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韓国海軍の駆逐艦が石川県・能登半島沖で海上自衛隊P1哨戒機に火器管制用レーダーを照射した問題。防衛省は「一定時間継続して複数回照射された」と声明を出し不測の事態を招きかねないと主張、韓国側の「哨戒機には一切照射していない」との言い分に不満を募らせている。これに対して航空自衛隊トップ、元航空幕僚長の田母神俊雄氏がツイッターで「全く危険でない」「大騒ぎしなくてよい」と政府や自衛隊の見解とは違う「異論」を発信、注目を集めている。これは一体どういうことなのだろうか。(共同通信=柴田友明)
「全く危険でない」
岩屋毅防衛相が「極めて遺憾で、韓国側に再発防止を強く求める」と記者会見したのは照射問題が起きた翌日の12月21日。同じ日に田母神氏は「日本政府が危険だということで韓国に抗議したという。全く危険ではない」とつぶやいた。さらに「各国の軍が訓練で火器管制レーダーの電波を空間に照射する。軍用機はレーダー警戒装置を持っているから電波照射を受けるとロックオンされた警報音が出る」「戦時であれば直ちにチャフやフレアをまいてロックオンを外そうとする。平時は突然ミサイルが飛んでくることはないから大騒ぎしなくてよい」と、防衛省の対応に苦言さえ呈したのだ。
田母神氏は空幕長だった10年前、民間の懸賞論文で自らの歴史観を示し、政府見解と異なることが問題視された。退官後は「タカ派」の論客として発言を続けて猪瀬直樹氏が都知事を辞職した後の2014年都知事選に出馬。60万超の得票を集めたが、この都知事選で運動員に報酬を払ったとして公選法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。最高裁まで争ったが、この12月に有罪が確定。こうした「異色」の経歴を重ねて軍事評論家としても発信を続けてきた。本来なら防衛省・自衛隊寄りの発言を示すと思われるだけに、「危険でない」との主張はネットを含め意外な受け止め方をされた。
それだけにSNSでの反響はすさまじかったのだろう。田母神氏は「私は韓国を弁護しているわけではない」とツイッターで釈明。2日後の12月23日にはトーンダウンして「今以上に詳しく話すと自衛隊や日本政府に迷惑をかける(中略)これ以上は言わない。今回ぐらいのことは世界中の軍が日常的にやっていることであり、電波照射をしてもミサイルが直ちに飛んでいかないような安全装置もかけられている」とつぶやいた。
海自と空自の肌合いの違い?
一方、空自トップの空幕長を務めた田母神氏と違って、退官した海自最高幹部OBからは「(韓国海軍の駆逐艦の)非常に危険な行為だった」との指摘が相次いだ。民放の情報番組では「友好国としてあり得ない」「相手にピストルを突きつけるようなもの」と識者らが語り、海自の中枢にいた元自衛艦隊司令官、香田洋二氏も専門家としてテレビに登場して、そういう論調で解説した。
この肌合いの違いはもしかしたら海と空の「出自」によるものではないだろうか。自衛隊の高級幹部の大半は防衛大出身だが、卒業後に陸海空の幹部候補生学校に進学。それぞれの気風に染まると言われる。自衛隊創設以来、もっとも米軍と緊密な連携を保ち続け、時に「行動」するのは海上自衛隊だ。
2001年の米同時テロの際には横須賀から米空母が急きょ出航する際に、当時の法律(防衛庁設置法)の調査・研究名目で米艦艇を護衛するかたちで共に海自艦艇を出航させている。かなり苦しい法運用だった。まだ有事関連法、安保関連法の成立する前で「事態」認定の議論はなく、思い切った部隊の動かし方をした。当時、防衛記者だった筆者は「まず海自が動き、政治が後からついてきた」という印象さえ持っている。
さらに言えば、今回は防衛大綱が閣議決定した直後、護衛艦「いずも」の空母化の是非について議論が沸いていた。防衛省・自衛隊にとって順風と言うよりは逆風だったろう。この雰囲気が今回の防衛省の対応に全く影響していないとは言い切れない。
検証の余地
韓国海軍の「異様」な対応について、岩屋防衛相が会見に踏み切ったのは内局幹部というよりは現役の制服組幹部の積極的な進言があったからではないだろうか。制服トップの河野克俊統合幕僚長は海自出身、官邸でも常に安倍首相に安保情勢を伝える立場だ。岩屋氏は国防族議員で以前は政務官を務めた経験もあり、軍事専門家である最高幹部の指摘に1日で即応した可能性がある。
2につづく
共同通信
2018/12/27 20:48
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