04/11/16 22:58:00 RbGkzQEy
残された魔石を挟み、対峙する二人。
だが、静寂を破ったのはどちらでもなかった。
「動くな、アーヴァイン」
アーヴァインにとっては懐かしく、最も聞きたくなかった男の声が背後で響く。
彼はアイラに視線を向けたまま答えた。
「スコールか。ずいぶん近くにいたんだね~。
まだティナが生きていた頃に会いたかったよ」
「てめえが殺したくせにッ!」
怒りをあらわにするマッシュを制しながら、スコールはアーヴァインにナイフを向ける。
「なぜ、こんなことをした? ゲームに乗る理由はなんだ?」
「最期に聞いておいてやるってわけ? 優しいね、スコールは」
アーヴァインは小さく笑った。殺気の渦中にいながらさも愉快そうに、挑発するように。
それが急に真顔に戻る。
「期待に添えなくて悪いけど、理由なんて大したことじゃないんだ」
「……何だと?」
スコールの目がすうっと細まり、マッシュの怒気が高まった。
一触即発の雰囲気の中で、アーヴァインは言葉を続ける。
「忘れたのかい? 僕はスナイパーで傭兵だよ?
依頼されれば誰でも殺す。任務達成のためなら何でも使う。遂行に邪魔なら排除する。それだけの話さ。
君たちみたいに奇麗事や甘いこと言ってる余裕なんて―ないね!」
それが合図だった。マッシュが、スコールが、アイラが同時に躍り掛かる。
けれどもアーヴァインはスライディングするように身をかがめ、素早く大剣と小手を拾い上げると、斜め前へ一気にジャンプした。
アイラの身長どころか木々の背丈よりも高く飛び上がり、空中で回転しながらボウガンの狙いを定める。
その矢が、不意に漆黒の色を帯びた。
「じゃあね」
何の躊躇いなく引き金を引く。暗黒の波動を帯びた矢は、狙い違わずアイラの背へ―
「ふざけるんじゃねえ!」
だが、その時マッシュが両手から光輝くオーラを打ち出した。
黒と白、二つの色はぶつかり合い、互いに相殺して消滅する。
450:本当の自分 2/3
04/11/16 23:01:33 RbGkzQEy
「あらら~……無茶やるなぁ」
三人の包囲を抜けて着地したアーヴァインは、ぽつりと呟いてから踵を返す。
「待ちなさい!」
「やだよ~だ。三対一なんて無謀な真似するほど馬鹿じゃないもんねー」
迫るアイラをボウガンで牽制しつつ、アーヴァインは再び飛んだ。
山の急斜面を飛び越えて、はるか下の道へと姿を消す。
「……アーヴァイン」
スコールは悲しげに彼の名を呼んだ。仲間であり旧友『だった』、青年の名を。
マッシュは、少女が残した緑石を手にした。その深青色の瞳から、涙が静かに零れ落ちた。
上手く三人から逃げおおせたアーヴァインは、すぐに山道を下ろうとした。
だが、数歩歩いたところで足がもつれて転んでしまう。
「うーん。やっぱこの高さだし、無理がきたかな?」
彼は頭を掻きながら立ち上がり、再び歩き出す。だが、またもやよろめき、バランスを崩してしまう。
ふと、手を見た。小刻みに震えていた。いや、手だけでなく足も、全身が。
呼吸は荒く、心臓は早鐘を打っている。何より、耐えがたい後悔と悲しみが胸に渦巻く。
―孤児院の仲間と離れ離れになった時もこうだった。
デリングシティでイデアを狙撃した時もこうだった。
人前で自信家を装うことはできても、一人になると臆病な自分が噴出してしまう。
大切な人を傷つけないといけない時、気弱な本性が垣間見えてしまう。
一度そうなると止まらない。どうしようもなく辛くて、心が悲鳴を上げて崩れそうになる。
だが、彼の場合、壊れてしまうには意思力が強すぎた。それ以上に記憶に残る少女の笑顔が、狂うことを許さなかった。
(……僕は彼女に会うんだ。もう一度、あの青いガーデンで。
そう決めた……決めたんだ。誰の意思でもない、僕自身の意思で。
だから迷わない。今さら迷ってたまるものか)
己の弱さを噛みしめながら、それでも自分の願いを叶えるため、アーヴァインは立ち上がる。
繊細で弱気な少年から、殺人者のそれへ戻りつつある瞳が、道を上ってくる人影を捉えた。
相手は一人、頭巾をかぶった少女だ。
「スコール達が追ってくるまでに片付けられるかな?」
彼はシニカルな笑みを浮かべながら、ボウガンを構えた。
451:本当の自分 3/3
04/11/16 23:04:34 RbGkzQEy
【アーヴァイン 状態:HP4/5程度
所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ グレートソード ミスリルの小手
第一行動方針:時間があればマリベルを殺す 第二行動方針:ゲームに乗る
現在位置:アリアハン東山岳地帯、森とほこらの中間辺り】
【マリベル 所持品:セイブ・ザ・クイーン(FF8)、アポロンのハープ
第一行動方針:スコールとマッシュを連れ戻す、戦いは極力避ける
現在位置:アリアハン東山岳地帯、森とほこらの中間辺り】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング
第一行動方針;アーヴァインを追い、止める
現在位置;アリアハン東山岳地帯、ほこらの近く】
452:叶わぬ願い 1/4
04/11/17 01:29:51 BgDD+hv3
マチュアはスミスを探し、城内の探索を続けていた。緊張から額には冷や汗が浮かんでいる。
…万が一襲われても、城内には逃げ場が少ない。危険も大きいことはわかっている。
それでも、スミスがここにいる可能性もある以上、素通りするわけにはいかなかった。
もちろん、それぞれの部屋に人がいないかどうかは十分注意しているし、両手でスナイパーCRをしっかりと握っている。
(一階には、誰もいない…?)
…城内、少なくとも一階は、不気味なほどに誰もいなかった。
ひとつだけ気になったことといえば、半分凍っている部屋があったことぐらい。
しかし、やはりというべきかその部屋にも誰もいなかったし何も無かった。
(二階…階段が直接、王室に繋がっているのね…)
マチュアは緊張しながら、恋人スミスを思いながら、二階への階段を上がった――上がりきった、その時。
突然、彼女の手首に衝撃が走った。――スナイパーCRが弾かれたのだ。
マチュアは弾いた主を確認する事もなくあわててそれを拾おうとするが、
目の前で振り下ろされた氷の刃がスナイパーCRを叩き割った。
青ざめながらも、顔を上げ、相手の顔を確認するマチュア――刃の主は――骸骨のような男。
「ふむ…そのような武器は…あまり美しくもないな…」
骸骨の男は一瞥するとマチュアに向き直り、氷の刃を構えなおした。
「…い、いやああああああっっ!!」
マチュアの心を、恐怖が支配した。――男が凶器を持って…自分を殺そうとしている――!
咄嗟に聖水を取り出し、蓋を開けようとするがそれもまた、氷の刃によって弾かれ、床を滑る。
今度は狙いが多少外れたのか、それともわざとなのか。マチュアの手が少し切れ、鮮血が飛び散った。
「ふむ、またも…必死で抵抗する娘か。見目は美しいというのに勿体無いものよ」
「…いやああああ!!スミス、助けて…!!」
…マチュアは、自分の悲鳴の中で倒れた。
ハインが攻撃したわけではない。追い詰められ、死の迫る状況、恐怖のあまり失神したのだった。
「美しい血だ…このまま、美しい死を…」
ハインは、床に倒れたマチュアへとゆっくりと歩み寄り氷の刃を静かに向けた…しかし。
453:叶わぬ願い 2/4
04/11/17 01:31:42 BgDD+hv3
「やめろーーーーっ!!!」
静かな部屋に突然の乱入者。マチュアの悲鳴を聞きつけたジオが、階段を上がってきたのだ。
ジオは一目で状況を理解し――ハインが振り向いたときには、既に床を蹴っていた。
「…愚かな!」
ハインが邪魔された怒りで顔を歪め、氷の刃を振るう。とはいっても、人間の物ではない顔からは表情はわからないが。
今度は先程のようなゆっくりとした動きではない。迫りくるジオを狙い、素早く正確に振り下ろす。
「くっ!」
氷の刃は、空中で後方へと飛びのいたジオの、すぐ目の前を斬った。
着地したジオを狙い、ハインはさらに刃を振るう。
一瞬早く床を蹴り、横様に飛び避けたジオは――ハインに向かって小さな袋を投げつけた。
「これでも…くらえっ!」
ドリームパウダー。
体制を崩しながらも狙いは外れることなく、袋はハインの骸骨顔の辺りに直撃し、そして。
「ぐあああああっ!」
息苦しい香りの粉が大量に舞った。ハインが悲鳴を上げ、顔を抑えた。
(チャンスだ!)
ジオは急いでマチュアを背負い、ほとんど飛び降りるように階段を降りていく。
完全に意識を失っている女性、この状況で連れて逃げるのは危険だがそれでも、助けないわけにはいかない。
一階は、先ほど見た限りでは四角が多かった。大丈夫、隠れられる。
(まずはこの女性を安全な場所に隠して…それから、あいつを何とか)
そう思考しながら、一階の廊下へと着地した、その瞬間。
――ざくり。
ジオは、嫌な音を聞いた。
454:叶わぬ願い 3/4
04/11/17 01:32:54 BgDD+hv3
「…ぐっ、あ…? …!げほっ、がはぁっ…!」
マチュアを背負ったまま、崩れ落ちるジオ。
口と身体からとめどなく血が溢れ出し、床を汚していく。
背後から投げられた氷の刃がマチュアの背中を貫通し、ジオの腹の辺りに深々と突き刺さっていたのだ。
(…まさか…効いてなかったのか…?後ろから、こんなでかい剣を投げ…)
ぼんやりとする意識、動けなく、振り返る事も出来ない上に視界は掠れてきていたが…わかった。
あいつが、ゆっくりと階段を下りてくることを。――自分にとどめをさしに来るのだ。
いや、もう相手はすぐそこに迫っていた。自分の身体から刃が引き抜かれたのがわかった。
(…やばい、立てねえよ…アルカート…)
ここで、死ぬのか。彼女に、思いを伝える事も出来ずに。
…何をやってたんだ、俺は…アルカートを守るどころか、この女性さえも守れないで…。
「ごめん、アルカート…」
ジオが呟くと同時に、氷の刃がジオの身体を完全に貫いた。
彼の身体が停止する直前、閉じかけた目から涙がこぼれたが――それを見るものは、いなかった。
「………」
ハインは二人の死体を前に、とてつもない怒りだけを感じていた。
見目では怒っているとはわからないのだが、周りの空気がピリピリとしている。
ドリームパウダーのような、対外ではなく体内に直接ダメージを与えるものは、今のハインにはほぼ無効だったのだが、
ハインにとっては、自分の顔に粉を投げつけられた――その事実だけが問題だった。
怒りの対象、ジオは既に死んだというのに…その怒りは収まらないようだ。
「…許せぬ…許せぬぞ…」
ハインは怒りの発散を求め、すぐ目の前の城門を通っていく。
後には、ハインに蹴り飛ばされた、ジオとマチュアの無残な死体だけが残った。
455:叶わぬ願い 4/4
04/11/17 01:33:42 BgDD+hv3
【ハイン 現在位置:アリアハン城下町へ 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪 行動方針:殺戮】
【マチュア 死亡】
【ジオ 死亡】
※放置アイテム※グラディウス、おしゃれなバンダナ、首輪×2、聖水、ミスリルナイフ
【残り 109人】
456:訂正
04/11/17 01:37:19 BgDD+hv3
※放置アイテム※グラディウス、おしゃれなバンダナ、首輪×2、ミスリルナイフ
です。
457:トンベリ、改め …… のにっき 1/2
04/11/17 17:43:27 hQjf3mCy
こんにちは、トンベリです。
てりとれくすのおかげで、ぼくのほうちょうが戻ってきました。とっても嬉しいです、
ぼくはれくす達に、おれいの長い剣をあげました。れくすは喜んでくれました。
そのあと、『せしる』というお兄さんに会いました。
『ろざ』というシロマドウシなる人を探しているそうです。
せしるさんはとても寂しそうでした。早く、ろざさんが見つかるといいです。
それから、てりがぼくに名前をつけようとしました。
後ろでれくすが「とんぬらがいいなぁ……」と小さな声で言いました。
そのせいか、ぼくの名前は『トンヌラ』になりました。
てりは見た目よりいい人です。れくすはいい人だけど、ヘンな人です。
その後ぼくたちは色々話し合って、お城へ行くことにしました。
夜になれば、きっとみんなお城に泊まりに来ると思うからです。
けれど、れくすがいうには、危ない人もいっぱい来るかもしれないそうです。
危ない人は怖いです。
でも、さっきのせしるさんみたいに優しそうな人も来るかもしれないです。
危ない人より、優しい人に会いたいです。
なんて思っていたら、町の入り口の近くで、緑の女の人とすれ違いました。
女の人はぼくたちに気付かない様子でした。何か考え事をしていたのかもしれません。
ろざさんと、わたぼうさんと、れくすのお父さんたちのこと聞きたかったんですけど、なんだか深刻そうなので話しかけるのを止めました。
優しくて、気軽に話しかけられる人に会いたいです。
458:トンベリ、改め …… のにっき 2/2
04/11/17 17:57:12 hQjf3mCy
町の中に入ったところで、きれいなお姉さんと怖そうなお兄さんに会いました。
お姉さんは「まあ、可愛い魔物さんね」といって、ぼくの頭をなでてくれました。
怖そうなお兄さんは、れくすとてりに何か話してました。
あとでてりに聞いたら、『この近くにヒトゴロシがいるから、外に出る時は気をつけろ』と教えてくれたそうです。
二人ともとてもいい人です。
それから、お姉さんが「銀髪の男の人を見ませんでしたか?」と聞いてきました。
ぼくはせしるさんのことかと思ったのですが、違うらしいです。
お姉さんは『ろざり』さんで、お姉さんが探してる人は『ぴさろ』さんと言うそうです。
ろざりさんとろざさん、名前が少し似てるです。間違えないように気をつけたいと思います。
ぼくたちもお兄さんとお姉さんにみんなのことを聞いてみましたが、「知らない」と言われてしまいました。
お兄さんいわく、『チズノシュクシャク』からするとアリアハンはかなり広いので、無闇に歩いても知り合いと会える確率は低いらしいです。
じっとしていた方がいいのでしょうか? でも、危ない人や悪い人がやってきたらじっとしているわけにはいきません。
ぼくがそう言ったら、れくすが「悪い人は皆でやっつければいいんだよ」と言いました。
ほうちょうもあるし、悪い人がきたらがんばってやっつけようと思います。
お兄さんとお姉さんは、これからしばらく町の中を回り、どこか空いている家で休むつもりだそうです。
……ぼくたちはどこにいきましょう?
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【レックス 所持品:天空の剣 オーガシールド
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
現在位置:アリアハンの城下町入り口
第一行動方針:わたぼうとレックスの仲間を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【サイファー 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
【ロザリー 所持品:不明
現在位置:アリアハンの城下町
第一行動方針:ロザリーを手助けする/ピサロを探す 第二行動方針:ゲームから脱出する】
459:↑の修正です
04/11/17 17:58:35 hQjf3mCy
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【レックス 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
現在位置:アリアハンの城下町入り口
第一行動方針:わたぼうとレックスの仲間を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
460:偵察者
04/11/17 18:44:45 Xp2dpcgG
「二人、死んだか。あの銀髪の二人組がやったのか?やつらには要注意だな」
男はナジミの塔の最上階で先ほどのセシルとガーランドの戦いの一連の流れを見ていた。
名をアルガスといった。没落した貴族の一族の末裔である。
初めは自分で他の全員を殺そうと考えていた。が、様子を伺っている内に、
竜王のように1対1ではとうてい勝てそうもない参加者がいると分かった。とるべき行動は決まった。
他人を利用するのだ。残りの数人となるまで。そして、消耗したところを狙って殺す。
あとは、それまでに集めた道具を駆使して勝ち抜けばいい。自分が動くのは、最後の最後でいいのだ。
どこの馬の骨かも分からない連中と一時的にでも組むのは正直反吐の出る思いだったが、生き残るためには仕方がない。
できるだけ強く、ゲームに乗っていない人物で、そして裏切りが容易そうな人物を探そう。
支給品は2つ。目薬草。「見る力」を最大限に引き出すことができる。
もう一つは地獄耳の巻物。「聞く力」を最大限に引き出すことができる。
そしてここはナジミの塔。大陸の半分を見渡すことが出来る。
偵察には最高の状況と場所がそろっている。ここでなるべく多くの参加者のデータを集めておくのが得策というものである。
「俺は貴族だ、こんなところで死んでいい人間じゃない。何が何でも生き残らなければならないんだ。
愚民共、せいぜい殺し合うがいいさ、だが、最後に笑うのはこの俺だッ!」
【アルガス 所持品:無し 現在位置:ナジミの塔最上階 行動方針:偵察し、使えそうな人物をこのステージの間に捜す
第二行動方針:多くのアイテムを集めておく 最終行動方針:どんな手を使ってでも生き残る】
※視力と聴力が大幅に上がっています、ナジミの塔のある湖周辺の平原あたりならはっきり見えます。
階下の音あたりもはっきりと聞こえます。
効果はステージを移動するまで持続。
461:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/17 18:53:19 /6raq2pD
ベアトリクスの血は昂ぶった。
たった今、彼女は変わったのだ。
アレクサンドリア王女ガーネットに仕える騎士がひとたび汚れた指輪を身につけたときから、
荒れ狂う暴政のもとに仲を引き裂かれた男女の怨念の乗り移った修羅となった。
君主の衣を身にまとい、神々しい光沢を備えた剛剣を手にして。
慣れた冒険者も寄せ付けないほどの険しい山岳地帯も、彼女の猛る足踏みはまるで意に介しなかった。
荒涼とした山地はもうすぐ終わる。下山すれば平坦な草原が続く。
ベアトリクスはひっきりなしに四方八方を見ながら進んだ。
それは殺す相手を探すために。
運命に翻弄され運命による犠牲者となった恋人たちの恨みの魂を、惨劇によって静めるために。
【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態) 現在位置:大陸西の山岳地帯から東へ
所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、真魔剛竜剣+99
462:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/17 18:54:49 /6raq2pD
行動方針が抜けてた。
【ベアトリクスの行動方針:参加者を見つけたら殺す。】
では失礼
463:>>457 修正
04/11/17 20:07:15 hQjf3mCy
>なんて思っていたら、町の入り口の近くで、緑の女の人とすれ違いました。
>女の人はぼくたちに気付かない様子でした。何か考え事をしていたのかもしれません。
>ろざさんと、わたぼうさんと、れくすのお父さんたちのこと聞きたかったんですけど、なんだか深刻そうなので話しかけるのを止めました。
>優しくて、気軽に話しかけられる人に会いたいです。
以上、四行の脳内削除をお願いします。重ね重ね申し訳ありません。
464:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 14:44:18 9Ak/+Iok
このスレは重複じゃないの?
誘導
スレリンク(ff板)
465:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 15:43:16 FivVvRzg
スレタイだけで判断するとはこれまた乙な
重複でなく並行進行
466:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 18:26:33 StGhCGBo
>>461を修正します。
【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態) 現在位置:大陸西の山岳地帯から東へ
所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、アルテマソード
行動方針:参加者を見つけたら殺す】
467:レーベ村宿屋にて 1/6
04/11/18 20:36:21 XT6rodJF
「どうなんだ?助かりそうか?」
「…なぜか、回復魔法の効きが悪くて…でも、とりあえず傷はふさがりました。
まだ目は覚まさないだろうけど、死ぬ事はないと思います」
「そうか、よかった…」
ほっと息をつくロックに、ソロも、汗を拭いながら笑った。
テリーとの戦いで重傷を負ったヘンリーは今、宿屋のベットに寝かされている。
ここに担ぎ込んだとき、ヘンリーは完全に意識を失い―もう先程のような悪態をつくこともなく、顔色も真っ青だった。
それを見たロックはほんの一瞬だけ、もう駄目なんじゃないかとも思ってしまったが。
ソロが汗を流しながら必死で回復魔法を重ねがけしていくうちに、少しずつ顔色がよくなっていった。
苦しげだった表情も今は緩んでいる。ひとまずは助かったのだ。
「というか、アンタも大丈夫か?休みなしで魔法を…」
「さすがにちょっと疲れましたけど…大丈夫ですよ、ヘンリーさんが助かったんですから」
ソロはそう言いながら、にっこりと笑い…そして、そのまま思い出したように続ける。
「そうでした、ロックさん、さっきは助けてくれてありがとうございました」
「……いや、気にしないでくれよ。助けたって言っても結構危なかったしな」
ロックはそう、答える。…危なかった。いちかばちかの勝負だったのだ。
上手く隙ができなければ自分の体当たりなど全く効かなかっただろう。
それに、攻撃は成功したがヘンリーは重傷を負ってしまった。
完全にやる気になっている…とんでもない相手だ。―そういえば。
「…あの女の人、大丈夫ですかね…」
―ロックの心の中を読んだかのように、ソロがぽつりと呟いた。
468:レーベ村宿屋にて 2/6
04/11/18 20:37:44 XT6rodJF
「どんな関係なんだろうな…あの人に、あいつ…止められるんだろうか」
「……わからないけど…きっと、すごく大切な関係なんでしょうね…」
ソロはどこか遠くを見るような、少しだけ悲しい目で言う。
なにか、大切なことを忘れてしまった男は、あの女性を振り切り殺戮を繰り返すことになるのだろうか。それとも。
「いや、きっと大丈夫だ。あいつに斬られたヘンリーが言ってただろ。
あいつ、忘れたつもりでも覚えてるんだって。…あの人なら、きっと止められる」
「そう、ですね…。きっと、また会えますね」
ヘンリーの言葉なんて何の根拠も無いのだが…そう結論付けたのはやはり、希望を掴みたい気持ちがあるからだ。
「そうそう、次にあいつに会ったときは俺が直々に一発お返ししてやる…」
「…ヘンリーさん!?」「うぉっ!だ、大丈夫か?」
いつの間にか意識の戻ったヘンリーが、まだ少し苦しそうな表情だが―二人を見て、言った。
「ははは、あれぐらいで俺が…っ…ゲホッゴホッ」
「って、無理しないで下さいよ!」
「はは…」
ヘンリーの異常とも言えるほどの生命力に、苦笑するロックだった。
469:レーベ村宿屋にて 3/6
04/11/18 20:38:34 XT6rodJF
その後、三人であれやこれや話し合い、今晩は日没後もこのままここで過ごそうということになった。
村の宿屋なんて危険度も高そうだが…城下町よりは人も集まらないだろう。
なにより、下手にヘンリーを動かすわけにもいかないというのがあった。
万一襲われたらその時はその時だ、こちらだって黙ってはいない。
「この狭い部屋に男三人で夜…むさいな…」
「仕方ないだろ、俺だって嫌だ」
「あのー」
ソロが苦笑いを浮かべながら、告げる。二人の会話にはひとつ間違いがあった。
「三人じゃなくて、四人でしょう…」
「…あ」
ロックとヘンリーは、ソロに指摘されてようやく気付いた。
三人から離れたところに座り込み――じっと、こちらを見つめている青年の存在。
同じ部屋にいるのにも関わらず忘れていたとは失礼な話ではあるが、仕方のないことかもしれない。
何しろこの青年は、何も話さない、動かない。本当にただ、そこにいるだけなのだ。
「あー…アンタは、どうするんだ?」
ロックは少々気まずそうに口を開いた。しかし、青年は問いに答えない。眉一つ動かさずじっとこちらを見ている。
…よく、聞こえなかったんだろうか。青年に近づき、視線を同じ位置に持っていくように屈む。
「今さ、ヘンリーが動けないし、今晩はこのままここにいようってことになったんだよ。でもアンタは…えっと、名前…」
「…フリオニール」
青年は依然変わらぬ無表情で、機械的に名を告げた。
「…フリオニールは、どうするんだ?」
「…… …わからない」
470:レーベ村宿屋にて 4/6
04/11/18 20:39:22 XT6rodJF
……。
あまりにも的外れな答えに、ロックは思わずずっこけそうになった。
わからない?何だそれ。…俺がわからないのは、こいつ―フリオニールだ。そう、最初に会ったときから。
どうしたとたずねれば、機械的な答えが返ってくる。どうするとたずねれば、答えは返ってこない。
これではまるで、自分の意志を持たない人形だ。
(心が、無い?いや、まさか…)
しかし、放っておくわけにもいかない。気を取り直し、続ける。
「別に用事が無いんだったら、ここにいればいいだろ。外は危険だしな」
フリオニールは少々間を開けてから、黙ってうなずいた。…了承したらしい。
(なんか、子供と話してるみたいだな)
しかし、目の前にいるのは紛れもなく青年だ。とはいってもソロと同い年ぐらいだが…調子が狂う。
「…そういえば、盾借りっぱなしだったな、返しておこうか」
と、ザックの中から、ひとまずしまっておいた天空の盾を取り出し―
ごとり、と音を立てて落とした。
「な、何だ?重…っ!」
呆然とそれを見つめる。いや、この盾は元々重かったが。まともに持ち上げられないほどに重くなっている?
「あ、ロックさん!その盾は僕の…」「そうだ、ロック!その盾はレックスの…」
ソロとヘンリーが同時に声を挙げ、その後顔を見合わせた。
「よくわかんないけど、特殊な盾なのか?俺には重くて使えなくなってるし…」
「……」
いつの間にかフリオニールが床に落ちた盾を拾っていたが、やはり彼にもまともには持ち上げられないようで、
黙ってそれをソロに手渡した。―ソロは、容易く盾を手にする。天空の勇者、資格あるものの手に戻ってきたのだ。
「天空の盾…。ヘンリーさん、レックスさんって?」
「いや…う~ん、天空の勇者が二人いたとは…」
ヘンリーがベットの中で頭をひねる。天空の盾は間違いなくソロの手の中で本物の輝きを放っているが、
レックスも天空の勇者だ。…ヘンリーはソロに、レックスの事をはなしはじめた。
471:レーベ村宿屋にて 5/6
04/11/18 20:40:42 XT6rodJF
ソロとヘンリーが話し込んでいる。
することのなくなったロックはふと、フリオニールに提案を持ちかけた。
「すぐ隣に武器屋があったはずだけど、武器調達でも行くか?」
盾がなくなってしまったフリオニールに対する配慮だろう。
フリオニールはまた黙ってうなずいた。ロックは二人にそのことを告げる。
「わかりました、気をつけて下さいね」ソロが返答した。
「大丈夫、本当にすぐ隣だ」
そうして、ロックとフリオニールは隣の武器屋で安物の剣を調達するのだが―
二人の背中を、村の奥から見つめる視線があった。冷酷な笑みを浮かべる女性。
宿屋のカウンターに戻ってきたロックは、フリオニールを見て苦笑した。
「きっと平和な田舎町なんだな…それぐらいしか武器がないとは思わなかった」
フリオニールの手には、一目で安物とわかるような銅製の剣が握られている。
彼自身は相変わらずロックの言葉に対しては完全に無反応だが。
(またか…何考えてるんだろうな…)
ぼんやりとそう思いながら、ドアに手をかけようとして―ロックはそれに、気付いた。
明らかな殺気…?いや、狂気…とも言えない、何となく覚えのある気配。
クリスタルソードに触れながら、後ろを振り返る。
操りの輪をつけたビアンカが、宿屋の入り口に立っていた。
472:レーベ村宿屋にて 6/6
04/11/18 20:42:11 XT6rodJF
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 行動方針:ビアンカ警戒】
【フリオニール(感情喪失) 所持品:銅の剣 行動方針:ロックについていく】
【ビアンカ(暴走状態:操りの輪を破壊すれば状態回復は可能)
所持品:操りの輪、 ファイアビュート 第一行動方針:リュカ、子供達以外の全員を殺害】
*現在位置:レーベの村宿屋1Fカウンター
【ソロ(MP消費・疲労) 所持品:さざなみの剣 水のリング 天空の盾 行動方針:ヘンリーに付き添う】
【ヘンリー(重傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 行動方針:傷の治療】
*現在位置:レーベの村宿屋1F
(ロック達のドア一枚向こう、戦闘が起こればすぐ気付くと思われます)
473:神様と元召喚士 1/2
04/11/18 23:17:46 Qe1iK5Jy
「困ったことになりましたね……」
男は空を仰ぎ見ながら、ぼんやりと呟いた。
彼の名はマスタードラゴン。
天空の城にて世界を見通し、地上を護り続けている竜神である。
―本来ならば。
「どうしたんですか、プサンさん?」
隣を歩いていた女性、ユウナが首を傾げる。彼は苦笑しながら答えた。
「いや、今の状況のことですよ。私、この通り戦闘やら何やらは苦手でして。
お恥ずかしい話ですが、剣もまともに振るったことがないのですよ」
彼にはわかっている。目の前にいる女性が、次元すらも違う異世界に住む人間だということに。
だから本当のことは話さない。いつも通りにプサンという仮初の名を使い、市井に生きる人間らしくふるまう。
もっとも、こんな場末の酒場のバーテンダーとしか見えぬ中年男の風体では、正体を打ち明けたところで狂人扱いされて終わりだろうが。
「大丈夫、いざと言う時は私に任せてください。
戦えない人を守るのも、お助け屋カモメ団の役目です!」
プサン=マスタードラゴンの考えなど知る由もないユウナは、はりきって胸を叩く。
「頼もしいお言葉ですねぇ。お嬢さんのような方と出会えて、心強い限りですよ」
そう言って笑いながら、彼は心の中で自嘲した。
(本来ならば、私の方が罪なき人々を助けてやらねばならぬというに……我が身ながら何と言う不甲斐なさだ!
せめてドラゴンオーブが手元にあれば、脱出は無理でも、首輪の解除ぐらいできるものを)
会場のどこかに、己の竜神としての姿と力を封印した宝珠が眠っている。それは間違いない。
だが、どこにあるのか、誰が持っているのかまでは、今の彼ではわかりようがない。
(何も知らぬ人間が持っているなら構わない。だが……もし、オーブが悪しき心を持つ者に渡っていたら?)
考えかけて、プサンは首を振った。
考えてもどうしようもない。
自分がやるべきことは、一刻も早くオーブを取り戻すこと。それだけだ。
474:神様と元召喚士 2/2
04/11/18 23:20:19 Qe1iK5Jy
【ユウナ(ジョブ:魔銃士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
第一行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人は率先して助ける 第二行動方針:ゲーム脱出】
【プサン 所持品:不明
第一行動方針:ドラゴンオーブを手に入れる 第二行動方針:心正しい人達を助ける】
現在位置:岬の洞窟北西の海岸付近
475:保管庫改 1/4
04/11/19 01:31:17 sQJn9ASJ
「指笛?」
「そうッス。こうやって指を口に入れて…吹く!」
シューッ、と空気の抜けた音だけがする。
「うーん、出来ない」
蒼い髪の少女は、既に笑顔を取り戻していた。
「諦めちゃ駄目ッスよ」
ティーダとターニアが、まるで兄妹のように、指笛を練習している。
あんな妹がいたら良かったと、エアリスは思った。
平和、だった。彼女が現れるまで。
森を行く一つの影。
ティファは、森の暗がりの中を歩いていた。
右手には銃。
―何を狩る訳でも無く。防衛手段だと、自分に言い聞かせて。
レーベを出て、何時間か歩いた。
鬱蒼と生い茂る森。ここで何を見つけることになるだろう。
その時はまだ、あまりの緊張感からか、近くにいる三人には気づいていなかった。
「誰か近づいてくる…?」
エアリスが、何者かの気配を感じた。
その方向を見やると、タンクトップ、長い髪の女性…
見覚えのある、姿だった。
「ティファ!?」
エアリスは叫んだ。
…それが、不幸の始まりだった。
476:保管庫改 2/4
04/11/19 01:34:17 sQJn9ASJ
狂気のゲームで。命が惜しくて。
極度の緊張感の中で声を掛けられ、とっさに行動を起こした。
声を掛けたのがエアリスであることに気づいたのは―
―ティファが振り向きざまに放った弾丸が彼女の胸を貫通した後だった。
「あっ…」
血飛沫が、エアリスの胸部から飛び散る。
…一瞬の、静寂。
「何するんッスか!!!」
ティーダの怒号が、立ちすくむティファに浴びせられる。
「きゃぁぁぁっ!」
蒼い髪の少女の悲鳴がまた、ティファとティーダを別々に刺激して。
「許さないッス!!!!」
鋼の剣を構え、怒涛の勢いでティファに迫るティーダ。
(どうしよう。ここにいたら、殺される。
死にたくなんか、無い。ここにいてはいけない…)
気づいたときには既に、ティファは走っていた。
―あの人、エアリス…?
じゃ、無いよね。
もう死んだ人だから。
エアリスじゃないよね…
エアリスな訳が、無いよね。
ゼッタイニソンナワケナインダカラ…
477:保管庫改 3/4
04/11/19 01:35:11 sQJn9ASJ
―ティファが、撃った。
私が死んでから、性格が変わったのだろうか?
それとも…ゲームに、乗ったの?
それは違うよね?
ただ恐怖のあまり、撃ったのかもしれない。
驚いたから、咄嗟に撃ってしまったのかもしれない。
…どうしてだろう?
納得できる理由を見つけたかった。
瀕死の状態でも、ティファを許したかったのか。
「エアリス、大丈夫ッスか!?」
ティファを追うのを止め、倒れたエアリスの元に駆け寄るティーダ。
「私は大丈夫…それよりターニアちゃんを…」
エアリスが右手を上げて指差した。
血を見て混乱した少女の姿は、エアリスの指差す森の奥へと消えていた。
「間に合わないッス!きっとすぐに正気に戻って…
それより、エアリスの怪我を…」
言いかけて、エアリスを見て、凍りついた。
美しい…?
否、死に顔に、美しいも何も無い。
もう、動くことは無い。
そう、はっきりとわかったのだ。
478:保管庫改(タイトルは『錯乱』で) 4/4
04/11/19 01:36:40 sQJn9ASJ
人が死ぬことに関して、自分はあまりに、無力だった。
『思い知ったか』
誰かが頭の中で言った。
「あぁ」
空返事をすると、一人、泣き崩れた。
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 ゴディアスの剣 麦わら帽子 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕(エアリスから回収)
行動方針:泣く(その後は不明)】
【ターニア(錯乱) 所持品:微笑みの杖 行動方針:とにかく走る】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
基本行動方針:死にたくない
第一行動方針:ティーダから逃げる
第二行動方針:クラウドやバレットと合流?】
【エアリス 死亡 残り108人】
現在位置:レーベ北東の森の中(ティーダは待機、ターニアとティファは別々の方向へ走って逃げてます)
479:英雄と魔王 1/2
04/11/19 02:55:24 Q/cBoLJ6
森の中で対峙する二人の男、デュランとメルビン。
互いに相手の出方をうかがうかの様に、一向に動く気配がない。
「分かる、私には分かるぞ!貴様の強さがな……」
先に沈黙を破ったのはデュランであった。警戒を緩めないメルビンを無視するかのように言葉を続ける。
「フハハハ……私の名はデュラン。見ての通り魔王が生業だよ。私は強い者が好きでね。
せいぜい私を失望させないでくれよ……。では行くぞ!」
巨体に似合わぬスピードでデュランが斬り込む。渾身の力で振り下ろされた剣は、すんでの所でメルビンの剣に阻まれた。
だが、直後に爆発が襲いかかり、メルビンは後ろへ吹き飛ばされながらも、空中で体勢を整え着地する。
「そうだ、それでなくては面白くない。もっと私を楽しませてくれよ!」
攻撃の手を緩めず攻め立てるデュランの剣戟と爆風の前に、防戦一方となるメルビン。
(くっ……、こやつ強いでござる!このままでは剣が…)
歴戦の勇者といえども、相手は伝説の剣を持った魔王。彼の持つ鋼の剣は、打ち合う度に悲鳴を上げていた。
「どうした!貴様の力はそんなものか!」
「残念ながら魔王にくれてやる命は持っていないでござるよ!」
その時だった。鋼の剣が衝撃に耐えきれず、折れてはじけ飛ぶ。
「ハハハハハこの勝負私がもらったぞぉぉぉ!」
高笑いと共にデュランが空高く舞い上がる。
回転を加え落下することで強力な打撃を加える技、ムーンサルトだ。
「……もはや一か八かに賭けるしかないでござる!」
デュランの剣先が老人の体に目がけて殺到する。しかしメルビンは動かない。
「もはや諦めたか……喰らえ!」
ラミアスの剣の切っ先が胸を貫こうとする刹那。メルビンが十字を切ると、収束した魔法力がデュランにカウンターで襲いかかった。
「グランド……クロスッッ!!」
あたりを閃光が覆い、巨大な力のぶつかり合いによって大爆発が巻き起こり、二人を吹き飛ばす。
480:英雄と魔王 2/2
04/11/19 02:57:29 Q/cBoLJ6
「……やったでござるか?」
メルビンがふらつきながらも立ち上がる。その胸からは鮮血が滴り落ちていた。
グランドクロスをもってしても、魔王の渾身の一撃は相殺しきれなかったのだ。
すぐさま回復呪文により出血は止まったが、失われた体力は回復しなかった。
しかし、その後メルビンが目にしたのは信じられない光景だった。
「私の体に傷をつけるとはな……。貴様気に入ったぞ!」
砂煙の中から現れたのは、胸に十字の傷を刻まれながら、なお余裕を見せるデュラン。
「だが……この程度では私は倒せぬぞ」
伝説の剣を構え、魔王は不敵に笑っている。
「さて、ラウンド2と行こうじゃないか。まだまだ私を楽しませてくれよ!」
【デュラン(負傷) 現在地:岬の洞窟北西の森 所持品:ラミアスの剣
第一行動方針:メルビンを倒す 最終行動方針:ティアマト、アルティミシアと戦う】
【メルビン(負傷) 現在地:岬の洞窟北西の森 所持品:鋼の剣(破損) 残りは不明
第一行動方針:この場を切り抜ける 最終行動方針:不明】
481:療養
04/11/19 16:53:58 GN4pPxrT
森の中、普段はのどかな川のほとり。そこで、ギルダーは木にもたれかかり、必死で荒い呼吸を整えていた。
彼の通った後を、点々とピンク色の水が汚している。水に溶けかかった血の色だ。
「…はぁっはぁっ、…げほっ… ……」
…苦しい。意識がぼんやりする、眠い。しかし、もちろん眠るわけにはいかない。
何とか目を開けて、傷口に手をあてがいながら回復魔法の詠唱をする。ますます体力が減るが、まず傷を治さなくては。
傷自体はそんなに酷くないのだが、水の中に入った事で必要以上に血が抜けてしまい、体力をかなり消費してしまった。
…そのせいか、上手く魔力が高められない。ケアルラ三回でやっと傷口がふさがった。
(俺を追ってくるだろうか…ドーガ)
ふと、思い出す。…まさか、剣を素手で受け止められるとは思わなかった。ライトブリンガーには紫の血液が付着している。
クリスタルの力を決して悪用してはならないとはよく言われた。ドーガは道を踏み外した自分を、殺すのだろうか。
おそらくは…そうだろう。次も逃げられるとは限らない。遭遇しないように気をつけなくては。
空の色が変わり始めている。日没が近い。とりあえずマントを手ごろな木に引掛ける、気温の下がる前に乾かさなくては。
…夜が明けるまでは、ここでじっとしていよう。ここなら身も隠せる、下手に動くよりは安全だろう。
【ギルダー(MP大幅消費・疲労) 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
現在位置:アリアハン東山脈中央部の森 行動方針:夜明けまでは身を隠し休息 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】
(*位置は川付近なので、ラグナ達とは大分ずれてると思われます)
482:爆発と影と1/3
04/11/20 14:25:08 u+r3TbGR
ふわりと橋のすぐ傍に着地する竜騎士フライヤはボーっと空を見ていた。
(―わしは…このゲームで生き残ることが出来るのじゃろうか?)
ふと、袋の中に入っていた剣と形を持たない盾のようなものを見て思う。
このゲームに勝つには人を殺して最後まで生き残らねばならない。
それが敵なら容易に出来ただろう、ただこの中には仲間が居る。
彼らを殺すことは出来るだろうか?いやできない……。
「一体…どうすれば良いのじゃ…」
すると、彼女の後ろあたりで爆発が起こった。それと同時に走り去る一つの影。
…彼女はとりあえず爆発のあった方向へ向かった。途中、紫の血を流した人間とすれ違ったが、それよりも爆発のあった先へ向かった。
「おい!御主等!大丈夫か?!」
フライヤは白いローブを纏った女性と、緑のフードを被った青年の元へ走った。
青年は刀を構えていたが、剣が転がる音を聞くと、刀の構えを解く。
「あ、あの…すみませんが、少しの間だけ廻りを見ておいてくれませんか?」
女性がそういった、どうやら暗闇に包まれているようだ。
ゆっくりとゆっくりと、魔法を唱えていく…すると三人を明るい光が包んだ…。
「ふぅ…魔力に制御が掛ってるみたいですね、少し手間取ってしまいました」
483:爆発と影と2/3
04/11/20 14:26:43 u+r3TbGR
女性は落ち着いた表情でフライヤに言った。すると、青年が今度はフライヤに問いつめた。
「あ、あの…有難うございます。
ところで…金髪の王子様っぽい人とか、綺麗な女の人とか、頭巾を被った女の子…見ませんでした?」
首を横に振りながら答えるフライヤ。その声は少し暗かった。
「いや…わしが見たのは赤いローブを纏った老人だけじゃった。
それにわしは何もやっておらんぞ?」
その答えに青年と女性は顔を一瞬落とす。だが、女性は次にふっと顔を起こす。
あの剣を受け止めたのはこの人じゃない、赤いローブ?老人?…じゃあさっきのは…?
「すみません、その方はどちらへ向かいました?」
女性がフライヤに問う、するとフライヤは川の方を指差す。
「ところで…もしよかったらわしも連れて行ってくれんか?
一人より三人のほうがいろいろと得もあるじゃろうし…」
弱気に呟くフライヤだが青年と女性はニコリと微笑み手を差し向けてくれた。
「もちろん!二人だと結構心細いし、大歓迎さ!
僕はフィン、宜しく!」
「え、と…援護しか出来せんが……宜しく御願いします、アルカートと言います」
フィンは意気揚々とアルカートはぺこりと一礼で、フライヤを快く受け入れた。
ほっと安心したフライヤは、二人にこう言った。
「わしはフライヤ…ところで御主等、あの老人を追うのではないのか?」
あっ、と言われて気づくアルカート、そして、指差された方向へ走っていった。
フィンとフライヤは顔を見合わせ、走り去るアルカートを追った。
484:爆発と影と3/3
04/11/20 14:27:28 u+r3TbGR
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
第一行動方針:アルカート達と行動を共にする
第二行動方針:仲間に会う】
【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
第一行動方針:ドーガを追う
第二行動方針:ジオを探す
第三行動方針:白い球体について研究する】
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 現在位置:同上
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
第一行動方針:アルカートを追う
第二行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(負傷)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>大陸中央の川へ
所持品:不明
行動方針:ギルダーを追う】
485:遺される言葉 1/3
04/11/20 19:49:05 fAm02ed1
(―どうしてなんだ?)
俺の思考は声にならず、代わりに横にいたマッシュとアイラが叫ぶ。
「マリベル!!?」
数時間前に出会ったばかりの、先ほどまで元気でいたはずの少女が、俺たちの目の前に倒れていた。
竪琴と鞭を抱えるように、赤い水溜りの上で。
(どうして……彼女がここにいる?)
そんな疑問に答えるかのように、マリベルが弱々しく言葉を紡ぐ。
「なんだ、無事だったの。絶対ピンチになってると思ってたのに。
おまけにアイラまで一緒にいるなんて、心配して損したわ……」
それで、わかった。
ろくな武器を持っていない自分たちを案じて、彼女はここまでやってきたのだと。
そして誰がやったのかは聞くまでもなかった。
彼女の身体を抉る幾本もの矢が、何よりも雄弁に物語っている。アーヴァイン以外にいるはずがない。
「あーあ。柄にもないこと、するもんじゃないわね。
人のこと心配して、自分がやられて、荷物まで取られてれば世話ないわ……
あ、でもね。あんたの友達の武器は、何とか取られずにすんだのよ」
そう言って、マリベルはそれを差し出した。セイブ・ザ・クイーン。ここにはいない、キスティスの鞭。
「……ありがとう」
俺はそう答えた。というより、そう言うしかできなかった。
もし、キスティス本人がここにいたら、もっと気の効いた言葉を返してやれただろうか。
「もう、素っ気無いわね」
マリベルは不満げに口を尖らせ、急に激しく咳き込んだ。
表情は苦痛に歪み、食いしばった歯から呻き声がもれる。
「しっかりして! 今、回復するから」
アイラがマリベルに手をかざし、呪文を唱えた。
だが、灯った治癒の光は弱々しく、流れる血をわずかに止めただけで消えてしまう。
「そんな……」
呆然とするアイラを、焦点の合わぬ瞳が見つめた。
486:遺される言葉 2/3
04/11/20 19:52:12 fAm02ed1
「あたしのことはいいから、早く、三人でラグナさんたちのところ、戻りなさいよ。
アイラ、あたしと同じぐらい強いし、きっとエーコもイクサスも、歓迎するわよ」
「馬鹿なこと言うな! 置いて行けるわけないだろうが!」
マッシュが怒鳴る。マリベルは―恐らく肩をすくめようとしたのだろう―わずかに腕を動かした。
「甘いわね。そんなんだから、心配になるのよ……
ま、本当に置いていったら、一生、恨んでやったけどね」
わがままな台詞も、この状況では痛々しいだけだ。
それが耐え切れなかった。
「マリベル、もう……」
言葉は喉で詰まってしまう。それでも彼女は察したのだろう。
「喋るな、なんて言わないでよ。喋ってた方が、落ち着くの……」
彼女は再び咳をした。口元を抑えた手が、赤く染まる。
それでも彼女は言葉を紡ぎ続ける。死から足掻くためというより、意思を伝えるために。
「ねぇ、スコール、マッシュ。
どんな理由があったって、仲間同士で戦うなんて、やっぱりバカげてるわ。
そんな覚悟や、余裕があるなら、この首輪外す方法、見つけなさいよね。
きっと、誰だって、望んで殺してるわけじゃ、ないんだから」
マリベルはティナの死を知らない。だからこそ言えたのかもしれない。
けれど―
(なんでそんな風に言えるんだ?
わかってるのか。あんたをそんな目に合わせたのは、俺の……!)
―そう叫びたかった。
だが、俺の口から出たのは、正反対の言葉だった。
「ああ……そうだな」
「あら、やけに物分りいいわね。明日あたり、雨、降ったりして」
逃れられない死の影を覆い隠すように、彼女は微笑みを浮かべた。
苦痛を知らせぬための意地なのか、本心から来るものだったのかは、永遠にわからない。
「あーあ。何だか、疲れちゃったわ……
殺し合いとか、戦いとか……もう、うんざりよ……」
マリベルは小さく息を吐き、静かに目を閉じた。
彼女はもう、何も喋らなかった。瞼を開くこともなかった。
487:遺される言葉 2/3
04/11/20 19:54:20 fAm02ed1
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
第一行動方針:ラグナ達と合流 第二行動方針:ゲームを止める
現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】
【アーヴァイン 状態:HP4/5程度
所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ グレートソード ミスリルの小手 食料+ランプ等(マリベルから回収)
行動方針:ゲームに乗る
現在位置:アリアハン東山岳地帯中央部→移動】
【マリベル 死亡】
【残り 107人】
488:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 20:09:38 1s33VCOT
皆乙
489:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 22:23:13 87XfiOrK
っていうか運営スレどこ?
490:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 22:25:32 KDc7ODJS
>>488-489
【3rd】FFDQ裏方雑談スレ【番外編】
スレリンク(ff板)
491:ゲームの被害者 1/5
04/11/20 22:43:40 KDc7ODJS
「操りの輪…!?」
ロックは呆然とそれを見つめる。―操りの輪。
そのサークレットは、かつてティナを追い詰めていたものに違いなかった。
そして今、それをにつけている女性がゾッとするような笑みを浮かべ―こちらに向かってくる!
「ま、待て!アンタは…うわっ!」
おそらくは操りの輪の影響下にある女性。説得しようと静止の声をかけるロックだが、もちろんそう簡単にいくはずもなく。
全力で振り下ろされる剣を受けることしかできない。剣が重なる音が何度も響く。
(まずい、何とかして輪を壊すか、この人を気絶させるか…
つってもこの剣で輪を攻撃すれば、頭が砕けるだろ…どうする…?)
剣を受けながら思案するロックは、そのまま女性から一瞬だけ視線を外し、はっとした。
いつの間にか、女性の背後にフリオニールがまわりこんでいた。その手にはしっかりと銅の剣が握られている。
―そうだ、フリオニールは操りの輪のことなんか知らない、当然の行動だ。でも、殺すのは―!
「フリオニール、やめろ!!この人は―」
「ロックさん!?どうし…」
叫ぶロック、それを聞いてぴたりと動きを止めるフリオニール。
同時に、ソロが勢いよくドアを開き、ビアンカが開いた部屋へ二人をすりぬけて入っていった。
「…ビ、ビアンカさん!?」
ベッドに座っていたヘンリーは、突然の侵入者の姿を見て驚きの声を上げた。
そんな彼にビアンカは変わらぬ笑みで迫り―剣を振り上げる。
今の彼女にとっては家族以外のすべてのものが殺害対象であり、ヘンリーも例外ではないのだ。
そして、ヘンリーが目を見開くよりも早く、ファイアビュートが―
―キィン!
間一髪というタイミングで弾かれた。ビアンカは驚いたように振り返り、静かに剣を構えるソロに向き直る。
492:ゲームの被害者 2/5
04/11/20 22:45:00 KDc7ODJS
「ヘンリーさん…知り合い、なんですか?」
じりじりと対峙したままソロが問うが、ヘンリーは答えない。
ただ、信じられないといった様子で呆然とビアンカを見つめている。
「…ビアンカさん…?」
「違う、その人の意思じゃない!頭の輪を壊すんだ!」
ロックがソロの後ろから叫ぶ。
「輪…?」
ソロが呟き、それを見た。操りの輪はビアンカの頭の上で怪しく輝いている。
なるほど、そういうことか。ソロもヘンリーも理由は納得する。でも、問題は…
ビアンカはにやりと笑い、目の前のソロに斬りかかった。ソロがそれを受け止める。
先程のロックと同じだ。止める方法がわかったからといって簡単にはいかない。
「壊すっていっても、どうやって」
「!」
ヘンリーが言い終わらないうちに、ビアンカは目を見開いた。
ソロの後ろから凄い勢いで、フリオニールが飛び出してきて―
フリオニールは、今度はロックが止める間もなくビアンカに銅の剣を振るった。輪の部分を機械的に、正確に狙って。
ピシィ、と、硝子にひびの入るような音がした。
「――きゃああああ!!!!!」
ビアンカが額を抑えて悲鳴を上げる。彼女の額に、細くて長い形の…ある意味では美しい傷が入っていた。
血が流れ出したがしかし、傷は浅い。その悲鳴の原因は痛みではなく―
―ビアンカの心は一瞬の間、別の意識へと飛んでいた。
493:ゲームの被害者 3/5
04/11/20 22:45:57 KDc7ODJS
『―このままでは、貴女の家族を殺す敵を、殺すための貴女が、殺される…』
―何?どういうこと?
『今は逃げろ、逃げないと殺される』
―私が、殺される?
『忘れてはいけない。貴女が死んだその時が、貴女の家族が殺される時だということを』
―そう!私が殺されたら、リュカが、レックスが、タバサが、殺される!
『逃げろ、私が壊される前に、早く!』
「いやああああああああっっ!!!!」
ビアンカはありったけの声で絶叫すると、ファイアビュートを滅茶苦茶に振り回した。
予想していなかった行動に、ソロとロックはあわてて避け、フリオニールはふりはらわれたかのように離れる。
ビアンカはそのまま、頭を、ひびの入った操りの輪を抑えながら外に向かって駆け出した。
いちはやくそれを確認したソロが、それでも少々遅れて飛び出す。
―宿屋前から見た範囲では…既にいない。どちらの方角にいったのかもわからないが、
…やはり、追うべきだろうか?ヘンリーさんの友人が、何か特殊な物によって錯乱しているんだ…。
「何で待たなかったんだ!!」
考えるソロの耳に、唐突にヘンリーの怒声が届いた。
ソロは眉を潜める。…ビアンカを追うことはひとまず中止し、あわてて宿屋に戻った。
494:ゲームの被害者 4/5
04/11/20 22:46:55 KDc7ODJS
「あんな方法、思いついてもやるか!?人の命をなんだと思ってんだ!!」
怒りの表情を浮かべたヘンリーが、フリオニールの胸倉を掴んで叫ぶ。
しかし、当のフリオニールは眉ひとつ動かさず、されるがままに怒声を浴びている。―しかし。
「ビアンカさんは俺の親友の、大切な妻なんだ!もし…もし、死んだら、どうしてくれるつもりだった!!」
「……死んだら?」
"死ぬ"という言葉に、ぴくりとフリオニールの身体が動いた。ヘンリーは構わずに続ける。
「…怪我ですんだのがおかしいぐらいだ!下手したら死んでた!お前がビアンカさんを殺してた!!」
「………ッ!」
フリオニールは今度こそ目を見開いた。そのまま、ヘンリーから逃げるようにうつむいて―
視界に、紅いものが映った。床に落ちたビアンカの血。
どくん。
心臓が大きな音を立てた。同時に、わけのわからない感情が栓を抜いたように湧きあがってきた。
…死ぬ?殺す?なんで、俺はこんなことを。なんで、俺はこんなところに。血が、紅い血が、ああ、嫌だ――マリア。
「…い、やだあああああっ!!!!」
「!?うわっ!」
「ヘンリーさん!?」
フリオニールはありったけの力で、ヘンリーを突き飛ばした。
怪我を負っているヘンリーはそのまま壁にぶつかり、ううと呻きながら頭を振る。
「―おい、フリオニール!?」
ロックが、はぁはぁと荒い呼吸をしながら立ちつくすフリオニールに声をかけた。
フリオニールはロックを怯えたような目で一度だけ見ると―すぐに駆け出した。ビアンカと同じように。
「おい!待て!!」
ロックはあわててその後を追った。
495:ゲームの被害者 5/5
04/11/20 22:47:53 KDc7ODJS
「ヘンリーさん、大丈夫ですか!?」
たった今出て行ったばかりのフリオニールとロックを気にしながらも―ソロは、ヘンリーに駆け寄る。
「…このぐらい余裕だって…」
ヘンリーは頭を掻きながら起き上がった。その顔からはまだ怒りが抜けていない。しかし、
「…悪いな、俺のせいだ…」
ぽつりと言った。俺のせいで二人ともいなくなってしまったと。
ソロはそんなヘンリーに何も言えず、うつむくしかなかった。
…ヘンリーは悪くない。でも、だからフリオニールが悪いかというと、それも違うように思えた。
ソロは、自分の無力さと、このゲームに対する憎しみを感じ、唇を噛む。
ロックさん、フリオニールさん、ビアンカさん、
それに…仲間達は、シンシアは、この最悪なゲームの中で無事でいるんだろうか。
いや、少なくとも…このゲームに放り込まれた時点で、無事ではないのかもしれない。みんな、被害者だ。
ふと外を見てみるが、開いたままのドアからはただかすかな風が入ってくるだった。
【ソロ(MP消費・疲労) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング 行動方針:ヘンリーに付き添う】
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 行動方針:傷の治療】
現在位置:レーベの村宿屋1F
【フリオニール(感情喪失?) 所持品:銅の剣 現在位置:レーベ村の外へ 行動方針:逃げる(錯乱状態)】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 現在位置:同上 行動方針:フリオニールを追う】
【ビアンカ(暴走状態:操りの輪を破壊すれば状態回復は可能) 所持品:操りの輪(半壊) ファイアビュート
現在位置:レーベの村から脱出 第一行動方針:逃げる 基本行動方針:リュカ、子供達以外の全員を殺害】
496:修正
04/11/21 08:11:13 rGPCTz4O
※>>491の本文修正です※
「操りの輪…!?」
ロックは呆然とそれを見つめる。―操りの輪。
そのサークレットは、かつてティナを追い詰めていたものに違いなかった。
そして今、それをにつけている女性がゾッとするような笑みを浮かべ―こちらに向かってくる!
「ま、待て!アンタは…うわっ!」
おそらくは操りの輪の影響下にある女性。説得しようと静止の声をかけるロックだが、もちろんそう簡単にいくはずもなく。
正確に自分を狙い、迫る鞭を剣で受け流すことしかできない。
(まずい、何とかして輪を壊すか、この人を気絶させるか…
つってもこの剣で輪を攻撃すれば、頭が砕けるだろ…どうする…?)
対峙しながら思案するロックは、そのまま女性から一瞬だけ視線を外し、はっとした。
いつの間にか、女性の背後にフリオニールがまわりこんでいた。その手にはしっかりと銅の剣が握られている。
―そうだ、フリオニールは操りの輪のことなんか知らない、当然の行動だ。でも、殺すのは―!
「フリオニール、やめろ!!この人は―」
「ロックさん!?どうし…」
叫ぶロック、それを聞いてぴたりと動きを止めるフリオニール。
同時に、ソロが勢いよくドアを開き、ビアンカが開いた部屋へ二人をすりぬけて入っていった。
「…ビ、ビアンカさん!?」
ベッドに座っていたヘンリーは、突然の侵入者の姿を見て驚きの声を上げた。
そんな彼にビアンカは変わらぬ笑みで迫る―鞭をふるう。
今の彼女にとっては家族以外のすべてのものが殺害対象であり、ヘンリーも例外ではないのだ。
そして、ヘンリーが目を見開くよりも早く、ファイアビュートが―
―ピシィッ!
間一髪というタイミングで阻まれた。ビアンカは驚いたように振り返り、静かに剣を構えるソロに向き直る。
497:修正
04/11/21 08:12:45 rGPCTz4O
※>>492の本文修正です※
「ヘンリーさん…知り合い、なんですか?」
じりじりと対峙したままソロが問うが、ヘンリーは答えない。
ただ、信じられないといった様子で呆然とビアンカを見つめている。
「…ビアンカさん…?」
「違う、その人の意思じゃない!頭の輪を壊すんだ!」
ロックがソロの後ろから叫ぶ。
「輪…?」
ソロが呟き、それを見た。操りの輪はビアンカの頭の上で怪しく輝いている。
なるほど、そういうことか。ソロもヘンリーも理由は納得する。でも、問題は…
ビアンカはにやりと笑い、目の前のソロに鞭をふるう。ソロが天空の盾でそれを受ける。
先程のロックと同じだ。止める方法がわかったからといって簡単にはいかない。
「壊すっていっても、どうやって」
「!」
ヘンリーが言い終わらないうちに、ビアンカは目を見開いた。
ソロの後ろから凄い勢いで、フリオニールが飛び出してきて―
フリオニールは、今度はロックが止める間もなくビアンカに銅の剣を振るった。輪の部分を機械的に、正確に狙って。
ピシィ、と、硝子にひびの入るような音がした。
「――きゃああああ!!!!!」
ビアンカが額を抑えて悲鳴を上げる。彼女の額に、細くて長い形の…ある意味では美しい傷が入っていた。
血が流れ出したがしかし、傷は浅い。その悲鳴の原因は痛みではなく―
―ビアンカの心は一瞬の間、別の意識へと飛んでいた。
■これ以降は同じです。申し訳ありませんでした。
498:日没
04/11/22 13:58:25 pLJ4ZYaV
アリアハンの大地が夕日に照らされる。
アルスとシドはその大地の上で、地平線に近づいていく夕日を見つめていた。
「絶景だな」
「綺麗だろ?僕の故郷だからね」
濁りの無い海は、赤い光を受けてキラキラと輝く。
ここが殺し合いの会場だという現実を忘れてしまいそうなほどに、綺麗だった。
「暗くなってきたわね…」
セリスが窓の外を見てつぶやく。
彼女の目の前には、ベットに座って紅茶を飲む少年―パウロがいた。
セリスのつぶやきに、パウロはカップを置いて身を震わせる。
「あら、どうしたの?」
「…いいえ…夜は、怖いなと思って…」
セリスは、その理由に苦笑しながら答える。
「確かに…そうね」
そうして、また窓の外へと視線を動かす。
(一体、これまでにどれだけの人が死んだのか…? ロック…貴方は無事でいる?)
窓から見える夜空には、ぽつぽつと星が見えはじめていた。
今この部屋で耳に届くものは、パウロが紅茶をすする音だけ。
静かだ、とセリスは思った。―しかし。
ドオオォォォォン――――!!!!
突如、大地の裂けるような轟音が響いた。空気が、大地が大きく震動する。
パウロは突然の揺れに悲鳴を上げ、紅茶の入ったカップを床に落として割ってしまう。
ドサドサと音を立てて棚から本が滑り落ち、ぎしぎしとベットが大きな音を上げた。
セリスは必死で自分の身体を支える。―この地震は、いや、地震にしては何かがおかしい?
彼女がそう、思うと同時に―あの、魔女の声がアリアハンの大地に降り注いだ。
499:日没
04/11/22 13:59:09 pLJ4ZYaV
星の見えなくなった、闇のような空が裂ける。
そこにぼんやりと映し出される姿―ゲームの主催者、魔女アルティミシア。
「生贄共よ…最初の日はどうであったか?」
地獄の底まで響くような声。
聞くだけで絶望を感じさせられるようなそれは、大陸のどこにいたとしても否応なしに耳に入るだろう。
「この地で魂を無くした、ゲームの脱落者達の名を知らせておく。
一度しか言わぬぞ…貴様らの下らぬ友情を交わした人間の名が無いか、心して聞け。
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」
三十一名…予想以上に良いペースだな。その調子で裏切りと殺戮を繰り返すが良い。
脱落者の名は、これから日が落ちる時と上る時…一日二回読み上げる。
…それから、下らぬ馴れ合いをしている者がいるようなので忠告しておこう。
隣にいる者を殺さなくては、いずれ殺される事になるということを…忘れぬようにな。
…期待しておこう。次の放送時間には、貴様の殺めた者の名を読み上げられる事をな…」
アルティミシアは、微かに不気味な笑い声を上げた。
空気の振動が収まり、闇に覆われていた空に星が戻り始めてからも…暫くの間、笑い声だけが微かに大陸に響いていた。
【アリアハン大陸:昼→夜へ】
500:騎士の誇り1/5
04/11/22 16:58:30 +nMvFBO2
アレフとわたぼうは、その洞窟から出ることをまず第一前提にした。
アレフのレミーラで洞窟の中はサクサクと探索することが出来た。
「…リレミトを使うことが出来れば良いのだが……どうも効き目がないようだ」
先ほどからレミーラとは違う呪文を口にしていたアレフがそう言う。リレミトが効かないと分かった彼は長年の冒険の勘から階段をスムーズに見つけていった。
一階にやっとついたときだった、わたぼうと二手に分かれ入り口を探していた。
アレフの視界になにやら人影が見えるのだ。レミーラの先をその人影に当てると…。
「うわぁっ!」
パイナップル頭の少女がアレフの視界に映る。その少女は光を向けられた後、ナイフを構えて此方を睨みつけている。
(―まずいな…完全に警戒されてるぜ?)
アレフは…彼女はどうすれば警戒を解いてくれるか?まずそれを考えていた。
(―剣を捨てる…これが一番だが襲い掛かられたらとんでもない。
両手を上げる…これも良いが相手には微妙に分からない。
一か罰か、剣を捨ててみるか。)
すると、カランコロンという音と共に、シルバーメタルの光沢が目立つ剣が地に転がる。
彼女は一瞬訝しげに剣を見たが、まだ警戒を解いてくれない。
「おーい、こっちに戦う気はないから。罪もない人斬るなんてサラサラ御免だぜ?」
アレフがゆっくりと両手を掲げて前へ出る、それを見て少女もやっと構えを解く。
「よかったぁ、アタシ速攻で襲われちゃうかと思ってたもん」
少女は気さくにアレフに話し掛けてくる、引き締まっていた空気が急に緩む。
「そうそう、良かったら一緒に行動しない?一人より二人だし、そいでチョイチョイっとあのオバハンをやっつけちゃおうよ!」
アレフは頭をポリポリと掻いた後、名前ともう一つの名前を言った。
「俺は…アレフ、それと………おーい!わたぼーう!!」
洞窟に声が響く、響く声と共にわたぼうが出てくる。
「アレフ!階段が見つか…ってこの人は?」
いきなり現れた謎の物体に、再度警戒の構えを取る少女、しまったという表情を隠せないアレフ。
また説明かよ…説明は苦手なんだぜ?と頭の中だけにその言葉をしまいこみ、少女にわたぼうの説明をした。
501:剣士の誇り2/5
04/11/22 16:59:17 +nMvFBO2
理解してもらえるのに、数十分掛った。
「―オッケー、そうそうアタシはリュック。伝説のガード…って言っても分からないか。
とりあえず、すんごい役割やってたんだ」
どこがどう凄いのか、世界の違う一人と一匹には理解しようがない。
「わたぼうはさっき説明したとうり、タイジュって国の精霊。
俺はラタドームのローラ姫に仕える剣士、アレフ」
と、さらりと自己紹介を済ませる二人と一匹。
「で?わたぼう、出口…いや入り口はどっちだって?」
わたぼうは頷くと、二人を誘導し始めた。
入り口に差し掛かったときぐらいだった。
ズッドドドドドドドドォォォン!!
ものすごい地響き、洞窟内が強烈に揺れる。
「俺に掴まれ!転がってくる岩は何とかする!」
アレフが叫ぶ、リュックとわたぼうが咄嗟にアレフにしがみつく。
転がってくる小さな小石や岩を、両足が動かない状況でも華麗に後ろへ流していくのは流石というべきだろう。
地震が収まった、もしかするとこれは…二人と一匹は外へと急いで駆けた。
「生贄共よ…最初の日はどうであったか?」
魔女の声がする、リュックはその放送を拳に力を入れ、アレフは歯をギリリ鳴らし聞く。
502:剣士の誇り3/5
04/11/22 17:00:19 +nMvFBO2
…放送のあとに、一律の沈黙が訪れる。二人も、一匹も、悲しい表情で下を俯いたままだった。
最初に口を開いたのは、リュックだった。
「アーロン…あんな強かったアーロンが…」
それに続いて、わたぼうも口を開く。
「イル…いいマスターだったのに…どうして…」
しかし、二人は呟いたあとに気がついた、アレフが、涙を流していることを。
何も語らなかったが、今の放送にはローラという名前が有った…使えるべき姫を失ったのだ。
「なぁ………わたぼう、リュック。
俺は…剣士失格だな」
唐突に、アレフが口を開く。それは悲劇の始まりだった。
えっ?と二人がアレフに顔を向けたときだった。
ズブリ、と肉の切れる嫌な音がする。アレフが、自ら剣で心臓を突き刺していたのだ。
「バ、バカッ!何やってんの!!」
リュックがその剣を引き抜こうとするが、アレフの力はそれを上回っている。
ゲホッ、ゲホッと血を吐きながらアレフは二人へ向けた。最後のメッセージを。
「…仕えるべき人は……此処には居ない…ゲホッ…なら居るところ……まで俺がついていく。
それだけの……話さ、何も泣くこたぁ…ねぇ……ぜ……ガハッ!」
黒い血塊がアレフの足元に落ちる。リュックもわたぼうも、剣を引き抜こうとするがやはり抜けない。
剣からも、綺麗な赤色の液体が、滴り落ちていた。
「そうだ…俺の袋にあった……謎のこの玉、だれか使える人を…探してくれないか?……ガハッ…ああ、やべぇ……そろそろ行くわ、俺」
じゃあな、と小さく言い残し。瞼を閉じた。
503:剣士の誇り4/5
04/11/22 17:02:13 +nMvFBO2
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
リュックは叫んだ、目の前の人物が死んだことに対し。
わたぼうは涙を流した、自分が、何も出来なかったことに対し。
その悲痛な叫びは、洞窟の奥深くまで…響いた。何度も、何度も。だが、アレフは帰ってこない。
彼は姫の元へ逝くと言う、最後の道を選んだのだ。彼は天国で、きっとローラに仕えローラを守るのだろう。
そう考えると、余計に涙が流れた。
アレフが死んでから数十分立つ、簡単な埋葬が終わったとはいえ、やはり重い悲しみが残る。
ふと、リュックは気がついた、アレフが最後に握っていた玉。アレはドレススフィア?
知らずの内に握っていたそれを使い、彼女はドレスチェンジを始めた。
そのドレススフィアは…見たことも無い…未知の服。ただ伝わるのは聖なる剣士のオーラと力、アレフにそっくりの。
リュックはアレフのことを思い出し…そして、もう一度泣いた。
アレフの持っていた剣が、輝いていたような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。
504:剣士の誇り5/5
04/11/22 17:04:25 +nMvFBO2
【リュック(ドレス:パラディン) 現在位置:いざないの洞窟入り口 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレススフィア(パラディン)
わたぼう 現在地:同上 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
第一行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
最終行動方針:アルティミシアを倒す】
#リュックはロトの剣を扱うことが可能?(次回書き手に委任
【アレフ 死亡 残り106人】
505:恐怖と暴走 1/3
04/11/22 18:59:37 PmqPdLsY
魔女の放送が始まったとき、ティファの足は自然に止まった。
勿論世界の振動によってまともに走れなくなったというのもあるが、
それ以上に、確実に聞き届けようという彼女の意思が足を止めたのだ。
死者の名が、抑揚無く読み上げられていく。
その一つ一つが命を与えられこの世界に生まれてきた証だ、などと、考えていないかのように。
『…バレット』
他の名前と何の変わりもなくただ読み上げたその名前が、ティファの心を揺さ振る。
「バレット…」
バレットが殺された…?
殺した人は誰…?
許さない。許せない。許せる訳が…
『…エアリス』
最後のほうに呼ばれたその名前は、ティファの心を揺さ振るだけでは済まなかった。
全ての思考が停止し、あるいは心臓が止まったのではないかと思えるほど、その瞬間は空虚で。
ゆっくりと身体が活動を再開したとき、彼女の思考は既に答えを導き出していた。
さっき、私が、殺したんだ…
私ガ…
彼女の心を包み込んだのは、罪悪感でも後悔でもなかった。
―恐怖。
嘗ての仲間を自分の手で殺してもなお、彼女にとっての一番はクラウドで。
どうしよう。
クラウドは、私を許さない…
私がエアリスを殺したから…
―クラウドがこれを知ったら?
―ソンナ事ハ絶対ニ嫌ダ!!
506:恐怖と暴走 2/3
04/11/22 19:00:50 PmqPdLsY
私から話さなければ、クラウドは気づくはずがない…
でも、あの金髪の人と蒼い髪の女の子は、私が殺したって知ってる。
…じゃぁ、どうすればいい?
―彼ラヲ殺セバイイ。
一瞬にして辿り着いたその選択肢は、彼女に他の選択をさせることを許さなかった。
次の瞬間、視界の隅に蒼い髪が映ったから。
別の方向に逃げたはずのその姿が、在ったから。
日没直後の薄暗さの中でも、それが誰かは直ぐにわかった。
もう、躊躇いを捨てた。
クラウドに嫌われたくないから。
そしてゆっくりと銃を構えた。
(また殺すの…?)
刹那、頭の中で誰かが呟いた。
知ってる。この声は、さっきと同じ。
エアリスの声で。
(もう誰も殺さないで)
イヤダ。クラウドガ知ッタラ私ハ終ワリダカラ。
イヤダ。イヤダ。イヤダ…
引き金に、手を掛けた。
目の前に、幻のエアリスが立っていて。
それでも、躊躇うことは無くて。
―銃声が森に木霊した。
幻のエアリスの胸をもう一度貫いた弾丸は、蒼い髪の少女の耳元を、掠めた。
507:恐怖と暴走 3/3
04/11/22 19:02:08 PmqPdLsY
…何故、当たらなかったのだろう。
…いや、当てられなかったのか。
一瞬考えたティファの耳に、少女の悲鳴が飛び込んできた。
この距離を走って、血は見えなくなって、地震が起きた衝撃で、やっと自我が戻ったというのに。
すぐに、エアリスを殺した『音』が聞こえて。
何か熱いものが、耳元を掠めて。
「いやぁぁぁっ!!」
ターニアは、思わず、叫んでいた。
「ごめんなさいね…本当は殺したくないんだけど」
ティファが、銃を構えながら言う。
腰が抜けたように座り込んで、呆然とした視線をティファに送るターニア。
それならば何故殺すの?と問うようなその視線から、ティファは目をそらす。
ゲームに乗ったわけじゃない。ただ、恐ろしかったのだ。
―クラウドとの関係が壊れるのが。
ティファは銃口をターニアに向けながら、ゆっくりと言った。
「あなたを殺さなくちゃいけない理由を話すから聞いて欲しいの…」
何故そう言ったのかわからない。
ただ自分の罪悪感から逃げたかったのか。
それともこの子から、止める様に説得してもらいたかったのか。
傍から見ればあまりに理不尽な理由だろう。
でも、ティファは話し始めた。
ゆっくりと…
「私の幼馴染に、クラウドって言う人がいて…」
【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:逃げたい 現在位置:レーベ東の森中央付近】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
行動方針:自分が殺すのを正当化するために、話す 現在位置:同上】
508:銃声 1/2
04/11/22 19:21:43 fQ05pNSX
「お姉ちゃん…」
放送を聞いたあと、ビビは空を見上げた。
「知り合いがいたのか」
ピサロは、全く口調を変えることなく、言った。
…ロザリーの名は無かったか。
それだけが未だ、彼を保っていた。
ブライやトルネコの死を聞いても、なんとも思わないか。
軽く自分を嘲笑う。
さすがに表情に出すことは無かったが。
「うん…さっき言ったよね…?ガーネットって人…」
ビビの声は、悲痛だった。
「あぁ」
ピサロはそれだけ言った。
身近なものを失う辛さなら、わかる。
それも、他の者に奪われて、だ。
そして、これに関してはビビも知らないだろうが、それが愛する者ならば尚更だ、と。
ビビが何やら泣く様な仕草をしている。
作られた存在でありながら、涙を流すことは出来るのか。
そういえばロザリーもよく泣いていた。
自分が人間に攻撃を加えたことを知ると、いつも…
―そう思っていたとき、何かの音が、森に響いた。
続いて、少女の悲鳴が。
509:銃声 2/2
04/11/22 19:23:52 fQ05pNSX
「ね、ねぇ!今の聞いた!?」
ビビが、興奮したように喚く。
「当たり前だ。聞こえないほうがおかしい」
「誰か襲われているんだと思う…助けに行かなくちゃ…」
ピサロの視線と、ビビの視線が合わさった。
「行くのなら勝手に行け。私は動けぬし、人間を助ける義理など無い」
素っ気無いその声にも、ビビは嬉しそうに返事をした。
「うん、助けに行くよ。あの悲鳴、絶対に悪い人のじゃないと思うから…。それで、一つだけ約束して欲しいの」
「何だ?」
「もし人が逃げて来ても、殺したりしないでね。それはきっと、ボクが守った人だから…」
「…いいだろう」
「元々は人を殺すために作られたボクだけど…人を助けることも出来るんだって…ジタンやガーネットが教えてくれたから…」
ビビの声は、純真だった。
「それにジタンなら、女の人が襲われてるのを黙って見てるなんて出来ないと思うから…」
ビビは、それが笑ったというのなら…目を細めて…笑った。
「じゃぁ行ってくるから…約束忘れないでね」
最後には声を掛けることも出来なかった。
ビビの尖がり帽子が森の奥に消え行くのを。ピサロは最後まで見送った。
―どうしてあんなに穢れなくいられるのか。
自分も柄にも無いことを考えるようになった、と再び嘲笑した。
【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明 行動方針:銃声のした方へ様子を見に行く】
現在位置:レーベ東の森中央付近
510:深き夜のアナリーゼ(1/5)
04/11/22 21:31:15 uWKvksJb
夕方になった。
夕焼けが綺麗だ、2人は心底そう思った。
殺し合いの場で持つには奇妙じゃないかとも思ったが…これが唯一の癒しのようにも思えた。
「そろそろ誰かいても良い頃だと思うんだけどねぇ…」
「…結局、誰にも会わなかったね……」
"裸マントの殺人鬼にでも会いたかったかい?"とセージは口にしそうだったが、やめた。
流石に傍らにいる少女にかける言葉としては不自然だ。
ローグになら言っただろう、確実に。そう思ってしまってセージは苦笑を浮かべた。
悪態をつく相手がいないのも寂しいなぁ…と、そう呟きながら目を閉じた。
それと同時に、彼の脳裏には思い出が蘇る。
しっかりしてるけど、確実にR-指定の道へとスライディングしそうなあの勇者。
いつも自分に悪態こそつくけど、楽しい話には事欠かなかったある盗賊。
思い出したくは無い過去はあるが……まぁ頼りになった僧侶。
仲間……なのかは知らないけれど、「勇者」の代名詞だろうと思えたある父親。
ついでに裸マント。名前は忘れた…ダンカタ……だったか。違う、カンダタだ。
そしてすぐさま考えを今の状況に戻し、自分を奮い立たせた。
そして、タバサもまたそうしている様だった。
それが、悪かった。
511:深き夜のアナリーゼ(2/5)
04/11/22 21:32:43 uWKvksJb
ドオオォォォォン――――!!!!
突然地鳴りにも爆発音にも似た音が鳴り響いた。
そしてそのまま、この世の出来事とは思えぬほどの地震が起こる。
「ちょ…これはないんじゃない!?これで死んだらどうしろって言うんだよ!」
「お…ッお兄さん!!大丈…夫っ!?」
「あまり…こういう経験…ないからねっ!でも大丈夫!」
「…だ、だいぶ落ち着いてきたかも……」
ふと、不思議なまでにその地震は止んだ。
だが空は黒く裂けてゆく。セージは苦笑を、タバサはある種の恐怖を浮かべてそれを見ていた。
そして、名前が呼ばれていく。
死んだものの名が虚空に響く。
静かに…ただ静かに見ていたが、タバサの顔からは"恐怖"は消えていた。
"恐怖は"だが。
512:深き夜のアナリーゼ(3/5)
04/11/22 21:33:49 uWKvksJb
「ピ…ピン……さん………」
彼女が住むお城には、ある兵士がいた。
王子や王女にも親しく接していた兵士がいた。
王達と共に旅をし、至福の表情を浮かべていた兵士がいた。
名を、"ピピン"といった。
知り合い…か。と、セージは心の中で呟いた。
傍らでは、タバサの焦点の合っていない様な…だが透き通っている目が空を見ていた。
放送が終わった後も、暫く空を見上げていた。
「……あのさ」
「大丈夫!」
セージが何か、慰めの言葉か何かを発そうとしたと同時にタバサの声が響いた。
「大丈夫。ここで挫けてたら…お兄さんに迷惑かかっちゃうし。
それに、これからもきっと…こういう事があるんでしょ?
その時に何回も何回も挫けてたら…会える人にも会えない、しね」
「……そうか、強いね」
本当に強い。セージはそう思った。
それと同時に、この子の為に必ず家族を見つけてあげようと…そう思った。
「おにいさん、早く安全そうな所に行こうよ。暗いから危なくなっちゃうよ?」
「ああ、そうしよう」
そう言って、二人はまた歩き始めた。
513:深き夜のアナリーゼ(4/5)
04/11/22 21:35:06 uWKvksJb
「ん?もしかしてあれは…」
本当にほんの少し歩いていると、セージは建物を見つけた。
明かりが灯っていない。人が潜伏している可能性があるが、子どもを置いての野宿は危険だ。
その建物にお邪魔する事にし、2人は建物へと歩いていった。勿論警戒は解かずに。
建物の中には階段があった。地下へと下る暗い階段だった。
そしてその階段を下ると、扉があった。
開けようと試みる。鍵がかかっている。開かない。
タバサが困ったように押したり引いたりしていると、
「ちょっと下がって。こういう時は…"アバカム"」
カチッ!
鍵が開く音が聞こえた。
そして二人が部屋に入ると、何の気配も無かった。
きちんとドアを閉める。この間に尾行されて侵入されたわけでもない。
「……ビンゴだ」
そう言ってセージは灯りに火を灯すと、数人分ある椅子に座った。
タバサも続く。椅子に座ると、机に突っ伏すように上半身を倒した。
「トイレもバスルームもないっぽいけど…我慢してくれないかな?」
「私は大丈夫。でも、ラッキーだったね。」
「そうだね。とりあえず野宿にならずに住んだ。今日はここで夜を明かそう」
そう言うとセージはこの後の事を必死に考える事にした。
アナリーゼを行う音楽家のように、必死に危険から回避する方法を組み立てようとしていた。
514:深き夜のアナリーゼ(5/5)
04/11/22 21:36:18 uWKvksJb
【セージ 所持品:ハリセン
現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋 行動方針:部屋で夜を過ごす】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:同上】
515:1/5
04/11/22 21:51:30 YuTBgmvG
三人―レナ、エリア、ギルバートは、存外早く意気投合することができた。
それは、「クリスタル」という共通の話題があったことが大きい。
話してみれば、それは明らかに違う世界のものであったが、
それでもこの状況で、絆を結ぶのには十分なものだった。
「ここにいても仕方ないわ。誰かと合流したいなら、危険はあるけど人の集まるところにいかないと」
レナが提案すると、にわかに元気を取り戻したギルバートが頷いた。
「そうだね、僕もそう思う。この近くなら、レーベの村だろうね」
「けっこう遠いですね…」
「なに、日没あたりにはつくさ」
そんな会話をしながら歩き出して、しばらくのことである―あの声が聞こえたのは。
あの忌々しい声はあたりから消えた。青年たちに暗い影を残して。
死者の名前が告げられたとき、最初に反応をおこしたのはレナであった。
手頃な岩に座って、綺麗な唇に手を添え、じっと耳を傾けていた彼女は、
「クルル」と呼ばれた瞬間目を見開きだんと立ち上がり、その変わりかけの空を見上げた。
次に反応を起こしたのは、ギルバートだった。
一見すると女性に見紛う端正な顔立ちの彼は、雪のように白い肌をますます青白く、
唇をがたがたと震わせただ一点を見つめていた。
その姿を見れば、唯一反応を示すことのなかったエリアにも、
彼らに何があったのかは容易に想像がつき、その心痛を察すれば、なんと声をかけてよいかもわからない。
………
516:2/5 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:53:40 YuTBgmvG
放送の少し前のことである。
「水のクリスタル…」
エリアの口からその言葉が発せられたのに、レナは驚きを隠せなかった。
自分たちのいた世界とこの世界は、まったく別の次元のものに思っていたからである。
いや、実際のところはそれで正しいのだが、そのようなことがわかるはずもない。
「たしかに、私は水のクリスタルの加護を受けているわ。でも、どうしてそれが?」
「私は水の神殿の巫女です。わかります、心の中にあるその光は、クリスタルに選ばれた…」
「水の神殿?」
エリアの話を遮って、思わず聞き返した。
「水の神殿…そんなのあったかしら。風の神殿じゃないの?」
「風の神殿…?いえ、水の神殿ですよ」
レナは記憶を辿ってみたが、それらしきものは思い当たらない。
水のクリスタルがあったのはたしかウォルスの塔である。
そこのことだろうか?しかし、巫女がいるという話は聞いたことがなかった。
「ウォルスにあったよね、水のクリスタルは」
「ええ、ウォルス?そこどこですか」
「知らないんだ」
共通の話題を話しているはずなのに、話がまったく噛み合わない。
「あの…ちょっと、いいかな?」
申し訳なさそうにギルバートが口を挟んだ。
「水のクリスタルはミシディアにあるんじゃなかったかな?
それに、クリスタルに選ばれた戦士っていったいなんのことだい?」
「ミシディア?」
「…もしかして、ううん、やっぱり…知らないのかい」
三人は顔を見合わせると、この奇妙な状況に押し黙った。
………
517:3/5 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:55:44 YuTBgmvG
エリアはふっと息をついた。
「クリスタル」という象徴的なものを共有する人間に会えたと思ったのも束の間、
それはまったく別の世界のこと。それと同時に、深い感銘もうけた。
自分の元いた世界以外にもクリスタルが存在し、
同じようにクリスタルに選ばれた戦士がいるという事実、
その人と水の巫女たる自分が会えたことに、運命の力を感じたのだ。
現に、彼女―レナの中にクリスタルの輝きを感じたのだから。
しかし―今その戦士の一人が死んだとするならば…。
それもまた運命なのだろうか?
それとも、運命だとか、もはやそのような力では抗えない状況なのだろうか。
手持ち無沙汰で、エリアは名簿をめくった。
エリアはあっと声をあげそうになるのをやっとの思いでこらえた。
つい先まではなんの変哲もなかったその名簿に、
血の滲んだような朱色の線が、ところどころに引かれているのである。
よくみてみれば、それはどれも先に名前を呼ばれたものたちの欄に引かれていた。
やるせない怒りにも似た哀感が、エリアを襲った。
名簿を閉じ、潤んだ瞳を閉じて―それは場の空気に影響されてかもしれないが―刹那、場違いな明るい声が響いた。
518:4/4 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:58:09 YuTBgmvG
「いきましょう!さっき話し合った通り、レーベの村に」
いきましょう、というのが、どういう意味なのか少しエリアは迷ったが、それはどうでもいいことだった。
「今、名前で呼ばれた中に、クルルっていたよね。その子、私の仲間なんだ。…まだ、14歳なのにね」
「そうだ…セシルとローザも、死んだ!」
ギルバートは吐き出すように叫んだ。
「ローザは…セシルの恋人だった。二人とも、いっしょに…いったのかな」
ギルバートは震えの収まらぬ膝頭をおさえて、遠くを見つめていた。
レナはもう落ち着いた表情向かうべき方角に体を向けている。
その冷静な挙措の中に、固く握りしめられた拳を、エリアは見逃さなかった。
「ええ、いきましょう。クリスタルの光を、信じて」
他に言うべき言葉が見つからなかった。
【エリア 現在位置:レーベ東の平原 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ギルバート 現在位置:同上 所持品:毒蛾のナイフ
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:リディアを探す】
【レナ 現在位置:同上 所持品:不明
第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:バッツとファリスを探す】
519:王子と魔女と盗賊と 1/4
04/11/22 22:11:10 PJwrEuLE
台所には、不気味なほど安らいだ表情のまま首を切り落とされた男女がいた。
今いるここ、階段前の廊下では、男が女を背負ったまま串刺しにされていた。
そして死体の傍に、尻尾の生えた若い男が立っている。
「最低だ」
硬直するリノアとキーファの前で、男―ジタンはぽつりと呟く。
「アルティミシアとかいう魔女も、あの骸骨野郎も、命をなんだと思ってるんだ」
拳を固く握り締め、肩を奮わせる。
ジタンには許せなかった。殺し合い自体はもちろん、こんなゲームに乗って人を殺す連中がいるということが。
もちろん、頭の中では理解していたし覚悟していたことだ。進んで殺し合おうとする奴がいることぐらい。
だが、実際に『その場面』を見た途端、抑えきれない怒りが胸に沸いた。
数分前には生きていたはずの二人を助けられなかった、自分への苛立ちと共に。
十数分経った今でも、その感情は消えない。
二人と一人の間に、長い沈黙が落ちる。
不意に、ジタンは横に立つ二人組、リノアとキーファを振り返った。
射竦めるような視線を真っ向から見据え、意思表示代わりにキーファは支給品の本と袋を床へ投げる。
「オレも……いや、オレ達もあんたと同感だ」
「戦う気なんてない。殺し合いなんて、したくない」
そう言ってリノアもキーファに従う。
二人の言動に、ジタンはようやく相好を崩した。
「そうか……
……なぁ、やりあう気がないなら少し話さないか? どっか落ち着ける場所でさ」
リノア達は一瞬顔を見合わせ、すぐに大きく頷いた。
520:現実味のない事実 1/3
04/11/22 22:14:25 pLJ4ZYaV
「…うむ、何か成果があがったら連絡するよ、レディ。期待していてくれたまえ」
エドガーは一旦、ひそひ草での会話を切った。
―バーバラが信頼できる少女であることはわかった。
お互いの仲間の情報などを交換し、これからのことについても随分話した。
位置が近ければ合流していたのだが…地図を見る限り、合流するには大陸をほぼ一周するしかない。
そこまで歩くのはお互いに危険だ。次のステージで近くなる事を祈るしかない。
そして何より、大事な用事があり自分はここから動けない。そう、バーバラに話した『成果』とは―
「あれ、もういいのか?」
「ああ、ずっと話しているわけにもいかないだろ。研究が進んだらまた連絡をとる事にするよ。
ちなみに、期待しておいてくれ、と言っておいたから」
「げ、責任重大じゃねえか…」
エドガーの目の前で青年―デッシュが、銀色に輝く首輪と鉛筆を手にごちゃごちゃしたメモを取っている。
あの騒ぎに城下町から脱出してすぐ、後ろから走って追いかけてきたデッシュ。
話によれば彼はエンジニアで、首輪をはずす方法を考えているという。
デッシュはエドガーを護衛として仲間にしたかったようなのだが、エドガーも機会関連ならお手の物であり、
首輪を外し脱出という研究は、エドガーにとって護衛だけでなく最大限に協力できるものであった。
かくして、二人で協力して研究をすることになった。
今、デッシュとエドガーが手にしている首輪は、身を潜め研究できる場所を探し、
森へとやって来た二人が、偶然見つけた死体から外したものだ。
少女と兵士。見知らぬ二人の死体は今、少々離れた場所に埋葬されている。
死体の首を切断するという行為はとても気分の悪いものだったが…それは、どうしようもない。
521:王子と魔女と盗賊と 2/4
04/11/22 22:14:43 PJwrEuLE
―それから、三人は小さな裏庭のそばに作られた小部屋へ移動した。
話すことはそれぞれにあった。
キーファは、グランエスタードの友人達と、支給された攻略本について話し。
ジタンは、ダガーを始めとする仲間と、この忌々しいゲームをどうにかしたいという思いを語り。
そしてリノアは、頼もしい恋人と、仲間達と、共に倒したはずの魔女アルティミシアについて知ること全てを伝えた。
だが、話の内容がたくさんあるからといって、収穫があるとは限らない。
結局、三人とも仲間達の行方はわからないまま。ゲームを抜ける手段も、攻略本の活用方法も思いつかないまま。
謎だけが、一つ増えた。
「魔女と時間圧縮ねぇ……一体、アルティミシアって奴は何がしたいんだ?」
「私にはわからないけど。でも、きっと理由があってこんなことをしてるんだと思う」
「あのな。理由もナシにこんなことされたらこっちがたまらないぜ」
キーファの言葉に、ジタンが「そりゃそうだ」と頷き返す。
それから、急に真顔になって二人を見つめた。
「なぁ。リノア、キーファ。正直なところどう思う?」
「どう、って?」
「だから魔女の目的だ。この殺し合いをさせる目的だよ」
「いや……突然振られてもなぁ」
ジタンの言葉にキーファは腕組みをし、リノアは頬に手を当てる。
それからしばらくして、キーファが顔を上げた。
「パターンとしてはやっぱり『娯楽』じゃないか?
昔の君主や貴族には、そういう悪趣味な見世物を楽しむ奴がいたそうだからな」
「うーん。それもありそうだけど……
前に読んだ本でね、集めた動物を殺し合わせて、生き残ったやつを使う呪いっていうのが出てきてたんだ。
もしかしたら、そういう呪いとか、何かの儀式なのかもしれない」
と、リノアが続ける。
「娯楽に儀式か……」
ジタンは天井を睨みながら、首輪に手を当てた。
522:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/22 22:15:28 pLJ4ZYaV
スミマセン、割ってしまいました…お先にどうぞ
523:王子と魔女と盗賊と 3/4
04/11/22 22:17:18 PJwrEuLE
―キーファが言ったように単なる娯楽目的なら、首輪の解除自体は可能である確率が高い。
なぜって、その方が見世物として面白いからだ。
『こうすれば解除できる』のに、それに気づかず殺しあう参加者達。それほど難しくない解除方法が見つかるのは、数多の友や仲間の血で両手を染めた後のこと。
この手の演出も、あの冷徹な魔女ならやりかねない。
けれどももし、リノアが言う通りに『何かの儀式』であるなら……首輪を外すなんてさせてくれないはずだ。
殺し合いが止まればその時点で目的が達成できなくなる。
―どちらにしても、自分たちに殺し合いをさせることが目的ならば、滅多なことでは首輪を爆破したりしないだろうが。
そこまでジタンが考えた時、突然轟音が鳴り響いた。
音が外からと気付いた三人は、慌てて中庭に飛び出す。
彼らは見た。天空に浮かぶ魔女の唇が、忌々しい言葉を紡ぎ上げていくのを。
そして……全ての放送が終わった時、三人の表情は蒼白なものに変わっていた。
世間知らずなお姫様だけれど、優しく芯の強い女性だったガーネット。
口は悪いけれど、根は真っ直ぐで正義感に溢れていたマリベル。
死ななくてはいけない理由なんて、どこにもなかった。
いや、他の人たちにも、同じことがきっと言えるはずだ。
「ねぇ、キーファ、ジタン」
リノアが口を開いた。
「こんなの、間違ってるよ。こんな形で人が死んでいくなんておかしいよ。
ねぇ、止めよう。止めさせようよ! こんなゲーム、続けさせたくない!
一緒に力を合わせて、止める方法見つけようよ!」
―それは理想だ。確固とした計画もなく、ただ思いに任せただけの言葉。それだけで人を救うことは決してできない。
けれども、人を動かすことはできる。理屈ではなく感情から生まれた言葉だからこそ、心に訴える力を持つ。
「そうだな……マリベルだって、きっとそうしろって言うよなっ」
「こんな下らないゲーム、エーコやビビのためにも早いところぶっ壊してやらないとな!」
瞳に拭い去れない哀しみと決意の色を宿らせて、三人は立ち上がる。これ以上の悲劇を生まないために。
524:王子と魔女と盗賊と 4/4
04/11/22 22:18:53 PJwrEuLE
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面
第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:不明 第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】
【キーファ 所持品:攻略本 第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】
現在位置:アリアハン城・裏庭
>>522
お待たせしてしまってごめんなさいorz
525:現実味のない事実 2/3
04/11/22 22:20:38 pLJ4ZYaV
(>>520の続き)
「で、俺がレディと話してた間、君の研究の成果は?」
笑いながら質問するエドガーを見ながら、デッシュは鉛筆を動かす。
「とりあえず、今わかったのはこんなとこ」
(…やっぱりな)
『予想通り盗聴器が内臓されてる。
分解ができないからまだ断定はできないが、爆発の仕組みは機械的なものじゃなくて魔法を使用しているかもしれない』
手渡された紙には、走り書きでこう書かれていた。
盗聴器のほうは、デッシュも書いたように二人の予想通りである。盗聴はずっと警戒していた。
二人は今まで"首輪を外す"という具体的なことは一度たりとも口にしていない。バーバラにも既に遠まわしに警告してある。
まあ、決定的なことを口にしなくても、研究だなんだと言い続けていればそのうち主催者にはバレるかもしれないが…。
「つーかさ、大分暗くなってきたよな。ランプ付けてくんねえ?」
「おい、そのぐらい自分で付けろ」
気さくなデッシュの性格のおかげか、二人のウマが合うのか。
一歩間違えば主催者に殺されるような重要な仕事をしているにも関わらず、二人の空気は明るかった。
―その時までは。
死者の名を並べた放送が流れたのは、それから暫くしたころ。
エドガーは、その中に知っている名を聞いた。
526:現実味のない事実 3/3
04/11/22 22:22:45 pLJ4ZYaV
「…ティナ…」
呆然と名前を呼ぶ。…それに、シャドウ。
―エドガーは、唇を噛み締めうつむく。
まさか、信じられない。…なんて現実味のない…事実なんだ。
悲しみよりも、言いようのない怒りが心を満たす。
なぜ、こんな形で生涯を終らせられなければならないのか?
暫くの間呆然としていたエドガーだが、ふと視線に気がつき顔を上げる。
心底心配そうに、少しだけ困ったようにこちらを見ているデッシュと、視線が交錯した。
…デッシュは何か声をかけようとするが、それよりも早くエドガーが声を出した。
「…大丈夫だ」
そう、夜空を見上げて…言い聞かせる。
本当は、大丈夫じゃない。まだ、怒りと悲しみで身体は震えている。
だがそれでも、今すぐにでもやらなくてはならないのだ。
(犠牲となったティナ達のためにも…)
きっと。
【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ひそひ草 ラミアの竪琴 イエローメガホン 首輪×1 紙や鉛筆など
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 首輪×1 紙や鉛筆など
現在位置:アリアハン北の森 第一行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
>>524 本当に申し訳ないです…もっとリロード気をつけます。
527:醜鬼 1/5
04/11/22 23:59:12 +Sz5T3gi
「わかった?クラウドが知ったら私はもう終わり…。だから、知られないようにあなたを殺すわ」
一方的に喋り尽くすと、ティファは未だ呆然としたままの少女を見た。
月明かりが木々の間から差し込んできて、ティファは容易に少女の瞳に視線の圧力をかける事が出来た。
ターニアの表情は、恐怖に包まれていた。
当然だった。好きな男に嫌われたくないだけのために人を殺そうとする女が、目の前にいるのだから。
「でも、話さないと約束するならあなたを生かしてもいいわ…」
取引だった。しかも、あくどい取引だ。
そんなこと、わかっている。でも…
今、クラウドに換えられる物など無くて。
「…嫌だよ」
少女は、震える声で言った。
「おかしいよ!?どうかしてる!」
座ったまま、怒鳴るようにティファに声を浴びせる。
「そんなの…おかしいよ!クラウドって人に好かれたいから、人を殺すの!?そんなの…!」
「……」
「そう!あなたは人殺し!エアリスさんを殺した!」
喚き叫ぶターニア。
ティファの脳裏に、再び、エアリスが浮かび上がる。
(ティファ…止めて…もう…)
エアリスの声が、何故か酷くしゃがれて聞こえた。
刹那、そのエアリスの胸から血が噴き出した。
やったのは…自分。
「いやぁぁぁぁ!!!!!!」
ティファは、銃の引き金に手を掛けた。
そして、視界が赤く染まった。
528:醜鬼 2/5
04/11/23 00:00:07 pQ2rsBN2
だが、視界が赤くなったのは、ターニアの血のせいではなかった。
何処からか飛んで来た炎の玉が、ティファの顔を焦がしたのだ。
「きゃぁ!」
のけぞるティファ。その隙にターニアは立ち上がった。
「お姉ちゃんこっち!!」
森の茂みの奥から、10歳にも満たなそうな少年が顔を出していた。
「逃げなきゃ!あっちにピサロさんって人がいるから!」
少年の声に従って、ターニアは走り出した
あの時と同じように助けられた、という少しの驚きをもって。
ビビは、再び茂みの中に隠れた。
あのお姉ちゃんが逃げるまで時間を稼ごう…
そう思ったからだ。だが、それは無用だった。
炎を顔面に喰らった女性は、転げまわり、手で顔を掻き毟っている様だった。
まさかここまでダメージを与えているとは、ビビも思ってなかった。
…やりすぎたかな。
ビビの不安が的中したようだった。
女性は、呻く事無く仰向けに倒れると、動かなくなった。
「し、死んじゃったの…?」
後悔した。殺すつもりは無かったから。
ゆっくりとそれに近づく。
そして、彼女の顔を覗き込んで…
「ひゃぁぁぁぁっ!」
思わず、叫んだ。
無我夢中で、ピサロの元へと走り出した。
529:醜鬼 3/5
04/11/23 00:00:58 pQ2rsBN2
「あなたが…ピサロさん?」
ターニアは、木の根元にもたれ掛かっている影を見て、言った。
さっきの場所から、そう遠くは無かった。
運がいいのか、彼の姿は月明かりが届かないため影となっていたので、ターニアは彼の体中にこびり付いた血を見ることはなかった。
何処か不思議なオーラを放つその影は、冷たい響きのする声で言った。
「そうだ。小娘、…ビビはどうした?」
相手が人間だから、言葉はどうしても冷たくなる。
それでも殺す気にならないのは、ビビの言葉のせいか。
…それとも、先程泣いているビビを見てからロザリーの姿がちらつくのが原因か。
「ビビ…?さっきの男の子…?その子は私を助けてくれたの…それで」
ターニアは言葉を止めた。説明は不要だった。
「ひゃぁぁっ!」
悲鳴を上げて、ビビがターニアに突っ込んできたから。
「…落ち着け」
闇でも利くその瞳を、倒れたビビと巻き添えを喰らったターニアに向けながらピサロは言った。
「う…うん…」
ビビの声は震えていた。
「何かあったのか」
「う、うん、さ、さっきの女の人が…」
ビビは、話し始めた。
かつて多くの死を見てきた彼でも、衝撃を受けた事を。
自分の放った魔法の生み出した結果を。
530:醜鬼 4/5
04/11/23 00:01:59 pQ2rsBN2
―ちょうどその頃。
ティファの右腕の指先が、ゆっくりと動き始めた。
不思議ではない。顔以外は、無傷同然なのだから。
…そう、顔以外は。
ショックと苦痛で、意識を失ったようだった。
(痛い…)
声に出したそう言ったつもりが、ただの苦痛となって彼女を刺激した。
目をゆっくりと開けてみた。
月の明かりが差し込んでいた。
(綺麗…)
ぼんやりと月を眺め、痛みを堪えて彼女は立ち上がる。
近くに落ちていた銃を拾い上げた。
その近くには、もう一つの支給品、エアナイフが落ちていた。
月明かりを反射して、キラキラと輝いていた。
拾い上げようとした。
…だが、出来なかった。
ナイフの刃に、月明かりで自分の顔が映し出されたから。
―醜い顔が其処にはあった。
唇は焼け爛れ、左の頬は溶けているかのようで。
左頬から顎にかけての皮膚が、全て無くなっていた。
剥き出しにされた肉から、血が滴り落ちていた。
鼻は焼けて、ズルリと垂れ下がっているようで。
「……!!」
悲鳴を上げようにも、唇が無いから、上げられなかった。
醜鬼にも似たその顔が、今の自分の顔で。
それは自分の内面を具現化したものだと、思った。
…そして、再び気を失った。
531:醜鬼 5/5
04/11/23 00:03:03 pQ2rsBN2
【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ビビの話をとりあえず聞く、ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明 行動方針:ティファの状態について話す、その後はピサロに従う】
【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:ピサロとビビに従う】
現在位置:レーベ東の森中央付近
【ティファ(気絶、顔面に重度の火傷) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ(未だ拾ってません)
行動方針:?】
現在位置:レーベ東の森中央付近、ピサロ達より若干西。
532:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/24 00:47:16 hB4BDgmh
突然、地震が起こった。
「これは、、、震度18!!ばかな」
アルティミシアが叫んだ。
ゲームを始めたことにより起こったエネルギー。
そのエネルギーによる予想外の事態…そして、それが終わりだった…
死んだ
FFDQバトルロワイアル 完結!!
533:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/24 01:02:30 hB4BDgmh
しかし再会!!!!
534:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/24 01:04:05 hB4BDgmh
終了!!!
再開!!!
終了!!!
再開!!!
終了!!!
再開!!!
終了!!!
535:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/24 01:20:29 hB4BDgmh
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536:気配
04/11/24 19:02:29 GcFK8hf2
忌まわしい放送が終わり、イザは唇を噛んでうつむいた。
「アモス…」
許せない。アモスを殺したものも。許さない。こんな『ゲーム』を仕組んだ魔女も。
「竜王さま…」
ドルバも気づいていたとは言え、改めて聞くと、こみあげるものがある。
「ニンゲンにも強い者がいるようだな」
「ああ。人間だっていざとなったら、強い。あんな魔女にも負けないさ。だから、
こんなゲームに乗っちゃいけない」
イザが自信に満ちて言った、その時。
「…ニンゲンの声がするな」
ドルバが首をもたげて階段の方を見やった。
「人の声だって?」
イザには聞こえなかったようだ。ドラゴンは人間より感覚が優れているらしい。
「ああ。間違いない…複数のニンゲンの話し声だ」
イザはすかさず身を翻した。階段をテンポ良く駆け上がる。
「行ってみよう!もしかしたら、協力してくれる人たちかもしれない」
ドルバは黙って頷くと、イザの後に続いた。
【イザ 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近)
所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
第一行動方針:人の声がした方を確認する
最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
【ドルバ 現在位置:同上 所持品:不明 行動方針:イザに協力する】
537:決断を 1/3
04/11/24 22:30:33 jIZJX57s
空に浮かんでいた魔女の姿が消えた。再び、夜空が戻ってくる。
『ゲームの脱落者』として並べられた名前、それは同時に死を意味している。
自分の殺めた老人の名もあったのだろう。確認はしていないが、おそらくは。
「―セシル…ローザ…」
皮肉なものだ。
裏切り者の自分はまだここに生きているのに、セシルはもう逝ってしまった。
ただそれだけを思う。…涙を流す理由など、もう無いから。
所詮、現実とはそんなものなのだろう。正しい者が勝つとは限らない、生きるとは限らない。
…今回は、俺が生き抜いてみせよう。
カインは目を閉じて一度深呼吸をすると、空高く跳び上がった。
538:決断を 2/3
04/11/24 22:31:21 jIZJX57s
「エッジ…さん、すみません…待って下さい…」
「お、おい!大丈夫か!?」
膝をつき座り込んだマリアに、ユフィを担いだエッジが慌てて駆け寄り―瞠目する。
月明かりに照らされた彼女の真っ青な顔、頬を汗が伝わって地に落ちるのを見て。
(―何て馬鹿野郎なんだ…俺は!)
エッジはとにかく必死で走っていた。まだ助かるはずの、瀕死のユフィを助けたい一心で。
それでもマリアがついてこれるスピードは保っていたつもりだったし、
実際に彼女はすぐ後ろをしっかりと走ってついてきていたのだ。
しかしついて来れているからといって、彼女が忍者である自分と同じ体力を持っているはずが無いのだ。
きっと彼女も、ユフィを助けたい一心でここまで無理していたのだろう。
…それに気付けなかった自分が情けない。エッジはぐっと拳を握りしめる。
そんなエッジに、マリアは少しばかり困ったような表情で言った。
「ごめんなさい…エッジさん、先に行って下さい」
「なっ…」
「本当は私も行きたいんですが…ごめんなさい、立てそうになくて…
…随分走りましたし、きっともう近くまできています。これを持っていって下さい…」
マリアは呼吸を整え、持っている波動の杖をエッジに差し出した。
しかし、エッジはそれを受け取らない。受け取るわけにはいかない。
(マリアさんを置いて行ける訳がねえだろが…
…しかし、どうする…?一刻も早く処置しないとこいつは死んじまう…)
エッジは迷った。今、迷っている時間こそ勿体ないことはわかっている。
それでも―決断は難しい。
539:決断を 3/3
04/11/24 22:32:18 jIZJX57s
エッジ達三人よりも少々離れた場所で、カインは手頃な木を見つけると音を立てないよう着地した。
もちろん、三人の存在に気付いた上での行動である。
(相変わらずだな、エッジ…)
カインは一目で状況を理解した。エッジの背中に片腕を無くした女がいることを見れば一目瞭然。
おそらくは、あれを助けてくれる人間でも探しているのだろう。もう一人も…仲間だろうか。
(さて、どうするか)
エッジの強さはカインもよく知っている。そして今は、どんな武器を持っているかもわからない。
二対一ということも含め、確実に倒すには…真っ向から行くのは得策ではないだろう。
相手の手負いを利用するか、あるいは騙まし討ちでもするか。
…しかし、それでいいのだろうか?仮にもかつての仲間だ―と、そこまで考えて首を横に振った。
(いや、そんな事は関係ない…。 ……あっちは、まだ俺には気付いていないか)
さあ、どうする。
【ユフィ(瀕死) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー 行動方針:死を待つ】
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル
第一行動方針:悩み中(波動の杖の向く先(アルカートのところ)へ走る) 第二行動方針:仲間を探す】
【マリア(疲労) 所持品:波動の杖 アポカリプス+マテリア(かいふく)
第一行動方針:休息(ユフィを助ける) 第二行動方針:夫を探す】
現在位置:アリアハン北の橋から西の平原
【カイン(傷はほぼ回復) 所持品:ランスオブカイン 第一行動方針:様子見 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
現在位置:エッジ達のすぐ北、森の入り口辺りの木上
540:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/24 22:43:02 DzvmlbRB
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i! !` `ーァ、-ー' ! ノ!トi,!'",ノ-、
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ーニー-、._ `ヽゞニ-、.;' i! ! , `ト_ノ`x-'" ノ
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まとめサイトへいくんだな
おまえたちはおれをしらなすぎるだろう……
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