08/05/26 14:53:25.76 XZgcW1X70
と、そこに急にハルヒが戻ってきて、
「あんた、ちょっと手だしなさい」
なんだいきなり。
「いいからさっさと出すの!」
なんだか解らんがとりあえず右手を差し出した。抵抗しても仕方ない上に理由もなく命令してくるのはいつものことだ。
するとハルヒはポシェットからすばやくサインペンを出すと俺の右手にバツマークを書いた。
なにするんだいきなり! て、おい! これ油性ペンじゃねえか。なかなか消えねえんだぞこれ。
ところで、おまえはいつも油性ペンを持ち歩いてるのか? まさかとは思うが、
急にサインを求められる芸能人を気取ってんじゃないだろうな。
と、思ったが、ポシェットからペンを出す時、中に赤いものがちらりと見えた。あれはひょっとして腕章?
て、ことは腕章に書き込むためのペンか。
「何言ってるの、見た目そっくりの二人なんだから印つけとかないと紛らわしいじゃないの、
推理の途中で入れ替わられたりしたら判断しにくいでしょ」
たしかにそうだが……、それで、何でバツ印なんだ、これじゃ俺が偽者っぽいじゃねえか。
さっき、俺の方が本物らしいとをいっていた気がしたが。
「丸でもバツでもどっちでもいいでしょ、ただの印なんだから、それに手のひらには丸よりバツのほうが早く書けるのよ」
そうかい。しかし別に早く書く必要もない気がするが、まあ、手早く行動するのはこいつの特徴だしな。
そうこうしている内に、下の階から扉の開く音が聞こえた。この時間の俺が鶴屋さんの部屋から出てきたようだ。
「あ、もう一人のキョンくんが出てきたみたいです」
階下を覗き込んでいた朝比奈さんがこちらに振り向いた。それを聞いたハルヒがどれどれって感じで階下を覗き込む。
頼むからその『俺』に見つからないでくれよ、これ以上ややこしくなっちまったら収拾が付かなくなっちまうんでな。