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「主人と結婚出来て幸せ」
日の出の勢いだった森友学園があっという間に頓挫した。2017年7月31日に大阪地検特捜部に逮捕された諄子さんは現在「被告」の身だ。おそらく人生観も人を見る目も変わったことだろう。そうした著者の思いを四つの視点から紹介したいと思う。
まずは勾留中も評価が変わらなかった、あるいは評価が上がった人たちについて。トップは泰典さんだ。「主人」とか「お父さん」という呼び方で再三登場する。「主人の悪口を言う人はいない」「ずっと変わらぬ主人」「主人の優しさ」「主人と結婚できて幸せ」などなど。
17年11月13日。公判前整理手続きのため、逮捕から約3か月ぶりに法廷でちらっと二人は顔をあわせた。「主人の眼光がいつもと違って鋭く、私は思わず涙が溢れました」。先に入廷していた泰典さんが、弁護士に、「家内と手は握れますか」とたずねていたことを知り、また涙が出そうになる。
つづいて信頼感が揺るがないのが「生長の家」。夫妻はともに信者だ。泰典さんは学生時代、「教祖」の運転手をしていたことがあったという。
そして意外にも評価が高まったのが朝日新聞。森友問題は同紙のスクープから始まったのだが、諄子さんは拘置所で回覧する新聞として、朝日を選んだ。籠池家ではずっと産経か読売だったし、活動していた「日本会議」では「朝日は絶対に読んではいけない」とも言われていたのに・・・。拘置所で読み比べてみると、「やっぱり朝日が一番いいです」。樹木希林さんの連載などを熟読したことが記されている。
このほか高評価の人物として前川喜平・元文科省事務次官、貴乃花など。書籍では東京新聞の望月衣塑子さんと自由党の森ゆうこさんの共著『追及力 権力の暴走を食い止める』(光文社)や、鴻上尚史さんが特攻隊の実像を書いた
(講談社)など何冊も挙げられている。
なぜ土地が8億円も値引きされたのか
一方、評価を下げた人も多い。これが二つ目のポイント。代表は安倍首相だ。しばしば登場するが、良い評価は一つもない。諄子さんは、森友問題がなぜこんなに騒がれることになったかを振り返り、それは17年2月の安倍首相の国会答弁から始まるとみる。「私や妻が関係していたということになれば・・・総理大臣も国会議員もやめる」。この首相答弁によって、佐川理財局長ら政府関係者が嘘に嘘を重ねざるを得なくなった、と断言する。
「なぜ、土地が8億円も値引きされたのでしょうか。(首相夫人の)昭恵さんの秘書役の谷査恵子さんが何度も財務省に問い合わせをしてくださったからではありませんか。8億円の値引きなど、普通はありえないですよ」
昭恵さんへの思いはちょっと複雑だ。昭恵さんが「安倍首相から森友に100万円の寄付」があったことをFBで否定したという情報については、「昭恵さんの口からは語られていないように思う」と半信半疑。そして、こんなことも記している。「昭恵さんは、私のことは好きです。それだけは、私は自信があります」。逮捕前、親密だったころの話として、「昭恵さんは毎日お酒が入らないとだめらしく」と振り返り、酔った昭恵さんから諄子さんの携帯に電話があったことなども紹介している。
このほか、評価を下げたり幻滅したりした人として、稲田朋美・元防衛大臣、松井一郎・大阪府知事、青山繁晴・参議院議員、葛西敬之・JR東海名誉会長、曽野綾子さん、日本会議、産経新聞などが出てくる。
『徹底検証「森友・加計事件』を書いたジャーナリスト、小川榮太郎さんも登場する。朝日新聞を厳しく批判する立場の人だ。昭恵さんから紹介され、逮捕前に会うことをすすめられた。小川さんからメールや電話があったが、会わなかった。電話にひとこと、「昭恵さんに裏切られた気がする」とだけ答えた。ところが本は出版された。諄子さんは「朝日新聞も明確な根拠がないままに、捏造だ、報道犯罪だと糾弾されてはたまらないでしょう」と書いている。
「人質司法」の現実に直面
三つ目のポイントとして、本書が何度も指摘するのは、長期勾留の不当性、「人権無視」の実態だ。これは日産のゴーン元会長の主張とも重なる。
2につづく
J-CAST
2019/1/30
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