FFDQバトルロワイアル3rdat FF
FFDQバトルロワイアル3rd - 暇つぶし2ch350:コミカル(?)お兄さん2/2
04/11/09 11:45:40 jPhjLL80
……開けたんですが…。

「………さて」
え!?ちょっと待って待って!
お兄さんはそう言うと袋を閉じてしまいました。
何があったの?ねぇ、ちゃんと目を見てお話して!
「……出てきたの…これなんだよね」
半分泣きそうな目で、お兄さんは袋を開けてくれました。

「まず、これが"ハリセン"ってヤツ」
中で右左右左とキッチリ折られて、更に下で束ねられている厚手の紙がありました。
なんだろう。私は"はりせん"っていう言葉は初めて聞く。お兄さんに尋ねてみよう。

「これはほら、アレだよ。
 "ナンデヤネーン!!"とか"ソンナアホナー!!"とか"オマエモナー!!"…は違うか、まぁそんな事を言いながら叩く道具」
"って、何かの本に書いてた。"と最後に付け加えて説明は終わりました。
なんだか、使いづらいね…。で、お兄さん…他には?

「それ以外、ない」
え…?おかしいよお兄さん。私の袋には2つもあったのに。
「おかしいけど…仕方がないよ。他の人から貰うなり交換するなりしよう」

そういった後、お兄さんは袋に"はりせん"をしまうと、黙って私の手を牽いて進み始めました。
お兄さん……私でよければ、相談に乗るよ?

【セージ 所持品:ハリセン 現在位置:レーベ北東 行動方針:レックスを探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:セージと行動する】

351:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/09 12:31:02 jPhjLL80
>351
「まず、これが"ハリセン"ってヤツ」

の「まず、これが」を消してください……。
前に書いてた文章を消しきれてなかった…orz

脳内変換お願いします。

352:決着1/4
04/11/09 16:22:53 t6eQXW72
「オラァァァァァ!」
殴る殴る、蹴る!重く鋭く、正確な一撃一撃が、確実に竜王を
追い詰めてゆく。
ゴオォォォォッ!
竜王が勢い良く炎を吐いて退けようとするが、炎はフバーハの
光の衣に遮られ、ほとんどが届かずに終わる。むしろほんのわずかな炎が
フルートの頬をかすめることで、彼女の怒りをいっそう煽るのだ。
「死ねやコラァァァ!」
フルートの罵声に、はっと我に返ったロランが慌てて加勢しようと
よろよろと立ち上がる。
竜王の残った左腕、鉄をも引き裂く鉤爪がフルートに襲い掛かる!
「ヒキサイテクレルワ!」
だがフルートの拳が唸りを上げると、ばきり、と音がして本来ありえない
方向に竜王の腕が曲がる。
「ギャァァァァァァ!」
竜王はもだえ、身をよじり、倒れそうになるのをすんでのところでとどまる。


353:決着2/4
04/11/09 16:39:28 t6eQXW72
ズ…ンッ!
その竜王の体に衝撃が走る。
視線を下へ向けると、ロランが竜王の下腹部に、深々とガイアの剣を
突き立てている。
「オノレ…オノレ…ニンゲンフゼイガ…」
もう爪で攻撃することは叶わない。三度炎を吐こうとしたその時、
「サンダラ!」
リルムの完成した呪文が、雷が竜王の体に刺さったガイアの剣を直撃した。
ロランはすかさず後方にとびすさる。
「ギィィィエェェェェェ…!」
体の内側から雷に焼かれた竜王は、しばらく直立したまま痙攣を繰り返して
いたが、やがて、ゆっくりとゆっくりと、横ざまに倒れた。
「やった…倒した…竜王を…」
ロランがはあはあ息を切らしながら呟く。
「フルートってすごい!尊敬しちゃうな!」
リルムは笑顔だ。
「あら?私は何を…?これは、貴方が?」
我に返ったフルートは、例によって何も覚えていない。
「う……」
「ん…何だァ?」
サックスとゼルが、ようよううめきながら身をおこす。


354:決着3/4
04/11/09 16:49:54 t6eQXW72
「あ…お二人とも、気が付きましたか~?」
フルートは元ののんびりした調子で、二人に近づく。
「竜王は、ロランさんが倒してくれたんです」
確かにとどめを刺したのはロランだが、そこまで追い詰めたのは
フルートであるという事を当人もサックスも、ゼルも知る由も無い。
「いや違う、僕は…」
「あのね、フルートってすごいんだよ!竜王と互角だったんだから!」
困惑するロランの声を、リルムのはしゃいだ声がさえぎった。
フルートは何のことか分からず、きょとんと立ち尽くしている。
「フルートが?まさかぁ」
サックスにはとても信じられない。見ていないのだから無理も無い。
「あんた、見かけによらずスゲ-んだな!」
ゼルが愉快そうに笑う。彼は竜王の所持品を回収すると、フルートに預けた。
あんたが役にたててくれ、と。


355:決着4/4
04/11/09 17:02:27 t6eQXW72
「もしゲームに乗る気が無いなら、皆で一緒に行動しないか?」
提案したのはサックスだ。ロランが笑って右手を差し出す。
期せずして全員の手が重なった。
「喜んで…皆で協力して、あの魔女を倒そう!」
「お~っ!」
声をそろえて唱和すると、はじけた一同の笑い声がアリアハンの空に
響き渡った。
【サックス(重傷) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
【フルート(重傷) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
【リルム(負傷) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン(重傷) 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル(重傷) 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔入り口
第一行動方針:傷の治療
第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】



356:決着 補足
04/11/09 17:26:15 w3JW46Eb
【竜王 死亡】
入れ忘れスマソ

357:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/09 19:20:36 grMMVAxl
ツンツンのチョコボ頭の青年、クラウドはアリアハン城から南の海岸に立っていた。
彼は正直こんなゲームには興味が無かった、殺す気も無いし、殺される気も無い。
ただ、エアリスやティファやシド…仲間が死ぬところは見たくない、そんな心境だった。
そのためには生き残らねばならない、ただし殺人はやむをえない場合を除いて無しで。
やむをえない場合、襲い掛かってきたらそいつは容赦なく斬る、逃がせば仲間を危機に晒すことになるからだ。
そう思いつつ、彼は支給品を確かめた。
柄しかない剣と神羅の奴らが着込んでいそうなスーツが入っていた。
柄しかない剣は握ってみれば剣が使用者の体力に比例し出てくる、アルテマウェポンだった。
スーツはなんとも言えず、本当にただのスーツに見えた。
しかし、クラウドは知らない、このスーツがそこらの鎧よりも防御力があることを。

「とりあえず…あの城を目指すか」
ふぅ、とため息をつき歩き始めて数分後のことだった。
「…マズいな、早速やる気満々の奴に早速出会ったな」
クラウドの目線の先には血のついた剣を持った剣士がクラウドの方向を睨んでくる。
確実にこちらに向かって攻撃を仕掛けてくる気だ、その剣士の周りの四人の死体がそれを物語っている。
宝条の奴と、白魔道士のような女性と、肥満体の男と盗賊風の男。
チッと舌打ちをしながらも、クラウドはアルテマウェポンを構える。
一気にケリをつけようと斬りかかろうとしたその時だった。

358:悲しみの先に2/2
04/11/09 19:21:34 grMMVAxl
「ローザ!!」
白髪の青年が剣士の後ろから叫ぶ、その青年の表情は哀愁に満ちていた。
「ローザ…ローザ…ああ、僕はまたローザを守れなかった…」
白髪の青年はそう白魔道師の死体を抱え、泣いていた。
それを見るや剣士は口元を歪め、セシルに斬りかかった。
だかそれは寸でのところで止まる、セシルが光の剣を振り上げたからだ。
「…許さない…僕は許さない!」
セシルの目がクッと開く、それを見てクラウドは…加勢しようかどうか迷っている。
静かなる戦いが、今始まった。

【セシル 所持品:光の剣 ミスリルシールド
 現在位置:アリアハン南の平原 行動方針:ローザの敵を取る(ガーランドを殺す】
【クラウド 所持品:アルテマウェポン おしゃれなスーツ
 現在位置:同上 
 第一行動方針:セシルに協力する(?)
 第二行動方針:マーダーを減らす
 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】

【ガーランド(半カオス状態) 所持品:皆殺しの剣 ダイヤアーマー
 現在位置:同上 行動方針:人間を殺す】

【宝条 死亡】
【ローザ 死亡】
【サンチョ 死亡】
【ジークフリート 死亡】

359:戦いを求める者 1/4
04/11/09 19:58:34 PPbOrUFm
ハイテンションを通り越して躁状態になっていたヘンリーだったが、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「思ってたより遠かったな」
平原の向こうに目的地である村の影を認めて、ヘンリーは小さくつぶやく。
記憶の混乱も治まったらしく(G.F.の効果ばかりでなく、頭を打ったことによる面も大きかったのだろう)、
あれから妙なことは言っていない。
こうして普通にしていれば、王族に相応しい理性と威厳を感じないこともないのだが……
第一印象を拭い去り、ソロの評価を改めるには到底及ばない。
それどころかギャップが激しすぎて、『ちょっとアレな人』という確信を高めるだけで終わっている。
「気をつけてくださいね。どこに敵がいるかわからないんですから」
「どうせ会うなら、敵よりも妻や弟や親友に会いたいんだけどな」
「あれ、奥さんなんているんですか? そんなこと一言も……」
「忘れそうになったが、なんとか思い出せた」
「……」
もう、これ以上深く考えるのも追求するのも止そう、とソロは思った。
その時、ヘンリーが唐突にソロを見た。
怪訝、とも険しい、とも言える表情である。
一瞬、考えを見透かされたのかとソロは狼狽したが、すぐに違うと気付かされた。
「おい、何か聞こえないか?」
ヘンリーの言葉が終わらない内に、ソロは走り出していた。
彼にも聞こえたからだ。剣を切り結ぶような、そして何かが燃える音が。

360:戦いを求める者 2/4
04/11/09 20:03:41 PPbOrUFm
テリーは不満と空しさを覚えていた。
(こんな腑抜けしか集まってないのか?)
いっぱしの戦士に見えるこの男、前に殺めた中年二人よりは楽しませてくれると思っていたのだ。
だが、期待はずれもいいところであった。
確かに、虚ろな目をこちらに向けてはいる。斬りつければ盾で受け止める。
だが、それだけだ。武器がないから戦えないとかそういう次元ではない。
素手で戦おうとも、呪文を使おうとも、逃げようとすらしないのだ。まるで、心を持たない機械人形のように。
これでは壁に切りつけているのとかわらない。
(もういい、終わりにしてやる)
苛立ったテリーは、神速の突きで盾と地面との間に剣を滑り込ませ、勢いよく跳ね上げた。
白銀の輝きが宙に舞い、鋭い切っ先が、それでもなお能面のように顔色一つ変えぬ男へ迫り―
けれども斬られたのは男ではなく、虚空であった。
甲高い音を立てて、後方から投げつけられたもの―鉄扇が跳ね返り、地に落ちる。
「止めなさい、テリー!」
アークボルトと雪山で会った冒険者たちの一人。テリーの赤い瞳にはそうとしか映らない。
青年は力と引き換えに、力を求めた理由も自分の姉の姿さえも忘れてしまったのだから。
「ふん……こいつよりは斬る価値がありそうだ」
テリーは笑った。ミレーユの記憶にある笑顔とはかけ離れた表情で。
「止めてほしいなら、力ずくで止めてみせろ!」
地を這うような低い斬撃が走る。ミレーユは扇を拾い上げ、力の方向を逸らして受け流す。
そして体勢が崩れたところを狙って薙ぎ払うが、呆気なくジャンプでかわされてしまう。
(やっぱり、剣や力では敵わない)
そう判断したミレーユは、素早く距離を取って大きく息を吸い込む。そして一気に吐き出した、燃え盛る火炎に変えて。
「何っ!」
驚愕の相を浮かべる青年の姿が、赤い炎に飲み込まれる。ミレーユは間髪いれずに呪文を唱えた。
「ラリホーマ!」
―攻撃呪文を選ばなかったのは、テリーを殺したくないという気持ちがあったからだ。
自分の命はどうなっても構わないが、弟には正義を取り戻し、そして生きてほしい。
だがその思いは、彼女が想像しなかった結果をもたらした。

361:戦いを求める者 3/4
04/11/09 20:06:14 PPbOrUFm
炎の向こうで、何かが緑色に輝いた。そう思った瞬間、ミレーユは強烈な睡魔に襲われた。
(え? ……どうして……私が?)
「なるほど、この指輪は呪文を反射する力があるみたいだな」
ミレーユの瞳に、弟の姿が映る。無傷だったことに疑問は感じない。真空の剣で炎ごと断ち切ったのだとわかったからだ。
「火炎の息に受け流し、どれも子供だましの技だ。それで俺に勝てるとでも思ったのかよ」
テリーは冷酷に言い放つ。相手が誰なのか、未だに気付かないがゆえに。
かつての思いを見失い、力と引き換えに正義を失ったがために。
(私は……止めないといけないのに)
ミレーユは悔やんだ。なぜ、ラリホーマなど使ってしまったのだろう。
攻撃呪文を使っていれば、まだチャンスはあったのだ。
弟を殺したくないという思いが―それが、自分の首を締めてしまったのか。
とめどない後悔と睡魔に、彼女はついに意識を手放してしまった。

けれども、テリーはミレーユを手にかけはしなかった。
思い出したわけではない。
彼が姉を殺さずにすんだのは、新たな闖入者が現れたから。それだけの理由だった。
「その人から離れろ」
年齢に似合わぬ覇気を備えた若者が言う。
その隣で、貴族風の身なりをした男が剣を構えている。
テリーの目は、その剣に吸い寄せられた。
「……雷鳴の剣」
それはかつて、彼自身が愛用していた剣だった。
シャープな切れ味を誇る刀身に、荒れ狂う雷を呼ぶ力を備えたアークボルトの至宝。
「おもしろい。今度こそ、戦い甲斐がありそうだな」
テリーは三度剣を構え、地を蹴った。

362:戦いを求める者 4/4
04/11/09 20:07:57 PPbOrUFm
【フリオニール 所持品:天空の盾 状態:感情喪失 行動方針:静観?】

【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴 状態:睡眠
 行動方針:命に換えてもテリーを更正させる】

【ヘンリー 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 雷鳴の剣 状態:オートリフレク
【ソロ 所持品:さざなみの剣 水のリング
 行動方針:テリーを倒し、ミレーユを助ける】

【テリー(DQ6) 所持品:クリスタルソード イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼 リフレクトリング
 行動方針:自らの力を試す=ゲームに勝利する】

*現在位置(全員共通):レーべの村中央部

363:1/3
04/11/09 22:53:00 6qFtEbXi
これは一体どうした事か。

 先程まで感じていた竜王さまの力を感じぬ…


 ――理由は大体判る。ニンゲン達と戦い、敗れたのだろう…
  竜王さまが我等魔物の王であるとはいえ、此処に集められた者も歴戦の戦士達が多いようだ。
  現にこの地にはロトの力を複数感じる。竜王さまが敗れる事があっても不思議では無い。


 ……竜王さまが目覚めたのならばお会いしたかったものだが、それも叶わぬ願いか。

我の目的は潰えた。
生き残る気もない。
後はこの地で死を待つのみ。

364:2/3
04/11/09 22:55:18 6qFtEbXi
「まいったな。まさか支給品がこんなのだなんて…」
イザの袋の中に入っていたのは3本の剣。
1つ、黄金に光り輝く脆そうな剣。
2つ、これぞ騎士剣、といった感じに見えるが、何故か全く切れない剣。
3つ、常識を超える長さを持つ刀、っぽいオモチャ。
どう見てもハズレな武器を掴まされたイザは落胆しながらも海底通路を進み、
そして自分の目の前に何かの影を見つけた。

「あれは…、ドラゴン…!?」
目の前に見えるそれは明らかに魔物。
今までに一度も見た事のない魔物だが、一目でドラゴンだとわかった。
ドラゴンも自分に気付いたのか、こちらを見据えている。
戦闘は避けられないと感じ、イザは金色に輝く(正直役に立ちそうにない)剣を持ち、構えるが。

「ニンゲンよ、我を殺すがよい」
ドラゴンから放たれた言葉は、イザが全く想像していなかったものだった。
「戦う気は無い。我も竜王様と同じく永い眠りに就こう」
その言葉を聞くと、イザは剣をザックに入れ、無防備な状態でドラゴンに近づく。
「何のつもりだ?」
「敵意がない相手から命を取るような真似はしない。それよりも何故殺せだなんて…」

365:3/3
04/11/09 22:57:36 6qFtEbXi
「…我にする事はもう無い。ここで死を待つだけだ」
「なら、僕に協力してくれないかい?」
「……」
どっしりと構えるドラゴンに向かい、イザは語りかける。
「このゲームを抜け出したい。その為にあなたの力を貸して欲しい」

ドラゴンはイザに向かってゆっくりと語りかける。
「このゲームを抜ける、か。
 それにはあの強大な力を持った魔女を倒す必要があるのだぞ?」
「だからこそ参加者達が協力する必要があるんだ。殺し合いなんてしている場合じゃない。
 皆で力を合わせれば何とかなるはずさ」

――ニンゲンとの協力。竜王さまが何と言うかは判らぬが、それもまた一興かもしれぬな…。
「いいだろう。御前に協力しよう。
 我はドルバ、竜王さまに仕えし竜の生き残りだ」

【イザ(DQ6主人公) 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近)
 所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
【ドルバ(ドラゴン) 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近) 所持品:不明
 行動方針:イザに協力する】

366:支給品 1/3
04/11/10 00:34:46 lDK2Wtz0
「ダメや、あきません」
ケット・シーが「開かない」といいたいのか「できない」といいたいのかは、この際どうでもいい。
目の前にある赤い扉がびくともせず、進路の妨げになっているのは事実なのだ。
「鍵穴みたいのがありますから、かぎ使うたら開くんやと思いますけど」
岬の洞窟を奥へ奥へと進み(本人達は出口を探していたのだが)
ようやくたどり着いた先にあったのが、この扉である。
「鍵か。俺の支給品にはなかったなあ」
「リュカさんの支給品て、何やったんです?」
ケット・シーの問いに、リュカは少し渋い顔をして、袋の中から支給品を取り出した。
一つ、竹槍
一つ、お鍋(蓋付き)
一つ、ポケットティッシュ×4
「こりゃまた…」
ケット・シーが素っ頓狂な声を上げるほど、どう見てもそれはハズレ品である。
「ケット・シーのほうはどうなんだい?」
「ボクのにも、鍵はないんやけど…」
こんなハズレ品を見せられた後では気が引けるが、見せないわけにもいくまい。
一つ、正宗
一つ、デスペナルティ
一つ、天使のレオタード
「…アタリ品?」
「せやけど、ボクが装備できるんは、一つもないんや…」
これもある意味ハズレ品なのだろうか…?

367:支給品 2/3
04/11/10 00:36:11 lDK2Wtz0
「ボクが持っといてもしょーがあらしませんから、使えるもんあったらあげましょか?」
ややあって、ケット・シーがそう提案した。
しかし、いくらなんでもリュカが天使のレオタードを着るわけにはいかない。
一応剣である正宗は、セフィロス仕様のため、長すぎて使いこなすことは出来そうにない。
「で、最後のこれは何?」
「銃を知らへんのですか?」
残るデスペナルティは、リュカにとって見たことも聞いたこともない武器である。
概略をケット・シーが説明しても、どうもピンとこない。
「えっと、つまりこの引き金を引けばいいんだね?」
「ちょっとリュカさん!! 人(?)に向けたらいけません!!!!」
説明を聞きながらデスペナルティをいじくるリュカは、
その銃口がケット・シーに向かっていることに気づかなかった。
「え?」

ズキュン――

「あ、危ないやないですか!!!!!」
紙一重で、弾はケット・シーからそれた。
撃たれたほうは冷や汗ものだが、撃ったほうはもっと肝をつぶしている。
「ご、ごめん」
リュカは、何とかその言葉だけを搾り出した。
その時。

ギ、ギギギ――

ケット・シーの後方で、何かが動く音がした。
見れば、行く手を阻んでいた赤い扉が開いているではないか。
もう少し目を凝らせば、扉の鍵が破壊されていることが確認できた。
先ほどの銃弾が、どうやら扉の鍵を壊したようだ。
「……怪我の功名?」
「調子に乗らんといてください!!!」

368:支給品 3/3
04/11/10 00:39:18 lDK2Wtz0
扉を抜けた先は、石造りの立派な建物であった。
二人はとにかく、先に進もうと歩き出した。
「そのデスペナルティ、リュカさんが持っといて下さい」
「いいの?」
「どーせボクは扱えんし。でも、ちゃんと練習するて、約束ですよ?」
そんな確約も交わされたとか。

【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
現在位置 アリアハン城地下牢
行動方針 リュカの家族、及び仲間になってくれそうな人を探す】

369:流血の残像 1/3
04/11/10 02:34:10 MrLyhjdD

レーベ北東の森の中。
三人の男女が、真ん中を向いて円形に座っていた。

ミレーユが去ったことで落ち込むターニアを、ティーダとエアリスが慰める。
二人は明るく振舞っていたが、心の中ではこのゲームに対する憤りが絶えることなく湧いていた。
(この娘は、武器を握ったことも無いだろうに…)
「ごめんなさい…もう、大丈夫」
ターニアの一言も、何処か悲痛な叫びを抑えているように思えた。

それでもその一言をきっかけに、少しずつ会話が始まった。
そして誰が言い出したわけでもないのだが、アイテムを使いやすいように配分した。

「これは何ッスかね?」
ティーダが、ターニアの持っていた理性の種をつまみ上げる。
「わからない。でも…特別な効果がある種だと思う」
エアリスはそう言った。もちろん、確信は無いけれど。
結局それ以上はどうしようもなく、それを他の必要ないアイテムと一緒に袋にしまった。



370:流血の残像 2/3
04/11/10 02:35:39 LW1Sbahm


「あれ、ティーダ君、その腕どうかしたの?」
エアリスが、彼の左腕に、僅かに流れる血を見つけた。
「あ…木の枝かなんかで切ったみたいッス。こんなの放っておいて…」
ティーダはそこまで言うと、ターニアの異変に気づいた。

「あ…血…」
虚ろな声で、ターニアはうめく様に呟く。
―転がる女性の首。飛び散る血。
―剣を濡らして輝いていた、赤い血。
残酷な血の記憶が、無垢な少女を支配する。

「いやぁぁぁっっ!」
ターニアは頭を抱え、大きく横に振り始めた。
まるで、そのままそれをもぎ取ってしまいたいかのように。
「ターニアちゃん!?」
エアリスが両手で彼女の頭を押さえつけようとしたが、何処から湧いたのか、凄い力でその手を振り払う。
「ティーダ君!血を見せちゃダメェェッ!」
エアリスが叫び、はっとしたティーダは腕を流れた血を自らの口で拭い取り、消し去る。
「ターニアちゃん!!」
「いやあぁぁっっ!」
目をぎゅっと閉じ、何も見まいとする。耳を両手でふさぎ、何も聞くまいとする。
脳に残る血の残像だけが彼女を完全に闇へ引き入れようとしていたが…



371:流血の残像 3/3
04/11/10 02:36:29 LW1Sbahm


パァン!

エアリスが少女の頬を引っ叩き、それに反応し少女の心は一瞬間覚醒する。
「怖がるものは何もないから、目を覚まして!」
エアリスの言葉が、少女の耳に届く。
「うぅっ…」
ターニアはゆっくりと目を開ける。
赤い血は何処にも見えない。それが、彼女の心を正常に戻した。
「ご…ごめんなさい、私…」
ターニアは、震える声で謝った。

だが、それは暫く彼女の心に居座るだろう。
―血の、恐怖は。
それから彼女を救えないことが、今のティーダやエアリスにとって一番の苦痛だった。


【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:兄(イザ)に会う】
【エアリス 所持品:ふきとばしの杖〔4〕 行動方針:ターニアを治したい】
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 ゴディアスの剣 麦わら帽子 理性の種 行動方針:同上】

※ターニアは血を見ると錯乱状態に陥る可能性あり。



372:補足
04/11/10 02:37:28 LW1Sbahm
現在位置:レーベ北東の森の中

373:鍛冶屋と伝説のボロい剣1/4
04/11/10 23:00:37 18WbXnFf
「ちっくしょー…あたいがどうしてこんな場所に居るんだよ…」
一見男の言うセリフだが、言っているのは女性、ロンガデゼオではヤクザも避けてとおるという力の持ち主、鍛冶屋サリィである。
彼女は、何故こんなゲームに巻き込まれたのかが依然不思議でたまらなかった。
自分はイザにラミアスの剣を渡し、それから平凡な日々を送っていたはずなのに今ここに居る。
どうかしているとしか思えない…とにかく自分から戦いは仕掛けない、そう思い支給品の鍛冶セットと聖なる気を放つ鎧をザックに入れ、歩き始めた。
目の前に火球が迫ってきたのはその後すぐだった。
(―やっべぇ!もうゲームに乗ったやつがもうそばに居たのかよ!あの速度なら避けても当たっちまう!ちくしょうここで死ぬのかよ!)
彼女が諦め、目を閉じたその時だった。
「うっぎゃあああ!!!!」
ん?と思い目を開けてみると自分の目前で男が燃えている。
その男はのた打ち回り、その後動かなくなった。
「ちくしょう…やる気なら、こっちもやってやろうじゃねぇか!」
彼女はそう意気込み、支給品の鍛冶セットからとんかちを取り出した。
しかし、そのとんかちは只のとんかちではなかったのだ、あのダイヤモンドより硬い浮遊石を砕く事ができる、とんかちだという事を。

374:鍛冶屋と伝説のボロい剣2/4
04/11/10 23:02:17 18WbXnFf
「ちくしょう…やっぱり魔法は厄介だぜ…」
ギルガメッシュは目前の魔法衣の女性に向かいチッと舌打ちをした。
自分の支給品はどう考えてもはずれとしか思えない剣と銃とサンダル。
しかしあっちには魔力を増強させるワンダーワンドがある。
得体の知れない奴、わるぼうに援護してもらってるとは言い、戦力的にきつい。
「おい、なんか素手で使えて簡単にできるお手軽な技知らないか?」
ギルガメッシュがわるぼうにそう問い掛ける。
精神統一終えていたわるぼうがギルガメッシュに答える。
「そうだな…おっ、ちょうどいいのがあるな、俺の真似をしてみろ!」
するとわるぼうは前へ突き進んだ、メラミで落とそうとするムースだが、わるぼうは軽く避ける。
そして横からギルガメッシュもわるぼうと同じように突き進んでくる。
イオラで纏めて吹き飛ばそうと思ったのが彼女の判断ミスだった。
イオラを詠唱するより早く、わるぼうが突っ込んで来たからだ。
そして、ムースに強烈な殴りの連打をかます、ワンドで防いだものの続くギルガメッシュの攻撃には流石に数発喰らってしまった。
後ろに大きく吹き飛ぶムース、血を多少吐きながらも、その口をにやりと歪める。
彼女が詠唱していたのはイオラではなく、イオナズンだった、だが出てきたのはそれを超えるものだった。
「おいっ!避けろ!巻き込まれるぞ!」
ギルガメッシュはその呪文…いや魔法を知っていた、極大の爆発を瞬時に繰り出す魔法、フレア。
最初は小さな火の玉のような物だがそれはやがて膨らみ一気に爆発する。
わるぼうはその小さな玉を避けようとしなかったからだ、わるぼうを突き飛ばそうとし、飛び込むも二人ともフレアを諸に食らってしまう。
「フフフ…やはりこのロッドは便利ですね…さて完全なる止めを刺しましょうか…」
彼女はイオナズンの詠唱へと、再び入った。

375:鍛冶屋と伝説のボロい剣3/4
04/11/10 23:04:11 18WbXnFf
「さっきの呪文は…あいつが放ったんだな!」
自分を攻撃してきた敵を確認すると、とんかちを両手で握り、その標的へと全力で走り向かった。
詠唱に全精神をかけていたムースが、サリィに気がついたのは背後に迫られてからだった。
一閃、サリィのとんかちがムースの脳天を直撃する。
気絶させるほどの力しか込めなかったサリィだが、そのとんかちには人の頭を砕き壊すには、十分な力だった。
ムースの頭は砕け、頭から血がだくだくと流れる。
「……で……わけに……かな……き……らない…………」
細々と聞こえる声、だがそれはどんどん小さくなり、そして聞こえなくなった。
人を殺した…このとんかちで…付いた血を拭い、彼女は前を向いた。
「お、おい!大丈夫かよ!」
サリィは前で倒れている剣士に声をかける。
「う…うう…ん?奴は?」
多少傷があるも起き上がるギルガメッシュ、そのタフさは流石というべきだろう。
自分の目の前の落ち込む少女の目を見、彼は現状を把握する。
「あたいは…呪文をいきなり撃たれたから、その反撃に…でも殺すつもりは…」
「それはしょうがねぇぜ、現に奴はゲームに乗ってたし、殺すのを躊躇ってたらこのゲームじゃ生き残れないぜ」
サリィを慰めるように、ギルガメッシュはそう言った。
「おっと、忘れてた!おい!大丈夫かよ!」
ギルガメッシュはわるぼうの元に駆けより、彼の体を持つ。
すると、わるぼうがいきなり起き上がり、ギルガメッシュの顔を蹴り上げた。
「フン!この俺様があんな呪文ごときで、死ぬかっての!」
「んのヤロォ…!」
いつものギルガメッシュならかなり怒っていただろう、でもなぜか怒る気にはなれなかった。
「まぁ…嬉しいぜ、生きてて」
そんな唐突な言葉に、わるぼうは顔を赤らめドギマギする。
「な、なんだよいきなりそんな事いいやがって…でも俺もオマエが庇ってくれた時、嬉しかったぜ」
滅多に笑顔を見せないわるぼうが笑った、そして二人は声を出して笑った。

376:鍛冶屋と伝説のボロい剣4/4
04/11/10 23:05:41 18WbXnFf
一方、サリィはそんな二人をよそに、地面に捨てられたボロい剣に心を奪われていた。
この剣は…何か特別な気配を感じる、そう、ラミアスの剣にも勝らずとも劣らない…。
彼女はボロい剣を取り、鍛冶セットを取り出し、剣を打ち直し始めた。
いきなり目の前で何かをする少女に、ギルガメッシュは問い掛ける。
「なぁ、あんた何やってんだ?」
「見てわからねぇのか?この剣を鍛えなおしてんだよっ」
そうぶっきらぼうに言い放つと、彼女は剣を見て、とんかちを取り始めた。
「打ち直すにゃ打ち直せるけどよ…強力な火とかなりの時間がいるぜ…」
火…その言葉にギルガメッシュは引っかかった、そうあいつ、わるぼうなら火を出せるんじゃないだろうかと。
チラリとわるぼうの方を見るがやはり目をそらしてこちらを見てくれない…と思いきや…。
「ベギラゴン!」
そう唐突に響く声、燃え盛る火炎。わるぼうはそっぽを向いていたがこの呪文が彼であることは明確だった。
「これだけの炎がありゃ十分だな…うっし!久々に腕振るうぜ!」
彼女の威勢のいい声と共に、彼女の久しぶりの鍛冶が、始まった。
「そうだ…この銃は…鍛えなおせないか?」
ギルガメッシュがそう問いかけたが、それは出来ないという短い返事で分かった。
使えないし、鍛えなおせない、ならばそんなものには用は無い、ギルガメッシュは、その銃を空高く放り投げた。

「イテッ!」
その銃はある王にぶつかった。
「ったく…誰だ、こんなもの投げるのは」
エドガーは空から降ってきた銃を拾い上げ、眺めてみた、全く見たことの無い武器、だが作りはなんとなく分かった。
「なるほどな、そういう作りになってるわけか…ちょっと改造してみるか、工具もちょうどあるし」
彼の支給品は工具の一式と大きなドラムだった、ドラムは使い方が分からなかったものの、工具はとてもありがたかった。
エドガーは種子島銃を、分解し改造し始めた。

377:所持品
04/11/10 23:06:46 18WbXnFf
【サリィ 所持品:鍛冶セット ボロい剣(伝説系の剣) 光の鎧(装備不可)
 現在地:レーベ北の平原 
 第一行動方針:不思議な力を放つ剣を鍛えなおす】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル
 現在地:レーベ北の平原 
 第一行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ】
【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
 現在地:レーベ北の平原
 第一行動方針:????】

【エドガー 現在位置:アリアハンから少し北の平原
 所持品:ひそひ草 工具セット 戦いのドラム 種子島銃
 第一行動方針:空から降ってきた未知の武器を改造する】

【ムース 死亡 残り117人】

378:そして伝説の後1/2
04/11/11 00:30:21 Phro3Y+f
殺し合いというには似合わない風景がそこにあった。
そよ風が髪を揺らす。花の香がかすかに漂う地。

そこに、彼はいた。
黒い髪。正義に満ちた瞳。何故彼が「勇者」と呼ばれるのか、それを体現する姿。
彼の名はアルス。かつて闇に囚われた世界を救った勇者である。
彼はすぐに支給品を確認した後、真っ直ぐ西へと歩いていた。

彼の支給品は番傘とダーツがいくつか、そしてドラゴンテイル。
自衛への転用にとしては非常に使える物が一つあったことが、彼を安心させた。
だが、彼には当初から考えていたことがあった。

「やっぱり僕は、人を殺したくは無い」

―――当然だった。
人の命を自ら絶ちに行くなどと、自分が出来るはずも無かった。
出来たとしても、その相手は最高に悪事を働いた相手にのみだろう。

殺し合いをゲームなどと称するあの魔女に、アルスは憤慨していた。

379:そして伝説の後2/2
04/11/11 00:37:19 Phro3Y+f
怒りを覚えた足は速い。
怒りを覚えた意思は固い。
正義の旗を振りかざそうとする足は速い。
正義の旗を振りかざそうとする意思は固い。

「まずは信用できる人間を探して…それから方法を探ろう。
 かつての仲間と戦わずに済む方法…。そして仲間と共に殺し合いを止められる方法を…」

人を悲しませないため、
人を苦しませないため、
人が人の証を棄てる道を潰すため、

勇者の戦いが始まった。


【アルス(DQ3勇者) 現在位置:アリアハン西平原
 所持品: ドラゴンテイル 番傘 ダーツの矢(いくつか)
 行動方針:信頼できる人間を探す(まずは西へ真っ直ぐ進む)】

380:幼子との会話 1/2
04/11/11 05:43:37 Zk+Pxv46

「ゲホッ…ゲホッ」
「だ、だいじょうぶ?」
「………」
咳き込み、血を吐くピサロ。そんなピサロの顔を覗き込み、心配の声をかけるビビだが変わらず返事は無い。
ピサロはあれからも変わらず冷たい空気を纏っている。ずっと黙ったままだ。
きっとこの人は、あまり人に心配されるのがすきじゃないんじゃないかな、とビビは思ったが、
だからといって目の前で血を吐かれて心配しないなんて無理だ。
…はやく、回復魔法がつかえるといいのに。見ていてとってもつらそうで、なんだかそわそわしてしまう。

「ねえ、魔法がつかいにくいのはなおるのかな?」
ビビの質問に、ピサロはふと顔を上げる。エリア達と遭遇して以来、初めて心配以外の声をかけられた。
「…先程も言ったが…この大陸全体に魔法を妨害する働きがあるようでな。
 魔力が高めにくいのはもちろん怪我の所為もあるだろうが…呪文を使いにくいのはおそらく私だけではないはずだ」
「でも、さっき…」
ピサロの答えに、ビビは少し悲しそうな目でさらに疑問を投げかける。
それを見てピサロは、ビビが先程の人間共に使った魔法のことを言っているのだと解った。
「そうだな…あの程度の攻撃魔法なら特に問題なく使えた…妨害されているのは回復魔法だけなのかもしれん」
「…回復魔法だけ?」
「ああ。そう考えれば合点がいくだろう?」
攻撃魔法は通常通りに使え、回復魔法の力は制限される。
つまりここでは、攻撃は全力で行えるが、その結果として怪我を負ったとしても中々回復することが出来ないという事だ。
そしてそれは、少なからず死亡者の増加に繋がっていくだろう。
おそらくは、ゲームを盛り上げるための主催者の意図か。
――それとも、他に何かあるのか…?それは今は解らないが。

「…えっと、よくわからないけど、攻撃はできるけど、けがはなおせない…?」
ビビが不安そうに頭をひねる。よくわからないと言ってはいるが、何となくなら理解はしているのだろう。
ビビにとっての戦いは、結果たとえ傷ついてたとしてもその傷は仲間が癒して、支えてくれるものだった。
――それができなかったら、けがはなおらなくて死んでしまうんじゃないの?

381:幼子との会話 2/2
04/11/11 05:44:51 Zk+Pxv46
「…当然といえば当然だな…これはそういうゲームだ…」
「そんなの、ひどい」
ビビが首を横に振る。
「ねえ、こんなゲームしなくていいよ!ぼく、友達が死ぬのはぜったいやだ!」
「………」
ピサロは何も答えない。ただ、悲しそうなビビを見つめるだけだ。
この幼子が必死で訴えている事は、解らないでも無い。
だが、この状況の中、ゲームを「しなくていい」というのは、とても難しいことに思える。
うつむいているビビを見やりながら、ピサロはまた、目を閉じた。

…ピサロはビビの言葉を聞いて、ふと、ロザリーは今どうしているだろうかと思った。

【ピサロ 現在位置:レーベ東の森中央付近 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 現在位置:同上 所持品:不明 行動方針:ピサロと共にいる】

382:尋ね人1/2
04/11/11 14:48:06 I1oSkJhK
とん、とん、とん。
突然の足音にパウロはギョッとして身をすくめた。誰かが部屋に
入ってきたようだ。
足音の主ーロックを探しにきたセリスだったのだがー彼女は入ってすぐに、
人の気配に気づいた。しかし、姿は見えない。
「誰かいるの?」
誰かいる事を承知で、セリスは気配の主に呼びかけた。
もとより彼女はゲームに乗る気は無い。だがベッドの下に隠れている
パウロには、声の主が若い女性であるということしかわからない。
(出て行ったら殺されるのかも)
そう思うと背中を冷や汗が伝う。パウロはますます体をすくめた。
…それから五分。
その間セリスは見えざる気配の主に呼びかけ続け、パウロは相変わらず
ベッドの下ですくんだまま。
いいかげん苛立ってきたセリスの一言が、状況に決定的な変化をもたらした。

383:尋ね人2/2
04/11/11 15:04:35 I1oSkJhK
「いい加減にしなさい!もし戦う気でいるなら、容赦しないわよ!」
怯えきっていたパウロの精神は、
「もし戦う気でいるなら」
をすっ飛ばして、
「容赦しない」
という言葉をしか認識しなかった。完全なパニックに陥ったパウロはー
「う、うわぁぁぁぁっ!」
雄叫びを上げてベッドの下から飛び出すと、セリスに向かって突進した!
「!?」
驚いたセリスは反射的に持っていた樫の杖で、パウロの側頭部を
したたかにひっぱたいた。勿論パウロは失神。床に伸びてしまった。
「あらら…やりすぎたかしら」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったパウロの顔を見て、セリスは苦笑をもらす。
「よっぽど怖かったのね…よいしょっと!」
パウロをベッドに寝かせたセリスは、彼の頭に出来た大きなコブを
冷やすため、水とタオルを探した。
【パウロ(気絶)所持品:破壊の剣 
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階、ベッドの上
行動方針:ロランとムースを探す。】
【セリス 生存確認 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:パウロを介抱する
第二行動方針:ロックを探す】


384:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/11 19:28:54 fEfxx+ks


いざないの洞窟の西側、山岳地帯。
地面に並べた支給品を見て、思わず女性―ミネアは苦笑する。
かぶれば頭に棘が刺さりそうな冠、死に逝った者の怨念が作り出した盾、邪悪な悪魔の尻尾。
どう考えても、どれかが自分の身を守ってくれる可能性などゼロに近い。
―せめて護身用の何かが欲しい、と思うのだが、彼女の持ち物はその他には何もない。
「呪われてるのかしら、私…」
笑いも既に乾ききって、溜息が一つ出た。

ドォォォン……

不意に、くぐもった様な爆音が聞こえた。
ミネアの、遥か前方のようだ。
「…?」
一寸首を傾げると、その方向に目を凝らす。
「爆発…?」
音でそう判断するも、視界には何も映らない。

ドドォォォン……

もう一度、爆音が聞こえる。
「何かあったのかしら…?」
ミネアの爆音に対する若干の恐怖は、彼女の心の大勢を占める好奇心の中で、消えた。
呪われた支給品を一応ザックにしまい、彼女は爆発があったと思われる方向へ歩き出した。

…爆発を起こした主が、自分より更に呪われているという可能性には、彼女は未だ辿り着いていなかった。


【ミネア 所持品:いばらの冠 嘆きの盾 悪魔の尻尾 行動方針:爆発現場(ハッサン)の様子を見る
現在位置:いざないの洞窟西の山岳地帯(ハッサンより若干南)】


385:罪人
04/11/11 21:41:49 Zk+Pxv46
俺は罪を負った。
いや、ここに来る前からずっと、それは裏切りという名の――

何故俺は、立ち上がらなかった?
目の前で実の妹が殺され、親友が叫んでいるというのに。

それは…俺が裏切り者だからだ。
俺は力に魅せられた。そして捨てた、掛け替えの無いものを。
決定的な絆の断ち切れはきっと、二度と治る事は無い。
断ち切れたものを、溝を越えて助けることは出来ない。
俺はただ、遠く離れたところから傍観するのみだ。
それで良いのか?いや、良い筈がない。
そんな事は判っている…だがそれでも、もう取り返しのつかない事だって、ある。

空は変わらず高く、青い。
まるで、俺を置いていくかのように。

マリアはもうここにはいない。ならばあの、青い空の向こうにいるのだろうか。
フリオニール、お前は…どうしている?マリアを失って、それでもなお…生きようとしているのか?

俺はただ、罪を裁かれるのを待つのみの存在だ。例えそれが、逃げだったとしても。
フリオニール…俺はお前に会うことは出来ない。ただ、それでも俺はずっとお前の――

【レオンハルト 現在位置:レーベ西の平原 所持品:ロングソード・消え去り草 行動方針:死を待つ】

386:どこかに残るなにか 1/6
04/11/11 22:31:42 W23z0RyE
―なぜ、自分は死のうとしなかったのだろう。
なぜ、この女性は自分を助け、剣士を止めようとしたのだろう。
数時間前のフリオニールなら、きっと即答できたはずだ。
けれども今の彼にはわからない。それを哀しいとすら思えない。そういった情動を感じる『何か』が、凍り付いてしまった。
「……」
ただ、頭の中にある記憶と経験が。
そしてほんの少しだけ凍らずに残された『何か』が告げる。
フリオニールの身体は、それに従った。
眠るミレーユを揺さぶり、簡単には目覚めそうにないとわかると、彼女の身体を担いで気付かれぬよう戦場を離れる。飛ばされた盾を拾うことも忘れない。
そしてしばらく歩いていると、突然目の前の建物から一人の男が飛び出した。
「おい、大丈夫か!?」
バンダナを巻いた男―ロックが、フリオニールに話し掛ける。
フリオニールは、背中に持たれかかった女性を見て、淡々と言った。
「……意識がない。魔法のせいだ。起こそうとしたが、起きない」
機械的に言葉を紡いだ彼に、ロックは少しばかり眉を潜めたが、すぐに気を取り直す。
「わかった。その人と一緒に、ここでじっとしていなよ。
 あと、よかったら盾を貸してくれないか?」
フリオニールはあっさりうなずいた。ロックは白く輝く盾を受け取り、走り出す。
(仕掛けるなら今しかない)
もし、緑髪の二人組が負ければ、青い服の男は自分達を襲うはずだ。
そうなれば勝ち目はゼロになる。自分には武器がないし、あの二人はどう見ても戦える状態ではない。
逃げるという選択肢は考えなかった。
仮に考えついたとしても、彼の過去が、それ以上に彼自身の矜持が許さなかっただろう。
(くそっ。この盾、結構重いな)
―ロックは知りようもないことだが、本来ならば天空の盾は常人には扱えない。
選ばれぬ者には、『結構重い』どころか持ち上げることすら難しいはずだ。
けれども、主の手を離れた今の間だけ、気紛れに力を貸したのか。
あるいは勇者を助けるため、ロックにその身を委ねたのか。答えは、盾にしかわからない。
(これ一つでどこまで戦えるか……やれるところまでやってやる!)

387:どこかに残るなにか 2/6
04/11/11 22:37:07 W23z0RyE
二対一でありながら、戦況は五分五分だった。いや、どちらかといえばソロ達の方が不利だったかもしれない。
「まさかこの程度で全力とか言わないだろうな?」
まだ余力を残しているのだろう。テリーは嘲りながらも、仕掛けてくる。
「二人がかりのハンデ戦なんだぜ、もう少し真面目にかかってこいよ」
(どこがハンデ戦だよ、呪文を跳ね返せるって時点で反則だろ)
ヘンリーは小さく舌打ちした。
本来、彼の戦闘スタイルは、呪文で敵を撹乱しその隙を突くというものだ。
純粋に剣の腕前だけでは、本職相手に渡り合えるわけがない。
ソロは、自分よりは遥かに高みにいる。だが、それでも相手の腕に及ばない。
……せめて、マヌーサでも効けば一気に戦況を覆せるのだが。
そう思った時、ヘンリーの視界に奇妙な物が映った。
物陰で隙をうかがうバンダナを巻いた男。その手に握られているのは―
(天空の盾!?)
彼が知る限り、親友の息子レックスしか装備できぬはずの盾。
それを誰とも知らぬ若い男が、身に付けている。

ソロも、男の姿に気付いた。一瞬だけ視線が交錯する。
その目に宿る輝きが教えた。彼は、自分たちの味方だと。
(ヘンリーさん……)
テリーに聞こえぬよう、小さく声をかけた。
ヘンリーがうなずいたのを確かめ、ソロは一気に走り出す。
テリーは唇の端を吊り上げながら、向かえ討たんとばかりに駆けた。

388:どこかに残るなにか 3/6
04/11/11 22:41:18 W23z0RyE
―ソロの後ろで、ヘンリーが呪文を唱えていたことは気付いていた。
彼に構わずソロの相手をしようとしたのは、指輪をはめた自分には呪文など無意味だと考えたためだ。
それが油断だった。
ヘンリーの呪文が完成する寸前、ソロの持つ剣が光り輝き、透明な壁を作る。
(―っ!?)
「イオ!」
テリーが離れようとしたその時、両者の間に爆発が起きた。
けれどもソロへと迫る熱風は光の壁に跳ね返され、正面に立つテリーへと襲い掛かる。
反射された呪文を再び反射することは、どのような魔力を用いても不可能だ。
舞い上がる砂埃と爆風に翻弄されつつも、なんとか青年は体勢を立て直そうとする。
(ちっ、味な真似を!)
テリーは追撃を用心し、砂煙へと目を走らせる。だが、ニ撃目は予想外の方向から飛んできた。
地を蹴る音、それが背後から聞こえたと気付き振り返った瞬間、煙を裂いてバンダナの男―ロックが現れる。
とっさの反撃、だがそれすらも跳ね除けるかのように、右手の盾を押し出して―
全体重を載せた体当たりが、テリーの身体を突き飛ばした。

フリオニールは路地の上で、四人の戦いを静かに見つめていた。
建物の中に隠れようとしなかったのは、ロックに「ここにいろ」と言われたからだ。
「う……うん」
爆発音のせいか、呪文の効力が切れたのか。背に負ぶわれたままのミレーユがようやく目を覚ます。
「テリーは……テリーはどこ?」
フリオニールは何も言わず、無造作に指を指した。
そして、ミレーユの瞳が見開かれた。

389:どこかに残るなにか 4/6
04/11/11 22:44:44 W23z0RyE
「やった!」
歓声を上げたのはヘンリーだった。続いてロックが、安堵の息を吐く。
二人ともここまで上手くいくとは思っていなかったのだ。
だが、ソロだけは気付いていた。
「ダメだ! まだ決着は……」
その言葉が終わったかどうか。
一瞬の出来事だった。
テリーが身を起こしたとヘンリーが気付いた時には、真紅に輝く瞳が目前に迫っている。
防御は間に合わない。
たった一撃で、ヘンリーの剣は弾き飛ばされ、宙に舞う。
テリーは己の武器を捨て、代わりに、導かれるように落ちてきた雷鳴の剣を手に収めた。
青年の唇が動いた。ヘンリーだけが、音無き声を読み取れた。
『死ね』―シンプルな一言だった。

「止めて、テリーーーーーっ!!」

ミレーユが叫ぶ。狂気の剣が閃く。
どちらが早かったのだろう? ―多分、同時だったに違いない。
赤い飛沫が空へ散った。肉を断ち切る不快な音と共に。
胸の辺りを十字に抉られ、ヘンリーは糸の切れた操り人形のように力無くくずおれる。
「邪魔ばかりしやがって……」
凍りついた空間を、憎々しげなテリーの声だけが渡る。その体が、不意に宙に浮かび上がった。
「今は退いてやるよ。この剣に免じてな」
返り血で汚れた天使の翼をはためかせ、テリーの姿は家並みの向こう、南の空へと消える。
ミレーユは呼び止めることもできなかった。
ただ、弟を止められなかった後悔に身を震わせるしかできなかった。

390:どこかに残るなにか 5/6
04/11/11 22:51:48 W23z0RyE
「ヘンリーさん!」
ソロとロックが、血にまみれたヘンリーに駆け寄る。
フリオニールの背から降りたミレーユが後に続く。
「おい、死ぬな! しっかりしろ!」
ロックが呼びかける、と、突然ヘンリーが目を開けた。
瞳ははっきりと焦点を結び、ロックを見つめる。
ゆっくりとだが自力で身を起こし、悪態までついてみせた。
「バカヤロウ、こんなところで死んでたまるかよ……」
その様子に、思わずほっとする男二人組。
しかしミレーユは、じっとヘンリーの背後を見つめていた。
「あなたは、何か不思議な力に守られているみたいね」
ふと、彼女の表情に翳りが兆す。自分の無力感を噛みしめるように。
「だから助かったんだわ……テリーは、本気であなたを殺すつもりだった」
だがヘンリーは頭を振った。
「違う……奴を止めたのは、あんただ」
「え?」
「あんたが叫んだ時、少し……奴の力が弱まった。
 どんな関係だか知らないが、忘れたつもりでもどこかに残ってるんだろう。
 忘れたつもりでも、記憶や心のどこかに……あんたのことが……
 だから今も……俺に……止めを、ささずに……」
言い終えぬうちに、ヘンリーの体から再び力が抜けた。
「おい! 早いとこ手当てしないとまずいんじゃないか?」
慌てて脈を取りながら、ロックが言う。
ミレーユは困惑したように、ヘンリーとソロを交互に見た。
ソロは彼女の意図を察し、微笑を形作りながら答える。
「回復呪文は僕にも使えます。ここは任せてください」
「……ごめんなさい」
ミレーユは頭を下げ、村の外へと走り去っていった。
弟を、今度こそ止めるために。

391:どこかに残るなにか 6/6
04/11/11 22:54:00 W23z0RyE
【フリオニール 所持品:なし 状態:感情喪失 行動方針:静観?】
【ヘンリー 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 状態:気絶・重傷
 行動方針:傷の治療】
【ソロ 所持品:さざなみの剣 水のリング
 行動方針:ヘンリーの治療】
【ロック 所持品:キューソネコカミ 天空の盾 クリスタルソード
 行動方針:ソロ達の手助けをする】
*現在位置:レーベの村中央部→宿屋

【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴
 行動方針:テリーを追い、命に換えてもテリーを更正させる】
*現在位置:レーべの村→南へ

【テリー(DQ6) 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼 リフレクトリング
 行動方針:自らの力を試す=ゲームに勝利する】
*現在位置:レーベの村→南へ

392:魔物の戦い方 1/4
04/11/11 23:29:49 VDieIOdV
地獄の業火にも似た火柱を目撃し、ピエールはその場に近づいた。
もしそこで戦闘が行われているのなら、物陰から不意をついて殺すことも出来るし、
戦闘が終わっていたとしても、勝者の隙をつくことが出来る。
リュカ以外の参加者を倒す。
そう決意したとはいえ、ピエール単体では、その強さは常識を超えるほどではない。
故に、移動するときも細心の注意を払った。

近くまで行くと、火柱の明かりは不意に消えた。
そこには男一人と女一人(男装しているが、魔物のピエールには匂いでわかる)、
そして炭化した、多分もとは人型であったものがころがっていた。
彼らは戦いの勝者なのだろうと、ピエールは理解した。
一対二である。無策には飛び込めない。
ピエールは慎重に二人の隙をうかがった。

しかし、ピエールの推測は実は半分も当たっていない。
シャドウとファリスは別に組んでいるわけでもなければ、ともにゲマを倒したわけでもない。
そのゲマすら、誰かに倒されたというわけでもない。
程なくシャドウはファリスと別れた。
ピエールにとっては意外な展開であったが、戦力が半減したのは確かである。
狙うなら今と、鋼鉄の剣を構えた。
では男と女、どちらを狙うかだ。
その場を離れた男、シャドウは、意識して気配を追わねば
すぐにでも見失ってしまうほど闇と同化している。
その手腕を”強し”と見て、ピエールは男の後を追った。
強いものを野放しにしておけば、それがいつかリュカの脅威となると考えたからだった。

393:魔物の戦い方 2/4
04/11/11 23:31:18 VDieIOdV
しばらくして、女、ファリスから十分に距離をとった後、ピエールは物陰から飛び出しシャドウを襲った。
鋼鉄の剣は確実にシャドウの心臓を一突きとする予定だった。
しかし、ピエールの行為はシャドウのダガーによって阻まれてしまった。
これにはピエールが狼狽する。
十分に気配を絶ち、不意をついた自信があったのだ。
「先ほどから俺を付け狙っていたのは貴様か。まさか魔物だとはな…」
車道はゆっくりダガーを構えなおし、ピエールに向かい合う。
認めよう。隠密行動に関しては、相手が遥かに上手だったのだ。
だが、不意をつけなかったからといって諦める訳にも、また諦めさせてくれる訳でもない。
ピエールもまた鋼鉄の剣を構えなおした。

その戦いは静かに始まった。
魔法や剣戟の打ち合いではなく、互いに隙をうかがっている。
先に動いたのはピエールだ。急所ではなく利き手を狙った。
だが、シャドウはそれをかわし、攻撃の隙をついて顔面へ切りつけた。
ピエールはかわそうとしたが、体勢が十分でなく右腕の一部に傷を負い、鋼鉄の剣を落としてしまった。
傷口から流れるものは、血とも体液ともつかぬもので、強い酸の臭いがする。
シャドウは眼前にいるものが人間でないことを再確認したが、そんなことで怯みはしない。
軽くスッテプを踏み、今度は一直線に心臓を狙った。
ピエールの胸に、深々とダガーが突き刺さる。
シャドウは、勝ったと思った。
しかし、次の瞬間、小さな爆発音とともに、己の胸に、焼け付くような痛みが走った。
ダガーを放し、後ろへよろめく。
胸からは、赤い血が流れていた。

394:魔物の戦い方 3/4
04/11/11 23:32:19 VDieIOdV
ピエールがダガーを胸から引き抜くと、そこから黄緑色の液体が流れるのに、彼は微動だにしない。
「な、ぜ…」
ピエールの手には、ロングバレルRが握られている。
初めて使う武器だったが、零距離射撃であるため狙いは外れず、シャドウの胸に風穴を開けたのだ。
だが、シャドウが疑問に思ったのは、何によって攻撃を受けたのかではなく、何故攻撃が出来たかである。
膝を地面につき、傷口を抑える以外の行動を取れないでイルシャドウに、ピエールは答えた。
「とっくに、お気づきになっているものと思っておりました」
騎士の頭ではなく、下のスライムの口が動いている。
「そういう、ことか…!?」
「はい、私の本体はこちらです」
シャドウは最後の力を振り絞り、落ちている鋼鉄の剣に飛びついた。
次の一振りはスライムを狙ったが、ピエールはそれを許さない。
狙いの外れる恐れのあるロングバレルRではなく、負傷した右手で新たにいかずちの杖を構える。
装備し打撃を加えるためではなく、もう一つの使い方をするために。
「いかずちよ!!!」
杖から、ほとばしる高熱の炎がシャドウを襲う。
と同時に、いかずちの杖に小さなひびが入ったが、ピエールはそれに気づかない。
後には、人の焼ける臭いだけが残った。

395:魔物の戦い方 4/4
04/11/11 23:33:37 VDieIOdV
(今の戦闘音を聞いて、誰か来るとまずいな…)
傷口は祝福の杖で塞いだが、どうも体力が回復しない。
どこか休む場所が必要だが、ここに留まるのは危険である。
ピエールはアイテムを回収し、とりあえずの進路を南にとった。

【ピエール 現在位置:レーベ南の森(南部)
 所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 祝福の杖 いかずちの杖 魔封じの杖
       ダガー 祈りの指輪
 第一行動方針:南下し、身を隠す場所を探して体力の回復を図る
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

 ※杖類はDQMのように数回使うと壊れます。

【ファリス 現在位置:レーベ南の森(北東部)から移動中
 所持品:王者のマント@DQ5 聖なるナイフ 行動方針:仲間を探しに行く】

【シャドウ 死亡 残り116人】

396:魔物の戦い方 訂正
04/11/11 23:35:56 VDieIOdV
【ピエール(HP4/5程度) 現在位置:レーベ南の森(南部)
 所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 祝福の杖 いかずちの杖 魔封じの杖
       ダガー 祈りの指輪
 第一行動方針:南下し、身を隠す場所を探して体力の回復を図る
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】


397:暗黒の道へ歩んだ者の償い1/2
04/11/11 23:59:19 k04bFeEX
奇妙なねばねばした物体に乗った怪物とアサシンのような男のやり取りを影で見ていた青年、ラムザは今迷っていた。
(―あの怪物の弱点はわかった…でも僕のこの支給品で勝てるだろうか?)
彼に支給されたのは…一見錆びた剣だが、どうも何かに呼応して強くなる剣らしい、説明書にはそう書いてあった。
もう一つは、アダマンタイトで作られた鎧、軽い上に動きやすい、ラムザはとても気に入っていた。
だが、その支給武器で果たしてあの強い怪物に勝てるだろうか?、弱点を一回つく、それだけならば勝てそうなのだが。
その弱点をつく隙が見つからない、完全に隙を作らぬよう歩いているのだ。
もう少し観察しよう、すると前方から奇怪なマスクを被った人物が現れた。

「貴様…先ほどの戦闘の身のこなしといい、なかなかの手練れの者だな」
黒いマスクの人物、ゴルベーザはピエールに向かい、そう言い放った。
ゴルベーザはあるひとつのことを考えていた。
自分が何故ここにいるのか、それは過去に犯した罪からなのか、それはわからない。
だがこんな危険性のあるゲーム、そして弟がいる、彼の選択肢は一つだった。
弟を守る、そのために危険な人物を排除する、そう誓ったのだ。
「貴様に恨みは無いが、貴様には危険を感じる…」
そう言いながら、ゴルベーザは支給品の鞭を持つ。
そして、ピエールは感じたのだ。この男も、先ほどの男と同じ危険を感じた事を。
ピエールは剣を持つ、足元のスライムは笑っている、勝利を確信しているのかどうかは定かではない。
二人は、目前を通り過ぎた一陣の風を合図に、飛び出した。

398:暗黒の道へ歩んだ者の償い2/2
04/11/12 00:01:13 qC2/C+bG
(―戦っている、あの怪物はあの人に注意が行っている、今…やるしかない!)
ラムザは空高く舞い上がった、それは竜騎士の如く。
目指すは、怪物の弱点、下のぶよぶよした部分めがけて、剣を構えた。
ピエールとゴルベーザは、その上空から迫る人影には全く気が付いてはいなかった。

【ラムザ(見習い剣士 アビリティジャンプ) 現在位置:レーベ南の森(南部)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:奇妙な怪物を倒す
 最終行動方針:ゲームから抜ける】
【ゴルベーザ 現在位置:同上
 所持品:グリンガムの鞭 皆伝の証 浮遊石
 第一行動方針:目の前の怪物を倒す
 第二行動方針:危険な人物を減らす
 最終行動方針:セシルを守る】

【ピエール(HP4/5程度) 現在位置:レーベ南の森(南部)
 所持品:鋼鉄の剣 ロングバレルR 青龍偃月刀 祝福の杖 いかずちの杖 魔封じの杖
       ダガー 祈りの指輪
 第一行動方針:目の前の危険人物を殺す
 第ニ行動方針:南下し、身を隠す場所を探して体力の回復を図る
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

399:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/12 04:41:15 gLolyDdy
>>盗聴器内臓。
>これは流石に大本が混乱するかと。
>何百人の会話が一斉に聞こえるわけですから

別に一人で全ての会話を聞いてる必要は無いだろ?

400:冷静な殺意、残された狂気 1/3
04/11/12 20:57:02 fXbUxkAu
一度覚悟を決めてしまえば楽なものだ。
若きラインハット王・デールは険しい崖を背に、こちらに向かって走ってくる男を見つめる。

死ぬのは別に怖くない。
母の狂気を止められなかった罰、罪なきサンタローズの人々を救えなかった罰として受け入れるつもりだ。
けれども、残されたラインハットの民と、何よりまだ幼いコリンズはどうなる?
自分が死に、ヘンリーやマリアの身にまで何かがあったら……ラインハットは荒れる。
権力を狙う輩はどこにでもいる。そして、手段を選ばない。
必ず、王となったコリンズを操ろうとするものが出てくるだろう。
あるいは追放するなり暗殺するなりして、己が王座に座ろうとするかもしれない。
それだけはさせたくない。叔父として、コリンズには幸せな人生を歩んで欲しい。
また、強欲な人間が政治を握る事態になれば、国民にも不幸をもたらす。
―かつて兄は母の罠にかかり、十数年間ものあいだ奴隷として辛酸を舐めさせられた。
母に化けた魔物のせいで、人々の生活は圧迫され続け、たくさんの人が苦しみの中で死んだ。
(それなのに、何もできなかった。僕は王として失格だ……
 だけど今度こそ。今度こそ、ラインハットのために戦ってやる)
生き残るのは自分でなくていい。
ヘンリーやマリア、あるいはグランバニア王のリュカのように、コリンズの後ろ盾となって助けてやれる人物ならば。
そのためならば―この手など幾らでも血に染めてやろう。

覚悟を決めてしまえば、後は楽なものだ。身体が勝手に動いてくれる。
先ほど読んだ説明書のとおりに、トリガーを引く。
機械仕掛けのリズムに乗って、抜き身の剣を構えていた男がダンスを踊る。
それで終わりだ。なんてことはない。
戦う術を知らぬ自分でも、人は殺せる。簡単に。
デールは男の骸も確かめず、崖に沿うようにして歩き去った。

401:冷静な殺意、残された狂気
04/11/12 21:00:35 fXbUxkAu
(―おのれ、人間め)
呪詛の言葉は声にはならなかった。傷ついた体から流れる、人には有りえぬ色の血が、大地を醜く染める。
その代わり、渦巻く怨念は死の淵にあってなお増大を続けていた。
今にも深遠に沈みそうな意識の中で、男は前へと這う。
幻獣に身体を噛み千切られ、主の命を果たせぬと悟った時の無念が。
すんでのところで獲物を攫っていった、金髪の男に対する憎悪が。
復讐も果たせぬまま、戦い方も知らなそうな若造によって死を迎えるという絶望が。
そして狂気にも等しい生への渇望と、生きとし生ける全ての者に対する殺意が、死にかけた男の身体を突き動かした。
男自身、何故自分がそうしようとしたのかわかっていなかったに違いない。
ただ、復讐を望む心が、魔物としての本能が囁いたのだ。
男は必死に手を伸ばし、銃弾の雨によってぶちまけられた支給品の一つを握り締め―

それからどれぐらいの時間が流れただろう?
黒髪と赤い瞳を持った女剣士が、息絶えた男に近寄る。
「銃でやられたのか……」
全身に大穴を開けられた死体など、決して気持ちのいいものではない。
女剣士―パインは、できるだけそちらを見ぬように男の剣を取る。
と、その時、男の手の下で何かが落ちていることに気が付いた。
「これは、ドレスフィアか?」
一瞬、いつのまにか無くなっていたスペシャルドレスかと思ったが、すぐに違うと気付く。
そのスフィアから感じられるのはダークナイトの力だったからだ。パインは失望したが、やがてあることを思い出し、眉を潜めた。
彼女は既にダークナイトのドレスフィアを持っているのだ。
同じドレスフィア。そして、わざわざ他人に支給されていたスフィア。
「……もしかして、何か特別な力でもあるのか?」
パインは迷わなかった。好奇心とかすかな期待に突き動かされ、そのドレスを纏う。

身体が滅びても、想いは残る。ある女性の歌声は、千年の時を越えて願いを伝えた。
命は尽きても、怨念は残る。ある青年の憎しみは、千年の時を越えて災厄を振りまいた。
―絶望のうちに死した男の妄執は、何をもたらそうというのだろう。
ドレスチェンジしたパインが静かに目を開く。赤い瞳は、虚無よりもなお暗い闇を湛えていた。

402:↑2/3 これ3/3
04/11/12 21:03:19 fXbUxkAu
【デール 所持品:マシンガン、アラームピアス(対人)
 現在位置:アリアハン城の東、岩山付近
 行動方針:兄夫婦&リュカ一家以外の参加者を殺す】

【パイン(ジョブ:ダークナイト) 所持品:うさぎのしっぽ、静寂の玉、アイスブランド、ドレスフィア(ダークナイト)
 状態:凶暴化(何かの衝撃で正気を取り戻す可能性有り) 現在位置:アリアハン城の南東、岩山付近
 行動方針:全員殺害。正気を取り戻した場合は不明】

【リヴァイアサンに瞬殺された奴 死亡】
【残り 116人】

403:焦り 1/2
04/11/12 21:41:51 8IYEhWuF
アリアハン城門前、暗い表情で地図を眺める男が一人。拳法着に身を包んだ青年、ジオだ。
彼の心は重い。

ゲーム開始早々攻撃を仕掛けられ、南に逃げ出したジオの目に留まったものは、平原からさらに南にあるアリアハンの城だった。
(城…目立つな。危険だが…もしかしたらあいつもいるかもしれない)
そう考えたジオは、アリアハン城を目指しさらに南へと走った。
しかしこの決断は、彼にとっては良くない結果をもたらす。
もしもこの時、城に気付かずに橋方面に向かっていれば、求めている人に会えただろう。
しかしそれは運命の悪戯か、不幸な偶然か。ここで二人が出会うことは無かった。

「どこにいるんだ…アルカート…」
ぽつりと呟く。この街に来るまでの平原一帯と、この街はもう探し尽くした。
道中、知らない人間なら何人も見た(ゲームに乗っていなさそうな人間にはアルカートの事を聞こうかとも思ったが、やめた。
また爆弾を投げつけられてはたまったものではないし、この状況でもなお自分一人で探し出したいという気持ちもあったからだ)。
しかし、やはりと言うべきか、その中に彼女の姿を確認することは出来なかったのである。
ジオは焦りを感じ始めていた。
一刻も早く見つけないと…ゲームに乗っている人間が、危険な人間が、間違いなくいるのだ。
(頼む、無事でいてくれ)
彼は守るべき人がここにいるかもしれないという望みをかけ、アリアハン城内へと早足で入っていった。

404:焦り 2/2
04/11/12 21:43:24 8IYEhWuF

「なんだ、近くで見ると思ったよりも小さいんだな」
ジオが城内へ入ってほどなくしてから、尻尾の生えた少年――ジタンが、ジオと同じように城門前に立った。
城を見上げ様子をうかがってみるが、ここに仲間がいるか…あるいは危険があるかどうかも、もちろん外からではわからない。
(ダガー…ビビ、みんな…ここにいるのか?)

彼もまた、焦っていた。
サラマンダーの事も気がかりだし、それ以上にダガーが心配だ。
それに、この大陸も小さいけど狭くはない。もしもみんながみんな全く反対方向、東側にいたら。そんな心配もあった。
(みんな…そんな簡単に死ぬようなやつじゃないのはわかってるけど…ダガー…)
…ジタンは知らない。ガーネットは、既にいなくなっていることを。
(大丈夫だ、ダガーもみんなもきっと無事だ…)
自分に言い聞かせるかのように、そう思いながら。
ジタンも城内へと走っていった。

【ジオ 現在位置:アリアハン城一階 所持品:ミスリルナイフ、ドリームパウダー×3
 第一行動方針:城内でアルカートを探す 第二行動方針:アルカートを探し、守る】
【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面 現在位置:アリアハン城一階
 第一行動方針:城内で仲間を探す 第二行動方針:仲間との合流】

405:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/12 23:02:02 qC2/C+bG
>>377
の、以下の部分を無効にします。

「そうだ…この銃は…鍛えなおせないか?」
ギルガメッシュがそう問いかけたが、それは出来ないという短い返事で分かった。
使えないし、鍛えなおせない、ならばそんなものには用は無い、ギルガメッシュは、その銃を空高く放り投げた。

「イテッ!」
その銃はある王にぶつかった。
「ったく…誰だ、こんなもの投げるのは」
エドガーは空から降ってきた銃を拾い上げ、眺めてみた、全く見たことの無い武器、だが作りはなんとなく分かった。
「なるほどな、そういう作りになってるわけか…ちょっと改造してみるか、工具もちょうどあるし」
彼の支給品は工具の一式と大きなドラムだった、ドラムは使い方が分からなかったものの、工具はとてもありがたかった。
エドガーは種子島銃を、分解し改造し始めた。

詳しくは本スレにて。

406:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/12 23:16:49 qC2/C+bG
>>300
もともと自分悪いので、空気を悪くしたのは自分だと思ってます。
修正版を現在書いていますので、時期を見て投下したいと思っています。
ここの住人の皆様方へ、本当に申し訳ありませんでした。

407:サリィ修正版1/5
04/11/13 19:27:59 GHJtJtoO
「ちっくしょー…あたいがどうしてこんな場所に居るんだよ…」
一見男の言うセリフだが、言っているのは女性、ロンガデゼオではヤクザも避けてとおるという力の持ち主、鍛冶屋サリィである。
ロンガデゼオに居た自分が、何故こんなゲームに巻き込まれたのかが依然不思議でたまらなかった。
自分はイザにラミアスの剣を渡し、それから平凡な日々を送っていたはずなのにどういう訳か今ここに居る。
どうかしているとしか思えない…こんなゲームには参加するつもりは無かった。
とにかく自分から戦いは仕掛けない、そう思い支給品の鍛冶セットと聖なる気を放つ鎧をザックに入れ、歩き始めた。
その直後だった、彼女の目前に火球が迫ってきたのは。
(―やっべぇ!もうゲームに乗ったやつがもうそばに居たのかよ!あの速度なら避けても当たっちまう!ちくしょうここで死ぬのかよ!)
避けられないことを悟り、彼女が諦め、目を閉じたその時だった。
「うっぎゃあああ!!!!」
ん?と思い目を開けてみると自分の目前で海賊風な男が燃えている。
その男は炎に苦しみ、もがき、のた打ち回り、その後動かなくなった。
「ちくしょう………やる気なら……やる気ならこっちもやってやろうじゃねぇか!」
彼女はそう意気込み、支給品の鍛冶セットからとんかちを取り出した。
しかし、そのとんかちは只のとんかちではなかったのだ、あのダイヤモンドより硬い浮遊石を砕く事ができる、とんかちだという事を。

408:サリィ修正版2/5
04/11/13 19:28:52 GHJtJtoO
「ちくしょう…やっぱり魔法は厄介だぜ…」
ギルガメッシュは目前の魔法衣の女性に向かいチッと舌打ちをした。
自分の支給品はどう考えてもはずれとしか思えない剣と銃とサンダル。
しかしあっちには魔力を増強させるワンダーワンドがある。
得体の知れない奴、わるぼうに援護してもらってるとは言い、戦力的にきつい。
「おい、なんか素手で使えて簡単にできるお手軽な技知らないか?」
ギルガメッシュがわるぼうにそう問い掛ける、精神統一終えていたわるぼうがギルガメッシュに答える。
「そうだな…おっ、ちょうどいいのがあるな、俺の真似をしてみろ!」
するとわるぼうは前へ突き進んだ、メラミで落とそうとするムースだが、わるぼうは軽く避ける。
そして横からギルガメッシュもわるぼうと同じように突き進んでくる。
イオラで纏めて吹き飛ばそうと思ったのが彼女の判断ミスだった。
イオラを詠唱するより早く、わるぼうが突っ込んで来たからだ。
そして、ムースに強烈な殴りの連打をかます、ワンドで防いだものの続くギルガメッシュの攻撃には流石に数発喰らってしまった。
後ろに大きく吹き飛ぶムース、血を多少吐きながら…彼女は口元を歪めた。
彼女が詠唱していたのはイオラではなく、イオナズンだった、だが出てきたのはそれを超えるものだった。
「おいっ!避けろ!巻き込まれるぞ!」
ギルガメッシュはその呪文…いや魔法を知っていた、極大の爆発を瞬時に繰り出す魔法、フレア。
最初は小さな火の玉のような物だがそれはやがて膨らみ一気に爆発する。
わるぼうはその小さな玉を避けようとしなかったからだ、わるぼうを突き飛ばそうとし、飛び込むも二人ともフレアを直撃とは行かないが食らってしまう。
「フフフ…やはりこのロッドは便利ですね…さて完全なる止めを刺しましょうか…」
彼女はイオナズンの詠唱へと、再び入った。しかしこの時一つのミスを犯していることを、そのミスが自分を死へと招きいれたことを、彼女はこの後知ることになる。

409:サリィ修正版3/5
04/11/13 19:29:39 GHJtJtoO
「さっきの呪文は…あいつが放ったんだな!」
サリィは自分を攻撃してきた敵を確認すると、とんかちを両手で握り、その標的へと全力で走り向かった。
詠唱に全精神をかけていたムースが、サリィに気がついたのは背後に迫られてからだった。
一閃、サリィのとんかちがムースの脳天を直撃する。
気絶させるほどの力しか込めなかったサリィだが、そのとんかちには人の頭を砕き壊すには、十分な力だった。
ムースの頭は砕け、頭から血がだくだくと流れ、ぼそぼそと何かが聞こえる。
「ここで…ぬわけに…いかな……き……らない…………」
細々と聞こえる声、だがそれはどんどん小さくなり、そして聞こえなくなった。
人を殺した…このとんかちで…付いた血を拭うのも忘れ、その場に立ちすくんでしまった。
だが、それよりも先ほど呪文が直撃した剣士がいたはずだ、そう思うと彼女はその剣士の姿を確認する。
「お、おい!大丈夫かよ!」
サリィは前で倒れている剣士にゆすりながら声をかける。
「う…うう…ん?奴は?」
多少傷があるも起き上がるギルガメッシュ、そのタフさは流石というべきだろう。
自分の目の前の落ち込む少女の目を見、彼は現状を把握する。
「あたいは…呪文をいきなり撃たれたから、その反撃に…でも殺すつもりは…」
「それはしょうがねぇぜ、現に奴はゲームに乗ってたし、殺すのを躊躇ってたらこのゲームじゃ生き残れないぜ」
サリィを慰めるように、ギルガメッシュはそう言った。
だが、それは悲しい現実でもあった、その後ギルガメッシュは思い出したように飛び上がる。
「おっと、忘れてた!おい!大丈夫かよ!」
ギルガメッシュはわるぼうの元に駆けより、彼の体を持つ。
すると、わるぼうがいきなり起き上がり、ギルガメッシュの顔を蹴り上げた。
「フン!この俺様があんな呪文ごときで、死ぬかっての!」
「んのヤロォ…!」
いつものギルガメッシュならかなり怒っていただろう、でもなぜか怒る気にはなれなかった。
「まぁ…嬉しいぜ、生きてて」
そんな唐突な言葉に、わるぼうは顔を赤らめドギマギする。
「な、なんだよいきなりそんな事いいやがって…でも俺もオマエが庇ってくれた時、嬉しかったぜ」
滅多に笑顔を見せないわるぼうが笑った、そして二人は声を出して笑った。

410:サリィ修正版4/4
04/11/13 19:31:04 GHJtJtoO
一方、サリィはそんな二人をよそに、地面に捨てられたボロい剣に心を奪われていた。
この剣は…何か特別な気配を感じる、そう、ラミアスの剣にも勝らずとも劣らない…。
(―不思議だ…もう綻び朽ち果てようとしている剣なのに…力が湧いてくるぜ…)
彼女はボロい剣を取り、鍛冶セットを取り出し、剣を打ち直し始めた。
いきなり目の前で何かをする少女に、ギルガメッシュは問い掛ける。
「なぁ、あんた何やってんだ?」
「見てわからねぇのか?この剣を鍛えなおしてんだよっ」
そうぶっきらぼうに言い放つと、彼女は剣を見て、とんかちを取り始めた。
「打ち直すにゃ打ち直せるけどよ…強力な火とかなりの時間がいるぜ…」
火…その言葉にギルガメッシュは引っかかった、そうあいつ、わるぼうなら火を出せるんじゃないだろうかと。
チラリとわるぼうの方を見るがやはり目をそらしてこちらを見てくれない…と思いきや…。
「……チッ、しゃあねぇなぁ!ベギラゴン!」
そう唐突に響く声、燃え盛る火炎。わるぼうはそっぽを向いていたがこの呪文が彼であることは明確だった。
「これだけの炎がありゃ十分だな…うっし!久々に腕振るうぜ!」
彼女の威勢のいい声と共に、彼女の久しぶりの鍛冶が、始まった。
壮大なアリアハンの大地に、彼女とんかちの金属音響き、彼女の力の気が染み渡る。

【サリィ 所持品:鍛冶セット ボロい剣(伝説系の剣) 光の鎧(装備不可)
 現在地:レーベ北の平原 
 第一行動方針:不思議な力を放つ剣を鍛えなおす】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル
 現在地:レーベ北の平原 
 第一行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ】
【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
 現在地:レーベ北の平原
 第一行動方針:????】

【ムース 死亡 残り117人】

411:ひらめきとすれ違い1/2
04/11/13 20:00:41 1nOM/YE/
二人のアリーナは、相変わらず壺の中でにっちもさっちもいかなかった。
「狭ーい!」
「声が響くから怒鳴らないでよ!」
まさか壺の中に人が入っているとは思うまいから、誰かに襲われる心配は
いらないが、このままでは、壺から出ることはおろか、腕一本自由に動かせない。
「このままじゃ移動もできないわね…そうだ!」
言うなりアリーナは、狭い壺の中で、精一杯反動をつけて体を揺さぶった。
「ちょっと、狭いったらー!」
ごとっ。壺がゆれる。
ごとごとごとっ、ごとん!壺は倒れた。そのまま勢いよく転がりだす。
「やったぁ!これで少なくとも、移動だけはできるわ!」
「すごーい!さすが私ね!で、どうやって方向転換したり、止まったりするの?」
次の瞬間、アリーナの笑顔が凍りついた。
「考えてなかったぁぁぁぁぁ!」
「ばかぁぁぁぁぁっ!」
二人のアリーナは、同時に絶叫した。


412:ひらめきとすれ違い2/2
04/11/13 20:34:50 1nOM/YE/
「?」
ライアンは、ふと前方に見知った人間の声がした気がして耳を澄ませた。
彼もまた、この血生臭いゲームから、一人でも多くの人を救おうと思っていた。
そのためには-ゲームに乗り、非道を冒そうとする者を斬るのは勿論のこと、
主催者-あの魔女-を倒さねばならないと考えていた。
だが、前者はともかく、後者についてはどうしたらよいのか彼にも
見当もつかない。
「ソロ殿かミネア殿なら、なにかよい方策を考えてくれるだろうか」
そう考え、仲間を求めて黙々と歩く彼の耳に、なにか重い物を転がすような
音が聞こえてくる。
「…?」
立ち止まった彼の前を横切ったものは、凄まじい勢いで転がってゆく、壺だった。
「!」
思わず飛びのいたライアンは、ただ呆然と、転がってゆく壺を見送った。そして一言、
「変わった世界だ」
と呟いて、再び歩き始めた…
…導かれし者たちは、ここでは出会うことはなかったのである。
【アリーナ(分裂状態) 所持品:分裂の壺
 現在位置:レーべ南東の山岳地帯近くの平原(移動中)
行動方針:とにかく止まる】
【ライアン 生存確認 所持品:不明 
現在位置:レーべ南東の山岳地帯近くの平原(移動中)
第一行動方針:仲間を探す 第二行動方針:マーダ-を減らす 
最終行動方針:アルティミシアを倒す】



413:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/13 22:53:32 nzc9PMYw
申し訳ない、移動方向を明示するのを忘れてました。
アリーナ→南東へ
ライアン→東へ
で脳内補完よろしくです。

414:ハンデ戦 1/2
04/11/13 23:06:15 BOH/qzJB
助かったと思った。
怖くて怖くてどうしようもなくて、岩陰に隠れて震えてた俺にリチャードは優しく声をかけてくれた。
一緒にいようって、守ってやるからって言ってくれた。
そして、俺が怖くないように、たくさんのことを話してくれた。
故郷にいた、子供の父親になってあげたいとか、お母さんを大事にしろとか…いろいろ。
俺もたくさん話した。キーファのこと、キャラバンのこと、サマルトリアのこと、医療のこと。
リチャードはどんな話も、楽しそうに聞いててくれた。
嬉しかった。ずっと話してると、首が飛んだのを見たときの恐ろしさは、だんだんなくなってきた。

なのに。
いきなりリチャードの表情が変わった。中腰になって、元々は俺の支給品だった剣をしっかりと握って、辺りを見渡す。
それで、俺も気がついた。すごい嫌な感じの視線がある…一人、いや二人?…まさか。
俺は怖くて、リチャードにしがみついた。リチャードは俺の頭をポンポンと叩きながら「大丈夫だ」って、
…言った。いや、言い終わらないうちに、俺はリチャードに突き飛ばされていた。
それを何で?と思う間もなく。緑の髪の女の人が、大きな剣でリチャードに斬りかかって――そして?

「イクサス、逃げろ!」

リチャードの声を聞いた瞬間、イクサスは何も考えず、靴に装着した加速装置のスイッチを入れた。
――加速装置は、元々リチャードの支給品だ。なんで自分に預けたのか、今になってわかった。
勢い良く靴が滑り、否応なしに足が動き始める。イクサスは走った、今にも転びそうに、がむしゃらに。

イクサスにはわかっていた。あの二人は強い。リチャードは…死ぬ。もちろんリチャードも強い、けど二対一だ。
そう、死ぬ、リチャードが、それでも、自分は死にたくない、今、ただ、逃げている!
(リチャード、リチャード…ごめん!俺、俺――)
イクサスは、幼い顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、森を目指し山脈を駆け続けた。
罪悪感を感じながら。

415:ハンデ戦 2/3
04/11/13 23:07:39 BOH/qzJB
「あの子、追わなくていいの~?」
アーヴァインは少年の背中が消えていった北の方角を見ながら、男のザックを調べていたティナに訊く。
相変わらずの軽い調子に、ティナはやや嫌悪感を覚えながら顔を上げた。
「…そう言うのなら、あなたが追ったらどう?」
「何かあの子速いし、めんどくさそうだからヤダ」
「……」
ティナは溜息をつくと、あとは無言で、黙々とザックの中身を移し変える。
アーヴァインもその後ろで男の剣を拾い上げ――そして、眉をひそめた。
「…ねえ、この剣どうする?何かさあ、すごい重いんだけど」
「…どれ?」
「はい、持ってみて」
剣をアーヴァインに手渡されたティナも、意外そうな顔をする。
見た目よりもはるかに重い。これではまともに戦えない…だろう。
「ふ~ん、子連れに、使えない剣…か。すっごいハンデ戦だったってことだね?」
「そんなの今更…」
ティナは吐き捨てるように言うと、その剣を投げ捨てた。…使えない剣など、戦場にはいらない。
その様子を見たアーヴァインが、肩をすくめる。
「あれ、もしかして、なんか後味悪い?」
「今更だって言ってるでしょ」
これから見知った仲間をアーヴァインに殺されることになるのに…見知らぬ人間を殺したことに後味悪いも無い。
ティナは、アーヴァインの顔を見ないように歩き始めた。
…ただ、何となくだけれど。

416:ハンデ戦 3/3
04/11/13 23:08:31 BOH/qzJB
【イクサス 現在位置:ほこら西の山岳地帯から森へ 所持品:加速装置 行動方針:逃げる(錯乱状態)】

【アーヴァイン 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ
 現在位置:ほこら近くの山岳地帯 行動方針:ゲームに乗る(ティナの仲間を殺す)】
【ティナ 所持品:グレートソード ちょこソナー&ちょこザイナ ミスリルの小手 
 現在位置:ほこら近くの山岳地帯 行動方針:ゲームに乗る(アーヴァインの仲間を殺す)】

【リチャード 死亡】
【残り 114人】
(注:リチャードの死体の傍にロトの剣が放置されています)

417:バトロワお約束アイテム1/2
04/11/14 05:29:42 9gOfqxMz
「殺し合いだなんて、冗談じゃない…僕がマチュアを殺せるわけがないじゃないか…」

途方に暮れている一人の男…ではなく、魔物、スミス。
彼は元人間だが、魔王に殺された後、魔物として復活させられたのである。
今の姿は腐った死体…ではない。恋人マチュアはどんな姿でもスミスであれば構わないと言ってくれるのだが、
さすがに仲間から見ると不憫らしく、何度か別の姿に転生させられた。
そうこうしているうちに戦い方も覚え、元凶を倒すこともできた。
そんな彼の戦闘力はかなりのものである。しかし、このゲームには恋人も、仲間も参加している。
どうすべきか。彼は思考を巡らせる。

全員殺して自分が生き残る…論外。
マチュアを生き残らせる…これもダメだ。
ずっと自分が正気を取り戻すのを待ってくれていた彼女を、また一人にしたくはない。
やっぱり、脱出、か。

そう結論づけたものの、何をすればいいのか分からない。結局は他人任せだ。
しかし、もし最終的に生き残れるのが複数だったら、自分は間違いなく他人を殺していただろう。
そんな自分がいやになる。

「…そういえば、支給品は?」

ここで、やっと支給品の存在を思い出した彼は、袋の中を探る。
出てきたのは変身の巻物、中身は空っぽの紫の小ビン、そして、拡声器。

418:バトロワお約束アイテム2/2
04/11/14 05:32:01 9gOfqxMz
拡声器…これで呼びかければ、脱出を希望する人間を集められる。それにマチュアと合流できるのはほぼ間違いない。
もしかしたら、よい脱出案が浮かぶかもしれない。
だが、逆に、呼びかければゲームに乗った人間が自分を殺しにくるのは明白だ。
ならば、ゲームに乗った人間に気付かれなければいい。


変身の巻物、変身の対象は一つ。
腐った死体。
心臓の鼓動もない、だから脈もない、目は飛び出ていて、体は半分腐っている。どうみても生きているようには見えない。
それに何故かこの姿だと安心する。気配を絶てば、大抵の相手はやり過ごせる。
塔に行こう、あそこなら目立つはず。

【スミス(腐った死体) 所持品:紫の小ビン、拡声器 現在位置:アリアハン大陸北東部、海岸に近い森の中
 行動方針:ナジミの塔へ行き、拡声器で呼びかけ、マチュアと合流、仲間を集める、また、衣服などがあれば調達】
※変身は解除可能、元の姿は不明。なお、名簿や攻略本には元の姿で記載されています。

419:イントルーダー 1/2
04/11/14 07:46:47 Q+rYCEIU

「おい!、い、い、今の爆発は?」

ランドは突然のアリアハン東部から響いてきた爆音に驚きザックスに寄り掛かった。

「誰かが殺しあってるんだろうな。
そんなことより、シンシア、ランド、周りに誰か居ないかしっかり警戒しとけよ」

爆発を『そんなこと』で片付けるなよ‥‥。
ランドはこの極限状態にザックスが冷静でいられる事が信じられなかった。

現在、ザックス、シンシア、ランドの三人はアリアハンから北上して森に向かっている。

「そもそも、どうして街を出たんだ? 何か根拠でもあるのか?
もしやる気になってる奴に遭遇したらどうすんだよ!」
「勘だ、勘。ソルジャーの勘。
もし外れてても、死ぬのが少し早くなるだけだ。 グチグチぬかしてないでさっさと行くぜ」

ひょっとしてこのザックスという男はもう既に頭がおかしくなってしまっているんじゃないだろうか?
そんな考えさえランドの頭に浮かんで来た。
このシンシアって娘もザックスを止めようともしないし…。
ああ、一人でいるよりましだといっても、とんでもない二人についてきてしまった……。
最初から顔見知りの誰かと行動していればよかったな‥‥。
大体、自分が出くわしてきたのはアリアハンで殺り合っていた奴らといい、この二人といい、
普通の感覚じゃない奴らばかりじゃないか。
ま、まさか、知り合いはもう全員‥‥。
そんな事を想像すると背筋が寒くなった。

―ターニア…、イザの兄貴…、どこに居るんだ?まだ生きてるんなら俺を助けてくれよ。

そんなランドの悲痛な表情を見て、ザックスはやれやれと肩をおろした。

420:イントルーダー2/2
04/11/14 07:48:58 Q+rYCEIU
「…しゃーねーな、説明してやるよ。
いいか?まずこれから日没から夜に向けて、恐らく気温が下がってくるし、
ひょっとしたら雨も降って来るかもしれない。更にこの状況だ、いつ敵が現れるか分かったもんじゃない。
つまり夜の間、雨風を凌げてなおかつ、敵に見つかりにくい障害物の多い場所の確保が必要ってわけだ」
「おいおい、だったらなおさらなんで街を…」

ランドのでかけた質問をザックスは片手を広げて遮る。

「確かに今述べた状況だけなら、街に潜むのが正解だ。…が、俺たち以外の参加者も同じことを考えるだろう。
そしてゲームに乗った奴らは街を狙う、立てこもって逃げることしか出来ない奴らを消すために。
だから街に留まるよりも近くの森なんかに身を潜めたほうがかえって安全というわけさ」
「……………」  

ランドは押し黙った。
確かにそうだ、とも思っていたがそれ以上にザックスがここまで考えて行動していた事に驚いていた。

「なあに、心配するなよ。だからこうして持久戦覚悟で街を出る前に、毛布や食料を調達してきたんだからよ」


【ザックス 所持品:スネークソード 毛布 
現在位置:アリアハン北の平原 行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×3 毛布 
現在位置:同上  行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン ミスリルスパナ 魔法の玉 毛布 
現在位置:同上 行動方針:とりあえずザックスたちについて行く】

421:イントルーダー 訂正
04/11/14 07:53:09 Q+rYCEIU
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布 
現在位置:アリアハン北の平原 
第二行動方針:森に安全な場所を確保する 第一行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×3 毛布 
現在位置:同上  行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン ミスリルスパナ 魔法の玉 毛布 
現在位置:同上 行動方針:とりあえずザックスたちについて行く】

422:希望はきっと 1/4
04/11/14 14:45:12 Z1pwnEN3
アリアハン大陸の人達はどこにいったんだろう?
母さんは無事なんだろうか…いや、それは大丈夫だろう。
なんといっても父さんの妻、僕を勇者に育てあげた人だ。殺しても死なない…きっと。
そう、それよりも――人がいないのだ。人っ子一人、猫の子一人見ない。

空けた平原を進んでいるのにも関わらず、アルスは参加者にも未だ遭遇していなかった。
それが幸か不幸かはわからないが。
(何か、変な感じだ)
故郷、アリアハンの大地。懐かしいと言えば懐かしいのだが、どうもしっくりこない。
のどかな平原を吹く風もどこか寂しいのだ。例えるなら、この大地に自分一人…もしくは、人形のないドールハウス。
…腹が立つ。
自分の故郷はのどかな田舎国であって、それ以外の何者でもない。ましてや戦場だなんて。
何故、平和なはずの故郷で血が流れるのか――アルスはまた拳を握り締め、足を速めた。


(やっぱり、最低だ)
森林に隣接する山脈地帯までやって来たアルスの瞳に映ったものは、いびつな形の土の山二つと、それを見つめる男だった。
数時間歩き続け、ようやく人間を見ることが出来た。しかし、その人間は悲痛な表情でぼんやりと立っていて…
そして目の前には、人工的に作られた山。おそらくあの土の下には「犠牲者」が眠っているのだろう。
「………」
アルスは目を細め、黙って男の横に並んだ。
このゲームで、見知らぬ他人に不用意に近づくのは危険極まりない。
しかし、アルスは思った。この男は襲ってきたりしないだろうと。
(僕と同じように、やり場の無い漠然とした怒りを感じている)
男のほうもアルスのことを同じように思ったのだろうか、何も言わなかった。

二人はしばらく、そのいびつな墓を眺めていた。

423:希望はきっと 2/4
04/11/14 14:46:20 Z1pwnEN3

「……おい、ガキ」
不意に、男が口を開く。視線は墓に向けたままだが、アルスに呼びかけているのだろう。
ガキ、という言葉にアルスは少しだけむっとなった(何となく、子供扱いされるのは嫌いだった)が――
「おっさん、僕はガキじゃない。アルスだ」
「ってコラ、ガキ。俺はおっさんじゃねえ!シド・ハイウインドってんだ」
先程までの暗さはどこへやら、今度はこっちを向いて勢い込んでくるシド。
何だろう、この人はおっさん扱いされるのが嫌いなんだろうか…。
「……。わかったから…シド、何だ?」
「アルス。…お前はどうも俺様を殺すつもりはねえみたいだから訊くけどよ、
 このゲーム、いやクソゲームか。どう思う?」

シドの問いに、アルスは少々沈黙した。
どう思うと言われても、漠然とした怒りばかりで答えを定めにくい。

「……上手くいえないけど…最高に腹が立つ。
 まず、殺しをゲームと称すること自体腹が立つ。
 次に、僕の故郷を舞台にしているのも腹が立つ。
 それと、小さな子供まで巻き込んでいるのも腹が立つ。あと」
「ようするにだな、このふざけたゲームをぶっ壊したいってとこか?」
「…ん。まあ、そうだね。少なくとも、人は殺したくないと思う」
ふーん、とシドは空を見上げる。何を見ているのかは、アルスにはわからないが――

「俺様の知り合いが一人早速死んじまってなあ、どうしようもないバカ野郎だったがしかし――悪い奴じゃなかった」
「…そうか」
「誰が殺したかなんざどうでもいいんだ。死んじまったらそこで終わりなんだ、どうしようもねえ」
「………」
「本当にふざけてやがる…あの女、なーにが目的だかしらねえけどよ、最悪の過程でまともな人生が終わってくんだ」
シドは空を見上げ――アルスは、何も言わなかった。
慰めの言葉なんてこの男には必要ない。それよりも、燃え滾る闘志を感じる、自分と同じ。
――信頼できるだろうか。

424:希望はきっと 3/3
04/11/14 14:47:24 Z1pwnEN3

「おい、アルス」
突然、声をかけられて…ひょい、と何かを投げてよこされた。
アルスはそれをしっかりと受け取る…ドラゴンシールド。
「知り合いのザックから借りた。お前が持っとけ。俺様は盾は使わねえ」
「は?」
「は?って何だ、間が抜けてやがるな。
 …お前と俺様の目的は同じなんだろ?だったら一緒にいかなきゃソンってもんだ」
「……」
やっぱり、考えてることは同じか。
「ただ、お前さっき言ってたよな?人殺したくないってよ。
 そりゃー俺様も殺すなんてアレだけどよ、クソッタレ野郎なら容赦しないつもりだからな」
「つまり、プレイヤーキラーキラーってことか?」
「だあっ…微妙な言葉使うんじゃねえ!とにかく、俺様はお前と行くが、クソッタレ野郎は容赦しねえ。
 お前はどんな相手でも殺したくないってんなら別に無理しなくてもいい。俺様の希望だ」

アルスはシドから視線を外し、両手で受け取ったドラゴンキラーを眺める。
どんな相手でも――それは、もちろん。殺したくはないけど…やむを得ない場合だってあるだろう。
――そんな時は、僕はどうすればいいんだろう。

「まっ…あんまり深く考えんなよ。お前みたいなガキは助かることだけ考えてりゃいいんだ」
「…おい、何かすごいバカにしてないか?」

とにかく、アルスは少し安心した。
セージ達以外にだって、信頼できる人間はいる――。希望はきっとあるんだ。

【アルス 現在位置:レーベ南西の山脈地帯
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:信頼できる人間を探す 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド 現在位置:同上 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
 第一行動方針:アルスについていく 第二行動方針:PKを減らす 最終行動方針:ゲームの破壊】

425:理由 1/2
04/11/14 15:15:08 zjr6SrkP

「無残ね…」
赤いマントに身を包んだ女性、アイラは、吐き捨てるように言った。
スタートからずっと歩いてきて、見つけたのは二つの死体だけ。
金髪の少女、そしてこの男。
…おそらく殺したのは同一犯だろう。
切り口の鋭さは違えど、おそらくは同じ剣で斬られていた。

男の開いたままの瞼を閉じようとして身を屈めたとき、彼女は気づいた。
「…?」
死体の傍に、剣が無造作に捨ててある。
切れ味はよさそうだけど。
…少女や男の道具を全て持ち去った人間が、どうしてあの剣だけを置いて行った?
アイラはそれを拾い上げた。

「…重い…」
これまで持ったどの剣よりも、重かった。
しかし、アイラはそれをまた捨てるような事はしなかった。
武器らしい武器は一つも持っていなかったから、それを捨てるのは少し恐ろしかったのだ。


アイラは再び立ち上がった。
次に行くべきところは、わかっている。
「こっちね…?」
『ああ、多分そうだ』
アイラの問いに、彼女のザックの中から何かが答えた。
『緑の髪で…ティナという娘…』
「わかってるわ」


426:理由 2/2
04/11/14 15:16:02 zjr6SrkP

支給品の中にあった変な石が、アイラに語りかけているのだ。
おそらく精霊のアミュレットと同じようなものだろうと彼女は思っていた。
…だから、石を調べているときに語り掛けて来たのも驚きはしなかったし、
娘を探したいという話も承諾したのだろう。

その娘が倒れていた二人を殺したという事は、既に感づいている。
だがアイラは、躊躇うことなく魔石の言うことに従い、彼女を探している。
理由なんて単純だった。
―殺しを止めたかったから。

【アイラ 所持品:魔石マディン(召喚は不可、但し意識に語りかけることが出来る) 炎のリング ロトの剣
行動方針:ティナを探し、更正させる 現在位置:ほこら近くの山岳地帯】


427:平穏は束の間に過ぎず 1/4
04/11/15 10:21:38 FahwFR5p
五人とも満腹になったところで、支給品を確かめてみようということになった。
ラグナもピクニックセット以外、何が入っているのか探していないという。
―果たして、自分の袋にマトモな武器は入っているのか?
期待と不安に胸の鼓動を高鳴らせつつ、最初にエーコが袋を開けた。
「何これ、金の髪飾りかな? エーコのとはデザインが違うけど」
取り出されたアクセサリを見て、マッシュが口を開く。
「俺の仲間が使ってた物と同じだ」
彼によると、その髪飾りには魔法を使うときに消費される魔力を抑える力があるらしい。
白魔法が得意なエーコにとっては、当たりアイテムといっていいだろう。
それから銀色のお盆も出てきた。これは盾代わりに使えそうだ。
最後に出てきたのは竪琴だった。
精緻な細工が施してあり、一目で高級なものだとわかるが、武器にはなりそうにない。
エーコが要らないといったので、吟遊詩人の修行を積んだことがあるというマリベルに譲られることになった。
「吟遊詩人ねぇ」
「何よマッシュ、文句あるの? 一曲歌ってもいいわよ、のろいの歌でよければ」
マリベルは竪琴を構える。マッシュは「悪い悪い」と苦笑いしながら手を横に振り、自分の支給品を探り始めた。
そして彼が取り出したものをみて、全員が眉を潜める。
出てきたのは、剣士を模した人形に、何の変哲もないモップ。―どこからどう見ても外れだ。
「結構かわいいかも、これ」
「掃除に使うモップよね、これって。チャンバラごっこには使えるかもしれないけど……」
肩を落としたマッシュに、女性陣の感想が止めとなって突き刺さる。
その二つが、並みの剣など比べ物にならない力を秘めていることには誰も気付かない。当たり前の話だが。

428:平穏は束の間に過ぎず 2/4
04/11/15 10:29:45 FahwFR5p
さて、ラグナの袋から出てきたのは、きらきらと輝く宝珠だった。
どういう仕組みなのかはわからないが、輝きの中に竜の形の紋章が浮かんでいる。
きっと、売れば高値がつくのだろうが……これも戦いには役立ちそうにない。
「ピクニックセットに宝石か、掛け値なしに外れだな」
スコールの言葉に、ラグナは引きつった笑いを浮かべながら、袋を奪い取った。
「そう言うお前のは何なんだ、見せろよ」と、逆さにしてぶちまける。
「なんだこりゃ?」
中世の貴族が着ていそうな服と、髪飾りのようにも見える兜。服はともかく、兜はいかにも軽そうで、誰でも身に着けられそうだ。
しかし、ためしに被ってみたラグナは、十秒もしないうちに外してしまった。
「おいおい、重すぎるだろコレ! こんなもんかぶってたら首が折れちまうぜ」
「え? そんなに重そうには見えないけどな」
そう言いながらマッシュが着けてみたが、ラグナ同様すぐに外す。マリベルやエーコも、スコールでも同じだった。
「何か呪いでもかかってるのかしら? 持つだけならそれほど重くないのに」
どちらにしても、こんな兜を身に着けるわけにはいかない。さっさと袋の中に仕舞い込む。
「スコール、こっちの服なら着れるんじゃないか? 仮装パーティの出席者みたいで、意外と似合うかもしんないぞ」
「なら、あんたが着ろよ」
仮装を楽しむ趣味も余裕も持ち合わせてはいない。スコールは冷ややかな目で、笑いながら貴族の服を差し出すラグナを睨みつけた。

五人の中で、一番まともといえたのはマリベルの支給品だった。
三つ全てが武器といえそうなもの……ラケットにナイフに鞭だったからだ。
「あーっ、エーコが前に使ってたラケットじゃない!」
「セイブ・ザ・クイーン……キスティスの物が、なぜここにあるんだ?」
せがむエーコにラケットを渡しながら、マリベルは「知らないわよ」とスコールに言う。
「この鞭があれば、ナイフの方は別にいらないんだけど……」
マリベルは武器を持っていないラグナとスコールを見た。
「俺はいいよ」
ラグナが辞退したので、それなら、とマリベルはスコールにナイフを渡す。
―その時だ。

429:平穏は束の間に過ぎず 3/4
04/11/15 10:45:13 FahwFR5p
「ぅわぁぁぁああああっ!!」
甲高い叫び声が遠くから響いてくる。そう思った時には、一人の少年がものすごいスピードで向かってくるのが見えた。
「ど、どうしたんだ?!」
只ならぬ様子に、マッシュが少年に向かって声をかけた。それに驚いたのか、足が縺れたのか、少年は派手に転んでしまう。
ラグナが慌てて彼の元に行き、抱え起こした。
「おい、大丈夫か?」
「リチャードが、リチャードがぁっ……」
少年はラグナにしがみついて泣き出した。余程怖い思いをしたのだろう。
錯乱しきった少年をなんとかなだめ、事情を聞き出す。
少年―イクサスの話は要領を得ないものだったが、だいたいのことはわかった。
山の中で若い二人組に襲われたこと。リチャードなる人物が、身を呈して助けてくれたこと。
彼を襲った人物の片方は緑の髪をした女剣士で、片方は茶色の帽子とコートを身に付けた男だったということ。
全てを聞き終わった時、エーコは恐怖に身を震わせ、マリベルは憤り、マッシュはやりきれない思いを抱えるように拳を握りしめていた。
ラグナは青ざめた顔でスコールを見、スコールは怒りとも悲しみともつかぬ険しい視線を山に向けていた。
「緑髪の女……」「なぁ、スコール。帽子の男って……」
スコールは答えず、袋から参加者リストを取り出し、ぱらぱらとめくる。
そしてアーヴァインの名前と写真が載せられたページをイクサスに見せた。
少年は目を見開き、「こいつだ! こいつがリチャードを!」と、写真を指差して声を荒げる。
マッシュも同じようにリストを、ティナのページを見せた。イクサスは首を縦に振った。
「悪い。俺、行かなきゃならねえわ」
「知り合いだったの? その、ティナって人」
横合いからリストを覗いていたエーコの言葉に、マッシュは頷く。
「仲間だ。あいつは、人なんか殺せるような奴じゃない。
 けど、本当に人殺しなんてバカなことをしてるなら、力ずくでも止めないと」
「俺も行こう」
「スコール!」
「アーヴァインは確かにキザで軟派で気弱で臆病な奴だ。だが、決して悪人じゃない。
 ゲームに乗るには理由があるはずだ。それを聞きに行く」
そしてスコールは踵を返し、走り出した。マッシュがその後を追う。二人の姿は、すぐに見えなくなった。

430:平穏は束の間に過ぎず 4/4
04/11/15 10:52:28 FahwFR5p
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
我に返ったマリベルが慌てて叫ぶ。けれども、走り去ってしまった二人には聞こえないだろう。
「もう、これだから男ってのは! いつだって後先考えないし、自分勝手なんだから!」
苛立ちを声に変えながら、マリベルは自分の荷物を大急ぎでまとめ始める。
「マッシュやスコールの気持ちはわからなくないけど、広い山の中で相手に会える確率がどれだけ低いかわかってないの?
 相手と入れ違ったり、道に迷ったりして戻れなくなったらどうすんのよ。
 第一、この下らない最低のゲームに乗ろうって奴が、ちょっと知り合いに説得された程度で『はいそうですか』って大人しく言う事聞くわけないでしょ!
 ボウガンと大剣持ってる殺る気満々の連中相手に、使えない兜とただのナイフに玩具にモップでどうやって戦うっていうのよ!」
「マリベル……」
「悪いけど、あたし二人を連れ戻してくるわ!
 どんな理由があったって、勝算も何もないのに行くのは、勇気と無謀を履き違えた大バカよ。
 それに、このまま放っておいて返り討ちにされて死なれたりしたら、後味悪すぎるのよ!」
そしてラグナとエーコに「その子のことは頼むわ」と言い残し、マリベルも森の奥へと駆け出した。

【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3)
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)
 行動方針(共通):アーヴァインとティナに会い、二人を止める
 現在位置(共通):アリアハン東山脈中央部の森→山脈へ】

【マリベル 所持品:セイブ・ザ・クイーン(FF8)、アポロンのハープ
 第一行動方針:スコールとマッシュを説得して連れ戻す、戦いは極力避ける
 現在位置:アリアハン東山脈中央部の森→山脈へ】

【ラグナ 所持品:ピクニックランチセット、ドラゴンオーブ
【エーコ 所持品;金の髪飾り(FF6)、シルバートレイ、ねこの手ラケット
【イクサス 所持品:加速装置 状態:錯乱
 行動方針(共通):イクサスを守りつつ、その場に待機
 現在位置(共通):アリアハン東山脈中央部の森】

431:ニアミス 1/2
04/11/15 22:55:42 iLitEQ8e
「ねえ、何やってるの?」
声をかけられて、オレはようやく牢屋の外に一人の女が立っていたことに気が付いた。
「何って、見てのとおり本を読んでるんだけど」
その女、いや、女の子と言った方がいいか―オレと同じ年頃か、下手したら年下かもしれないしな―は、興味と好奇の入り混じった視線を本の表紙へ注いでいる。
「言っとくけど、小説や物語の本じゃないぜ」
オレがそう言うと、彼女は「なーんだ」と少しがっかりしたように肩を落とした。
……変わった娘だ。見慣れぬデザインの薄青の服といい、艶やかな長い黒髪といい、性格といい。
グランエスタードでも、旅で出会った人たちの中でもあまり見なかったタイプだ。
だから、思わず口に出してしまった。
「変わってるな」
「え?」
「いや……よく、こんな状況で人に話し掛ける気になれるなぁって思ってさ。
 オレが強い武器とか持ってて、おまけにゲームに乗ってたらどうするつもりだったんだ?」
「武器持っていたら、私だって話し掛けたりしないよ。
 でも、本読んでたから『ああ、この人は大丈夫そうだな~』って」
「そんなことで?」
「そんなことじゃないよ、本が好きな人に悪人はいないの。ゼルも雷神もそうだもん。
 あ、でもサイファーも本借りようとしてたっけ……まあ、アイツは本好きってより映画好きだしね」
微妙にわかるようで、わけのわからない論理だ。そもそもサイファーやゼルや雷神って誰のことだ?
オレの頭に浮かんだ疑問を余所に、彼女は話を続ける。
「あっと、そうだそうだ。私、スコールって人を探してるんだけど。
 額に傷がある、黒っぽい服を着た男の人を見なかった?」
「いや、見てないな。ここにはあんた以外誰も来てないぜ」
「そっか」
女の子はまたもや肩を落とし、ため息をつく。
その落胆ぶりがあまりに気の毒だったんで、オレは殆ど反射的に声をかけた。
「そのスコールとかいう奴、探すの手伝ってやろうか?」
そう言った途端、彼女の顔がぱぁっと輝いた。
「え! いいの?」
「いいよ。オレもそろそろ、知り合いを探しに行こうと思ってたんだ」

432:ニアミス 2/2
04/11/15 22:58:03 iLitEQ8e
―二人の会話が終わってから、四半刻ほど経っただろうか。
静かな地下に銃声がこだまし、しばらくして、扉が軋みながら開いた。
けれども、その音を聞く者は誰もいなかった。

【リノア 所持品:不明 行動方針:スコールを探す】
【キーファ 所持品:攻略本 行動方針:自分の仲間とリノアの仲間を探す】
 現在位置:アリアハン城地下牢→一階へ

433:嫌な予感 1/2
04/11/16 00:13:30 jxcxGOoZ
空気が気まずい。
バッツが、カインとかいうあの金髪の男に襲われた経路…簡単に言えば、完全に一方的に仕掛けられた事を説明してから、
リディアは、ずっとうつむいたまま唇を噛んでいる。
バッツもさっきから何も言わない。きっと俺と同じで、何て言ったらいいかわからないんだろう。
…バッツ、リディア。どっちでもいいからなんか言ってくれよ。

…………

…ああもう、どうしてこういう役目はいつも俺なんだ?
「…あー、あのさ、とりあえず移動しないか?ここ、すごい目立つと思うんだよ」
俺が苦笑しながら提案すると(この空気を何とかするための提案だな、この場合)リディアはようやく顔を上げた。
バッツも、待ってましたといわんばかりに口を開く。
「確かにそうだな。さっきまで俺がいた家にでも行くか?」
「あ、それでいいじゃん。…な、リディアも、これからどうするかなんてゆっくり考えればいいんだしさ」
「あたし、行かない」
リディアは首を横に振って返答した。バッツとローグは顔を見合わせる。
「…カインは…きっと、ちょっと気が動転してただけで…。…セシルやローザと話せば、元のカインに戻るもん…」

(…カインさんよ、こんなに仲間が心を痛めていらっしゃるぜ)
ローグは溜息をついた。…リディアの表情は、悲痛だ。カインを仲間として信頼していたからこそショックも大きいのだろう。
もしアルスやセージが同じことをしてたら、俺も無理やりにでもそう思ったかもしれない。止める権利は無いと思う。
「…まあ、止めはしないけど「やめとけ」
ローグの言葉は、意外にもバッツのはっきりとした声に遮られた。
「あいつの攻撃には微塵の迷いも動転も感じなかった。はっきり言って完全にゲームに乗ってると思う。
 きっと、説得されたぐらいじゃ無理だぜ」
「そんなことない!カインの事も知らないのに、なんでそんなことがわかるのよ!」
バッツを睨みながら、叫ぶ。
「…っておい!リディア!」
リディアは、ローグの静止の声は聞かず。走り去っていった。

434:嫌な予感 2/2
04/11/16 00:14:51 jxcxGOoZ

リディアは走りながら考えていた。
――もしも、本当にカインがこのゲームに乗っていたとして。
セシルや、私達。仲間だけはきっと殺せない。そう、カインは言った。『俺に構うな』って。
そうだよね、カイン――?カインが私達を殺すなんて、ありえないよね?

…リディアはそう、無理やり思っていた。
リディア本人は自覚はしていなかったが――いや、あえて自覚しなかったのだろうが、ずっと、嫌な予感がする。
カインが、エッジを、セシルを、ローザを、ギルバートを、殺す。そのありえないシーンも…今なら
なぜか簡単に想像できる気がしていた。

【バッツ 現在地:アリアハン城下町民家へ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:? 第二行動方針:レナ、ファリス、クルルとの合流】
【ローグ 現在地:アリアハン城下町民家へ 所持品:銀のフォーク@FF9
 第一行動方針:? 第二行動方針:首輪を外す方法を探す】

【リディア 現在位置:アリアハン出口 所持品:いかずちの杖、星のペンダント
 第一行動方針:仲間を探す 第二行動方針:カインを止める】

435:光と闇1/2
04/11/16 17:48:11 LgvOw1bI
(殺し合いをしろ…そんな事が出来るわけがないのじゃ!あの中には…わしの…仲間が…)
フライヤはその考えを頭の片隅に置きながら、空を華麗に舞っていた。
(…もし、ジタンやエーコがわしに襲い掛かってきたときには…いやそんな事はありえるはずが無いのじゃ!
 だから…わしはジタンに会いたい、まずジタンに会うのじゃ)
そう考えながらも空を飛んでいたフライヤは、落下地点に人影が居ることに気がついていなかった。
「のおおっ!?」
落下地点にいた人物とぶつかるフライヤ、何とか着地はしたが、落下地点にいた人物はどうやらのびてしまったようだ。
顔を叩いてみる、反応なし。抓って見る、反応なし。
「しまった…わしとした事が迂闊じゃった」
そう呟きながら、責任感からかその踊り子のような女性を守るように、謎の盾と槍を持ち、臨戦体制になったのだ。
しかし、この人物が目を覚ましたときに、彼女はもっと責任を感じてしまうことになるのだろう。
それくらいの時だった、彼女は北へ向かう光の粉を見た。それは…嘗て神剣だった物の粉のような気がした。
「あれは…一体何じゃ?」

「くそっ!…もう少しで仕留める事が出来たのにッ!」
ギルダーは地面をたたきながら傷を癒していた。
彼は、先ほど一人の白魔道士を仕留める寸前まで迫っていた、だがその時にドーガに阻止され、力の差の為逃げてきたのだ。
そして…彼は支給品の剣を見つめた、そして思ったのだ。
(―この剣に…生あるものを一瞬にして断ち切る力があれば…ドーガに勝てるかもしれない…でも…)
剣を握りながら思う…すると、剣が黒く濁り始めたのだ。それはゆっくりと、黒く、黒く、ドス黒く。
思わず手を離すギルダー、だがその剣はどんどん黒くなっていく。
(―な、何だ!一体!こ、この感覚は?)
剣は見る見るうちに周りを黒く染めていき、やがてギルダーをも染めていったのだ。
あたりが黒く染まった後、眩い閃光と共に、剣が見る見るうちに形を変えていく…。
光が収まったとき、ギルダーの目の前には一つの…暗黒剣があったのだ。
デスブリンガー、斬る者を死に追いやる伝説の暗黒剣が。
ドス黒いその剣を手に、ギルダーは獲物を求めた。その目には…しっかりと赤い帽子の女性…?いや、怪物が映っていた。


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