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2018年5月31日22時13分 朝日新聞デジタル 大阪社会部長 杉林浩典
1年以上にわたって国政を揺るがせた森友学園問題で、大阪地検は財務省前理財局長の佐川宣寿(のぶひさ)氏ら国側の当時の関係者をいずれも刑事罰に問わないと判断した。8億円に及ぶ国有地の値引き、国会をだました悪質な文書改ざんと意図的な廃棄。どれもが何ら罪にあたらないことに、正直、釈然としない思いを感じる。
財務省は不起訴処分を受け、週明けに調査結果を公表する。政権はこれで一連の問題に区切りをつけたい構えだ。だが現段階で言えるのは、検察は現行法の枠内で犯罪に認定しなかっただけであり、社会の良識や公務員倫理に照らして問題がなかったとの免罪符まで与えたわけではない。
最も重要なのは、9割近い金額がどのような経緯で差し引かれたのか、文書の改ざんと廃棄はだれの指示でなぜ行われたのか、そのプロセスの解明にある。国の会計経理を監督する会計検査院も昨秋、地中ごみの積算根拠の不十分さを指摘したが、文書廃棄を理由に調査を阻まれていた。検察も不起訴を理由に経緯の詳細を明らかにしておらず、さまざまな疑惑はなお解消されないままだ。
国権の最高機関である国会は財務省の隠蔽(いんぺい)行為に翻弄(ほんろう)され続けてきた。今こそ党派の枠を超え、調査の先頭に立つべきではないか。検察に資料提供を求め、3月の証人喚問で捜査を理由に核心を語らなかった佐川氏らを再招致する。重要法案を審議する通常の委員会とは別の場を立ち上げる方法もある。過去にはロッキード事件で調査特別委員会が設けられた例もある。
国有地売却で過大な値引きが行われたのなら、被害者は税金を負担する国民だ。公文書の改ざん・廃棄は民主主義への明らかな背信行為である。政治と官僚組織への信頼を回復させるためには、中途半端な幕引きは許されない。
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