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「中国崩壊」論は、単なる願望にすぎない
「中国崩壊」。これは、現在、日本人が好むキャッチフレーズのようである。このようなタイトルを
付けた本や雑誌が街にあふれている。多くの日本人が中国崩壊を望んでいるために、本や雑誌は人々の
歓心を買おうとしているのだろう。だが、これは大変に危険なことだ。それは、国際情勢を冷静に分析
するのではなく、自己の願望に基づいて判断することにつながるからである。
戦前、日本人は中国の実力を過小評価していた。中国軍は弱いと思い込んでしまった。日本軍が一撃
すれば、すぐに降伏する。昭和12年に盧溝橋で日中が衝突したとき、日本人は朝野を挙げてそう考えた。
「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」、これは当時、よく使われた言葉だそうだ。中国は生意気だから、一発
くらわす必要がある。一発殴れば、日本の言い分を聞くはずだ。そんな思いが、小さないざこざにすぎ
なかった盧溝橋事件を大戦争に拡大してしまった。
戦争責任は軍部にあるとされるが、盧溝橋事件が起きた当初、軍部は事件の拡大に消極的であったと
される。その一方で政治家が強気だった。そして政治家の背後に民衆がいた。その民衆を煽っていたのが
当時の新聞であった。
昨今の「中国崩壊」を謳った本や雑誌を見るにつけ、日本人はあの戦争を反省していないなと思ってしま
う。ただ、筆者は声高に反戦を叫ぶデモを行えと言っているわけではない。もっと中国に謝