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「私が現役時代には、新聞の株価欄を見ていたら、上司から怒られたもの。それが、今や日銀の金融政策の
優先順位は株価にあるように見える」
こう漏らすのは、ある日銀OBだ。急激に進む円安は、9月19日の東京外為市場で6年ぶりに1ドル=109円台に突入。
株価は円安を好感して暴騰し、日経平均株価は、1万6321円と、これも6年10カ月ぶりの高値で引けた。
円安の背景には、アメリカの利上げ観測があるが、それを加速させたのが、黒田東彦日銀総裁だ。
9月4日には、「ドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスということはないと思っています」
と記者会見で円安容認発言。
また11日は、安倍晋三首相と会談した後、「2％の物価目標達成に困難をきたせば、ちゅうちょなく追加緩和だろうと、
何だろうと金融政策の調整を行う」と断言。追加緩和を示唆して、為替市場では円安が、株式市場では株高が進んだ。
市場では1ドル=110円の壁を超え、120円に向けて円安が進むとの見方が有力だ。
もう1つ、関係者を驚かせたのが、16日に大阪市内で開催された講演だ。黒田総裁は4月からの消費増税の影響について、
「(消費増税で)財政や社会保障制度の持続性に対する信認を高めることにより、家計の支出行動に対するマイナスの
影響をある程度減殺する力も働くと考えられる」と語り、参加者の不評を買った。
つまり、消費税の増税が、消費にプラスに働く可能性を示唆したのだ。ある関西の財界幹部は「消費増税の与える影響は、
今年4―6月期の消費の落ち込みを見れば明らか。実質賃金が落ちているのに、消費増税で国民が安心して
お金を使うというのは本末転倒だ」と憤慨する。
ある市場関係者は、なりふり構わぬ発言に、黒田総裁の焦りを感じると言う。
「想定したように物価が上昇しないばかりか、消費増税で景気も冷え込んでいる。実体経済が強くない今、
円安誘導で株価だけでも維持したいのではないか」
前出の日銀OBなどから「長い目で見れば中央銀行の信認を失う。最近の黒田さんは大丈夫か」と懸念の声が
高まる黒田総裁。為替相場に景気動向と正念場が続きそうだ。
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