04/11/07 11:30:33 0N6g8wnw
「いたたた…!!あれ…あなたは?」
起き上がった彼女の目線の先にあったのは緑のフードの青年だった。
「いたたた…いやこんなところで昼寝なんてするもんじゃないな、うん。
…ああ、そうだった、すみませんこんな所で寝てて」
蹴られたわき腹を抑えつつも、その腰に刀を差した青年はアルカートに向かって一礼した。
「い、いえ、此方も不注意でしたから…ところで貴方は?」
とアルカートは青年に問う。
「ああ、僕?僕は………うん、フィンだよ。何の変哲も無い奴さ」
よく自分で言えるな、と、内心思いアルカートはその青年から放たれる力のオーラから、実力者であることは分かった。
そして、無礼覚悟でこう聞いた。
「あ、あの、フィンさん?もし宜しければ私といっしょに行動していただけないでしょうか?
なにせ力はありませんし…フィンさんの方が力は強いと思いますし…」
その後、しばらく続く沈黙………そして、フィンはこう言った。
「………ん?要するに護衛かい?
…んーまぁキーファ達も探さないといけないし、僕はいいよ」
なんとも軽く、気の抜けた返事である。
フィンは返答にワンテンポ遅れるのだ、それゆえマリベルがいつもフィンと話す時はイライラしていたのだ。
「ぁ、有難うございます!私、アルカートって言います」
「………うん、改めて宜しくね」
そして、フィンはある石を取り出した。
「これ、僕にはどうもよく分からないんだけど…使い方、分かる?」
そうやって、その石をアルカートに差し出す。
「うーん、何か強烈な力の込められた石ですねぇ…ちょっと貸してください」
そうやってアルカートは魔石をまじまじと見始めた。
そんなやり取りをしている彼女達に、危険が迫っていた。
30メートルほど離れた場所に、ギルダーがいたからだ。
297:すっぽかしコンビ3/3
04/11/07 11:31:28 0N6g8wnw
【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー(白魔道士が唱えられるホーリーとは桁違いです)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし西の平原
第二行動方針:強烈な力の込められた石を研究する
第二行動方針:ジオを探す
第三行動方針:白い球体について研究する】
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
現在位置:同上
第一行動方針:アルカートの石の研究の結果を待つ。
第二行動方針:アルカートを守りつつ、仲間を探す】
【ギルダー 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×4・ミスリルボウ
現在位置:アリアハン北の橋からすこし西の平原
第一行動方針:アルカートとフィンを殺す 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】
298:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/07 11:32:25 0N6g8wnw
【アルカート(FF1白魔道士) 生存確認 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー(白魔道士が唱えられるホーリーとは桁違いです)
現在位置:アリアハン北の橋からすこし西の平原
第二行動方針:強烈な力の込められた石を研究する
第二行動方針:ジオを探す
第三行動方針:白い球体について研究する】
【フィン(DQ7主人公) 生存確認 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
現在位置:同上
第一行動方針:アルカートの石の研究の結果を待つ。
第二行動方針:アルカートを守りつつ、仲間を探す】
ゲッ、申し訳ない、誰なのかをいれてませんでした、すみません。
299:氷と炎 1/3
04/11/07 11:49:42 MsRizqV1
甘く見すぎていたかもしれない。男は内心舌打ちした。
わけのわからぬ理由で女を守ろうとした青年―男からすればまだまだガキだ―は、
しかし年齢に見合わぬ太刀筋の鋭さを持って、正確に自分を捉えてくる。
―彼とて元は、魔王エクスデス直属の配下だ。
あの忌々しい幻獣に不意打ちをくらったせいで、目的を果たせぬまま死んだが
そうでなければ人間の若造四人など、今ごろは暗い水底に葬っていただろう。
ましてや今の相手はクリスタルの力も持たぬガキと、震えることしかできぬ娘一人。
どう考えても、二人とも秒で仕留められなければおかしい相手である。
だが、青年はまだまだ余裕の表情を崩さず、娘を庇うように立っていた。
(何か、クリスタル以外の力を使っているのか?)
様子をうかがう男に、銀の軌跡が閃き迫る。
男はそれを氷の剣ではじき、返す刃で袈裟懸けに切りつける。
だが敵もさるもの、円を描きながら一歩下がる、その挙動だけで一撃を見事にかわした。
そしてあの奇妙な構えを取ったと思った瞬間、ありえぬ速度で剣が舞う。
(やはりおかしい、速すぎる)
横に飛んで斬撃を避けた男は、今一度敵を睨みつけた。
人間にはありえぬはずのスピードで剣を操る青年。その肩が小刻みに上下している。
まるで、早回しの映像のように。
(―そうか)
その時、男はようやく理解した。
魔法だ。時空魔法ヘイスト、時の流れから己を切り離すことで倍速の動きを可能とする。
「くっくっく……はーっはっはっは!」
男は笑った。
タネが明かされればなんてことはない。この青年は、やはりひよっ子のガキだったのだ。
300:氷と炎 2/3
04/11/07 11:52:31 MsRizqV1
「何がおかしい」
誰もが思わずすくみ上がるような鋭い視線を余裕の表情で受け流し、男は言う。
「疲れてきたか? 息が上がっているぞ」
そう。二倍の速度で行動するということは、疲労も二倍の速度で溜まっていく。
「さっさと決着をつけるつもりだったのだろうが、アテが外れたな!」
青年は倍速の剣を持ってしても、自分と互角の勝負しかできぬのだ。
ならば、勝つのは自分だ。
あと30秒も攻めてやれば、疲れで太刀筋が鈍ってこよう。
その隙をついて、心臓を串刺しにしてやる。そして女の首を跳ね飛ばしてやる。
脳裏に血塗られた光景を思い浮かべ、男は邪悪に笑った。
だが、それでも青年は平然としていた。
「ふん……なら、次で終わりにしてやるぜ」
男は虚勢だと考えた。恐怖と絶望を押し隠すための演技だと。
「やってみろ、やれるものならなあ!」
男は自分から仕掛けた。地を蹴って、一気に間合いを詰める。
相手は手を突き出した。剣も何も持たぬ手を。そして、唇の端を歪めた。笑ったのだ。
「やってやるよ、お望みどおりに」
青い光が刀身からほとばしる。青年の剣ではない。男の持つ氷の剣から。
光は青年の手へ吸い込まれ、そして
「ブリザラ!」
青年が吼えた。同時に、猛烈な冷気が男を襲う。
「ぐぉっ!?」
予想外の一撃に、男は受身すらとれず、正面から喰らった。
だが、それだけでは終わらなかった。
氷の後を追って、赤とオレンジの渦が男に迫る。
炎だ。男がそう思った時には、二つの光条はぶつかり、重なり合い、爆発していた。
301:氷と炎 3/3
04/11/07 11:54:42 MsRizqV1
氷は溶けて炎を消し去り、残された熱が水を気化させて、辺りを白く染める。
男はその中心に立っていた。
剣を握った片腕を凍りつかせ、残る身体を高温の蒸気にさらされて、なお生きていた。
「―おのれ、人間の分際で」
怨嗟の唸りが白霧の中に轟いた。屈辱に震える肩が、男の怒りを表していた。
次第に薄れ行く煙の向こうに、青年と娘の姿はなかった。
「殺す……かならず殺す。
我が主の名にかけて、後悔する暇も与えずに切り刻んでやる。
生きたまま腸をぶちまけ、目をえぐり、四肢を引き裂いてやる―」
男はゆっくりと歩き出した。
瞳に復讐と憎悪の炎を宿らせて。全身に、氷よりもなお冷たい殺意をまとって。
【サイファー 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 第一行動方針:ロザリーを助ける 第二行動方針:不明】
【ロザリー 所持品:不明 第一行動方針:サイファーについていく(?) 第二行動方針:ピサロに会う】
現在位置:アリアハン南の森→北方面へ
【リヴァ(略) 所持品:アイスブランド、不明 第一行動方針:ゲームに乗る】
現在位置:アリアハン南の森→東方面へ
302:301 ちょっと修正
04/11/07 12:16:55 MsRizqV1
【リヴァ(略) 所持品:アイスブランド、不明 状態:HP1/2
第一行動方針:サイファーとロザリーを仕留める 第二行動方針:ゲームに乗る】
現在位置:アリアハン南の森→東方面へ
303:298
04/11/07 12:30:40 0N6g8wnw
しまった、アリアハン北の橋からすこし西の平原ならギルダーはテリー達と遭遇してるはずじゃないか。
と言う事で、アルカート&フィンはアリアハン北の橋からすこし東の平原
ギルダーはその近くに脳内変換おながいします。
304:最後の抵抗
04/11/07 16:54:30 w9Zv0Voo
「ほっほっほ…」
いつものように笑ってみる。
邪悪な表情と禍々しい雰囲気に包まれたゲマは、森の中に佇む。
魔女。それは即ち自分であり、その信念は揺ぎ無かったはずだが。
このゲームの開催者の魔女は、遥か自分の上を行き、
決して追いつけはしないだろうと思わせた。
―魔族に君臨する王の側近として名を馳せたこの私が、この小汚いゲームなどに参加ですか?
あの日殺したはずの薄汚い男と、その息子に殺されたはずの私がまた殺し合えと言うのですか?
馬鹿馬鹿しい。
これでも、嘗ては魔族において高位であった身。
二度もゴミ同然の人間に殺されることはないでしょう
その程度の自尊心は、持ち合わせているのですよ。
邪悪なその姿は、自らの放った炎に包まれた。
「アルティミシアと言いましたね?貴方の思い通りにはなりませんよ」
森の中に、甲高い笑い声が響いた。
それは、プライドを剥ぎ取られた邪悪な魔女の、最後の抵抗だった。
【ゲマ 死亡】
現在位置:レーベ南の森北東部
所持品は一緒に燃えました。
火は、約一時間燃え続けます。
305:戦いの火蓋
04/11/07 19:24:22 x01Kb2yo
ゴォッ!
竜王の吐く火炎がその場に居る人間たちを襲う!
「危ないッ!」
間一髪、サックスが一同の前に立ちはだかり、水鏡の盾で
炎を弾き散らした。
「フバーハ!」
フルートの呪文が光の衣を生み、ロランがガイアの剣で竜王に斬りかかる。
リルムも盾をかざして身を守り、ゼルは一瞬の躊躇の後、徒手空拳ながらも
立ち向かっていく。竜王の咆哮が、岬の洞窟の壁を、ナジミの塔を
揺るがした。
306:戦いの火蓋
04/11/07 19:35:45 x01Kb2yo
【サックス 所持品:水鏡の盾 チョコボの怒り【フルート 所持品:草薙
の剣 スノーマフラー【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート【ゼル
所持品:レッドキャップ ミラージュベスト 現在位置:ナジミの塔入口
行動方針:竜王と戦う】
【竜王 所持品:裁きの杖 魔法の法衣 現在位置:ナジミの塔入口
行動方針:目の前の人間を殺す】
うっかり入れ忘れました。すいませんorz
307:蘇った命 1/3
04/11/07 19:39:54 gWFtuEJP
恐ろしいほどの殺意を込めた目で、ただその男を睨み続けるミンウ。
だがその男のほうはそれを臆することもなく、ミンウを冷めた目で見返していた。
「…白魔道士ミンウよ…勘違いをするな。私はこのゲーム、無差別に人間を殺すつもりはない」
「嘘を吐くな…!現に貴様は今その男を殺しただろう、皇帝!」
そう。男―皇帝マティウスの足元には、背中に巨剣を突き刺した男=バレットが倒れていた。
誰がやったかなど、一目瞭然である。しかし、肝心のマティウスは表情を崩すことなく淡々と述べていく。
「これは自衛の結果だ、いきなり殴りかかられて黙っている訳にもいかぬのでな」
ミンウはわからない、といったふうに首を振った。
「…わからない、貴様の目的は何なのだ!」
「目的…か。そうだな、敢えて言うならば…」
マティウスは口元に手を当て、少々考えるような仕草をしてみせてから、言った。
「…知りたいな。何故また、私が蘇ったのか…
悪である筈の私が何度も蘇ることができるのはやはり、力こそ全て、それだけが正しいことであるからか?」
「ふざけるな、貴様と反乱軍の私どちらが正しいか…今ここで私が貴様を葬る!」
ミンウは支給品である槍、ビーナスゴスペルを構えた。
…槍なんて数回しか握ったことがない、これで倒せる訳がない、しかし。
「まさか、私に勝つつもりなのか?その愚かさを理解した上での行動だろうな?」
「黙れえええッ!」
ミンウは構わずに飛び込んでいった。
308:蘇った命 2/3
04/11/07 19:41:29 gWFtuEJP
ビーナスゴスペルが風を切る音が何度も響く。
ミンウの攻撃は、ビーナスゴスペルに埋め込まれたスピードマテリアの影響で通常よりも数倍は早い。
しかしミンウは魔道士だ、元々武器攻撃は得意でない。マティウスは涼しい顔で攻撃を避け続けている。
――狙い通りだ。
(皇帝にとっては直ぐにでも私を殺せる状況…完全に油断している。まさか詠唱には気付かないだろう)
そう、ミンウは飛び込んでいった時から数十秒間、攻撃の手を緩めることなく究極呪文の詠唱を続けていた。
通常、詠唱というのは動きを止めた状態で集中し行うものだ。攻撃や防御をすればそこで集中が途切れ、魔法は中断される。
しかしミンウは確かに究極魔法の詠唱を続けていた。白魔法を極めた彼だからこそ成せた技かそれとも、皇帝への憎しみ故か。
――完成した。あの時、封印を解いた時と同じように、全ての魔力を使ってでも――
ミンウは瞬時に間合いを取り、ビーナスゴスペルを投げ捨て…魔力を一気に放出する――!
「――アルテ「フレアー!!」
アルテマの呪文は、完成することはなかった。
ミンウの身体は皇帝の炎呪文を真正面から受け前のめりに倒れた。真っ白なローブは焼け焦げて黒くくすんでいる。
(………何故だ…?何故?倒せるはずだった、のに…)
朦朧とする意識の中、また皇帝の炎呪文を唱える声が聞こえてきた。今度は至近距離で。
(…駄目だ、立てない。ああ、私は、また…)
その思考を最後に、ミンウの身体は一切の機能を停止した。
「貴様の単純な思考が、私に読まれないとでも思ったのか?」
マティウスはミンウの死体を見下ろし、苦笑いを浮かべた。
マティウスは、詠唱を続けているミンウに気が付いていた。皮肉なことに。
ミンウは、マティウスの詠唱には気がつかなかった。それだけの違いだった。
「折角蘇った命、貴様のようには散らせたくないものだな。…白魔道士ミンウよ」
マティウスはそれだけ言い残し、バレットの死体から、かつて自分を死に至らしめた剣を引き抜くと去っていった。
309:蘇った命 3/3
04/11/07 19:42:44 gWFtuEJP
【マティウス:生存確認 現在位置:レーベ南西の山脈地帯最南部→移動 所持品:ブラッドソード
第一行動方針:落ち着ける場所を探し移動→見つけ次第そこで待機(非好戦的だが不都合のある相手は殺す)
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかを知る】
【バレット 死亡】
【ミンウ 死亡】
【死体位置:レーベ南西の山脈地帯最南部】
※バレットの支給品<不明>とミンウの支給品<ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)>がすぐ傍に放置されています。
310:最強同士の同盟
04/11/07 20:07:33 K+1cQl3N
砂浜で激しい旋風が巻き起こっていた。
力と力のぶつかり合い、巨大な竜巻が塔のようにそびえたつ。
アーロンのくり出す風の奥義にセフィロスが応え、トルネドの魔法を覇気とともに放った結果である。
アーロンはレーベ北西の海岸に出現したが、運の悪いことにそれはセフィロス出現場所と同位置だったのだ。
初め、両者は向かいあったまま動かなかった。
お互いの出方を探るため、というより戦う意思表示を先にする方を譲りあったとでもいった方が正しい。
完全にどちらもやる気だった。
理由は両者で異なる。
こいつは間違いなくゲームに乗る、アーロンの理由はセフィロスの瞳の色を見てそう判断したため。
逃げられるとは思えなかったのだ。
一方のセフィロスは最初からゲームに乗っていたため。
単純明快、生き残るために参加者を倒す、それだけだ。
数多の砂粒を吸い上げた風の塔が形を崩して、辺りに砂の雨を降らしたとき、セフィロスは勝機が見えた
と判断した。
すなわち、この視界が奪われた状況で、自分は相手の位置が完全にわかっていると。
敵の殺気を読んだのだ。
目を閉じ精神を高めたセフィロスの頭の中には、二十歩ほど先に赤い靄のような塊が映っていた。
赤い靄こそ敵の放つ殺気をイメージしたもので、それがアーロンである。
姿がはっきり映っているわけではない。
ただ自分がわかりやすい形であればいいのだ、その位置に敵が居ることが把握できればいいのだから。
セフィロスは両手を胸の高さまで持っていく。その手には村正が握られている。
ばっ、と砂地を蹴って、疾走した。目を閉じたままで。
砂粒が全身を叩いたがセフィロスの進路を妨げる障害にはならない。
敵を目前としたところで、跳躍し、勢いをつけて斜めから刀を振り下ろした。
そこには姿勢を低く待ち構えていたアーロンがいた。
311:最強同士の同盟
04/11/07 20:08:39 K+1cQl3N
金属と金属のぶつかる激しい衝突音。
アーロンはセフィロスの刀を剣で受け止めた。
体重をかけたセフィロスの斬撃を受け流して反撃に出るアーロン。
セフィロスは体勢を崩し、膝をついていた。
「殺気を読めば不意討ちなど!」
なるほど、とセフィロスは思った。
この男も同じことをやっていたか。さて、おもしろくなりそうだ。
セフィロスは歓喜に震え、少し本気を出す気になった。
アーロンが剣を振り下ろす一瞬の間の思考だ。
次の一瞬、何かが深々とめり込む異様な音がした。
「どうした?」
セフィロスは思わず声をかけた。
剣を握ったままのアーロンが彫像のようになって動かない。
数秒間をおいて、ゆっくりとアーロンが崩れ落ちる。
セフィロスは倒れてくる体からさっと身をかわす。
砂浜に巨体が横たわった。
アーロンの背には針が突き刺さっていた。
針には毒が塗られており、それがアーロンに死をもたらした。
セフィロスが視線を移すと風のおさまった砂浜に何とも面妖な衣装をした男が立っていた。
悪趣味といってもいい。
この男がやったのか……セフィロスは不機嫌になった。
「どういうつもりだ。まさか私を助けたなどと言うつもりか」
クジャは心底おもしろそうに笑った。
「まさか。君はどう見てもその男より強いよ。いや、それどころじゃない、僕と同じくらいの力を持っている。
どう転んでも負けるなんて思えなかったね」
「なら何故余計な手出しをした」
セフィロスの問にクジャは髪をかき上げて答える。
「挨拶さ。君と行動を共にするものとして。これから二人で次々と血祭りをあげようじゃないか
312:最強同士の同盟
04/11/07 20:13:29 K+1cQl3N
「共にだと……」
セフィロスは立ち上がってクジャを見つめた。
この男……強い。体じゅうから尋常でない力を発している。
セフィロスは自分がこの男と戦いたがっていることに気づいた。
全力を出すにふさわしい相手を見つけた。その喜びがこみあがってくる。
クジャは両腕をひろげて空を見上げた。
「君は本当に強いね……。たぶん、普通の人間じゃないんだろうね。生まれ持った才覚かな、凡人が
どんなにがんばっても手に入れることができない……
僕の隣を並んで歩いていても不自然じゃない者、それは君、初めてだよ」
クジャは自分の言葉に酔っていた。
彼の己の肉体を誇示するような服装も、その性格から来るものだろう。
セフィロスはクジャの性格は拒絶したかった。まるで道化師、到底好きにはなれない。
だが、その内在する力には間違いなく惹かれるものがある。
セフィロスはクジャの申し出に応じる気になった。
「貴様は正直理解し難いところが多い、が、いいだろう。手を組んでやる。
ただし条件付きだ。最後、私と貴様の二人だけになったところで、本気で闘い合いたい。
誰にも邪魔をされずに、どちらかが死ぬまでな」
クジャは笑って、いいよとうなずいた。
「まあ、わざわざ条件づけしなくても結局そうなるんだけどね」
【セフィロス 現在位置:アリアハン南の海岸 支給品:村正
行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘
クジャ 支給品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
行動方針:最後まで生き残る】
【アーロン 死亡】
アーロンの支給品は鋼鉄の剣。砂浜に放置されています。
313:305
04/11/07 20:24:40 x01Kb2yo
すいませんフバーハ掛けたの忘れてました
【サックス 所持品:水鏡の盾 チョコボの怒り
【フルート 所持品:草薙の剣 スノーマフラー
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔入口
行動方針:竜王と戦う(全員にフバーハが掛かっています】
重ね重ねすいませんでした
314:最強同士の同盟
04/11/07 20:26:49 K+1cQl3N
すみません、訂正です。
>>310五行目の
>アーロンはレーベ北西の海岸に出現したが、
は、
「アーロンはアリアハン南の海岸に出現したが~」
の間違いです。
それとセフィロスの支給品にマテリアを忘れてました
↓
【支給品:村正、ふういんのマテリア】
正しくはこうです、失礼しました。
315:罪悪感 1/2
04/11/07 22:16:42 6ERd0T+/
「ごめんなさい… ごめんなさい……」
さっきから私の口から出る言葉は"ごめんなさい"だけ…。
椅子に座っていた男女を床に寝かせ、手に持つ短剣を使って首を切断する。
首輪に刺激を与えない様に、慎重に。慎重に…。
宿り主が死んだ今でも、首に装着された金属の輪は怪しく光輝いている。
あまり気分の良い行為じゃない。というより悪い。
殺人を犯しているのと同じではないだろうか?
だが、自分は何の迷いも無く首を切断している。そんな自分が恐ろしくも感じる。
でも、私にはこうするしか方法が無いの。
戦闘の経験なんて無いし、この殺し合いの中で最後まで生き残る自信なんて無い。
もし戦闘が出来たとしても、私には彼―スミスを殺す事なんて出来ない。
もちろん他の人を殺す勇気なんて物も無い。
316:罪悪感 2/2
04/11/07 22:18:46 6ERd0T+/
だから私はこのゲームから脱出する方法を考えるわ。
生きてここから帰るんだ。スミスと一緒に。
この首輪を外す方法さえ見つかれば、何とかなる可能性はあるもの。
だから、首輪を調べるためにも、自分以外の首輪が必要――
死体から首輪を取り外し終え、手に持ってみる。
宿り主から切り離された今でも、金属の輪は怪しく光輝いている。
暫くの間首輪をじっと見つめた後、2つの首輪をバンダナで包みこみ、
死体の傍に置いてあったアイテムと一緒に自分の袋に仕舞い込んだ。
「本当にごめんなさい…」
頭を下げながら2つの生首に向かって謝罪し、マチュアは台所から外へ駆け出した。
【マチュア 現在位置:アリアハン城の台所
所持品:グラディウス、おしゃれなバンダナ、首輪×2、スナイパーCR、聖水
第一行動方針:首輪を調べる 第二行動方針:スミスに会う】
※首輪はアモスとローラの物、スナイパーCRと聖水はアモスの支給品を回収した物です。
317:僅かな望みにかけて1/3
04/11/07 23:07:11 0N6g8wnw
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ユフィがこの地に降り立ち、数分後に発した声はそれだった。
クラウド達を探すため、先ず支給品を確認していたときだった。
コメット、小さな隕石が彼女の細い右腕に直撃し、右肩から抉るように右腕を奪い取り、さらに爆発し、彼女を吹き飛ばしたのだ。
それでも生きていたれたのは、彼女の支給品が装備者の危機を守る女性専用のプリンセスリングと魔法のダメージを和らげるフォースアーマーだったからだろう。
しかし、彼女自身のダメージは本当に酷い、右肩があった場所からは絶えず血が流れ、足もふらついている。
そして、焼け焦げた自分の右腕に一瞥し、そのふらふらとした足取りで血を吐きながら、魔法が飛んできた方向から逃げていた。
だが、彼女の体力はもう限界に近かった
「ああ…あたし…もう…駄目かも…目の前が…かす…んで…きた…ご…めん…く……らうど…」
そういって、彼女は倒れてしまった、薄れ行く意識の中、一人の男と一人の女性の姿を確認した。
ああ、あたしは彼らに殺されるんだな、と思い、静かに目を閉じた。
「おい…大丈夫かよ!おい!おい!」
そうやって、ユフィに声をかけているのは忍者装束の青年、エッジだった。
彼の後ろには修道服を着た女性、マリアがいた。
エッジはユフィに意識が無いことを確かめると、彼は支給品の袋からハイポーションを取り出した
それをユフィに飲ませるが、ほとんど意味が無い。
「ちくしょう…ローザがいれば…ちくしょう…」
エッジは、地面を叩きつけた、現実は非情だということを改めて思い知ったからだ。
318:僅かな望みにかけて2/2
04/11/07 23:08:26 0N6g8wnw
そんな中、マリアは剣と球体とにらめっこをしていた。
解説書によれば、この球体を剣に嵌めれば、回復魔法を唱えることが出来るらしい。
しかし、剣が意地悪な作りで、どこに嵌めればよいのか分からない。
そんな中、マリアの袋の中の杖が何かに反応し、震え始めたのだ。
「波動の杖が…おなじ波動が巻き起こっているってのか?」
エッジはそういった、同じ波動、つまり白魔同士が杖の向く先にいるということ。
しかし杖の向いた先は高い山、越えられそうにない。
ならば…これを頼りに回り道をすればいい。
そうして、エッジがユフィを担ぎ上げたときだった。
「エッジさん!待ってください!」
マリアがエッジを呼び止める、エッジは何故だという顔をしたが、それはすぐに解けた。
そう、マリアがケアルを唱え始めたのだ。やさしい光はユフィを包み、そして…傷を治した…が。
「傷は治ったみたいです…でも説明書は簡単なものみたいですし、私程度の魔力じゃ血を止めるのが精一杯です、一刻も早く本職の魔術師を探さないと…」
そういい、二人は向き合いうなずき、波動の杖の向く先、アルカート達がいるところへ走り始めた。
【ユフィ(瀕死 現在位置:レーベ東南の平原
所持品:プリンセスリング フォースアーマー
行動方針:死を待つ】
【エッジ 生存確認 現在位置:レーベ東南の平原
所持品:風魔手裏剣(30) ドリル
第一行動方針:ユフィを助ける為に波動の杖の向く先(アルカート達ところ)へ走る。
第二行動方針:仲間を探す】
【マリア(DQ5 生存確認 現在位置:レーベ東南の平原
所持品:波動の杖 アポカリプス+マテリア(かいふく)
第一行動方針:ユフィを助ける
第二行動方針:夫を探す】
319:偉大なる父親達 1/2
04/11/08 00:52:16 GCPsRliN
深い森の中を行く男が一人。
「やれやれ…。まだまだ隠居とはいかないようだな…」
神龍の力によって、黄泉の国からこの世へと舞い戻ったオルテガだ。
その後はアリアハンで平和な生活に身を置きながらも、日々の鍛錬は怠っていなかった。
彼の脳裏に浮かんでいたのは、息子アルスのことであった。
この腐ったゲームを破壊するためには、アルスとの合流が最優先と判断したのだ。
息子の実力であれば、ゲームに乗った相手に襲われてもそう簡単にやられはしないだろう。
それまでは自分も何としても生き残らねばならない。
もちろん、オルテガ自身も、かつて地上最強の漢と謳われた勇者である。その力は今でも衰えてはいない。
それに―。彼には「切り札」ともいえるアイテムがあった。
「まさか、再びこれを使わなければならない時が来るとはな…」
前方に気配を感じたのはその時だった。右手に持った斧を構えなおす。
「―私はこのゲームに乗る気はない。だが、君が乗るというのであれば…ここで倒さねばならぬ」
よく通った声でオルテガは語りかけた。それに答えるかの様に、物陰から人影が姿を現す。
年はオルテガと大差ないだろうか。ワイルドな身なりであるが、それでいて気品と風格を漂わせた男、パパスである。
「…私も乗る気はない。お互い考えることは同じであるようだな」
パパスはオルテガに近づき、右手をさしだすと続けた。
「私の名はパパス。このゲームから抜け出すためには、私一人ではできることにも限界がある。
貴公、なかなかの実力者と見た。力を貸してくれぬか?」
「……パパス殿と言ったか。私はオルテガだ。私の力でよければ一向に構わんッッ!」
パパスの手を取るとオルテガは力強く答える。
そして、ここに正義に燃える親父タッグが誕生した。
320:偉大なる父親達 2/2
04/11/08 00:54:00 GCPsRliN
【オルテガ 生存確認 現在位置:レーベ南の森
所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 生存確認 現在位置:レーベ南の森
所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
第一行動方針:仲間を探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
321:1/7 水の結びつき
04/11/08 01:14:49 N9VNbXW8
頼りない。
エリアのギルバートに対する第一印象であった。
ギルバートは話をするにつれ落ち着いてはきたものの、
生来の気弱さなのかどうにも挙動不審のようなところがある。
これなら自分の方がよっぽど頼りがいがあるとエリアは思った。
しかし、先からどうもその視線がある一定の方向に集中して向けられていることも、エリアは感じた。
「…なるほど、それでセシルさんとリディアさんを探しているんですね」
「うん、そうなんだよ。君はサックスとギルダーを探してるんだね」
「はい、そうです」
ギルバートの視線がまた動いた。
「あの…」
「え、なに?」
はっとしたようにギルバートは答えた。
「向こうに何かあるんですか?」
「え、いや、まあ、その…」
ギルバートはしどろもどろに要領を得なかったが、やがてエリアの方に向き直った。
「向こうに誰かいる気がしてね」
「向こうに…ですか?」
「気のせいかもしれないけど…これでも吟遊詩人でね、なんだか音の気配っていうかな、そういうのを感じるんだよ…」
エリアは改めてその方向に視線を移すと、たしかにそのような気がしなくもない。
だがそれは、言われれば無が有にも見えるような類の錯覚にも思えた。
「行ってみますか?」
「…いや、ゲームにのったひとかもしれない」
「ああ、なるほど」
ギルバートがなかなかそのことを口にしなかった理由に合点がつく。
「でも、もしかしたら私たちの探してる人かもしれませんよ?」
エリアがそういうと、ギルバートは「うーん」と唸って頭を抱え込んだ。
322:2/5 水の結びつき
04/11/08 01:17:07 N9VNbXW8
(優柔不断…)
サックスやギルバートならさっと決断しただろう。アルカートなら、少し悩んだかもしれない。
「もし本当に人がいるのなら、行動しなくては始まらないと思いますよ」
「…うん、そうだね。よし、いこうか」
やれやれ、とエリアはこの年上の青年に対する自分の言動に苦笑した。
(年齢も性別も、これじゃどっちがどっちだかわからないな)
やっぱりこなければよかった、とギルバートは心底思った。
その先にいたのは、負のオーラをびんびんと放っている見るからに強そうな男。
二人にしてみればまさにゲームにのってますといった感じ。
救いなのは今どうやら負傷しているらしいということ。
近くにいる黒魔導師はなんなのか気になったが、あまりよさそうな感じではない。
(…戻りましょうか)
エリアが小声でギルバートに語りかけると、無言で頷き音を立てないように少しずつ足を動かした…しかし。
「逃げるな」
低い声。
その瞬間二人はぴんと背筋をのばし、お互い顔を合わせギルバートは思わず尻餅をつくと、
ぱきっと小気味よく木の枝の折れる音がした。
「そこに誰かいるのはわかっている」
「だ、誰かいるの?今なにか音したよね?」
黒魔導師の方も気づき、音の発生源へと目を向ける。
「人間…いかに負傷しているといえど、貴様らを葬るなど造作もないことだ」
男のその声にギルバートは震え上がった。
(ど、どうしようどうしようどうしようどうしよう、アンナ、僕はどうすればどうすれば…)
それはエリアも同じこと、自分はもちろんこの同伴する男の戦闘力は様子を見れば一目瞭然であり、
先の男との戦闘力の差などは見る間でもなく、いや、比較することそのものがまったくの非礼であるとすら思える。
323:3/5 水の結びつき
04/11/08 01:18:14 N9VNbXW8
「待って下さい、私たちに敵意はありません」
「そんなことはわかっている」
姿を見せ、エリアは落ち着いた声で話しかけたけれど取り付く島もない。
黒魔導師は今の状況を理解し辛いようで、せわしなく男とこちらのほうを見比べている。
しかしそのようなことはおかまいなしに男―ピサロは瞬時に火球をつくると、二人のほうに向かって放った。
「きゃあっ!」
いきなりのことにエリアは声をあらげて間一髪それをよける。
ギルバートはといえば、あ、あ、と声を出しその場から動けない。
しかしそれに一番驚いたのは他ならぬ黒魔導師―ビビであった。
「ちょ、ちょっと!?」
「ふん、はずしたか、ではもう一度…」
「や、やめてよ!」
エリアは逃げようとしたけれど、足が動かなかった。
それは恐怖のせいかもしれない。しかし、エリアは今不思議な昂揚感を感じていたのだ。
ビビの抵抗で次の火球がくるのは遅かったが、
そのような時間など動けない二人にしてみればどうでもよいことで、
いずれくる死の瞬間への僅かな猶予期間でしかない。エリアは思った。
(ああ、ここで私はまた死ぬのか…でもどうだろう、この感覚。どこかで感じた、この感覚…
水の巫女、私はそのつとめを果たすために生まれて、その業務を果たすとき最高の生の鼓動を感じた。
ああ、それだ、その感覚…生きてる、私は今…生きているんだ!)
その瞬間、エリアに生まれたのは生への願望であった。
――生きたい!
強く願った。
迫りくる火のたまを目の前に、エリアは生きたいと願った。
――私には、きっとやらなきゃならないことがある…生きたい!
324:4/5 水の結びつき
04/11/08 01:20:46 N9VNbXW8
シュン!
そのとき、強烈な冷気が火炎に襲いかかり、その勢いを沈下した。
「え?」
そう思ったとき、エリアとギルバートはその場から消えていた。
「もう一匹、紛れ込んでいたか。この状況下とはいえ気配にきづけぬとは、なかなか手練れのものらしい」
「ねえ!」
「ふん…体調さえ万全であればな」
「ねえったら!」
必死で話しかけるビビに、ピサロはようやく目を向けた。
「騒がしいな、なんだ」
「どうして!?」
「どうして、とは?」
「どうして攻撃したの!?」
「……」
(…むしろ、なぜ殺せなかったのかの方が不思議だ)
本当に、なぜ殺せなかったのか?それは自分の内的な要因か、それとも外的な要因か。
「…おまえにはわかるま…ゲボッ!」
「!?」
「ふ…まだ戦闘にははやかったようだ」
「…い、今は、安静にしなよ」
「別に、ここにいる必要はないんだぞ」
「……」
「勝手にするんだな」
325:5/5 水の結びつき
04/11/08 01:22:43 N9VNbXW8
「大丈夫?」
二人を助け、ここまで連れてきたのは美しい桃色の髪をした女性だった。
「私はレナ。危なかったわね、もう少しで死ぬところだったわよ」
「あ、あ、ありが、とう…ぼ、僕はギルバート…」
呂律の回らない下で答える。
「そうなの、でもギルバート、あなたちょっと震え過ぎよ…男なんだしもっとしっかりしなきゃ」
笑いながらも呆れ顔でレナはギルバートに話した。
「えっと、あの…」
「なに?あなたの名前は?」
「わ、私は…私はエリア、エリア=ベネットです!あ、あなたは…あなたはいったい!?」
「え?な…何?」
「私には感じます…あなたから、あなたから…」
「水のクリスタルの鼓動を!!」
【エリア:生存確認 現在位置:レーベ北東の森 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:レナと話をする 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】
【ギルバート:生存確認 現在位置:同上 所持品:毒蛾のナイフ
第一行動方針:とりあえず落ち着け 第二行動方針:セシルとリディアを探す】
【レナ:生存確認 現在位置:同上 所持品:不明
第一行動方針:エリアと話をする 第二行動方針:バッツ、ファリス、クルルを探す】
【ピサロ 現在位置:レーベ東の森中央付近 支給品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)
爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ある程度回復するまで待機
ビビ 支給品:? 行動方針:ピサロと共にいる
326:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/08 01:23:55 N9VNbXW8
念のため補足
レナたちはターニアたちと場所はちょっと違うくらい
327:ストレンジャー 1/2
04/11/08 02:31:35 dD/P/tst
ザックスとシンシアはルイーダの酒場を出て、アリアハンの城下街を歩いていた。
「しかし、このアリアハンって街は殺風景でいかんな~。
ミッドガルみたいなごちゃごちゃした所に慣れすぎたのかもしれんけど」
「そうですか?私は山奥暮らしでしたから結構新鮮ですよ、ザックスさん」
この二人はこのゲームの開始以来こうしてアリアハンの街をさまよっている。
殺し合いが始まっているという現実感はいまいちこの二人にはなかったが、
それは幸運にも『やる気』になっている参加者に遭遇した事がなかったからかもしれない。
ふとシンシアがザックスから預かったレーダーに目をやると、すぐに異変に気付いた。
「い、いけない!」
「どうしたんだ?」
「しばらく目を離していたら誰かが凄いスピードで近付いて来ている反応があるんです!
‥‥あ、も、もう、すぐ後ろに‥‥。」
後ろを振り返ると、そこにはオートボウガンを構えた男―ランドが立っていた。
終わった、シンシアはそう思った。
不思議と怖くはなかった。
ザックスが横にいるお陰かもしれない。
だが、その男、ランドの口から発っせられた言葉はシンシアにすれば意外なものだった。
328:ストレンジャー 2/2
04/11/08 02:33:15 dD/P/tst
「く、来るな!来ないでくれぇ!!!」
―は?
柄にもなく、覚悟を決めていたのに‥‥。
シンシアは全身から緊張が抜けていくのを感じた。
「なんなんだよ、あんた。そんな物騒なもん持って。とっととしまってこっち来いよ」
「い、嫌だ!どうせ油断したところを殺すつもりだろう‥‥?早くどっかに行ってくれよ!」
「しょうがないやつだな~。
俺らはゲームに乗るつもりはないぜ。ほら、両手を上げるから」
この人は本当は凄い器なのかもしれない、そう思いつつシンシアもザックスに続いて
両手をあげた。
「…そうか、さっきまでここで戦闘があったのか。それをあんたは物陰から目撃したと?」
「あ、ああ。それで少し気を取り乱していたみたいだ、すまないな…」
それ以上言葉にならなかった。
ようやく落ち着いてきたランドを尻目にザックスは何やら考えだした。
「このまま殺されるのも何かしゃくだな~。なんとか、主催者の奴らに一泡吹かせてやりてえな」
本当にこの人は‥‥。
シンシアはザックスの目に闘志が宿り始めている気がした。
【ザックス 所持品:スネークソード
現在位置:アリアハン城下街 行動方針:主催者に一泡吹かせる】
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×3
現在位置:同上 行動方針:ザックスについて行く】
【ランド 所持品:オートボウガン ミスリルスパナ 魔法の玉
現在位置:同上 行動方針:とりあえずザックスたちについて行く】
329:謎の支給品 1/2
04/11/08 11:31:37 3yoXVl2/
キーファは鍵の開いた牢屋の中で、袋の中身を確かめていた。
出てきたのは一冊の分厚い、それこそ人ぐらい簡単に殴り殺せそうな厚さの本だ。
革張りの表紙には、『公式基礎知識完全攻略アルティマニア解体ガイドブック』とやけに長い題名がつけられている。
「なんだこりゃ?」
首をかしげながらも、キーファは本をぱらぱらとめくってみた。
そこに記されていたのは、参加者の写真・性格・仲間・能力・所持魔法特技のリストとその解説etc……
おまけに支給品の解説や(さすがに誰が何を持っているのかは書かれていないが)、あまつさえキャラごとの対策法まで乗っている。
ちょっと気になったキーファは、自分のページをめくってみた。
・キーファ=グラン 強さ:D
仲間:フィン、マリベル 性格:好奇心が強く冒険好き、割と勢いだけで行動することも。
所持特技:火炎斬り・受けながし・気合いため・ゾンビ斬り・しんくう斬り
対策法:魔法剣による近接戦が得意なので、ちょっと遠くから攻撃しよう!
ただし物理攻撃は受け流されるかもしれないので、魔法で攻撃するのがおすすめだ!
「ってちょっと待て! なんでオレが強さDなんだよ、納得いかねえ!」
思わずむかっとした彼は、強さSがどれほどのものなのかと探してみた。
そして出てきたのは三人。クジャ、セフィロス、ピサロ……なぜか全員銀髪だが、それはまあおいておいて。
キーファは、データを見てしまったことを後悔せずにはいられなかった。
その能力はいずれも読めば読むほど鬱になりそうな、人間離れしたものばかりだったからだ。
「あのケバいオバさん、何考えてこんな連中呼んだんだよ。勝負にも何もならないじゃねーか」
だが、そんな彼らのページにもしっかり対策法が書いてあることに気付く。
対策法:普通に戦うなら誰かが自爆でもしないと無理。
でも、支給品のキューソネコカミと複数回攻撃技の9999凶悪コンボなら倒せるかもね!
ただ、キューソネコカミは瀕死じゃないと無意味なので
攻撃する前にグラビガを数回自分に使っておくといいぞ!
「……キューソネコカミぃ? 瀕死じゃないと無意味って、なんなんだそりゃ?」
330:謎の支給品 2/2
04/11/08 11:33:17 3yoXVl2/
「なんなんだ、こりゃ?」
同時刻、レーベの村の宿屋にて、どこぞの誰かと同じように袋をあさっていた青年がいた。
彼の名前はロック。自称トレジャーハンターである。
彼が袋から取り出したのは、何のへんてつもない球だった。
無造作に張られていた紙のタグには、「キューソネコカミ」と記されている。
そして、支給品はそれ一個だけ。
「……これでどうやって戦えと……?」
ロックはわけのわからない支給品を握り締め、呆然と呟いた。
その球の持つ恐るべき力を知らぬがゆえに。
【キーファ 所持品:攻略本 現在位置:アリアハン城内・地下の牢屋
行動方針:仲間を探す、自衛以外に戦う気はない】
【ロック 所持品:キューソネコカミ 現在位置:レーベの村の宿屋
行動方針:武器と仲間を探す】
331:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/08 11:56:47 O9y6jhPU
「それにしても、まさかあんたまでここに居るとはね…」
「それは、こっちの科白だ」
そういって男は空を仰ぐ。
それにつられ、隣の女も空を仰ぐ。
少しの時間空を見て、女は口を開いた。
「あんたは、このゲームに乗らないのか?お前のような-
「あたりまえだ」
女の言葉をさえぎった男の言葉に、女は目を丸くする
「わしが憎むのはノアとノアがいた世界。この世界に滅ぼすものはない。まあわしを襲うやつのことは言うまでもないが」
「おやおや、魔王とも呼ばれた男が…もうそんな考えはすっかりなくしたと思っていたが」
「ふっ…そうだったのかもしれん」
「?」
「この世界に降り立ってすぐにお前とあったそのときはノアの恨みを思って殺そうと思ったが…
お前の目を見たらそんな自分が馬鹿らしくなってな。さっきも言ったが、わしが滅ぼすのはノアとノアのいた世界。お前たちではないんだ」
静かに語る口調と言葉に、女は今までの男と違う感情を持った
(あのザンデがこんな事を思っていたとはね…)
「ウネよ、この世界を脱出する方法を考えないか?わしはこの世界で朽ちたくないしおまえやドーガも殺したくはない」
「…なんとなく、言うと思っていた。あたしもそう思っていたところだ。魔王だろうがなんだろうが、同じ仲間じゃないか」
二人は共にうなずいて立ち上がる
「まずは風…ドーガだな」
「ああ…」
ノアの弟子たちは立ち上がる。この恐ろしきゲームを止めるために。
【ザンデ 所持品:不明 現在位置:アリアハン北の森
第一行動方針:ドーガを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】
【ウネ 所持品:不明 現在位置:同上
第一行動方針:同上 最終行動方針:同上】
332:331
04/11/08 12:00:09 O9y6jhPU
タイトル入れてね('A`)
「二人は」で脳内補足おながいしますorz
333:影 1/3
04/11/08 20:02:44 7q1Cqk0G
ファリスは、深い森を一人、歩いていた。
鬱蒼と茂る森は、いつかのあの森を思い出す。
最後には、焼け野原と化したあの森を。
大切な仲間を失った、森を。
森が燃える回想を頭から振り払おうとした彼女に、赤く燃え上がる何かが見えた。
…一瞬、エクスデスと相対し炎に包まれたガラフが脳裏に過ぎる。
慌ててそれに近づき、支給品のマントで火を消す。
火の中から現れたのは、原形を留めぬ、炭化された物体。
「酷い…っ」
ちょっと見ただけなら、焼けた木と何も変わらなかっただろう。
だが、人間の肉の焼ける独特の強烈な匂いが周囲を包み込んでいた。
思わず、胃の中の物がこみ上げる。
「っ…!」
何とか堪えるも、彼女の心は、体以上にそれに反応する。
自殺か、他殺かは知らないけれども、また誰かが死んだ。
匂いのせいかもしれないが、目の奥が熱い。
(こんな…ふざけてる)
ファリスは、立ち竦む。
「無防備だな」
何の前触れもなく、ファリスの背後から声がした。
「っ、誰だっ!?」
振り返り、もう一つの支給武器…聖なるナイフを咄嗟に構えた。
そこに立っていたのは、短刀を手に持った、全身黒尽くめの男。
いや、黒尽くめだから見た目では男かどうかはわからないのだが。
334:影 2/3
04/11/08 20:03:59 7q1Cqk0G
「忠告をしただけだ。名乗る必要もない」
男は、ほとんど感情を感じない声でそう告げた。
「忠告だと?」
(…この男、腕はいいだろう。殺気を感じないから、今はまだゲームに乗っていることはないはず。
だが、いざと言う時…何の躊躇いもなく人を殺せる人間だろうな)
「そうだ。ここは戦場だ。油断が命取りとなる。
俺がゲームに乗っていたのなら、お前の命はさっき尽きた」
(確かにそうだ…)
「この忌まわしい匂いが嗅ぎ付けられる可能性も、さっきの炎が見られていた可能性も、ある」
「確かにそうだな…」
「その辺にゲームに乗った奴が近づいているかも知れんということだ。実際、俺は気づいてやって来た」
男は冷静にそう言った。
「そうだな、ありがとう。それで、あんた結構強そうだし、一緒に行動してもらえないか?」
ファリスが右手を差し伸べたが、男はそれを握らなかった。
「悪いが、団体行動は好きじゃない。一人で行く」
そう言うと、男はふっと独り言のように言った。
「もしリルムという娘を見つけたら…」
「えっ?」
「…いや、なんでもない」
男は、何かを飲み込むように最後の言葉を残し、木々の間を跳躍してどこかへ消えた。
「リルム…か」
男の最後の言葉が気になった。
だが、それよりも、ここは危険だ。
バッツ、レナ、クルル…何処にいるんだ?
ファリスは、かつての仲間を探すべく、その場を立ち去った。
335:影 3/3
04/11/08 20:07:20 5isgb9P7
黒尽くめの男は、走りながら考えていた。
なぜわざわざ人助けのような真似をしたのか。
…理由は明白だった。
あの女がゲームに乗っていない事と直感的にわかったとき、男は思っのだ。
―殺される理由のない人が殺されるのは見たくない。
かつて殺し屋として生きていた彼はもう、死んだ。
今、一度死んだ筈の身がここに有るのは、殺戮のためではない。
―そうだろう、ビリー?
男は、シャドウは、影のように木々を縫い、走っていた。
【ファリス 所持品:王者のマント@DQ5 聖なるナイフ 行動方針:仲間を探しに行く】
【シャドウ 所持品:ダガー 祈りの指輪 行動方針:マーダーを減らす、出来ればリルムに会いたい】
現在位置:レーベ南の森北東部から移動中(別々に)
336:1/2
04/11/08 20:28:59 KC4Ut1Eo
(…自分と同い年ぐらいの男の人…こっちに来る?)
呑気にあくびをしていたフィンだが、ふと数十メートル先の人影に気がついた。
(…あの人の剣、赤い!まさか血の色…!?)
「…アルカート、誰か来る!」
「えっ?」
丁度ギルダーに背を向ける状態になっていたアルカートは、フィンの言葉でようやくその存在に気付き振り向いた。
そして目を見開く。…あの赤魔道士、魔力を高めて…!いけない、完全にこちらに仕掛ける気になってる!
「フィンさん、あの人…!」
アルカートが魔石をローブのポケットに入れながら叫ぶ。
フィンもそこでようやく明らかな殺気を感じ、一瞬で立ち上がり陸奥守を抜いたがしかし、遅かった。
「ブライン!」
「ッ!?うわッ」「きゃあっ!」
ブライン。二人の視界が暗闇に飲まれた。ギルダーはライトブリンガーを握り、一気にフィンとの間合いを詰める。
フィンは気配と殺気で相手の位置を察し、その一撃を何とか受け止めるがしかし、受け止めることしか出来ない。
間髪いれずに再び振るわれた剣を、今度はギリギリのところで受ける。…危ない、今にも弾かれそうだ。
(この状況、反撃は無理だ…どうしよう?何とか追い払う方法を――)
剣の重なる音が何度も響く。そんなフィンの後ろでアルカートは目を閉じて集中していた。
(大丈夫…落ち着いて。回復すれば対処できない相手じゃない…こっちには気がついてない…!)
アルカートは、エスナの魔法を詠唱していのだ。大丈夫、落ち着いて、落ち着いて。
しかし、この状況で落ち着くというのも難しいものだ。アルカートの魔力は必要以上に増幅し…完成する直前だろうか、
ギルダーがその魔力に気がついた。
ギルダーは舌打ちし、フィンの横をすり抜けアルカートに向かっていった。
(しまった、アルカート!)
フィンが気がついた時にはすでに遅い。既にギルダーはアルカートとの間合いを詰めていた。
ライトブリンガーがアルカートに向かって勢いよく振り下ろされる――
337:2/2
04/11/08 20:30:33 KC4Ut1Eo
ガッ!
その刃は、鈍い音と共に直前で何かに阻まれた。
「何をしておる、ギルダー!道を踏み外したか!」
(なっ…ドーガ!?)
間一髪。ドーガがギルダーの前に立ちふさがりライトブリンガーを素手で受け止めたのだ。
紫色の血、人間の物ではないそれがぽたぽたと落ちる。
(…! 俺がドーガに勝てる訳が無い…!くそっ!)
ギルダーは一瞬の判断で、マントの下から手榴弾を取り出し器用に片手でピンを抜く。
それにドーガが目を見開いた時には――既にお互いの至近距離で爆発が起こり、同時にギルダーが魔法を完成させていた。
「サイレス!」
「!くっ…!」
ドーガが呻く。魔法を封じられた…迂闊だった、爆風で前が見えない…!どこだ!?
視界の悪い中でもギルダーの気配が遠ざかるのが解る。…逃がすわけにはいかない…!
しかし丁度視界が開け始めたころか。数十メートルほど離れた辺りから大きな水音が聞こえ
完全に視界が開けた時には既にギルダーの姿は無くなっていた。
【アルカート 所持品:ナッツンスーツ グラディウス 白マテリア(ホーリー) 現在位置:アリアハン北の橋からすこし東の平原
第一行動方針:?(強烈な力の込められた石を研究する)
第二行動方針:ジオを探す
第三行動方針:白い球体について研究する】
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可) 現在位置:同上
第一行動方針:?(アルカートの石の研究の結果を待つ)
第二行動方針:アルカートを守りつつ、仲間を探す】
【ドーガ{負傷} 現在位置:同上 所持品:不明 第一行動方針:?】
【ギルダー{負傷} 現在位置:大陸中央の川→? 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×3・ミスリルボウ
第一行動方針:逃げる→傷の治療 最終行動方針:生き残りサラの元へ帰る】
338:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/08 21:19:08 jmH3OEuM
>>322の修正
> サックスやギルバートならさっと決断しただろう。アルカートなら、少し悩んだかもしれない
を
サックスやギルダーならさっと決断しただろう。
に。申し訳ありません。まったく気づきませんでした。指摘してくれた人ありがとうございます。
339:Amnesia? 1/2
04/11/08 21:45:21 3yoXVl2/
(なんで僕、結局この人と一緒にいるんだろう)
ソロはため息をついた。その傍らでは、ヘンリーが袋に頭ごと突っ込んで中身を探っている。
「おっかしーな。俺の袋、肝心の武器が入ってないぜ? 食料やなんやらは入ってたのに」
多分、さっき落ちた時に投げ出されてしまったのだろう。
ソロは仕方なく、自分の袋に入っていた剣を差し出した。
「これでよければ貸してあげますけど」
「え? でも、君が困るんじゃ」
「もう一振りありましたから、大丈夫ですよ」
ソロは微笑みながら言う。けれども、心の中では別のことを考えていた。
(なぜ、僕はこんな見ず知らずの人に親切にしているのだろう。
だいいち、治療だけしたらさっさとレーベに行くつもりだったのに。
なんでこうして、一緒に茂みの中を歩いているのだろう?)
―この男が正気を取り戻すのが予想外に早かったせいだ、とソロは思おうとした。
でも、本当は単に放っておけなかっただけだ。死なれたら目覚めが悪いとかいう以前に、心配になったのだ。
やっぱり、自分は根っからのお人よしなのかもしれない。仲間たちが口を揃えて言うとおり。
「悪りぃな。迷惑ばかりかけちまって」
そんなソロの気持ちを知ってか知らずか、ヘンリーは頭を下げる。
「いえいえ、危ない―じゃなかった、困っている人は助けるように親からも良く言われてたので」
「そうか……きっと、優しくて良いご両親なんだろうな」
自分の両親や継母のことを思い出したのだろうか、心底羨ましそうにヘンリーは言った。
「で、ヘンリーさんでしたっけ。これからどうするんですか?」
「うーん、そうだなぁ。皆で茶でも飲むか。確か、マリアさんやリュカやピエールもいたし」
……この状況でお茶だなんて、楽観的すぎるにもほどがある。ソロは唖然とした。
「あのですね。あなたに戦う気がないのはわかりましたけど。
ここは一応、殺し合いの会場ですよ? 向こうが殺る気満々だったらどうするんです!」
340:Amnesia? 2/2
04/11/08 21:51:48 3yoXVl2/
「殺し合い? なんで俺達がそんなことしなきゃいけないんだ?」
ソロは本気でずっこけそうになった。踏みとどまれたのは奇跡に近い。
「あのですねぇ! あのティアマトとかいうでっかい竜の話聞いてなかったんですかっ!?」
「でっかい竜? あー、聞いたかもしれねえ。
いや、聞いた聞いた聞いてた。今まで忘れてたけど」
本気でなんなんだろう、この人は。打ち所が悪すぎたんじゃないだろうか。
ソロの心配を余所に、ヘンリーは元気よく腕を振り回しながら言う。
「なーに、相手がやる気ならこっちも受けて立つさ。
何か知らねぇけど、今ならガンガン戦えそうなんだ。
ちょっとやそっとの呪文じゃあ死ぬ気がしないっつーか」
―もし、この場にリュカやマリアがいれば疑問に思っただろう。
自分の妻を、「マリアさん」などと他人行儀に呼んだことに。
そしてもし、この場にガーデンの関係者がいれば、思い当たったことだろう。
様々な力と引き換えに記憶の喪失をもたらす―G.F.の存在に。
けれどもソロはヘンリーの知人でもないし、ましてやG.F.など知るはずがない。
『後頭部強打による記憶の混乱、あるいはこの若さなのに痴呆症』。それがソロの見立てだった。
「そりゃあ戦いに出るのは八年ぶり―いや、七年? それとも十年だっけか?
……いや、わりと昔の話だけど、呪文や剣なら今でも使えるからさ」
「そうですか」
もう勝手にしてください、と、ソロは再びため息をついた。
それでも身体がヘンリーの後を追っていってしまうのは……もはや、一生直らない性分なのだろう。
【ヘンリー 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 雷鳴の剣 状態:オートリフレク
第一行動方針:知り合いを探す、自衛以外に戦う気はない】
【ソロ 所持品:さざなみの剣 水のリング
第一行動方針:ヘンリーのお守り&仲間を探す 第二行動方針:少しでも多くの人が助かる方法を探す】
現在位置:レーベ近くの茂み→レーベの村へ
341:占われた者の―― 1/3
04/11/08 22:32:40 OttImMcQ
爽やかな潮風と波の音を聞きながら、ビアンカは支給品の袋の中を探っていた。
彼女が放り出された場所は、周囲に人の気配もなく、静かなところ。
だが、子供達や家臣、仲間の魔物、そして愛する夫が側にいないという状況は
今のビアンカにとって不安を増大させるものでしかなかった。
「とにかく、自分の身は自分で守らないと…」
呟きながら取り出したのは、飾りけのないサークレットのようなもの。
自分の頭には少し小さいかもしれないが、防具には変わりないだろう。自分のような
非力な人間でも装備できそうだし、魔力を秘めた特殊な防具だったりして…。
ビアンカは、そんな希望を感じながらそれを身に付け―
そして、『それ』を見た。
「…え?」
胸に剣を突き刺されて倒れているレックス。炎に焼かれて地面に転がっているタバサ。
無残な子供達の姿の向こうには、最愛の人の後ろ姿。
「…リュカ…?」
呆然と呼びかけたビアンカの言葉に、彼が振り向く。
何かを言おうと、彼が口を開いたその瞬間、
ぞふっ。
あまりにも不鮮明な、耳障りな音と同時に、リュカの首が高々と宙に舞う―。
342:占われた者の―― 2/3
04/11/08 22:35:30 OttImMcQ
「…ゃ…いやあぁぁぁっ!?」
絶叫する。
全身ががくがくと震え、ビアンカはその場にへたりこんだ。
冷たい汗が吹き出し、青ざめた肌を流れ落ちていく。見開いた目から涙が溢れ出す。
「あ、ぁあああ…」
今のは何?今、私が見たのは一体何?
嫌だ、こんなのは嫌だ、こんなのは、こんな、こんな結末は、嫌だ。
『だって、これはそういうゲームでしょう?』
そう、確かに、そう、だけど、嫌、こんなのは違う、子供達が、リュカが、そんなのは嫌だ。
『でも、みんな誰かを殺そうとしている。いずれあの子達も殺される』
駄目、それだけは、嫌だ、絶対に駄目、殺されるなんて、そんな。
『殺されなくてすむ方法は1つだけ』
教えて、お願い、あんな、お願いだから、殺されるなんて、駄目、お願い!
343:占われた者の―― 3/3
04/11/08 22:38:27 OttImMcQ
『―彼らが殺される前に、みんな貴女が殺せば良い』
―ああ。
『殺せ。殺してしまえ。どいつもこいつも。みんなお前から大事なモノを奪おうとする。
全て殺せ。みんなみんな。殺せば、もう殺せない』
そう、そうなんだ、そう、殺せば、子供達、リュカ、そう、殺す―
―?待って、アナタは、私に教えてくれたアナタは誰―
ビアンカは、ゆっくりと立ち上がった。
もう震えていない、叫んでいない、泣いてもいない。その替わり、その顔にはただ
凍り付いたような微笑が浮かんでいるのみ。
袋の中からもう1つの支給品、かつて光の戦士達が使っていた伝説の武器を取り出すと、
彼女はゆっくりと歩き出す。
美しい黄金の髪の上で、操りの輪が鈍い輝きを放っていた。
【ビアンカ(暴走状態:操りの輪を破壊すれば状態回復は可能)
所持品:操りの輪、 ファイアビュート 第一行動方針:リュカ、子供達以外の全員を殺害
現在位置:レーべ西の海岸→レーべの村に向かって移動】
344:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/08 23:46:53 zOpuvRS3
「爆発と言っても小規模なものだ、だがお前たちの命を絶つのは容易い」
さらりと、女性はそう言う、何も感情が無いかのように次々と言葉を述べていく。
「禁止事項は次のとうりだ。
一つ、首輪を無理矢理外そうとすること。
一つ、ゲームから逃げ出すこと
一つ、最後に誰かが死んでから、二十四時間誰も死ななくても爆発する」
「………要するに、最後まで生き残れと言っているわけだな?」
金髪の背中に星がかかれたジャケットを背負った青年がそう言った。
その質問に、やはり生きた目をしていない目で、青年の方を向き、答える。
「そうだ、そして貴様らにはルガール様からありがたい支給物資が配られる。
これから一名ずつ呼んで行く、呼ばれたものはこの穴に飛び込め。
しかし、支給物資が何も有用な物とは限らない、使えないものだったときは自分を恨め」
そして、女性は読み上げた、最初の…幸あるものを。
345:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/08 23:57:06 zOpuvRS3
悪い、誤爆した。orz
346:はぐれメタル純情派
04/11/09 00:50:38 XSNBnzT8
全ての攻撃を受け流す流線型のメタルボディ。
数ある魔物達の中でも屈指のスピード。
さらには極大爆発呪文まで操る高い魔力。
こういった高い戦闘能力を持つはぐりんであるが、本来彼は戦いを好まない性格であった。
リュカの魅力に惹かれ、主人の為に魔王とも戦ったが、こんな意味のない殺し合いなど
はぐりんが望むわけもなかった。
「…………やっぱり……無理か…………」
金属の体を器用に変形させてみるが、どういう訳か食い込んだ首輪は外れてくれない。
「ご主人…………無事かな…………」
思い出されるのはリュカやみんなとの楽しかった日々。生まれてこのかたはぐれ者だった
はぐりんにとって、それは初めて知った仲間の暖かさだった。
敵に怯え、こそこそ逃げ回っていたあの頃にはもう戻らない。今の自分には、守るべき仲間達がいる。
それまでは無益な戦いはできるだけ避けたいが、幸いスピードと危機回避には自信がある。
実際、既に近くを通った者もいたが、彼に気付く者はいなかった。
「…………ご主人…みんな……待ってて………」
小さな体に大きな闘志を秘め、はぐりんの戦いが今始まる。
【はぐりん 所持品:エリクサー×10 ブロードソード レーザーウエポン
行動方針:仲間との合流(リュカを最優先、戦闘はできるだけ避ける)
現在位置:いざないの洞窟B1F】
347:直々に1/2
04/11/09 01:01:31 grMMVAxl
闘いの火蓋が斬って落とされ、早数分。
彼らのコンビネーションもなかなかの物となってきた。
フバーハが特に掛ったサックスが突破口を開き、フルートから借りた草薙の拳で斬りつける。
そしてその隙にゼルが右右左右そしてハイキックの連携をかまし、
咄嗟に飛び退きロランがリルムの魔法を相乗させた一撃をかます。
(―クッ…人間一人ならどうにかなったものを…少し本気を出さねばならんようだ…)
そして、サックスが三回目の攻撃に移ろうとしたとき…ビクビクと竜王の体が変化し始めた。
そして見る見るうちに鱗が出来、翼が生え…その姿は龍となった。
「どうやら貴様らを見縊っていたようだ、本気で行かせてもらうとしよう」
その龍の姿に、少しは引くものの、サックスとゼルは向かっていった。
しかし、先ほどとは違い全くと言っていいほど利いていない、ロランも加勢するがやはり利いていない。
すると、ゼルは後ろに大きく下がった、ロランは剣を片手に持ち替え、サックスは片手を剣に添えている。
「何をしようと無駄だ!」
と、竜王の声が大きく響く。
すると…ゼルが瞬速で竜王に殴りかかる、が、それは寸前で止まった、いや止めたのだ。
するするとスローに殴りかかっていく、ゆっくりゆっくりとゼルは進んでいく。
「ふん!このような子供騙しに…グッ!」
するとリルムがブリサラを放っている、竜王は気をゼルに向けていたので気がつかなかった。
今だ!と瞬間的に思ったロランとサックスは竜王の両足に斬りかかった。
「ハァァァァァ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
その二つの声が重なり竜王に斬りかかる、二人の全力は竜王をふらつかせた。
その時だった、ゆっくり進んでいたゼルがいきなり光よりも早く動き始めた。
そう、彼は空気の壁を打ち抜いていたのだ、光を超越するパンチは相当なダメージをもたらした…だが。
「グォォォォ!ニンゲンドモガ!コノワタシニ!ハムカイオッテ!グオオオオオオ!!!」
なんてこった。と全員がそういった、あれほどの総攻撃を仕掛けながらも竜王は此方へ向かってくる。
348:直々に2/2
04/11/09 01:03:10 grMMVAxl
咄嗟に体制を直した三人だが竜王の個素早い攻撃に吹き飛ばされ、壁に強く打ち付けられる。
ロランは多少素早く飛び退いていたので気絶は免れたが体が思うように動かない。
ゼルとサックスはモロに受けてしまった、壁にもたれかかり動かない。
そして、どんどんフルートとリルムの方へ向かう。
ロランは、助けようと思った、でも体が上手く動かない、ああもう駄目だと思っていた。
「フフフ、アトハキサマラダケダ!ジワリジワリトナブリコロシテクレル!」
すると竜王はその大きな手をリルムのほうへ伸ばした…
が、その腕はいとも容易く吹き飛んだ、そう、その力の主はフルートだった。
嘗て魔神とまで呼ばれた武闘家時代の力が…ということは…。
「てめぇ…こんな小さい子を狙ってなぶり殺すだぁ?ザケんのも大概にしやがれ!」
すると、フルート一睨みした後は大きく拳を竜王に叩きつけ、折れていた右腕を完全にもぎ取った。
彼女が普段この力を発動できないのは彼女自身が知らないからなのである、そして普段の彼女も使えない。
ブチギレた時に使える、異常な力なのだ。
「ウギィヤァァアアアア!!!」
鳴り響く、竜王の悲鳴、怒りに満ちるフルートの表情。
そんなフルートをリルムは、ロランは、ただ、ただ、見ていた、戦うことも忘れて。
「テメェはこのフルートが直々にブチのめす」
その目と気迫は嘗ての勇者に似ていた。
そしてリルムも、そんなフルートの陰で、ある呪文を唱えていた。
【サックス(重傷&気絶) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
【フルート(プッツン&重傷) 所持品:スノーマフラー
【リルム(負傷) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン(重傷) 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル(重傷&気絶) 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔入口
行動方針:傷の治療(ロラン)竜王をブチのめす(フルート)フルートを援護する(リルム)】
【竜王(竜化) 所持品:裁きの杖 魔法の法衣 現在位置:ナジミの塔入口
行動方針:目の前の人間を殺す】
349:コミカル(?)お兄さん1/2
04/11/09 11:28:46 jPhjLL80
「とりあえず、北東にでも向かってみよう。祠とかあるし」
こんにちは。
私達は、セージお兄さんの提案で北東に向かっています。
"森や山岳地帯といった危ないところを通らずに進もう"という事も忘れずに、です。
まだ少ししか進んでないけど、なんだかお兄さんといると安心できる様なk「あ!そういえば!」
ど、どうしたの?お兄さん…。
「そういえば…僕達支給品見てないじゃん」
「あ…」
お兄さんも私もすっかり忘れてました。
自分を護るための道具が無いかを確かめるのを忘れていたんです。
そしてお兄さんは、すぐに私にも袋を開けるように言いました。
私は言われた通りに袋を開けることにしました。
「あ、お兄さん!私凄くラッキーかも」
私が袋から出したものは、食べられるキノコの説明と写真を載せているご本。
そして……もっと凄いのは、あの「ストロスの杖」が出てきたことでした。
私がお父さんとお母さんを探しているときに使っていた杖。
使い慣れたものが出てきてホッとする私を尻目に、お兄さんも同じように袋を開けました。
350:コミカル(?)お兄さん2/2
04/11/09 11:45:40 jPhjLL80
……開けたんですが…。
「………さて」
え!?ちょっと待って待って!
お兄さんはそう言うと袋を閉じてしまいました。
何があったの?ねぇ、ちゃんと目を見てお話して!
「……出てきたの…これなんだよね」
半分泣きそうな目で、お兄さんは袋を開けてくれました。
「まず、これが"ハリセン"ってヤツ」
中で右左右左とキッチリ折られて、更に下で束ねられている厚手の紙がありました。
なんだろう。私は"はりせん"っていう言葉は初めて聞く。お兄さんに尋ねてみよう。
「これはほら、アレだよ。
"ナンデヤネーン!!"とか"ソンナアホナー!!"とか"オマエモナー!!"…は違うか、まぁそんな事を言いながら叩く道具」
"って、何かの本に書いてた。"と最後に付け加えて説明は終わりました。
なんだか、使いづらいね…。で、お兄さん…他には?
「それ以外、ない」
え…?おかしいよお兄さん。私の袋には2つもあったのに。
「おかしいけど…仕方がないよ。他の人から貰うなり交換するなりしよう」
そういった後、お兄さんは袋に"はりせん"をしまうと、黙って私の手を牽いて進み始めました。
お兄さん……私でよければ、相談に乗るよ?
【セージ 所持品:ハリセン 現在位置:レーベ北東 行動方針:レックスを探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑 現在位置:同上 行動方針:セージと行動する】
351:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/09 12:31:02 jPhjLL80
>351
「まず、これが"ハリセン"ってヤツ」
の「まず、これが」を消してください……。
前に書いてた文章を消しきれてなかった…orz
脳内変換お願いします。
352:決着1/4
04/11/09 16:22:53 t6eQXW72
「オラァァァァァ!」
殴る殴る、蹴る!重く鋭く、正確な一撃一撃が、確実に竜王を
追い詰めてゆく。
ゴオォォォォッ!
竜王が勢い良く炎を吐いて退けようとするが、炎はフバーハの
光の衣に遮られ、ほとんどが届かずに終わる。むしろほんのわずかな炎が
フルートの頬をかすめることで、彼女の怒りをいっそう煽るのだ。
「死ねやコラァァァ!」
フルートの罵声に、はっと我に返ったロランが慌てて加勢しようと
よろよろと立ち上がる。
竜王の残った左腕、鉄をも引き裂く鉤爪がフルートに襲い掛かる!
「ヒキサイテクレルワ!」
だがフルートの拳が唸りを上げると、ばきり、と音がして本来ありえない
方向に竜王の腕が曲がる。
「ギャァァァァァァ!」
竜王はもだえ、身をよじり、倒れそうになるのをすんでのところでとどまる。
353:決着2/4
04/11/09 16:39:28 t6eQXW72
ズ…ンッ!
その竜王の体に衝撃が走る。
視線を下へ向けると、ロランが竜王の下腹部に、深々とガイアの剣を
突き立てている。
「オノレ…オノレ…ニンゲンフゼイガ…」
もう爪で攻撃することは叶わない。三度炎を吐こうとしたその時、
「サンダラ!」
リルムの完成した呪文が、雷が竜王の体に刺さったガイアの剣を直撃した。
ロランはすかさず後方にとびすさる。
「ギィィィエェェェェェ…!」
体の内側から雷に焼かれた竜王は、しばらく直立したまま痙攣を繰り返して
いたが、やがて、ゆっくりとゆっくりと、横ざまに倒れた。
「やった…倒した…竜王を…」
ロランがはあはあ息を切らしながら呟く。
「フルートってすごい!尊敬しちゃうな!」
リルムは笑顔だ。
「あら?私は何を…?これは、貴方が?」
我に返ったフルートは、例によって何も覚えていない。
「う……」
「ん…何だァ?」
サックスとゼルが、ようよううめきながら身をおこす。
354:決着3/4
04/11/09 16:49:54 t6eQXW72
「あ…お二人とも、気が付きましたか~?」
フルートは元ののんびりした調子で、二人に近づく。
「竜王は、ロランさんが倒してくれたんです」
確かにとどめを刺したのはロランだが、そこまで追い詰めたのは
フルートであるという事を当人もサックスも、ゼルも知る由も無い。
「いや違う、僕は…」
「あのね、フルートってすごいんだよ!竜王と互角だったんだから!」
困惑するロランの声を、リルムのはしゃいだ声がさえぎった。
フルートは何のことか分からず、きょとんと立ち尽くしている。
「フルートが?まさかぁ」
サックスにはとても信じられない。見ていないのだから無理も無い。
「あんた、見かけによらずスゲ-んだな!」
ゼルが愉快そうに笑う。彼は竜王の所持品を回収すると、フルートに預けた。
あんたが役にたててくれ、と。
355:決着4/4
04/11/09 17:02:27 t6eQXW72
「もしゲームに乗る気が無いなら、皆で一緒に行動しないか?」
提案したのはサックスだ。ロランが笑って右手を差し出す。
期せずして全員の手が重なった。
「喜んで…皆で協力して、あの魔女を倒そう!」
「お~っ!」
声をそろえて唱和すると、はじけた一同の笑い声がアリアハンの空に
響き渡った。
【サックス(重傷) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り
【フルート(重傷) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
【リルム(負傷) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪
【ロラン(重傷) 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
【ゼル(重傷) 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト
現在位置:ナジミの塔入り口
第一行動方針:傷の治療
第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
356:決着 補足
04/11/09 17:26:15 w3JW46Eb
【竜王 死亡】
入れ忘れスマソ
357:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/09 19:20:36 grMMVAxl
ツンツンのチョコボ頭の青年、クラウドはアリアハン城から南の海岸に立っていた。
彼は正直こんなゲームには興味が無かった、殺す気も無いし、殺される気も無い。
ただ、エアリスやティファやシド…仲間が死ぬところは見たくない、そんな心境だった。
そのためには生き残らねばならない、ただし殺人はやむをえない場合を除いて無しで。
やむをえない場合、襲い掛かってきたらそいつは容赦なく斬る、逃がせば仲間を危機に晒すことになるからだ。
そう思いつつ、彼は支給品を確かめた。
柄しかない剣と神羅の奴らが着込んでいそうなスーツが入っていた。
柄しかない剣は握ってみれば剣が使用者の体力に比例し出てくる、アルテマウェポンだった。
スーツはなんとも言えず、本当にただのスーツに見えた。
しかし、クラウドは知らない、このスーツがそこらの鎧よりも防御力があることを。
「とりあえず…あの城を目指すか」
ふぅ、とため息をつき歩き始めて数分後のことだった。
「…マズいな、早速やる気満々の奴に早速出会ったな」
クラウドの目線の先には血のついた剣を持った剣士がクラウドの方向を睨んでくる。
確実にこちらに向かって攻撃を仕掛けてくる気だ、その剣士の周りの四人の死体がそれを物語っている。
宝条の奴と、白魔道士のような女性と、肥満体の男と盗賊風の男。
チッと舌打ちをしながらも、クラウドはアルテマウェポンを構える。
一気にケリをつけようと斬りかかろうとしたその時だった。
358:悲しみの先に2/2
04/11/09 19:21:34 grMMVAxl
「ローザ!!」
白髪の青年が剣士の後ろから叫ぶ、その青年の表情は哀愁に満ちていた。
「ローザ…ローザ…ああ、僕はまたローザを守れなかった…」
白髪の青年はそう白魔道師の死体を抱え、泣いていた。
それを見るや剣士は口元を歪め、セシルに斬りかかった。
だかそれは寸でのところで止まる、セシルが光の剣を振り上げたからだ。
「…許さない…僕は許さない!」
セシルの目がクッと開く、それを見てクラウドは…加勢しようかどうか迷っている。
静かなる戦いが、今始まった。
【セシル 所持品:光の剣 ミスリルシールド
現在位置:アリアハン南の平原 行動方針:ローザの敵を取る(ガーランドを殺す】
【クラウド 所持品:アルテマウェポン おしゃれなスーツ
現在位置:同上
第一行動方針:セシルに協力する(?)
第二行動方針:マーダーを減らす
最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【ガーランド(半カオス状態) 所持品:皆殺しの剣 ダイヤアーマー
現在位置:同上 行動方針:人間を殺す】
【宝条 死亡】
【ローザ 死亡】
【サンチョ 死亡】
【ジークフリート 死亡】
359:戦いを求める者 1/4
04/11/09 19:58:34 PPbOrUFm
ハイテンションを通り越して躁状態になっていたヘンリーだったが、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「思ってたより遠かったな」
平原の向こうに目的地である村の影を認めて、ヘンリーは小さくつぶやく。
記憶の混乱も治まったらしく(G.F.の効果ばかりでなく、頭を打ったことによる面も大きかったのだろう)、
あれから妙なことは言っていない。
こうして普通にしていれば、王族に相応しい理性と威厳を感じないこともないのだが……
第一印象を拭い去り、ソロの評価を改めるには到底及ばない。
それどころかギャップが激しすぎて、『ちょっとアレな人』という確信を高めるだけで終わっている。
「気をつけてくださいね。どこに敵がいるかわからないんですから」
「どうせ会うなら、敵よりも妻や弟や親友に会いたいんだけどな」
「あれ、奥さんなんているんですか? そんなこと一言も……」
「忘れそうになったが、なんとか思い出せた」
「……」
もう、これ以上深く考えるのも追求するのも止そう、とソロは思った。
その時、ヘンリーが唐突にソロを見た。
怪訝、とも険しい、とも言える表情である。
一瞬、考えを見透かされたのかとソロは狼狽したが、すぐに違うと気付かされた。
「おい、何か聞こえないか?」
ヘンリーの言葉が終わらない内に、ソロは走り出していた。
彼にも聞こえたからだ。剣を切り結ぶような、そして何かが燃える音が。
360:戦いを求める者 2/4
04/11/09 20:03:41 PPbOrUFm
テリーは不満と空しさを覚えていた。
(こんな腑抜けしか集まってないのか?)
いっぱしの戦士に見えるこの男、前に殺めた中年二人よりは楽しませてくれると思っていたのだ。
だが、期待はずれもいいところであった。
確かに、虚ろな目をこちらに向けてはいる。斬りつければ盾で受け止める。
だが、それだけだ。武器がないから戦えないとかそういう次元ではない。
素手で戦おうとも、呪文を使おうとも、逃げようとすらしないのだ。まるで、心を持たない機械人形のように。
これでは壁に切りつけているのとかわらない。
(もういい、終わりにしてやる)
苛立ったテリーは、神速の突きで盾と地面との間に剣を滑り込ませ、勢いよく跳ね上げた。
白銀の輝きが宙に舞い、鋭い切っ先が、それでもなお能面のように顔色一つ変えぬ男へ迫り―
けれども斬られたのは男ではなく、虚空であった。
甲高い音を立てて、後方から投げつけられたもの―鉄扇が跳ね返り、地に落ちる。
「止めなさい、テリー!」
アークボルトと雪山で会った冒険者たちの一人。テリーの赤い瞳にはそうとしか映らない。
青年は力と引き換えに、力を求めた理由も自分の姉の姿さえも忘れてしまったのだから。
「ふん……こいつよりは斬る価値がありそうだ」
テリーは笑った。ミレーユの記憶にある笑顔とはかけ離れた表情で。
「止めてほしいなら、力ずくで止めてみせろ!」
地を這うような低い斬撃が走る。ミレーユは扇を拾い上げ、力の方向を逸らして受け流す。
そして体勢が崩れたところを狙って薙ぎ払うが、呆気なくジャンプでかわされてしまう。
(やっぱり、剣や力では敵わない)
そう判断したミレーユは、素早く距離を取って大きく息を吸い込む。そして一気に吐き出した、燃え盛る火炎に変えて。
「何っ!」
驚愕の相を浮かべる青年の姿が、赤い炎に飲み込まれる。ミレーユは間髪いれずに呪文を唱えた。
「ラリホーマ!」
―攻撃呪文を選ばなかったのは、テリーを殺したくないという気持ちがあったからだ。
自分の命はどうなっても構わないが、弟には正義を取り戻し、そして生きてほしい。
だがその思いは、彼女が想像しなかった結果をもたらした。
361:戦いを求める者 3/4
04/11/09 20:06:14 PPbOrUFm
炎の向こうで、何かが緑色に輝いた。そう思った瞬間、ミレーユは強烈な睡魔に襲われた。
(え? ……どうして……私が?)
「なるほど、この指輪は呪文を反射する力があるみたいだな」
ミレーユの瞳に、弟の姿が映る。無傷だったことに疑問は感じない。真空の剣で炎ごと断ち切ったのだとわかったからだ。
「火炎の息に受け流し、どれも子供だましの技だ。それで俺に勝てるとでも思ったのかよ」
テリーは冷酷に言い放つ。相手が誰なのか、未だに気付かないがゆえに。
かつての思いを見失い、力と引き換えに正義を失ったがために。
(私は……止めないといけないのに)
ミレーユは悔やんだ。なぜ、ラリホーマなど使ってしまったのだろう。
攻撃呪文を使っていれば、まだチャンスはあったのだ。
弟を殺したくないという思いが―それが、自分の首を締めてしまったのか。
とめどない後悔と睡魔に、彼女はついに意識を手放してしまった。
けれども、テリーはミレーユを手にかけはしなかった。
思い出したわけではない。
彼が姉を殺さずにすんだのは、新たな闖入者が現れたから。それだけの理由だった。
「その人から離れろ」
年齢に似合わぬ覇気を備えた若者が言う。
その隣で、貴族風の身なりをした男が剣を構えている。
テリーの目は、その剣に吸い寄せられた。
「……雷鳴の剣」
それはかつて、彼自身が愛用していた剣だった。
シャープな切れ味を誇る刀身に、荒れ狂う雷を呼ぶ力を備えたアークボルトの至宝。
「おもしろい。今度こそ、戦い甲斐がありそうだな」
テリーは三度剣を構え、地を蹴った。
362:戦いを求める者 4/4
04/11/09 20:07:57 PPbOrUFm
【フリオニール 所持品:天空の盾 状態:感情喪失 行動方針:静観?】
【ミレーユ 所持品:月の扇 エルメスの靴 状態:睡眠
行動方針:命に換えてもテリーを更正させる】
【ヘンリー 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 雷鳴の剣 状態:オートリフレク
【ソロ 所持品:さざなみの剣 水のリング
行動方針:テリーを倒し、ミレーユを助ける】
【テリー(DQ6) 所持品:クリスタルソード イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼 リフレクトリング
行動方針:自らの力を試す=ゲームに勝利する】
*現在位置(全員共通):レーべの村中央部
363:1/3
04/11/09 22:53:00 6qFtEbXi
これは一体どうした事か。
先程まで感じていた竜王さまの力を感じぬ…
――理由は大体判る。ニンゲン達と戦い、敗れたのだろう…
竜王さまが我等魔物の王であるとはいえ、此処に集められた者も歴戦の戦士達が多いようだ。
現にこの地にはロトの力を複数感じる。竜王さまが敗れる事があっても不思議では無い。
……竜王さまが目覚めたのならばお会いしたかったものだが、それも叶わぬ願いか。
我の目的は潰えた。
生き残る気もない。
後はこの地で死を待つのみ。
364:2/3
04/11/09 22:55:18 6qFtEbXi
「まいったな。まさか支給品がこんなのだなんて…」
イザの袋の中に入っていたのは3本の剣。
1つ、黄金に光り輝く脆そうな剣。
2つ、これぞ騎士剣、といった感じに見えるが、何故か全く切れない剣。
3つ、常識を超える長さを持つ刀、っぽいオモチャ。
どう見てもハズレな武器を掴まされたイザは落胆しながらも海底通路を進み、
そして自分の目の前に何かの影を見つけた。
「あれは…、ドラゴン…!?」
目の前に見えるそれは明らかに魔物。
今までに一度も見た事のない魔物だが、一目でドラゴンだとわかった。
ドラゴンも自分に気付いたのか、こちらを見据えている。
戦闘は避けられないと感じ、イザは金色に輝く(正直役に立ちそうにない)剣を持ち、構えるが。
「ニンゲンよ、我を殺すがよい」
ドラゴンから放たれた言葉は、イザが全く想像していなかったものだった。
「戦う気は無い。我も竜王様と同じく永い眠りに就こう」
その言葉を聞くと、イザは剣をザックに入れ、無防備な状態でドラゴンに近づく。
「何のつもりだ?」
「敵意がない相手から命を取るような真似はしない。それよりも何故殺せだなんて…」
365:3/3
04/11/09 22:57:36 6qFtEbXi
「…我にする事はもう無い。ここで死を待つだけだ」
「なら、僕に協力してくれないかい?」
「……」
どっしりと構えるドラゴンに向かい、イザは語りかける。
「このゲームを抜け出したい。その為にあなたの力を貸して欲しい」
ドラゴンはイザに向かってゆっくりと語りかける。
「このゲームを抜ける、か。
それにはあの強大な力を持った魔女を倒す必要があるのだぞ?」
「だからこそ参加者達が協力する必要があるんだ。殺し合いなんてしている場合じゃない。
皆で力を合わせれば何とかなるはずさ」
――ニンゲンとの協力。竜王さまが何と言うかは判らぬが、それもまた一興かもしれぬな…。
「いいだろう。御前に協力しよう。
我はドルバ、竜王さまに仕えし竜の生き残りだ」
【イザ(DQ6主人公) 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近)
所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
【ドルバ(ドラゴン) 現在位置:海底通路(ナジミの塔への階段付近) 所持品:不明
行動方針:イザに協力する】
366:支給品 1/3
04/11/10 00:34:46 lDK2Wtz0
「ダメや、あきません」
ケット・シーが「開かない」といいたいのか「できない」といいたいのかは、この際どうでもいい。
目の前にある赤い扉がびくともせず、進路の妨げになっているのは事実なのだ。
「鍵穴みたいのがありますから、かぎ使うたら開くんやと思いますけど」
岬の洞窟を奥へ奥へと進み(本人達は出口を探していたのだが)
ようやくたどり着いた先にあったのが、この扉である。
「鍵か。俺の支給品にはなかったなあ」
「リュカさんの支給品て、何やったんです?」
ケット・シーの問いに、リュカは少し渋い顔をして、袋の中から支給品を取り出した。
一つ、竹槍
一つ、お鍋(蓋付き)
一つ、ポケットティッシュ×4
「こりゃまた…」
ケット・シーが素っ頓狂な声を上げるほど、どう見てもそれはハズレ品である。
「ケット・シーのほうはどうなんだい?」
「ボクのにも、鍵はないんやけど…」
こんなハズレ品を見せられた後では気が引けるが、見せないわけにもいくまい。
一つ、正宗
一つ、デスペナルティ
一つ、天使のレオタード
「…アタリ品?」
「せやけど、ボクが装備できるんは、一つもないんや…」
これもある意味ハズレ品なのだろうか…?
367:支給品 2/3
04/11/10 00:36:11 lDK2Wtz0
「ボクが持っといてもしょーがあらしませんから、使えるもんあったらあげましょか?」
ややあって、ケット・シーがそう提案した。
しかし、いくらなんでもリュカが天使のレオタードを着るわけにはいかない。
一応剣である正宗は、セフィロス仕様のため、長すぎて使いこなすことは出来そうにない。
「で、最後のこれは何?」
「銃を知らへんのですか?」
残るデスペナルティは、リュカにとって見たことも聞いたこともない武器である。
概略をケット・シーが説明しても、どうもピンとこない。
「えっと、つまりこの引き金を引けばいいんだね?」
「ちょっとリュカさん!! 人(?)に向けたらいけません!!!!」
説明を聞きながらデスペナルティをいじくるリュカは、
その銃口がケット・シーに向かっていることに気づかなかった。
「え?」
ズキュン――
「あ、危ないやないですか!!!!!」
紙一重で、弾はケット・シーからそれた。
撃たれたほうは冷や汗ものだが、撃ったほうはもっと肝をつぶしている。
「ご、ごめん」
リュカは、何とかその言葉だけを搾り出した。
その時。
ギ、ギギギ――
ケット・シーの後方で、何かが動く音がした。
見れば、行く手を阻んでいた赤い扉が開いているではないか。
もう少し目を凝らせば、扉の鍵が破壊されていることが確認できた。
先ほどの銃弾が、どうやら扉の鍵を壊したようだ。
「……怪我の功名?」
「調子に乗らんといてください!!!」
368:支給品 3/3
04/11/10 00:39:18 lDK2Wtz0
扉を抜けた先は、石造りの立派な建物であった。
二人はとにかく、先に進もうと歩き出した。
「そのデスペナルティ、リュカさんが持っといて下さい」
「いいの?」
「どーせボクは扱えんし。でも、ちゃんと練習するて、約束ですよ?」
そんな確約も交わされたとか。
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ
【ケット・シー 所持品:正宗 天使のレオタード
現在位置 アリアハン城地下牢
行動方針 リュカの家族、及び仲間になってくれそうな人を探す】
369:流血の残像 1/3
04/11/10 02:34:10 MrLyhjdD
レーベ北東の森の中。
三人の男女が、真ん中を向いて円形に座っていた。
ミレーユが去ったことで落ち込むターニアを、ティーダとエアリスが慰める。
二人は明るく振舞っていたが、心の中ではこのゲームに対する憤りが絶えることなく湧いていた。
(この娘は、武器を握ったことも無いだろうに…)
「ごめんなさい…もう、大丈夫」
ターニアの一言も、何処か悲痛な叫びを抑えているように思えた。
それでもその一言をきっかけに、少しずつ会話が始まった。
そして誰が言い出したわけでもないのだが、アイテムを使いやすいように配分した。
「これは何ッスかね?」
ティーダが、ターニアの持っていた理性の種をつまみ上げる。
「わからない。でも…特別な効果がある種だと思う」
エアリスはそう言った。もちろん、確信は無いけれど。
結局それ以上はどうしようもなく、それを他の必要ないアイテムと一緒に袋にしまった。
370:流血の残像 2/3
04/11/10 02:35:39 LW1Sbahm
「あれ、ティーダ君、その腕どうかしたの?」
エアリスが、彼の左腕に、僅かに流れる血を見つけた。
「あ…木の枝かなんかで切ったみたいッス。こんなの放っておいて…」
ティーダはそこまで言うと、ターニアの異変に気づいた。
「あ…血…」
虚ろな声で、ターニアはうめく様に呟く。
―転がる女性の首。飛び散る血。
―剣を濡らして輝いていた、赤い血。
残酷な血の記憶が、無垢な少女を支配する。
「いやぁぁぁっっ!」
ターニアは頭を抱え、大きく横に振り始めた。
まるで、そのままそれをもぎ取ってしまいたいかのように。
「ターニアちゃん!?」
エアリスが両手で彼女の頭を押さえつけようとしたが、何処から湧いたのか、凄い力でその手を振り払う。
「ティーダ君!血を見せちゃダメェェッ!」
エアリスが叫び、はっとしたティーダは腕を流れた血を自らの口で拭い取り、消し去る。
「ターニアちゃん!!」
「いやあぁぁっっ!」
目をぎゅっと閉じ、何も見まいとする。耳を両手でふさぎ、何も聞くまいとする。
脳に残る血の残像だけが彼女を完全に闇へ引き入れようとしていたが…
371:流血の残像 3/3
04/11/10 02:36:29 LW1Sbahm
パァン!
エアリスが少女の頬を引っ叩き、それに反応し少女の心は一瞬間覚醒する。
「怖がるものは何もないから、目を覚まして!」
エアリスの言葉が、少女の耳に届く。
「うぅっ…」
ターニアはゆっくりと目を開ける。
赤い血は何処にも見えない。それが、彼女の心を正常に戻した。
「ご…ごめんなさい、私…」
ターニアは、震える声で謝った。
だが、それは暫く彼女の心に居座るだろう。
―血の、恐怖は。
それから彼女を救えないことが、今のティーダやエアリスにとって一番の苦痛だった。
【ターニア 所持品:微笑みの杖 行動方針:兄(イザ)に会う】
【エアリス 所持品:ふきとばしの杖〔4〕 行動方針:ターニアを治したい】
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 ゴディアスの剣 麦わら帽子 理性の種 行動方針:同上】
※ターニアは血を見ると錯乱状態に陥る可能性あり。
372:補足
04/11/10 02:37:28 LW1Sbahm
現在位置:レーベ北東の森の中
373:鍛冶屋と伝説のボロい剣1/4
04/11/10 23:00:37 18WbXnFf
「ちっくしょー…あたいがどうしてこんな場所に居るんだよ…」
一見男の言うセリフだが、言っているのは女性、ロンガデゼオではヤクザも避けてとおるという力の持ち主、鍛冶屋サリィである。
彼女は、何故こんなゲームに巻き込まれたのかが依然不思議でたまらなかった。
自分はイザにラミアスの剣を渡し、それから平凡な日々を送っていたはずなのに今ここに居る。
どうかしているとしか思えない…とにかく自分から戦いは仕掛けない、そう思い支給品の鍛冶セットと聖なる気を放つ鎧をザックに入れ、歩き始めた。
目の前に火球が迫ってきたのはその後すぐだった。
(―やっべぇ!もうゲームに乗ったやつがもうそばに居たのかよ!あの速度なら避けても当たっちまう!ちくしょうここで死ぬのかよ!)
彼女が諦め、目を閉じたその時だった。
「うっぎゃあああ!!!!」
ん?と思い目を開けてみると自分の目前で男が燃えている。
その男はのた打ち回り、その後動かなくなった。
「ちくしょう…やる気なら、こっちもやってやろうじゃねぇか!」
彼女はそう意気込み、支給品の鍛冶セットからとんかちを取り出した。
しかし、そのとんかちは只のとんかちではなかったのだ、あのダイヤモンドより硬い浮遊石を砕く事ができる、とんかちだという事を。
374:鍛冶屋と伝説のボロい剣2/4
04/11/10 23:02:17 18WbXnFf
「ちくしょう…やっぱり魔法は厄介だぜ…」
ギルガメッシュは目前の魔法衣の女性に向かいチッと舌打ちをした。
自分の支給品はどう考えてもはずれとしか思えない剣と銃とサンダル。
しかしあっちには魔力を増強させるワンダーワンドがある。
得体の知れない奴、わるぼうに援護してもらってるとは言い、戦力的にきつい。
「おい、なんか素手で使えて簡単にできるお手軽な技知らないか?」
ギルガメッシュがわるぼうにそう問い掛ける。
精神統一終えていたわるぼうがギルガメッシュに答える。
「そうだな…おっ、ちょうどいいのがあるな、俺の真似をしてみろ!」
するとわるぼうは前へ突き進んだ、メラミで落とそうとするムースだが、わるぼうは軽く避ける。
そして横からギルガメッシュもわるぼうと同じように突き進んでくる。
イオラで纏めて吹き飛ばそうと思ったのが彼女の判断ミスだった。
イオラを詠唱するより早く、わるぼうが突っ込んで来たからだ。
そして、ムースに強烈な殴りの連打をかます、ワンドで防いだものの続くギルガメッシュの攻撃には流石に数発喰らってしまった。
後ろに大きく吹き飛ぶムース、血を多少吐きながらも、その口をにやりと歪める。
彼女が詠唱していたのはイオラではなく、イオナズンだった、だが出てきたのはそれを超えるものだった。
「おいっ!避けろ!巻き込まれるぞ!」
ギルガメッシュはその呪文…いや魔法を知っていた、極大の爆発を瞬時に繰り出す魔法、フレア。
最初は小さな火の玉のような物だがそれはやがて膨らみ一気に爆発する。
わるぼうはその小さな玉を避けようとしなかったからだ、わるぼうを突き飛ばそうとし、飛び込むも二人ともフレアを諸に食らってしまう。
「フフフ…やはりこのロッドは便利ですね…さて完全なる止めを刺しましょうか…」
彼女はイオナズンの詠唱へと、再び入った。
375:鍛冶屋と伝説のボロい剣3/4
04/11/10 23:04:11 18WbXnFf
「さっきの呪文は…あいつが放ったんだな!」
自分を攻撃してきた敵を確認すると、とんかちを両手で握り、その標的へと全力で走り向かった。
詠唱に全精神をかけていたムースが、サリィに気がついたのは背後に迫られてからだった。
一閃、サリィのとんかちがムースの脳天を直撃する。
気絶させるほどの力しか込めなかったサリィだが、そのとんかちには人の頭を砕き壊すには、十分な力だった。
ムースの頭は砕け、頭から血がだくだくと流れる。
「……で……わけに……かな……き……らない…………」
細々と聞こえる声、だがそれはどんどん小さくなり、そして聞こえなくなった。
人を殺した…このとんかちで…付いた血を拭い、彼女は前を向いた。
「お、おい!大丈夫かよ!」
サリィは前で倒れている剣士に声をかける。
「う…うう…ん?奴は?」
多少傷があるも起き上がるギルガメッシュ、そのタフさは流石というべきだろう。
自分の目の前の落ち込む少女の目を見、彼は現状を把握する。
「あたいは…呪文をいきなり撃たれたから、その反撃に…でも殺すつもりは…」
「それはしょうがねぇぜ、現に奴はゲームに乗ってたし、殺すのを躊躇ってたらこのゲームじゃ生き残れないぜ」
サリィを慰めるように、ギルガメッシュはそう言った。
「おっと、忘れてた!おい!大丈夫かよ!」
ギルガメッシュはわるぼうの元に駆けより、彼の体を持つ。
すると、わるぼうがいきなり起き上がり、ギルガメッシュの顔を蹴り上げた。
「フン!この俺様があんな呪文ごときで、死ぬかっての!」
「んのヤロォ…!」
いつものギルガメッシュならかなり怒っていただろう、でもなぜか怒る気にはなれなかった。
「まぁ…嬉しいぜ、生きてて」
そんな唐突な言葉に、わるぼうは顔を赤らめドギマギする。
「な、なんだよいきなりそんな事いいやがって…でも俺もオマエが庇ってくれた時、嬉しかったぜ」
滅多に笑顔を見せないわるぼうが笑った、そして二人は声を出して笑った。
376:鍛冶屋と伝説のボロい剣4/4
04/11/10 23:05:41 18WbXnFf
一方、サリィはそんな二人をよそに、地面に捨てられたボロい剣に心を奪われていた。
この剣は…何か特別な気配を感じる、そう、ラミアスの剣にも勝らずとも劣らない…。
彼女はボロい剣を取り、鍛冶セットを取り出し、剣を打ち直し始めた。
いきなり目の前で何かをする少女に、ギルガメッシュは問い掛ける。
「なぁ、あんた何やってんだ?」
「見てわからねぇのか?この剣を鍛えなおしてんだよっ」
そうぶっきらぼうに言い放つと、彼女は剣を見て、とんかちを取り始めた。
「打ち直すにゃ打ち直せるけどよ…強力な火とかなりの時間がいるぜ…」
火…その言葉にギルガメッシュは引っかかった、そうあいつ、わるぼうなら火を出せるんじゃないだろうかと。
チラリとわるぼうの方を見るがやはり目をそらしてこちらを見てくれない…と思いきや…。
「ベギラゴン!」
そう唐突に響く声、燃え盛る火炎。わるぼうはそっぽを向いていたがこの呪文が彼であることは明確だった。
「これだけの炎がありゃ十分だな…うっし!久々に腕振るうぜ!」
彼女の威勢のいい声と共に、彼女の久しぶりの鍛冶が、始まった。
「そうだ…この銃は…鍛えなおせないか?」
ギルガメッシュがそう問いかけたが、それは出来ないという短い返事で分かった。
使えないし、鍛えなおせない、ならばそんなものには用は無い、ギルガメッシュは、その銃を空高く放り投げた。
「イテッ!」
その銃はある王にぶつかった。
「ったく…誰だ、こんなもの投げるのは」
エドガーは空から降ってきた銃を拾い上げ、眺めてみた、全く見たことの無い武器、だが作りはなんとなく分かった。
「なるほどな、そういう作りになってるわけか…ちょっと改造してみるか、工具もちょうどあるし」
彼の支給品は工具の一式と大きなドラムだった、ドラムは使い方が分からなかったものの、工具はとてもありがたかった。
エドガーは種子島銃を、分解し改造し始めた。
377:所持品
04/11/10 23:06:46 18WbXnFf
【サリィ 所持品:鍛冶セット ボロい剣(伝説系の剣) 光の鎧(装備不可)
現在地:レーベ北の平原
第一行動方針:不思議な力を放つ剣を鍛えなおす】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル
現在地:レーベ北の平原
第一行動方針:剣が鍛えられあげるのを待つ】
【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
現在地:レーベ北の平原
第一行動方針:????】
【エドガー 現在位置:アリアハンから少し北の平原
所持品:ひそひ草 工具セット 戦いのドラム 種子島銃
第一行動方針:空から降ってきた未知の武器を改造する】
【ムース 死亡 残り117人】
378:そして伝説の後1/2
04/11/11 00:30:21 Phro3Y+f
殺し合いというには似合わない風景がそこにあった。
そよ風が髪を揺らす。花の香がかすかに漂う地。
そこに、彼はいた。
黒い髪。正義に満ちた瞳。何故彼が「勇者」と呼ばれるのか、それを体現する姿。
彼の名はアルス。かつて闇に囚われた世界を救った勇者である。
彼はすぐに支給品を確認した後、真っ直ぐ西へと歩いていた。
彼の支給品は番傘とダーツがいくつか、そしてドラゴンテイル。
自衛への転用にとしては非常に使える物が一つあったことが、彼を安心させた。
だが、彼には当初から考えていたことがあった。
「やっぱり僕は、人を殺したくは無い」
―――当然だった。
人の命を自ら絶ちに行くなどと、自分が出来るはずも無かった。
出来たとしても、その相手は最高に悪事を働いた相手にのみだろう。
殺し合いをゲームなどと称するあの魔女に、アルスは憤慨していた。
379:そして伝説の後2/2
04/11/11 00:37:19 Phro3Y+f
怒りを覚えた足は速い。
怒りを覚えた意思は固い。
正義の旗を振りかざそうとする足は速い。
正義の旗を振りかざそうとする意思は固い。
「まずは信用できる人間を探して…それから方法を探ろう。
かつての仲間と戦わずに済む方法…。そして仲間と共に殺し合いを止められる方法を…」
人を悲しませないため、
人を苦しませないため、
人が人の証を棄てる道を潰すため、
勇者の戦いが始まった。
【アルス(DQ3勇者) 現在位置:アリアハン西平原
所持品: ドラゴンテイル 番傘 ダーツの矢(いくつか)
行動方針:信頼できる人間を探す(まずは西へ真っ直ぐ進む)】
380:幼子との会話 1/2
04/11/11 05:43:37 Zk+Pxv46
「ゲホッ…ゲホッ」
「だ、だいじょうぶ?」
「………」
咳き込み、血を吐くピサロ。そんなピサロの顔を覗き込み、心配の声をかけるビビだが変わらず返事は無い。
ピサロはあれからも変わらず冷たい空気を纏っている。ずっと黙ったままだ。
きっとこの人は、あまり人に心配されるのがすきじゃないんじゃないかな、とビビは思ったが、
だからといって目の前で血を吐かれて心配しないなんて無理だ。
…はやく、回復魔法がつかえるといいのに。見ていてとってもつらそうで、なんだかそわそわしてしまう。
「ねえ、魔法がつかいにくいのはなおるのかな?」
ビビの質問に、ピサロはふと顔を上げる。エリア達と遭遇して以来、初めて心配以外の声をかけられた。
「…先程も言ったが…この大陸全体に魔法を妨害する働きがあるようでな。
魔力が高めにくいのはもちろん怪我の所為もあるだろうが…呪文を使いにくいのはおそらく私だけではないはずだ」
「でも、さっき…」
ピサロの答えに、ビビは少し悲しそうな目でさらに疑問を投げかける。
それを見てピサロは、ビビが先程の人間共に使った魔法のことを言っているのだと解った。
「そうだな…あの程度の攻撃魔法なら特に問題なく使えた…妨害されているのは回復魔法だけなのかもしれん」
「…回復魔法だけ?」
「ああ。そう考えれば合点がいくだろう?」
攻撃魔法は通常通りに使え、回復魔法の力は制限される。
つまりここでは、攻撃は全力で行えるが、その結果として怪我を負ったとしても中々回復することが出来ないという事だ。
そしてそれは、少なからず死亡者の増加に繋がっていくだろう。
おそらくは、ゲームを盛り上げるための主催者の意図か。
――それとも、他に何かあるのか…?それは今は解らないが。
「…えっと、よくわからないけど、攻撃はできるけど、けがはなおせない…?」
ビビが不安そうに頭をひねる。よくわからないと言ってはいるが、何となくなら理解はしているのだろう。
ビビにとっての戦いは、結果たとえ傷ついてたとしてもその傷は仲間が癒して、支えてくれるものだった。
――それができなかったら、けがはなおらなくて死んでしまうんじゃないの?
381:幼子との会話 2/2
04/11/11 05:44:51 Zk+Pxv46
「…当然といえば当然だな…これはそういうゲームだ…」
「そんなの、ひどい」
ビビが首を横に振る。
「ねえ、こんなゲームしなくていいよ!ぼく、友達が死ぬのはぜったいやだ!」
「………」
ピサロは何も答えない。ただ、悲しそうなビビを見つめるだけだ。
この幼子が必死で訴えている事は、解らないでも無い。
だが、この状況の中、ゲームを「しなくていい」というのは、とても難しいことに思える。
うつむいているビビを見やりながら、ピサロはまた、目を閉じた。
…ピサロはビビの言葉を聞いて、ふと、ロザリーは今どうしているだろうかと思った。
【ピサロ 現在位置:レーベ東の森中央付近 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 現在位置:同上 所持品:不明 行動方針:ピサロと共にいる】
382:尋ね人1/2
04/11/11 14:48:06 I1oSkJhK
とん、とん、とん。
突然の足音にパウロはギョッとして身をすくめた。誰かが部屋に
入ってきたようだ。
足音の主ーロックを探しにきたセリスだったのだがー彼女は入ってすぐに、
人の気配に気づいた。しかし、姿は見えない。
「誰かいるの?」
誰かいる事を承知で、セリスは気配の主に呼びかけた。
もとより彼女はゲームに乗る気は無い。だがベッドの下に隠れている
パウロには、声の主が若い女性であるということしかわからない。
(出て行ったら殺されるのかも)
そう思うと背中を冷や汗が伝う。パウロはますます体をすくめた。
…それから五分。
その間セリスは見えざる気配の主に呼びかけ続け、パウロは相変わらず
ベッドの下ですくんだまま。
いいかげん苛立ってきたセリスの一言が、状況に決定的な変化をもたらした。
383:尋ね人2/2
04/11/11 15:04:35 I1oSkJhK
「いい加減にしなさい!もし戦う気でいるなら、容赦しないわよ!」
怯えきっていたパウロの精神は、
「もし戦う気でいるなら」
をすっ飛ばして、
「容赦しない」
という言葉をしか認識しなかった。完全なパニックに陥ったパウロはー
「う、うわぁぁぁぁっ!」
雄叫びを上げてベッドの下から飛び出すと、セリスに向かって突進した!
「!?」
驚いたセリスは反射的に持っていた樫の杖で、パウロの側頭部を
したたかにひっぱたいた。勿論パウロは失神。床に伸びてしまった。
「あらら…やりすぎたかしら」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったパウロの顔を見て、セリスは苦笑をもらす。
「よっぽど怖かったのね…よいしょっと!」
パウロをベッドに寝かせたセリスは、彼の頭に出来た大きなコブを
冷やすため、水とタオルを探した。
【パウロ(気絶)所持品:破壊の剣
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階、ベッドの上
行動方針:ロランとムースを探す。】
【セリス 生存確認 所持品:樫の杖 シャナクの巻物
現在位置:アリアハン城下町東側の民家二階
第一行動方針:パウロを介抱する
第二行動方針:ロックを探す】
384:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/11/11 19:28:54 fEfxx+ks
いざないの洞窟の西側、山岳地帯。
地面に並べた支給品を見て、思わず女性―ミネアは苦笑する。
かぶれば頭に棘が刺さりそうな冠、死に逝った者の怨念が作り出した盾、邪悪な悪魔の尻尾。
どう考えても、どれかが自分の身を守ってくれる可能性などゼロに近い。
―せめて護身用の何かが欲しい、と思うのだが、彼女の持ち物はその他には何もない。
「呪われてるのかしら、私…」
笑いも既に乾ききって、溜息が一つ出た。
ドォォォン……
不意に、くぐもった様な爆音が聞こえた。
ミネアの、遥か前方のようだ。
「…?」
一寸首を傾げると、その方向に目を凝らす。
「爆発…?」
音でそう判断するも、視界には何も映らない。
ドドォォォン……
もう一度、爆音が聞こえる。
「何かあったのかしら…?」
ミネアの爆音に対する若干の恐怖は、彼女の心の大勢を占める好奇心の中で、消えた。
呪われた支給品を一応ザックにしまい、彼女は爆発があったと思われる方向へ歩き出した。
…爆発を起こした主が、自分より更に呪われているという可能性には、彼女は未だ辿り着いていなかった。
【ミネア 所持品:いばらの冠 嘆きの盾 悪魔の尻尾 行動方針:爆発現場(ハッサン)の様子を見る
現在位置:いざないの洞窟西の山岳地帯(ハッサンより若干南)】
385:罪人
04/11/11 21:41:49 Zk+Pxv46
俺は罪を負った。
いや、ここに来る前からずっと、それは裏切りという名の――
何故俺は、立ち上がらなかった?
目の前で実の妹が殺され、親友が叫んでいるというのに。
それは…俺が裏切り者だからだ。
俺は力に魅せられた。そして捨てた、掛け替えの無いものを。
決定的な絆の断ち切れはきっと、二度と治る事は無い。
断ち切れたものを、溝を越えて助けることは出来ない。
俺はただ、遠く離れたところから傍観するのみだ。
それで良いのか?いや、良い筈がない。
そんな事は判っている…だがそれでも、もう取り返しのつかない事だって、ある。
空は変わらず高く、青い。
まるで、俺を置いていくかのように。
マリアはもうここにはいない。ならばあの、青い空の向こうにいるのだろうか。
フリオニール、お前は…どうしている?マリアを失って、それでもなお…生きようとしているのか?
俺はただ、罪を裁かれるのを待つのみの存在だ。例えそれが、逃げだったとしても。
フリオニール…俺はお前に会うことは出来ない。ただ、それでも俺はずっとお前の――
【レオンハルト 現在位置:レーベ西の平原 所持品:ロングソード・消え去り草 行動方針:死を待つ】
386:どこかに残るなにか 1/6
04/11/11 22:31:42 W23z0RyE
―なぜ、自分は死のうとしなかったのだろう。
なぜ、この女性は自分を助け、剣士を止めようとしたのだろう。
数時間前のフリオニールなら、きっと即答できたはずだ。
けれども今の彼にはわからない。それを哀しいとすら思えない。そういった情動を感じる『何か』が、凍り付いてしまった。
「……」
ただ、頭の中にある記憶と経験が。
そしてほんの少しだけ凍らずに残された『何か』が告げる。
フリオニールの身体は、それに従った。
眠るミレーユを揺さぶり、簡単には目覚めそうにないとわかると、彼女の身体を担いで気付かれぬよう戦場を離れる。飛ばされた盾を拾うことも忘れない。
そしてしばらく歩いていると、突然目の前の建物から一人の男が飛び出した。
「おい、大丈夫か!?」
バンダナを巻いた男―ロックが、フリオニールに話し掛ける。
フリオニールは、背中に持たれかかった女性を見て、淡々と言った。
「……意識がない。魔法のせいだ。起こそうとしたが、起きない」
機械的に言葉を紡いだ彼に、ロックは少しばかり眉を潜めたが、すぐに気を取り直す。
「わかった。その人と一緒に、ここでじっとしていなよ。
あと、よかったら盾を貸してくれないか?」
フリオニールはあっさりうなずいた。ロックは白く輝く盾を受け取り、走り出す。
(仕掛けるなら今しかない)
もし、緑髪の二人組が負ければ、青い服の男は自分達を襲うはずだ。
そうなれば勝ち目はゼロになる。自分には武器がないし、あの二人はどう見ても戦える状態ではない。
逃げるという選択肢は考えなかった。
仮に考えついたとしても、彼の過去が、それ以上に彼自身の矜持が許さなかっただろう。
(くそっ。この盾、結構重いな)
―ロックは知りようもないことだが、本来ならば天空の盾は常人には扱えない。
選ばれぬ者には、『結構重い』どころか持ち上げることすら難しいはずだ。
けれども、主の手を離れた今の間だけ、気紛れに力を貸したのか。
あるいは勇者を助けるため、ロックにその身を委ねたのか。答えは、盾にしかわからない。
(これ一つでどこまで戦えるか……やれるところまでやってやる!)
387:どこかに残るなにか 2/6
04/11/11 22:37:07 W23z0RyE
二対一でありながら、戦況は五分五分だった。いや、どちらかといえばソロ達の方が不利だったかもしれない。
「まさかこの程度で全力とか言わないだろうな?」
まだ余力を残しているのだろう。テリーは嘲りながらも、仕掛けてくる。
「二人がかりのハンデ戦なんだぜ、もう少し真面目にかかってこいよ」
(どこがハンデ戦だよ、呪文を跳ね返せるって時点で反則だろ)
ヘンリーは小さく舌打ちした。
本来、彼の戦闘スタイルは、呪文で敵を撹乱しその隙を突くというものだ。
純粋に剣の腕前だけでは、本職相手に渡り合えるわけがない。
ソロは、自分よりは遥かに高みにいる。だが、それでも相手の腕に及ばない。
……せめて、マヌーサでも効けば一気に戦況を覆せるのだが。
そう思った時、ヘンリーの視界に奇妙な物が映った。
物陰で隙をうかがうバンダナを巻いた男。その手に握られているのは―
(天空の盾!?)
彼が知る限り、親友の息子レックスしか装備できぬはずの盾。
それを誰とも知らぬ若い男が、身に付けている。
ソロも、男の姿に気付いた。一瞬だけ視線が交錯する。
その目に宿る輝きが教えた。彼は、自分たちの味方だと。
(ヘンリーさん……)
テリーに聞こえぬよう、小さく声をかけた。
ヘンリーがうなずいたのを確かめ、ソロは一気に走り出す。
テリーは唇の端を吊り上げながら、向かえ討たんとばかりに駆けた。