05/02/11 16:47:35 Ih4xmLXr
この日のトロデーンは気持ちのいい風が吹いていた。
僕は城のテラスで見張りという大役を仰せ使いつつもあまりに変化のない景色にいささか飽きて、
遠くの山ではなくトロデーン城の中庭を忙しく行き交う人々を眺めていた。
「あれ?」
気がつくと、いつもポケットにいるはずのト-ポがいない。
振りかえれば、隅においてあった僕のカバンにもぐりこもうとしている
「こら!!ト―ポ!!ご飯の時間はまだだぞ!!」
朝、調理場のおばさんにチーズをもらったので早速かぎつけたらしい
「大人しくしてないと、籠に閉じ込めるからな!!」
僕がどんなに怒った顔でたしなめても、トーポは首をかしげ丸い目でこちらをじっと見ている。
自分が怒られてることさえもわかってないな?
ちょっと乱暴にト―ポをポケットに押し込むと、再びトロデーンの景色に見やった。
・・・・・・・思えば僕が幼いころ、記憶を無くしてこの城につれてこられたんだった。
はじめて見たトロデーン城は美しくて、おとぎの国に来たような気持ちだった。
もう亡くなられたけど、王妃様もとても綺麗で優しくて、みなしごの僕を何かと気遣ってくれたっけ。
・・・・僕に肉親はいないけれど、家族はいると思う。
ここ、トロデーンが僕の家であり、ここにすむ人々が全て僕の家族なんだ。
「おーいエイト!!」
向こうから同期の兵士であり親友のピピンが手を振っていた。
「もう交代の時間だろ?一緒に食堂へ行こうぜ」
「ああ、代わりの人が来たらすぐ行く。まっててくれ。」
僕がカバンを取りにあるきかけたそのとき、事件はおこったんだ。