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◆留学生の高額治療と感染症の対策を急げ
5/16(水) 12:40配信 Wedge
URLリンク(headlines.yahoo.co.jp)
私が勤務する国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)では、外国からの訪問者や滞在者向けに言語・文化のバリアを取り除いた「国際診療部」を2015年4月に新設した。
全患者のうち、外国人の新規外来患者の割合は、15年には5~6%前後だったが、17年には12%と倍近くになっている。受診している外国人患者の6、7割が長期滞在者で、残りが観光客などの短期滞在者だ。
そこで見られるようになったのは、がん・肝炎・HIVなど「高額医療」を必要とする外国人の患者が増えたことだ。そうした外国人の中には一定数、留学生ビザ取得者がいる。背景には留学生の増加がある。日本学生支援機構によれば、日本に来る留学生は、11年に16・3万人だったところから10万人あまり増え、17年には26・7万となった。
解せないのは高額医療を必要とする事例だ。そもそも、重篤な病気を患っているのであれば、まずはそうした病気は、治癒あるいは治療して安定させてから留学しないと勉学に差し障る可能性がある。それにもかかわらず、わざわざ日本に来ている事例については、日本での「治療」が目的なのではないかと疑念が生じるのである。
留学生ビザを取得するなどして、日本に3カ月以上滞在する外国人は、国民健康保険(国保)に加入する義務がある。前年に所得がない留学生だと、月に5000円程度支払えば、日本国民と同じように原則3割の自己負担で様々な医療を受けることができる。これは、外国人にとっては非常に魅力的な制度である。さらに、高額療養費や特定疾患の制度を使い、自己負担を減額することもできる。
例えば、C型肝炎は本来なら数百万円の治療費が必要となるが、日本の国保に入れば国保の保険料と、月あたり1万~2万円の治療費で済む。完治には3カ月程度かかるが、自国で認可されていない新しい薬にアクセスしたり、保険がないまま医療ツーリズムで来日して高額な医療費を支払うことを考えれば格段に安上がりなのである。
このような手法がこれまで以上に知られるようになった背景の一つに、「医療滞在ビザ」の存在がある。医療滞在ビザは、政府の「新成長戦略」のもと、アジアの富裕層等を対象とした健診、治療などのために11年から運用が開始された。医療滞在ビザには、日本の病院からの受け入れ許可と、身元保証機関との契約が必要となる。公的医療保険に入っていない外国人の診療費は、自由診療となるため、医療機関が独自に設定した2~3倍の治療費を支払うケースが多い。
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■日本の医療にアクセスできる 「医療滞在ビザ」と「留学」
「医療滞在ビザ」回避の手段の一つが「留学」だ。実際、医療滞在ビザでの来日や治療と比べると、費用も手間も負担が少ない。
治療を目的とした留学生の数を把握することは困難だ。外国人患者の定義が不明であるし、日本の医療機関には、外国人の患者を集計する義務もない。受診時に外国人かどうかを確認して集計まで行っている医療機関は少数だ。また、このような事例は全体の割合から見てもそれほど多いということではなく、現時点では、日本の医療財政に大きな負荷となっているというほどの規模でもないと思われる。
しかし、日本の国民皆保険制度は、日本国民や長期在住者が生涯にわたって支払い続ける保険料によって支えられているのであり、短期間しか保険料を支払っていない外国人がフリーライダー的に高額医療を利用するのは公平性という観点で問題がある。
もっと深刻なのは、周囲に感染する病気を持った人が留学生として入国した場合だ。例えば、勉強とアルバイトでの睡眠不足、低栄養や異文化でのストレスなどから結核を発症し、日本語学校で集団感染となる事例も各地でおきている。麻疹(はしか)や風疹が持ち込まれ地域に拡大するリスクも常にある。これらは留学ビザを取得する際に事前に病気の有無を証明する診断書を提出させ、ワクチンの接種確認などを義務付ければある程度防げることだ。結果として感染拡大を防ぎ、対策・治療にかかる費用も減らすことができる。
こうした初歩的なことすらできていないというのが日本の現状なのである。専門団体の意見や現場からの声を受けて、結核に関しては、厚生労働省・外務省がアジア6カ国に対して、入国前に健康診断を受けるよう動き始めたところだ。
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