FFDQバトルロワイアル3rdat FF
FFDQバトルロワイアル3rd - 暇つぶし2ch435:光と闇1/2
04/11/16 17:48:11 LgvOw1bI
(殺し合いをしろ…そんな事が出来るわけがないのじゃ!あの中には…わしの…仲間が…)
フライヤはその考えを頭の片隅に置きながら、空を華麗に舞っていた。
(…もし、ジタンやエーコがわしに襲い掛かってきたときには…いやそんな事はありえるはずが無いのじゃ!
 だから…わしはジタンに会いたい、まずジタンに会うのじゃ)
そう考えながらも空を飛んでいたフライヤは、落下地点に人影が居ることに気がついていなかった。
「のおおっ!?」
落下地点にいた人物とぶつかるフライヤ、何とか着地はしたが、落下地点にいた人物はどうやらのびてしまったようだ。
顔を叩いてみる、反応なし。抓って見る、反応なし。
「しまった…わしとした事が迂闊じゃった」
そう呟きながら、責任感からかその踊り子のような女性を守るように、謎の盾と槍を持ち、臨戦体制になったのだ。
しかし、この人物が目を覚ましたときに、彼女はもっと責任を感じてしまうことになるのだろう。
それくらいの時だった、彼女は北へ向かう光の粉を見た。それは…嘗て神剣だった物の粉のような気がした。
「あれは…一体何じゃ?」

「くそっ!…もう少しで仕留める事が出来たのにッ!」
ギルダーは地面をたたきながら傷を癒していた。
彼は、先ほど一人の白魔道士を仕留める寸前まで迫っていた、だがその時にドーガに阻止され、力の差の為逃げてきたのだ。
そして…彼は支給品の剣を見つめた、そして思ったのだ。
(―この剣に…生あるものを一瞬にして断ち切る力があれば…ドーガに勝てるかもしれない…でも…)
剣を握りながら思う…すると、剣が黒く濁り始めたのだ。それはゆっくりと、黒く、黒く、ドス黒く。
思わず手を離すギルダー、だがその剣はどんどん黒くなっていく。
(―な、何だ!一体!こ、この感覚は?)
剣は見る見るうちに周りを黒く染めていき、やがてギルダーをも染めていったのだ。
あたりが黒く染まった後、眩い閃光と共に、剣が見る見るうちに形を変えていく…。
光が収まったとき、ギルダーの目の前には一つの…暗黒剣があったのだ。
デスブリンガー、斬る者を死に追いやる伝説の暗黒剣が。
ドス黒いその剣を手に、ギルダーは獲物を求めた。その目には…しっかりと赤い帽子の女性…?いや、怪物が映っていた。

436:光と闇2/2
04/11/16 17:49:02 LgvOw1bI
【ギルダー(負傷) 現在位置:大陸中央の川 所持品:デスブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
 第一行動方針:赤い帽子の女性(フライヤ)を仕留める(デスブリンガーの試し斬り
 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】

【フライヤ 現在位置:大陸中央の川から西の森 所持品:えふえふ(FF5) グローランス
 第一行動方針:気絶させてしまった女性を守る
 第二行動方針:ジタンに会う
 最終行動方針:ゲームには乗らない】
【ユウナ(気絶) 現在位置:大陸中央の川から西の森 所持品:不明
 第一行動方針:不明
 最終行動方針:不明】

437:穢れた自分と 1/4
04/11/16 18:32:59 01FIz+aE
「な~んか、目を合わせてくれなくなったんじゃない?」
「…気のせいよ」
ティナとアーヴァインは、奇妙な間隔をとって歩いていた。
二人目を殺すまでは無かった間隔だった。
…しかし、それには二人とも気づかない。
何と無く雰囲気が先刻までと違うという事しか。
そして、二人の間隔を徹底的なまでに具体化する存在が、彼女達の少し後ろに居た。

「やっと見つけたわ」
不意に後ろから声を掛けられ、驚きながらも振り返り武器を構える二人。
まず目に入ったのは、赤いマント。
それから、その女性の顔に視線が移る。
黒髪の、美しい女性だった。
「誰、あなた?用件は何?」
ティナは、冷たく言った。
すぐに殺してしまった方が良いのは分かっているけれど、ティナの中の何かがそれにブレーキを掛ける。
―とりあえず相手は丸腰で、殺気も無い。いつでも、始末できるわ。
アーヴァインに、今は待つようにと目で合図を送った。
「私はアイラ。…あなたがティナね?」
女性は、流れるような口調で言う。
不思議と、彼女が自分の名前を知っていることに関してティナは驚かなかった。
「ええ、そうよ」
「あなたに渡したい物があるのよ」
そう言ってアイラは、懐から石を取り出す。
アーヴァインにはそれが何か見当もつかなかったが、ティナはすぐにそれが何かを理解した。

438:穢れた自分と 2/4
04/11/16 18:34:05 01FIz+aE
冷酷でなくてはならぬと封じ込めた筈の感情が、一気に彼女の中で噴出した。
「魔石…おとうさんの…?」
幻獣としての生命を終え、魔石となってティナの支えとなっていた、父マディン。
最後の戦いの終結と同時にその魔石も砕け散り、もう、会うことも無いと思っていた存在。
生涯のほんの一部だけを共に過ごした存在だけれども、彼女にとって唯一の父親。
何者でも取って代わることの出来ない存在。
「おとうさん…?」

「あなたに渡したいの」
アイラの声が、何処か優しく、何処か強く響いて…
フラフラとアイラのほうに歩いていき、ティナは両手を前に差し出した。
数秒の間の後、手にズシリと重みがかかる。
次の瞬間、彼女の意識は、別の世界に飛んでいた。
―モブリズへ。


子供たちの会話が、聞こえてくる。

…大きくなったら何になりたいの?
…わたしはティナママみたいなひとになりたい!
…わたしも!
…ボクは、ティナママとケッコンするの!
…ダメだよ!ボクがティナママとケッコンするんだ!
…ボクがケッコンするの!
…ダメ!ティナママはみんなのティナママなのよ!

あまりに、平和で。
あまりに、無邪気で。
あまりに、清純で。
―自分だけが、血に汚れていて。

439:穢れた自分と 3/4
04/11/16 18:34:57 01FIz+aE
私の斬った男の人の血?
私が焼き尽くした50人の兵士の血?
とにかく私は血で汚れていて。
―子供たちには、見せられない。


意識が、不意に現実へ戻された。
掌の中で、父の魔石が、音を立てて、割れた。
これが、おとうさんが最後に伝えたかった事だったの?
穢れ無き子供たちと血に汚れた自分…
それだけあれば、何を伝えたいのか十分わかる。
「ごめんなさい…おとうさん…みんな…」
涙が、瞳から溢れ出た。
もう、生き残る願望は無く。
ただ子供の幸せを願う姿が其処には在って―

―次の瞬間、少女の口から大量の血が吹き出した。
今本当の自我を取り戻した少女の首筋を、一本の矢が貫いていた。

「何てことをするのッ…!」
アイラの、呻きと叫びとが混じり合ったような声が、矢を放った主に浴びせられる。
それに対し、その男は何も変わらぬ口調で、言ってのけた。
「君が最初に言ったんだよね…邪魔になれば殺すって。
君がなんか泣いているの見てさ、思ったんだよ。君はもう使えない…ってね」
倒れ伏し動かないティナを一瞥すると、アーヴァインは再び弓を構えた。

440:穢れた自分と 4/4
04/11/16 18:36:28 01FIz+aE
「…!?」
ロトの剣を構えようとしたアイラは、ティナの身体の異変に気づいた。
アーヴァインも気づいた。弓の構えを解かずに、それを凝視した。

倒れ伏したティナの身体が、静かに、光りだす。
淡い桃色に。静かに、静かに…
―私の記憶だけでも、子供たちに残りますように―
少女の最後の願いが、ゆっくりと光を纏う。

またゆっくりと光が収まったとき、彼女の身体は既に消えていた。
ただ其処に、不思議な石が一つ。
―幻獣の血を引く者の最後の業。
―魔石となって、彼女は生涯を終えたのだった。

「なんという…」
アイラは、呆けるようにそれを見つめていた。
アーヴァインも、同じだった。
二人とも、攻撃姿勢を維持したまま、不思議な光を帯びたその石を見ていた。
―少女の髪と同じ、緑色のその石を。

【アーヴァイン 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ
  行動方針:アイラを殺す、ゲームに乗る】
【アイラ 所持品:炎のリング ロトの剣
  行動方針:アーヴァインを倒す(殺すのは避けたい?)】
【ティナ 死亡】

魔石『ティナ』が、アイラとアーヴァインの間に落ちています
ティナの所持品(グレートソード ちょこソナー&ちょこザイナ ミスリルの小手)は、魔石『ティナ』と同じ位置に放置。
魔石『マディン』は砕けました。
現在位置:ほこら近くの山岳地帯

441:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/16 20:30:02 0PYGZ9H1
【残り 113人】です
申し訳ない

442:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/16 20:56:49 LgvOw1bI
>>435-436は無効です。
詳しくは雑談スレで。

443:1/3 バッツとローグの話
04/11/16 21:33:36 gnkwfmjJ
普段は多くの人が行き通り、絶えず笑い声や子供たちのはしゃぐ姿が見受けられるこの町も、
今は時計の針さえも動かないかと思われるほどにひっそりとしている。
そしてつい先ほどの賑やかな喧騒は、間抜けな商人が泥棒に合い声をあげ、
その周りに人が集まるなどというものではもちろんない。
辺りの崩れかかった民家に、まだ残っている煙、
それは緑豊かな町とはかけ離れた、まさしく戦場の臭いであった。

民家の一室で、バッツとローグの二人が話し合っていた。
「なあ、ローグ」
ローグはあくびをしながら応えた。
「どうして、おまえは俺を助けた?」
「へえ?」
その質問に、ローグは暫く首を捻る。
「そうだなあ。仕掛けたのがあっちのほうみたいだったのと…あとはなんだ、
 おまえ押され気味だったろ。ほっといて死なれたら、後味悪いからな」
「でも、俺もやる気だったらどうするつもりだったんだ」
「そのときはそのときだ。でも俺も人を見る目はあるつもり……
 いや、ま、とにかくほっとけなかったんだよ」
仲間たちのことがふと思い浮かんで、ローグは視線を逸らして口元を緩めた。
「ま、これも何かの縁ってやつさ」


「ところでおまえ、魔法が使えるんだろ。それならよ」
忌まわしく光る首輪を指して言った。
「これ、はずせるような呪文、しらねえか?」
「知ってたら、とっくに使ってるぜ」
笑いながら答えるバッツに、ローグは「いわれてみればそうだな」といいながら、
まだ何かいいたそうに口をもがもがしている。
その様子に何か後ろめたいような、そんな気持ちになったバッツは、
とりあえず「魔力次第では、いけたりしてな」と、さもありそうでその実適当なことを言う。


444:2/3 バッツとローグの話
04/11/16 21:36:18 gnkwfmjJ
しかし、ローグはその粗雑な所見にくいついた。
「そう、それだよ、俺がききたかったのは。一人じゃどうにかならなくても、
 何人か集まればなんとかならないか?」
「ああ、なるほど。そういうことしたことないから、考えつかなかったな」
「やろうとすればできるだろ」
「さあな。ただ、できないとは断言できないよなあ」
そうすると、先の投げやりな言葉も、そうとは言いきれないかもしれない。

「さっきの子、魔導師だったんだろうな」
思い出したようにバッツは呟いた。
「逃げちゃったけどな」
「仕方ないさ。仲間になるとは思わなかった。そうそう信じられないと思うぜ。
 でも、理性じゃ多分わかってるんだろうな」
「そりゃあ、あいつ自身から言ったから。‘俺に構うな’って」
「だから信じざるを得ない。でもな、だからこそ、信じられないんだ、きっと」
「は?どういうことだよ、それ」
「んーとな…いや、なんでもないよ」
バッツはぼさぼさと髪の毛をかくと、気怠そうに外の様子を窺った。
「俺たちの戦いの音を聞きつけて、だれかよってくるかもな」
「そのうえ町とくれば、必然ってか。どうする?」
「俺、会いたい奴がいるんだ」
「…俺もそうだ」
「またさっきみたいに、ゲームにのってるやつに襲われるかも知れないけど」
「そんときは、そんときさ」
バッツは寸時、きょろきょろとあたりを見ますと、気恥ずかしそうにいった。
「…ところでさ」
「ん?」
「腹減った…」
「…おまえなあ!」
ローグは微笑して、台所へと向かっていった。


445:3/3 バッツとローグの会話
04/11/16 21:39:40 gnkwfmjJ
草原をかけぬける。吹き抜ける風が心地よい。
町の影が遠ざかっていく。水平線の下に埋もれる。
もう、見えない。

カインは不思議だった。
何故自分は、リディアをみたとき咄嗟に逃げ出してしまったのだろう。
リディアなら、あの場で味方につけることもできた。
でも、それを選ばなかった。
しかもそれはごく自然に、無意識下で、感情か、それとも本能が命じたのだ。
「俺も、まだまだ甘い…」
結局、徹しきれてはいないということだろう。
何もかもを利用するには、それ相応の覚悟がいる。
「生き残る理由はない」
それでもきっと、自分は殺戮を繰り返すのだろう。
きっと。……



【バッツ 現在地:アリアハン城下町民家 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:飯 第二行動方針:レナ、ファリス、クルルとの合流】
【ローグ 現在地:アリアハン城下町民家 所持品:銀のフォーク@FF9
 第一行動方針:飯 第二行動方針:首輪を外す方法を探す】

【カイン(負傷) 所持武器 ランスオブカイン 現在位置 北の平原 
 第一行動方針:傷の回復を待つ(大分回復) 第二行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】


446:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/16 22:04:12 tHmrseLc
クラウドはまだ出方を決めかねている。凄まじい気の満ちる二人のバトルフィールドには、容易に
踏み込めない。
(この二人……強いな)
クラウドはぎりりと奥歯を噛みしめた。
この場に自分がいることなど、目の前の二人はまったく関係ないことのように対峙しているのだから。


セシルは怒りの剣を、ガーランドは狂気の剣をそれぞれ相手にぶつけ合った。
火花が散る。二人の剣士が相手の目を睨む。
「貴様は絶対に許さない」
「ほざけ、小僧」
剣と剣が悲鳴をあげて弾けとんだ。セシルは吹き飛びざまに長い足から蹴りを放ち、
ガーランドは身を反らせてかわす。
距離をとり、荒い息をつくセシル。目を血走らせ、憎い仇の顔を睨みつける。
ガーランドはニヤリと笑う。
「この剣が血を欲しがっている。貴様の血をな」
その顔は狂気に満ちていた。
顔だけではない。手にした剣がガーランドの声に反応し、身震いするほど暗い輝きを放った。
離れたところで、クラウドは息をのんだ。
あれが狂気を増幅させる暗黒の力なのだ。剣は、己を使うものに、力と狂気を授けている。
ガーランドは剣に使われ操られる道具となっていた。
「……五人目、その命もらったっ」
ガーランドが、出た。

セシルは、もう何をするでもなく、ただ迎えうった。掌に爪が食い込むほどに手を強く握りしめ、
凄烈な気合の声が迸った。
「貴様だけはぁーーっ!」
セシルが光の剣を振るい突撃する。ガーランドは口元に薄ら笑いを浮かべて舞うように狂いの剣で
空をなぎ払う。
ガーランドの剣は先が触れただけで相手の意思をくじく力があるようにクラウドは思えた。
その先にいるセシルの銀色の髪は逆立ち、狂気の剣の力に抵抗するかのようだった。

447:じっと見つめる眼
04/11/16 22:05:17 tHmrseLc
その時、ふっと遠くできらびやかなものが光った。
―銀髪?
クラウドは一瞬、二人の戦いから気を奪われた。セシルの銀髪の力など取るに足らない輝きが
遠くで見えたものから放たれたからだった。

ドスン。
空を舞っていたガーランドが突然機械じみた奇妙な動きを見せ、地に潜りこむように頭から
前のめりに倒れていった。
「覚悟!」
セシルは剣を振り下ろし、ガーランドの頭蓋を真っ二つにした。
ガーランドは地に伏し、ぴくりとも動かなかった。
赤い血が流れ、まばらに草の生えた原野に広がっていった。

「勝った、のか……」
セシルは茫然とガーランドを見下ろした。
確かに勝ったが、最後の瞬間ガーランドは見えない力に押さえ込まれるように体勢を崩した……
なにかあったのか?
そういえば剣を振っていたガーランドの背で光が見えたような……

釈然としないセシルの身体に銀の銃弾が撃ち込まれた。
「がはっ……」
胸から口から、血が噴き出す。
セシルは自分の身体に何が起こったのか理解する間も無く、崩れ落ちた。
心臓を貫かれていたので、即死だった。

(あ、あれは……)
クラウドは戦慄するものを見た。
遠くで放たれた輝きは自分の想像を悪夢という形で具現化された。
―セフィロス
最強のソルジャー、セフィロスがクラウドの方を見ていた。

448:じっと見つめる眼
04/11/16 22:10:16 tHmrseLc
クラウドは背筋を凍らせた。見てはいけないものを見てしまった、そんな気がした。

彼らは確実にクラウドに近づいてくる。セフィロスと、もう一人。
歩き続け距離をつめ、クラウドをじっと見るや、ずっと無表情を決め込んでいたセフィロスが
つくり笑いをうかべた。
『クラウド、殺してやるぞ』
そう言っているのが、クラウドの耳に届いた。
あるいは、少なくともそう聞こえた気がした。

クラウドは恐怖のあまり逃げ出した。

 
【クラウド 所持品:アルテマウェポン おしゃれなスーツ
 現在位置:アリアハン南の平原→北へ
 第一行動方針:セフィロスから逃げる
 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】

【セフィロス 現在位置:アリアハン南の平原→アリアハン 支給品:村正
        行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘
 クジャ   支給品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
        行動方針:最後まで生き残る】

【セシル、ガーランド死亡】

【残り 111人】

449:本当の自分 1/3
04/11/16 22:58:00 RbGkzQEy
残された魔石を挟み、対峙する二人。
だが、静寂を破ったのはどちらでもなかった。
「動くな、アーヴァイン」
アーヴァインにとっては懐かしく、最も聞きたくなかった男の声が背後で響く。
彼はアイラに視線を向けたまま答えた。
「スコールか。ずいぶん近くにいたんだね~。
 まだティナが生きていた頃に会いたかったよ」
「てめえが殺したくせにッ!」
怒りをあらわにするマッシュを制しながら、スコールはアーヴァインにナイフを向ける。
「なぜ、こんなことをした? ゲームに乗る理由はなんだ?」
「最期に聞いておいてやるってわけ? 優しいね、スコールは」
アーヴァインは小さく笑った。殺気の渦中にいながらさも愉快そうに、挑発するように。
それが急に真顔に戻る。
「期待に添えなくて悪いけど、理由なんて大したことじゃないんだ」
「……何だと?」
スコールの目がすうっと細まり、マッシュの怒気が高まった。
一触即発の雰囲気の中で、アーヴァインは言葉を続ける。
「忘れたのかい? 僕はスナイパーで傭兵だよ?
 依頼されれば誰でも殺す。任務達成のためなら何でも使う。遂行に邪魔なら排除する。それだけの話さ。
 君たちみたいに奇麗事や甘いこと言ってる余裕なんて―ないね!」
それが合図だった。マッシュが、スコールが、アイラが同時に躍り掛かる。
けれどもアーヴァインはスライディングするように身をかがめ、素早く大剣と小手を拾い上げると、斜め前へ一気にジャンプした。
アイラの身長どころか木々の背丈よりも高く飛び上がり、空中で回転しながらボウガンの狙いを定める。
その矢が、不意に漆黒の色を帯びた。
「じゃあね」
何の躊躇いなく引き金を引く。暗黒の波動を帯びた矢は、狙い違わずアイラの背へ―
「ふざけるんじゃねえ!」
だが、その時マッシュが両手から光輝くオーラを打ち出した。
黒と白、二つの色はぶつかり合い、互いに相殺して消滅する。

450:本当の自分 2/3
04/11/16 23:01:33 RbGkzQEy
「あらら~……無茶やるなぁ」
三人の包囲を抜けて着地したアーヴァインは、ぽつりと呟いてから踵を返す。
「待ちなさい!」
「やだよ~だ。三対一なんて無謀な真似するほど馬鹿じゃないもんねー」
迫るアイラをボウガンで牽制しつつ、アーヴァインは再び飛んだ。
山の急斜面を飛び越えて、はるか下の道へと姿を消す。
「……アーヴァイン」
スコールは悲しげに彼の名を呼んだ。仲間であり旧友『だった』、青年の名を。
マッシュは、少女が残した緑石を手にした。その深青色の瞳から、涙が静かに零れ落ちた。

上手く三人から逃げおおせたアーヴァインは、すぐに山道を下ろうとした。
だが、数歩歩いたところで足がもつれて転んでしまう。
「うーん。やっぱこの高さだし、無理がきたかな?」
彼は頭を掻きながら立ち上がり、再び歩き出す。だが、またもやよろめき、バランスを崩してしまう。
ふと、手を見た。小刻みに震えていた。いや、手だけでなく足も、全身が。
呼吸は荒く、心臓は早鐘を打っている。何より、耐えがたい後悔と悲しみが胸に渦巻く。
―孤児院の仲間と離れ離れになった時もこうだった。
デリングシティでイデアを狙撃した時もこうだった。
人前で自信家を装うことはできても、一人になると臆病な自分が噴出してしまう。
大切な人を傷つけないといけない時、気弱な本性が垣間見えてしまう。
一度そうなると止まらない。どうしようもなく辛くて、心が悲鳴を上げて崩れそうになる。
だが、彼の場合、壊れてしまうには意思力が強すぎた。それ以上に記憶に残る少女の笑顔が、狂うことを許さなかった。
(……僕は彼女に会うんだ。もう一度、あの青いガーデンで。
 そう決めた……決めたんだ。誰の意思でもない、僕自身の意思で。
 だから迷わない。今さら迷ってたまるものか)
己の弱さを噛みしめながら、それでも自分の願いを叶えるため、アーヴァインは立ち上がる。
繊細で弱気な少年から、殺人者のそれへ戻りつつある瞳が、道を上ってくる人影を捉えた。
相手は一人、頭巾をかぶった少女だ。
「スコール達が追ってくるまでに片付けられるかな?」
彼はシニカルな笑みを浮かべながら、ボウガンを構えた。

451:本当の自分 3/3
04/11/16 23:04:34 RbGkzQEy
【アーヴァイン 状態:HP4/5程度
 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ  グレートソード ミスリルの小手
  第一行動方針:時間があればマリベルを殺す 第二行動方針:ゲームに乗る
  現在位置:アリアハン東山岳地帯、森とほこらの中間辺り】

【マリベル 所持品:セイブ・ザ・クイーン(FF8)、アポロンのハープ
 第一行動方針:スコールとマッシュを連れ戻す、戦いは極力避ける
 現在位置:アリアハン東山岳地帯、森とほこらの中間辺り】

【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング
 第一行動方針;アーヴァインを追い、止める
 現在位置;アリアハン東山岳地帯、ほこらの近く】

452:叶わぬ願い 1/4
04/11/17 01:29:51 BgDD+hv3
マチュアはスミスを探し、城内の探索を続けていた。緊張から額には冷や汗が浮かんでいる。
…万が一襲われても、城内には逃げ場が少ない。危険も大きいことはわかっている。
それでも、スミスがここにいる可能性もある以上、素通りするわけにはいかなかった。
もちろん、それぞれの部屋に人がいないかどうかは十分注意しているし、両手でスナイパーCRをしっかりと握っている。
(一階には、誰もいない…?)
…城内、少なくとも一階は、不気味なほどに誰もいなかった。
ひとつだけ気になったことといえば、半分凍っている部屋があったことぐらい。
しかし、やはりというべきかその部屋にも誰もいなかったし何も無かった。
(二階…階段が直接、王室に繋がっているのね…)
マチュアは緊張しながら、恋人スミスを思いながら、二階への階段を上がった――上がりきった、その時。

突然、彼女の手首に衝撃が走った。――スナイパーCRが弾かれたのだ。
マチュアは弾いた主を確認する事もなくあわててそれを拾おうとするが、
目の前で振り下ろされた氷の刃がスナイパーCRを叩き割った。
青ざめながらも、顔を上げ、相手の顔を確認するマチュア――刃の主は――骸骨のような男。
「ふむ…そのような武器は…あまり美しくもないな…」
骸骨の男は一瞥するとマチュアに向き直り、氷の刃を構えなおした。

「…い、いやああああああっっ!!」
マチュアの心を、恐怖が支配した。――男が凶器を持って…自分を殺そうとしている――!
咄嗟に聖水を取り出し、蓋を開けようとするがそれもまた、氷の刃によって弾かれ、床を滑る。
今度は狙いが多少外れたのか、それともわざとなのか。マチュアの手が少し切れ、鮮血が飛び散った。
「ふむ、またも…必死で抵抗する娘か。見目は美しいというのに勿体無いものよ」
「…いやああああ!!スミス、助けて…!!」
…マチュアは、自分の悲鳴の中で倒れた。
ハインが攻撃したわけではない。追い詰められ、死の迫る状況、恐怖のあまり失神したのだった。
「美しい血だ…このまま、美しい死を…」
ハインは、床に倒れたマチュアへとゆっくりと歩み寄り氷の刃を静かに向けた…しかし。

453:叶わぬ願い 2/4
04/11/17 01:31:42 BgDD+hv3

「やめろーーーーっ!!!」
静かな部屋に突然の乱入者。マチュアの悲鳴を聞きつけたジオが、階段を上がってきたのだ。
ジオは一目で状況を理解し――ハインが振り向いたときには、既に床を蹴っていた。
「…愚かな!」
ハインが邪魔された怒りで顔を歪め、氷の刃を振るう。とはいっても、人間の物ではない顔からは表情はわからないが。
今度は先程のようなゆっくりとした動きではない。迫りくるジオを狙い、素早く正確に振り下ろす。
「くっ!」
氷の刃は、空中で後方へと飛びのいたジオの、すぐ目の前を斬った。
着地したジオを狙い、ハインはさらに刃を振るう。
一瞬早く床を蹴り、横様に飛び避けたジオは――ハインに向かって小さな袋を投げつけた。
「これでも…くらえっ!」
ドリームパウダー。
体制を崩しながらも狙いは外れることなく、袋はハインの骸骨顔の辺りに直撃し、そして。
「ぐあああああっ!」
息苦しい香りの粉が大量に舞った。ハインが悲鳴を上げ、顔を抑えた。
(チャンスだ!)
ジオは急いでマチュアを背負い、ほとんど飛び降りるように階段を降りていく。
完全に意識を失っている女性、この状況で連れて逃げるのは危険だがそれでも、助けないわけにはいかない。
一階は、先ほど見た限りでは四角が多かった。大丈夫、隠れられる。
(まずはこの女性を安全な場所に隠して…それから、あいつを何とか)
そう思考しながら、一階の廊下へと着地した、その瞬間。

――ざくり。
ジオは、嫌な音を聞いた。

454:叶わぬ願い 3/4
04/11/17 01:32:54 BgDD+hv3

「…ぐっ、あ…? …!げほっ、がはぁっ…!」
マチュアを背負ったまま、崩れ落ちるジオ。
口と身体からとめどなく血が溢れ出し、床を汚していく。
背後から投げられた氷の刃がマチュアの背中を貫通し、ジオの腹の辺りに深々と突き刺さっていたのだ。
(…まさか…効いてなかったのか…?後ろから、こんなでかい剣を投げ…)
ぼんやりとする意識、動けなく、振り返る事も出来ない上に視界は掠れてきていたが…わかった。
あいつが、ゆっくりと階段を下りてくることを。――自分にとどめをさしに来るのだ。
いや、もう相手はすぐそこに迫っていた。自分の身体から刃が引き抜かれたのがわかった。
(…やばい、立てねえよ…アルカート…)
ここで、死ぬのか。彼女に、思いを伝える事も出来ずに。
…何をやってたんだ、俺は…アルカートを守るどころか、この女性さえも守れないで…。
「ごめん、アルカート…」
ジオが呟くと同時に、氷の刃がジオの身体を完全に貫いた。
彼の身体が停止する直前、閉じかけた目から涙がこぼれたが――それを見るものは、いなかった。


「………」
ハインは二人の死体を前に、とてつもない怒りだけを感じていた。
見目では怒っているとはわからないのだが、周りの空気がピリピリとしている。
ドリームパウダーのような、対外ではなく体内に直接ダメージを与えるものは、今のハインにはほぼ無効だったのだが、
ハインにとっては、自分の顔に粉を投げつけられた――その事実だけが問題だった。
怒りの対象、ジオは既に死んだというのに…その怒りは収まらないようだ。
「…許せぬ…許せぬぞ…」
ハインは怒りの発散を求め、すぐ目の前の城門を通っていく。
後には、ハインに蹴り飛ばされた、ジオとマチュアの無残な死体だけが残った。

455:叶わぬ願い 4/4
04/11/17 01:33:42 BgDD+hv3

【ハイン 現在位置:アリアハン城下町へ 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪 行動方針:殺戮】

【マチュア 死亡】
【ジオ 死亡】
※放置アイテム※グラディウス、おしゃれなバンダナ、首輪×2、聖水、ミスリルナイフ

【残り 109人】

456:訂正
04/11/17 01:37:19 BgDD+hv3
※放置アイテム※グラディウス、おしゃれなバンダナ、首輪×2、ミスリルナイフ

です。

457:トンベリ、改め …… のにっき 1/2
04/11/17 17:43:27 hQjf3mCy
こんにちは、トンベリです。
てりとれくすのおかげで、ぼくのほうちょうが戻ってきました。とっても嬉しいです、
ぼくはれくす達に、おれいの長い剣をあげました。れくすは喜んでくれました。
そのあと、『せしる』というお兄さんに会いました。
『ろざ』というシロマドウシなる人を探しているそうです。
せしるさんはとても寂しそうでした。早く、ろざさんが見つかるといいです。

それから、てりがぼくに名前をつけようとしました。
後ろでれくすが「とんぬらがいいなぁ……」と小さな声で言いました。
そのせいか、ぼくの名前は『トンヌラ』になりました。
てりは見た目よりいい人です。れくすはいい人だけど、ヘンな人です。

その後ぼくたちは色々話し合って、お城へ行くことにしました。
夜になれば、きっとみんなお城に泊まりに来ると思うからです。
けれど、れくすがいうには、危ない人もいっぱい来るかもしれないそうです。
危ない人は怖いです。
でも、さっきのせしるさんみたいに優しそうな人も来るかもしれないです。
危ない人より、優しい人に会いたいです。

なんて思っていたら、町の入り口の近くで、緑の女の人とすれ違いました。
女の人はぼくたちに気付かない様子でした。何か考え事をしていたのかもしれません。
ろざさんと、わたぼうさんと、れくすのお父さんたちのこと聞きたかったんですけど、なんだか深刻そうなので話しかけるのを止めました。
優しくて、気軽に話しかけられる人に会いたいです。

458:トンベリ、改め …… のにっき 2/2
04/11/17 17:57:12 hQjf3mCy
町の中に入ったところで、きれいなお姉さんと怖そうなお兄さんに会いました。
お姉さんは「まあ、可愛い魔物さんね」といって、ぼくの頭をなでてくれました。
怖そうなお兄さんは、れくすとてりに何か話してました。
あとでてりに聞いたら、『この近くにヒトゴロシがいるから、外に出る時は気をつけろ』と教えてくれたそうです。
二人ともとてもいい人です。
それから、お姉さんが「銀髪の男の人を見ませんでしたか?」と聞いてきました。
ぼくはせしるさんのことかと思ったのですが、違うらしいです。
お姉さんは『ろざり』さんで、お姉さんが探してる人は『ぴさろ』さんと言うそうです。
ろざりさんとろざさん、名前が少し似てるです。間違えないように気をつけたいと思います。

ぼくたちもお兄さんとお姉さんにみんなのことを聞いてみましたが、「知らない」と言われてしまいました。
お兄さんいわく、『チズノシュクシャク』からするとアリアハンはかなり広いので、無闇に歩いても知り合いと会える確率は低いらしいです。
じっとしていた方がいいのでしょうか? でも、危ない人や悪い人がやってきたらじっとしているわけにはいきません。
ぼくがそう言ったら、れくすが「悪い人は皆でやっつければいいんだよ」と言いました。
ほうちょうもあるし、悪い人がきたらがんばってやっつけようと思います。

お兄さんとお姉さんは、これからしばらく町の中を回り、どこか空いている家で休むつもりだそうです。
……ぼくたちはどこにいきましょう?

【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【レックス 所持品:天空の剣 オーガシールド
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
現在位置:アリアハンの城下町入り口
第一行動方針:わたぼうとレックスの仲間を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】

【サイファー 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)
【ロザリー 所持品:不明
現在位置:アリアハンの城下町
第一行動方針:ロザリーを手助けする/ピサロを探す 第二行動方針:ゲームから脱出する】

459:↑の修正です
04/11/17 17:58:35 hQjf3mCy
【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 黒マテリア(メテオ)
【レックス 所持品:ルビスの剣 オーガシールド
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ
現在位置:アリアハンの城下町入り口
第一行動方針:わたぼうとレックスの仲間を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】

460:偵察者
04/11/17 18:44:45 Xp2dpcgG
「二人、死んだか。あの銀髪の二人組がやったのか?やつらには要注意だな」
男はナジミの塔の最上階で先ほどのセシルとガーランドの戦いの一連の流れを見ていた。
名をアルガスといった。没落した貴族の一族の末裔である。

初めは自分で他の全員を殺そうと考えていた。が、様子を伺っている内に、
竜王のように1対1ではとうてい勝てそうもない参加者がいると分かった。とるべき行動は決まった。
他人を利用するのだ。残りの数人となるまで。そして、消耗したところを狙って殺す。
あとは、それまでに集めた道具を駆使して勝ち抜けばいい。自分が動くのは、最後の最後でいいのだ。
どこの馬の骨かも分からない連中と一時的にでも組むのは正直反吐の出る思いだったが、生き残るためには仕方がない。
できるだけ強く、ゲームに乗っていない人物で、そして裏切りが容易そうな人物を探そう。

支給品は2つ。目薬草。「見る力」を最大限に引き出すことができる。
もう一つは地獄耳の巻物。「聞く力」を最大限に引き出すことができる。
そしてここはナジミの塔。大陸の半分を見渡すことが出来る。
偵察には最高の状況と場所がそろっている。ここでなるべく多くの参加者のデータを集めておくのが得策というものである。
「俺は貴族だ、こんなところで死んでいい人間じゃない。何が何でも生き残らなければならないんだ。
 愚民共、せいぜい殺し合うがいいさ、だが、最後に笑うのはこの俺だッ!」

【アルガス 所持品:無し 現在位置:ナジミの塔最上階 行動方針:偵察し、使えそうな人物をこのステージの間に捜す
 第二行動方針:多くのアイテムを集めておく 最終行動方針:どんな手を使ってでも生き残る】
※視力と聴力が大幅に上がっています、ナジミの塔のある湖周辺の平原あたりならはっきり見えます。
 階下の音あたりもはっきりと聞こえます。
 効果はステージを移動するまで持続。

461:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/17 18:53:19 /6raq2pD
ベアトリクスの血は昂ぶった。
たった今、彼女は変わったのだ。
アレクサンドリア王女ガーネットに仕える騎士がひとたび汚れた指輪を身につけたときから、
荒れ狂う暴政のもとに仲を引き裂かれた男女の怨念の乗り移った修羅となった。
君主の衣を身にまとい、神々しい光沢を備えた剛剣を手にして。
慣れた冒険者も寄せ付けないほどの険しい山岳地帯も、彼女の猛る足踏みはまるで意に介しなかった。

荒涼とした山地はもうすぐ終わる。下山すれば平坦な草原が続く。
ベアトリクスはひっきりなしに四方八方を見ながら進んだ。
それは殺す相手を探すために。
運命に翻弄され運命による犠牲者となった恋人たちの恨みの魂を、惨劇によって静めるために。

【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態)  現在位置:大陸西の山岳地帯から東へ 
        所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、真魔剛竜剣+99

462:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/17 18:54:49 /6raq2pD
行動方針が抜けてた。

 【ベアトリクスの行動方針:参加者を見つけたら殺す。】

では失礼


463:>>457 修正
04/11/17 20:07:15 hQjf3mCy
>なんて思っていたら、町の入り口の近くで、緑の女の人とすれ違いました。
>女の人はぼくたちに気付かない様子でした。何か考え事をしていたのかもしれません。
>ろざさんと、わたぼうさんと、れくすのお父さんたちのこと聞きたかったんですけど、なんだか深刻そうなので話しかけるのを止めました。
>優しくて、気軽に話しかけられる人に会いたいです。

以上、四行の脳内削除をお願いします。重ね重ね申し訳ありません。

464:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 14:44:18 9Ak/+Iok
このスレは重複じゃないの?
誘導
スレリンク(ff板)


465:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 15:43:16 FivVvRzg
スレタイだけで判断するとはこれまた乙な
重複でなく並行進行

466:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/18 18:26:33 StGhCGBo
>>461を修正します。

【ベアトリクス(精神を乗っ取られた状態)  現在位置:大陸西の山岳地帯から東へ 
        所持品:血のエンゲージリング、君主の聖衣、アルテマソード
        行動方針:参加者を見つけたら殺す】

467:レーベ村宿屋にて 1/6
04/11/18 20:36:21 XT6rodJF

「どうなんだ?助かりそうか?」
「…なぜか、回復魔法の効きが悪くて…でも、とりあえず傷はふさがりました。
 まだ目は覚まさないだろうけど、死ぬ事はないと思います」
「そうか、よかった…」
ほっと息をつくロックに、ソロも、汗を拭いながら笑った。

テリーとの戦いで重傷を負ったヘンリーは今、宿屋のベットに寝かされている。
ここに担ぎ込んだとき、ヘンリーは完全に意識を失い―もう先程のような悪態をつくこともなく、顔色も真っ青だった。
それを見たロックはほんの一瞬だけ、もう駄目なんじゃないかとも思ってしまったが。
ソロが汗を流しながら必死で回復魔法を重ねがけしていくうちに、少しずつ顔色がよくなっていった。
苦しげだった表情も今は緩んでいる。ひとまずは助かったのだ。

「というか、アンタも大丈夫か?休みなしで魔法を…」
「さすがにちょっと疲れましたけど…大丈夫ですよ、ヘンリーさんが助かったんですから」
ソロはそう言いながら、にっこりと笑い…そして、そのまま思い出したように続ける。
「そうでした、ロックさん、さっきは助けてくれてありがとうございました」
「……いや、気にしないでくれよ。助けたって言っても結構危なかったしな」
ロックはそう、答える。…危なかった。いちかばちかの勝負だったのだ。
上手く隙ができなければ自分の体当たりなど全く効かなかっただろう。
それに、攻撃は成功したがヘンリーは重傷を負ってしまった。
完全にやる気になっている…とんでもない相手だ。―そういえば。
「…あの女の人、大丈夫ですかね…」
―ロックの心の中を読んだかのように、ソロがぽつりと呟いた。

468:レーベ村宿屋にて 2/6
04/11/18 20:37:44 XT6rodJF

「どんな関係なんだろうな…あの人に、あいつ…止められるんだろうか」
「……わからないけど…きっと、すごく大切な関係なんでしょうね…」
ソロはどこか遠くを見るような、少しだけ悲しい目で言う。
なにか、大切なことを忘れてしまった男は、あの女性を振り切り殺戮を繰り返すことになるのだろうか。それとも。
「いや、きっと大丈夫だ。あいつに斬られたヘンリーが言ってただろ。
 あいつ、忘れたつもりでも覚えてるんだって。…あの人なら、きっと止められる」
「そう、ですね…。きっと、また会えますね」
ヘンリーの言葉なんて何の根拠も無いのだが…そう結論付けたのはやはり、希望を掴みたい気持ちがあるからだ。

「そうそう、次にあいつに会ったときは俺が直々に一発お返ししてやる…」
「…ヘンリーさん!?」「うぉっ!だ、大丈夫か?」
いつの間にか意識の戻ったヘンリーが、まだ少し苦しそうな表情だが―二人を見て、言った。
「ははは、あれぐらいで俺が…っ…ゲホッゴホッ」
「って、無理しないで下さいよ!」
「はは…」
ヘンリーの異常とも言えるほどの生命力に、苦笑するロックだった。

469:レーベ村宿屋にて 3/6
04/11/18 20:38:34 XT6rodJF

その後、三人であれやこれや話し合い、今晩は日没後もこのままここで過ごそうということになった。
村の宿屋なんて危険度も高そうだが…城下町よりは人も集まらないだろう。
なにより、下手にヘンリーを動かすわけにもいかないというのがあった。
万一襲われたらその時はその時だ、こちらだって黙ってはいない。
「この狭い部屋に男三人で夜…むさいな…」
「仕方ないだろ、俺だって嫌だ」
「あのー」
ソロが苦笑いを浮かべながら、告げる。二人の会話にはひとつ間違いがあった。
「三人じゃなくて、四人でしょう…」
「…あ」
ロックとヘンリーは、ソロに指摘されてようやく気付いた。
三人から離れたところに座り込み――じっと、こちらを見つめている青年の存在。
同じ部屋にいるのにも関わらず忘れていたとは失礼な話ではあるが、仕方のないことかもしれない。
何しろこの青年は、何も話さない、動かない。本当にただ、そこにいるだけなのだ。

「あー…アンタは、どうするんだ?」
ロックは少々気まずそうに口を開いた。しかし、青年は問いに答えない。眉一つ動かさずじっとこちらを見ている。
…よく、聞こえなかったんだろうか。青年に近づき、視線を同じ位置に持っていくように屈む。
「今さ、ヘンリーが動けないし、今晩はこのままここにいようってことになったんだよ。でもアンタは…えっと、名前…」
「…フリオニール」
青年は依然変わらぬ無表情で、機械的に名を告げた。
「…フリオニールは、どうするんだ?」
「…… …わからない」

470:レーベ村宿屋にて 4/6
04/11/18 20:39:22 XT6rodJF

……。
あまりにも的外れな答えに、ロックは思わずずっこけそうになった。
わからない?何だそれ。…俺がわからないのは、こいつ―フリオニールだ。そう、最初に会ったときから。
どうしたとたずねれば、機械的な答えが返ってくる。どうするとたずねれば、答えは返ってこない。
これではまるで、自分の意志を持たない人形だ。
(心が、無い?いや、まさか…)
しかし、放っておくわけにもいかない。気を取り直し、続ける。
「別に用事が無いんだったら、ここにいればいいだろ。外は危険だしな」
フリオニールは少々間を開けてから、黙ってうなずいた。…了承したらしい。

(なんか、子供と話してるみたいだな)
しかし、目の前にいるのは紛れもなく青年だ。とはいってもソロと同い年ぐらいだが…調子が狂う。
「…そういえば、盾借りっぱなしだったな、返しておこうか」
と、ザックの中から、ひとまずしまっておいた天空の盾を取り出し―
ごとり、と音を立てて落とした。
「な、何だ?重…っ!」
呆然とそれを見つめる。いや、この盾は元々重かったが。まともに持ち上げられないほどに重くなっている?
「あ、ロックさん!その盾は僕の…」「そうだ、ロック!その盾はレックスの…」

ソロとヘンリーが同時に声を挙げ、その後顔を見合わせた。
「よくわかんないけど、特殊な盾なのか?俺には重くて使えなくなってるし…」
「……」
いつの間にかフリオニールが床に落ちた盾を拾っていたが、やはり彼にもまともには持ち上げられないようで、
黙ってそれをソロに手渡した。―ソロは、容易く盾を手にする。天空の勇者、資格あるものの手に戻ってきたのだ。
「天空の盾…。ヘンリーさん、レックスさんって?」
「いや…う~ん、天空の勇者が二人いたとは…」
ヘンリーがベットの中で頭をひねる。天空の盾は間違いなくソロの手の中で本物の輝きを放っているが、
レックスも天空の勇者だ。…ヘンリーはソロに、レックスの事をはなしはじめた。

471:レーベ村宿屋にて 5/6
04/11/18 20:40:42 XT6rodJF

ソロとヘンリーが話し込んでいる。
することのなくなったロックはふと、フリオニールに提案を持ちかけた。
「すぐ隣に武器屋があったはずだけど、武器調達でも行くか?」
盾がなくなってしまったフリオニールに対する配慮だろう。
フリオニールはまた黙ってうなずいた。ロックは二人にそのことを告げる。
「わかりました、気をつけて下さいね」ソロが返答した。
「大丈夫、本当にすぐ隣だ」

そうして、ロックとフリオニールは隣の武器屋で安物の剣を調達するのだが―
二人の背中を、村の奥から見つめる視線があった。冷酷な笑みを浮かべる女性。

宿屋のカウンターに戻ってきたロックは、フリオニールを見て苦笑した。
「きっと平和な田舎町なんだな…それぐらいしか武器がないとは思わなかった」
フリオニールの手には、一目で安物とわかるような銅製の剣が握られている。
彼自身は相変わらずロックの言葉に対しては完全に無反応だが。
(またか…何考えてるんだろうな…)
ぼんやりとそう思いながら、ドアに手をかけようとして―ロックはそれに、気付いた。
明らかな殺気…?いや、狂気…とも言えない、何となく覚えのある気配。
クリスタルソードに触れながら、後ろを振り返る。

操りの輪をつけたビアンカが、宿屋の入り口に立っていた。

472:レーベ村宿屋にて 6/6
04/11/18 20:42:11 XT6rodJF
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 行動方針:ビアンカ警戒】
【フリオニール(感情喪失) 所持品:銅の剣 行動方針:ロックについていく】
【ビアンカ(暴走状態:操りの輪を破壊すれば状態回復は可能)
 所持品:操りの輪、 ファイアビュート 第一行動方針:リュカ、子供達以外の全員を殺害】
*現在位置:レーベの村宿屋1Fカウンター

【ソロ(MP消費・疲労) 所持品:さざなみの剣 水のリング 天空の盾 行動方針:ヘンリーに付き添う】
【ヘンリー(重傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 行動方針:傷の治療】
*現在位置:レーベの村宿屋1F
(ロック達のドア一枚向こう、戦闘が起こればすぐ気付くと思われます)

473:神様と元召喚士 1/2
04/11/18 23:17:46 Qe1iK5Jy
「困ったことになりましたね……」
男は空を仰ぎ見ながら、ぼんやりと呟いた。
彼の名はマスタードラゴン。
天空の城にて世界を見通し、地上を護り続けている竜神である。
―本来ならば。

「どうしたんですか、プサンさん?」
隣を歩いていた女性、ユウナが首を傾げる。彼は苦笑しながら答えた。
「いや、今の状況のことですよ。私、この通り戦闘やら何やらは苦手でして。
 お恥ずかしい話ですが、剣もまともに振るったことがないのですよ」
彼にはわかっている。目の前にいる女性が、次元すらも違う異世界に住む人間だということに。
だから本当のことは話さない。いつも通りにプサンという仮初の名を使い、市井に生きる人間らしくふるまう。
もっとも、こんな場末の酒場のバーテンダーとしか見えぬ中年男の風体では、正体を打ち明けたところで狂人扱いされて終わりだろうが。

「大丈夫、いざと言う時は私に任せてください。
 戦えない人を守るのも、お助け屋カモメ団の役目です!」
プサン=マスタードラゴンの考えなど知る由もないユウナは、はりきって胸を叩く。
「頼もしいお言葉ですねぇ。お嬢さんのような方と出会えて、心強い限りですよ」
そう言って笑いながら、彼は心の中で自嘲した。
(本来ならば、私の方が罪なき人々を助けてやらねばならぬというに……我が身ながら何と言う不甲斐なさだ!
 せめてドラゴンオーブが手元にあれば、脱出は無理でも、首輪の解除ぐらいできるものを)
会場のどこかに、己の竜神としての姿と力を封印した宝珠が眠っている。それは間違いない。
だが、どこにあるのか、誰が持っているのかまでは、今の彼ではわかりようがない。
(何も知らぬ人間が持っているなら構わない。だが……もし、オーブが悪しき心を持つ者に渡っていたら?)
考えかけて、プサンは首を振った。
考えてもどうしようもない。
自分がやるべきことは、一刻も早くオーブを取り戻すこと。それだけだ。

474:神様と元召喚士 2/2
04/11/18 23:20:19 Qe1iK5Jy
【ユウナ(ジョブ:魔銃士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
 第一行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人は率先して助ける 第二行動方針:ゲーム脱出】
【プサン 所持品:不明
 第一行動方針:ドラゴンオーブを手に入れる 第二行動方針:心正しい人達を助ける】
現在位置:岬の洞窟北西の海岸付近

475:保管庫改 1/4
04/11/19 01:31:17 sQJn9ASJ

「指笛?」
「そうッス。こうやって指を口に入れて…吹く!」
シューッ、と空気の抜けた音だけがする。
「うーん、出来ない」
蒼い髪の少女は、既に笑顔を取り戻していた。
「諦めちゃ駄目ッスよ」
ティーダとターニアが、まるで兄妹のように、指笛を練習している。
あんな妹がいたら良かったと、エアリスは思った。
平和、だった。彼女が現れるまで。

森を行く一つの影。
ティファは、森の暗がりの中を歩いていた。
右手には銃。
―何を狩る訳でも無く。防衛手段だと、自分に言い聞かせて。
レーベを出て、何時間か歩いた。
鬱蒼と生い茂る森。ここで何を見つけることになるだろう。
その時はまだ、あまりの緊張感からか、近くにいる三人には気づいていなかった。

「誰か近づいてくる…?」
エアリスが、何者かの気配を感じた。
その方向を見やると、タンクトップ、長い髪の女性…
見覚えのある、姿だった。
「ティファ!?」
エアリスは叫んだ。
…それが、不幸の始まりだった。

476:保管庫改 2/4
04/11/19 01:34:17 sQJn9ASJ
狂気のゲームで。命が惜しくて。
極度の緊張感の中で声を掛けられ、とっさに行動を起こした。
声を掛けたのがエアリスであることに気づいたのは―
―ティファが振り向きざまに放った弾丸が彼女の胸を貫通した後だった。

「あっ…」
血飛沫が、エアリスの胸部から飛び散る。

…一瞬の、静寂。

「何するんッスか!!!」
ティーダの怒号が、立ちすくむティファに浴びせられる。
「きゃぁぁぁっ!」
蒼い髪の少女の悲鳴がまた、ティファとティーダを別々に刺激して。
「許さないッス!!!!」
鋼の剣を構え、怒涛の勢いでティファに迫るティーダ。

(どうしよう。ここにいたら、殺される。
死にたくなんか、無い。ここにいてはいけない…)
気づいたときには既に、ティファは走っていた。
―あの人、エアリス…?
じゃ、無いよね。
もう死んだ人だから。
エアリスじゃないよね…
エアリスな訳が、無いよね。
ゼッタイニソンナワケナインダカラ…

477:保管庫改 3/4
04/11/19 01:35:11 sQJn9ASJ
―ティファが、撃った。
私が死んでから、性格が変わったのだろうか?
それとも…ゲームに、乗ったの?
それは違うよね?
ただ恐怖のあまり、撃ったのかもしれない。
驚いたから、咄嗟に撃ってしまったのかもしれない。
…どうしてだろう?
納得できる理由を見つけたかった。
瀕死の状態でも、ティファを許したかったのか。

「エアリス、大丈夫ッスか!?」
ティファを追うのを止め、倒れたエアリスの元に駆け寄るティーダ。
「私は大丈夫…それよりターニアちゃんを…」
エアリスが右手を上げて指差した。
血を見て混乱した少女の姿は、エアリスの指差す森の奥へと消えていた。

「間に合わないッス!きっとすぐに正気に戻って…
それより、エアリスの怪我を…」
言いかけて、エアリスを見て、凍りついた。
美しい…?
否、死に顔に、美しいも何も無い。
もう、動くことは無い。
そう、はっきりとわかったのだ。

478:保管庫改(タイトルは『錯乱』で) 4/4
04/11/19 01:36:40 sQJn9ASJ
人が死ぬことに関して、自分はあまりに、無力だった。
『思い知ったか』
誰かが頭の中で言った。
「あぁ」
空返事をすると、一人、泣き崩れた。

【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 ゴディアスの剣 麦わら帽子 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕(エアリスから回収)
      行動方針:泣く(その後は不明)】

【ターニア(錯乱) 所持品:微笑みの杖 行動方針:とにかく走る】

【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
      基本行動方針:死にたくない
      第一行動方針:ティーダから逃げる
      第二行動方針:クラウドやバレットと合流?】

【エアリス 死亡 残り108人】

現在位置:レーベ北東の森の中(ティーダは待機、ターニアとティファは別々の方向へ走って逃げてます)

479:英雄と魔王 1/2
04/11/19 02:55:24 Q/cBoLJ6
森の中で対峙する二人の男、デュランとメルビン。
互いに相手の出方をうかがうかの様に、一向に動く気配がない。
「分かる、私には分かるぞ!貴様の強さがな……」
先に沈黙を破ったのはデュランであった。警戒を緩めないメルビンを無視するかのように言葉を続ける。
「フハハハ……私の名はデュラン。見ての通り魔王が生業だよ。私は強い者が好きでね。
 せいぜい私を失望させないでくれよ……。では行くぞ!」

巨体に似合わぬスピードでデュランが斬り込む。渾身の力で振り下ろされた剣は、すんでの所でメルビンの剣に阻まれた。
だが、直後に爆発が襲いかかり、メルビンは後ろへ吹き飛ばされながらも、空中で体勢を整え着地する。
「そうだ、それでなくては面白くない。もっと私を楽しませてくれよ!」
攻撃の手を緩めず攻め立てるデュランの剣戟と爆風の前に、防戦一方となるメルビン。

(くっ……、こやつ強いでござる!このままでは剣が…)
歴戦の勇者といえども、相手は伝説の剣を持った魔王。彼の持つ鋼の剣は、打ち合う度に悲鳴を上げていた。
「どうした!貴様の力はそんなものか!」
「残念ながら魔王にくれてやる命は持っていないでござるよ!」
その時だった。鋼の剣が衝撃に耐えきれず、折れてはじけ飛ぶ。
「ハハハハハこの勝負私がもらったぞぉぉぉ!」
高笑いと共にデュランが空高く舞い上がる。
回転を加え落下することで強力な打撃を加える技、ムーンサルトだ。
「……もはや一か八かに賭けるしかないでござる!」
デュランの剣先が老人の体に目がけて殺到する。しかしメルビンは動かない。
「もはや諦めたか……喰らえ!」
ラミアスの剣の切っ先が胸を貫こうとする刹那。メルビンが十字を切ると、収束した魔法力がデュランにカウンターで襲いかかった。
「グランド……クロスッッ!!」
あたりを閃光が覆い、巨大な力のぶつかり合いによって大爆発が巻き起こり、二人を吹き飛ばす。



480:英雄と魔王 2/2
04/11/19 02:57:29 Q/cBoLJ6
「……やったでござるか?」
メルビンがふらつきながらも立ち上がる。その胸からは鮮血が滴り落ちていた。
グランドクロスをもってしても、魔王の渾身の一撃は相殺しきれなかったのだ。
すぐさま回復呪文により出血は止まったが、失われた体力は回復しなかった。
しかし、その後メルビンが目にしたのは信じられない光景だった。

「私の体に傷をつけるとはな……。貴様気に入ったぞ!」
砂煙の中から現れたのは、胸に十字の傷を刻まれながら、なお余裕を見せるデュラン。
「だが……この程度では私は倒せぬぞ」
伝説の剣を構え、魔王は不敵に笑っている。
「さて、ラウンド2と行こうじゃないか。まだまだ私を楽しませてくれよ!」

【デュラン(負傷) 現在地:岬の洞窟北西の森 所持品:ラミアスの剣
 第一行動方針:メルビンを倒す 最終行動方針:ティアマト、アルティミシアと戦う】

【メルビン(負傷) 現在地:岬の洞窟北西の森 所持品:鋼の剣(破損) 残りは不明
 第一行動方針:この場を切り抜ける 最終行動方針:不明】


481:療養
04/11/19 16:53:58 GN4pPxrT
森の中、普段はのどかな川のほとり。そこで、ギルダーは木にもたれかかり、必死で荒い呼吸を整えていた。
彼の通った後を、点々とピンク色の水が汚している。水に溶けかかった血の色だ。
「…はぁっはぁっ、…げほっ… ……」
…苦しい。意識がぼんやりする、眠い。しかし、もちろん眠るわけにはいかない。
何とか目を開けて、傷口に手をあてがいながら回復魔法の詠唱をする。ますます体力が減るが、まず傷を治さなくては。
傷自体はそんなに酷くないのだが、水の中に入った事で必要以上に血が抜けてしまい、体力をかなり消費してしまった。
…そのせいか、上手く魔力が高められない。ケアルラ三回でやっと傷口がふさがった。

(俺を追ってくるだろうか…ドーガ)
ふと、思い出す。…まさか、剣を素手で受け止められるとは思わなかった。ライトブリンガーには紫の血液が付着している。
クリスタルの力を決して悪用してはならないとはよく言われた。ドーガは道を踏み外した自分を、殺すのだろうか。
おそらくは…そうだろう。次も逃げられるとは限らない。遭遇しないように気をつけなくては。

空の色が変わり始めている。日没が近い。とりあえずマントを手ごろな木に引掛ける、気温の下がる前に乾かさなくては。
…夜が明けるまでは、ここでじっとしていよう。ここなら身も隠せる、下手に動くよりは安全だろう。

【ギルダー(MP大幅消費・疲労) 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
 現在位置:アリアハン東山脈中央部の森 行動方針:夜明けまでは身を隠し休息 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】
(*位置は川付近なので、ラグナ達とは大分ずれてると思われます)

482:爆発と影と1/3
04/11/20 14:25:08 u+r3TbGR
ふわりと橋のすぐ傍に着地する竜騎士フライヤはボーっと空を見ていた。
(―わしは…このゲームで生き残ることが出来るのじゃろうか?)
ふと、袋の中に入っていた剣と形を持たない盾のようなものを見て思う。
このゲームに勝つには人を殺して最後まで生き残らねばならない。
それが敵なら容易に出来ただろう、ただこの中には仲間が居る。
彼らを殺すことは出来るだろうか?いやできない……。
「一体…どうすれば良いのじゃ…」
すると、彼女の後ろあたりで爆発が起こった。それと同時に走り去る一つの影。
…彼女はとりあえず爆発のあった方向へ向かった。途中、紫の血を流した人間とすれ違ったが、それよりも爆発のあった先へ向かった。

「おい!御主等!大丈夫か?!」
フライヤは白いローブを纏った女性と、緑のフードを被った青年の元へ走った。
青年は刀を構えていたが、剣が転がる音を聞くと、刀の構えを解く。
「あ、あの…すみませんが、少しの間だけ廻りを見ておいてくれませんか?」
女性がそういった、どうやら暗闇に包まれているようだ。
ゆっくりとゆっくりと、魔法を唱えていく…すると三人を明るい光が包んだ…。
「ふぅ…魔力に制御が掛ってるみたいですね、少し手間取ってしまいました」

483:爆発と影と2/3
04/11/20 14:26:43 u+r3TbGR
女性は落ち着いた表情でフライヤに言った。すると、青年が今度はフライヤに問いつめた。
「あ、あの…有難うございます。
 ところで…金髪の王子様っぽい人とか、綺麗な女の人とか、頭巾を被った女の子…見ませんでした?」
首を横に振りながら答えるフライヤ。その声は少し暗かった。
「いや…わしが見たのは赤いローブを纏った老人だけじゃった。
 それにわしは何もやっておらんぞ?」
その答えに青年と女性は顔を一瞬落とす。だが、女性は次にふっと顔を起こす。
あの剣を受け止めたのはこの人じゃない、赤いローブ?老人?…じゃあさっきのは…?
「すみません、その方はどちらへ向かいました?」
女性がフライヤに問う、するとフライヤは川の方を指差す。
「ところで…もしよかったらわしも連れて行ってくれんか?
 一人より三人のほうがいろいろと得もあるじゃろうし…」
弱気に呟くフライヤだが青年と女性はニコリと微笑み手を差し向けてくれた。
「もちろん!二人だと結構心細いし、大歓迎さ!
 僕はフィン、宜しく!」
「え、と…援護しか出来せんが……宜しく御願いします、アルカートと言います」
フィンは意気揚々とアルカートはぺこりと一礼で、フライヤを快く受け入れた。
ほっと安心したフライヤは、二人にこう言った。
「わしはフライヤ…ところで御主等、あの老人を追うのではないのか?」
あっ、と言われて気づくアルカート、そして、指差された方向へ走っていった。
フィンとフライヤは顔を見合わせ、走り去るアルカートを追った。

484:爆発と影と3/3
04/11/20 14:27:28 u+r3TbGR
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
 第一行動方針:アルカート達と行動を共にする
 第二行動方針:仲間に会う】
【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
 第一行動方針:ドーガを追う
 第二行動方針:ジオを探す
 第三行動方針:白い球体について研究する】
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 現在位置:同上
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
 第一行動方針:アルカートを追う
 第二行動方針:仲間を探す】

【ドーガ(負傷)
 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原>大陸中央の川へ
 所持品:不明
 行動方針:ギルダーを追う】

485:遺される言葉 1/3
04/11/20 19:49:05 fAm02ed1
(―どうしてなんだ?)
俺の思考は声にならず、代わりに横にいたマッシュとアイラが叫ぶ。
「マリベル!!?」
数時間前に出会ったばかりの、先ほどまで元気でいたはずの少女が、俺たちの目の前に倒れていた。
竪琴と鞭を抱えるように、赤い水溜りの上で。

(どうして……彼女がここにいる?)
そんな疑問に答えるかのように、マリベルが弱々しく言葉を紡ぐ。
「なんだ、無事だったの。絶対ピンチになってると思ってたのに。
 おまけにアイラまで一緒にいるなんて、心配して損したわ……」
それで、わかった。
ろくな武器を持っていない自分たちを案じて、彼女はここまでやってきたのだと。
そして誰がやったのかは聞くまでもなかった。
彼女の身体を抉る幾本もの矢が、何よりも雄弁に物語っている。アーヴァイン以外にいるはずがない。

「あーあ。柄にもないこと、するもんじゃないわね。
 人のこと心配して、自分がやられて、荷物まで取られてれば世話ないわ……
 あ、でもね。あんたの友達の武器は、何とか取られずにすんだのよ」
そう言って、マリベルはそれを差し出した。セイブ・ザ・クイーン。ここにはいない、キスティスの鞭。
「……ありがとう」
俺はそう答えた。というより、そう言うしかできなかった。
もし、キスティス本人がここにいたら、もっと気の効いた言葉を返してやれただろうか。
「もう、素っ気無いわね」
マリベルは不満げに口を尖らせ、急に激しく咳き込んだ。
表情は苦痛に歪み、食いしばった歯から呻き声がもれる。
「しっかりして! 今、回復するから」
アイラがマリベルに手をかざし、呪文を唱えた。
だが、灯った治癒の光は弱々しく、流れる血をわずかに止めただけで消えてしまう。
「そんな……」
呆然とするアイラを、焦点の合わぬ瞳が見つめた。

486:遺される言葉 2/3
04/11/20 19:52:12 fAm02ed1
「あたしのことはいいから、早く、三人でラグナさんたちのところ、戻りなさいよ。
 アイラ、あたしと同じぐらい強いし、きっとエーコもイクサスも、歓迎するわよ」
「馬鹿なこと言うな! 置いて行けるわけないだろうが!」
マッシュが怒鳴る。マリベルは―恐らく肩をすくめようとしたのだろう―わずかに腕を動かした。
「甘いわね。そんなんだから、心配になるのよ……
 ま、本当に置いていったら、一生、恨んでやったけどね」
わがままな台詞も、この状況では痛々しいだけだ。
それが耐え切れなかった。
「マリベル、もう……」
言葉は喉で詰まってしまう。それでも彼女は察したのだろう。
「喋るな、なんて言わないでよ。喋ってた方が、落ち着くの……」
彼女は再び咳をした。口元を抑えた手が、赤く染まる。
それでも彼女は言葉を紡ぎ続ける。死から足掻くためというより、意思を伝えるために。
「ねぇ、スコール、マッシュ。
どんな理由があったって、仲間同士で戦うなんて、やっぱりバカげてるわ。
そんな覚悟や、余裕があるなら、この首輪外す方法、見つけなさいよね。
きっと、誰だって、望んで殺してるわけじゃ、ないんだから」
マリベルはティナの死を知らない。だからこそ言えたのかもしれない。
けれど―
(なんでそんな風に言えるんだ?
 わかってるのか。あんたをそんな目に合わせたのは、俺の……!)
―そう叫びたかった。
だが、俺の口から出たのは、正反対の言葉だった。
「ああ……そうだな」
「あら、やけに物分りいいわね。明日あたり、雨、降ったりして」
逃れられない死の影を覆い隠すように、彼女は微笑みを浮かべた。
苦痛を知らせぬための意地なのか、本心から来るものだったのかは、永遠にわからない。
「あーあ。何だか、疲れちゃったわ……
 殺し合いとか、戦いとか……もう、うんざりよ……」
マリベルは小さく息を吐き、静かに目を閉じた。

彼女はもう、何も喋らなかった。瞼を開くこともなかった。

487:遺される言葉 2/3
04/11/20 19:54:20 fAm02ed1
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
 第一行動方針:ラグナ達と合流 第二行動方針:ゲームを止める
 現在位置:アリアハン東山岳地帯、森と祠の中間地点】

【アーヴァイン 状態:HP4/5程度
 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ  グレートソード ミスリルの小手 食料+ランプ等(マリベルから回収)
  行動方針:ゲームに乗る
  現在位置:アリアハン東山岳地帯中央部→移動】

【マリベル 死亡】
【残り 107人】

488:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 20:09:38 1s33VCOT
皆乙

489:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 22:23:13 87XfiOrK
っていうか運営スレどこ?

490:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/20 22:25:32 KDc7ODJS
>>488-489
【3rd】FFDQ裏方雑談スレ【番外編】
スレリンク(ff板)

491:ゲームの被害者 1/5
04/11/20 22:43:40 KDc7ODJS

「操りの輪…!?」
ロックは呆然とそれを見つめる。―操りの輪。
そのサークレットは、かつてティナを追い詰めていたものに違いなかった。
そして今、それをにつけている女性がゾッとするような笑みを浮かべ―こちらに向かってくる!
「ま、待て!アンタは…うわっ!」
おそらくは操りの輪の影響下にある女性。説得しようと静止の声をかけるロックだが、もちろんそう簡単にいくはずもなく。
全力で振り下ろされる剣を受けることしかできない。剣が重なる音が何度も響く。
(まずい、何とかして輪を壊すか、この人を気絶させるか…
 つってもこの剣で輪を攻撃すれば、頭が砕けるだろ…どうする…?)
剣を受けながら思案するロックは、そのまま女性から一瞬だけ視線を外し、はっとした。
いつの間にか、女性の背後にフリオニールがまわりこんでいた。その手にはしっかりと銅の剣が握られている。
―そうだ、フリオニールは操りの輪のことなんか知らない、当然の行動だ。でも、殺すのは―!
「フリオニール、やめろ!!この人は―」
「ロックさん!?どうし…」
叫ぶロック、それを聞いてぴたりと動きを止めるフリオニール。
同時に、ソロが勢いよくドアを開き、ビアンカが開いた部屋へ二人をすりぬけて入っていった。

「…ビ、ビアンカさん!?」
ベッドに座っていたヘンリーは、突然の侵入者の姿を見て驚きの声を上げた。
そんな彼にビアンカは変わらぬ笑みで迫り―剣を振り上げる。
今の彼女にとっては家族以外のすべてのものが殺害対象であり、ヘンリーも例外ではないのだ。
そして、ヘンリーが目を見開くよりも早く、ファイアビュートが―
―キィン!
間一髪というタイミングで弾かれた。ビアンカは驚いたように振り返り、静かに剣を構えるソロに向き直る。

492:ゲームの被害者 2/5
04/11/20 22:45:00 KDc7ODJS
「ヘンリーさん…知り合い、なんですか?」
じりじりと対峙したままソロが問うが、ヘンリーは答えない。
ただ、信じられないといった様子で呆然とビアンカを見つめている。
「…ビアンカさん…?」
「違う、その人の意思じゃない!頭の輪を壊すんだ!」
ロックがソロの後ろから叫ぶ。
「輪…?」
ソロが呟き、それを見た。操りの輪はビアンカの頭の上で怪しく輝いている。
なるほど、そういうことか。ソロもヘンリーも理由は納得する。でも、問題は…

ビアンカはにやりと笑い、目の前のソロに斬りかかった。ソロがそれを受け止める。
先程のロックと同じだ。止める方法がわかったからといって簡単にはいかない。
「壊すっていっても、どうやって」
「!」
ヘンリーが言い終わらないうちに、ビアンカは目を見開いた。
ソロの後ろから凄い勢いで、フリオニールが飛び出してきて―
フリオニールは、今度はロックが止める間もなくビアンカに銅の剣を振るった。輪の部分を機械的に、正確に狙って。
ピシィ、と、硝子にひびの入るような音がした。
「――きゃああああ!!!!!」
ビアンカが額を抑えて悲鳴を上げる。彼女の額に、細くて長い形の…ある意味では美しい傷が入っていた。
血が流れ出したがしかし、傷は浅い。その悲鳴の原因は痛みではなく―
―ビアンカの心は一瞬の間、別の意識へと飛んでいた。

493:ゲームの被害者 3/5
04/11/20 22:45:57 KDc7ODJS

『―このままでは、貴女の家族を殺す敵を、殺すための貴女が、殺される…』

 ―何?どういうこと?

『今は逃げろ、逃げないと殺される』

 ―私が、殺される?

『忘れてはいけない。貴女が死んだその時が、貴女の家族が殺される時だということを』

 ―そう!私が殺されたら、リュカが、レックスが、タバサが、殺される!

『逃げろ、私が壊される前に、早く!』


「いやああああああああっっ!!!!」
ビアンカはありったけの声で絶叫すると、ファイアビュートを滅茶苦茶に振り回した。
予想していなかった行動に、ソロとロックはあわてて避け、フリオニールはふりはらわれたかのように離れる。
ビアンカはそのまま、頭を、ひびの入った操りの輪を抑えながら外に向かって駆け出した。
いちはやくそれを確認したソロが、それでも少々遅れて飛び出す。
―宿屋前から見た範囲では…既にいない。どちらの方角にいったのかもわからないが、
…やはり、追うべきだろうか?ヘンリーさんの友人が、何か特殊な物によって錯乱しているんだ…。

「何で待たなかったんだ!!」
考えるソロの耳に、唐突にヘンリーの怒声が届いた。
ソロは眉を潜める。…ビアンカを追うことはひとまず中止し、あわてて宿屋に戻った。

494:ゲームの被害者 4/5
04/11/20 22:46:55 KDc7ODJS

「あんな方法、思いついてもやるか!?人の命をなんだと思ってんだ!!」
怒りの表情を浮かべたヘンリーが、フリオニールの胸倉を掴んで叫ぶ。
しかし、当のフリオニールは眉ひとつ動かさず、されるがままに怒声を浴びている。―しかし。
「ビアンカさんは俺の親友の、大切な妻なんだ!もし…もし、死んだら、どうしてくれるつもりだった!!」
「……死んだら?」
"死ぬ"という言葉に、ぴくりとフリオニールの身体が動いた。ヘンリーは構わずに続ける。
「…怪我ですんだのがおかしいぐらいだ!下手したら死んでた!お前がビアンカさんを殺してた!!」
「………ッ!」
フリオニールは今度こそ目を見開いた。そのまま、ヘンリーから逃げるようにうつむいて―
視界に、紅いものが映った。床に落ちたビアンカの血。

どくん。
心臓が大きな音を立てた。同時に、わけのわからない感情が栓を抜いたように湧きあがってきた。
…死ぬ?殺す?なんで、俺はこんなことを。なんで、俺はこんなところに。血が、紅い血が、ああ、嫌だ――マリア。

「…い、やだあああああっ!!!!」

「!?うわっ!」
「ヘンリーさん!?」
フリオニールはありったけの力で、ヘンリーを突き飛ばした。
怪我を負っているヘンリーはそのまま壁にぶつかり、ううと呻きながら頭を振る。
「―おい、フリオニール!?」
ロックが、はぁはぁと荒い呼吸をしながら立ちつくすフリオニールに声をかけた。
フリオニールはロックを怯えたような目で一度だけ見ると―すぐに駆け出した。ビアンカと同じように。
「おい!待て!!」
ロックはあわててその後を追った。

495:ゲームの被害者 5/5
04/11/20 22:47:53 KDc7ODJS
「ヘンリーさん、大丈夫ですか!?」
たった今出て行ったばかりのフリオニールとロックを気にしながらも―ソロは、ヘンリーに駆け寄る。
「…このぐらい余裕だって…」
ヘンリーは頭を掻きながら起き上がった。その顔からはまだ怒りが抜けていない。しかし、
「…悪いな、俺のせいだ…」
ぽつりと言った。俺のせいで二人ともいなくなってしまったと。
ソロはそんなヘンリーに何も言えず、うつむくしかなかった。
…ヘンリーは悪くない。でも、だからフリオニールが悪いかというと、それも違うように思えた。
ソロは、自分の無力さと、このゲームに対する憎しみを感じ、唇を噛む。
ロックさん、フリオニールさん、ビアンカさん、
それに…仲間達は、シンシアは、この最悪なゲームの中で無事でいるんだろうか。
いや、少なくとも…このゲームに放り込まれた時点で、無事ではないのかもしれない。みんな、被害者だ。
ふと外を見てみるが、開いたままのドアからはただかすかな風が入ってくるだった。

【ソロ(MP消費・疲労) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング 行動方針:ヘンリーに付き添う】
【ヘンリー(負傷) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 行動方針:傷の治療】
 現在位置:レーベの村宿屋1F

【フリオニール(感情喪失?) 所持品:銅の剣 現在位置:レーベ村の外へ 行動方針:逃げる(錯乱状態)】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 現在位置:同上 行動方針:フリオニールを追う】

【ビアンカ(暴走状態:操りの輪を破壊すれば状態回復は可能) 所持品:操りの輪(半壊) ファイアビュート
 現在位置:レーベの村から脱出 第一行動方針:逃げる 基本行動方針:リュカ、子供達以外の全員を殺害】

496:修正
04/11/21 08:11:13 rGPCTz4O
>>491の本文修正です※

「操りの輪…!?」
ロックは呆然とそれを見つめる。―操りの輪。
そのサークレットは、かつてティナを追い詰めていたものに違いなかった。
そして今、それをにつけている女性がゾッとするような笑みを浮かべ―こちらに向かってくる!
「ま、待て!アンタは…うわっ!」
おそらくは操りの輪の影響下にある女性。説得しようと静止の声をかけるロックだが、もちろんそう簡単にいくはずもなく。
正確に自分を狙い、迫る鞭を剣で受け流すことしかできない。
(まずい、何とかして輪を壊すか、この人を気絶させるか…
 つってもこの剣で輪を攻撃すれば、頭が砕けるだろ…どうする…?)
対峙しながら思案するロックは、そのまま女性から一瞬だけ視線を外し、はっとした。
いつの間にか、女性の背後にフリオニールがまわりこんでいた。その手にはしっかりと銅の剣が握られている。
―そうだ、フリオニールは操りの輪のことなんか知らない、当然の行動だ。でも、殺すのは―!
「フリオニール、やめろ!!この人は―」
「ロックさん!?どうし…」
叫ぶロック、それを聞いてぴたりと動きを止めるフリオニール。
同時に、ソロが勢いよくドアを開き、ビアンカが開いた部屋へ二人をすりぬけて入っていった。

「…ビ、ビアンカさん!?」
ベッドに座っていたヘンリーは、突然の侵入者の姿を見て驚きの声を上げた。
そんな彼にビアンカは変わらぬ笑みで迫る―鞭をふるう。
今の彼女にとっては家族以外のすべてのものが殺害対象であり、ヘンリーも例外ではないのだ。
そして、ヘンリーが目を見開くよりも早く、ファイアビュートが―
―ピシィッ!
間一髪というタイミングで阻まれた。ビアンカは驚いたように振り返り、静かに剣を構えるソロに向き直る。

497:修正
04/11/21 08:12:45 rGPCTz4O
>>492の本文修正です※

「ヘンリーさん…知り合い、なんですか?」
じりじりと対峙したままソロが問うが、ヘンリーは答えない。
ただ、信じられないといった様子で呆然とビアンカを見つめている。
「…ビアンカさん…?」
「違う、その人の意思じゃない!頭の輪を壊すんだ!」
ロックがソロの後ろから叫ぶ。
「輪…?」
ソロが呟き、それを見た。操りの輪はビアンカの頭の上で怪しく輝いている。
なるほど、そういうことか。ソロもヘンリーも理由は納得する。でも、問題は…

ビアンカはにやりと笑い、目の前のソロに鞭をふるう。ソロが天空の盾でそれを受ける。
先程のロックと同じだ。止める方法がわかったからといって簡単にはいかない。
「壊すっていっても、どうやって」
「!」
ヘンリーが言い終わらないうちに、ビアンカは目を見開いた。
ソロの後ろから凄い勢いで、フリオニールが飛び出してきて―
フリオニールは、今度はロックが止める間もなくビアンカに銅の剣を振るった。輪の部分を機械的に、正確に狙って。
ピシィ、と、硝子にひびの入るような音がした。
「――きゃああああ!!!!!」
ビアンカが額を抑えて悲鳴を上げる。彼女の額に、細くて長い形の…ある意味では美しい傷が入っていた。
血が流れ出したがしかし、傷は浅い。その悲鳴の原因は痛みではなく―
―ビアンカの心は一瞬の間、別の意識へと飛んでいた。


■これ以降は同じです。申し訳ありませんでした。

498:日没
04/11/22 13:58:25 pLJ4ZYaV
アリアハンの大地が夕日に照らされる。
アルスとシドはその大地の上で、地平線に近づいていく夕日を見つめていた。
「絶景だな」
「綺麗だろ?僕の故郷だからね」
濁りの無い海は、赤い光を受けてキラキラと輝く。
ここが殺し合いの会場だという現実を忘れてしまいそうなほどに、綺麗だった。



「暗くなってきたわね…」
セリスが窓の外を見てつぶやく。
彼女の目の前には、ベットに座って紅茶を飲む少年―パウロがいた。
セリスのつぶやきに、パウロはカップを置いて身を震わせる。
「あら、どうしたの?」
「…いいえ…夜は、怖いなと思って…」
セリスは、その理由に苦笑しながら答える。
「確かに…そうね」
そうして、また窓の外へと視線を動かす。
(一体、これまでにどれだけの人が死んだのか…? ロック…貴方は無事でいる?)
窓から見える夜空には、ぽつぽつと星が見えはじめていた。
今この部屋で耳に届くものは、パウロが紅茶をすする音だけ。
静かだ、とセリスは思った。―しかし。

ドオオォォォォン――――!!!!

突如、大地の裂けるような轟音が響いた。空気が、大地が大きく震動する。
パウロは突然の揺れに悲鳴を上げ、紅茶の入ったカップを床に落として割ってしまう。
ドサドサと音を立てて棚から本が滑り落ち、ぎしぎしとベットが大きな音を上げた。
セリスは必死で自分の身体を支える。―この地震は、いや、地震にしては何かがおかしい?
彼女がそう、思うと同時に―あの、魔女の声がアリアハンの大地に降り注いだ。

499:日没
04/11/22 13:59:09 pLJ4ZYaV
星の見えなくなった、闇のような空が裂ける。
そこにぼんやりと映し出される姿―ゲームの主催者、魔女アルティミシア。

「生贄共よ…最初の日はどうであったか?」

地獄の底まで響くような声。
聞くだけで絶望を感じさせられるようなそれは、大陸のどこにいたとしても否応なしに耳に入るだろう。

「この地で魂を無くした、ゲームの脱落者達の名を知らせておく。
 一度しか言わぬぞ…貴様らの下らぬ友情を交わした人間の名が無いか、心して聞け。

 「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
 「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
 「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
 「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
 「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
 「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
 「マリベル」

 三十一名…予想以上に良いペースだな。その調子で裏切りと殺戮を繰り返すが良い。
 脱落者の名は、これから日が落ちる時と上る時…一日二回読み上げる。

 …それから、下らぬ馴れ合いをしている者がいるようなので忠告しておこう。
 隣にいる者を殺さなくては、いずれ殺される事になるということを…忘れぬようにな。
 …期待しておこう。次の放送時間には、貴様の殺めた者の名を読み上げられる事をな…」

アルティミシアは、微かに不気味な笑い声を上げた。
空気の振動が収まり、闇に覆われていた空に星が戻り始めてからも…暫くの間、笑い声だけが微かに大陸に響いていた。


【アリアハン大陸:昼→夜へ】

500:騎士の誇り1/5
04/11/22 16:58:30 +nMvFBO2
アレフとわたぼうは、その洞窟から出ることをまず第一前提にした。
アレフのレミーラで洞窟の中はサクサクと探索することが出来た。
「…リレミトを使うことが出来れば良いのだが……どうも効き目がないようだ」
先ほどからレミーラとは違う呪文を口にしていたアレフがそう言う。リレミトが効かないと分かった彼は長年の冒険の勘から階段をスムーズに見つけていった。

一階にやっとついたときだった、わたぼうと二手に分かれ入り口を探していた。
アレフの視界になにやら人影が見えるのだ。レミーラの先をその人影に当てると…。
「うわぁっ!」
パイナップル頭の少女がアレフの視界に映る。その少女は光を向けられた後、ナイフを構えて此方を睨みつけている。
(―まずいな…完全に警戒されてるぜ?)
アレフは…彼女はどうすれば警戒を解いてくれるか?まずそれを考えていた。
(―剣を捨てる…これが一番だが襲い掛かられたらとんでもない。
 両手を上げる…これも良いが相手には微妙に分からない。
 一か罰か、剣を捨ててみるか。)
すると、カランコロンという音と共に、シルバーメタルの光沢が目立つ剣が地に転がる。
彼女は一瞬訝しげに剣を見たが、まだ警戒を解いてくれない。
「おーい、こっちに戦う気はないから。罪もない人斬るなんてサラサラ御免だぜ?」
アレフがゆっくりと両手を掲げて前へ出る、それを見て少女もやっと構えを解く。
「よかったぁ、アタシ速攻で襲われちゃうかと思ってたもん」
少女は気さくにアレフに話し掛けてくる、引き締まっていた空気が急に緩む。
「そうそう、良かったら一緒に行動しない?一人より二人だし、そいでチョイチョイっとあのオバハンをやっつけちゃおうよ!」
アレフは頭をポリポリと掻いた後、名前ともう一つの名前を言った。
「俺は…アレフ、それと………おーい!わたぼーう!!」
洞窟に声が響く、響く声と共にわたぼうが出てくる。
「アレフ!階段が見つか…ってこの人は?」
いきなり現れた謎の物体に、再度警戒の構えを取る少女、しまったという表情を隠せないアレフ。
また説明かよ…説明は苦手なんだぜ?と頭の中だけにその言葉をしまいこみ、少女にわたぼうの説明をした。

501:剣士の誇り2/5
04/11/22 16:59:17 +nMvFBO2
理解してもらえるのに、数十分掛った。
「―オッケー、そうそうアタシはリュック。伝説のガード…って言っても分からないか。
 とりあえず、すんごい役割やってたんだ」
どこがどう凄いのか、世界の違う一人と一匹には理解しようがない。
「わたぼうはさっき説明したとうり、タイジュって国の精霊。
 俺はラタドームのローラ姫に仕える剣士、アレフ」
と、さらりと自己紹介を済ませる二人と一匹。
「で?わたぼう、出口…いや入り口はどっちだって?」
わたぼうは頷くと、二人を誘導し始めた。

入り口に差し掛かったときぐらいだった。
ズッドドドドドドドドォォォン!!
ものすごい地響き、洞窟内が強烈に揺れる。
「俺に掴まれ!転がってくる岩は何とかする!」
アレフが叫ぶ、リュックとわたぼうが咄嗟にアレフにしがみつく。
転がってくる小さな小石や岩を、両足が動かない状況でも華麗に後ろへ流していくのは流石というべきだろう。
地震が収まった、もしかするとこれは…二人と一匹は外へと急いで駆けた。
「生贄共よ…最初の日はどうであったか?」
魔女の声がする、リュックはその放送を拳に力を入れ、アレフは歯をギリリ鳴らし聞く。

502:剣士の誇り3/5
04/11/22 17:00:19 +nMvFBO2
…放送のあとに、一律の沈黙が訪れる。二人も、一匹も、悲しい表情で下を俯いたままだった。
最初に口を開いたのは、リュックだった。
「アーロン…あんな強かったアーロンが…」
それに続いて、わたぼうも口を開く。
「イル…いいマスターだったのに…どうして…」
しかし、二人は呟いたあとに気がついた、アレフが、涙を流していることを。
何も語らなかったが、今の放送にはローラという名前が有った…使えるべき姫を失ったのだ。
「なぁ………わたぼう、リュック。
 俺は…剣士失格だな」
唐突に、アレフが口を開く。それは悲劇の始まりだった。
えっ?と二人がアレフに顔を向けたときだった。
ズブリ、と肉の切れる嫌な音がする。アレフが、自ら剣で心臓を突き刺していたのだ。
「バ、バカッ!何やってんの!!」
リュックがその剣を引き抜こうとするが、アレフの力はそれを上回っている。
ゲホッ、ゲホッと血を吐きながらアレフは二人へ向けた。最後のメッセージを。
「…仕えるべき人は……此処には居ない…ゲホッ…なら居るところ……まで俺がついていく。
 それだけの……話さ、何も泣くこたぁ…ねぇ……ぜ……ガハッ!」
黒い血塊がアレフの足元に落ちる。リュックもわたぼうも、剣を引き抜こうとするがやはり抜けない。
剣からも、綺麗な赤色の液体が、滴り落ちていた。
「そうだ…俺の袋にあった……謎のこの玉、だれか使える人を…探してくれないか?……ガハッ…ああ、やべぇ……そろそろ行くわ、俺」
じゃあな、と小さく言い残し。瞼を閉じた。

503:剣士の誇り4/5
04/11/22 17:02:13 +nMvFBO2
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
リュックは叫んだ、目の前の人物が死んだことに対し。
わたぼうは涙を流した、自分が、何も出来なかったことに対し。
その悲痛な叫びは、洞窟の奥深くまで…響いた。何度も、何度も。だが、アレフは帰ってこない。
彼は姫の元へ逝くと言う、最後の道を選んだのだ。彼は天国で、きっとローラに仕えローラを守るのだろう。
そう考えると、余計に涙が流れた。

アレフが死んでから数十分立つ、簡単な埋葬が終わったとはいえ、やはり重い悲しみが残る。
ふと、リュックは気がついた、アレフが最後に握っていた玉。アレはドレススフィア?
知らずの内に握っていたそれを使い、彼女はドレスチェンジを始めた。
そのドレススフィアは…見たことも無い…未知の服。ただ伝わるのは聖なる剣士のオーラと力、アレフにそっくりの。
リュックはアレフのことを思い出し…そして、もう一度泣いた。
アレフの持っていた剣が、輝いていたような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。

504:剣士の誇り5/5
04/11/22 17:04:25 +nMvFBO2
【リュック(ドレス:パラディン) 現在位置:いざないの洞窟入り口  所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレススフィア(パラディン)
 わたぼう 現在地:同上 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
#リュックはロトの剣を扱うことが可能?(次回書き手に委任

【アレフ 死亡 残り106人】

505:恐怖と暴走 1/3
04/11/22 18:59:37 PmqPdLsY
魔女の放送が始まったとき、ティファの足は自然に止まった。
勿論世界の振動によってまともに走れなくなったというのもあるが、
それ以上に、確実に聞き届けようという彼女の意思が足を止めたのだ。

死者の名が、抑揚無く読み上げられていく。
その一つ一つが命を与えられこの世界に生まれてきた証だ、などと、考えていないかのように。
『…バレット』
他の名前と何の変わりもなくただ読み上げたその名前が、ティファの心を揺さ振る。
「バレット…」
バレットが殺された…?
殺した人は誰…?
許さない。許せない。許せる訳が…

『…エアリス』
最後のほうに呼ばれたその名前は、ティファの心を揺さ振るだけでは済まなかった。
全ての思考が停止し、あるいは心臓が止まったのではないかと思えるほど、その瞬間は空虚で。
ゆっくりと身体が活動を再開したとき、彼女の思考は既に答えを導き出していた。
さっき、私が、殺したんだ…
私ガ…

彼女の心を包み込んだのは、罪悪感でも後悔でもなかった。
―恐怖。
嘗ての仲間を自分の手で殺してもなお、彼女にとっての一番はクラウドで。

どうしよう。
クラウドは、私を許さない…
私がエアリスを殺したから…
―クラウドがこれを知ったら?
―ソンナ事ハ絶対ニ嫌ダ!!

506:恐怖と暴走 2/3
04/11/22 19:00:50 PmqPdLsY

私から話さなければ、クラウドは気づくはずがない…
でも、あの金髪の人と蒼い髪の女の子は、私が殺したって知ってる。
…じゃぁ、どうすればいい?

―彼ラヲ殺セバイイ。

一瞬にして辿り着いたその選択肢は、彼女に他の選択をさせることを許さなかった。
次の瞬間、視界の隅に蒼い髪が映ったから。
別の方向に逃げたはずのその姿が、在ったから。
日没直後の薄暗さの中でも、それが誰かは直ぐにわかった。
もう、躊躇いを捨てた。
クラウドに嫌われたくないから。
そしてゆっくりと銃を構えた。

(また殺すの…?)
刹那、頭の中で誰かが呟いた。
知ってる。この声は、さっきと同じ。
エアリスの声で。
(もう誰も殺さないで)
イヤダ。クラウドガ知ッタラ私ハ終ワリダカラ。
イヤダ。イヤダ。イヤダ…

引き金に、手を掛けた。
目の前に、幻のエアリスが立っていて。
それでも、躊躇うことは無くて。

―銃声が森に木霊した。
幻のエアリスの胸をもう一度貫いた弾丸は、蒼い髪の少女の耳元を、掠めた。


507:恐怖と暴走 3/3
04/11/22 19:02:08 PmqPdLsY
…何故、当たらなかったのだろう。
…いや、当てられなかったのか。
一瞬考えたティファの耳に、少女の悲鳴が飛び込んできた。

この距離を走って、血は見えなくなって、地震が起きた衝撃で、やっと自我が戻ったというのに。
すぐに、エアリスを殺した『音』が聞こえて。
何か熱いものが、耳元を掠めて。
「いやぁぁぁっ!!」
ターニアは、思わず、叫んでいた。

「ごめんなさいね…本当は殺したくないんだけど」
ティファが、銃を構えながら言う。
腰が抜けたように座り込んで、呆然とした視線をティファに送るターニア。
それならば何故殺すの?と問うようなその視線から、ティファは目をそらす。
ゲームに乗ったわけじゃない。ただ、恐ろしかったのだ。
―クラウドとの関係が壊れるのが。
ティファは銃口をターニアに向けながら、ゆっくりと言った。
「あなたを殺さなくちゃいけない理由を話すから聞いて欲しいの…」
何故そう言ったのかわからない。
ただ自分の罪悪感から逃げたかったのか。
それともこの子から、止める様に説得してもらいたかったのか。
傍から見ればあまりに理不尽な理由だろう。
でも、ティファは話し始めた。
ゆっくりと…
「私の幼馴染に、クラウドって言う人がいて…」

【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:逃げたい 現在位置:レーベ東の森中央付近】

【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 行動方針:自分が殺すのを正当化するために、話す 現在位置:同上】

508:銃声 1/2
04/11/22 19:21:43 fQ05pNSX
「お姉ちゃん…」
放送を聞いたあと、ビビは空を見上げた。
「知り合いがいたのか」
ピサロは、全く口調を変えることなく、言った。
…ロザリーの名は無かったか。
それだけが未だ、彼を保っていた。
ブライやトルネコの死を聞いても、なんとも思わないか。
軽く自分を嘲笑う。
さすがに表情に出すことは無かったが。

「うん…さっき言ったよね…?ガーネットって人…」
ビビの声は、悲痛だった。
「あぁ」
ピサロはそれだけ言った。
身近なものを失う辛さなら、わかる。
それも、他の者に奪われて、だ。
そして、これに関してはビビも知らないだろうが、それが愛する者ならば尚更だ、と。

ビビが何やら泣く様な仕草をしている。
作られた存在でありながら、涙を流すことは出来るのか。
そういえばロザリーもよく泣いていた。
自分が人間に攻撃を加えたことを知ると、いつも…

―そう思っていたとき、何かの音が、森に響いた。
続いて、少女の悲鳴が。



509:銃声 2/2
04/11/22 19:23:52 fQ05pNSX
「ね、ねぇ!今の聞いた!?」
ビビが、興奮したように喚く。
「当たり前だ。聞こえないほうがおかしい」
「誰か襲われているんだと思う…助けに行かなくちゃ…」
ピサロの視線と、ビビの視線が合わさった。
「行くのなら勝手に行け。私は動けぬし、人間を助ける義理など無い」
素っ気無いその声にも、ビビは嬉しそうに返事をした。
「うん、助けに行くよ。あの悲鳴、絶対に悪い人のじゃないと思うから…。それで、一つだけ約束して欲しいの」
「何だ?」
「もし人が逃げて来ても、殺したりしないでね。それはきっと、ボクが守った人だから…」
「…いいだろう」
「元々は人を殺すために作られたボクだけど…人を助けることも出来るんだって…ジタンやガーネットが教えてくれたから…」
ビビの声は、純真だった。
「それにジタンなら、女の人が襲われてるのを黙って見てるなんて出来ないと思うから…」
ビビは、それが笑ったというのなら…目を細めて…笑った。
「じゃぁ行ってくるから…約束忘れないでね」
最後には声を掛けることも出来なかった。
ビビの尖がり帽子が森の奥に消え行くのを。ピサロは最後まで見送った。
―どうしてあんなに穢れなくいられるのか。
自分も柄にも無いことを考えるようになった、と再び嘲笑した。

【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ある程度回復するまで待機】

【ビビ 所持品:不明 行動方針:銃声のした方へ様子を見に行く】

現在位置:レーベ東の森中央付近

510:深き夜のアナリーゼ(1/5)
04/11/22 21:31:15 uWKvksJb
夕方になった。

夕焼けが綺麗だ、2人は心底そう思った。
殺し合いの場で持つには奇妙じゃないかとも思ったが…これが唯一の癒しのようにも思えた。

「そろそろ誰かいても良い頃だと思うんだけどねぇ…」
「…結局、誰にも会わなかったね……」

"裸マントの殺人鬼にでも会いたかったかい?"とセージは口にしそうだったが、やめた。
流石に傍らにいる少女にかける言葉としては不自然だ。
ローグになら言っただろう、確実に。そう思ってしまってセージは苦笑を浮かべた。
悪態をつく相手がいないのも寂しいなぁ…と、そう呟きながら目を閉じた。

それと同時に、彼の脳裏には思い出が蘇る。
しっかりしてるけど、確実にR-指定の道へとスライディングしそうなあの勇者。
いつも自分に悪態こそつくけど、楽しい話には事欠かなかったある盗賊。
思い出したくは無い過去はあるが……まぁ頼りになった僧侶。
仲間……なのかは知らないけれど、「勇者」の代名詞だろうと思えたある父親。
ついでに裸マント。名前は忘れた…ダンカタ……だったか。違う、カンダタだ。

そしてすぐさま考えを今の状況に戻し、自分を奮い立たせた。
そして、タバサもまたそうしている様だった。


それが、悪かった。

511:深き夜のアナリーゼ(2/5)
04/11/22 21:32:43 uWKvksJb
ドオオォォォォン――――!!!!
突然地鳴りにも爆発音にも似た音が鳴り響いた。
そしてそのまま、この世の出来事とは思えぬほどの地震が起こる。

「ちょ…これはないんじゃない!?これで死んだらどうしろって言うんだよ!」
「お…ッお兄さん!!大丈…夫っ!?」
「あまり…こういう経験…ないからねっ!でも大丈夫!」
「…だ、だいぶ落ち着いてきたかも……」

ふと、不思議なまでにその地震は止んだ。
だが空は黒く裂けてゆく。セージは苦笑を、タバサはある種の恐怖を浮かべてそれを見ていた。



そして、名前が呼ばれていく。
死んだものの名が虚空に響く。
静かに…ただ静かに見ていたが、タバサの顔からは"恐怖"は消えていた。

"恐怖は"だが。




512:深き夜のアナリーゼ(3/5)
04/11/22 21:33:49 uWKvksJb
「ピ…ピン……さん………」

彼女が住むお城には、ある兵士がいた。
王子や王女にも親しく接していた兵士がいた。
王達と共に旅をし、至福の表情を浮かべていた兵士がいた。

名を、"ピピン"といった。

知り合い…か。と、セージは心の中で呟いた。
傍らでは、タバサの焦点の合っていない様な…だが透き通っている目が空を見ていた。
放送が終わった後も、暫く空を見上げていた。

「……あのさ」
「大丈夫!」

セージが何か、慰めの言葉か何かを発そうとしたと同時にタバサの声が響いた。

「大丈夫。ここで挫けてたら…お兄さんに迷惑かかっちゃうし。
 それに、これからもきっと…こういう事があるんでしょ?
 その時に何回も何回も挫けてたら…会える人にも会えない、しね」

「……そうか、強いね」

本当に強い。セージはそう思った。
それと同時に、この子の為に必ず家族を見つけてあげようと…そう思った。

「おにいさん、早く安全そうな所に行こうよ。暗いから危なくなっちゃうよ?」
「ああ、そうしよう」

そう言って、二人はまた歩き始めた。

513:深き夜のアナリーゼ(4/5)
04/11/22 21:35:06 uWKvksJb
「ん?もしかしてあれは…」

本当にほんの少し歩いていると、セージは建物を見つけた。
明かりが灯っていない。人が潜伏している可能性があるが、子どもを置いての野宿は危険だ。
その建物にお邪魔する事にし、2人は建物へと歩いていった。勿論警戒は解かずに。

建物の中には階段があった。地下へと下る暗い階段だった。
そしてその階段を下ると、扉があった。

開けようと試みる。鍵がかかっている。開かない。
タバサが困ったように押したり引いたりしていると、

「ちょっと下がって。こういう時は…"アバカム"」

カチッ!
鍵が開く音が聞こえた。
そして二人が部屋に入ると、何の気配も無かった。
きちんとドアを閉める。この間に尾行されて侵入されたわけでもない。

「……ビンゴだ」

そう言ってセージは灯りに火を灯すと、数人分ある椅子に座った。
タバサも続く。椅子に座ると、机に突っ伏すように上半身を倒した。

「トイレもバスルームもないっぽいけど…我慢してくれないかな?」
「私は大丈夫。でも、ラッキーだったね。」
「そうだね。とりあえず野宿にならずに住んだ。今日はここで夜を明かそう」

そう言うとセージはこの後の事を必死に考える事にした。
アナリーゼを行う音楽家のように、必死に危険から回避する方法を組み立てようとしていた。

514:深き夜のアナリーゼ(5/5)
04/11/22 21:36:18 uWKvksJb
【セージ 所持品:ハリセン 
 現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋 行動方針:部屋で夜を過ごす】

【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:同上】

515:1/5
04/11/22 21:51:30 YuTBgmvG
三人―レナ、エリア、ギルバートは、存外早く意気投合することができた。
それは、「クリスタル」という共通の話題があったことが大きい。
話してみれば、それは明らかに違う世界のものであったが、
それでもこの状況で、絆を結ぶのには十分なものだった。

「ここにいても仕方ないわ。誰かと合流したいなら、危険はあるけど人の集まるところにいかないと」
レナが提案すると、にわかに元気を取り戻したギルバートが頷いた。
「そうだね、僕もそう思う。この近くなら、レーベの村だろうね」
「けっこう遠いですね…」
「なに、日没あたりにはつくさ」
そんな会話をしながら歩き出して、しばらくのことである―あの声が聞こえたのは。



あの忌々しい声はあたりから消えた。青年たちに暗い影を残して。
死者の名前が告げられたとき、最初に反応をおこしたのはレナであった。
手頃な岩に座って、綺麗な唇に手を添え、じっと耳を傾けていた彼女は、
「クルル」と呼ばれた瞬間目を見開きだんと立ち上がり、その変わりかけの空を見上げた。
次に反応を起こしたのは、ギルバートだった。
一見すると女性に見紛う端正な顔立ちの彼は、雪のように白い肌をますます青白く、
唇をがたがたと震わせただ一点を見つめていた。
その姿を見れば、唯一反応を示すことのなかったエリアにも、
彼らに何があったのかは容易に想像がつき、その心痛を察すれば、なんと声をかけてよいかもわからない。
………


516:2/5 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:53:40 YuTBgmvG
放送の少し前のことである。

「水のクリスタル…」
エリアの口からその言葉が発せられたのに、レナは驚きを隠せなかった。
自分たちのいた世界とこの世界は、まったく別の次元のものに思っていたからである。
いや、実際のところはそれで正しいのだが、そのようなことがわかるはずもない。
「たしかに、私は水のクリスタルの加護を受けているわ。でも、どうしてそれが?」
「私は水の神殿の巫女です。わかります、心の中にあるその光は、クリスタルに選ばれた…」
「水の神殿?」
エリアの話を遮って、思わず聞き返した。
「水の神殿…そんなのあったかしら。風の神殿じゃないの?」
「風の神殿…?いえ、水の神殿ですよ」
レナは記憶を辿ってみたが、それらしきものは思い当たらない。
水のクリスタルがあったのはたしかウォルスの塔である。
そこのことだろうか?しかし、巫女がいるという話は聞いたことがなかった。
「ウォルスにあったよね、水のクリスタルは」
「ええ、ウォルス?そこどこですか」
「知らないんだ」
共通の話題を話しているはずなのに、話がまったく噛み合わない。
「あの…ちょっと、いいかな?」
申し訳なさそうにギルバートが口を挟んだ。
「水のクリスタルはミシディアにあるんじゃなかったかな?
 それに、クリスタルに選ばれた戦士っていったいなんのことだい?」
「ミシディア?」
「…もしかして、ううん、やっぱり…知らないのかい」
三人は顔を見合わせると、この奇妙な状況に押し黙った。
………


517:3/5 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:55:44 YuTBgmvG
エリアはふっと息をついた。
「クリスタル」という象徴的なものを共有する人間に会えたと思ったのも束の間、
それはまったく別の世界のこと。それと同時に、深い感銘もうけた。
自分の元いた世界以外にもクリスタルが存在し、
同じようにクリスタルに選ばれた戦士がいるという事実、
その人と水の巫女たる自分が会えたことに、運命の力を感じたのだ。
現に、彼女―レナの中にクリスタルの輝きを感じたのだから。
しかし―今その戦士の一人が死んだとするならば…。
それもまた運命なのだろうか?
それとも、運命だとか、もはやそのような力では抗えない状況なのだろうか。


手持ち無沙汰で、エリアは名簿をめくった。
エリアはあっと声をあげそうになるのをやっとの思いでこらえた。
つい先まではなんの変哲もなかったその名簿に、
血の滲んだような朱色の線が、ところどころに引かれているのである。
よくみてみれば、それはどれも先に名前を呼ばれたものたちの欄に引かれていた。
やるせない怒りにも似た哀感が、エリアを襲った。
名簿を閉じ、潤んだ瞳を閉じて―それは場の空気に影響されてかもしれないが―刹那、場違いな明るい声が響いた。


518:4/4 夕暮れの哀悼
04/11/22 21:58:09 YuTBgmvG
「いきましょう!さっき話し合った通り、レーベの村に」
いきましょう、というのが、どういう意味なのか少しエリアは迷ったが、それはどうでもいいことだった。
「今、名前で呼ばれた中に、クルルっていたよね。その子、私の仲間なんだ。…まだ、14歳なのにね」
「そうだ…セシルとローザも、死んだ!」
ギルバートは吐き出すように叫んだ。
「ローザは…セシルの恋人だった。二人とも、いっしょに…いったのかな」
ギルバートは震えの収まらぬ膝頭をおさえて、遠くを見つめていた。
レナはもう落ち着いた表情向かうべき方角に体を向けている。
その冷静な挙措の中に、固く握りしめられた拳を、エリアは見逃さなかった。

「ええ、いきましょう。クリスタルの光を、信じて」

他に言うべき言葉が見つからなかった。




【エリア 現在位置:レーベ東の平原 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ギルバート 現在位置:同上 所持品:毒蛾のナイフ
 第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:リディアを探す】
【レナ 現在位置:同上 所持品:不明
 第一行動方針:レーベへ 第二行動方針:バッツとファリスを探す】


519:王子と魔女と盗賊と 1/4
04/11/22 22:11:10 PJwrEuLE
台所には、不気味なほど安らいだ表情のまま首を切り落とされた男女がいた。
今いるここ、階段前の廊下では、男が女を背負ったまま串刺しにされていた。
そして死体の傍に、尻尾の生えた若い男が立っている。

「最低だ」
硬直するリノアとキーファの前で、男―ジタンはぽつりと呟く。
「アルティミシアとかいう魔女も、あの骸骨野郎も、命をなんだと思ってるんだ」
拳を固く握り締め、肩を奮わせる。

ジタンには許せなかった。殺し合い自体はもちろん、こんなゲームに乗って人を殺す連中がいるということが。
もちろん、頭の中では理解していたし覚悟していたことだ。進んで殺し合おうとする奴がいることぐらい。
だが、実際に『その場面』を見た途端、抑えきれない怒りが胸に沸いた。
数分前には生きていたはずの二人を助けられなかった、自分への苛立ちと共に。
十数分経った今でも、その感情は消えない。

二人と一人の間に、長い沈黙が落ちる。

不意に、ジタンは横に立つ二人組、リノアとキーファを振り返った。
射竦めるような視線を真っ向から見据え、意思表示代わりにキーファは支給品の本と袋を床へ投げる。
「オレも……いや、オレ達もあんたと同感だ」
「戦う気なんてない。殺し合いなんて、したくない」
そう言ってリノアもキーファに従う。
二人の言動に、ジタンはようやく相好を崩した。
「そうか……
 ……なぁ、やりあう気がないなら少し話さないか? どっか落ち着ける場所でさ」
リノア達は一瞬顔を見合わせ、すぐに大きく頷いた。

520:現実味のない事実 1/3
04/11/22 22:14:25 pLJ4ZYaV

「…うむ、何か成果があがったら連絡するよ、レディ。期待していてくれたまえ」
エドガーは一旦、ひそひ草での会話を切った。
―バーバラが信頼できる少女であることはわかった。
お互いの仲間の情報などを交換し、これからのことについても随分話した。
位置が近ければ合流していたのだが…地図を見る限り、合流するには大陸をほぼ一周するしかない。
そこまで歩くのはお互いに危険だ。次のステージで近くなる事を祈るしかない。
そして何より、大事な用事があり自分はここから動けない。そう、バーバラに話した『成果』とは―

「あれ、もういいのか?」
「ああ、ずっと話しているわけにもいかないだろ。研究が進んだらまた連絡をとる事にするよ。
 ちなみに、期待しておいてくれ、と言っておいたから」
「げ、責任重大じゃねえか…」

エドガーの目の前で青年―デッシュが、銀色に輝く首輪と鉛筆を手にごちゃごちゃしたメモを取っている。
あの騒ぎに城下町から脱出してすぐ、後ろから走って追いかけてきたデッシュ。
話によれば彼はエンジニアで、首輪をはずす方法を考えているという。
デッシュはエドガーを護衛として仲間にしたかったようなのだが、エドガーも機会関連ならお手の物であり、
首輪を外し脱出という研究は、エドガーにとって護衛だけでなく最大限に協力できるものであった。
かくして、二人で協力して研究をすることになった。
今、デッシュとエドガーが手にしている首輪は、身を潜め研究できる場所を探し、
森へとやって来た二人が、偶然見つけた死体から外したものだ。
少女と兵士。見知らぬ二人の死体は今、少々離れた場所に埋葬されている。
死体の首を切断するという行為はとても気分の悪いものだったが…それは、どうしようもない。

521:王子と魔女と盗賊と 2/4
04/11/22 22:14:43 PJwrEuLE
―それから、三人は小さな裏庭のそばに作られた小部屋へ移動した。
話すことはそれぞれにあった。
キーファは、グランエスタードの友人達と、支給された攻略本について話し。
ジタンは、ダガーを始めとする仲間と、この忌々しいゲームをどうにかしたいという思いを語り。
そしてリノアは、頼もしい恋人と、仲間達と、共に倒したはずの魔女アルティミシアについて知ること全てを伝えた。
だが、話の内容がたくさんあるからといって、収穫があるとは限らない。
結局、三人とも仲間達の行方はわからないまま。ゲームを抜ける手段も、攻略本の活用方法も思いつかないまま。
謎だけが、一つ増えた。
「魔女と時間圧縮ねぇ……一体、アルティミシアって奴は何がしたいんだ?」
「私にはわからないけど。でも、きっと理由があってこんなことをしてるんだと思う」
「あのな。理由もナシにこんなことされたらこっちがたまらないぜ」
キーファの言葉に、ジタンが「そりゃそうだ」と頷き返す。
それから、急に真顔になって二人を見つめた。
「なぁ。リノア、キーファ。正直なところどう思う?」
「どう、って?」
「だから魔女の目的だ。この殺し合いをさせる目的だよ」
「いや……突然振られてもなぁ」
ジタンの言葉にキーファは腕組みをし、リノアは頬に手を当てる。
それからしばらくして、キーファが顔を上げた。
「パターンとしてはやっぱり『娯楽』じゃないか?
 昔の君主や貴族には、そういう悪趣味な見世物を楽しむ奴がいたそうだからな」
「うーん。それもありそうだけど……
 前に読んだ本でね、集めた動物を殺し合わせて、生き残ったやつを使う呪いっていうのが出てきてたんだ。
 もしかしたら、そういう呪いとか、何かの儀式なのかもしれない」
と、リノアが続ける。
「娯楽に儀式か……」
ジタンは天井を睨みながら、首輪に手を当てた。

522:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/22 22:15:28 pLJ4ZYaV
スミマセン、割ってしまいました…お先にどうぞ

523:王子と魔女と盗賊と 3/4
04/11/22 22:17:18 PJwrEuLE
―キーファが言ったように単なる娯楽目的なら、首輪の解除自体は可能である確率が高い。
 なぜって、その方が見世物として面白いからだ。
 『こうすれば解除できる』のに、それに気づかず殺しあう参加者達。それほど難しくない解除方法が見つかるのは、数多の友や仲間の血で両手を染めた後のこと。
 この手の演出も、あの冷徹な魔女ならやりかねない。
 けれどももし、リノアが言う通りに『何かの儀式』であるなら……首輪を外すなんてさせてくれないはずだ。
 殺し合いが止まればその時点で目的が達成できなくなる。
―どちらにしても、自分たちに殺し合いをさせることが目的ならば、滅多なことでは首輪を爆破したりしないだろうが。

そこまでジタンが考えた時、突然轟音が鳴り響いた。
音が外からと気付いた三人は、慌てて中庭に飛び出す。
彼らは見た。天空に浮かぶ魔女の唇が、忌々しい言葉を紡ぎ上げていくのを。
そして……全ての放送が終わった時、三人の表情は蒼白なものに変わっていた。
世間知らずなお姫様だけれど、優しく芯の強い女性だったガーネット。
口は悪いけれど、根は真っ直ぐで正義感に溢れていたマリベル。
死ななくてはいけない理由なんて、どこにもなかった。
いや、他の人たちにも、同じことがきっと言えるはずだ。

「ねぇ、キーファ、ジタン」
リノアが口を開いた。
「こんなの、間違ってるよ。こんな形で人が死んでいくなんておかしいよ。
 ねぇ、止めよう。止めさせようよ! こんなゲーム、続けさせたくない!
 一緒に力を合わせて、止める方法見つけようよ!」
―それは理想だ。確固とした計画もなく、ただ思いに任せただけの言葉。それだけで人を救うことは決してできない。
けれども、人を動かすことはできる。理屈ではなく感情から生まれた言葉だからこそ、心に訴える力を持つ。
「そうだな……マリベルだって、きっとそうしろって言うよなっ」
「こんな下らないゲーム、エーコやビビのためにも早いところぶっ壊してやらないとな!」
瞳に拭い去れない哀しみと決意の色を宿らせて、三人は立ち上がる。これ以上の悲劇を生まないために。


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