FFDQバトルロワイアル3rd PART2at FF
FFDQバトルロワイアル3rd PART2 - 暇つぶし2ch2:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:36:29 fRaTEbBk
('A`)

3:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:37:51 cpVMSMv/
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。

4:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:38:55 cpVMSMv/
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。



━━━お願い━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。

5:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:39:55 cpVMSMv/
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。

6:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:40:39 cpVMSMv/
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。

7:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:41:30 cpVMSMv/
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレ)、パウロ(サマル)、ムース(ムーン)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ

FF 78名 DQ 61名
計 139名

8:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:43:54 cpVMSMv/
■生存者リスト
FF1 1/4名:アルカート
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 8/8名:サックス、ギルダー、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 4/7名:カイン、ギルバート、リディア、エッジ
FF5 5/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード、ファリス
FF6 9/12名:ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 7/10名:クラウド、ケット・シー、ザックス、ティファ、セフィロス、ユフィ、シド
FF8 6/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 7/8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、サラマンダー、エーコ
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 3/3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 0/3名:全滅
DQ2 2/3名:ロラン、パウロ
DQ3 5/6名:オルテガ、アルス、セージ、フルート、ローグ
DQ4 7/9:ソロ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、ロザリー
DQ5 12/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、レックス、タバサ、ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、プサン
DQ6 10/11名:テリー、ミレーユ、イザ、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、ランド
DQ7 4/5名:フィン、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 4/5名:わたぼう、ルカ、テリー、わるぼう
DQCH 3/4名:イクサス、スミス、ドルバ

FF 58/78名 DQ 47/61名
計 105/139名

9:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/26 18:45:02 cpVMSMv/
■死亡者時刻

ゲーム開始前
「マリア(FF2)」

アリアハン朝~日没
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ=ファレル」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」

アリアハン夜~夜明け
「アレフ」「ゴルベーザ」


■その他
FFDQバトルロワイアル3rd まとめサイト
URLリンク(www.geocities.jp)
1stまとめサイト
URLリンク(exa.to)
1st&2ndまとめサイト
URLリンク(ffdqbr.hp.infoseek.co.jp)
番外編まとめサイト
URLリンク(ffdqbr.fc2web.com)
保管庫
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

現在の舞台はDQ3アリアハン大陸。
URLリンク(ffdqbr.fc2web.com)

10:一人と一匹と五人組1/3
04/11/26 19:41:27 5CUkjmjZ
話し声の主は、割とすぐに見つかった。
楽しげに談笑する、五人組の少年少女たち。
まだこちらには気付いた様子もなく、塔の中を歩いている。
けれどもイザが声をかけようとしたとき、ドルバが服の裾を噛んで引き止めた。
「……イザよ。すまぬが、あやつらと手を組む気にはなれぬ」
「どうして?」
返事はない。変わりにドルバはイザを引っ張り、遠く離れた壁の影へと連れ込もうとする。
そうこうしているうちに、彼らは階段を降りていってしまった。
「ねぇ、どうしたんだ?」
問いただすイザにドルバはそれでも黙っていたが、五人の声が聞こえなくなった頃、ようやく口を開いた。
「我は竜王様に仕えし竜だと言ったはずだ。主亡き今でも、忠誠を変える気はない。
 ニンゲンに協力する程度ならまだしも……竜王様の仇と共に歩くなど、できぬ相談だ」
その言葉に、イザは驚愕を隠せなかった。今の五人組は、無闇に相手を殺すような人物とは思えなかったからだ。
「仇って……あの人たちが? そんな悪い人達には……」
イザの台詞に、ドルバは諦めたように答えた。
「仕方のないことだ。
 本来、我らとニンゲンは交われぬモノ。特にロトの血脈を受け継ぐ者達と魔物の王たる竜王様は、な。
 奴らも竜王様もその摂理に従ったに過ぎぬ。そして強き者が力の劣る者を屠るのもまた、摂理の一つ。
 恨みはしない。……仕方のないことなのだからな」
そう言って、ドルバは一瞬だけ塔の外へ目を向ける。
その眼差しは、痛切な哀しみに満ちていた―『仕方ない』で片付けてしまうには、あまりにも大きな。
けれども、ドルバはすぐにぐるりと向きを変え、棒立ちになったままのイザを見上げた。
「ここにはまだニンゲンがいるようだ。そやつらと交渉してみたらどうだ?
 あやつらほどの力を持っているかどうかはわからぬが、役に立つ者もいるかも知れぬぞ」
「あ、うん……そうだね、そうしようか」

【イザ 現在位置:ナジミの塔一階  所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
【ドルバ 現在位置:ナジミの塔一階 所持品:不明 
第一行動方針:協力してくれそうな人を探す  最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】

11:一人と一匹と五人組2/3
04/11/26 19:48:43 5CUkjmjZ
一方くだんの五人組は、竜王戦で負った傷の治療もあらかた済ませ、地下通路を通ってアリアハン城に向かおうとしていた。
先導者はもちろんアリアハン出身のフルートだ。それにサックスが、方位磁針を片手に隣を歩いて補佐している。
……磁針の北と南を取り違えていることに気付いていないのは、どうかと思うが。
そして天然モードのフルートの先導も信頼できるものではない、ということを付け加えておく。

「多分こっちですよ~。遅れないで下さい~」
「はーい」
フルートの言葉に、元気に返事をするリルム。
ロランはそんな二人に、いつも先に立って歩いていた少女と、彼女の後を追う少年の姿を重ねていた。
そして、先ほどの放送を思い出し、無意識に唇を噛みしめる。
少女は―もういない。その事実は認めがたいことであったけれど、赤線の引かれたリストを見た時、受け入れるしかないのだと悟った。

悲しみは、自然と足を遅らせる。彼の隣を歩く者の足も。
前を行く三人と、後ろを歩く二人の間が開きつつあることに気付いて、リルムが叫んだ。

「おい、イケメン兄ちゃんにトサカ頭! チンタラしてると置いてくぞー!」
「……イケメン……」
「ちょっと待て。なんでこいつがイケメンで俺がトサカなんだよ? 納得いかねぇぜ!」
「じゃあ、ニワトリ頭ね」
「その呼び方はもっと止めろっ、イヤなこと思い出すじゃねーか!」
「え~と、ゼルさんがニワトリ頭だと、私のあだ名は何になるんでしょう~?」
「えっ。フルートさんはフルートさんのままでいいんじゃないかなぁ。
 あと、できれば僕もサックスのままがいいんですけど」
「サックスさんも元のままですか~。お揃いですね~」
「お揃い……お揃いかぁ」
フルートの言葉に何故かデレデレするサックス、そんな彼を見てゼルが肩をすくめる。
「なんだありゃ。バカップルは、どっかの誰かだけで腹いっぱいだっての」
その台詞に、ロランは思わず苦笑する。
『どっかの誰か』が誰なのかはわからなかったが、なんとなくその人たちの姿が想像できるような気がした。

賑やかな会話は続く。大切な人を失った悲しみも、一時の間忘れさせて。

12:一人と一匹と五人組3/3
04/11/26 19:50:41 5CUkjmjZ
【サックス(軽傷) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
【フルート(MP減少) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン(軽傷) 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル(軽傷) 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔→地下通路(洞窟内部)を移動中
第一行動方針:なるべく仲間を集める  最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】

13:遭遇戦、そして発芽1/4
04/11/27 05:54:57 z2VVlxDL
「オレはもう、嫌だ」

ランドは辟易して呟き、ザックスを横目で睨みつけた。

「だから街に残るべきだと言ったんだよ!」
「いまさらしょうがないだろ。いつまでもグチグチいうなよ」

ザックスがめんどくさそうに言うと、ランドは更に忌々しげに言葉を軋らせた。

「愚痴も言いたくなるだろこれじゃあ。あんたのせいだぞ、どうしてくれるんだよ!」
「どうして欲しいんだよ。言ってみろ」
「ケンカは後でいいですからお二人さん。それよりどうするんです!?」

このまま延々と言い争いを続けそうな二人にシンシアはぴしゃりと言い放った。
その刹那、シンシアの顔のすぐ横にあった木の枝が乾いた音を立てて弾けとんだ。

14:遭遇戦、そして発芽2/4
04/11/27 05:56:49 z2VVlxDL
ザックス、シンシア、ランドの三人組は、夜を森で身を潜めるべくアリアハン北部の森林地帯に向かっていた。
そしてザックスの計画通り、日が暮れる前に到着したまでは良かったのだが、
森に入ってしばらくした所で何者かに銃による襲撃を受けていた。
しかもマシンガンによる広範囲の無差別銃撃というものだからたまった物じゃない。
少し大きめの木の影にザックスとシンシアの二人が、そこから二メートルほど離れた木の影にランドが
前方から飛んでくる銃弾から身を守っているという図式だった。

「いいからお前もそのボウガンを撃ち返して、相手の足を止めてろ!」
「ちっくしょう!死んだら化けて出てやるからな!」

悪態をつきながらもランドは銃撃の合間に木の影から身を出して、
オートボウガンを襲撃者がいると思しき場所に乱射した。しかし当てずっぽうな攻撃が当たるはずもなく
お返しとばかりに銃弾が再び飛来してきた。

一方ザックスはシンシアが手に持つ対人レーダーをちらりと確認した。
レーダーには相変わらずザックスたち以外の反応はなかった。
銃撃が始まった時からレーダーには三人の反応しかなく、現状が維持されているのだった。
これはつまり襲撃者はザックスたちから十五メートル以上は離れていることになり、そこから動いていない事となる。
この事実からザックスはこう推測した。

(―相手は戦い慣れしていない人間、それともただの素人だ)

普通マシンガンほど速射に優れた武器を持つ場合、相手の足を止めつつ間合いを詰めていくのが定石だ。
それをしないということは、襲撃者には戦闘経験はほとんどないと言ってもよかった。
そこまで戦況を分析したところでザックスの顔からおどけが消えた。
十代半ばにして神羅の精鋭部隊ソルジャーに選ばれ、瞬く間にその最高ランクであるソルジャー1stまで登り詰め、
あの伝説の英雄セフィロスの片腕を務めていた、強者の顔がそこにはあった。

15:遭遇戦、そして発芽3/4
04/11/27 05:58:03 z2VVlxDL
ザックスは木の影から顔を半分だけ出して、銃弾が飛来してくる方向を一瞥した。
マシンガンによる攻撃のポイントを少しでもそらせることさえなんとかすれば、決して絶望的状況ではない。
―ならばどうする、と考えて、それが不可能に近いとはザックスは思わなかった。

そしてザックスはシンシアから煙幕を一つ受け取ると五メートルほど前方に転がす。
あっという間に白い煙が森の一帯を包み込み、視界が取れなくなる。これならば木の影から動いても
襲撃者には確認出来なくなった。
しかし襲撃者は、これまで攻撃していたザックスたちがいる場所を中心にして、
大きく扇状に銃弾をばら撒いてきた。攻撃の範囲をさらに広くして煙幕による逃亡を阻止するつもりのようだ。

「どうすんだ、これじゃよけい動けねえよ!」
「お前のその腰の物を左側にあった茂みに思いっきり投げ込め!」

ザックスはランドのベルトに挿してあったミスリルスパナを指差し、ランドへと指示を出した。

「…くっ!でえぇぇい!!」

ランドはザックスの言った通り、茂みめがけてミスリルスパナを投げ込んだ。
スパナはぶんぶんと回転しながら茂みへ突っ込み、バキバキガサガサと音を立てる。
その瞬間マシンガンの銃撃がスパナが突っ込んだ茂みの方向へと移動した。
襲撃者は攻撃対象が逃亡の際に発した音だと思い込み、茂みに攻撃を集中させたのだった。

「よし、今だ!逃げるぞ!」

ザックスの言葉と同時に三人は銃撃の反対方向へと一斉に駆け出した。少し行けば木が特に密集している地帯があった。
そこへ逃げ込めばいかにマシンガンだろうと木々に阻まれ攻撃は届かない。
シンシアは木の密集地帯に入る直前、今まで身を隠していた木の影に向かって振り向きざま呪文をはなった。

「イオラ!」

逃亡に気づいた襲撃者の追撃を阻むように、シンシアたちの後方で爆発が立て続けに連続して起こる。
煙幕の煙で白く煙っていた森が爆発による発光で更に白く染め上げていった。

16:遭遇戦、そして発芽4/4
04/11/27 05:59:26 z2VVlxDL
数分後、煙幕の煙も晴れつつある先程まで戦闘が行われていた森の中で、
ザックスたちを攻撃した襲撃者…デールは盛大に舌打ちをしていた。
―なんという失態。不意をつくため森で潜み、先に三人の攻撃目標を見つけ、奇襲を仕掛けたというのに
結局誰一人仕留めることが出来ずに逃げられてしまうとは…。完全に自分のミスだ。
次からはもっと引き付けてから奇襲しなければな。

リュカ一家や兄のヘンリー夫妻のため悪役となることに決めたデールは先程の戦闘を思い出し
興奮冷めやらぬ顔で手にしたマシンガンを見つめた。
デール自身は気づいていなかったが、彼はもうリュカたちのためにゲームに乗ってはいなかった。
すでにこのゲームに魅了されていたのかもしれない。

―あぁ、悪役も悪くないかもな。


【ザックス 所持品:スネークソード 毛布 
現在位置:アリアハン北部の森入り口付近 
第一行動方針:襲撃があった場所から離れる 第二行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布 
現在位置:同上  行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布 
現在位置:同上 行動方針:ザックスたちについて行く】


【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)
 現在位置:アリアハン北部の森の中
 行動方針:兄夫婦&リュカ一家以外の参加者を殺す(?)】

※デールはリュカ一家やヘンリー夫妻も殺害対象になってしまった可能性があります。

17:理解不能
04/11/27 11:22:42 HKbWvQTj
世に名を知られた賢者とて、理解できぬ事柄はある。
例えば、いま目の前にある光景のように。
「助けてー!」「誰かー!」
「……」
横倒しになったまま、茂みの中に突っ込んでいる大きな壷が喋っている。
どうやら中に誰かが入っているようだが……とりあえずは助けてやるべきだろうか。
そう考えた彼は、支給された杖を振るって壷を叩き割る。
「わぁっ!」「きゃぁっ!」
「……」
破片を浴びながら出てきたのは、やはり人間だった。
それも同じ顔、同じ服、鏡写しのようにそっくりな二人の少女だ。
「あー、助かったー」「このまま出られなかったらどうしようかと思ったわ」
彼女らは手を取り合ってはしゃいでいたが、やがて彼の姿に気付くと、揃って頭を下げた。
「ありがとう」「おかげで助かったわ」
「……ああ、いや、大したことはしていないのだが。
 その、君たちは、双子か何かなのか?」
「ううん」「違うよ」
「分裂の壷で自分を増やしたの」「一人より二人の方が便利だから」
「…………」

―世に名を知られた賢者といえど……理解できぬ事柄も、ある。

【アリーナ(分裂状態) 所持品:なし 行動方針:不明】
【クリムト 所持品:力の杖、プロテクトリング
 第一行動方針:不明 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯、南の茂み】

18:修正
04/11/27 11:33:41 HKbWvQTj
>>17
ごめん間違い直し忘れた。

>横倒しになったまま、茂みの中に突っ込んでいる大きな壷が喋っている。

「横倒しになったまま、薙ぎ倒された樹木の傍に転がっている大きな壷が喋っている。」

【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯、南の茂み】

【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯近くの、南の森】 に修正します。

19:共通認識 1/3
04/11/28 02:15:27 ZrjdwvJ/
「く、クルルが…ッ!?」
静寂に包まれた薄暮の森の空気を、意図せずともファリスは乱した。
金髪の少女の、あどけない笑顔、時折見せる寂しい表情。
そのどちらもが失われた、と感じたから。

ふらふらと一人胡坐で座り込み、参加者リストを開く。
目に入ったのはクルルの輝く金髪ではなく、その名の上に引かれた朱色の線だった。
レナの髪のような薄明るい桃色でも、カルナックの勇気の炎のような鮮やかな赤でもなく。
ただ滲んだ血のようなその色が。

呆然としたままリストを眺めていたファリスは、先程の男の写真を見つけた。
素顔を晒す事は無く、黒装束に身を包んだ姿を。
そして、その名前にも違わずに朱色の線が引かれていたのを。
(何故だ?)
あの男はただで死ぬ男ではないと思っていた。
だが、彼は死んだのか。
数時間前に自分に忠告をした男が。
パタンと力なくそのリストを閉じ、ザックにしまう。

「……!?」
先程とは違い、背後の気配にすぐに気づいた。
立ち、振り返ると、其処には剣を手にした武人らしき人物。
―薄暮の中でも輝く、血に濡れた剣を。

20:共通認識 2/3
04/11/28 02:18:41 ZrjdwvJ/
「…ヤる気かッ!?」
ファリスは咄嗟に叫ぶ。
男の長剣に比べてあまりに頼りないナイフを構え、男を睨みつけた。
「待て、話を聞くんだ」
男は、諭すように冷静に言った。
「私の名はレオ。戦う気は無い。だが聞きたいことがある。…顔にペイントのある男を見なかったか?」
「俺が今まで見たのは焼けた死体と黒い覆面の男とあんただけだ!」
ファリスの叫びに、レオは予想外の反応を見せる。
「黒い覆面…。そうか、シャドウと会ったのか」
男の声に、ファリスも一瞬戸惑う。
「何だって…?」
思わずナイフの構えを解く。そしてやっと、レオも構えを解いていた事に気づいた。
「黒い覆面の男は知っている」
レオはフッとため息をついた。
「放送で名があった。シャドウという男だ」
「知り合いなのか…?」
「まぁ、知り合いといえば知り合いか」
レオは一寸空を見上げる。
「暗殺者だったがな…強い奴だったのだが」
視線をすぐに戻し、話を繋いだ。
「まぁいい。先程言ったペイントのある男、私の知っている男だが…このゲームに乗っている」
レオの口調が急に厳しくなる。
「奴は私が始末せねばならない。フザけた精神の持ち主だ。何をしてくるかは予想も出来ぬが…」
レオは、再び剣を構えた。剣先に殺気が纏う。
「この近くにいる。姿を消して潜んでいるようだ。今すぐにこの場から逃げたほうがいい」
レオの口調はなんとなく事務的で。
それでも、覚悟を秘めたその声を、ファリスは受け取った。

21:共通認識 3/3
04/11/28 02:20:19 ZrjdwvJ/

何故この男を信用したのか分からない。だが、この男は正しいことをしていると、本能的に悟った。
「…それを聞いたら離れるわけにはいかない。俺の名はファリス。腕には自信が…」
「奴を殺すのは私の義務だ。手助けなどしてくれるな」
レオは、ファリスに背中を向ける。相変わらず、表情は険しい。
「…手助けじゃない。あんたと共通認識を持っただけだ。…生かしておくべきじゃない」
ファリスは、きっぱりと言い、ナイフを再び構えた。
レオの目の前に突如出現した、不気味な笑みを浮かべた人型の靄を睨み付けて。
まさに先程のレオの言葉の如くに、何かを企んでいる様なその表情に嫌悪感を覚えながら。
薄暮の森に、殺気による静寂が訪れた。


【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
 第一行動方針:ケフカ殺害 第二行動方針:ゲームに乗らない】
【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レオと共に闘う 第二行動方針:仲間を探す】

【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
 第一行動方針:企んでいる事を行動へ 第二行動方針:ゲームに乗る】

【現在位置:レーベ南の森南東部】

22:判断ミス
04/11/28 19:22:42 +hCyQf+i
「フライヤさん、本当に赤いローブのおじいさんはあっちに?」
先行くアルカートが振り返り、フライヤに問う。
「わしの見間違いでなければ良いのじゃが…確かにこっちの方角じゃった」
フライヤは森の方向を指差す、確かにそれは正しかった。
だが彼らが森につく少し前に、大陸を揺るがす地震が彼らの行く手を阻んだのだ。
「な、な、なんだよ!この地震はぁ!」
「身、身動きが…と、取れないです!」
「クッ…二人とも!手をわしの方に!」
地震で体制が上手く保てない二人が必死の思いで差し出した手をフライヤは思い切り引っ張り、それと同時に跳んだ。
そして、その地響きの音がやみ始めた頃に、華麗に着地していた。
「ふぅ、危なかったのう…わしも内心ヒヤヒヤものじゃったよ」
額を拭うフライヤ、アルカートとフィンは腰を抜かしていて立てないようだ。
そこに、あの忌々しい声が聞こえてきた…このゲームの主催、魔女アルティミシアの。

23:判断ミス
04/11/28 19:23:50 +hCyQf+i
彼らは走るのをやめた、疲労感からではなく悲しみからである。
…一律の沈黙は悲しみという風をより強いものにする。
「ジオさん…私、ジオさんの分まで生きようと思います。だから…」
アルカートはその先を言えなかった、いや言わなかったのかもしれない。
重い空気を打ち払うようにフライヤが無言で立ち上がる、アルカートもそれに続いて立ち上がる。
だが走ろうとした時、フィンがそれを止めた。
「…アルカート、フライヤ。やっぱり泣きたいときは泣いたほうが良いと思う。
 後でこっそり泣かれるのも嫌だし、無理して隠されるのも嫌だ。
 だから俺は……………今泣いてる、自分に正直に」
フィンが顔を起こす、その顔は…涙でびしょびしょだった。
アルカートは耐えられなかった、そして…無言で涙を流した。
二度と聞きたくなかった大切な人の死、それは何を意味するのだろう。
彼女の脳裏にジオと仲間と色々な事が映る。
―でも、もう帰ってこない、それを考えると涙が…何時までも止まらなかった。
フライヤも、片手を顔に押し付け、泣いていた。
そして、怒っていた。ガーネットや仲間達をこんなフザケた場所へ招待した魔女に。

泣き声だけが、響く。


24:判断ミス
04/11/28 19:24:36 +hCyQf+i
その後、彼らは一つの決心をした。
「フライヤさん、フィンさん…私、ちょっとだけ、行きたいところがあるんです…だから、少しの間だけ離れることになると思います」
目をスーツで隠しながら、アルカートは言った。
「仲間の…所へ?でもどうやって行く―」
フィンのその言葉の先を遮るようにアルカートが手を出す。
そして、顔を横に振る。目はやはり見えないが。
「私だってわかりません、でも…なんとなく分かるんです」
「じゃあ、此処で三人とも別行動…という事になるのじゃな?」
別行動?とフィンが聞き返す、フライヤはゆっくりと頷いた。
「アルカートは仲間を…探しに行く。
 フィンはご老人の元へ行く。
 わしは…先ほどから感じるのじゃ、竜の気を…だからそこへ行ってみようと思うんじゃ」
フライヤが三人の中心の位置へ剣を突き刺す。
柄の上に手を置き、二人に確認を取る。
「フィン、アルカート。
 死ぬでないぞ、必ずまた生きて会うのじゃ」
ああ、と言い返しフィンも手を置く。
はい、必ず。アルカートも言い返す、だが顔を上げてはくれなかった。

そして、三人は散らばった。
だがフィンとフライヤは知らなかった、いや知る由も無かった。
アルカートと別れ、そのアルカートが城の方向へ向かって行くのが後に悲劇を招くことと。
アルカートの目が、まるで死人のような目をしていたことを。
去り行く二人には知ることは無かった。

25:判断ミス
04/11/28 19:25:22 +hCyQf+i
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>アリアハン北の橋から西の平原へ
 第一行動方針:竜の気(カインの所)へ行く】

【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>アリアハン城へ
 第一行動方針:ジオの元へ行く(?)】
アルカートは少し自我を失っています。もしかしたらジオしか見えないモードかも

【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>ドーガの元へ
 第一行動方針:ドーガの所へ行く
 第二行動方針:仲間を探す】

26:企み 1/4
04/11/28 20:30:37 YXVfCIpF


中年の剣士が二人、闇に包まれようとしている森の中を歩いていた。
言うまでも無く、パパスとオルデガである。
放送直後は、二人とも何事も無かったかのように振舞っていた。
だが、オルデガはパパスの表情の変化に気づいていた。
パパスが自分からそれを話すまでの間、オルデガも黙って歩いていたのだった。

そうして十分くらいだろうか。パパスが口を開く。
「サンチョは有能な召使だった。息子を任せても大丈夫な唯一の存在だったのだが…惜しいことで亡くしたものだ」
静かに嘆く。
オルデガはその言葉を受け取ると、話題を転換する。
自ら人に話せるようになれば、覚悟はついたのだと捉えることが出来たから。
「息子さんは確か…」
「ああ、未だ五歳の子供だった筈なのだが…」
パパスは参加者リストを回想した。
マーサと同じ澄んだ瞳をして、其処に載せられていたリュカの写真を思い出していた。
「…立派になった。知らずに大人となっていたか」
―勿論、妻や子供がいる事など、知る由も無かったが。
「成る程。私も息子の生まれた姿しか知らずに過ごし、次に会ったときには16歳だったのだが」
「親が無くとも子は育つ、か」
「寂しいものだな」
二人の偉大なる父親は、互いに笑みを浮かべる。
それは、何処か寂しさを帯びた笑みだった。
そして、その笑みを破ったのは、彼らに助けを求める声だった。



27:企み 2/4
04/11/28 20:33:02 YXVfCIpF

「ケフカよ。観念するんだ」
レオの声は、大地を揺るがすかの如く力強く。
「あんたが何をした奴なのかは知らんが、少なくともあんたはレオさんの敵だ」
ファリスの声は、揺らめく炎の如く勇ましく。
それでも、月明かりの薄暮の中完全に姿を現したケフカの不気味な笑みは消えることは無かった。

「覚悟するんだね、レオ将軍」
ケフカは言い放つと、先程レオにつけられた肩口の傷口に思い切り爪を立てる。
当然の如く傷口が開き、血が滴り落ちてきた。
「何を企んでいる、ケフカ!」
「すぐにわかるよ。しかし相変わらずのマヌケだねぇレオ将軍」
ケフカはそう言うと、レオ将軍に背中を向けて走り始めた。
「逃げるのか、ケフカ!」
レオも、当然後に続く。
「待ってくれよ!」
ファリスは咄嗟のことに出遅れてしまった。

(僕の計画通りだ…)
バニシュ状態で確認しておいた。この先にいる二人の剣士。
(アレは強いよ…レオなんてコテンパンだろうねぇ)
月光に照らされたその影が見えてきた。
「助けてクダサーイ!」
ケフカは叫んだ。二人は振り返る。…完全だ。


28:企み 3/4
04/11/28 20:34:22 YXVfCIpF
「どうしたのだ!?」
男の一人が、咄嗟に剣を構えて尋ねる。
「変な奴が後ろから追ってくるんです!」
出来るだけ自分がマトモに見えるように、表情や声に緊迫感を持たせる。
演技力に自信が無いから傷を広げてまでこんな状況を作り出したのだ。相手も信用してくれる筈だ。

ケフカが指差す方向には、乾いた血の付着した剣を持つレオ将軍。
濛々とした殺気が溢れている
そしてケフカの肩口には、鋭い切り傷。
これだけ有れば、二人の剣士が判断を誤るには十分だった。
「この男を助ける!あの男を止めねばなるまい」
「了解だ!」

二人の偉大なる父親は、レオの前に立ちはだかった。
「何故そのような事をしようとする。そなたも名の知れた武人ではないのか」
パパスが、諭すように言う。
「止めてくれるな。これが今の私のすべき事なのだ」
レオの言葉は、二人の剣士に本当の意味で届くことは無く。
「力づくでも止めて見せるぞ。いざ!」
パパスは剣を構え、オルデガは斧を構える。
「否、私の狙いはその男だけだ。通してもらえぬか」
レオは再び言ったが、
「何を言う。尋常に我等と勝負せい。あの男を殺すのは我等に勝ってからだ」
オルデガは言い放つと、斧を振りかざした。

29:企み 4/4
04/11/28 20:35:35 YXVfCIpF


パパスとオルデガの後ろで、ケフカは不気味な笑みを浮かべて後退し始めた。
(後は勝手にやっていているんですね、レオ将軍)
月明かりの下、彼の姿が森の奥に消えた事に気づいた人は、誰もいなかった。

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:レオを止める
 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:レオを止める
 第二行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】

【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
 第一行動方針:この状況を抜ける
 第二行動方針:ケフカ殺害
 最終行動方針:ゲームに乗らない】

【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レオを探す 
 第二行動方針:ケフカ殺害(?)】

【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
 第一行動方針:逃げる 
 最終行動方針:ゲームに乗る】

現在位置:レーベ南の森南東部
ファリスはレオを見失ってます。ケフカは逃げました。


30:死の淵で見た光 1/3
04/11/28 21:50:10 PGwN1oRG
深い闇の中に、ピエールは佇んでいた。
ここがどこなのか、何故こんなところにいるのか考えることもない。
けれど、何かを忘れてしまったとだけ感じていた。
忘れてしまった何かが、彼を苦しめていた。
(いったい…)
視線を下に落とす。そこには、青くて丸いものがあった。
だが手を伸ばして掴もうとすると、その物体は勢いよく飛び跳ね、
ピエールの手をすり抜けていった。
それさらに跳ね続け、どんどんピエールから離れていく。
なんとはなしに、ピエールはそれを目で追っていった。
(あ…)
すると、先程まで闇ばかりであった空間の一角が裂け、強い光が降り注ぐ。
青い物体はそこに向かい、そしてたどり着いたとき、こちらを振り返った。
振り返ったと思ったのは、青い表面に、よく知る同属の顔がスライドしてきたから…。
(ス、スラリン…、お前達……!!)
いつの間にか光の中にはスライムだけでなく、キラーパンサー、ドラゴンキッズ、
ばくだんいわ、ホークブリザードなど、彼とともに戦ってきた多くの戦友達が姿を現していた。
(お前達何故、何故ここに…?)
何故ここに、ゲームには参加していないはずなのに。
そこまで考え、ピエールは愕然とする。
自分がどこで、何をしていたか、はっきりと思い出したのだ。
(では、だからこそ何故、お前達がこんなところにいるんだ?)
声を出して叫びたかったのに、思いは音を伴うことはなかった。
(ここはいったいどこなんだ。何故声が出ない…)
戦友達はじっと光の中で動かない。何かを待っているかのように。
(待っている、私を待っているのか?)
光に、戦友たちに意識を集中すればするほど、体は自然に光のほうへ向かう。
ゲームに参加していない彼らは、きっと迎えに着たのではないか。
あの光をくぐれば、平和なグランバニアに帰れるのではないかとさえ、考えてしまう。

31:死の淵で見た光 2/3
04/11/28 21:51:46 PGwN1oRG
だが、ピエールは一歩も二歩も進まぬうちに、動くことを止めてしまった。
こちらを見つめ、じっとしていた仲間達が僅かに揺れる。
(すまないが、私は戻れない。否、逝けない)
やはり声にはならなかったが、伝わっていることに確信があった。
なぜならここは、どこでもない世界。光の向こうはこの世でない世界。
彼らは戦友たちではなく、自分自身の思考。
(私はリュカ様を本当の元の世界に帰して差し上げねばならない。
 それがすんだら、私はそちらへ逝こう。待っていてくれるな?)
たとえ仲間達でなくとも、その姿を借りているのであれば、きっとわかってくれるはず。

「ピキーー!!」
初めて、その世界に音と呼べる者が響いた。
「ピキ、ピッキ、ピキピキーーーー!!!」
スラリンの言葉は、先程のピエールの問いの返答ではなく…。
(ハヤク キケン オキテ ハヤク)
聴覚を刺激する音の意味を、ピエールは理解した。 

意識が、闇の世界から混沌の世界へと戻る。

振り下ろされる雷鳴の剣を、ピエールは間一髪のところで避けた。
ほとんど無意識に攻撃者に向かい鋼鉄の剣を構える。だが、その動きは遅い。
「ふん、まだそれだけ動けるのか」
テリーは、それだけをはき捨てるようにいい、間をおかず飛び込んできた。

32:死の淵で見た光 3/3
04/11/28 21:53:18 PGwN1oRG
テリーはレーベの村を南に出て、この森に行き着いた。
途中誰にも会うことなくここにたどり着き、すでに事切れた男と瀕死の魔物を発見したのだ。
瀕死だからといってテリーは容赦するつもりはなかった。
彼は自分の力を試したいとは思っているが、ただ強い奴と戦いたいと考える、
例えばデュランのような思考とはまた少し違う。
殺せるときに殺しておこうという、合理的な考え方ぐらい出来る。

息も絶え絶えなスライム部を狙って、雷鳴の剣が空気を切り裂く。
テリーはもちろん、スライムナイトの基本的な体の構造を知っている。
ピエールも防ごうと鋼鉄の剣を動かすが、
どう考えても体力の差で力負けしてしまうのは明白であった。しかし…。

「バギマッ!!」
真空の刃が、テリーの行動を遮る。
ピエールの魔法ではない。木々に隠れた脇から放たれた。
そこには、金髪の女性。
「まだ追ってきていたのか。しつこい奴だ」
「テリー。あなたを止めるわ。手加減抜きで」
ミレーユは表情に、暗い決意を秘めていた。

※現在位置:レーベ南の森(南部)

【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴
 行動方針:テリーを止める(手加減抜き)】

【テリー(DQ6) 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼 リフレクトリング
 行動方針:自らの力を試す=ゲームに勝利する】

【ピエール(瀕死)
 所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 いかずちの杖 魔封じの杖 ダガー 祈りの指輪
 第一行動方針:回復をしつつ、戦況を見守る
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

33:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/28 22:33:00 +hCyQf+i
>>22-25
のフィンのセリフの俺を僕に脳内変換お願いしますorz

34:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/29 00:08:00 BggmJL8X
ピサロは気配を感じたのだ。
その数分前・・・
ティーダはピサロのところに行っていた
近くにいたロックとフリオニールとレナとエリアとギルバートとギルガメッシュとわたぼうとサリィも行っていた
ティファは撃った。
たくさん大変だった・・・
ティファは帰った。クラウドを探すの。
【ピサロ・ビビ・ターニア・ティーダ・ロック・フリオニール・レナ・エリア・ギルバート・ギルガメッシュ・わたぼう・サリィ:死亡】
【残り93人】

35:Never Look Back 1/3
04/11/29 10:25:15 N6LtV2qw
俺には夢があった。
銀幕で見た魔女の騎士のような、最高の英雄になってやる。そんな夢が。
だから、あの日魔女の手を取った。それなのに―

全てが終わった後、魔女の騎士の本当の意味を知って愕然とした。
結局、俺は一度も魔女の騎士なんかにはなれてなかったってわけだ。バカバカしい。
それから俺は、夢をすっぱり諦めてオトナって奴になろうとした。
風神雷神とバラムの海で釣りなんかやったりしてよ。
平和で退屈な毎日ってものに慣れようとしていた。

―今から思えば、それもバカバカしい話だったな。
俺はやっぱり、後ろなんか見ずに突っ走ってる方が性に合う。
いつかゴールに辿りつくその日まで、戦い続けてやる。

「どうした骸骨野郎! そっちから吹っかけてきたんだ、もっと楽しませろよ!」
「吠えるな、小僧が!」
骨野郎の手から、氷塊混じりの凍てつく冷気が放たれた。俺は剣を振りかざし炎を呼び出す。
二つのエネルギーはお互いを相殺し、風と水蒸気だけを残して消滅する。
生死を賭けた緊張が生み出す高揚感を抑えながら、俺は呟いた。
「全く便利な剣だぜ。こいつは」
魔力剣なんて代物、映画や小説の中だけの存在だと思っていたんだがな。
だがまあ、後ろにいる嬢ちゃんよりはよっぽど現実味があるか。
何せ、異世界の魔王の恋人様だというんだから。
普段なら頭がイカれてるで片付ける所だが……『ルビーの涙』なんてものを見せられれば、さすがに信じるしかない。
「サイファーさん!」
嬢ちゃん―ロザリーは、さっきからすぐそこの建物の影に隠れている。
本音を言えば邪魔だ。もう少し遠くに逃げてほしいが、彼女にしてみればそれも危険か。
実際、さっきから数人の気配と視線を感じる。どうも人の試合を観戦してる連中がいるらしい。
いかにもか弱そうなロザリーを狙うつもりなのか、機に乗じて俺を仕留めたいのか、
ゲームに乗った骸骨野郎の隙を窺っているのかはわからないが……どのみち、ロクな連中じゃないだろう。

36:Never Look Back 2/3
04/11/29 10:31:23 N6LtV2qw
「サンダラ!」
奴の詠唱とともに、青白い光が輝く。
「ちっ!」
俺はとっさに、剣を地面と電光の間に向かい投げつけた。
金属の刃に突き刺さった雷撃が、激しいスパークを撒き散らす。
光に思わず目が眩んだ、その僅かな隙を突かれ、奴が刃を振りかざす。
「血を、我が怒りの炎を静めるための血を流せ!」
剣を中心に強風が渦巻いた。剃刀のように研ぎ澄まされた氷を孕んで。
(そっちの剣も特別製ってワケかよ)
炎魔法で壁を作ろうにも、ドローが間に合わない。剣は迫り来る風の向こう側だ。
(くそったれが、調子に乗りやがって!)
俺は真正面から風に突っ込み、剣を拾い上げた。
油断して勝ち誇る骸骨野郎に、強烈な一太刀を浴びせてやるために。
「生憎だが、一方的に負けてやる殊勝な人間になった覚えはねえっ!」
薄氷が突き刺さり、生暖かい血が至るところから吹きだす。切り刻まれた腕と足と胴体とが、痛みという悲鳴を上げる。
だが、俺は気にせず疾る。野郎の姿はもう目の前だ。
「くらえ!」
掌に生まれた火炎を、奴の顔面に向けて放つ。その後を追うように、剣を一閃させる。
タイミングは完璧だ。あんな死にぞこないのアンデッドにかわせるはずもない、そう思った。
―だが、甘かった。
ゆらめく炎の向こうで髑髏が笑い、紫電の光が再び灯る。
「人はどうしてこうも愚かな間違いを犯すのだ?
 貴様にも教えてやろう。余に炎など効かぬわ」
その言葉を聞き終わる前に、痺れと身を焦がす激痛が視界を白濁させた。
気付いた時には、忌々しい骸骨野郎が地に伏した俺の喉元に剣を突きつけていた。
「チェックメイトだな。
 さぁ、覚悟を決めろ。血と涙を流し、無様に命乞いをするがいい!
 絶望の表情を余に見せるのだ!」

37:Never Look Back 3/3
04/11/29 10:34:52 N6LtV2qw
「ふざけるなぁっ!」

―叫んだのは、俺じゃなかった。
町の入り口で出会ったガキ二人の片割れが、不釣合いに大きな剣を野郎の真上から振り下ろす。
氷の刃の一閃で弾かれたものの、その金髪の子供は器用に宙を飛び、わずかな隙さえ窺わせず着地した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……ガキに心配されるほど落ちぶれちゃいねえよ」
抜けきらない痺れを無理やりねじ伏せ、俺は体勢を立て直す。
「邪魔だ、どいてろ。こいつは俺の獲物だ」
「嫌だ。僕だって戦えるよ。僕は、天空の勇者なんだ」
勇者ときやがったか、このガキ。
だが上等だ。少なくともどこぞのチキン野郎よりかはよっぽどいい根性してるぜ。
「フン、勝手にしろ……ただし、止めを刺すのは俺だからな!」

【ハイン 現在位置:アリアハン城下町 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪 
 第一行動方針:サイファー、レックスを殺す 第二行動方針:殺戮】

【サイファー(負傷) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
 第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:不明
 第一行動方針:隠れる 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【レックス 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
 第一行動方針:ハインを倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
 第一行動方針:ロザリーを守る 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】

現在位置(全員共通):アリアハン城下町

*バッツとローグが近くで、セリスとパウロが城下町東側民家二階で様子を窺っています

38:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/29 17:40:23 MQNwEYzd
>>34は無効です。

39:Why am I here?
04/11/30 14:45:11 KfW5p0wE
「ん?…あそこに丁度いい影があるな、あそこで休むか……」
マティウスは小さな山陰を見つけ、そこへと目指し歩く。
本当に、何故自分は蘇ったのか?もしかして此れが本当の死後の世界というものなのか?
幻覚?それもあるかもしれない、ただ分かるのは自分が此処に居るということ。

「お…また久しぶりにお客が現れたな」
気がつけば、山影の近くまで来ていた、そこには派手な衣装を来た男?女?よく分からないが人が立っていた。
「俺は物真似師ゴゴ、今まで物真似をして生きて来た。
 お前は今何をやっているのだ?」
何だこの男は?物真似師?それに言っていることも理解できないな。
私のやっていることか…そうだな、今私がやっていることか…。
「自分が何故此処にいるか、その答えを探している」
ゴゴと名乗る男は考え始めた、目しか見えないというのはなかなか恐怖感があるな。
「そうか、なら俺も自分が此処に居る答えを探すという物真似をやってみるとしよう」

正気か?私の感想は正直なところ、その一言だった。
だがこの男からはどうも先ほどから只者ではない気を感じる。
「そうだな、先ず私が何をしてきたのか、それから話をするとしよう」
覆面の男と向き合い、私は静かに語り始めた。男は静かに私の話を聞いていた。

【マティウス
 現在位置:レーベ南西の山脈地帯(ブオーンの背中)
 所持品:ブラッドソード
 第一行動方針:ゴゴと話す
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかを知る
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ
 現在位置:レーベ南西の山岳地帯(ブオーンの背中) 
 所持品:ミラクルシューズ ソードブレーカー
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】

40:狂気への抵抗 1/2
04/11/30 21:26:52 lVmZC9iv
ぼんやりと星空を見上げていたレオンハルトでも、その気配にはすぐに気付いた。
静かな夜風の吹く平原の中で、その昂った気配はあまりにも異質だ。
そしてそれは確実に、迷わずにこちらに向かってきている。

レオンハルトは背筋が寒くなった。死への恐怖からではない。
その女の、まるで何も映していないかのような、それでも狂気一色に染まっている瞳は、
今すぐ血を見せろと、惨劇を見せろと言っているかのようであった。
レオンハルトには、殺されることの恐怖感はなかった。死を受け入れようとしていたから。
しかし、そんな彼でも―その女から放たれる威圧感は、恐ろしかった。

裁かれる時がきたのか、とレオンハルトは思った。
心の狂った、血に餓えたこの相手に、残虐的に殺されるとしたら。
それがどんなに惨めで、痛みと苦しみを伴う死に方だとしても―それが自分の罪の重さなのだと。
相手が一歩動いたその時が、身体を切断され骨を砕かれ、血飛沫を上げて殺されるときなのだろうと。


だが、相手は予想外の行動をとった。
今にも振り上げそうな剣を握った右手を、昂った感情を無理矢理抑えるかのように震わせながら
ゆっくりとレオンハルトに剣を向けたのだ。まるで、今からお前を斬るぞ、という意思表示のように。
その一瞬だけは、先程までの狂気に満ちた威圧感がやわらいで。―騎士の誇り高き血を感じた気がした。

レオンハルトははっとした。女の震える右手の指に、その指輪を確認したから。
月明かりに照らされた指輪に、古く痛々しい血痕がついているのが見えた。
…まさか、とは思った。しかしこの行為を見ればわかる。この女にはちゃんと、誇りがあるのだと。

(―こんな時、あいつならどうする…
  相手を傷つけぬよう逃げるか、自己を守るため戦うか?
  それとも―)

「…わかった、相手をしてやる。命に代えてでも止めてやろう」

41:狂気への抵抗 2/2
04/11/30 21:28:26 lVmZC9iv

レオンハルトがロングソードを抜きながら答えると、
ベアトリクスは弾かれたように、再び狂気に満ちた剣を一気に振り下ろした。


【レオンハルト 所持品:ロングソード、消え去り草
 第一行動方針:ベアトリクスを止める 第二行動方針:死を待つ】

【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態) 所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、アルテマソード
 第一行動方針:レオンハルトを殺す 基本行動方針:参加者を見つけたら殺す】

 現在位置:レーベ西の平原

42:救いと偽り 1/3
04/11/30 21:44:54 iaYgSCqz
死にたい。
深い闇の中から意識を取り戻した時、思ったことはそれだった。
生きていても、彼には……クラウドにはもう会えない。
会う資格を無くしてしまったから。こんな醜い顔、見せたくないから。
だから私は、勇気を出してナイフを拾い上げて、自分の首筋に当てた。
でも―
「何やってるのっ!?」
私が刃を滑らせようとしたとき、『彼』が現れた。
彼は私の手からナイフを奪い取ると、少し離れた地面へ放り投げる。
「ねぇ、どうしたんだい? 一体何があったの?」
手を握り締められたままそう聞かれたけれど、私は答えず……代わりに顔を上げた。
あまりに醜い、焼けただれた顔に、彼は眼を見開く。
でも、視線を逸らそうとはしなかった。まっすぐ私を見て、彼はこう言った。
「……痛いかもしれないけど、少し大人しくしてて」
それから彼はコートのポケットからハンカチを取り出し、水で湿らせて、私の顔に当てた。
「ここまで重度の火傷だと効くかどうかわからないけど、何もしないよりはマシだと思うからね」
私は彼をじっと見た。それで何を勘違いしたのか、彼はすまなさそうに頭を下げた。
「ごめんね。僕が、回復魔法とか使えればよかったんだけどね……」
「―ッ」
たまらなかった。
何でこの人は、私みたいなやつに優しくしてくれるんだろう。
私には、そんな価値なんかないのに。
「……ほう……て、おいて……」
ハンカチのお陰で痛みが多少和らぎはしたけれど、口は思うように動かない。
でも、喉の奥から声を出すことはできた。
「わたし……なんか、ほう…ておいて。優しくしな…で。
 わたし、エアリス、殺しちゃ…た……もう、死ぬ…かないよ……
 クラウドに…こんなかお、見せられな…よ……生きる価値、ない…」
発音は不明瞭で、内容は無茶苦茶で、聞き取りづらいなんてものじゃなかったと思う。
それでも、彼は全て察してくれたらしかった。
「だからって、自殺したって誰も救われないよ」
悲しげに目を伏せ、彼は静かに言った。

43:救いと偽り 2/3
04/11/30 21:50:08 iaYgSCqz
「自殺ってのはね、逃げることと同じなんだ。
 死ねば、確かに罪悪感から解放される。でも、償ったことにはならないよ。
 君が本当にその人達のことを思うなら、辛くても生きなくちゃだめだよ」
彼は私の肩に手を回し、軽く後ろ髪を撫でた。子供をあやすように。
「死んでしまった人の分まで生きるんだ。今、生きている人たちのために生きるんだ。
 罪を償うっていうのはね、そういうことなんだよ。
 それに会わせる顔がないだなんて決め付けないで。
 全てが君のせいばかりじゃない。きちんと話せば、わかってくれるよ」
それから彼は、ふと、何かを思い出したように私に尋ねた。
「ねぇ。クラウドって人、もしかしてこの会場にいるのかい?」
私は首を縦に振る。彼は少し迷った様子を見せ、やがて口を開いた。
「そうか……なら、一つ、彼のためになりそうなことがあるよ」
(クラウドのためになること?)
「向こうの山の中にね、このゲームに乗った連中がいるんだ。
 黒髪の女剣士と、金髪の格闘家と、黒尽くめの男の三人組だけど。
 奴らは強い。クラウドさんって人が連中に見つかれば、殺されてしまうかもしれない」
(クラウドが、殺されるかもしれない?)
有り得ない。けど、そうなったら? 嫌だ。そんなのは嫌だ。
「でも、君には拳銃がある。見つかる前に不意打ちすれば、きっと倒せるよ。
 そうすれば、奴らにクラウドさんが殺されることもなくなる。君が、彼を助けたことになる」
(私が、クラウドを助ける……)
「僕は、この先の村に仲間が待ってるから、一緒には行けないけど。
 何もしないで死ぬぐらいなら、彼のためにがんばってみたらどうかな。ね?
 そうすれば彼も―エアリスだっけ? その子もきっと許してくれるよ」
彼はにっこり微笑み、ナイフを拾ってくれた。ウェーブのかかった茶色の髪が優しく揺れる。
それがエアリスを思い出させて、だから、私は彼の言葉を受け入れる気になれたのかもしれない。
私はゆっくり頷いてナイフを受け取った。それからもう一度頭を下げて、走り出した。
―もし微笑むことができたなら、一緒に言いたい言葉があったのだけれど。今の私には言えなくて。
でも、またどこかで会えたなら、その時こそ必ず伝えようと思った。
「ありがとう」、と。

44:救いと偽り 3/3
04/11/30 21:57:45 iaYgSCqz
「ふー。やれやれだねぇ」
少女が去った森の中で、青年は一人肩をすくめる。
その表情には、先ほどまでの優しさなど微塵も残されていない。深青の瞳は冷徹な輝きだけを孕んでいる。
(上手く信じ込んでくれて助かったね。僕も手荒な真似をしないですんだ)
月光に照らされたコートの右袖口が、鋭いきらめきを放つ。
もし彼女が青年の企みに気付いた素振りを少しでも見せれば、袖の中に仕込んだナイフで首を掻き切るつもりだった。
肩を抱いて髪を撫でたのも、実のところ逃げ場を封じるためでしかない。
全ては偽りだ。話の内容も、彼女に見せた優しさも。
(銃声と叫び声が聞こえたから、危険を承知でこっちに来て……
 いきなり自殺を始めたぐらいだから、きっと精神的に参ってるんだな~ぐらいには思ってたけど。
 付け入りやすい理由でよかったよ。
 もー。スコールとユカイな仲間たちの相手なんか、まともにしてられますかっての~)
上手く行けば、スコール達はこれで片がつく。失敗しても足止めにはなる。
その間に自分はレーベに行って、回復用品を仕入れておこう。あるかどうかはわからないが。
服も着替えた方がいいだろう。一目でそれとはわからなくても、臭いはする。最初に殺めた少女の血の臭いが。
それに体力も限界に近い、なにせ一気に山を駆け抜けてきたのだ。
少しでも暖かい場所で食事を取りたい。眠らなくてもいいから休みたい。それが彼の正直な気持ちだった。

ともかく、こうして少女は生きる希望を見つけた。そして青年は『時間稼ぎの駒』を手に入れた。
どちらにも不満はなく、問題もない。
あるとすれば―方向性が誤っているということだけで、それすら二人にとってはどうでもいいことでしかなかった。

【ティファ(顔面に重度の火傷) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 現在位置:レーベ東の森中央付近→南の山岳地帯へ 行動方針:スコール達を倒す】

【アーヴァイン (HP4/5程度、疲労中)
 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ  グレートソード ミスリルの小手 食料+ランプ等(マリベルから回収)
  現在位置:レーベ東の森中央付近→レーベの村へ
  第一行動方針:休息を取る 第二行動方針:ゲームに乗る】

45:血塗れの魔王 1/3
04/12/01 01:31:04 hY7iu2M4
「…息の根を止めて来い」
ピサロの言葉に、ビビは耳を疑った。
「えっ…?」
「殺せと言っている」
ピサロの声は、いつもの通り冷たくて。

自分の放った魔法が女性の顔を醜いものとしてしまったことを、話した。
その女は死んだのかというピサロの問いに、ビビはわからないと答えた。
その次のピサロの言葉が、「息の根を止めて来い」と…

「どうして…?」
「言うまでも無いだろう。その女は、やがてお前やこの小娘を殺しに来る」
ピサロの前に並んで座ったビビとターニアに向けて言い放つ。
「そうなる前に殺すのが妥当というものだ」
全身が影になっているピサロの表情は、二人には読み取れなかった。
だが、口調に変化は無く、殺すことに躊躇いが無いのだろうと思わせた。

「でも…」
ビビは、なんとなくピサロの方から目を逸らし、隣のターニアを見た。
ターニアの表情もまた、ビビからは影となっていて読み取ることは出来なかったが。
「その女は不思議な武器を持っていると聞いた。轟音を立て瞬時にして人体を貫く武器をな。そうだな?」
「…はい」
ターニアは震えた声でそう答えた。
エアリスが殺された時の事は、既に話してあった。
「そのような武器は見たことが無い。防ぎ方も知らん。そんな武器を持った女を放置しておく訳にはいかぬだろう」


46:血塗れの魔王 2/3
04/12/01 01:31:57 hY7iu2M4
「じゃあ武器だけを…」
言いかけたビビは、また口を噤まなければならなかった。
「その女はこれまで何人殺したか知らん。放置すればお前の仲間も犠牲になるかも知らん。それでもよいのだな?」
ピサロの声は、有無を言わせぬ響きがあって。
「…うん…わかったよ…」
ビビは、呟くように言った。

「その女が目を覚ましていたら躊躇わず魔法で攻撃するのだ。そうでなければ殺されるからな。
目を覚ましていなければその女の持ち物を奪ってそれで息の根を止めろ。使い方が分からなければ手持ちの武器でも構わない」
ピサロは語勢を変える事無く言い切り、ターニアにその目を向けた。
「小娘、ついて行きたいか。仲間の仇を討つのを見たいか」
ターニアは、俯いて、目を伏せて、首を横に振る。
「…そうか。…ビビ、行って来い」
「……」
ビビは、一言も喋らずに、ランプをかざして、森の奥へ消えた。
先程とは違う。誰かを守るのではなく、誰かの命を奪うために、少年は歩き出した。

「どうしてあなたは行かないの…?」
ランプが遠ざかって見えなくなると、ターニアはピサロに聞いた。
「…ビビから聞いてないのか。とても身体を動かせる状態ではない」
忌々しげに、吐き捨てるように言った。
「多少は回復はしたが、未だ動くには十分ではない」
「…血は?」
ターニアの声が震えていた。
「血か。一先ず止まったようだが…。小娘、血が怖いか」
コクリと頷くターニア。
「血を見ると…頭が混乱して…」
「…成る程。ならば…」
唐突に、ピサロはターニアの額に右手の人差し指を向けた。
「暫く寝ている事だな」

47:血塗れの魔王 3/3
04/12/01 01:32:49 hY7iu2M4

カクリと糸が切れたように地面に上半身を倒したターニアを一瞥し、ピサロは目を閉じた。

―正直、ビビが私の言うとおりに動く可能性など、半分くらいだと思っている。
殺さないとしたら、女を逃がすのだろう。
未だ、人間の正義を信じているのか。
…それでも今、私は待つしかないのか。
どちらにしても。

―問題はこの小娘だ。
血を見ると混乱するか…厄介なものを背負い込んだ。
私の血は止まったがこの辺は血塗れだ。
人間の眼は闇の中では利かぬからまだいいが、朝になれば何れ血を見てしまう。
一先ずは眠らせておくのがいい筈だ。
何にしろ私が動けるようになるまではどうしようもないのだからな。

そこで、思考の中で苦笑する。
―フン、この身体が治らぬ限り、何も出来ぬか。
ならば先ずは回復を優先する他あるまい…

ピサロは、久々に自分を襲った睡眠欲に身体を委ねる事にした。

【ピサロ(睡眠) 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ビビの帰りを待つ、ある程度回復するまで待機】
【ターニア(睡眠) 所持品:微笑みの杖 行動方針:?】

【ビビ 所持品:不明 行動方針:ティファの息の根を止めるorティファを逃がす。ティファがいなくなったのを知ったら…?】

現在位置:レーベ東の森中央付近

48:聞こえた音 1/3
04/12/01 18:55:33 FVsct8gi
カーン カーン

金属音が断続的に響く。
わるぼうは何をするでもなく、夢中で鍛冶を続けるサリィをぼんやりと見つめていた。
その足元には、ところどころに赤いラインのひかれた参加者名簿。
―普段は悪態をついていても、いや、だからこそ、心が痛む。
ほんの数日前までは、モンスターに囲まれて笑顔を見せていたイルが、もういないなんて。
(そういや、ルカの奴もここにいるんだったか…)
名簿をもう一度開いて、ルカの写真を見てみる。いつもと変わらない顔が、そこにはあった。
「―おい、大丈夫か?」
唐突に声をかけられて顔を上げる。サリィが手を止めてこっちを見ていた。
「あたい、こういうのって上手く言えねえけどさ…その…」
上手く言えなくてもその顔をみりゃわかる―と思った。元気出せって言いたいんだろう。
そんなに落ち込んでるように見えたのか?
「…何言ってんだ、大丈夫に決まってんだろ!それより、その剣はどうなんだ?」
そう訊ねると、サリィはぱっと顔を輝かせた。
「ああ、やっぱこいつはすげぇ剣だぞ!見てろ、きっと朝までには終わらせてやるからよ!」
サリィはそう言うと、頬を叩いて気合を入れ直してから、ふたたび鍛冶に取り掛かり始めた。

「…おい!いつまでしょぼくれてんだ!」
少し元気の出たわるぼうは、黙って拳を握り締めているギルガメッシュを叩いてみる。
「……うるせえよ」
ギルガメッシュは静かににわるぼうを睨みつけた。
放送が終わった時に『嘘だろ…クルル』と大声で叫び、力任せに地面を殴りつけてからはずっとこんな調子である。
「いい加減にしやがれ!自分だけが悲しいとか思ってんのかてめえは!!」
わるぼうはイラつきながら怒鳴り―ギルガメッシュは、力を込めて地面を叩いた。
「俺が悲しいとかそんなんじゃねえ!!クルルは死ぬはずじゃなかった…!」
「そんなん、イルだって一緒だっつの!弱虫ヤロー!!」
「なっ…んだと!?この…ッ!」
思わず跳びかかるギルガメッシュだが、わるぼうが避けたため勢いよく地面に顔をぶつけてしまう。
わるぼうは呆れ顔で言った。

49:聞こえた音 2/3
04/12/01 18:56:32 FVsct8gi
「だったら何だ?お前そのまま後追って死ぬつもりなのか?幸せな奴。
 俺様はあのクソババアに一発ぶちこまないと気がすまないっつってんだ、バカ!」
「…誰が!いつ!んな事言った!てめぇの話は何か飛んでんだよ、バカ!!」
「んだとお!!?」
「やんのか!!?」
「うるせーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

バキッ ドカッ

サリィの拳骨が二人の脳天を直撃した。

「…人が集中して仕事してんのによ、ちっとは静かにしやがれ!」
「「……す、すいません…」」
頭を抑え震える二人をよそに、ぶつぶつ言いながらも再び鍛冶を続けようと金槌を握るサリィ。
目の前で倒れているお互いを見て、わるぼうもギルガメッシュも、やりきれない苦笑いを浮かべた。
サリィはまだこちらを見ている。…これは、彼女なりの励まし方なのかもしれない。少々痛いが。
(俺がこんなんでどうすんだ…)
自分が酷く不甲斐なく思えて、ギルガメッシュは溜息をついた。
こんなんじゃ、バッツやレナやファリスにも会わせる顔がないってもんだ。
(しっかりしねえとなあ…)
冷たい夜風が、頬を撫でていく。今は鍛冶の金属音もしない。
数秒の間だけ戻る夜の静けさは―ギルガメッシュにある音を伝えた。

―― …キィン…

「…あれ?」
倒れたまま、きょろきょろと辺りを見渡すギルガメッシュ。
今の音は?もしかして…
「どうしたワル?」
「…何か…聞こえねえか?」
「え?」

50:聞こえた音 3/3
04/12/01 18:57:20 FVsct8gi

―― …キン…カキィ…

(…やっぱり、剣の音じゃねえか!)
微かな、それでも確かな音にギルガメッシュは瞠目する。
わるぼうとサリィは相変わらず疑問符を浮かべているが、自分には間違いなく聞こえた。
誰かが剣を交えている。多分、そんなに遠くない場所で。しかし、一体誰が?
(まさか…バッツ…じゃあねえだろうな…?)
ありえない話ではない。
一度そう思うと、気になって仕方がなくなってきた。ギルガメッシュは勢いよく立ち上がる。
「すまん、ちょっと様子見てくるわ!すぐ戻るから待ってろ!」
そう言うや否や、夜の平原を全力で駆け出した。
わるぼうの「おい!?待て!!」という声を、背に聞きながら。



【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル 種子島銃
 現在位置:レーベ北の平原→レーベ西の平原、レオンハルトとベアトリクスの所へ
 第一行動方針:様子を見に行く 第二行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ】

【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
 現在位置:レーベ北の平原 第一行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ、ギルガメッシュが戻るのを待つ】
【サリィ 所持品:鍛冶セット ボロい剣(伝説系の剣) 光の鎧(装備不可)
 現在位置:レーベ北の平原 第一行動方針:不思議な力を放つ剣を鍛えなおす、ギルガメッシュが戻るのを待つ】

51:人探し 1/2
04/12/04 02:04:35 Bf6d1jOp
ドーガは夜の川原で一人、目を閉じて集中していた。
彼の脳裏には、そこからはずいぶん離れた場所の景色がぼんやりと映っている。サイトロの魔法だ。
ドーガは、手負いのギルダーはおそらくすぐには行動せず、そんなに遠くないところに身を隠すだろうという考えから
がむしゃらに追うことはやめ、相手の位置を確認できればと思いサイトロを続けていた。
…しかし、どうも上手くいかなかった。あまり魔法の範囲を広げられない上、景色もぼんやりとしか映らないのだ。
これは自身の病のせいか、怪我のせいか、それとも精神的なものか…。
数十分続け、向こう岸の森林内などでは数人の姿を確認する事が出来たが、肝心のギルダーは未だ見つからない。

―ギルダーがなぜあんな行動をとったのか、ドーガは理解できなかった。
彼は光の戦士であるということを除けば、あとは至って普通の少年だったはずだ。
落ち着いた性格で冷静な彼が、殺し合いという恐怖に負けたとも思えない。
しかし何か理由があるとしても、クリスタルの力を悪用するならば放っておくわけにはいかない。
道を踏み外しそのまま堕ちていくならば、その前に…。殺すことになったとしてでも―

52:人探し 2/2
04/12/04 02:05:26 Bf6d1jOp
「あのー…」
唐突に声をかけられて、呪文と思考が中断する。いつの間にか、背後に先程助けた少年が立っていた。
少年はフィンと名乗り、遠慮がちにドーガへと頭を下げる。
「ええと…さっきは危ないところを助けてくれたみたいで、本当にありがとう」
ドーガはいや、と首を振った。
「あいつはわしの知り合いじゃ。すまなかったな…」
「そうですか…」フィンは、ドーガのおそらくは複雑であろう心情を察し表情を暗くする。
「…怪我のほうは大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫じゃ。このくらいなら放っておけばそのうちに治る」
その答えに少々驚いた様子のフィンに、ドーガは「人間とは治癒能力が違うからの」と付け足すと、再びサイトロの詠唱を始めた。

「何してるの?」
フィンの問いに、ドーガは魔法を続けながら答える。
「魔法で周りの様子を見ているんじゃ。わしはあいつを止めなくてはならないからな」
「…遠くが見えるんですか?」
ああ、とうなずくドーガにフィンは少し目を開き、少々勢い込んで言った。
「じゃあ、僕の仲間…金髪の王子っぽい人と、赤いマントの綺麗な女の人と、白い髭のおじいさんなんだけど
 この近くにいたりしない?」
仲間のことを説明し―マリベルのことを思い出して少々悲しげな表情になるフィン。
ドーガはそんなフィンを見て、
「…わかった、ちょっと待て。今探してやろう」
それだけ言うと、再び思考を呪文に集中させ始めた。

【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 第一行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(負傷) 所持品:不明 第一行動方針:サイトロ使用中(フィンの仲間とギルダーを探す) 第二行動方針:ギルダーを止める】
*現在位置:大陸中央の川原(北の橋東側付近)

53:復讐者 1/2
04/12/04 10:26:53 wdAxmByC
アグリアスは必死の形相で森の中を彷徨っていた。
時折―普段の彼女からは考えられぬことだが―、木の根や草に足を取られてはバランスを崩し、手や足に擦り傷を作る。
疲れのせいではない。夜という時のせいでもない。
瞳を覆う闇と、死神のように後を追いつづける気配のせいだ。

さて、話は数時間前に遡る。
焔色の髪を持つ男・サラマンダーとの戦いは、完全な膠着状態に陥っていた。
双方ともに一歩も退かず、隙を見せない。例え千日の時を掛けても決着はつかぬだろう。
二人がそのことをうすうす悟り始めた―その時、異変が訪れた。
「ぐぁっ!?」
サラマンダーが突然のけぞり、構えを崩す。
あまりに唐突だったので、対峙するアグリアスも剣を振るうことを忘れてしまったほどだ。
だが我に返り、今が絶好のチャンスだと気付くと、勝負を終わらせようと一気に間合いを詰めた。
それが失敗だった。
「うっ!」
風を切る音と共に、何かが深々とアグリアスの肩を貫く。
同時に、緑あふれる森が、新月の夜空にも似た闇色に染められた。
(これは―?)
木々の輪郭さえ判別しがたい、半ば閉ざされた視界の向こうで、サラマンダーとは別の薄ら寒くなるような気配を見つける。
「久しぶりだな、アグリアス・オークスよ」
男の声が森に木霊した。聞き覚えのある、そして二度と聞くことのないはずの声だった。
「貴様は……ッ!」
「私の目的はラムザ一人と言いたいが……
 奴に組した者を見逃すわけにもいかぬし、ここで朽ちる気もない。
 死んでいった仲間たちのためにも、我が妹ミルウーダのためにも、な」
「ウィーグラフッ!」
バカな。ルカヴィと融合し、魂さえも闇に飲まれ、魔人ベリアスとして滅びたはずの男が……
どうしてここにいる? いや、それ以前になぜ生きている?
幾つもの疑問が頭に浮かぶが、答えを考えている暇はない。
重要なのは、奴が自分を殺すつもりであるらしいという事実だけだ。

54:復讐者 2/2
04/12/04 10:30:02 wdAxmByC
「くっ……勝負は預けるぞ!」
矢の飛んできた方向の反対へ飛び退りながら、サラマンダーに向けて言い放つ。
舌打ちの音が聞こえたが、追撃はなかった。恐らく彼も視界を奪われているのだろう。ウィーグラフの放った矢によって。
「邪魔が入ったな……次は仕留める、必ずだ」
サラマンダーの捨て台詞を背に、アグリアスは走り出した。

―そうして、今に至る。彼女は未だに逃げ続けている。
森の中を。暗闇の中を。ずっとついて回る、凍るような殺気の中を。
(私をなぶり殺しにするつもりか……)
日が沈んだことはわかっている。闇が濃くなったことに気付く前に、放送が流れた。
当たり前だが、とうに体力は尽き果て、走るどころか歩くこともおぼつかない。
つまり殺そうと思えば、いつでも奴は自分を仕留められるはずなのだ。
それをしないということは、限界までなぶってから殺すつもりか、あるいは―
(あるいは、私はエサなのか?)
ふと、そんな考えが脳裏に閃く。
広間でのラムザと自分のやり取りは、ウィーグラフも見ていただろう。
『向こうで落ち合おう』
あの時、彼は確かにそう言った。もしあのラムザが幻影などではない、本物のラムザであるなら―
(ラムザは私を探しているはずだ……私を餌にラムザをおびき寄せる、それが、奴の狙いか)
冗談ではない。だが、この状況では打つ手もない。
アビリティを付け替えて暗闇を回復しようにも、気付かれたら一巻の終わりだ。
(焦るな……機を待とう)
チャンスは必ず訪れる。今の彼女には、そう信じるしかなかった。

【サラマンダー(暗闇) 現在位置:岬の洞窟入口近辺→移動 所持品:ジ・アベンジャー(爪)、他は不明 
 第一行動方針:暗闇が治るまでどこかで待機 第二行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)】
 
【アグリアス(暗闇+疲労) 現在位置:岬の洞窟入口近辺→北へ 所持品:クロスクレイモア、ビームウィップ、もう一つは不明
 第一行動方針:逃げながら反撃の機会を窺う 第二行動方針:生き延びる】
【ウィーグラフ 現在位置:岬の洞窟入口近辺→北へ 所持品:暗闇の弓矢、残りは不明
 第一行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
*暗闇は時間経過で自動治癒します

55:英雄の責務 1/3
04/12/04 16:34:25 pjvhZMVv
大地震、放送。
それすらも、彼らの闘いを止める事は無かった。

依然として、デュランとメルビンの闘いは続いている。
だが、その力の差を一瞬一瞬メルビンは噛み締める。
(これでは…負ける…)
いまや相手の剣の一閃を避けるのに全ての神経を費やすしかない。
剣を失った。魔力も底をついた。
対して相手は魔族の強みである無尽蔵な体力と強烈な破壊力を誇る剣を前面に押し出しメルビンを圧倒する。
それでも未だ生を失っていないのは、ある意味仲間達のおかげかもしれない。

―メルビン、次の職業どうしようか?
フィンの声がした。
―メルビン、踊り子なんてどう?
アイラがクスクスと笑う。
―ウェー、おっちゃんの踊り、またステテコダンスか?
ガボが吐く真似をする。
―まぁ、少しは若返りの効果があるかもね。私は見たくないけど。
マリベルの声だけが、少し霞んで聞こえた。
―身かわし脚とか、受け流しとかさ。結構使えると思うんだよね。
フィンが言ったソレが、今の自分の生を保っている。

「うぉぉぉっ!」
一声吼え、再び襲い掛かる剣をかわす。
直後に起きる爆発は予測済みだ。一寸後ろに飛び跳ねればある程度は避けられる。
「貴様、しぶといなっ!」
デュランのほうが圧倒的有利である筈だ。
だが、魔王の剣に完全には捉えられること無くここまで来た。
…あの日、皆にからかわれながら踊り子などという職業に就いた。
それが、今、彼を魔王の剣から救っているようで。

56:英雄の責務 2/3
04/12/04 16:35:38 pjvhZMVv
(なかなか、捨てた物じゃなかったでござるな)
…だがそれはある意味強がりだった。
魔王の振るう剣はかわせても、その後に襲い掛かる爆発を完全にかわすことは出来ない。
今や彼の身体中には無数の傷が刻まれている状態だ。
それは少しずつ彼の動きを鈍くし、最後にはデュランに捉えられてしまう事になるだろう。

魔王の剣を再びかわした時、彼の目にある物が映った。
直後の爆発による閃光で、一瞬だけそれを捉えることが出来たのだ。
…やはり、それしかあるまいな。
メルビンは大きく飛び上がり、ムーンサルトを放つ。
これも、メルビンをスーパースターに仕立て上げたなんとも微笑ましい仲間達のおかげだった。
「貴様の攻撃はもはやその程度か!」
デュランはそれを悠々と避ける。
だが、それはメルビンの期待通りだった。
別の理由があったのだ。デュランの反対側に移動したのは。其処にあった物を、拾うために。
膝を突き、メルビンは着地する。同時に、右手でそれを拾い握り締めた。
「戯けた事をするものだな!」
デュランは振り返り、剣を構える。どうやらそれには気づいていないようだ。
メルビンは立ち上がり、デュランを睨み付ける。
…右手は、デュランに見えない様に。
デュランはメルビンめがけ突撃を開始した。
デュランは今、魔力に頼る気は無かった。最後まで真剣勝負だ。
思い切り剣を振りかぶる。
「避けられるかッ!?」
「…避ける気など無いでござるよ」

―英雄の役目は、魔王を倒し平和をもたらすこと。
―フィン殿、アイラ殿…真に倒すべき敵は任せたでござるよ。
―神よ!これがメルビン最期の生業でござる…!

57:英雄の責務 3/3
04/12/04 16:37:18 pjvhZMVv
デュランの剣がメルビンの胸を切り裂くのとほぼ同時に、
メルビンの握り締めた、刃だけとなり落ちていた鋼の剣が、デュランの喉に突き刺さっていた。
「これが、英雄として願った最期でござるよ」
それは、魔王と相討ちする事。
身を捧げて平和をもたらす事を夢見た。
神の加護は、きっと―
デュランとメルビンは、同時に、背中から地面に倒れていった。

「避けられたはずだ…」
喉に剣の先が突き刺さっている状態で、デュランは呟く。
魔族は喉を突いても言葉を発することが出来るのか、とメルビンは思った。
「…魔王など、生かしておくワケには行かないでござるよ…英雄として。だから決断したのでござる」
メルビンは、自らの切り裂かれた胸の前で、両腕を十字に組む。
「フフフ…いい勝負だった…が、まだ引き分けというところだな」
クッ、とデュランは苦痛に表情を歪めた。
「あの世でもう一度手合わせをしたいものだ」
「…魔族は地獄、正しい人間は天国へ逝くと相場は決まっているでござる…」
メルビンは、自分の声が少しずつ小さくなっていくのを感じた。
「…だから、それでは戦いなど出来ないでござるよ」
「フッ、そうかも知れぬな…」
デュランは皮肉を帯びた笑みを浮かべる。
「…ゴホッ…おぬしは地獄へ…」
「…フン、貴様も…天国へ行くのだな…」
「神の元へ…」
擦れていった声に耳を傾けるのは、森の木々のみ。
二人の猛者は、何処か満足したようにゆったりと意識を闇に溶かしていった。
そしてもう、何も聞こえることは無かった。

【デュラン メルビン 死亡 残り103人】
現在地:岬の洞窟北西の森 ラミアスの剣放置。

58:虚無の襲撃者
04/12/04 21:19:29 uL9CmQaG
クラウドは逃げた。夢中で走った。
-大きな建物と町らしいものが見えてきた頃、地鳴りと轟音が彼を転倒させたが、
それが彼をかえって落ち着かせた。
虚空のスクリーンに現れた魔女が、次々に死者の名前を読み上げてゆく。
「バレット…エアリスも」
彼は地面に膝をついたまま、拳を握り締めた。が、悲しむ余裕など無いのも
わかっていた。
ユフィ、シド、ザックス…そしてティファ。彼らは果たして無事だろうか。
早く探し出さねば。その思いが彼を立ち上がらせる。追ってきたはずの
セフィロスと、もう一人はどうした?
辺りを注意深く見回すと、遥かに見える岩山のほうから、一人の黒髪の女が
歩いてくるのが見えた。
「この辺は危険だ!早く…」
逃げろ、と言おうとして彼は息をのんだ。女の瞳を、見てしまったから。
赤い瞳にあったのは、殺意でも、狂気ですらなく。-ただ、深淵。
クラウドは、悪寒を覚えて飛び退った。彼の中の何かが
「危険だ」
と告げる。彼がアルテマウェポンを油断なく構えると、女-パインは、無言で
アイスブランドを振りかぶった。
(くそ!近くにセフィロス達が居るかもしれないってのに!)
彼は内心で舌打ちをして、最初の一撃を迎え撃った。

【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
第一行動方針:パインと戦う
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【パイン(ジョブ:ダークナイト)所持品:うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド
ドレスフィア(ダークナイト)
状態:凶暴化(何かの衝撃で正気を取り戻す可能性あり)
現在位置:アリアハン城下町南の入り口付近
行動方針:全員殺害。正気を取り戻した場合は不明】
※近くにセフィロス&クジャが潜んでいる可能性があります。

59:she is not dead 1/4
04/12/06 20:32:42 ud/J2Yaz
「殺ス、ソノ三人組ヲ殺ス。クラウドノタメニ…」
夢中で山道を駆け抜けるティファの頭は、それだけしか考えられないほど錯乱していた。
三人組には意外と早く追いついた、なにやら立ち止まって話をしている。チャンスだ。
「アノ三人組ヲ殺セバクラウドはラクニナル。」

狙いをつけて引金に指を掛ける…

「マッシュ、どうした?いきなり立ち止まって。」スコールが声を掛ける。
「いや、なんかザックの中が熱いんだ…。なんだろ。」
ごそごそとザックをまさぐるマッシュ、その時スコールは異様な殺気を感じた。振り返ると背後に銃を構える人影。

「みんな!伏せろー!!」

「ぱん、ぱん、ぱん」
山道に銃声が木霊する。

「ぐはあ!」「きゃあ!」立ち上がっていた二人は、即銃弾の餌食となった。
「えっ。2人ともどうした!」
マッシュはザックの中身を確認するために、あらかじめ低い姿勢になっていたので銃弾から逃れることが出来た。
彼はすぐに2人のそばに駆け寄り、傷の確認をする。
「うっ…、私は何とか大丈夫。それよりスコールを…。」アイラは足に銃弾を受けたが、意識ははっきりとしていた。
「おい、大丈夫かスコール!返事をしろー!」それに対してスコールの傷は最悪だった。
右脇腹に一発、そして左胸の心臓の下あたりにもう一発。いや、もしかしたら心臓を傷つけてしまったのかもしれない。
現に彼は意識がなくぐったりしていて、その顔面は蒼白だった。

「動かないで。」

気が付くと背後に顔が焼け爛れてしまっている女が一人、銃口をマッシュの方に向けて立っていた。



60:she is not dead 1/4
04/12/06 20:35:17 ud/J2Yaz
「殺ス、ソノ三人組ヲ殺ス。クラウドノタメニ…」
夢中で山道を駆け抜けるティファの頭は、それだけしか考えられないほど錯乱していた。
三人組には意外と早く追いついた、なにやら立ち止まって話をしている。チャンスだ。
「アノ三人組ヲ殺セバクラウドはラクニナル。」

狙いをつけて引金に指を掛ける…

「マッシュ、どうした?いきなり立ち止まって。」スコールが声を掛ける。
「いや、なんかザックの中が熱いんだ…。なんだろ。」
ごそごそとザックをまさぐるマッシュ、その時スコールは異様な殺気を感じた。振り返ると背後に銃を構える人影。

「みんな!伏せろー!!」

「ぱん、ぱん、ぱん」
山道に銃声が木霊する。

「ぐはあ!」「きゃあ!」立ち上がっていた二人は、即銃弾の餌食となった。
「えっ。2人ともどうした!」
マッシュはザックの中身を確認するために、あらかじめ低い姿勢になっていたので銃弾から逃れることが出来た。
彼はすぐに2人のそばに駆け寄り、傷の確認をする。
「うっ…、私は何とか大丈夫。それよりスコールを…。」アイラは足に銃弾を受けたが、意識ははっきりとしていた。
「おい、大丈夫かスコール!返事をしろー!」それに対してスコールの傷は最悪だった。
右脇腹に一発、そして左胸の心臓の下あたりにもう一発。いや、もしかしたら心臓を傷つけてしまったのかもしれない。
現に彼は意識がなくぐったりしていて、その顔面は蒼白だった。

「動かないで。」

気が付くと背後に顔が焼け爛れてしまっている女が一人、銃口をマッシュの方に向けて立っていた。



61:she is not dead 2/4
04/12/06 20:37:49 ud/J2Yaz
「くっ…。」

これで終りか、マッシュはふと思った。
しかし、焦点のはっきりしない泳いだ彼女の瞳を見たとき、彼は直感でこう思った。
もしかしたら彼女は錯乱しているだけなのかもしれない、ゲームに乗った誰かによって焼かれてしまった自分の顔を見て。
現に彼女は今から人を殺そうとしているはずなのに、
何かにすがりたいような、ひどく頼り無く悲しい目をしていた。

マッシュは目の前の女性に気付かれないように、しずかにザックの中を探り始めた。
そしてさっきから熱を発している物体、ティナの魔石を強く握り締めて念じた。
かつて現世でピンチになったとき、魔石から幻獣を呼びだすのと同じ要領で。

「力を貸してくれ!ティナ!」

魔石はマッシュの手を離れ、空中に舞い上がる。そして、暖かい光を放ち始めた。
しかしその光は目を刺激するようなものではない。その場にいる者たちを優しく包み込んでいた。
マッシュはなぜか、モブリスの村で幸せそうに子供達と戯れるティナの姿が頭に浮かんだ。

そして次の瞬間、魔石から『妖精』が飛び出した。
桃色の肌に長い髪、それと美しい羽を広げて。
それは魔石になったことにより、完全に幻獣化したティナの姿。
彼女の発するまばゆく暖かい輝きで、もう辺りは昼間のように明るかった。


62:she is not dead 3/4
04/12/06 20:40:01 ud/J2Yaz
「傷が…。」
アイラの足を掠めた銃弾による傷が、みるみるうちにふさがっていく。

「うっ…。」スコールも眼を覚ました、そのとき銃撃による傷はもうふさがりかけていた。

そして三人が見たものはいつのまにか仰向けに倒れている女性の、焼け爛れた顔面を治療するティナの姿だった。
皮膚がただれ落ちてしまっているその両頬に、彼女は両手を当てた。掌からは溢れんばかりの優しい輝きが発せられている。
ティナは、三人を見て言った。
「大丈夫…、この人は悪い人じゃない。意識を取り戻したら必ず力になってくれるはず…。」
スコールは納得がいかない、といった表情でそれに反論する。
「俺達を殺そうとしたんだぞ?そいつは。」
「スコール、気持ちは分かるけどここはティナを信じてやってくれないか。」
「しかし…、!」

彼は反論する言葉を失った。今まで見たこともないような、マッシュの真剣なまなざしを見て。

「いいじゃない。」アイラも彼に言う。
「私はあの娘が間違った判断をするとは思えないわ。」

スコールは再びティナのほうを見て気付いた、彼女の強力な魔導の力に。
それはアルティミシアの悪しきそれとは違う、希望に満ちた力。彼女がいれば、奴とも対等に闘えるような気さえした。
「…分かった、信じよう」表情を変え、スコールは言った。


63:she is not dead 4/4
04/12/06 20:48:30 ud/J2Yaz
「ありがとう、三人とも。」治療を終えたティナは笑顔を浮かべて言う。
「私はいつでもあなたたちを見守ってる…、アルティミシアを倒してこの人殺しゲームを終わらせるまで!」

そう言ってティナは魔石に吸い込まれるようにして、消えていった。
まだ光が消えずぬくもりが残っている石を拾い上げて、マッシュは呟いた。
「そうだよな…、おまえはまだ死んでなんかいないよな…。」

「この石には…、一体どんな力が?」
「ああ、話そう。この娘もまだ目を覚まさないし。」

【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
 第一行動方針:ティファが目を覚ますまで魔石についての説明を聞く
 第二行動方針:ゲームを止める
 現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
 第一行動方針:ティファが目を覚ますまで魔石についての説明をする
 第二行動方針:ゲームを止める
 現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】










64:she is not dead
04/12/06 21:05:52 ud/J2Yaz
【ティファ(気絶)所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 現在位置:同上 行動方針:?】

度々すいません、連投もごめんなさい。次から気をつけます



65:殺姉愛 1/6
04/12/06 22:03:49 kORAoSZ6
レーベの村の南の森、さらにその奥深く、姉弟は対峙した。
一人はそれと知らぬままに…。

雷鳴の剣がうなる。
ミレーユの金髪が何本か、宙に舞った。
一撃を放った後の隙。そこに彼女の正拳突きが炸裂する。
「くっ…!!」
細身の腕から繰り出される予想外の威力に、テリーは顔をしかめた。
今度は距離をとり、体勢を立て直す。
だが、たったそれだけの短時間に、ミレーユは呪文を一つ唱え終えていた。
「バギクロス」
狙いはテリーではない。
彼が呪文をはじくことは、先の戦闘で思い知っている。
ではどこを狙ったのか、それは周囲にそびえる木々。
バギ系最大の呪文は、竜巻となって森の木々をなぎ倒す。
倒れる先には、血に飢えた肉親。
これ以上、弟に罪を重ねてほしくない。
止めなければならない、ただ一人の姉なのだから。
例え、殺してしまってでも…。
雷鳴の剣がいかに優れた剣であっても、全方向から倒れる木々全てをなぎ払えるものではない。
怒涛のごとき破壊の後、そこには張り詰めた沈黙が流れた。

はぁ、はぁ、はぁ…。
息が荒い。
倒れた木々から目を離せない。
あそこには、弟がいる。
助けて、ダメ、助けては、振り切りなさい、ミレーユ!!

66:殺姉愛 2/6
04/12/06 22:04:37 kORAoSZ6
何かを振り払うように、ミレーユは己で行った破壊の結果に背を向けた。
そして視界に映るのは、すでに事切れた男と瀕死の魔物。
ミレーユには、それは弟のもたらした破壊の結果だとしか映らなかった。
ならば、それまでに止められなかった自分にも責任があるのではないか。
私は、責任を取らねばならないのではないか。
弟が手を下そうとした魔物はまだ生きている。
彼女は手を差しのべてしまった。
事実は、彼女の結論とは多少ずれている。
けれど、ミレーユにそれを知るすべはない。
「大丈夫。…ごめんなさい」

そのとき、ピエールの意識は、またしても闇に囚われかけていた。
テリーの殺気により、主に対する忠誠心による気力のみで覚醒を果たし、さらには身を守る動きも出来た。
だがそれも限界に近づいてきている。
そこに、あたたかい、やわらかい光が降り注ぐ。
本来なら、どんな重傷の者でもたちどころに癒してしまう魔法の光。ベホマ。
今現在ではそこまでの効力もないが、ピエールの意識を完全に呼び戻すだけのことは可能であった。
「…よかった」
死より救い出してくれた女性は、ピエールの目にとても美しく映る。
けれど、彼の成すべきことは、一つ。
そっと、ザックの中に手を伸ばす。

その時…。

空に雷鳴が響き渡る。
と同時に眩いばかりの光とともに、天から一筋の雷が降り注ぐ。
雷は倒木を砕き、砂塵を撒き散らす。
それが晴れたとき、そこには一人の男の姿がある。
テリーは雷鳴の剣を高く掲げていた。

67:殺姉愛 3/6
04/12/06 22:05:38 kORAoSZ6
何をしようとしているのかはわかる。
雷鳴の剣をもう一度使うつもりだ。
選ばれし勇者しか扱えぬ雷の力を従えるつもりなのだ。
ミレーユは唖然と弟を見つめていた。
彼女とて雷鳴の剣の効力ぐらいは知っている。
けれど、手を下したはずの弟がまだ生きていることへの感情が、
喜びなのか悲しみなのか、あるいは恐怖なのかわからず、混乱している。
それが、彼女の行動を遅らせた。
テリーが雷鳴の剣を振り降ろす。

雷が落ちる。

ピエールはとっさに、しかし冷静に、伸ばした手の先のザックの中からいかずちの杖を取り出し、放り投げた。
その杖には雷鳴の剣と同じく、魔法の力が込められている。性質は多少違うが。
雷は宙に投げられたいかずちの杖に引き寄せられるように直撃した。
雷の力と炎の力が衝突する。
二つの魔力は集束し、そして大爆発を引き起こした。
「なっ…!!」
「あっ…!!」
「……」
爆発に怯むテリーとミレーユ。
しかしピエールはこの結果を予測している。
「今です!!!」
いまだ把握と理解と納得を出来ていないミレーユに、ピエールは言い放つ。
重傷を負っている自分では、怯んだ隙をうかがっても敵に一撃たりと入れられない。
ミレーユの混乱は、そしていまだ完全には整理の言っていない心は、まだ迷いの淵にいる。
けれどピエールの言葉は、迷いを持ったままのミレーユを決断の崖へと追い立てた。
もう、後戻りは出来ない…。

68:殺姉愛 4/6
04/12/06 22:06:44 kORAoSZ6
昔、魔王ムドーを倒し、ダーマ神殿を復活させたとき、ミレーユは願った。
仲間を守りたい。 …そして僧侶となった。
守り続ける力が欲しい。 …そして武道家となった。
二つの職を極めた彼女は、最後にこう願った。
守っていきたい。ずっと。だからもっと、力を。
(上級職たるパラディンならば、その願いをかなえられることもできよう)
(では、神官様。お願いします)

爆発による熱風は、まだ吹き荒れている。
テリーは体勢を立て直し、またこちらに向かってくる。
だが隙がある。
本人がそれと気づかず焦っている。
ミレーユは、胸の前で十字を切った。
(私は、守りたい。…テリー、あなたを…)
聖なる十字架、グランドクロス。
魔法ではない思いの力。
どうかこの光が、彼の闇を消してくれますように…。

光が晴れた。
砂煙も晴れた。
テリーは地に臥している。
息は、ある。
ミレーユは彼の元で膝を折った。
「何故、止めを刺さない…?」
「あなたを殺したいわけじゃない。止めたかったの。こんな方法しかなくて」
「…止めるだと?」
テリーは鼻で笑う。その行為さえ苦しそうだ。
「いったい何が目的だ?」
「テリー、思い出して。私は、あなたの…」

69:殺姉愛 5/6
04/12/06 22:08:13 kORAoSZ6
何か、鈍い音が聞こえた。
その音がしたとたん、ミレーユは言葉を紡がなくなった。
喉に剣が生えていては、人間であるミレーユは言葉を発することは出来ない。
剣が抜かれ、金の髪が舞う。
彼女は崩れ落ちる。
スライムナイトが、真新しい血を滴らせる鋼鉄の剣を持っている。
昔どこか見た光景だ。
細かくは違う。
その時彼女は喉から剣など生やしていなかったし、そこにいた魔物はスライムナイトでなかったと思う。
しかし感じた絶望は、同じ。
「…姉さん?」
その時倒れた女性を呼ぶ。
今倒れた女性と同じ、美しい金の髪を持っていた。
「…姉さん」
呼んでも返事がないのも同じ。
「姉さん!!!」
ピエールは、また別の血を求めて、鋼鉄の剣を振り下ろした。
何かが体を走る。
痛みではない。もっと熱い何か。
振り下ろされた剣は、先程までテリーの頭があったところに正確に破壊をもたらした。
テリーは避けた。
生への執着心が反射的に命を守った。
しかし代償を払ってだ。
リフレクトリング。魔法をはじく実用性の高い装備品。
それをはめた左腕。
もう、ない。
目の前にある金の髪。
その髪を持つ女性の命も、
もう、ない。

70:殺姉愛 6/6
04/12/06 22:09:25 kORAoSZ6
「う、わぁああああぁああぁぁーーーーーー!!!!!」
テリーは走った。逃げるために。
命を狙う魔物からではなく、失ったという事象それ自体から。
逃げても、逃げ切れるはずがないのに。
右手には、最強の部類に入る雷鳴の剣を握ったままだというのに。

ピエールは追わない。
そんな体力など残っていない。
だが体を引きずるながら、アイテムの回収もせずその場を去った。
初めは竜巻、そして雷、爆発。
全く派手にやったものだ。
どこでもいい、とにかくすぐにでも身を隠せる場所を探して。


※現在位置:レーベ南の森(南部)

【テリー(DQ6)(左腕喪失&重傷) 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:逃げる(走る)】

【ピエール(重傷)
 所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 魔封じの杖 ダガー 祈りの指輪
 第一行動方針:身を隠し、回復に徹する
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】


【ミレーユ 死亡 残り102人】

※ミレーユの所持品は放置
 戦闘音は激しく、レーベ村から南の橋あたりまで何らかの異変に気づけます

71:映像 1/2
04/12/07 23:58:05 6m+xuZxM

突如の地震。
ただ広い夕焼の中に浮かび上がった、邪悪な魔女の姿。
彼女が告げたあまりに多い犠牲者の名前の中に、リディアは有る筈の無い名前を聞いた。

「セシル…ローザ…どうして!?どうしてよ!?」
リディアは、泣き叫ぶ。それが何の効果をも彼女には与えてくれない事を知りながら。
邪悪な魔女の姿なんて見たくもない。
それ以上に、血に塗れた二人の姿も、見たくはない。
それでも、最も見たくない映像を、彼女の心は創り上げてしまっていた。

 恐怖に震えるローザ。
 彼女の前に、彼女を庇おうと立ちはだかるセシル。
 そして、血に濡れた槍を振りかざし、無表情のままにそれを二人に突き立てるのは、
 ―彼女のよく見知った姿だった。

「いやぁ!」
頭を抱え、その場に座り込むリディア。
まさか、とは思う。
でも、拭えない。
カインが二人を殺すという、何の裏付けも無い映像だけが、彼女の心の中で繰り返し流れていた。



72:映像 2/2
04/12/07 23:59:15 6m+xuZxM
「そんなはず…無いよ…そんな…」
魔法を唱詠するかのように口の中で繰り返す。
自分の考えを否定したい。
いっそ思考すら止めてしまいたい。
カインが殺したのだと思う自分が、憎かった。
それはカインに対する冒涜だから。
カインを信じていないことになるから。
仲間で有る筈のカインを…

『俺に構うな』
空虚なカインの声が、心の奥底に沈んでいった。

フラフラと、リディアは歩き出す。
誰に誘われた訳でもないのだけれど。
南へ。
セシルとローザの遺体が放置された、その場所へ。
何を感じたわけでもない。
ただ運命が彼女にそうしろと告げただけ。

リディアの瞳の中を、白い霧が揺らめいた。

【リディア(ショック状態?) 現在位置:アリアハン西の海岸→南へ 所持品:いかずちの杖、星のペンダント
 第一行動方針:南に行く 第二行動方針:カインを止める(?)】

73:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/12/08 01:33:54 Mfqtez5L
荒らさないで下さい。

74:『人殺し』 1/6
04/12/08 20:42:11 PxVlbdSO
「魔石、か……」
緑色に輝く石を見つめ、スコールは小さく息を吐いた。
ティナの魂が宿るそれは、安らぐようなぬくもりを残したまま、静かに明滅を繰り返している。
―人を殺した少女の化身とは、とても思えない。
(ティナ……誰があんたを狂わせたんだ?)
答えはない。それ以前に、問い掛ける気になれなかった。
聞いたところでどうしようもないし、何より、自分の考えを肯定されたくないというのもある。
「……ともかく、それを使えば彼女を幻獣として召喚できるわけだな?」
頭に浮かび続ける陰鬱な思考を振り払うために、スコールは今までの話題を思い返して言った。
「ああ。ただ、ティナ自身の意思が応じてくれた時じゃないと無理だ。
 無闇に呼んだら、ティナに負担がかかっちまう」
「でも、すごい力よね。あれほどの傷を治せるなんて……」
アイラが呟いた。(もっと早く気付いていれば……)と思いはしたが、言葉にはしない。
マリベルのことは、仕方が無かったのだ。
割り切れるわけではないが、そう思わないとやっていられなかった。

「う……ううん」
「おっ、お嬢さんのお目覚めだぜ」
マッシュの言葉に、アイラが顔を上げる。
「私が相手をするわ。二人は少し離れててくれない?」
「何故だ?」「なんで?」
首を傾げる男たち。彼女は大きくため息をついた。
「なんていうか、外見的に、ちょっとね。
 錯乱してる相手をこれ以上怯えさせたりしたら、余計に話がこじれると思うから」
「…………」
スコールとマッシュは憮然とした表情で顔を見合わせたが、反論はせず、大人しく後ろに下がった。

75:『人殺し』 2/6
04/12/08 20:45:16 PxVlbdSO
アイラの説得は、まあ、上手くいった方だろう。
少なくとも自分たちが敵ではないことを飲み込ませ、戦意を解く事には成功したのだから。
けれども、ティファが完全に納得したかと言えばそうでもない。
「火傷を治してくれたことにはお礼を言うし、戦う気がないってこともわかったわ。
 でも、あなたたちは人殺ししても生き延びるつもりなんでしょ? それで信用しろって言われてもね」
きっぱりと言い放つティファに、アイラも、話を聞いていたスコールとマッシュも眉をひそめる。
「人殺し? 俺たちが?」
「そうよ。黒髪の女剣士に、金髪の格闘家に、黒尽くめの男の三人組。
 あなたたちのことでしょ? 他に誰がいるっていうの?」
彼女がそこまで言った時、急にスコールが前に進み出て、彼女の胸倉を掴んだ。
「……もしかして、あんたにそれを教えたのは、コートを着てボウガンを持った茶髪の男か?」
呆れとも悲しみとも怒りともつかぬ表情で、スコールが問い掛ける。
剣幕に圧されながら、ティファはスコールの腕を振り払って答えた。
「確かに、コートに茶髪だったけど、ボウガンなんて見てないわ……その人がどうしたっていうの?」

「人殺しはそいつの方だ」

その意味が飲み込めなかったのか、彼女はぼんやりとスコールを見る。
それからしばらくして、苦笑を浮かべた。
「……嘘」
スコールは声を抑えて言葉を続ける。
「嘘じゃない。アーヴァインは、四人……最低でも二人は確実に殺してる」
「人違いよ、きっと。あの人はそんな人じゃないわ」
ティファは力なく反論したが、スコールの話は止まらない。
「そうかもしれないな。だが、俺とマッシュとアイラが一緒にいることを知っている人間は三人しかいない!
 そのうち二人は奴に殺された。生きているのは、あいつだけだ!」
「……嘘よ。本当に人殺しなら、私が生きてるわけないじゃない!」
「あんたに俺たちを殺させるために、わざわざ生かさせたんだ。
 その方が効率もいいし、手間も掛からずに済むからな!」
「違う! あの人はそんな人じゃない!
 だって、あんなに優しくて……火傷の手当てまでしてくれて……生きろって励ましてくれた!」
「騙されてるんだ、あんたは! いい加減に理解しろ!」

76:『人殺し』 3/6
04/12/08 20:49:03 PxVlbdSO
苛立ちのあまり、スコールは見えない壁に叩きつけるように拳を振った。
マッシュとアイラが、慌てて二人の間に割って入る。
「落ち着け、スコール! 彼女に当たってどうなるってんだ!」
「ティファさんが言うように、人違いって可能性もあるわ。
 もしかしたら、彼によく似た格好の人が、近くで私たちのことを見ていたのかもしれない」
(そんなこと、あるわけないだろ!)
スコールは唇をかみ締め、泣きそうな顔のティファを睨みつける。
―正確に言うなら、ティファの後ろに立つアーヴァインの幻影を。

「ともかく、早く戻りましょう。
 ラグナさんとイクサス君とエーコちゃんだったかしら、その人たちも心配していると思うわ。
 ……マリベルとティナの名前は、放送で聞いただろうしね」
「ああ」
アイラの言葉に、スコールは歩き出した。
少しばかり進んでから、唐突にぽつりと呟く。顔を前に向けたまま。
「……すまない。言い過ぎた」
「……」
「ただ、これだけは信じてくれ。俺たちは人を殺す気はない」
「………」
「生きるために剣を取ることはあっても、自分から誰かを殺そうとは思わない。
 例外は―アルティミシアが相手の時だけだ」
ティファは何も答えない。
ただ、彼女はゆっくりとスコールたちの後ろを歩き始めた。
―今は、それだけで十分だった。

77:『人殺し』 4/6
04/12/08 20:55:50 PxVlbdSO
それからどれほど歩いただろう。闇は濃さを増し、星はますます冴え渡った光を放つ。
ようやく、道の向こうに広がる木々の群れが見え―だが、四人の足はそこで止まった。
ぼんやりと光るランプの灯と、三つの袋を抱えた子供の影を認めて。
「イクサス!?」
スコールとマッシュが声を上げる。それが聞こえたか、人影は立ち止まった。
少し遠いが見間違えはしない。影の主は、確かにイクサスだ。
けれども、彼の口から返ってきた言葉は、誰もが予想しないものだった。

「近づくな、人殺しの仲間が!」

子供のものとも思えない、敵意に満ちた声が夜の森に響く。
「お前らを信じようとしたオレがバカだったよ……
 そうさ、人殺しの仲間は人殺しなんだよな! みんな……お前らのせいで殺されたんだ!」
「―みんな?」
嫌な予感が二人の背筋を捕える。
イクサスは憎しみのこもった視線を投げつけ、叫んだ。
「そうだ! マリベルも、エーコも、ラグナさんも!
 みんな、みんな死んだんだよ! お前らが見捨てたせいでッ!」

―時が凍りついた。ただ一人、イクサスを除いて。

「何でもっと早く戻ってこなかったんだ!? どうして、あの時行ったんだよ!
 みんな、お前らの帰りを待ってたのに……マリベルはお前らを心配して行ったのに……信じてたのに!」
「お前らがずっとここにいれば、みんな死なずに済んだ! お前らはオレたちを見捨てて、みんなを殺したんだ!」
「お前らの仲間も、お前らも、同じだ―人殺しだ!!」
「返せよ! マリベルを、エーコを……ラグナさんを返せよッ!!」
そして、どうしようもない悲しみと、やり場の無い怒りと、全ての憎悪を込めて、イクサスは言い放った。
「もう、他人なんか信じるもんか……お前らなんか死ね! 消えろ! 二度と姿を見せるなッ!」

誰も、彼の後を追うことはできなかった。
スコールも、マッシュも、アイラも、ティファも、イクサスの小さな影が闇に飲まれていくのを見守るしかできなかった。

78:『人殺し』 5/6
04/12/08 20:59:47 PxVlbdSO
森の中、ギルダーは静かに剣を拭いていた。
刀身を濡らす血糊は、髪飾りをつけた少女と、中年の男のものだ。
この二人と、逃げた少年。詳しいことはよくわからないが、どうも自分を助けようとしたらしい。
誰かに襲われて気絶した被害者だと思い込み、魔法まで使って手当てをしたようなのだ。
本当は、疲れのあまり気を失っていただけで―誰かに襲われたも何も、襲撃者は自分だと言うのに。
全くバカな連中だ。
しかし、失われた体力も戻り、おまけに二人も仕留められたのだから、そこは感謝するべきかもしれない。
少年を逃したのは残念だったが……

『マリベルに頼まれたからなぁ! イクサスまで殺させるわけにはいかねぇんだよ!』

―ふと、男の最期の言葉が脳裏に浮かぶ。
武器も何もないくせに、少年を逃がすためだけに自分に挑みかかった男の言葉が。
少女を殺された時点で大人しく逃げ出していれば、もしかしたら助かったかもしれないのに。
「……本当に、バカだな。あんたも、そこのお嬢ちゃんも」
ギルダーは呟いた。その声には、少し、疲れたような響きが混ざっていた。
「はは……俺の方がもっと大バカか。なぁ、サラ、サックス。
 ……でも、止まるわけにはいかないし……もう、止まれないよ」
ギルダーは帽子を被りなおし、立ち上がる。
夜という狩り場で、犠牲者という名の新たな獲物を探すために。

79:『人殺し』 6/6
04/12/08 21:03:58 PxVlbdSO
【イクサス(人間不信) 所持品:加速装置、ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット
 行動方針:一人で生き残る 現在位置:アリアハン東山脈中央部→北へ】

【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
 第一行動方針:不明 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 第一行動方針:スコールたちについていく(?) 第二行動方針:不明】
【現在位置(四人共通):アリアハン東山脈中央部の森】

【ギルダー(MP消費) 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
 現在位置:アリアハン東山脈中央部の森・川辺付近→移動
 第一行動方針:ゲームに乗る 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】

【ラグナ 死亡】【エーコ 死亡】
【残り100人】

(*金の髪飾りはラグナ&エーコの死体と共に東山脈中央部の森・川辺付近に放置)


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