08/05/26 21:11:41.35 RDyPrqwQ0
ようやくハルヒは俺の襟首から手を離した。
おれは、教卓の方に振り返り、こちらを見つめる全クラスメイトと今にも泣き出しそうな表情を浮かべている今年から教壇にたっているという女教師を視界に確認することになった。
どうぞ、授業の続きを・・・と手で合図した。ハルヒはなにやらぶつぶつ言っていたが、とりあえず授業中は無視した。
で、俺はなんでこんなところにいるんだ?
俺は今屋上へとつながる踊場で、涼宮ハルヒにネクタイをつかまれている。うむ、状況次第ではほぼ間違いなくカツアゲの風景にみえるな教師が見かけたらなんといわれることやら。まったく、こんなところに連れ込んで俺をどうするつもりなんだ?
「協力しなさい」
ハルヒは言った。
「あたしの新クラブづくりに協力しろといってるのよ!」
俺がいまいち理解できない表情をしてるのを読み取ってハルヒは言い直した。ちょっと語気が強くなってる。
「なんで俺がお前の思いつきに協力しなければならんのか、それをまず教えてくれ」
「あたしは部室と部員を確保するから、あんたは学校に提出書類を揃えなさい」
ああ、聞いちゃいないし。
「ああ、そうそう実は部室は確保してあるのよ。ついてきなさい。」
俺はそのまま引きずるように引っ張るハルヒを止めるのに必死で、協力の有無を答える余裕すらなかった。
464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:11:50.03 ruxPDPwS0
支援
465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:12:08.17 46kebisH0
支援
466:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:12:49.77 RDyPrqwQ0
「なによ?」
「部室とやらにいくのはいいのだが、まず教室に戻ってかばんをとってこないと、週番が帰ったら、教室に鍵がかけられるぞ?」
「教室の鍵ねえ。外すのは簡単だけど・・・まあ、一理あるわね。」
物騒な発言があった気がするが、それは無視しよう。
で、かばんを回収した俺は、結局ハルヒに引きづられるように、部室棟へいくことになった。あれ、なんでこんなことに?
その疑問の答えを得る前に、部室棟三階のひとつのドアをハルヒは壊れるんじゃないかという勢いであけた。
「ここよ!」
その部屋は意外と広かった。長テーブルとパイプ椅子がいくつか。まあ、意外なほどに多いのは左側の壁天井までの全面とドア左側の一部まで覆うように存在する本がぎっしり詰まった本棚くらいだった。
老朽化が目立つこの建物の床が抜けるんじゃないか・・・などといらぬ心配をしながら、室内を見回す。
そこにはこの部屋のオマケのように、一人の少女がパイプ椅子に腰掛けて分厚いハードカバーを読んでいた。
「これからこの部屋がわたしたちの部室よ!」
両手を広げてハルヒが宣言した。まあ、神々しいまでの笑顔に彩られている。普段もその表情なら、教室でも孤立することはないだろうに。などとは口にはしなかったが、かわりに俺はひとつの疑問を口にした。
467:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:13:03.73 46kebisH0
支援
468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:13:28.35 ruxPDPwS0
支援
469:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:13:30.15 RDyPrqwQ0
「ちょっと待て。どこなんだよ、ここは」
「文化系の部活動のための部室棟よ。そしてここは文芸部の部屋」
「じゃあ、文芸部なんだろ」
「でも今年の春三年が卒業して部員ゼロ。新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。でこの子が一年生唯一の新入部員」
「てことは休部になってないじゃないか」
「似たようなもんよ。一人しかいないんだから。それにこの子の許可は取ったわよ」
そういわれて、俺はさっきから俺たちを無視して読書に耽る少女に目を向けた。眼鏡をかけた髪の短いおとなしそうな少女だ。
「本当に許可を取ったのか?」
脅迫とかしたんじゃないかと心配して確認してしまった。
「前に仮入部で知り合っていたから、休み時間に会いにいって部室貸してって言ったら、どうぞって。本さえ読めればいいらしいわ。変わっているといえば変っているわね」
ハルヒよ、お前がいうかね。
しかし、本当にいいのか?とその少女に視線を向けていると、ふいに少女が本から目線をあげて、俺たちの方をみた。
「長門有希」
と平坦な声でいった。どうやら自己紹介だったらしい。
470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:14:02.61 46kebisH0
支援
471:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:14:12.48 RDyPrqwQ0
それで用が済んだとでもいうように、少女は本に目線を戻し、再び読書に戻った。
「長門さんとやら」俺は声をかけた。「こいつはこの部室を何だか解らん部の部室にしようとしてんだぞ。それでもいいのか?」
「いい」
長門有希は本から目をそらすことなく答えた。
「いや、多分ものすごく迷惑をかけると思うぞ」
「別に」
「そのうち追い出されるかもしれんぞ?」
「どうぞ」
うむ、まるで無感動というか感情がないかのような返答だ。心の底からどうでもいいと思っているのだろうか?
「まっ、そういうことだから」
ハルヒが先ほどの宣言を続ける。
「これから放課後、この部室に集合ね。絶対来なさいよ。来ないと死刑だから」
お前は小学生か!というツッコミは封印した。ハルヒの満開の笑顔で言われたから、不承不承ながらうなずいた。
死刑はいやだったからな・・・そういうことにしておいた。
472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:15:02.85 ruxPDPwS0
支援
473:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:15:35.87 RDyPrqwQ0
次の日の放課後。
俺が文芸部室を訪れると、俺より先に姿を消していたハルヒの姿はなく、今日も本を読みふける長門有希の姿だけがあった。
沈黙・・・静寂・・・
うわあ、いたたまれねえ。
しかたなく、パイプ椅子のひとつに腰掛け、本棚に目を向けていたが、特に興味を持つ題名も見当たらず、長門有希の方を見れば読書に没頭中。この頃の俺はまだ長門の沈黙に慣れていなかった。
「・・・・・・何を読んでいるんだ?」
沈黙に耐えかねて、俺は長門有希に声をかけた。長門有希は返事の代わりにハードカバーの背表紙を俺に見せてきた。睡眠薬かなにかみたいなカタカナが踊っている題名でSF小説らしい程度しかわからなかった。
「面白いのか?」
俺のその問いに、長門有希は眼鏡に手をやり、平坦な声で答えた。
「興味深い」
とりあえず答えているという感じだ。その後も、本が好きなのかとか、たわいもない質問とそれに対する最短の答えの応酬を行った。質問をすると律儀に答えてくれたのには、助かったさ。
この少女は本は相当好きらしい。わかったのはそれくらいだったがな。
ドアを蹴破るように涼宮ハルヒが入ってきた。
「ごめんごめん!ちょっと捕まえるのに手間取っちゃって!」
と満面の笑顔で入っていたのはいいが、そのまるで逃げた子猫を捕獲してきたような発言はなんだ?
474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:16:07.66 46kebisH0
支援
475:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:16:38.08 RDyPrqwQ0
ハルヒは後ろ手に誰かをつかんでいた。その人物が部屋に入ったのを確認すると、がちゃりとドアの鍵を閉めた。
よくみると、ハルヒが捕まえているのはまたしても少女だった。
不安げに震えた小柄な体の少女は、うん、すんげー美少女だった。しかし、今日ハルヒは「適材な人間」に心当たりがあるからと部活の勧誘に行ったはずだ。
この子のどこが、「適材な人間」なのだろうか?
「なんなんですか!」
その美少女は気の毒にも半泣きの表情だ。
「ここどこですか、何であたし連れてこられたんですか、何で、かか鍵を閉めるんですか?いったい何を」
「黙りなさい」
ハルヒの押し殺した声に少女はビクッと固まった。
「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」
おい、それで紹介終わりかよ。
「っていうか、どこから拉致してきたんだ?」
と俺がいうと、「拉致」と言う部分で朝比奈みくるという美少女はビクッと不安げに反応した。いや、俺はなにもしませんし、何も知りませんよ?共犯者じゃないですから。
「拉致じゃなくて任意同行よ」
いや、それもどうなんだ?
476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:17:07.52 46kebisH0
支援
477:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:18:08.12 RDyPrqwQ0
ハルヒの説明によると、朝比奈みくるさんはこの高校の二年生でハルヒが書道部に仮入部したときから気にいっており、今回部活を立ち上げるにあたり、
この部活の萌えキャラとして任意同行を求め、そのまま引っ張ってきたとのことであった。
かなり、問題な行動じゃないのか?
しかし、その後の朝比奈みくるさんの行動も俺の予想外ではあった。
拉致同然につれてこられたというのに、ハルヒの書道部をやめてわが部活にという指示にしたがったのだ。そのとき、ほんのわずかだが、長門有希の方をみたような気がする。
「とりあえず、四人揃ったところで、紹介するわね。」
「そこのぼーっとしてるのが、団員一号のキョン、で窓際で本を読んでるのが、団員二号の長門有希。そして、わたしが団長の涼宮ハルヒよ!」
うむ、ツッコミどころ満載なのだが、まず最初にこのSSは現在第一話終盤になろうとしているのだが、俺の名前でやっと出てきたと思ったら「キョン」というのはどういうことだ?
作者の悪意を感じるぞ。・・・と、この世界に存在しないものに不満を述べてもしかたないので、とりあえず、目の前の存在に苦言を呈しておくとしよう。
「団とはなんだ?そもそもどんな部活をつくるつもりかそろそろ明らかにしてもいいんじゃないのか?」
「あれ?言ってなかった?まあ、いいわ。とりあえず、名前なら決めたわよ。」
「・・・いってみろ」
期待感ゼロの状態俺の声に反して、涼宮ハルヒは満面の笑みで命名宣言を行った。
478:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:19:06.79 RDyPrqwQ0
・・・とりあえず、お知らせしよう。
なんだかよくわからない涼宮ハルヒの思いつきではじまった部活動設立計画(現在総員4名)の活動の名前は、
「SOS団」
と相成った。
別に、救難信号ではなく、いや、そっちの方がよかったかもしれん。しかし、ハルヒの宣言文には違う言葉が書いてある。
S=世界を
O=大いに盛り上げるための
S=涼宮ハルヒの
団
で略してSOS団だそうだ。うむ、呆れてよいとおもうぞ。
とりあえず、その日は下校時刻になり、解散した。
今日最大の謎について、俺は朝比奈さんに問わずにはいられなかった。
479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:19:45.87 46kebisH0
支援
忘れてた。問題が発生したら下記スレへ。
URLリンク(yy42.60.kg)
480:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:20:12.02 RDyPrqwQ0
「朝比奈さん」
「なんですか、キョンくん」
・・・あなたもその名前で呼ぶのですか?と名づけた親戚のおばさんと広めた妹をうらめしく思ったものだ。
「書道部をやめてまで、こんな活動に参加することはないと思いますよ。あいつのことなら気にしないでください。俺が後から言っておきますから。」
「いえ、いいんです。入ります、あたし」
「でも、多分ろくなことになりませんよ」
「大丈夫です・・・それにおそらくこれは必然・・・なのでしょうし、長門さんがいるのも気になります。」
「気になる?」
「え、や、何でもないです」
朝比奈さんは慌てた感じで首を振った。ふわふわの髪の毛がふわふわと揺れた。
そして、朝比奈さんは俺の方を向いてお辞儀をしながら、
「ふつつかものですが、よろしくお願いします。」
「まあ、そこまで言われるんでしたら・・・」
「それから、あたしのことでしたら、どうぞ、みくるちゃんとお呼びください」
とにっこり微笑む。ハルヒの笑顔とは違うめまいを覚えるほど可愛い笑顔だった。
481:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:21:05.56 RDyPrqwQ0
そういえば、帰る直前、長門から本を渡された。
「貸すから」
読めということだろうか?しかし、こんな分厚い本を読む習慣は俺にはない。
「いつ読み終わるかわからんぞ?」
「いい」
それだけ言って、長門は帰っていった。
ジ・Oはこうして動き出した。
482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:22:01.86 46kebisH0
支援
483:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:24:17.36 RDyPrqwQ0
支援してくださった方ありがとうございました。
第一話はここまでです。
・・・ここまではほとんど間違い探しですね(汗
全六話ですが、推敲したいと思いますので、今日はここまでにさせてくださいませ。
by 梅里
484:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:25:06.44 46kebisH0
>>594
乙! 続きに期待。
485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:26:52.03 ruxPDPwS0
>>594
乙!
これからの展開に期待!
486:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:33:42.67 6z5RoVSGP
おい誰だ報告したやつ! 規制されたぞ!!!
487:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:35:23.78 6z5RoVSGP
◆hCITHjx2nUって誰だ!
488:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:40:50.14 6z5RoVSGP
いい度胸だ!
489:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:42:10.30 ORzDq8aPO
予告から一時間半も遅れてしまった…
投下します。
I don't choose, but decide.
490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:43:26.70 46kebisH0
おk。支援する。
しつこいけど、問題発生時は下記スレへ。
URLリンク(yy42.60.kg)
491:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:44:08.63 ORzDq8aPO
涼宮ハルヒの能力が失われた。
-それに至るプロセスを詳細に具体的に語るのは俺の精神衛星上大変よろしくないので割愛させてもらう。
一文で言うならば、あいつと俺の関係性がどうでもいいクラスメート
→団長と雑用
→次の段階へと変化していく過程でそうなったというわけだ。
たいてい(今だから言えるのだが)こういう関係性になる為の最後の行動というのは単なる確認行為であるわけで、
表見的な関係の呼称が変わるのみで実際の状況はそう変わりはしない。
つまり相変わらず俺はハルヒに振り回される役回りなのだ。
強いていえば振り回し方が理解しやすくなったのが一番の変化かもしれんな。
ともかく、もしかしたらさっきから俺が「確認行為」だの「表見的」だのという妙な言葉を使ったことから分かるヤツもいるかもしれんが、
ここに到達するまでは北高を卒業し、奇跡的に俺がある大学の法学部に入学するまでの時間を要した。
当然と言えば当然、学力に隔たりのあるSOS団メンバーは別々の(とはいえハルヒ・古泉・長門と俺・朝比奈さんで別れただけだが)
大学に進学した。ところが結局俺達はちょくちょく-いや、しょっちゅう例の場所に集まっていたのだ。
要は高校時代とあまり変わらなかったというわけだ。
と以上二文を過去形で語ったのは、変わってしまったことがあるからなわけで。
俺やハルヒをはじめ、単なる心理アドバイザー的立場に収まった古泉や未来との同期を絶った長門-
未来を知らない、時間に縛られない者だけが変化に気付かなかったんだ。
----------------
492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:44:27.15 ruxPDPwS0
支援
493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:44:30.79 46kebisH0
支援
494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:45:36.31 jvQ0Kt30O
やぁ、同志よ(´・ω・`)突然だけど君達に一生恋人ができない呪いをかけたよ。呪いを解く為にはここのスレ→URLリンク(same.u.la)で厨房装って暴れている607に以下のテンプレで書き込んでくれたまえ。それでは検討を祈る。
>>607河童はおまえ!おっさん無理すんなよwww
495:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:47:10.63 ORzDq8aPO
抽選で勝手に登録される科目で運悪く単位取得何度AAランクプラスの刑法に当たったせいで、
月曜の朝から聞き慣れないテクニカルターム満載の教科書を朗らかさのかけらもない教授が朗読するのを拝聴させられる
そんな地獄にも慣れつつあった五月下旬。
高校の頃には想像もしていなかった映画館みたいな教室を出て、弁当を食う場所を物色しているとポケットが振動する。
Fm 朝比奈さん
Sub (無題)
Txt
大切な話があります。
銅像の前で待ってますね。
古泉いわく「天然記念物級の鈍感」たる俺でも、このメールの意味くらい理解できるさ。
実はキョンくんが好きなんですーとか、涼宮さんと別れてわたしとーなんてこたありえん。
来るべき時が来たんだろう。朝比奈さんが未来に帰ってしまう。まさにバック・トゥ・ザ・フューチャー。
寂しさと、何というか諦観のようなものがせめぎあって自分がどう思っているのかよく分からなかった。
いなくなってほしくない。だが、いつだか朝比奈さんが話してくれた未来への里心を想起すると…
「帰らないでくれ」などとは言えない…よな。
----------------
496:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:47:34.04 46kebisH0
支援
497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:47:45.21 ruxPDPwS0
支援
498:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:49:10.42 ORzDq8aPO
「あ…キョンくん」
オッサンの銅像の足元に佇む朝比奈さんは、俯き気味だったけれど微笑んでいた。
「わたし、未来に帰らないといけません。ううん、帰ります」
強制ではなく自分の意思だという言い換え。それは俺を悲しくさせ、同時に安心させた。
朝比奈さんは例の強制ナントカでムリヤリ連れ戻されるわけではないようだ。俺の顔をちらと伺って、
「涼宮さんにはキョンくんがいるし、もう大きな時空震発生の心配もなさそうなので帰還許可が出たんです」
なるほど。ハルヒの奇想天外パワーが無くなれば、んーなんだっけ、不確定要素がなくなるわけか。
納得しつつも、俺の寂しさがこんな事を言わせた。
でも、朝比奈さんがいなくなったらどうでしょう?またハルヒのやつとんでもない事を…
「ないと思う…。ちょっとさみしいけど、今涼宮さんの一番はキョンくんです。だから悲しませたりしちゃダメですよー」
俺とハルヒが付き合い出してから何度か見せるようになった朝比奈さんお姉さんモード。
この朝比奈さん(姉)には逆らおうという意志すら湧かず、紐で顎を引っ張られるように頷くしかないのだ。
この提案は彼女の言う通りハルヒを悲しませない為に必要な物さ。
「朝比奈さん!」
勢い余って肩を掴んでしまった。途端に真っ赤になり、わたっわた…あの、等と呟く朝比奈さんに続けた言葉はこうだ。
「俺の家で飲みましょう!せっかく大学生になったんだし、みんなを呼んで飲み会ですよ」
お別れ会と言えなかったのはまぁ、許してくれ。
--------------
499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:30.62 yDeA7jrm0
しえん
500:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:47.36 ruxPDPwS0
支援
501:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:49.77 46kebisH0
支援
502:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:50:42.23 ORzDq8aPO
集まったのは俺、ハルヒ、長門に鶴屋さん、それに古泉とあとは阪中、谷口、国木田だ。
正直この人数には俺の部屋は手狭なのだが、SOS団絡みで朝比奈さんと関わった奴らは全員呼びたかった。
長門と古泉以外には朝比奈さんは海外に引っ越すというどこかで聞いたような真っ赤な嘘を伝えておいた。
鶴屋さんあたり、気付いていそうだけど。
そういえばいまいましい事に国木田と鶴屋さんは高三の時からいい仲になっていて、
国木田のヤツは志望通りいつだハルヒと共に尾行して到達した大学(鶴屋さんと同じとこだ)に進んだ。
実は俺とハルヒもそこに行こうと思っていたのだが…まぁそれはまた別の話だ。
それはさておき、突然だった上理由もネガティブな集まりだったが
ハルヒや鶴屋さん、そして何より朝比奈さん自身が笑顔を絶やさなかったお陰で
やたらとポジティブに盛り上がった。もしかしたらハルヒの言葉に涙が出そうになったのは俺だけかもしれん。
「今生の別れじゃあるまいし、今じゃ国際通話も安くなってきてるしメールもスカイプもあるんだから寂しくはないわ!
ちょっとだけしかね」
-ハルヒ、お前は朝比奈さんに一番近いようで遠い位置にいるんだよな-
-----------------
503:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:14.45 46kebisH0
支援
504:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:26.69 yDeA7jrm0
しえん
505:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:35.57 ruxPDPwS0
支援
506:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:53:14.88 ORzDq8aPO
夜も深まり阪中が帰ると言い出すと、谷口が送ると宣言し(言いたかないが阪中の無事を祈るぜ)、
どういうつもりか国木田が一人で帰り、ハルヒが俺のベッドに沈むと古泉が全く乱れない呂律でシメの言葉を発した。
「では今日はこの辺りにしましょうか。夜も更けてきましたし、僕は長門さんを送りますからあなたはお二方をお願いします」
ハルヒはどうするんだよ。
「え?泊めてあげるのではないんですか?」
長門を除く…いや長門も少し口角を上げていたな、全員がニヤリとした顔を向けてくる。
何なんだこのチームワークは。
「ん…みくるちゃん…またね…メールするか…キョン…ちゃんと…」
薄目を開けたハルヒの譫言のような言葉からすると、コイツは泊まる気満々で
俺が先輩二人を送るのは絶対的義務ということらしい。やれやれ。
----------------
507:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:53:22.89 46kebisH0
支援
508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:54:21.72 ruxPDPwS0
支援
509:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:54:31.81 ORzDq8aPO
思い出話をしたくないのは俺だけではなかったらしく、古泉・長門ペアと別れるまで俺達はみな無言で歩みを進めた。
「では、またいつか」
「いつか」
短い言葉は信頼の証と思いたい。超能力者とヒューマノイド・インターフェイスに対する感情は
出会ってから色々と変わってきたが、使命から解放されたはずの今でもこうして同じ時を過ごしている
-ってことは、少なくとも俺やハルヒやあいつら相互の間に悪い印象は持っていないだろう。
朝比奈さんは悪意などという概念とは無縁の存在だし…
とか考えつつ麗しの先輩二人の後ろ姿を眺めていると、らしくないな、感傷に浸ってしまった。
国木田が一人で帰ったのは、今この時を作ってやりたかったんだろう。無二の親友同士の時間を。
阪中や谷口もSOS団に気を遣ってくれたのかもしれん。
人をこうして好ましく思い、素直にいいヤツらだと言える…いや言えないな、思えるようにしてくれたのは
思えるような仲間を集めてくれたのは間違いなくハルヒだ。大切にしてやらなくては。
ハルヒだけじゃない。みんなと、みんなと共に過ごす時を。
----------------
「んじゃ、みくる」
「う、うん…」
遠く、遠くへ離れる時が来た。鶴屋家の門の前で二人が向き合っている。
国木田のお膳立てをムダにするわけにはいかん。向かいの歩道で待つことにする。
-朝比奈さんは泣きながら笑い、鶴屋さんは笑いながら泣いていた-
---------------
510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:54:47.56 46kebisH0
支援
511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:55:21.50 ruxPDPwS0
支援
512:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:56:04.42 ORzDq8aPO
鶴屋さんと別れた後、ゆっくりと時間を稼ぐように歩き、きっとあの公園に行くんだろうなんて事をぼんやり思っていると
やっぱりその通りで、俺達は幾多の記憶が染み付いたあの公園に辿り着いた。
口を開けば終わりになってしまう気がして沈黙を破れない。
あのベンチに座ると別れが訪れる気がして、足を動かせない。
結局、公園の入り口で突っ立ったまま向き合う形になる。
まだ、別れるのは嫌だ。と俺は思ったのだろう。思わず目を逸らした俺の視界に割り込むようにてててっと動き、
「あ、あの…」
朝比奈さんが口を開く。時間…か。
「何ですか」
なるべく何て事ないかのような声を出そうとした時、
信じられない光景が目に飛び込んできた。これ、フラッシュバックってやつか?
思い出ならもっといいものを見たいのだが…
という思考をコンマ一秒で終え、我に帰る。
これは現実だ。今この時この場所で、見覚えのあるワゴンから見覚えのあるヤツが現れ、二度目の暴挙に出やがった。
「藤原ッ!!」
513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:56:30.30 46kebisH0
支援
514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:57:39.73 /PbRj9WC0
しえn
515:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:58:07.68 ORzDq8aPO
今日はここまでで終わりである。初めて書くシリアス系の長編…疲れるのだ…
516:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:58:45.80 46kebisH0
>>626
乙! 連載は大変だけど、続きがんばれ。
517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:01:29.99 ob7xYJ3T0
>>627
乙!頑張れ~
518:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:01:56.71 /PbRj9WC0
これは期待。
続きwktk!
519:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:21:18.15 ORzDq8aPO
支援アンド乙アリガトゴザマシタ保守
520:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:38:58.28 7cNzFuoFO
保守
521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:45:07.07 tcd3eVVe0
保守
522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:56:15.97 RZKgcr3sO
「きょーん(はぁと)」
「…なんだ?今古泉とゲームでいそがし」
「そんなこと言わないでさぁー…ね?」
プニプニ
「キョンのほっぺってぷにぷにで…ほんとにかわいいわ…。
唇もプニプニしていい?…両手でプニプニしていい?」
プニプニ プニプニ
「…なぁ、ハルヒ…」
「ねぇキョン、私を、保守してくれない?
あなたのそのかわいいお口で、私の顔を塞いで欲しいの…」
むに
「ああっ!いいわ!興奮してきた!保守祭りよぉぉーッ!」
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08/05/26 23:05:38.97 q94h39bOO
人気ライトノベル 涼宮ハルヒシリーズ最新巻 『涼宮ハルヒの驚愕』が9月2日に発売決定!!
スレリンク(campus板)
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08/05/26 23:21:37.81 pqWS9cTxO
ほ