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今年で4回目となる国内最大規模の国際芸術祭、あいちトリエンナーレが8月1日(木)~10月14日(月)(祝)の日程で名古屋、豊田両市を会場に開かれる。テーマは「情の時代」で、人々が怒りっぽくなっている世界の現実に、アートの力で迫る。
芸術監督でジャーナリストの津田大介さんに聞いた。
■「情の時代」 自ら作家選び
「やりたいことをかなり自由にやらせてもらっています。ほかの芸術祭と違って、あいちは事務局50~60人が全て県職員。普通はイベント制作会社や広告会社に投げることが多いはず。県職員の毎回3分の2が入れ替わる分、芸術監督に与えられている権限は大きい」歴代の芸術監督は、初代が詩人で美術評論家の建畠晢(たてはたあきら)・国立国際美術館長(当時)、2代目が五十嵐太郎・東北大大学院教授(建築評論)、3代目が港千尋(みなとちひろ)・多摩美大教授(写真評論)で、4代目のバトンを引き継いだ。
今、「アーティストとジャーナリズムの距離は近い」との思いが確信に変わりつつあるという。
「例えば、今回参加するジェームズ・ブライドル(英国生まれ)は、ジャーナリストでありながら現代美術作品を作る。CIR(調査報道センター、米国)は、報道を多くの人に届けるためにアニメを作ったり、ヒップホップなどの表現を使う。(劇作家で)ジャーナリストのミロ・ラウは、演劇でドキュメンタリーを上演する。作家たちは、どんどん取材やリサーチをして作品を作る。そこは私たちジャーナリストと同じです」
こんな顔ぶれのアーティストからは、学芸員では対応しにくい要望も寄せられる。
そんなときは、かつて年間3千枚もの名刺を配って、がむしゃらに取材して培った自身の人脈が生きる。
情報源となる人を紹介したり、取材先となった交通刑務所へ一緒に足を運んだことも。
約80組の作家選びは当初、学芸員に任せるつもりだった。
ところが、上がってきたリストを見て「ピンとこない。これはまずい」と方針転換。自ら決定権を握った。
「僕はそういう(人の権利を奪う)タイプの人間ではありません。でも、そうしないと『情の時代』というテーマにこだわった内容にならないと思った。仕事は5倍くらい大変になったが、その方針のおかげで(参加作家の男女比を半々とする)ジェンダー平等も達成できました」
美術制作予算は約2億円。それでもアーティストに自由に制作してもらうには足りず、自ら企業を回り協賛金を集めている。
「(自動車メーカー)ボルボには200万円出してもらうなど、それなりに集まってきていますが、まだ足りない。これからも回ります」
意外にも、苦戦したのは広報活動。
地域イベントとみなされ、新聞の全国紙がなかなか取り上げてくれなかった。
「それなら『日本初』を目玉に、とジェンダー平等に取り組んだ。また、まず影響力のあるネットメディアに個別にインタビュー取材をしてもらい、話題になったところで、全国紙が後追いをしてくれた。そこは結構、仕掛けました」。自らのツイッターのフォロワーが「150万人くらい」いることにも助けられた。
瀬戸内国際芸術祭など各地で芸術祭を仕掛けているアートディレクター北川フラムさんが「心の師匠」だ。
「日本では芸術祭が乱立していて食傷気味だ―などの声があることに、北川さんが怒っています。『これだけ芸術祭があってもカラーが違うというのは、成熟したということ。乱立したという人の説得力はだんだん無くなるよ』と。それは僕も感じています」
芸術祭の楽しさの半分くらいはまちの魅力―が持論。
「その点、札幌(国際芸術祭2020)が冬にやるというのは素晴らしい。呼ばれたら、いつでも手伝います」(編集委員 土屋孝浩)
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> 約80組の作家選びは当初、学芸員に任せるつもりだった。
> ところが、上がってきたリストを見て「ピンとこない。これはまずい」と方針転換。自ら決定権を握った。
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