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NHK 9月6日 19時32分
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原発事故 福島・双葉郡の住民調査「約6割が無職」
9月6日 19時32分
原発事故からまもなく6年半になるのを前に、福島大学などの研究グループは、福島第一原発が立地する双葉郡の住民を対象にアンケート調査を行い、その結果をまとめました。無職の人がおよそ6割に上るなど、生活再建が進んでいない実態が浮き彫りになり、専門家は「住民ごとの“復興格差”が拡大しており、ニーズに応じた対策が重要だ」と話しています。
調査を行ったのは、福島大学や立命館大学の専門家などで作る研究グループで、協力を得られなかった広野町を除く双葉郡の7町村に原発事故当時に住んでいた2万6582世帯を対象に、ことし2月に郵送で行い、およそ4割に当たる1万81世帯から回答を得ました。
調査は、原発事故が起きた平成23年以来2回目で、長期の避難生活から暮らしの再建が進んでいるかどうかなどを尋ねました。
それによりますと、職業については正規の従業員、職員が20.6%、派遣社員や契約社員、アルバイトが7.8%となっている一方無職が事故前の倍近い55.5%で、前回より1.2ポイント増加しました。
15歳から64歳までの生産年齢では、「無職」は事故前の10.3%の3倍以上の31.9%に増えています。
住宅については、購入、再建した自宅が44.8%、仮設住宅とみなし仮設住宅が合わせて24.5%、災害公営住宅が7.9%などとなっていて、定住する場所が決まった住民は、およそ半数にとどまっています。
ふるさとに戻りたいかどうかや時期については、「近年中」と「将来」が合わせて17.1%でした。
一方「戻る気はない、戻れない」は58.8%で、自治体別では、町の大部分が帰還困難区域に指定されている大熊町が70.6%、双葉町が69.7%と高くなっています。
生活で困っていることは、「健康・介護」が53.4%、「生活費」が35.3%で、前回調査で24.6%だった「周りの人との人間関係」が34.9%と増加しました。
「交際やつきあいがとても減った」と回答した人も49.8%に上り、コミュニティーの衰えが一層深刻になっています。
東京電力の賠償について困っていることは「手続きが煩雑」が48.7%、「賠償額が少ない」が46.4%、「東京電力と国が賠償額を決めること」が45%となっていて、「支払い終了の方針」に78.3%が不安を感じています。
研究グループのメンバーで、社会福祉に詳しい立命館大学の丹波史紀准教授は「住宅を再建し仕事を見つけている人と悩んでいて何も決められない人との“復興格差”が明確になった。賠償金による経済的補償ではない就労支援やコミュニティー作りなど一人一人のニーズに応じた取り組みが重要だ」と話しています。
研究グループは、結果をさらに分析し、被災者の生活再建に向けた政策などに生かしてほしいとしています。
コミュニティー不足深刻化の背景は
アンケートで浮き彫りになったコミュニティー不足の深刻化の背景には、原発事故から6年半の間に避難で住まいが何度も変わったことや避難してきたことを打ち明けられず、避難先の人たちになじめないことなどがあります。
いわき市の災害公営住宅では、原発事故で避難した人たちのコミュニティー不足を解消しようと、住民の交流の場としてNPOが、月に1回体操教室を開いています。およそ10人の住民が集まって、いすに座ったまま腕や足を上げる体操に取り組んだあと、世間話をするなどして交流を深めていました。
大熊町から避難している81歳の女性は、「体操教室がきっかけで、災害公営住宅の中に友達ができました。友達に会うために教室に来ています」と話していました。
体操教室を開いている富岡町さくらスポーツクラブの佐藤勝夫さんは、「体と心の健康が大事だとわかっていても、災害公営住宅では住民が閉じこもりがちになってしまいます。『きょうは体操がある』と声を掛け合ってもらい、コミュニティーの1つの場として利用してもらえればと考えています」と話していました。
こうした活動について、被災者の支援に携わる福島大学の天野和彦特任教授は、「行政や市民団体が協力して、一度切れてしまった住民どうしの縁を、避難先でつなぎ直す活動を広げていくことが求められている」と話しています。