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毎日新聞2018年3月9日 22時02分
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職を辞した夜、報道陣の前に姿見せ、深々と頭を下げて
学校法人「森友学園」(大阪市)に大阪府豊中市の国有地が格安で売却された問題の発覚から、1年あまり。「記録は廃棄した」「データは復元できない」。国民の財産を管理するポストのトップに立ちながら、数々の疑惑への説明を拒んだ末に国税庁長官に就いた佐川宣寿(のぶひさ)氏が9日、辞任した。就任中、一度も記者会見に臨むことはなかったが、職を辞した夜にようやく報道陣の前に姿を見せ、深々と頭を下げた。
国税庁が入る東京・霞が関の財務省。9日午後7時10分過ぎ、佐川氏は集まった数十人の報道陣から矢継ぎ早に質問を浴びせられたが、無言のまま厳しい表情で2階にある大臣室に向かった。
午後9時ごろ、佐川氏は再び報道陣の前に姿を見せた。今度は「国会対応に丁寧さを欠き、審議の混乱を招いた」「確定申告期間中に辞職となったことにおわびを申し上げます」と次々に謝罪の言葉を重ねた。「大変申し訳ありませんでした」と深々と頭も下げた。
森友学園問題に揺れた昨年の通常国会。「財務官僚による安倍政権へのそんたく」を追及する野党側に対し、財務省理財局長だった佐川氏は学園との交渉記録を廃棄したことを盾に「ゼロ回答」の答弁を繰り返した。通常国会閉会後の昨年7月、税務行政のトップに就いた。
野党側は「論功行賞人事」と批判を強めたが、理財局長からの国税庁長官登用は4代連続だったこともあり、麻生太郎財務相ら政権側は「適材適所」と擁護した。しかし、国税庁記者クラブが再三、要請した長官就任時の記者会見は「諸般の事情」を理由に行われなかった。先月16日、確定申告の受け付けが始まった以降も外部向けの発言はまったく聞かれず、国税庁舎前では辞任を求める市民団体のデモまで起きた。
国税庁次長時代の佐川氏は事務運営の効率化に精力的だったと言われる。同庁関係者は「仕事に非常に厳しい人だった」と振り返る。だが、ある税務職員は「国会答弁が注目されてしまい、動きにくかったのだろうが、その意味では『適材の長官』とは言い難かった」と嘆いた。
国会で「文書は廃棄した」と繰り返したが、今年に入ってからも学園側との事前交渉をうかがわせる音声データや内部文書の存在が相次いで発覚。虚偽答弁が疑われる事態に発展し、霞が関の官僚たちの間でも「いつ辞めるのか」とささやかれるようになっていた。
佐川氏の辞任を発表したこの日も、麻生氏は「長官として不適任という認識はない」とかばってみせた。だが、別の税務職員は「今後も税務調査や確定申告の場で、納税者から国会答弁を引き合いに苦情や嫌みを言われるのだろう」とため息をついた。
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