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前文略
「日本の報復」に期待する保守
韓国の通貨危機は国内の権力闘争の武器にもなる。韓国の保守派から「いつ、韓国に対し報復措置をとるのか」と聞かれる日本人が相次ぐ。それも「不安そうに」ではない。「期待感を込めて」である。
日本の報復により韓国経済が混乱に陥れば、それをテコに左派政権を糾弾できる、との計算である。前の朴槿恵(パク・クネ)政権の大統領から大幹部に至るまで牢獄に送られた保守にとって「通貨危機」は最高の反撃材料となる。
ちなみに、1997年の通貨危機により「保守の失政」への怒りが高まった結果、同年末の大統領選挙では史上初の左派政権、金大中(キム・デジュン)大統領が誕生した。
では、文在寅政権は通貨危機を本気で阻止するのだろうか。ドルを借りるには米国や日本に頭を下げる必要がある。当然、米国は融和的な対北朝鮮政策の修正を求めるであろう。その際、文在寅大統領が自国経済のために盟友、金正恩(キム・ジョンウン)委員長を裏切るかは疑問だ。
成長率がマイナスに落ち込むなど、あらゆる経済指標が悪化しているというのに5月9日、就任2周年の会見で大統領は「G20(20カ国・地域)やOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、韓国はかなりの高成長をした」と臆面もなく語っているのだ。
通貨危機で「ベネズエラ化」に油
いくらなんでもそこまではやらないだろう―と考える日本人が多いに違いない。だが、韓国の党争の激しさは日本人の想像を絶する。相手を倒すためなら何でもするのが韓国人だ。
ちゃんと伏線も張られている。2018年11月28日に封切られた「国家不渡りの日」という題名の映画だ。初めの1週間で157万人が見たほどにヒットした。
ひとことで言えば「米国のために通貨危機に陥り、財閥一人勝ちの時代が始まって庶民が今、苦しんでいる」と訴える映画だ。韓国では映画が世論を誘導する。政治勢力は国民の感情を揺さぶる映画を作って政敵を倒そうとする。
もちろん親米保守は、この映画に対し反発。保守系紙の朝鮮日報は「内容のいい加減さ」を訴える記事を掲載した。最後の局面では米国は韓国にドルを貸してやらなかったが、そもそもの原因となった外貨管理に失敗したのは韓国自身なのである。
韓国の「通貨危機」がどこまで発展するかはまだ分からない。だが、それが親米保守と親北左派の激突を誘うのは確実だ。それでなくとも、両派の最終戦争が始まろうとしていたのだから(デイリー新潮「文在寅で進む韓国の『ベネズエラ化』、反米派と親米派の対立で遂に始まる“最終戦争”」参照)。
鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
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