入っていつも身に付けておったの
じゃが、姫を産む際に外した後、そのまま行方不明になっておったんじゃ。
まさかこんなところから出てくるとはのう…」
「お父様…」
指輪を手にして王は涙ぐんでおりましたが、ミーティア姫が涙を拭ってあげようと近付いてき
たのに気付くと急にいつもの様子を取り戻しました。
「こらっ、悪戯者め!昨日は心配しておったのじゃぞ!メイドから姫がいつの間にかいなくなっ
たと聞かされてからずっと心配で眠れんかったのじゃ!」
「ご、ごめんなさい、お父様…」
「罰としておヒゲじょりじょりの刑じゃ!」
と言うなりトロデ王はミーティア姫をしっかりと抱き締め、頬擦りします。
「痛っ、お、お父様、ごめんなさい!もうしません!」
無精髭がじょりじょりしていてちょっと痛かったようです。
「心配したのじゃぞ…じゃが無事でよかった」
漸く姫を解放して今度はエイトの方を向きました。
「ちょっとこっちへ来るんじゃ」
「は、はい」
おっかなびっくり近寄ってきたエイトに王は「ゴン!」と特大の拳骨を食らわせました。
「でっ!」
「全く心配させおってからに。何もなかったからよかったものの、その大ネズミとやらが凶暴
な奴だったらどうするつもりだったのじゃ」
「も、申し訳ありませんでした…」
「罰として」
王はにやりとしました。
266:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:11:00 1wkod0uM
「今日の仕事を休むことを命じる。風呂を使って少し体をきれいにせい」
「えっ」
「よ、よかった」
「子供が夜中うろうろして昼も仕事では身体が持たんからの。姫も今日の授業や稽古はお休み
じゃ。
さ、部屋に戻りなさい。ワシはエイトとちょっと話がある」
王の言葉に二人は急に不安そうな顔になりました。
「心配せんでもよい、男同士の話じゃからの。姫は先に部屋に行っておいで」
諭すように姫に言い聞かせます。
「はい、お父様…あの、ご心配おかけして本当にごめんなさい」
それでも不安そうにミーティア姫は頷き、
「じゃあね、エイト」
と部屋を出て行きました。
「さて、」
姫が出て行ってから王は改めてエイトに話し掛けました。
「昨夜はよく、姫を守ってくれたの。礼を言うぞ」
突然の言葉にエイトはびっくりしました。
「あっ、あの、僕、でも、何もしてません」
「いやいや、姫の服とおぬしの服を見比べればすぐに分かる。使われておらん廊下を通ってあ
の程度しか汚れておらんのなら同行する者が埃をしっかり払っておったのじゃろ。それに姫の
足では長く歩くこともできんはずじゃ。途中で足が痛くなったりしたのではないかの?」
「…はい。あのう、おんぶしました」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
エイトの言葉に合点がいったように王は頷きました。
「あれには兄弟も、友達もおらんかった…いつも一人で人形遊びやピアノを弾くばかりじゃっ
た。まして外で遊ぶことなど…」
王はちょっと悲しそうな顔をしました。
「これは親としての頼みじゃ。エイトよ、どうか姫と仲良くしてやってくれまいか。姫もおぬ
しを気に入っておるし、頼む」
エイトはさらに驚きました。王様直々に頼まれ事、それも「姫と仲良く」という内容だったの
ですから。けれども昨夜聞いたトロデ王の寝言やミーティア姫の言葉を聞いて「できる限りの
ことをしてあげたい」と思ったことを思い出しました。
267:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:12:35 1wkod0uM
「はい、喜ん…」
と言いかけ、エイトは言い直しました。
「はい、僕の力の及ぶ限り、ずっと仲良しでいます」
「うむ、頼んだぞ」
王は元気のいいエイトの言葉が気に入ったようです。
「ではエイト、姫の部屋に行くがよい。今朝は特別に朝食を用意いておいたからの」
これもまた予想外のことでしたが、驚くよりも先に嬉しくて
「はい、ありがとうございます」
と溢れるような笑顔で返事したのでした。
エイトは着替えて─さすがにこれ以上埃を撒き散らすのはまずいと思ったので─ミーティア姫
の部屋に行くと、ちょうど朝食が運ばれてきたところでした。
「お父様から聞いたの、今日は朝食を一緒できるのよ!」
ミーティア姫が─こちらも着替えています─興奮気味に話しかけてきます。
「うん。おいしそうだね」
本当においしい朝食でした。外はカリカリで中はフワフワのパン、ブロッコリーの冷たいポター
ジュにカッテージチーズ、卵焼きはふんわりと金色で、湯気を立てています。
けれども二人とも朝食を最後まで食べ切ることができませんでした。温かい牛乳を飲んでいる
うちに瞼がだんだん重くなっていきます。それでもエイトは頑張って食べていたのですが、ま
ずミーティア姫がパンを千切りながらうとうとし始めました。エイトも姫がメイドさんたちの
手で寝台に運ばれていく様子を見送ったところまでは覚えていたのですが、その後の記憶がぷっ
つりと途絶えてしまったのでした。
エイトが次に気付いた時、見覚えのない天蓋が目に映りました。横を見るとミーティア姫がす
やすやと眠っています。どうやらここはミーティア姫の部屋のようでした。
「むにゃむにゃ…エイト、…お友達よね…」
寝言でした。とっても幸せそうな寝顔です。
「うん、友達だよね、ミーティア…」
今日だけは一日お休みです。エイトはミーティア姫と手を繋いで再び眠りに就いたのでした。
(おしまい)
268:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 11:15:27 1wkod0uM
長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。
今回の秘密テーマ「子供の時には不思議なことがいくらでも起きる」で書いてみますた。
269:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 16:32:30 qAUrPTLZ
大作乙
なんつうか全体的にかわいくてよかった!
270:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 17:30:34 wXK5C8p1
長編お疲れ様でした。
王のミーティアへの情、ミーティアの友としてのエイトへの情、幼い二人の友情。
どれも丁寧に書かれていて、全編通してとても面白かったです。
GJ!!
271:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 17:43:14 ouhFGcUd
これだけは言わせてもらう
GJ!!!!!!!!!
272:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/17 21:45:10 1wkod0uM
読んで下さった皆様、どうもありがとうございました。
剣を振り回すでもなく、チュー一つするでもない話だったので正直ここまで反応あるとは思っていなかったです。
どうもありがとうございました。
後もう一つ、別所での話を読んで下さった方々、どうもありがとうございました。
すごい勢いで荒れてたんでずっと書き込めずにいてすみません。
また書き込んで荒れると嫌なのでこちらで失礼いたします。
273:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/18 21:18:57 xwfcptUb
GJであります!
274:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 02:29:36 ROKOSWDa
昔見た絵なんだけど、ミーティアとエイトが不思議な泉で向かいあってて、
二人の姿が泉に映ってる絵があったと思うんだけど、
どなたかその絵のあるサイトか、その絵をうpしてもらえないでしょうか…
275:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 09:07:04 7MQvZCDe
2chのDQ8全年齢向お絵描き掲示板だよ
まだ流れてないはずだからそこのログを遡るんだ
276:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 15:18:55 gxm22VWC
DQ8全年齢向の方にあったのは花畑でチューしてるやつ(一見の価値、ありまくり)じゃなかった?
確かDQ全般の絵板だったと思う。
277:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 21:02:20 SBAGQzMZ
このスレキモスwww
278:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 21:58:48 xGxlH6vI
>>275
その板は見たけどなかったです。
>>276
そっちか!探してきます!㌧クス!
279:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 22:59:14 xGxlH6vI
見つからなかった…OTL
結構前に見た絵だからもう消えちゃったのかも…
280:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/19 23:33:40 ZyQTAcVZ
>279
まだあるはずですよ。
ちなみにFFDQお絵描き掲示板です。
281:前スレのコピペです
05/07/20 00:29:18 Xgu//wu4
14 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ[sage] 投稿日:05/02/21 21:11:42 ID:TtRl0N4m
見た瞬間に神だと思った。このスレに貼らずにはいられなかった。今は反省していr
URLリンク(jes.rdy.jp)
URLリンク(www.prenavi.net)
282:279
05/07/20 19:34:09 RZLtAUKc
>>281
おぉ!!!!それだ!ありがとう!
音速の速さで保存しました。
283:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/20 20:05:43 9pszdMbS
>281
どっちの絵も最高だよな…
これらとミーティア絵板の笑顔のやつは永久保存だよ。
あまりに素敵過ぎて携帯の待受画面にしてる。一時間ごとに変わるようにして。
作者様に叩頭の礼!
284:真夏の午後 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/21 00:33:39 AhAm2oz/
晴れ渡った空、どこまでも続く牧草地。熟れた小麦の穂が午後の太陽に輝く。陽射しに緑の陰が、濃く強いコントラストを見せる。
誰もがまどろむそんな午後、子供が二人、草むらから顔を覗かせた。
「どこにいるの?」
女の子―ミーティアが辺りを窺いながらひそひそと問う。
「よく見て。細い葉っぱにとまってるよ。ほら、そこ」
と男の子―エイトが指差す先には草の葉に同化するかのように飛蝗がいた。
「えっ、どこ?」
けれどもミーティアには見付けられない。慣れない眼では自然の中で飛蝗を見付けることは難しい。
「ほら、そこだってば」
エイトが焦れたように言った途端、飛蝗は飛び立った。
「あっ」
「逃げちゃった」
しょんぼりするミーティアにエイトは言う。
「またすぐに見つかるよ」
するとがっかりしていたミーティアの顔がぱっと輝いた。
「あっ、エイト、あれかしら!」
さやさやと揺れる草の先、大きな飛蝗がのんびり草を噛む。
「でっかい!トノサマバッタだ!」
真夏の午後、きらきらと輝く草原。永遠に留めてしまいたい時の中、二人の子供はいつまでも飛蝗を追いかけていた。
(終)
285:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/21 22:49:25 q3Xf4klp
あっちでもこっちでも乙です。
夏休みにぴったりのお話ですね。
ちっちゃい二人も可愛いし。
286:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/22 00:01:43 AhAm2oz/
>285
読んで下さってありがとうございました。
最近子供主姫に萌えてるかも。ロリショタ属性ではないんだけど。
かわいい二人が見たいのかな。
…とか言いつつ次はバカポーネタにしようとか考え中w
287:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/22 10:17:13 lG84mEPB
バカポーネタきぼんぬ!!!!
288:二人の南の島 ◆JSHQKXZ7pE
05/07/23 22:48:38 YGLqyn4m
「海、行かねー?」
久々にトロデーンにやって来たククールの第一声はこれだった。
「ほら、地図に載ってない島に小さなビーチがあっただろ。姫様も連れてみんなで行こうぜ」
「まあ、素敵ですわ」
ミーティアも乗り気のようだ。でも…
「うーん、ごめん。僕たち結構忙しいし」
そう言いながらミーティアにこっそり目配せする。
「何だよ、つれないなあ。あ、もしかして水着ないのか?実はそれも用意済みだぜ」
そう言いながら荷物の中からごそごそと水着を取出した。
「じゃーん、かわいいだろー。たっぷりしたこの二段フリルがささやかな胸元でもしっかりカ」
「ギガデイン!」
「ぎゃーっ!」
「だ、大丈夫かしら…?」
「大丈夫だって、これくらい。大体人の妻をそういう風に言う奴のことなんて知ったこっちゃ
ない」
「ひ、ひでー…」
「さっ、帰った帰った。他の三人で楽しんで来てよ」
「ちっ、この際だから姫様の水着姿見たかったのに…」
「ギガデ…」
「わーっ、帰る、帰るって!ったくお前姫様のことになると目の色変わり過ぎ…」
「何か言った?」
「いーえ何でもありません。
それじゃあな。たまには姫様をどこかに連れてってやれよ。あーいてて…」
289:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 22:50:51 YGLqyn4m
「どうして一緒に行かないの?」
ククールが帰った後でミーティアが聞いてきた。
「ずっと『夏になったら一緒に海へ行こうね』って言っていたわよね?」
「うん、言ったよ。でも海行くんだったら二人だけで行きたいから」
「あら、どうして?きっと楽しいと思うわ」
「だってミーティアの水着姿、他の人に見せたくないし」
「エイト!」
「ミーティアのお肌を見ていいのは僕だけだよ」
「エイトったら!」
ミーティアが僕を打つふりをする。避けるふりしながら手を捕え、抱き寄せた。
「だからさ、二人だけで行こうよ、あの島へ」
※ ※ ※
青い空、青い海、真っ白な砂浜。輝く太陽に椰子の木陰が濃い。
「早くおいでよ」
「ちょっと待って。もうすぐ着替え終わるから」
「いいよ、誰もいないんだし」
「よくないわ、だってエイトに変なところ見せたくないもの」
そう言いながら着替えたミーティアが現れる。
「でも水着ってどうしてこんなに小さいのかしら」
水着の裾を引っ張って伸ばそうとしている様はとても可愛い。…ってそう言ったら逃げちゃう
かな。
「泳ぐ時邪魔になるからじゃない?」
なるべくさりげなく言って「はい」と革の浮袋を渡した。前に来た時にずいぶん泳げるように
はなったけど、泳いでばかりだと疲れてしまうしね。
「ありがとう、エイト」
ミーティアはそれを受け取って
「行きましょ」
と僕と手を繋いで歩き出した。
※ ※ ※
290:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 22:54:42 YGLqyn4m
一緒に泳いで海の中を覗き込んだり、打ち寄せる波に向かって浮袋を放り投げては返ってくる
のを楽しんだり(一度遠くに投げ過ぎて泳いで取りに行かなくちゃいけなかった)、砂浜を歩
く蟹を見付けて追い掛けてみたり、子供の頃に戻ったかのように遊び回ってすっかり疲れてし
まった。
二人並んで砂浜に迫り出した椰子の木陰に腰を下ろす。
「少しお昼寝する?」
「ええ」
そんな会話して腕枕しながら横たわったけど、隣のミーティアはなかなか目をつぶらない。
「どうしたの?」
「うふふ」
何だか覚えのあるようなないような展開だぞ。悪戯な微笑みを浮かべたかと思うとミーティア
が身体を起こした。そしていきなり僕の身体に砂を掛け始める。
「えっ、なっ、何するの?」
「エイトを砂に埋めちゃうのよ」
そう言ってせっせと砂を掛けてくる。あっという間に足元は埋められてしまった。でも熱い砂
が何だか気持ちいい。
「あれ、これって結構気持ちいいかも」
「まあ、そうなの?じゃ肩まで埋めてあげるわ」
一生懸命砂を集めているミーティアはとても可愛かった。集めた砂を僕の上に掛ける時もあま
りに真剣になってて、僕がじっと見ていることにも気付かない。身体を動かす度に胸が揺れる。
そりゃゼシカとは較べるべくもないけどその水着の下にどんなに美しいものが隠されているか、
僕は知っている。
とか思っているうちに僕の身体はすっかり砂に埋められてしまった。掌でぺたぺたと砂を押し
付け、
「できたわ!」
と言うミーティアの顔には妙な達成感があった。
「どんな感じなの?苦しくない?」
僕の顔にかがみ込む。ああ、その体勢だと白い喉元が…
291:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 22:56:10 YGLqyn4m
「うん、何だか身体中ほかほかして気持ちいいよ」
「そう?よかったわ」
と、その眼が波打ち際に向かう。
「どうしたの?」
す、と立ち上がり軽やかな足取りで波打ち際へと駆けて行く。いつもは見えない太腿も、今だ
けは太陽の下に。すらりとしていて、すごく綺麗な脚。他の誰にも見せたくない。
「うふふ」
戻ってきたミーティアの手には何か摘まれている。あっ、蟹だ!
「はい、カニさんですよ」
わわ、僕の上に放すなよ。さっき掴み方教えるんじゃなかった!
「わーっ、こっち来るなー!」
ちょこまかと顔の方に近付いて来る。埋まっている手を動かして追い払おうとしたけど
「駄目よ、手を動かしたら負け」
にこにこ顔でそんなことを言う。負けとかそういう問題じゃないって。見てないで助けてよ。
ほらもう喉の辺りまで来たってば!
「来るなっ、あっちに行けっ」
必死で息を吹き掛けて追い払おうとしたけど、蟹はそんなのお構い無しだ。わ、わ、もう駄目
だ、顔の上に来る!
「はい、おしまい」
と、急に手が伸びてきて僕の上から蟹が除けられた。
「カニさん、ごめんなさい。お散歩の邪魔をしてしまって」
ミーティアが蟹を海の方へと放してやっている。
「ああびっくりした」
「うふふ、今のエイトの顔ったら」
一人でくすくす笑っている。こら、感じ悪いぞ。
「ひどいよ、人を笑いものにして」
わざと拗ねて見せる。
「あ、ごめんなさい。でもエイトが怖がっているのってかわいいんですもの」
292:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 22:57:21 YGLqyn4m
「ひどいなあ」
時々言うんだよなあ、「かわいい」って。それもあんまりそう言って欲しくない場面で言われ
るんだ。あの…そういう時とか。
「ちゃんとミーティアは分かっていてよ、エイトは世界で一番強い人だって。だからこそかわ
いいところを見付けてみたくなってしまうの」
僕の顔を覗き込むようにしてミーティアが微笑む。そんなものなのかなあ。何だか釈然としな
いけど、悪く言われているんじゃないならまあいいかな。
「エイトがどんなに素敵な人か、ミーティアが誰よりも知っているわ…」
ミーティアの髪がはらはらと僕の顔に零れかかる。優しい碧の瞳が近付いてきて、そして―
※ ※ ※
293:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 22:58:26 YGLqyn4m
「いい感じでがすねえ」
地図にない島、実はさっきからエイトたち二人きりではなかった。
「ちぇっ、かわいくねえの。オレの誘いを断っといて二人きりで南の島かよ」
「そりゃそうでしょ。二人きりの方がいいに決まっているじゃない」
「くそー、姫様の水着姿間近で見たかっ」
「メラミ!」
「ぎゃっ!」
「ま、そのうち機会もあるでがすよ。今日のところは二人きりにさせてやりやしょう」
「そうよね、大体今更どの面下げて出て行けるって言うのかしら。
さっ、帰るわよ。そこで拗ねているんじゃないの、ルーラ係」
「だけど納得いかねー。あー、またチューしてやがる。つーか誰もいないんだしもっとこう…」
「メラゾー」
「マホトーン!」
「…」
「ふっ、何度も同じ手は食わないぜ。何ならオレとチューしてみ」
ビシッバシッ!
「ふぎゃーっ!」
「さっ、帰りましょう」
「双竜打ちでげすか。ゼシカの姉ちゃん最強でがす…」
(終)
294:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/23 23:02:29 YGLqyn4m
あまりにおバカですみません…
題からして70's歌謡曲のかほりが…
いっそそのまま使いたかったw著作権ですぎやん出て来たら困るから止めたけど。
295:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/24 01:00:43 yRMQMsj1
バカポー主姫(どっちかと言うと姫主?w)かわいいよw
周りの人達・・・ククール達もいい味出ててこういうノリいいなぁ・・・。なんか和む(*´ー`)
それにしても、◆JSHQKXZ7pE さんはこう次々とネタが浮かんでくるなんてすごいですね~。
これからももっともっと主姫スレを潤してください!
296:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/24 11:33:54 Gc9Puf2k
バカポーいい!!
ミーティアの水着。…もうこの言葉の響きだけでご飯を3回くらいお代わりできます。
すぎやんできよたかの方を思い浮かべたよ。夏だけに。
297:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/24 12:05:16 8t6Opj0U
エイト「屁…こいていい?
ミーティア「程々にね…
バブリ!!!!
半径10メートル内の人間死亡
298:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/24 15:05:00 l7D//VUm
感想どもです!
正確にはすぎやんじゃなくて著作権協会(だっけ)の方。だから歌もすぎやんの曲じゃないです。
「なつなつなつなつ…」と「きんーいろっにーかがやーくっ…」のどっちか、使いたかったなあw
運が悪いとこれくらいの引用でもひっかかるのでこの辺で。
>295
今ネタ大放出中なんでw
こういったバカポーネタとかは日常の中で思いつくんでいいんですが、シリアスは正直ネタ切れ…
いや、いつかは必ず書くと決めているネタは何個かあるんですが、
それを書いてしまったらもう二度と書けないんじゃないかとちょっと怯えてたり。
色々自分の限界(戦闘書けない、エロダメダメ)が見えてなかなかしんどいっす。
299:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/25 20:23:42 hQEirvFf
そう言えば「あるきかた」8/5発売だっけ?
みーたんいるかなあ。
公式ガイドは3000円ドブだったけど、出てるといいなあ。
300:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/25 23:51:17 Md0y9ov4
300get
301:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 18:30:23 PYN9Ul6N
圧縮の間隔が短くなってる…気を付けないと。
と言って雑談できるようなネタは何もない。
うーん、ミーティアの水着は何色がいい?
…こんなくだらんネタしか思い付かん。
302:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 21:10:05 pTe1MxB6
水着の色は黒がいいなぁ(*´ー`)
ちょいハイレグで。
303:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 21:13:40 QfuqSiMu
>>301
自分は白がいいかなぁ。
みーたんの黒髪には白が映えると思うし。
水着で髪を結い上げたりしたらもう・・・(*´Д`)
>>299
「あるきかた」いよいよ出るんだね。
そういえば、ドラクエ8の4コマはもう何冊か出てるのかな?
みーたんはネタバレになるせいか、何だか公式物では永遠に出てきそうにない・・・
304:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/26 22:28:55 KMCEBjWN
白地に紺の柄付きで。
髪はアップで。
305:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:09:52 13QxqL5U
貧乳みーたんはやっぱり水着の中にパット仕込んで、
足りない胸を補ったりしているんだろうか…。
306:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:11:53 13QxqL5U
あ、色は青系統も可愛いと思う。
ビキニよりワンピースがいいかな。
307:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:18:37 dqErfDkl
フリルたっぷりでボリュームアーップ!かもしれんw
寒色系がかわいいかもね。
逆に踊り子の服みたいなオレンジとかはイマイチな気がする。
308:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 00:25:27 dqErfDkl
おおっ、IDがdqじゃん!記念にもう一回書き込んでしまえw
ワンピースだと体形まるわかりだぞ。ナイチチがますます強調されるとオモ。
むしろビキニで視線を散らすのじゃ!
309:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 01:30:27 31zQrtRm
待て待て。今305がいい事を言った。
パットが入っているみーたんの胸に、エイトが「…んっ?」
萌える(*´Д`)
310:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 11:09:34 9HaVokTU
ミーたんは巨乳ではないがナイチチでもなく美乳だと主張してみる。
アンダーが分かりずらいのとゼシカとの比較で目立たないけど
普通にCあると思うんだが。
311:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/27 22:17:48 GkubdKvu
あんまりみーたんを貧乳とかナイチチ言わん方いいぞ。
ほれ、向こうで槍を構えてジゴスパの準備している奴がいるw
312:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/28 00:06:29 tBgjEIHp
じゃあ、貧乳とか言わずに「ささやかな胸元」とか「慎ましやかな膨らみ」とか。
>>308
ワンピースだと体形まるわかり…そうなのか。
しかしみーたんは胸元がちょっと寂しいくらいで、普通以上にスタイルはイケてると思うが。
313:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/28 09:36:59 jspuUdRb
リアルのパートナーも微乳だなあ。俺は、やっぱり微乳好きなのか・・・・。
314:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 08:11:25 mEfQvtXc
あげ
315:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 11:46:23 ggjwLZqh
ブロリーの究極技がギガティックミーティアな件
316:周允 ◆EoZJlWK/TE
05/07/29 11:51:45 ClMfgAPl
>>315
Gigatic Meteorですかw
317:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/29 19:13:17 raC7fTwk
URLリンク(rerere.servebeer.com)
みーたんはあれで丁度いいんだよ。
318:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 00:25:50 uyHdtFMJ
>317
どこキャプってんだよw
でもみーたん言われているほど貧乳じゃない。
通常EDで「はい」選択の後、手を取り合うシーンのみーたん、いい感じであるよ。
身体自体が細いから迫力はないけど、個人的にあれくらいがすきだ。
319:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 03:03:54 Cr137D6m
863 名前: 名無しさん@どーでもいいことだが。 [sage] 投稿日: 2005/07/29(金) 23:02:15 ID:UtYzcd4f
DQ8のとあるノマカプスレに時々沸くオヴァ臭プンプンする小姑自治厨がウザイ。
某カプと違って厨が居なくて荒れなくて平和だと思ってたのに
奴らのせいでギスギスしだした。
馴れ合いをちょっと注意しただけでもギャーっと噛み付く。
他の某板に巣食ってるリア厨ぽい厨とはまた違った感じの厨だ。
320:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 11:20:42 in/0P+5H
>>317
左の方がイイ。
321:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 14:22:22 Jf/Kjr2y
品のいい胸。品乳。
322:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/30 20:14:58 xxHetfPa
美しい胸。美乳。
323:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 13:13:22 fMuXzn/S
オパーイがイパーイ
324:小ネタ6 ◆nefbuGknog
05/07/31 15:06:38 mwnx2xIO
「いなくなって初めてゼシカのありがたみってもんが
じわじわと 身にしみてくるぜ。 」
「まったくでがすなぁ。あの胸は反則でがすよ。」
「オレも初めて見たときは胸に水風船でも入れてんのかと
見まちがったくらいだからな。」
「………」
「お前だっていくら姫さん一筋でもちょっとくらい
あの胸に心が動くことがあったんじゃないのか?
正直に言ってみろよ」
「いや別に」
「兄貴はククールと違って真面目なんでやんすよ!ね!」
「女の子は胸より脚だろう?」
「すまないがその持論からゼシカより姫さんがいいとなる理由を
なるべく詳しく教えろっつーか教えてくださいお願いします」
「ハ、ハレンチでがす!ハレンチでがすよ!!」
325:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 15:07:18 mwnx2xIO
ムラムラしてやった。
主姫なら何でもよかった。
今は反省している。
すんません今思考がギャルゲー風味です。
各コネタ間のつながりはありません。全然。全く。
つーかこれ主姫か?
326:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 17:16:07 pwabyc03
>324
ちょっと待て!見たんか?見たんだな?!
…くうーっ、羨ましいぜエイト!
チチもいいが脚も大事だよな!
327:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 17:28:47 0ONBr6mA
考えてみたらミーティアの足は神秘のベールに包まれているな!
旅の間馬車を引いて、さぞかし引き締まった美脚なんだろうなぁ!
くそー(*´Д`)ハァハァ
328:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/07/31 20:51:06 mwnx2xIO
これを書くに当たって最初にしたことは
この会話が町の中だということを確認することでしたw
>>327
見えないからこそ想像の余地はいくらでも(*´Д`)ハァハァ
329:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/01 23:47:03 q2Qo+PlN
むおーっ!絵板にみーたんの水着姿が!
(*´Д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
描いた方GJ!×10
330:香りの呪縛 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/02 22:30:35 607NLpnP
城は活気に溢れていた。
もうすぐあの方の十八回目の誕生日がやってくる。その準備に皆、忙しくしていた。
今年は例年にも増して盛大に執り行われるはずだった。
「この城で祝われる最後の誕生日になられるはずだからね。王様もお力が入っていらっしゃる
よ」
と、同僚は言っていた。
最後の誕生日…分かっていた。分かっていたはずだった。あの方は古い約束に従っていつかは
嫁ぐためにこの城を出て行ってしまうと。そして誰かの、僕以外の誰かの妻になると、頭では
理解していたつもりだった。
でも実際にその現実を突き付けられると、後頭部を激しく打たれたかのような衝撃に目が眩む。
それにそんな約束があろうがなかろうが、あの方はいつかどこかの王族か大貴族と結婚するに
決まっている。一介の近衛兵である僕がどうしてこの国の王女にして正統な王位継承者である
あの方と結ばれることがあるだろう。そんなことはお伽話の中でしか起こらないことなのだか
ら。
懸命に自分の心を落ち着かせようとしたけど、
「どうした?唇が真っ青じゃないか。どこか具合でも悪いのか?」
と気付かれてしまった。何と言ってその場を取り繕ったのか覚えてないけど
「何か悪い物でも食べたんじゃないのか?具合悪いなら無理するな」
と心配される。
「大丈夫です。それよりほら、向こうに入道雲が」
と無理に微笑んで同僚の意識を逸らせ、切り抜けた。
331:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:31:59 607NLpnP
今夜は非番だったので、夕食の後そっと兵舎を抜け出してとある場所に足を向けた。そこはか
つてあの方と見つけた古い見張り場だった。何も無い小さな空間だったけどミーティアはとて
もその場所が気に入っていて度々そこへ行っては遊んだものだった。
そして誰にも言ったことはなかったけど、今日は僕の誕生日でもあった。それは、ミーティア
と決めたこと。あの方と初めて出会った日、誕生日も覚えていなかった僕に
「じゃあ今日がエイトのお誕生日よ」
と言ってくれて、それからずっとその日が誕生日だった。小さい時は一緒にお祝いの真似事な
んてしていたけどいつの頃からかそんなことはしなくなって─できなくなって、ただ今日が僕
の誕生日だという事実だけが残っている。
何も起こりはしないと分かっている。それでもかつて一緒に遊んだ思い出の場所で誕生日の夕
べを過ごしたいという感傷的な気持ちがそこへと足を向けさせた。
使われていない通路を抜けて最後の扉を開けると、涼しい海からの風が僕の頬を撫でた。崩れ
て残骸だけになった石組みにもたれて座ると、昼間の熱の残りが心地よかった。
ちょうど西向きに海に面しているため、夕映えの彼方、微かに大聖堂の島の影が見える。行っ
たことはないけど、どんな場所かは知っている。
「法皇様がいらっしゃる場所は雲の上で、突き出した岩の上にお屋敷があるんですって」
記憶の中でミーティアが息を潜めるかのように僕に言っている。そしてその場所こそあの方の
婚儀が行われる場所なのだと聞いた。王族同士の婚儀に際して法皇様直々に祝福を垂れるのだ
と。
332:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:33:25 607NLpnP
皆、婚礼の供に志願している。ミーティア付きのメイドはもちろん、間近で護衛してきた近衛
兵の同僚たちも。主人の晴れの姿を見たいのだろう。
でも、僕は行かない。志願しない。
それは最後に一目、あの方の姿を見たいとは思う。でも他の人のものになるミーティアを見て、
平静でいられる自信がない。臣下の僕が主人の姫を恋い慕っているなんてあってはならない話
なのだから。
サヴェッラから目を背け、夕闇に覆われつつある遠い水平線を見遣った。今日も海は穏やかで
打ち寄せる波の音も遠く微かに聞こえるばかり。嵐の夜、地の底から轟くような音を立てて荒
れ狂うものと同じ海だとはとても思えない。僕の両親と、記憶を奪った海だとは。
どんな人だったんだろう、僕の両親は。嵐の朝、助け出された僕に突き付けられた最初の現実
は「両親を失った」だった。だけど両親の顔すら覚えていない僕にとっては色々な人から「海
で両親を失って可哀想に」と言われても居心地の悪い思いしか感じない。
僕は、一体何者なんだろう。どこから来て、どこに行こうとしていたのか。今となってはもう
知る術もない。
333:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:35:42 607NLpnP
僕は一つ溜息を吐いて立ち上がった。せっかくの誕生日だというのにこんな辛気くさいことば
かり考えている自分にうんざりしてしまったこともあったから。けれど背後から軽やかに近付
く足音に僕はその場に釘付けになる。
「エイト」
振り向かなくても分かる。探すまい、その音を聞き分けようとすまいと思い、でも探さずには、
追わずにはいられないミーティアの足音。
「ここにいたのね」
衣擦れとともにふんわりと花の香りが漂う。身に纏う絹、いつも使っている鈴蘭の香水、そし
てミーティアの肌の匂いが混ざり合い、僕の心を掻き乱す。
いつまでも背を向けているのは失礼に当たる。僕は顔を伏せたまま振り返り、片膝を着いた。
顔さえ見なければ何とかなると思ったから。けれどもドレスの裾から覘く白く華奢な足が目に
飛び込んできて、結局狂おしい程の想いに囚われてしまう。
「いえ、もう戻ろうと思っていたので」
戻らなければ。二人きりになってはならないから。
「そう…」
会話が途切れ、気まずい沈黙が広がる。僕はミーティアが顔を俯けた隙に横をすり抜けようと
した。
「では、これで」
「あ、待って」
ミーティアの手が僕の袖を捉える。思わず顔を上げてしまい、目が合った。
「お誕生日おめでとう。エイト」
微笑みとともに小さな包みが差し出される。
「ですが…」
受け取れない。個人的な贈り物をもらう訳には、と思い固辞しようとした。
「お願い、受け取って。嫌だったら後で捨てていいから」
声が震えていた。ミーティアの望んでいることは知っている。いつも一緒にいたい。昔のよう
に話したり、一緒にどこかに遊びに行きたい、と。
でももう無理だ。僕が望んでいることは骨の折れんばかりにきつく抱き合い口づけを交わす、
ということなのだから。
でもそれは絶対に叶わぬこと、叶ってはならぬこと。ならばせめて傷つけないように。
「お気遣いありがとうございます。謹んでお受けいたします」
334:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:40:53 607NLpnP
受け取ろうとして一瞬手が触れ合った。しなやかで滑らかな肌の感触が僕の掌に残る。僕は思
わずその手を包み込んでしまった。
「あ…」
唇から零れた吐息混じりの声の甘さ。僕の手の中にあるミーティアの手はたおやかで柔らかな
感触なのになぜか痛みすら感じた。
「エイト…あの…」
「…失礼いたしました」
ミーティアが手を引き抜く。その顔は今にも泣き出しそうだった。
「ご…ごめんなさい。あの…戻ります」
そう言うと裾を翻しあの方は行ってしまった。大気にその香しい匂いだけを残して。
長い夏の日も暮れ、夜露が降り始めたので兵舎に戻った。自分の寝床に入り、先程貰った包み
をこっそり開く。気が急いたせいか中身がはらりと落ちる。慌てて拾い上げたそれはバンダナ
だった。かつて二人でこっそりトラペッタへ行った時、変装のためにミーティアの頭に被せた
真っ赤なストールと同じ色。
(ミーティア…)
懐かしさと共に後悔の念が湧き上がる。あの時もっと大事にしておけばよかった、二人の時間。
隅に小さく刺繍された僕の名を見つけた時、それは一層強まった。
もう帰らない日々を思い返してみても仕方がない。僕は人に見られることに怯えつつバンダナ
にそっと口づけを落とし、枕上にきちんと畳み直して置いた。もう遅かったので横たわり、目
を瞑る。
と、その時ミーティアの気配を感じた。さっき貰ったバンダナからあの方の残り香が静かに匂
い立つ。
(ミーティア!)
離れたくない。ずっと一緒にいたい。でもそんなことを思っても仕方ないんだ。
(ミーティア…)
この先何かの拍子に今のように思い出が甦り、その度に懐かしさで胸が締め付けられる思いを
するんだろうか。それはあの方が行ってしまった後も続くんだろうか。それに僕はただ堪えて
いくしかないんだろうか。
ミーティア、あなたが行ってしまったら、僕の想いは一体どこへ行けばいいんだろう…
(終)
335:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:48:22 607NLpnP
エイトがトロデーンに来るまでの話はまたいつか…
336:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/02 22:59:40 iA10PbeR
ハッピーエンドになるを知ってるからこういう悲恋ぽい話も読めるんだな~ってオモタ
337:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/03 21:25:20 R5HWOWM+
乙です!
◆JSHQKXZ7pEさんが書かれているのは、短編SSのようでいて
他板、他スレに投下されてる分も含めての大長編小説なんだなぁ、と今更ながらに思いました。
時系列に並べて読み直してみたら「ああ、ここであの伏線が」って分かって面白いかも。
338:有海
05/08/04 19:02:25 o87QK+BT
札幌 すすきの 19:30
チャゴス「ミーティアーー」
マネキン「???」
ミーティア「美味くいったわね」
エイト「逃げよう」
チャゴス「動かない」
ミーティアのマネキンだった
ホテル日航 PM20:30
ミーティア「かわいいわ、お父様とエイト」
トロデ「ほら、エイトやってみるぞ」
3人は24:00まで遊んでた
339:有海
05/08/04 19:09:23 o87QK+BT
翌朝 紀伊國屋書店 AM8:00
ミーティアは初心向け ピアノレッスンというの読んだ
トロデは料理テキスト20本読んだ
エイトは愛・地球博の公式ガイドブックを読んだ
大丸札幌店 AM10:00
トロデーン城 AM12:00
B3F 錬金釜工房
金の錬金釜 完成
日本列島 PM1:00~翌朝8:00
340:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/04 19:48:39 mzv8A1Wb
感想どもです。
>336
悲恋ぽいけど最終的にはハッピーエンド、っていうのが書いている中で大きいかも。
そこが主姫萌えポイントのような気がする。
>337
確かに書いている話はほとんどが繋がっています。例外は今のところ一つだけ。
が、時系列は…その、色々矛盾することが見えてちょっとなあ。
気付いているのは一つあるんだけど他の人の眼ではもっとあるに違いない。
341:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/05 01:48:20 TCFP9dUz
鳥山の描いたミーティアイラスト見てみたいな・・・
いつか公開してくれないかな
342:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/05 17:18:54 tPaFddli
>330
泣いた
URLリンク(www.uploda.org)
343:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/06 01:04:43 kYVcp+Um
ここのスレの住人はあるきかた買ったのだろうか
気になるところ
344:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/06 21:56:15 fBnF5fO/
>>343
ずばり、買いですか?
345:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:01:50 yo/QjMIp
ミーティアファンはよしておいた方が…
346:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:19:51 QrOrz3ba
姫様名前すら登場してません…orz
347:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:34:19 xRU9/DYR
なんなんだろう、この情報規制っぷりはね…
348:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/07 18:46:21 bs+BpVdQ
じゃあやっぱりフィギャもでないんだろうなー…
349:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:27:52 p9Fhv3g3
夏と言えば海!夏と言えば山!夏と言えば怪談!
っつーことで怖い話?行きます。
350:百物語 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/09 21:29:37 p9Fhv3g3
「あー暑い暑い。暑くてやってらんねー」
野宿の火の向こう側でククールがぶつぶつ言っている。
「そんな暑苦しい格好しているからじゃない。もっと身軽な服装すれば?」
ゼシカの意見はもっともだ。確かに全身を隈無く被うククールの装備は暑そうだし。魔法のビ
キニを着ているゼシカは涼しそうで正直羨ましい。
「じゃ、ゼシカ一緒に寝てくれよ」
「え?」
「伊達男の宿命ってやつかな、オレは女と同衾する時しか脱がないのさ。もちろんゼシカもは」
「マヒャド!」
「わーっ………」
狙いは正確、覚え立ての呪文がククールに炸裂した。
「あー…こりゃまた見事に凍っているでがすね」
ヤンガスがククールの氷の像をこんこん、と叩く。「わーっ」という顔のまま凍っているそれ
は見物だった。そのまま息が詰まってしまったらまずいし呪文で溶かそうかと思ったんだけど、
すぐに顔の周りから溶けてきて「出せ出せー!」という形に口が動き出したのでそのままにし
ておくことにした。
「手加減してやってよ、ゼシカ。でも暑い、っていうのには同感だよ」
「本当ね。夜になってもこんなに暑いなんて」
「こんな時は涼しくなる話をするでがすよ」
「もしかして…怪談?」
「そうでがす」
「うむ、よいかもしれんな」
「げっ、おっさん、いつの間に!」
「ワシも暑いんじゃ。今夜はここで怖い話で涼もうぞ」
(…マジかよ)
氷の中のククールの口がそう動いたような気がした。
「あら、いいかも。じゃ、一人一人順々に怖い話をしていくっていうのはどうかしら」
「そうだね、涼しくなっていいかもね」
(おいこら!いつまでオレを凍らせておくつもりなんだよ!)
「ではあっしから…」
※ ※ ※
351:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:30:55 p9Fhv3g3
それはあっしが盗賊駆け出しだった頃の話でがす。
パルミド近くの海岸に幽霊船が出ると言う噂がありやした。かつて商船が海賊に襲われて、積
み荷を渡すくらいなら、と自ら船を沈めたんでがす。それが化けて出るんだとか。
それを聞き付けたゲルダのやつが
「そういうところにはお宝ががっぽりあるに違いないよ」
と探りに行く気になっちまって…あっしはそういうところに行くのは気が進まなかったんでが
すが
「あんた口ばっかりだね。お宝が目の前にあるのに行かないなんて盗賊じゃないよ」
そこまで言われてしまったら男として行くしかねえ。覚悟を決めて付いていったでがす。
月のない夜でげした。生温い風が吹き付けて一層いやーな気分になったでがす。
海岸にはぼやーっと光る船らしき影があるじゃねえでがすか。
「何だい、何も出て来やしないじゃないか」
早速甲板に上がり、ふん、とゲルダが鼻で笑った時でげす。
「俺の船で何してやがる!」
突然背後ででかい声を出され、あっしらは飛び上がりやした。
「で、出たーっ!」
「何さ、幽霊船でお化けが出るなんて当たり前だろ。びびってるんじゃないよ」
とか言いつつもゲルダの声は震えています。
「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと出てけ!」
そいつに襟首をひっ掴まれまずあっしが海に放り出されやした。続いてゲルダが。
「もう来るんじゃねえー。それから人を幽霊呼ばわりするんじゃねえー」
甲板から声がして船はさっさと行ってしまいやした。
「…行っちまったぜ」
呆然と見送るあっしはいきなりぽかりと殴られたんでがす。
「なーにが行っちまったぜ、だよ。あんたがぼやぼやしていたせいでせっかくのお宝がフイに
なっちまったじゃないのさ。どうおとしまえ付けてくれるんだい!」
あっしには幽霊よりもその時のゲルダの顔の方が怖かったでがすよ。
※ ※ ※
352:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:32:20 p9Fhv3g3
「あ、ククール、溶けたんだ」
「溶けたんだ、じゃねえ。必死で溶かしたんだよ。まだ足元は凍っているんだ」
「涼しくてよかったでしょ。どう、私の呪文の威力は」
「こんな涼しさは嫌だーっ!」
「…あっしの話はスルーでげすかね」
「あっ、ごめんごめん。ちょっと涼しくなったかな?で、その船は一体何だったの?」
「うう、兄貴は優しいでげす…
今思うに多分夜釣りの船か何かだったんじゃねえかと」
「じゃ、次は私ね」
「(くそー、怖い話はあんまり好きじゃないんだが。でも足元凍ってて逃げられねえ)どんな
話か楽しみだな」
…微妙にククールの顔が引き攣っているような気がするなあ。ま、いいか。ゼシカはどんな話
なんだろう。正直に言ってヤンガスの話は惚気にしか聞こえなかったよ。
※ ※ ※
353:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:33:41 p9Fhv3g3
私が小さい時にサーベルト兄さんと聞いた話よ。
ポルトリンクは港町だったから船乗りさんたちから色んな話を聞かせてもらったの。その中で
も特別怖かった話ね。
航海した先で久しぶりに陸に上がったとある船乗りさんがいたの。旧友と酒を呑み、楽しい時
間を過ごしてさて寝るか、と宿屋のベッドに寝転がったその時。
「寒いね、兄さん」
「そうだね、でも一緒にいれば寒くないよ」
という子供の会話が聞こえてきたの。
隣室の声が聞こえるような安宿にするんじゃなかった、と思ったんだけど、よく考えたら季節
は夏、むしろ今夜みたいな暑い日だったらしいのよ。
それでも気のせいかも、と思い直してまた寝ようとしたの。
「本当に寒いね」
「でも我慢しようね」
もしかしたら窓の外に誰かいるのかも、と船乗りは外を見たの。でも誰もいなかった。深酒し
過ぎだと思ってもう何が何でも寝てやろうとしたその時。
「誰か僕たちのベッドにいるよ」
「じゃあその人にくっついてあったまろう」
そう聞こえた途端!
男は冷たい手のような物で─それも二組─身体を掴まれ動けなくなってしまったの。
「あったかいねえ」
「あったかいねえ」
声も出せなくなって、朝になって宿の主人が中々起きてこないからって様子を伺いにきた時に
は男はすっかり冷えきっていたんですって。
※ ※ ※
354:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:35:25 p9Fhv3g3
「おおっ、怖い、怖いでげす」
「何かすごくひんやりしたよ」
「ふっ、そそそれくらいどどどうってことないさ」
「じゃ、次はククールね」
「お、おう」
「楽しみじゃのう」
※ ※ ※
それはオレがとある貴族の館に寄付金集めに行った時の話だ。旦那が留守とかでそこの奥方が
オレに色目を送ってくる。なかなかの美女でまんざらでもなかったものだから、つい、誘いに
乗ってしまったんだな。
でまあ広間のソファでアレコレしていたら突然扉がバーンと開いて留守のはずの旦那が斧持っ
て乱入してきたんだよ。奥方も
「あーれー、この人に襲われたんざますー」
とか言って逃げを打つし。
いやー、あれには参った。どうやってその場から逃げたのか自分でも覚えてねえ。
※ ※ ※
「…どこが怖いのよ」
「美人局でがすな。別の意味で怖いでげす」
「つつもたせ?」
「あ、兄貴は知らなくてもいいでげす」
「うわーっ、オレともあろう者が美人局なんかに引っ掛かったのかー!」
「自業自得よね。こんなやつは放っておきましょ」
「では次はワシが」
「お城には怖い話がいっぱいありそうでがすからねえ。楽しみでがす」
※ ※ ※
355:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:37:31 p9Fhv3g3
それは姫が生まれる直前のことじゃ。
寝苦しい暑い夜のことじゃった。あまりの暑さに眠れなかったワシはテラスで涼もうとして廊
下を歩いておった。妃は休んでおったのでワシ一人じゃったよ。
と、角を曲がったところで不審な人影を見つけたのじゃ。
「誰じゃ」
誰何するとその影はゆっくりとワシの方に振り返った。
「気の毒にの」
それは女、白いドレスを纏った見覚えのない貴婦人じゃった。ワシはその声を聞いた瞬間すーっ
と汗が引いたぞ。
「汝らの最後の子はなんと過酷な運命を背負っていることよ」
女は歌うかのようにそのようなことを言ったのじゃ。
「お、お主は誰じゃ。ここがワシの城と知っておるのか」
ここはワシの城、不審な者を見過ごす訳にはいかん、と思ったのじゃが…
「妾の名か」
ふ、と笑ったように思えた。が、それはこちらの背筋を凍らせるような笑みでの、さすがのワ
シも足が震えたもんじゃ。
「時を告げにきたと申せば誰か分かるじゃろ」
※ ※ ※
「そう言って女は掻き消えたのじゃ」
「だっ、誰だったの?」
「我がトロデーンの王族が死期を迎える時に時々現れるという白い貴婦人だったのじゃ」
「で、でもおっさんは生きているでがす」
「ワシじゃなくて妃だったのじゃよ。その時はそれとは分からんかったがの。その後難産の末
姫の誕生と引き替えに身罷った時それと知ったのじゃ」
そんな話があったんだ。あちらでミーティアが俯いている。
「ではエイト、おぬしも怖い話を頼むぞよ」
「はい」
そんな悲しい話の後だとすごく辛い。どんな話をすればいいんだろう。
※ ※ ※
356:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:39:08 p9Fhv3g3
僕が廊下で見張りしている時、ふと何かの気配を感じて振り返ったんだ。でも何もいなかった。
気のせいかな、と思って見張りを続けようとした時、その音がした。
カサコソカサコソ…
はっと振り返ると奴がいた。そう、でっかいゴキブリが!
慌てて手にしていた槍で退治しようとしたんだけどそれをかいくぐりこちらに向かって来る。
僕もいい加減混乱しててさ、滅多打ちしていたら今度はそいつがいきなり飛んできたんだ。
※ ※ ※
「何とか打ち落としたけど脂汗出たよ」
「…何っつーかこれもまた別の意味で怖い話だな」
「それはすごく嫌ーっ」
「そうか。じゃ、出た時はオレが守ってやるよ」
懲りないなあ、ククールも。ちょっとからかってやろうかな。
「あっ、あそこにゴ」
「うわーっ!」
「…何よ、『守ってやる』とか言った端から全力で逃げているじゃないの」
一瞬のうちに10mは逃げたククールを見遣りながらゼシカがふんと鼻であしらった。
「あー、ククールも前途多難でがすねえ」
(終)
357:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 21:54:07 p9Fhv3g3
本当に怖い話が読みたかった方、ごめんなさい。
各々怖いものは違う、ということで。
それぞれの話のうち、ヤンガス、ゼシカ、トロデの話は一応元ネタ有りです。
358:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/09 23:27:05 pNsNJ65n
面白かった。でもゴキはべた過ぎだw
>その後難産の末姫の誕生と引き替えに身罷った
これもこの先複線になるのかな。
359:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 13:13:31 zDQ8O1Ga
IDがDQ8になりました。ばんざ~い!!
360:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 14:54:21 2lV7lSg1
すまん、一瞬DQ801に見えたorz
361:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/10 17:09:41 Ka2JZ7Qc
惜しいなw
数字板なら神IDだったのに
362:357
05/08/10 21:59:13 Cv15QcCY
感想どうもありがとうございます。
主姫要素少なくってすみません。
>358
それは秘密ですw
363:357
05/08/11 22:00:00 mxW3IZM4
さらにミス発見orz
>252の冒頭、ククールの台詞
「どこが怖い話だよ。単なる惚気話じゃねーか」
が抜けてます。本当に申し訳ありませんでした。
364:流星の姫君 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/13 00:03:13 jjj6T5Km
>>350-356「百物語」続き
「王様、もう夜半を過ぎました。そろそろお休みになられた方が」
怪談話で一頻り盛り上がった(正確にはククールの怯えっぷりなんだけど)後、僕たちは火を
囲んで休むことにした。しばらくすると規則正しい寝息やいびきが始まる。僕は今夜の見張り
だったので起きていたけど、火の向こうで王様がまだ星を眺めていた。
「ん?そうか、そうであったな」
八日の月は西に沈み、もう真夜中を過ぎたことを示している。
と、北東の空に一瞬鋭く銀色に光り駆けていくものが見えた。また一つ、さらに一つ。
「そうか…もうその時期であったな」
目で追いながら王様が呟く。
「姫が生まれたのもこのように星の降る夜じゃったの…あれは初冬だったが…」
「王様?」
「先程の話で思い出してしもうたわい」
王様はあの方の耳を憚るかのようにひそやかに話し始めた。
※ ※ ※
難産になるだろうということは前々から予測しておったのじゃ。医者からも、
「もう二度と身籠ってはなりません」
と言われておったからの。
にも拘らず、
「トロデーンの世継ぎを、あなたの血を分けた子を産まずしてどうして妃の務めを果たせましょ
う」
と言うての。
結局妃は姫を産むことはできたものの、そのまま亡くなってしもうた。
「この子を幸せにしてやってくださいませ」
という遺言だけ残しての。
※ ※ ※
365:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 00:04:25 UJpW6HQ9
「その言葉を思えばこそ、あの縁組も最良のものに思えたのじゃが…」
そう仰って一つ溜息を吐いた。
「のう、エイト。おぬしはどう思う?より間近にあの王子を見ておろうが」
突然の問いに僕は何も答えられなかった。でも突然であろうとなかろうと答えられただろうか?
『チャゴス王子様は性根腐ってます。お止めになられた方が。あれでは姫様もお幸せにはなれ
ないでしょう』
とはとても言えない。
「…聞いても詮無きことじゃったな。これはワシの独り言じゃ」
無言で俯く僕を気遣ってくださったのか王は一人頷くと
「さて、ワシはもう寝るとするかの」
と馬車の中へ入ってしまわれた。
なおも星は流れる。次々に、絶え間なく。
暗黒神の野望は絶対に阻止してやる。そして王とあの方の呪いは何としても解く。
だから一つだけ願ってもいいだろうか。
あの方の、幸せを…
(終)
366:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 00:05:51 UJpW6HQ9
明日の夜はペルセウス流星群が最もよく見えるんだそうです。
一時間に40~60個の流れ星が見えるとか。見える方角と時間はほぼ文中のとおり。
ちなみにみーたんの流星群は獅子座流星群の方です。
お暇な方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
367:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/13 21:44:05 3nF4mob2
乙です。伏線早速キタ━(゚∀゚)━!
>『チャゴス王子様は性根腐ってます。』
心の中では毒舌エイトワロタ。
ウチからだと北東の方向は一番街明かりが明るいから何も見えないポ…。
368:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:02:58 EBMbchqE
最近ここ活気ないね
サミシス(・ω・`)
369:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:09:04 cpzjw546
ずっと下のほうに下がってるからでは?
370:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:10:26 UU0UqoaW
ミーたん関連スレがここだけなんだら一切関係ない。スレ一覧で検索かければここしかかからないんだから。
371:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:12:50 cpzjw546
ホンとだ。人大杉で来れないっていうわけでもなさそうだしね。
372:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 18:52:59 MAeeBMj2
ここに限らず、DQ8関連のスレは全体的に過疎ってると思う。
住人がコミケ等で忙しいんじゃないかな。
373:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 20:24:40 eF3bAOoa
ようするにネタがないんだよなぁ~。
374:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/14 21:13:56 zYrIStNM
活気ないってぇ?
コンスタントにSS投下されてるジャンかよ
滅多に書き込まないけど一応見てますよ>書き手の人
375:366
05/08/14 22:30:04 nVa58wHs
お盆ならではの忙しさに漸く帰還。
読んでくださった方、どうもありがとうございました。
>367
ただ今伏線消化モードですw
>374
ありがとうございます。励みになります。
376:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 09:39:11 6ncn27Yv
保守sage。目指せ最下層。
377:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:52:14 TWz15iFs
>>74-78「荒野の幻影」のミーティアバージョンで一つ。
始めに注意
・エイト?がちょっとひどいかも
378:湖畔の幻影 ◆JSHQKXZ7pE
05/08/16 19:53:29 TWz15iFs
エイト、どこに行ってしまったの。
七人の賢者の末裔の最後の一人、サヴェッラの法皇様をお守りしようと館に乗り込んだあなた
は帰って来なかった。一緒に行きたかったのに、
「危ないのでどうかこちらでお待ちを」
と言われて船で待っていたのに。
業を煮やしたお父様が危険を冒してサヴェッラの門前町で聞いて来た話は最悪の結果だった。
「法皇様が襲われた」
「真っ黒な犬とそれを操る四人の旅人に」
「ニノ大司教が裏で糸を引いていたらしい」
「あわやという時にマルチェロ様がお助けしたらしいが、その夜更けに崖から落ちてお亡くな
りに」
「滅多なことは言えんが、胸に刺し傷があったとか」
「何ということじゃ…」
フードを目深に被り人ならぬ肌の色を見せないようにしながら人々の噂話を立ち聞きして来た
お父様はがっくりとうなだれていた。
「暗殺の疑いを掛けられておってはただでは済むまい。…いや、教会は死罪を公には認めては
おらんからそれだけはあるまいが…」
そう、公には死罪はない。けれども拷問はあるという。そしてそれによって死んでしまっても
罪には問われない。異端審問など最終的には「悔い改めて神に召されし」と公表されるけれど、
それはつまり拷問によって亡くなったということ。
さらにトロデーンにはなかったけれど、数百回もの杖打ち等死罪同然の刑もあるとか。対外的
には死罪はないけれど余計に陰惨な刑ばかり。私も、お父様も口にはしなかったけれどそれを
恐れていた。どんなに強くてもエイトたちは只人、もしそんなことになっていたなら…
ああ駄目、そんな暗いことを考えては。でも、私、エイトを失ってしまったら生きて行けない。
お願い、無事でいて!
※ ※ ※
379:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:54:29 TWz15iFs
漸く煉獄島に送られたという情報を掴むことができた。生きてはいるのだと安堵したものの、
しかしそれは困った事態だった。そこは教会の管轄地、世俗の権は及ばない。この姿ではどう
にかしたくともどうしようもないのだけれど。
迂闊に島に近付くことはできず、成す術もなく沖合から様子を窺う日々が続く。異変があれば
すぐに行けるように。
そんな状態が一週間程続いたある夜のことだった。
私はいつの間にか湖の畔に立っていた。トロデーンの城門からすぐの木立の中にある小さな湖
に。懐かしさに二、三歩踏み出して人の姿に戻っていることに気付く。
こんな時はエイトに逢える。誰の目を憚ることなくエイトだけを見詰めることができる。安否
の分からないあなたの消息を聞くことができる、と嬉しくなって辺りを見回した。
湖の向こう側、木立の中に赤いものが見え隠れしている。そう、あれは私が贈ったバンダナ。
渡した時にあまりに素っ気無かったので、嫌だったのではと密かに恐れていた。
でもあの災厄の後、旅姿で現れたあなたの頭にはあのバンダナが巻かれていた。そして
「どこまでもお供いたします」
と言ってくれた。呪われて悲しく辛い思いをしていたはずだったのに、舞い上がらんばかりに
嬉しかったことを覚えている。
エイトだわ、間違いなく。こちらに背を向け潅木に半分隠されていても分かる。でも何をして
いるのかしら?ぼんやりしているのなら驚かしてしまおうかしら。
380:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:56:38 TWz15iFs
と、なるべく音を立てないようにして近付く。どうやって驚かそうかと考えていたけれど、は
た、と足が止まった。
エイトは一人ではなかった。さっきは見えなかったけれど斜後ろのこの角度からならば見える。
こちらに背を向けるエイトの胸にはゼシカさんがしっかりと抱かれていた。いいえ、抱いてい
ただけではない。二人は…口づけを…交わし合っている…
その瞬間頭の中が真っ白になってしまった。とりあえずその場を立ち去らなければ、と身を翻
した途端、うっかり小枝を踏んで予想以上に大きな音が響く。はっと口を覆う私と何事かと顔
を上げたゼシカさんの目が合ってしまった。
「ねえ…」
「ん?」
「姫様が見ているわよ」
逃げたかった。けれども根でも生えてしまったかのように脚が震え動かない。
「気にしないでいいよ。どうせ馬でしょ」
続くエイトの言葉が私の血を凍らせる。
「ううん、人の姿になっているわよ」
「だから何?自分で『エイトにはエイトの人生があるのよ』って言ってたくせに夢の中まで追
い回されてうんざりしているんだ」
凍りついたように動けない私の身体を言葉がさらに鞭打つ。
「見せつけてやろうよ。もう二度と僕たちの邪魔をしないように」
「いやぁん、エイトったら、いやらしいんだからぁん」
「旅が終わったら結婚しよう。だから、さ」
もう駄目。全身の力を振り絞ってその場から走り去ることしかできなかった。
381:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:57:54 TWz15iFs
走って走って、息が詰まり目が眩んで木の根か何かに躓き、叩き付けられるように転んでしまっ
た。でもその痛みよりもさっきエイトから投げ付けられた言葉の方が痛い。
これは夢、不安な私の心が見せるただの幻影、そう思ってみてもただ、辛い。エイトの言葉は
どれも本当のことだったから…
私がサザンビークに嫁げばいつかエイトは誰かと結婚するだろう。でも私にはそれを止める権
利なんてない。それはエイトの人生なのだから。
頭では分かっているの。でも…
「覗き見するなんていけない子だね、ミーティア」
突然頭上から声が降ってくる。涙を拭うと目の前にエイトの靴があった。
「エ、エイト?」
慌てて半身を起こすとエイトがしゃがんで私の顔を覗き込む。
「ミーティアがいけないんだよ。僕の気持ちも知らないで行ってしまうんだから」
指が顎に掛かる。意地悪な光を湛えた瞳が近付く。
「そうだ、お嫁に行ってしまう前に味見しちゃおうかな」
気持ち悪い。触らないで。
「い、嫌…触らないで…」
「どうして?僕が好きなんでしょ?後生大事に守ってみてもあんなのに奪われるだけなんだよ」
「駄目…」
エイトの顔がますます近付く。
「それっぽく見せる方法なんていくらでもあるんだってね。そうすればいいだけじゃない?」
「嫌よ!触らないで!」
顎に掛かった手を払い除け、体勢を崩した隙に立ち上がる。
「だってあなたはエイトじゃないもの。指一本だって触られたくないわ!」
「ミーティア…」
哀れっぽい声を出して足に縋ろうとする。そんなのエイトじゃないわ!私は裾を払い、一歩下
がって叫んだ。
「私の心はエイトただ一人のもの、他の誰にも渡しはいたしません!
さあ、分かったならどこへなりと消えなさい、忌わしい化け物よ!」
※ ※ ※
382:名前が無い@ただの名無しのようだ
05/08/16 19:58:30 TWz15iFs
…と、自分の嘶きで目が覚める。私の異変に気付いたお父様が駆け寄って来てくれた。
「姫や、怖い夢でも見たのかの?ほれ、冷たい水を汲んできてやったぞ」
お父様の心遣いが勿体無くも嬉しく、水を飲んだ。その冷たさに心が落ち着く。
でも本当に怖かった。夢であってもあのまま篭絡されていたら、と思うと今更ながら身が震え
てくる。
「それにしてもいつまでぼんやり捕まっているつもりなんじゃ。とっとと逃げ出してくればよ
いものを。姫に心細い思いをさせおって」
ごめんなさい、お父様。こんなことでご心配お掛けして。それでなくても大変な時なのに。
「もう一ヶ月じゃ。ワシはもう待ちくたびれたぞい」
今日も船で島の近くから様子を窺う。何かあったらすぐに駆け付けられるように。
エイト、無事でいて。そして早く戻ってきて。弱った私の心を叱って…
(続く?)