ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」at NEWS4VIP
ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 - 暇つぶし2ch376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 11:12:11.76 eAngp7TS0
「やーっほーっ!」
といつものように部室の扉をぶち開けたのは
我がSOS団団長・・・ではなく、SOS団名誉顧問の鶴屋さんである。
鶴屋さんはにょろにょろした仕草で部室を見回すと、
「おやおや?ハルにゃんはまだいないのかいっ?」
と誰かに向けて言っている。仕方がないので俺が返事をしてやることにした。
「ハルヒのやつですか?まだ掃除でもしてるんじゃないですか?」
「そうかいっ!じゃあそれまでちょっとここで待たせてもらうことにするよっ!」
とずかずかと部室に入ってきた。
「ところで、どうしたんですか?今日は。」
「うん。それがねっ。今日はハルにゃんに耳寄りのとびっきりの情報を持ってきたんだよっ!
それとたまにはこうして顔を出さないと顧問としての役目がないっさ!」
「なるほど。」
と古泉。何を理解したんだろう。
「丁度良かったです。僕も涼宮さんが退屈しないように
何か面白いイベントを考えていたところなんです」
「うんうん。もちろん、これはハルにゃんだけじゃなくてみんなにもめがっさびっくりの
一大イベントだからねっ!」
部屋の片隅で外界との間に見えない壁をつくっているような長門が
珍しく反応したような仕草を見せた。
「それでそれは一体なんなんですか?」
「それはハルにゃんが来るまでのお楽しみ。」
鶴屋さんは廊下の足音を聞き取ると、膝くらいまで届くような長い髪をひるがえして
部室おドアに向かって体を反転させた。


377:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 11:18:58.10 eAngp7TS0
保守

378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 12:28:00.22 3jRFlQy+O


379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 13:18:00.54 3jRFlQy+O
保守

380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 14:31:11.63 XZgcW1X70
書き込みテスト

381:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 14:37:32.87 5SgMxsLA0
保守

382:新・孤島症候群  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:42:23.12 XZgcW1X70
やっとラストまでできました。
前回の投下が4月はじめだったから約二ヶ月くらい経ってますね。
 
知らない方や覚えていない方のほうが多いかもしれません、
なので、前回までのお話はこちら↓
URLリンク(www25.atwiki.jp)
 
16レス予定

383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 14:43:37.65 6oEl960Z0
ほっしゅほしゅ

384:新・孤島症候群 結 1/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:45:08.73 XZgcW1X70
  今回のこの事件、実行犯は俺だった。ま、種を明かせばそういうことになる。
 だが、そううまく事は運ばなかったのだ──、
 
「誰? 誰かそこにいるの?」
 
 ──なんと、ハルヒに見つかっちまったい。どうすりゃいい? 


    新・孤島症候群─結末編─
 
 
 完全に予想外だった。たしかハルヒは下の階に走っていったと鶴屋さんは言っていた、
それが正しければハルヒは一階に行き、三階には来ないはずなんだ。しかし、今のこの状況はそうじゃない、
はっきり言おう、アイツには常識どころか既定事項すら通じないのか、っと。
 
「みくるちゃん? みくるちゃん見っけ!」
 ハルヒに指を刺されて固まった表情のまま朝比奈さんはゆっくりとハルヒの方に向く。
 別にかくれんぼをしてた訳じゃないんだが……。
 朝比奈さんだけなら何とか言い訳も出来たのかもしれない、ハルヒにとって、この事件はただのサプライズパーティなんだからな。
 古泉たちが仕組んだ人が消えていくミステリー、朝比奈さんは最初の犠牲者でどこかに隠れている、っということにしておけば、
たとえハルヒに見つかったとしても「見つかっちゃいましたぁ、えへへ」で、済んだかもしれない。だが、
「それ……と、……キ、キョン!?」
 どこかに隠れようとしてあたふたしている俺に声を掛けた。
 そうなのだ、俺は絶対見られてはいけなかったのだ、どう考えてもこの時間にはもう一人俺がいて、
今現在、鶴屋さんの部屋のイスに座り込んで居眠りをしているはずなのである。
 さて、どうやってこのピンチを切り抜ける? 考えろ、俺。

385:新・孤島症候群 結 2/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:46:56.91 XZgcW1X70
 だが、よくよく考えてみればハルヒが言っていたセリフと鶴屋さんが言っていたセリフに矛盾があったのだ。
そう、ハルヒはすでに一階の探索は自分の目で行っていたのだ、多丸さん兄弟と共に。
 だとすると『やっぱちゃんと自分の目で探してみなきゃだめね』と言っていたのはそれ以外の場所ってことになる。
二階は長門と森さん、新川さんで、三階は俺と古泉が調べたんだ、
二階は朝比奈さんがいなくなった時に全員集まって探しはじめた場所だし、ハルヒもその場にいた、ってことは、
ハルヒが言っていたのは三階のことになる。だからハルヒが三階を探索しに来るのは当たり前なのだ。
 と、言うことは。鶴屋さんが嘘をついているって事になるんだが、一体なぜ? 
 
 いやいや、今はそんなことを考察している暇はない。俺が二人いるこの状況を、
目の前にいるこいつにどう説明すればいいのか考えなきゃならんのだ。
下手な説明だと、古泉が言っていた想像したくない結末に向かうかもしれん。
 かと言って真実を話す訳にはいかないのが、なんというかコイツのややこしいところなのである。
仮に真実を話したとしてもコイツは信じないと思うが、
それによって別の被害が発生する可能性があるのは既に去年の映画撮影時に実証済だ。
 
 ハルヒは豆腐とヨーグルトを間違えて食べてしまったような戸惑った表情で立ちつくしている。
無理もない、俺が居眠りしている部屋から出て、階上から人の気配がするので見にいってみるとまた俺がいるんだからな。
 
「お! みくるじゃないかっ、さすがハルにゃん、さっそく見っけたんだねっ」
 ハルヒの後ろから鶴屋さんもやってきた。そして俺を見つけると、
「あれ? キョンくん? おっかしいなぁ、いつの間に先回りしてたんだい?」
「あ、えーと……それはですね……」
 そろそろタイムアップだ、これからは言い訳を考えながらしゃべらなばならん。
「なんかいつもと違うふんいきだねぇ? 本当にキョンくんかい?」
 鶴屋さんは覗き込むようにして俺を見る。偽者じゃありません本物ですよ。と、ここで天啓が舞い降りた、
……ふむ、なるほどその手があったか。ありがとう鶴屋さん。

386:新・孤島症候群 結 3/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:48:33.82 XZgcW1X70
 俺は観念したように深呼吸し、ハルヒと鶴屋さんを一瞥すると、
「まあ、見つかっちまったんじゃしょうがない。今この時間には俺がもう一人いるってことになっている」
 俺がそう言った瞬間、全員の表情が変わった。ハルヒは何言ってるの? って感じで眉をひそめ、
朝比奈さんは驚愕の表情、鶴屋さんはへぇーって感じで興味深そうに目を見開いた。
「どういうことよ? あんたが二人いるって」
 予想通り、ハルヒが乗ってきた。
「二人いるってのはつまり、どちらかが偽者でどちらかが本物ってことだ」
 考えながら話すのは少々辛かったが、ようやく俺のほうも頭が回転してきたらしく乗ってきた、
「さて、ここにいる俺と下にいる俺とではどっちが本物で、どっちが偽者でしょう?」
 ちょっと調子に乗って芝居がかったセリフを言い放つ、さてハルヒはどうでる? 
 
 などと考えてる間もなくハルヒはつかつかと俺の前に歩み来て、
「い、痛てててっ!」
 いきなり左の頬をつねり上げられた。なにしやがるっ! 
「ふうん、どうやらその顔は作り物じゃなくて本物のようね、それに声や仕草もいつものキョンと同じだし」
 ハルヒは顎に手をやり、頭のてっぺんからつま先までまじまじと俺の姿を眺めながら言う。
俺はつねられてヒリヒリするほほを撫でながらハルヒを睨み返す、なんだか品定めされてる気分になって少々不愉快になった。
「おっと、それじゃあここにいるキョンくんが本物で下の部屋で居眠りしてるキョンくんは偽者ってことなのかいっ」
 なぜかにやにやしながら鶴屋さんは言う。ほんと、楽しそうですね。
「うーん、どっちかてーとあたしはこのキョンくんの方があやしい気がするにょろ、でもどっからみてもキョンくんなんだけどねっ」
「まさか、ひょっとしてどっちも偽者ってんじゃないでしょうね」と、ハルヒ。
 おいおい、さらに事態をややこしくするような事を言うなよ。どちらかといえばどっちも本物だ。
 
「さてね、偽者か本物か、そんなこと正直に言ったらせっかくのサプライズパーティが台無しになっちまうだろ、
それよりハルヒ、さっきみたいな強引に偽者か本物かを調べるような行為は自重してくれ。
探偵を気取るんなら推理で本物かどうか当てるもんだ」
 まったく、俺が二人いる状況をなんとかハルヒに納得させることが出来ても、
ハルヒがもう一人の俺に今のような行動を取ったら事態がややこしくなっちまうからな、なんとか釘を刺しておかないと。

387:新・孤島症候群 結 4/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:50:36.66 XZgcW1X70
「む、それもそうね。みくるちゃんが見つかってこれで解決じゃああまりにもあっけないもんね。
それじゃあこれからは二人いるキョンのどっちが本物か見極める推理ゲームをはじめましょ、
と言ってもよく考えたらここにいるキョンの方が本物っぽいけどね」
 ハルヒは隣にいた鶴屋さんに同意を求めるように言う。
 まあ、それはいいんだが、この事件のシナリオはまだ残ってるんだ、
そういう事は全部終わってからにしてもらいたいんだがな。
 
「それくらい解ってるわよ、事件を未然に防いじゃったらミステリーとして破綻しちゃうじゃない、
そんなのは推理じゃなくて予知よ、予知。探偵が予知能力なんて使ったらカンニングしてるようなものじゃない」
 ハルヒは腰に手を当て、えらそうにレクチャーし始めた。お前の考えなんか今更どうでもいいよ。
 あと、俺が二人いるってのはここだけの内緒にしてくれないか、でないと色々と不都合が出て、
打ち合わせ通りに事が運ばないんだ、あとこれ以上誰かと鉢合わせするのも回避したいんだが……、
といっても残っているのはもう一人の俺と妹だけどな。
 
「そういうことなら鶴にゃんにまかせときなっ! とりあえず三階に行かないようにすればいいってことにょろね」
 そう言って鶴屋さんは胸をドンと叩いた。
 
 なるほど、あの時、鶴屋さんのセリフに矛盾があったのはこういう訳だったのか。
「なんとかやってみるよっ、キョンく……」
 そこで鶴屋さんは一時停止したように言葉を止め、
「あたしとしてはまだ本物か偽者か解らないから……んーと、そだっ、言わば少年Kってところだねっ」
 一応どちらも本物なんですけど。てか、あの時言っていた少年Kってそういう意味だったんですね。
 
 
 それじゃあ鶴屋さん、よろしくおねがいします。それと、また後で伺います。
 
 そうして二人は下に降りていった。まるで台風一過のような感覚だ。
 朝比奈さんと俺はやれやれって感じで顔を見合わせてほっと胸をなでおろした。

388:新・孤島症候群 結 5/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:53:25.76 XZgcW1X70
 と、そこに急にハルヒが戻ってきて、
「あんた、ちょっと手だしなさい」
 なんだいきなり。
「いいからさっさと出すの!」
 なんだか解らんがとりあえず右手を差し出した。抵抗しても仕方ない上に理由もなく命令してくるのはいつものことだ。
 するとハルヒはポシェットからすばやくサインペンを出すと俺の右手にバツマークを書いた。
なにするんだいきなり! て、おい! これ油性ペンじゃねえか。なかなか消えねえんだぞこれ。
ところで、おまえはいつも油性ペンを持ち歩いてるのか? まさかとは思うが、
急にサインを求められる芸能人を気取ってんじゃないだろうな。
 と、思ったが、ポシェットからペンを出す時、中に赤いものがちらりと見えた。あれはひょっとして腕章? 
て、ことは腕章に書き込むためのペンか。
 
「何言ってるの、見た目そっくりの二人なんだから印つけとかないと紛らわしいじゃないの、
推理の途中で入れ替わられたりしたら判断しにくいでしょ」
 たしかにそうだが……、それで、何でバツ印なんだ、これじゃ俺が偽者っぽいじゃねえか。
さっき、俺の方が本物らしいとをいっていた気がしたが。
「丸でもバツでもどっちでもいいでしょ、ただの印なんだから、それに手のひらには丸よりバツのほうが早く書けるのよ」
 そうかい。しかし別に早く書く必要もない気がするが、まあ、手早く行動するのはこいつの特徴だしな。
 
 そうこうしている内に、下の階から扉の開く音が聞こえた。この時間の俺が鶴屋さんの部屋から出てきたようだ。
「あ、もう一人のキョンくんが出てきたみたいです」
 階下を覗き込んでいた朝比奈さんがこちらに振り向いた。それを聞いたハルヒがどれどれって感じで階下を覗き込む。
頼むからその『俺』に見つからないでくれよ、これ以上ややこしくなっちまったら収拾が付かなくなっちまうんでな。

389:新・孤島症候群 結 6/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:55:42.12 XZgcW1X70
「わき目も振らず一階にいっちゃいました」
 ま、そうですとも朝比奈さん、あの時の俺はまったく周りを警戒せずに一階に向かったんだったな。
「やっぱりどう見てもそっくりね、全然見た目じゃ判断できないわ、まさか双子ってんじゃないでしょうね」と、ハルヒ。
 恐ろしいことを言うなよ。
 
 話題を変えることにする。「あー、そうだハルヒ」
「なによ」
 俺はこの後、二階の俺の部屋潜む予定なんだ、だから推理が成り立ったらその前で披露してもらいたいんだ。
そこでちゃんと事件の推理とどっちが偽者なのか判明してくれ。お前の推理が正解ならそこで事件は解決。大団円だ。
「何言ってんの、あたしの推理力なら正解するに決まってるでしょ、間違うなんてありえないわ」
 まぁ今回はそのハルヒの推理どおりに事を運ぶつもりだからな、たしかに間違うなんてありえないってのは当たっているがな。
だが、いつも思うがその自信は一体どこから湧き出してるんだろうか? とはいえ、自信なさげなハルヒなんてのも想像しにくいが。
 
 そのハルヒも今は一階に向かって階段を降りている。絶対ニセ俺の証拠を見つけ出してやるって背中が語っているようなふんいきだ。
まったく、わかりやすいヤツだな。くれぐれもお手柔らかにたのむぜ、本当はどっちも俺なんだからな、
軽く脅かしてやるくらいにしといてくれよ。
 
 
 ともかく、今のところどうにか辻褄合わせだけはうまくいっているようだ、まったく、
ハルヒに見つかった時は一体どうなることかと思ったが、考えてみればどうやらこれも既定事項らしい。
 俺は手の平に書かれているバツ印を見ながら、
今頃一階でビクビクしながらハルヒを探しに行っている過去の俺のことを思い浮かべた。
そういや、あのときのハルヒは変によそよそしい感じだったな。らしくないなと思ったが、
あの時には既に偽者だと決め付けていたと考えればしっくりと来る。急に夜食作り始めたのも俺を観察するためだったんだろう。

390:新・孤島症候群 結 7/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 14:59:08.72 XZgcW1X70
 後は鶴屋さんと妹、ラストのハルヒ消失のトリックだけだ。
 とりあえず、朝比奈さんが来てくれたからこのトリックも時間移動で間違いないだろう。
 妹はどうせ眠ったままだろうからいいとして、問題は鶴屋さんだ、やっぱ眠らせてから時間移動した方がいいのか? 
それとも事情を話してもいいのだろうか、俺としてはもうすべてさっぱり話しても良さそうなんだけどな。
 しかし、ここにいる朝比奈さんはおそらく、鶴屋さんには正体を知られたくないようだ。
そして鶴屋さんもどうやらそのことについて感付いているらしい、きっと事情を話し始めても途中で、
「事情なんて堅苦しいことどうでもいいっさ! 要するにあたしは○○しておけばいいんだねっ!」っと言ってくるに違いない。
 
 そんなことを考えながら俺は朝比奈さんと共に鶴屋さんと妹のいる部屋に向かった。
 
 
 俺たちの今の状況を知ってか知らずか、鶴屋さんは大きなあくびをすると、眠くなったから寝ると言い出した。
 どうやら勘の鋭い鶴屋さんは詳しい事情を説明する前に悟ったようだ。
後、朝比奈さんが口ごもりながらタドタドしく、
「あたしが急にいなくなって鶴屋さんに心配を掛けてしまったみたいで、あの、えーと、ごめんなさい。
えーと、皆いなくなってるのもお芝居だからあの、安心して休んでてください」
 と、困った表情で謝りながら言ったからだろう。鶴屋さんもそのしぐさを見て更にニヤニヤした笑みを浮かべてたしな。
 
 で、その鶴屋さんが、そのニヤニヤ顔を俺の方にきゅいっと向けて、
「そこの少年Kくんも一緒に寝るかい? この部屋、セミダブルのベッドが二台もあっから四人で仲良く寝れるよっ!」
 とんでもなく魅力的なお誘いだが、さすがにそれは辞退させてもらうことにする。というか明らかに鶴屋さんの冗談だしな。
それに俺はまだやらなきゃいけないこともあるんでね。
 てなわけで、ここは朝比奈さんに任せることにする。
 

391:新・孤島症候群 結 8/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:02:07.70 XZgcW1X70
 まあ、予想通り鶴屋さんと妹も未来に時間移動する結果となった。
眠っていた妹はそのまま、鶴屋さんは本当に眠っていたのか怪しかったが─ひょっとしたら狸寝入りだったのかも─
寝ている隙に朝比奈さんが長門と古泉たちのいる時間につれていった。
 
 しばらくして朝比奈さんが戻ってくると、俺は朝比奈さんを廊下の端の部屋に連れて行った。
その部屋は最後に俺とハルヒが入って消えた場所である。
 
 俺は朝比奈さんと最後の打ち合わせをする。
内容は俺とハルヒがこの部屋に入ってきたらすぐさまハルヒを眠らせて三人で時間移動をしてもらうことだ。
ここで手間取るとこの時間の俺に目撃されてしまうからな。
 頼みますよ、朝比奈さん。ここでドジっ娘メイドはやらなくて良いですからね。
ま、ハルヒが大声出して俺のことを呼ぶからそれが準備の合図になります。
「わかりました、なんとか涼宮さんに気付かれずに眠らせれるようにがんばります。ちょっと自信ないけど」
 
 朝比奈さんも普段はちょっとドジな部分も有るけど未来からの指令は結構きっちりとこなしているように思う。
これは俺の主観的な意見だが、朝比奈さんは集中力があり、どんなことにも一生懸命に取り組む姿勢があるからだろうと思う。
 そう言うことできっと朝比奈さんはうまくやり遂げると思う、なので俺がこれから考えなきゃならないのは、
その後のハルヒへのフォローだな、さて、どうするかな。ちゃんと考えておかないと、この後のことは完全に未知の領域だからな。
 
 考えながら俺は待機場所である俺の部屋に入った。
 とりあえずこの後に俺が話さなければならない会話を思い出しておかないといけないな。
一字一句間違いないかどうかは解らんが、大体あってれば良いだろう。
 あの時はそんなこと細かく覚えている暇もなかったし、違和感と不条理さで一杯だったからな。

392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:04:43.99 25a2vU6uO
支援

393:新・孤島症候群 結 9/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:05:43.06 XZgcW1X70
 そんなふうに頭の中でシミュレーションしている時だった。
 
 ぐうぅ……。
 
 部屋の隅の方からなにか音が聞こえてきた。ついでに何やら人の気配までする。
 おいおい待ってくれよ、ここまで来て話をややこしくするような事態は勘弁してもらいたいんだがな。
どこの誰かは知らないが自重してくれ、あと少しでこの事件は収束するところなんだからさ、たのむぜ、で、誰だ? 
 
「やだ、わたしったら、こんな時に……」
 その人物がベッドの影から現れた。
 頬をちょっと赤らめ、お腹の辺りをさすりながら、
「もうちょっとミステリアスに登場したかったんだけどなぁ、ふふ、お久しぶり、キョンくん」
「朝比奈さん!?」しかも大の方だ。
 でも俺としては数時間前に会ったばっかりで『お久しぶり』って感じではないんですけどね。
「あ、そっか、そうだったわね。わたしったら」
 ちろっと舌を出し、自分の頭をコツンと叩く朝比奈さん。
でもあなたにとって俺と久しぶりに会うんでしたらそれでいいんですよ。
そうだとしたら、俺の方がお久しぶりとちゃんと挨拶しないといけない立場じゃないですか。
 
 と、そこでまたもや、ぐうぅ……、っと朝比奈さんのお腹が鳴り出した。
 どうしたんです? ダイエットですか? ダイエットなんてしなくても朝比奈さんなら充分ナイスバディですよ。
それともひょっとして満足に食事も取れないほど極貧な生活でもしているんですか? 
 なぁんてことを顔を真っ赤にして照れている朝比奈さん(大)に訊ける訳もなく。
「こんな時じゃなかったら一緒に食事でもどうですか? と、言いたいところなんですが……」
 今の俺自身、身動きが取れない隠密行動中であり、ふらふらとあちこち出歩くことが出来ない身分なのだ。
それは朝比奈さん(大)の方にも言える事であり、お互いに異時間同位体がいるこの時間では隠密に行動するのがセオリーだろう。

394:新・孤島症候群 結 10/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:07:13.72 XZgcW1X70
「そうね、キョンくんの言う通り、いくら忙しかったからって食事くらいはきちんと取っておいた方がよかったわね、
今みたいに隠れてる時にお腹がなったりしたら大変なことになっちゃったかもしれない」
 照れ隠しなのか少し早口でしゃべる朝比奈さん、そういや最初の時間遡行の前に食事したっけな。
「そっか、それで無理やり俺に食事をさせたのか……」
 空腹じゃいくら気配を殺してもさっきの朝比奈さん(大)のようにお腹の音で誰かに気付かれてしまう可能性があるってわけか。
 
 それもあるが、あの時朝比奈さん(大)はお腹が空いてたってことだったのか。
それで普段よりよく食べてたってわけか。なるほどね。
「えーと、今の俺は無理ですが、このあとこの時間の俺となら食事できますよ、朝比奈さん。
なんせ俺たち以外誰もいなくなりますからね、気兼ねなしにいけますよ」
 ちょっとした提案だったのだが、よく考えてみると朝比奈さん(大)にとっては、
俺がここでこう言うって事もすべて既定事項なんだろうか? まぁそんなこと考えたってしかたない、
この後この朝比奈さんと食事したから酔い止め薬も飲めたし、大惨事にならなかったんだからな。
 
「え、キョンくんと二人きりで食事……。うん、そうね、それもいいかもね」
 朝比奈さん(大)は、その大人びた姿になっていてもやはり朝比奈さんだ、しぐさにかわいらしさが残っている。
それによほど空腹なんだったんだろう、食事と聞いて嬉しそうにしている。
 俺だって空腹の時は食べ物のことを考えただけで楽しい気分になるさ、レストランに行ってメニューを見てるときなんて最高だね。
 
 この後少しばかり話をしたが、たわいのない話しか出来なかった、
なんせちょっとでも未来の情報に関わることだと禁則事項となってしまうからな。
 だが、その中でこの事件について少し訊くことが出来た。
 どうやらコレは未来人が主催のサプライズパーティーって事らしい、
まぁ、詳しくは話せないらしいが要約するとそういうことなんだそうだ。

395:新・孤島症候群 結 11/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:10:11.34 XZgcW1X70
 それで、なんでこんなことをしようとしたのか? そういうことは古泉たち機関の方々の役目じゃなかったのかと訊いたら、
「あなた達と行動を共にしている過去のわたしは、もう高校三年生、
夏休みが終わったら進学、就職、卒業等の準備とかで色々と忙しくなるじゃない、今しか時間に余裕がなかったの。
だからもう一度あのバレンタイン間際の時みたいに二人だけで行動するような楽しい思い出が欲しかったのよ」
 そりゃ朝比奈さんと秘密を共有して二人だけで行動するってのは、どちらかと言われれば楽しいって方向になるだろう。
 でもあの騒動は俺にとっちゃ終始ハラハラの連続で、目の前で誘拐された朝比奈さんを追ってカーチェイスしたり、
つじつまあわせに翻弄したり、長門に謝ったり、とあんまりいい思い出じゃないんですが、
まあ最後にチョコをもらえたのが救いでした。よく考えたらそれで充分過ぎるほどいい思い出なのかもしれないが。
 
 つまり、とても大変で、その時にはとんでもなく迷惑だった事柄でも、その方が深く記憶に残り、いずれ良い思い出になる、
ってことなのか? うーん、そんなことをいわれても俺にはまだピンとこないがな。
 記憶と思い出の違いなんてさっぱりわからん。どっちも同じに思えてしまう、良い記憶が思い出で悪い記憶が後悔か? 
 
 
 そうこうしている内に、廊下からハルヒの話し声が聞こえてきた。
「さてと、そろそろ呼び出しかな、それじゃ、行ってきますね、朝比奈さん」
 笑顔で手を振り見送っている朝比奈さん(大)。
 俺もつられて手を振り返した、右手だ。
その手の平にバツ印が書かれているのを忘れていた俺は、それを朝比奈さん(大)に見られてクスリと笑われた。
 
 

396:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:10:49.45 3jRFlQy+O


397:新・孤島症候群 結 12/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:12:44.27 XZgcW1X70
「キョーンっ! 団長命令よっ、今すぐ出てきなさいっ!!」
 
 和やかな雰囲気を打ち壊す様にハルヒの声が響きわたった。
 まったく、なんてでかい声なんだ。そんな大声をだすな、ちゃんと聞こえてるよ。
 俺はガチャリと扉を開けて廊下に出た。
 勝ち誇ったような表情でこっちを向いたハルヒは俺を見てニヤリと口元をゆがませる。
「何者だお前」
 目を見開いて俺をみているこの時間の“俺”がつぶやくように呻いた。
 そうだった、普段聞き慣れているようで聞き慣れない声なんだったな。やっぱ違和感がする。
 
 俺は「ようっ」て感じに右手を上げて挨拶をした。もちろんハルヒに手の平が見えるようにだ。
ハルヒはそれを確認すると勝ち誇った感じでもう一人の“俺”の方に向き、
「何しらばっくれてるの、こっちが本物のキョンでしょ、どう? 観念した、偽キョンさん」
 よう、本物はどうやら俺の方だ、まあ、後のことはまかせろ、うまくやるからさ。
だからお前もなんとかうまくやれよ、ちょいっと苦労するが、終わっちまえばいつものことだと思うはずさ。
 
 
「と、言うわけでハルヒ、サプライズパーティはこれで終了だ、みんながあっちで待ってる、いくぞ」
「ちょっと何勝手に仕切ってるのよ、それよりあたしの見事な推理、ちゃんと聞いてた?」
 ほんとのところ朝比奈さん(大)と会話していて聞いちゃいなかったんだが、ハルヒの推理の内容はすでに既知していたので、
「ちゃんと聞いてたさ」っと、返事をしておく。そう、お前の推理が正解ってことにして、このまま大団円に向かうところさ。
 
 ハルヒはもう一人の俺について、
「見た目はほんとにそっくりね、その手の印がなきゃ、どっちがどっちか解らなくなるところだったわ」
 等と言っていたが、どっちも本物の俺なんだから当たり前だろ、と、本当のことを言えるはずもなく、
俺は適当に返事をしておくことにする。
「俺はどこにでもいるようなごく普通の人間だからな、そっくりに化けることくらい、
ちょいと練習すれば誰にでも出来るんじゃないのか? まあ、古泉達がどっかから見つけてきたんだろ。素質のあるヤツをさ」

398:新・孤島症候群 結 13/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:16:23.39 XZgcW1X70
「うーん、そっか、だったら有希やみくるちゃん、あたしのそっくりさんも古泉くんに探してきてもらおうかしら」
 二ヒヒ、っといやらしい笑い顔をして顔面の筋肉を弛緩させるハルヒ。
「あたしが二人に増えたりしたらみんなどんな顔するんだろ?」
 おいおい、お前が急に二人に増えてたら朝比奈さんなら間違いなく卒倒するはずだし、
あの長門ですら何かしらのリアクションを起こしそうだ。
 
 ていうか、俺が二人いて自分が驚かされたから、他の誰かも同じ手口で驚かせたいって発想だろ、それは。
はっきり言ってそんなのは小学生並みの単純な思考じゃないのかね、ハルヒくん。
それにお前は唯一無二の存在だろ。天上天下唯我独尊、それがSOS団団長、涼宮ハルヒだろ。
 なぁんてことを考えていたが、俺は口に出して言わなかった。今は余計なことを言わない方が良いと判断したからだ。
今は適当にハルヒに合わせておき、好きなように妄想させておけば朝比奈さんが行動しやすいんじゃないかと考えたのさ。
 
 そして朝比奈さんの待ち構えている部屋に入り、俺はこの時間でしなければならない最期の仕上げをする。
部屋に入る直前に、古泉並のエセスマイルをもう一人の“俺”に見せなければならないのだ。
自分ではどんな表情なのか鏡がないので確認できないが、まぁそれなりに悪びれた感じは出てるんじゃないかと思う。
 それが証拠にそのスマイルを見たもう一人の“俺”がハッと何かに気付いたように表情を変化させたからだ。
 
 さて、こっから超特急でやらなければならないことのオンパレードだ、と、言っても俺が出来ることは殆どないんだけどな、
頼みましたよ朝比奈さん。て、俺は祈るだけかよ。
 「あれ……」
 ハルヒが力なく崩れ落ちるように倒れ始めた。俺は何とかそれを受け止める。
 朝比奈さんがうまくハルヒの背後を取って眠らせるのに成功したのだ。小さくVサインをしている。
「後は時間移動です、おねがいします」
「はい、では目を閉じてください、行きますよ」
 朝比奈さんのセリフとドアの向こうからハルヒの名前を叫ぶ声が殆ど同時だった。
 
 

399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:16:33.03 3jRFlQy+O
しえん

400:新・孤島症候群 結 14/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:18:28.26 XZgcW1X70
    エピローグ
 
 
 まあ、これで事件は一応の終わりを迎えたってわけなのだが、残った問題はハルヒへのフォローだけだ。
ハルヒが気を失って眠ってしまったのは、事件の解決と同時に緊張がとけて、自分でも自覚していなかった疲労と、空腹感、
睡眠不足などが一気に押し寄せたため、と言うもっともらしい古泉の説明でなんとか納得したようだ。俺もそれに同意しておく。
 どうやらハルヒは理屈で説明すると納得するらしい。後、古泉が言うとそれらしく聞こえるそうだ、
それもひょっとしたらあいつの超能力の一種なのかもしれないな。
 
 ちなみに、俺の偽者は急用があると言うことで朝一番で帰ってしまったと言うことになっている。そのことについても、
古泉は苦しい言い訳をハルヒにしていたけどな。
 俺そっくりの人物を探してきたのはいいが、スケジュールの調整がうまく出来ず、本来ならこのサプライズパーティーは、
合宿の最終日にする予定だったのだが、どうしてもはずせない用事があって、急遽前倒しになってしまった、ということだそうだ。
 
 
 その後、説明好きの古泉には色々補足があったらしく、ハルヒが席を外している時に俺に語りかけてきた。
「なかなかいい経験をさせてもらいましたよ、ですが僕としてはもう少し長い期間の時間移動も経験してみたいですね、
特に、未来に飛ぶのではなく過去の方に行ってみたいというのが本音です」
 言っておくが過去に行ってもろくな事がないぞ、遠足みたいに自由行動なんてできないからな、それに、
結局まともに帰ってこれるのかどうかもあやしいんだ。長門に時間凍結されたり朝倉にナイフで刺されたりしたからな。
 
「そうですね、時間移動をするということはその時間で成すべき事があるからそこに向かうわけですから、
理由もなく時間移動は出きないんですよね」
 古泉は何か言いたげな表情を含んだ笑みを浮かべて俺の方を見る。
 なんだ? 何か言いたげだな、すでに俺は精神的にも肉体的にも疲労していて、
どちらかといえばお前の長話に付き合いたくはないんだがな。早くのんびりとしたサマーヴァケーションを味わいたいんだ。
 そんな俺のことなどお構いなしに古泉は語りだした。

401:新・孤島症候群 結 15/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:20:45.10 XZgcW1X70
「今回のこの事件、今までの時間移動と少し趣向が違うような気がしてならないんです。
はっきりいいますと、未来人らしくないといえます。このようなサプライズはどちらかといえば我々の分野です。
実際、今回のシナリオ通りのことなら機関ででも再現可能です」
 まったく聞く気はなかったし、この事件について少しばかり朝比奈さん(大)から訊いていたので聞き流すつもりだったのだが、
どうやら古泉は未来から現在に介入があるときは何かしら理由がある、と言いたいらしい。
 だが、そんなこと俺が考えることじゃないし、考えたから答えが出るわけでもない。
俺にとっては朝比奈さん(大)が言っていた、高校最後の夏休みだからみんなで過ごす楽しい思い出を作りたかった。
って理由で十分なのさ。
 それ以外になにかあるのか? 無いならそれでいいじゃないか。
 
「未来人の、いえ、別の出で立ちをした朝比奈さんの考えならそれで正しいのかもしれません、
ですが我々はもっと別の見解があるのですよ」
 ほう、一応聞いとくか。だいたい予想はつくが。
「すべて涼宮さんがそう望んだから、そうなったという見解です」
 やはりそうきたか。
「あの時、あなたが眠くなった妹さんと朝比奈さんと共に二階に行った時、まだまだ遊び足りなさそうな涼宮さんは、
もう少しあなたと、いえ、みんなと遊びたいと願ったのではないでしょうか。
その願いが未来人を介入させてこの事件を引き起こしたのかもしれません。
まあ、これはただの推測に過ぎませんが、涼宮さんが考えそうなことだと思いませんか?」
 
 
 結局古泉の考えを聞いたから何かが変わるわけでもなく、無駄な時間をすごした結果になっちまった。
 だが、俺にとってそんなことよりも一つ懸案事項が増えてしまったのが気になるところだ。
 それは、席をはずしていたハルヒが戻ってきた時に俺の中で沸きあがった。

402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:20:58.11 3jRFlQy+O


403:新・孤島症候群 結 16/16  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:23:16.35 XZgcW1X70
「ねえ、キョン、あたしが作った夜食のパスタどこに行ったか知らない? あぁ、あんたはその場にいなかったんだっけ、
その時にいたのは偽キョンだったわね。まあ、どっちでもいいわ、さっきそれのことを思い出して鶴屋さんの部屋に取りに行ったら、
誰かが全部食べちゃってたのよ、鶴屋さんも知らないって言うし、みくるちゃんと有希にも聞いたけど食べてないって言ってるのよ。
あの時考え事しながらだったから結構な量を作ったのよね、ちょっと一人では食べきれない量のはずなんだけど」
 ハルヒは隣にいた古泉の方にも問いただす。
 
 実は俺には心当たりがある、ていうか、食ったのは俺と朝比奈さん(大)なのだが、それでも平らげることはできない量だったのだ。
だから半分以上残していたはずなのだが、それがすべてなくなっていたって事はどういうことなんだ? 
 誰かが残りを食べたというならこの中にいるはずだ。しかし、全員に訊いて回ったところ誰も食べていないそうだ。
 
 まさか、俺たち以外に誰かいるってんじゃないだろうな。
お前が真の黒幕だろうとどうだっていい、少しくらいなら遊びに付き合ってやるからさ、だからハルヒ、へんな考えを起こすなよ。
 特に、俺たち以外に誰かがこの別荘にいる、なんてことをな。
 
「あ、すまんハルヒ、それなんだが実は俺の偽者のやつが食べてたぞ、て言うか俺も少しばかり食べちまったんだが……」
 誰かが犯人として名乗り出ればハルヒが変な考えを起こさないだろうと思ってとっさに手を上げてしまった。
 ハルヒが作った料理を無断で食べちまったからな、何か文句ぐらいは言ってくるだろうと思っていたが、意外とハルヒはおとなしく、
「ま、食べちゃったんならいいわ、偽者の方はともかく、あんたはあのパスタのことあたしが作った夜食だって知らなかったんでしょ? 
それに、あの後あたし朝まで寝てたから、せっかく作ったパスタが冷めて固まって食べられなくなるところだったしね」
 
 そのせいで俺の中に妙な考えが浮かんでしまったんだ。
ハルヒがあのパスタを食べたのが俺だと思い込めばそれが現実になるのではないか? という考えだ。
そうなれば、ひょっとしたら俺はハルヒの作ったパスタの残りを食べに、またもやあの時間に行くことになるのかもしれない。
 
 ──でも、もしそうなったら今度はちゃんと味わって食べようと思う。
 
 なんせ、ハルヒが作った料理は美味いからな。
 
 
      おわり

404:新・孤島症候群  ◆VDgHU0rDdk
08/05/26 15:26:24.85 XZgcW1X70
これで終了です、支援どうもでした。
 
書き始めたのが去年の12月だったから半年もかかってしまいました。
 
次回はもう少し短めのものを予定中。

405:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:32:38.61 3jRFlQy+O
乙です!
最初の方忘れてしまったからまとめで読んできます。


406:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:38:23.72 yDeA7jrm0
うおお、投下きてた!
作者さんGJでした!

407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:44:52.58 25a2vU6uO
まさか皆で時間移動するとは予想外だったぜw
GJ!

408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 15:45:27.49 6oEl960Z0
おぉ!投下きてたのか・・・
作者GJ

そして次の投下に期待・・・おれもなんか書いてみよっかな

409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 16:13:07.57 B1VIcIBY0


410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 16:25:19.85 GcwMvz0kO
作者さんお疲れ様でした。

411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 17:01:08.38 ORzDq8aPO
今夜8時頃投下するかもしれん

412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 17:03:02.71 6oEl960Z0
おぉ 投下まってるぜ!


413:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 17:07:04.89 ORzDq8aPO
IDが…orz

414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 17:46:41.23 25a2vU6uO
保守

415:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 17:53:48.89 yDeA7jrm0
本スレ復活したと思ったらもう500越えか
やはり本スレはいいなw

416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 18:18:06.16 6oEl960Z0
えいち おー えす わい ゆー
保守

417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 18:34:37.39 n2YGj16T0
保守

418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 19:31:45.16 /PbRj9WC0
ほしゅ

419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 19:43:55.38 501dwzFg0
SOS大戦の作者です。
>>522さんが投下を終了次第、僭越ながら第2話以降を投下させて頂きますm(__)m

420:みるく ◆MILKELR6d6
08/05/26 19:59:18.34 n10dlaGQ0 BE:1174723867-DIA(123555) 株主優待
やめてください

421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:07:48.68 /PbRj9WC0
ほしゅ

422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:12:06.78 ORzDq8aPO
>>530
紙に書いたのを打つのに予想外に激しく時間がかかりそうなのでどうぞお先に投下を!

423:SOS大戦第2話・1
08/05/26 20:19:17.61 501dwzFg0
>>533
了解です。では、お先に失礼しますm(__)m

 第2話『プレリュード』

 なぁハルヒ、俺たちなんでこんなもんに乗っちまったんだ?勢いで俺も乗っちまったが、こりゃ我ながら無謀極まりないね。
『なにボサっとしてんのよ!!いくわよ…あたしたちが学校を守るのよ!!』
 んなこと言われたってな……シートに座ったまでは良いが、お前が俺の膝の上に乗ってるおかげで、俺は前が見えねぇんだよ。
『あんたはそれでいいの。』
 ……は?
『いいから、あんたは言われた通りにしてなさい。……!くるわよ!!』
 なに?とハルヒの背中から顔を覗かせて正面を見るやいなや、機体がガクンと揺れる。いつの間にか接近してきた敵からの砲撃だ。
『うわっ!』
 思わず声を上げちまった。咄嗟のことに声が裏返ってたな、情けない。
 うぉっ!おいハルヒ!もうちょっと安全運転はできないのか!?このまんまじゃ酔いそうだ。
『仕方ないでしょ!これでも精一杯やってるのよ!!』
 珍しくハルヒがいっぱいいっぱいな様子で怒鳴っている。って当然か。それもそうだよな、今俺たちは……


 命のやり取りをしてる。


 いくら不思議体験を経験しようが、こればっかりは誰だって怖いだろう。確かに、俺は朝倉に命を狙われた。
 だからって命を狙われることに慣れるわけなんてねぇ。それに、あの時は長門たちが助けてくれた。
 今だってほとんど俺はなにもしてないかもしれない。でも前と同じくらい、いやそれ以上に頭の中がめちゃくちゃだ。
 俺でさえそうなんだ─ハルヒは、もっと辛いに決まってる。





424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:19:28.31 46kebisH0
支援

425:SOS大戦第2話・2
08/05/26 20:20:39.17 501dwzFg0
『ハルヒ!俺は何すりゃ良いんだ!?』
 いてもたってもいられなくなった俺は必死で叫ぶ。
『あんたは─そうね、武器は何があるのか確認しなさい!それと、余裕があったら左右の敵の確認をお願い。回避運動と攻撃はあたしがやるわ!』
 分かった……ってお前は武器の準備もせずに飛び出したのかよ!?まぁ、回避運動をしっかりやってくれるというのには安心した。コンピ研とのゲーム対決の時みたいに突っ込むだけじゃないんだな。
『武器ならあるわよ?手があれば殴れるじゃない。』
 ……前言撤回!やめろ!無茶だ!!
『そーら、いくわよ害虫ロボ!!』
 ハルヒは勢いよくゲシュペンストのブーストをふかし、正面の4機の虫メカのうちの右端の機体に向かって突っ込んだ。
『バカ!撃たれるって!』
 必死に抗議の声を上げる。というのも、敵が一斉に砲撃を開始してきたからだ。こういう時は避けながら撃つのがセオリーじゃ……
『うおおぉぉぉ!』
 目の前のビームを避けようとしたのか、機体が凄い勢いで右に平行移動する。今のは、その時の俺の叫び声だ。
『いちいちうるさいわよ!キョン!耳元で怒鳴るな!』
 ハルヒは怒鳴りつつも器用に敵の攻撃を避けながら─いや、正確には被弾しているのだが、さほど致命傷ではないらしい─機体を少し上昇させる。
『……食らいなさい!超ウルトラスーパーSOSパァァーンチ!!』
 わけの解らん即席であろう必殺技名を叫びながら、機体を敵に向かって急降下させやがった。お前、体当たりでもする気か!!
 そう俺が言おうとした瞬間、俺とハルヒの乗った機体は凄まじい勢いで敵にナックルを入れていた。そういえばパンチ、って言ってたなこいつ。
 と、俺は悠長なことを考えていたが、実際は目の前の─正確には必死にハルヒの背中の横から顔を出してだが─光景に驚かされた。
 俺たちの乗っている機体に殴られた敵機が、結構な距離吹っ飛んでいったからだ。
『なによ、たいした威力じゃないわね。』
 そうか?素人にしちゃ上出来だと思うぞ。そう頭の中でハルヒにつっこみを入れつつ、俺はコックピット右側にある小さなディスプレイ上で装備を確認していた。
 ん?これは。
『ハルヒ!何か見つけたぞ!』
『武器?ならさっさと装備させなさい!こっちは回避するので精一杯なんだから!!』
 確かに、さっきより敵の攻撃が激しくなった気がする。結構被弾もしてるし、やばいんじゃねぇのかこれは!
 焦りと恐怖で、俺の操作パネルをいじくる手は震えていた。それでも、このままじゃマズイ。せめて、武器の装備ぐらいは俺だって─。

426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:21:07.23 46kebisH0
支援

427:SOS大戦第2話・3
08/05/26 20:21:42.04 501dwzFg0
『こいつ、銃を装備してるみたいだ。右腕で取れるか!?』
『ん─。ホントだ!見つけたわよ!』
 よし、これで中距離戦ができるはずだ。頼むぞ、ハルヒ!
『言われるまでもないわ!そーら、堕ちなさい!あんたたち!』
 ハルヒはめちゃめちゃに連射しまくった。それでも結構な割合で敵に命中させてるのは流石だな。でも─うぉお!?
 機体が激しく揺れる。しまった、横からの攻撃か!?
『ちょっとキョン!ちゃんと見ときなさいよ!!』
 すまん。って今のは学校の裏側から来たやつか?そういえば敵は合計で5体だったな…。この機体、まだ大丈夫なんだろうな?
『やった!一機撃破よ!!』
 マジか。でもなハルヒ、あと4体もいるんだぞ?ここは少し下がってだな…
『うるさい!!それにもう一機やったわ。』
 なんだと!?あと3機か……ってなにも怒鳴らなくてもいいだろうに。

 ガクン─! 
 
 正面からの凄まじい衝撃と、鈍い音を同時に味わった。膝に座っていたハルヒが俺の胸に勢いよく倒れこんできた。
『─ハルヒ!!大丈夫か!?』
『だ、大丈夫よ。あたしはいいから、あんたは?』
『俺は平気だが……それより!』
『えぇ、ちょっとマズいわね…。』
 衝撃の正体─それは正面にいた敵機のうちの一機が体当たりを仕掛けてきやがったのだ。
 敵の機体が光る─これは!!
『う、撃たれるっ!!』
  
 
 あぁ─撃たれる。こんなところで俺たちはやられるのか?ちくしょう、俺はまだ今日朝比奈さんのお茶を飲んでないんだぞ。長門たちも心配だ。せめて、せめてあいつらの安否の確認だけでも─

428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:21:48.47 46kebisH0
支援+なんか問題が発生したら下記スレへ
URLリンク(yy42.60.kg)

429:SOS大戦第2話・4
08/05/26 20:23:04.29 501dwzFg0
『─ット─グ─ム!!』 
 ハルヒが何か叫んだようだが、放心状態にあった俺の耳にはその声は届かなかった。

 グシャァァァァァァ!! 
 
 な、なんだ!?敵は─?俺たちは無事なのか!? 
 目の前のモニターを凝視する。俺たちの機体に特攻を仕掛けてきたであろう虫メカは、遥か遠方に吹き飛んで爆散した。
『一体─なにが起こったんだ…?』
 正面モニターには、ゲシュペンスト(だっけか?)の腕が少し映っている。あのー……何か機体の腕がバチバチしてるんですけど…。 
『なんだ、こうやって殴れば良かったのね。』
 ハルヒは妙に納得しているようだった。何をどうしたんだ?端的に説明してくれ。
『腕にプラズマステークとかいうのが付いてるみたいでね、それを起動して殴るの。』 
 いや、さっぱりわからん。 
『要はそういう装備なのよ。この技、ジェットマグナムって言うらしいわ。まぁ悪くは無いけど、名前のセンスは40点ってとこね。』 
 なんだそれは。いや、そんなことはどうでもいい。要はそれを起動して腕にエネルギーを集めて、それで殴るってことだろ。きっと。 
 あと─2機か。ん?なんだ?コックピットがピーピー言い出したぞ!? 
『え!?うそ……。』 
『どうしたんだ!?ハルヒ!』 
『エネルギー、ヤバいみたい…。』 
 少し引きつった笑みでハルヒは言った。それって……無くなったら攻撃できなくなったり、動けなくなったりしちゃうのか? 
『そうでしょうね……っつ!!』 
 俺たちの会話を引き裂くように、残りの敵機2機が猛攻撃を仕掛けてきた。ヤバい、マジでやられるって! 
『ピピー、ピー』 
 なんだ?これは─通信、か!? 
『ちょっとキョン!何よこの音!集中できないから静かにさせて!』 
 もう怒鳴るななんて返事を返す時間も惜しい。俺は一縷の望みをかけ、前に手を伸ばし通信機のスイッチを入れる。 
『──誰か乗っているの?』

430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:23:22.62 46kebisH0
支援

431:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:23:51.60 ruxPDPwS0
支援

432:SOS大戦第2話・5
08/05/26 20:24:12.69 501dwzFg0
 聞き覚えのあるような声だった。いや、正確にはトーンが似てるというか…。とりあえずハルヒは忙しそうなので、俺が話すことにする。 
『乗ってる!今敵に襲われてるんだ!なんとか3機は撃退したんだが、あと2機残ってる。エネルギーがもう少ない!』 
 俺は無我夢中に話した。今思えば、相手は軍人の可能性が高いんだから敬語の一つでも使うべきだったかな。いや、そんな気を配っている余裕は無い。 
『…場所は?』 
 俺は学校のグランドで襲われていることを手短に伝えた。その間にも、俺たちの機体は数発被弾している。 
『確認した。近くにその輸送機の護衛機がいる。今向かっている。』 
 相手は軍人なのだろうか、いたって冷静だ。しかし相手が軍人に思えないのには理由がある、その通信機越しの声が、俺たちより幼いであろう女の子の声だったからだ。 
 数発の射撃を避けた後、ハルヒがとんでもないことを言いやがった。 
『2機いるとやっかいだわ。さっきので1機潰すわよ!』 
『無茶言うな!もうすぐ助けが来る、逃げ回った方が良い!』 
『あんた解ってんの!?学校には有希たちもいるかもしれないよ!』 
 言われるまでもない。敵も隙を付いて学校に砲撃を咬まそうとしてるみたいだしな。でも、もう無理だ。エネルギーが尽きかけてるし、装甲もレッドゾーンに入ってるんだぞ! 
『たまには─団長を信用しなさいよね…!』 
 正直、拍子抜けした。てっきり怒鳴られるものだと思ってたのだが、ハルヒは弱弱しくそう呟いただけだった。そもそも、別にお前を信用してないわけじゃ─ 
 物凄いスピードで機体が加速を始めた。やっぱ、こうなるのかよ! 
『正義の鉄槌を下してあげるわ!』 
 今度は左の敵か?頼む。もうこうなったら上手くやってくれ! 

『プラズマステーク、セット!』

 グォォォォォ。 
 機体が加速度を増す。 
『ジェット──』 
 ハルヒは敵機の正面からの攻撃を避けつつ、叫んでいる。ほんとに…器用なやつだぜ。 
 そして── 
『マグナムっ!!!』

433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:24:28.86 46kebisH0
支援

434:SOS大戦第2話・6
08/05/26 20:25:08.31 501dwzFg0
ズガァァァァァン。 

 命中した。敵機は吹き飛び、そして大破─。よくやるぜ、まったく。 
 しかしまだ油断はできないな、あと一機─ってん!?
 手元の操作パネルとウインドウに目をやる。うそだろ……エネルギー残量、0だと…? 

 シュゥゥゥゥゥ。 

 俺たちを乗せた機体は静かにその場で停止した。マズいって!目の前に敵が─ 
『そんな……!あと、一機なのに…!』 
 ハルヒもようやく事態を理解したらしい。おいおい、今度ばっかりはもう本当にどうしようも無いんじゃ─ 

 ズガァァァァァァァァァァン! 
 一瞬、何が起こったのか理解できなかった。ふと正面モニターを見ると、俺たちの乗っているのと同じ機体が最後の一機を撃ってくれたらしい。
 助けがきた─そう思ったのもつかの間、援護に入ってきた機体も爆発した。 
『なっ……!』 
 またも俺はマヌケな声を上げる。まさか─他にも敵がいて、そいつらと交戦してボロボロの状態で俺たちを助けてくれたのか……? 
『助かったみたいね、あたしたち……。』
 ああ、俺たち『は』な……。 
 やり切れん想いで呆然としていると、再び通信が入ってきた。今度はハルヒがスイッチを押す。
『大丈夫。パイロットは脱出した。』
 さっきの通信相手。そうなのか?少しホッとしたぜ…。 
『あんた誰?さっきの虫メカは何なのよ!?何でうちの高校が襲撃されなきゃならないわけ!?説明しなさい!!』 
 声に怒りをこめてハルヒが怒鳴る。落ち着け、相手は俺たちを助けてくれたっぽいパイロットの仲間みたいだぞ。 
『そんなの関係ないわよ!って─』 
 通信が途絶えた。エネルギーが切れていたが、予備電源で動いてたのか?その電源も切れたか、単純にダメージを受け過ぎての故障か、だな。 

435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:25:13.92 46kebisH0
支援

436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:26:51.99 ruxPDPwS0
支援

437:SOS大戦第2話・7
08/05/26 20:27:49.19 501dwzFg0
『そんなこと言われなくても解ってるわよ!ほら、さっさと降りるわよ!有希たちを探しにいきましょ。』 
 元気の良いやつだ。さっきまで俺たち、闘ってたんだぞ?まぁ、俺はほとんど何もしてないが……。 

『何言ってんのよ?中々のアシストだったわよ。』 
 なに?お前、まさか褒めてくれてるのか?ってか古泉曰く、相当ストレス溜まってるんじゃなかったのか? 
 頭の中を疑問符が駆け巡るが、ハルヒの一瞬の笑顔がそれを消し去った。 
 なんだよ、なんだか解らんが機嫌は悪くはないっぽいぞ、古泉。 

 ハルヒの後を追うように俺も駆け出す。正直酔っていたが、俺もみんなが心配だしな。 

 ─しかし、この一戦はほんの始まりでしかなかったのだ。


また最後だけ短くなってしまいましたorz支援して下さってる皆様、ありがとうございます!
第3話は現在執筆中です。投下できそうだったら、今日中に投下させて頂きますm(__)m

438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:28:50.24 46kebisH0
>>548
乙乙! がんばって続きを書いてくれ。クロスものは未完率が異常に高いから完走してほしい。

439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:34:25.99 ruxPDPwS0
>>548
乙!途中で燃え尽きないよう頑張れ!

さて、俺も続きを書かんとな

440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:43:28.26 46kebisH0
保守

441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:44:57.00 RDyPrqwQ0
 SSを投稿するのははじめてなんですが、このタイミングでここに投稿しても大丈夫でしょうか?
 ちなみに、内容は舞台世界改変ものなのですが・・・
 

442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:46:37.99 BRrZoJnoO
>>530
どぞ

443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:51:21.91 46kebisH0
>>552
おk。ただし連載なら完結させるのは義務だ。

444:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 20:52:35.18 RDyPrqwQ0
正式な題名は最初は禁則事項にさせてくださいませ。

それでは、

第一話 ジ・O すべてのはじまり

 サンタクロースをいつまで信じていたか、なんてことはたわいのない世間話にもならないどうでもいいような話だが、サンタクロースが実在することを知ったのは、実にごく最近のことである。

 まあ、年に一日クリスマスにしか仕事をしないと信じられている北欧にいるらしい赤服の爺さんに実際に会ったわけではないのだが、それが存在することを信じるに足る体験を、俺は高校一年の若さでするはめになった。

 とりあえず、俺をこんな状態に追い込んだ元凶との出会いから語ることにしよう。
そう、それは忘れもしない入学早々、真後ろの席から聞こえてきたこんな発言からはじまった。

 「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、異世界人、超能力者、その他普通の人間ではないものがいたら、わたしのところに来なさい。以上。」

 ここで振り向いていなければという考えは、今ならば浮かぶが、こんな電波な自己紹介を聞いて振り向かない人間はいないだろうな。俺の記憶ではクラスの全員が振り向いていた気がする。
 
 当然、俺も振り向いて、そこにえらい美人の姿を見出すことになった。
 
 それが、俺の脳内自叙伝の中では、おそらく涼宮ハルヒとの最初の出会いという題になるのだろう。

 最初の電波な自己紹介の件を除けば、涼宮ハルヒはごく普通の女子高生にみえた。そう、当時はそう見えた。俺が、やつのまん前の席であることもあって声をかけてしまったことはそれほど不思議なことではないだろう。
 

 それが、平凡な日常の崩壊のはじまりとも知らずに・・・

445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:55:02.48 46kebisH0
支援

446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:55:21.26 ruxPDPwS0
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447:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 20:59:15.45 RDyPrqwQ0
 「なあ、しょっぱなの自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんだ?」

 腕組みをして不機嫌そうな表情・・・この表情は入学式の日から一度も変化していなかった・・・をデフォルトにしていた涼宮ハルヒは、眉ひとつ動かすことなく、その睨むような視線を俺に向けてきた。

 「しょっぱなのアレって何。」

 「いや宇宙人とか人間じゃないものがどうとか?」

 「あんた、宇宙人なの?それとも幽霊とでもいうつもり?」

 俺を睨む目がさらに鋭くなっていた。

 「・・・違うけどさ」

 「違うけど、なんなの?」

 「・・・いやなんでもない」

 「だったら話かけないで。時間の無駄だから」

 思わず、謝りたくなるようなそんな視線だった。ただひとつ、こいつが自己紹介でいったことが、冗談などではないこと、真剣な発言であったことだけが伝わってきた。まさしく、鋭い針で刺すようにではあったが・・・

448:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 20:59:38.38 46kebisH0
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449:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:01:07.45 ruxPDPwS0
支援

450:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:02:10.69 RDyPrqwQ0
 涼宮ハルヒの過去の奇行の数々が耳に入りだしたのは、それから間もなくのことだった。

 中学時代クラスメイトだった国木田の近くの席になった谷口というやつが、涼宮とおなじ東中出身で三年間ずっと同じクラスだったことから、実に様々な情報をご教授くださったわけである。

 校庭一面に絵文字を書いた事件。(これは市内でもちょっと話題になった、なにぶん関東であんなことがあった後だったため、何か起こるのではないかとかデマすら飛び交っていたな)
 クラス中の机を廊下に出して教室いっぱいに赤チョークで魔方陣のようなものを書いたこと。
 廊下中に御札を貼ったなどさまざまな武勇伝(というのかね?)を聞く羽目になった。

 また、涼宮ハルヒの男性遍歴とやらも教授してくれた。まあ、男性遍歴といっても、性的な意味じゃなく、最長一週間、最短五分という告白されてから振るまでの話題ではあったが。
 
 ちなみに谷口は否定していたが、振られたやつのひとりはおそらく谷口であろうというのは、俺と国木田の感想である。
 というか、谷口よ、もうちょっと上手に誤魔化さないとバレバレだと思うのだが。。。なんで最短五分のやつの展開だけみょーに丁寧だったのかね?しかも、心理描写のオマケつきで。

 四月は、涼宮ハルヒも比較的おとなしかった。まあ、後になれば比較的おとなしかったなあ。。。という程度ではあったが・・・涼宮ハルヒのハルヒらしい行動の片鱗はその頃徐々に現れていたわけだ。

 片鱗その1
 髪型が毎日変わる。腰に届くほどの長髪なのだが、月曜日はストレート、火曜日はポニーテール(これがまた、よく似合っていた)、水曜日にはツインテールになりと髪を結ぶ箇所が増えていく。日曜日は一体どんな髪型なんだ?

 片鱗その2
 体育の授業は2クラス男女別で行われるので、男子は隣のクラスで着替えることになっているのだが、ハルヒはまだ男子がいるうちに服を脱ぎ始めたのだ。
 その結果、体育の授業の直前の休み時間になり次第、男子一同は着替えを持って、隣のクラスへ移動するのが規定事項になってしまった。
 ハルヒには、普通の男子高校生はジャガイモ程度にしか思えないらしい。

 片鱗その3
 休み時間、放課後にはすぐに姿を消す。
 休み時間には、プールやら部室棟やらはては校長室まで、学校中すべてを確認しているかのように見て回っているらしい。四月のプールになんの用があるというのだろうか?屋外プールだから水は緑色してるぞ?ミジンコの観察かね。
 放課後消えるのは、帰宅しているのかと思えば、実はすべての部活動に仮入部していたらしい。ちなみに、そのすべての部の先輩方から入部を勧められていた。
 これは休み時間になると訪ねてくる上級生が現れるようになってはじめて知ったことである・・・涼宮ハルヒは例によって姿を消していたのだが。

451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:02:31.68 46kebisH0
支援

452:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:03:57.60 RDyPrqwQ0
 まあ、やつの奇行はすぐに話題になり、北高のほとんどの人間が涼宮ハルヒという奇妙な新入生の存在を認識し始めていたが、これがこれから起こることの序章であるなんて誰も予想してなかったはずだ・・・俺を含めて。

 カレンダーのいたずらで普通よりちょっと長いゴールデンウィークが訪れた。谷口はゴールデンウィークには女の子とデートだ、と休み前に言っていたが、結局のところそれはまさしく企画倒れに終わったらしい。
 俺の方は、親に言われて、小学生の妹と高校入学祝いのお礼も兼ねて、島根の祖母の家に出かけたものだ。
 特に変わったことはなかったと思うが、偶然訪れていた遠縁という渡橋のおばさんから臨時収入を得られたのは、ゲンキンなことだが、ちょっとラッキーと思ったものである。

 そう・・・今まで一度もあったことのないおばさんだったことを気に留めなかったとしてもそれは仕方ないことだろう?

 そして、運命のカミサマとやらが悪戯をはじめたのは、ゴールデンウィーク明け初日だった。まあ、その頃はそんな存在まったく信じてはいなかったがね。
 
 俺より先に席についていた後ろのツインテールに、なんの気の迷いか再び声をかけてしまった。

 「曜日で髪型を変えるのは宇宙人対策か?」

 ハルヒはデフォルトの表情を崩すことなく視線に鋭さを加えた。驚きが混じっていたのだろうが、ハルヒ研究家(この頃はまだいなかった)以外にはわからなかっただろう。
 また、氷の槍(アイスランス)のような返答が来るだろうと身構えていたが、ちょっとだけ違っていた。
 
「いつ気付いたの。」

そう言われればいつからだっただろう。

 「んー・・・ちょっと前」

 「あっそう」

 ハルヒは頬杖をついて、こっちを凝視しながら面倒くさそうに答えてきた。

 「あたし、思うんだけど、曜日によって感じるイメージってそれぞれ異なる気がするのよね。」

 初めて会話が成立した瞬間だった。

453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:04:08.24 46kebisH0
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454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:04:37.31 ruxPDPwS0
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455:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:05:52.68 RDyPrqwQ0
 「色で言うと、月曜は黄色、火曜が赤で水曜が青で木曜が緑、金曜は金色で土曜は茶色、日曜は白よね。」

 陰陽五行説かね。とも思わないでもなかったが、わからなくもなかった。

 「つうことは、数字にしたら月曜が零で日曜が六なのか?」

 「そう」

 「俺は月曜が一って感じがするけどな」

 「あんたの意見なんか聞いてない」

 「・・・・・・そうかい」

 投げやりな返事を返した俺が気に入らなかったのか、ハルヒはデフォルトの表情にさらにきつい眼光を乗せてこっちを睨んできた。
さすがに沈黙が続くと精神的に厳しいな・・・と感じた頃、

 「あたし、あんたとどこかで会ったことある?ずっと前に」

 と訊いてきた。

 「いいや」

 あるきっかけが状況を一変させることがあることは、本などで読んだことがないわけでもないが、自分の身に降りかかるなんてほとんどの人間は予想しないものだ。
しかし、まさしくそれがきっかけだったわけだ。

 運命の歯車というのか?それは静かにしかし着実に動き始めていた。

456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:06:07.50 46kebisH0
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457:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:06:49.18 RDyPrqwQ0
 翌日、俺を驚かせたのはハルヒが法則に反した髪型だったこと・・・というか、腰まで届くほど長かった麗しい黒髪を肩の辺りで切りそろえていたのだ。
それは活動的な性格を表しているようで実にハルヒらしくめちゃくちゃ似合っていたんだが、しかしなんの心境の変化だ?
 俺が指摘した次の日に短くするってのも短絡的にすぎないか?

 そのことについて尋ねたが、まあ予想通りまともな返事は返ってこなかった。

 それでも、それから俺とハルヒが会話する機会がわずかに増えた。まあ、ハルヒは休み時間や放課後はすぐ姿を消すから、朝のHR前のわずかな時間だけであったが。

 クラブ活動のこと、中学時代の男性遍歴のこと・・・

 まあ、たわいもない話ではあった。
 その中でわかってきたことは、涼宮ハルヒは何か面白いことを求めることに実に真剣であるということだった。
 その点に関して、十年近く前にそんな気持ちを失い、平凡というか倦怠した日々に満足している俺がわずかながらうらやましいと感じたなんてことは否定したい。絶対に。

 数日すると、俺とハルヒの関係がクラス中の話題になっていることを自称親友の谷口が教えてくれた。
 最初はなんのことかわからなかったが、谷口に言わせると、中学時代を通して、ハルヒとこれほど会話を成立させたやつはいなかったとのことであった。
 ハルヒの心境の変化じゃないのかね?とも思ったが、クラス委員長になった朝倉 涼子やふるい付き合いの国木田にまでそれを指摘されるとさすがに否定することは困難だった。

 しかし、ハルヒの友達として公認というのが。。。ちょっとな。俺は、ハルヒのデフォルトの不満げな表情しかみていないし。

 それからも、ハルヒとは毎日のように会話を交えていた。まあ、ハルヒの愚痴を聞く日々だったわけで・・・さすがに飽きてきた俺は、変わらない日常と仮入部して納得いく部活に出会えないことへの不満を今日も漏らしていたハルヒに意見してやった。

458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:06:58.90 46kebisH0
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459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:07:49.22 ruxPDPwS0
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460:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:08:49.46 RDyPrqwQ0
 「結局のところ、人間はそこにあるもんで満足しなければならないのさ。それが出来ない人間が、発明やら思索やらをして文明を発達させてきたんだ。
 空を飛びたいと思ったから飛行機を作ったし、楽に移動するために車や電車を作り上げたんだ。でも、それは一部の特別な人間の才覚や発想によって生じたものなんだ。
 まあ、天才がそれを可能にしたわけだ。凡人たる俺たちは、人生を凡庸に過ごすのが一番であってだな。分不相応な冒険心なんか出さないほうが・・・」

 「うるさい」

 ハルヒは俺の演説を中断させて、窓の外に目線向けた。かなり、機嫌を損ねたのはさすがにわかった。
 しかしなあ、ハルヒよ、現実から乖離した現象なんて、そうそう起こるものじゃない。それはお前だってよくわかっているんじゃないのか?
 普通の日々に感謝する気持ち持っても悪くはないだろ?などと思っていたが、このときハルヒの心情に大きな変化が生じているなんて思いもしないさ。俺は読心術なんて使えない普通の高校生だったからな。

 しかし、さきほどの会話がネタ振りにだったのは間違いない。
 それは突然やって来た。

 春のうららかな日差しは実に眠気を誘う、まして午後の授業となればなおさらだった。
 うつらうつら授業を聞き流していたのはたしかに咎められることかもしれないが、襟首をわしづかみにされて後ろに引っ張られ後頭部をハルヒの席の机の角にぶつけられるとは思わなかった。

 うむ、頭に強い衝撃を受けると目の前に星がチカチカするというのは本当だな。
 などと思いながら、俺は振り返り、叫んでいた。

 「何しやがる!」

 そこには驚くべきものがあった。
 それは、俺が初めて見る涼宮ハルヒの笑顔だった。
 それは真夏のひまわりのようで、ハルヒの強い意志を示す大きな瞳に映えるもので・・・なんというか、子供が宝物を見つけた表情とでもいうのだろうか。まあ、それなりに魅力的ではあったさ。認めたくはないけどな。

461:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:08:56.95 46kebisH0
支援

462:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:10:39.15 RDyPrqwQ0
 「気づいたのよ!」

 ハルヒは唾を飛ばして叫んでいた。

 「どうしてこんな簡単なことに気づかなかったのかしら!」

 ハルヒは一光年先に接近した天狼星もかくやという輝く瞳を俺に向けてきた。しかたないので、俺は尋ねた。

 「何に気づいたんだ?」

 「ないんだったら自分で作ればいいのよ!」

 「何を」

 「部活よ!」

 めまいを感じたのは、頭を机にぶつけたせいではないだろう。

 「そうか。そりゃよかったな。ところでそろそろ手を離してくれ」

 ハルヒが無意識に締め上げる襟首の手を離すようにと俺はいった。

 「なに?その反応。もうちょっとあんたも喜びなさいよ。この発見を」

 「その発見とやらは後で詳しく聞いてやる。状況しだいではよろこびをわかちあってもいい。ただ、今は静かにしろ」
 
 「なんで?」

 「授業中だ」

463:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:11:41.35 RDyPrqwQ0
 ようやくハルヒは俺の襟首から手を離した。
 おれは、教卓の方に振り返り、こちらを見つめる全クラスメイトと今にも泣き出しそうな表情を浮かべている今年から教壇にたっているという女教師を視界に確認することになった。
 どうぞ、授業の続きを・・・と手で合図した。ハルヒはなにやらぶつぶつ言っていたが、とりあえず授業中は無視した。

 で、俺はなんでこんなところにいるんだ?

 俺は今屋上へとつながる踊場で、涼宮ハルヒにネクタイをつかまれている。うむ、状況次第ではほぼ間違いなくカツアゲの風景にみえるな教師が見かけたらなんといわれることやら。まったく、こんなところに連れ込んで俺をどうするつもりなんだ?

 「協力しなさい」

 ハルヒは言った。

 「あたしの新クラブづくりに協力しろといってるのよ!」

 俺がいまいち理解できない表情をしてるのを読み取ってハルヒは言い直した。ちょっと語気が強くなってる。

 「なんで俺がお前の思いつきに協力しなければならんのか、それをまず教えてくれ」

 「あたしは部室と部員を確保するから、あんたは学校に提出書類を揃えなさい」

 ああ、聞いちゃいないし。

 「ああ、そうそう実は部室は確保してあるのよ。ついてきなさい。」

 俺はそのまま引きずるように引っ張るハルヒを止めるのに必死で、協力の有無を答える余裕すらなかった。

464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:11:50.03 ruxPDPwS0
支援

465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:12:08.17 46kebisH0
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466:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:12:49.77 RDyPrqwQ0
 「なによ?」

 「部室とやらにいくのはいいのだが、まず教室に戻ってかばんをとってこないと、週番が帰ったら、教室に鍵がかけられるぞ?」

 「教室の鍵ねえ。外すのは簡単だけど・・・まあ、一理あるわね。」

 物騒な発言があった気がするが、それは無視しよう。

 で、かばんを回収した俺は、結局ハルヒに引きづられるように、部室棟へいくことになった。あれ、なんでこんなことに?

 その疑問の答えを得る前に、部室棟三階のひとつのドアをハルヒは壊れるんじゃないかという勢いであけた。

 「ここよ!」

 その部屋は意外と広かった。長テーブルとパイプ椅子がいくつか。まあ、意外なほどに多いのは左側の壁天井までの全面とドア左側の一部まで覆うように存在する本がぎっしり詰まった本棚くらいだった。
 老朽化が目立つこの建物の床が抜けるんじゃないか・・・などといらぬ心配をしながら、室内を見回す。

 そこにはこの部屋のオマケのように、一人の少女がパイプ椅子に腰掛けて分厚いハードカバーを読んでいた。

 「これからこの部屋がわたしたちの部室よ!」

 両手を広げてハルヒが宣言した。まあ、神々しいまでの笑顔に彩られている。普段もその表情なら、教室でも孤立することはないだろうに。などとは口にはしなかったが、かわりに俺はひとつの疑問を口にした。

467:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:13:03.73 46kebisH0
支援

468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:13:28.35 ruxPDPwS0
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469:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:13:30.15 RDyPrqwQ0
 「ちょっと待て。どこなんだよ、ここは」

 「文化系の部活動のための部室棟よ。そしてここは文芸部の部屋」

 「じゃあ、文芸部なんだろ」

 「でも今年の春三年が卒業して部員ゼロ。新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。でこの子が一年生唯一の新入部員」

 「てことは休部になってないじゃないか」

 「似たようなもんよ。一人しかいないんだから。それにこの子の許可は取ったわよ」

 そういわれて、俺はさっきから俺たちを無視して読書に耽る少女に目を向けた。眼鏡をかけた髪の短いおとなしそうな少女だ。

 「本当に許可を取ったのか?」

 脅迫とかしたんじゃないかと心配して確認してしまった。

 「前に仮入部で知り合っていたから、休み時間に会いにいって部室貸してって言ったら、どうぞって。本さえ読めればいいらしいわ。変わっているといえば変っているわね」

 ハルヒよ、お前がいうかね。

 しかし、本当にいいのか?とその少女に視線を向けていると、ふいに少女が本から目線をあげて、俺たちの方をみた。

 「長門有希」

 と平坦な声でいった。どうやら自己紹介だったらしい。

470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:14:02.61 46kebisH0
支援

471:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:14:12.48 RDyPrqwQ0
 それで用が済んだとでもいうように、少女は本に目線を戻し、再び読書に戻った。

 「長門さんとやら」俺は声をかけた。「こいつはこの部室を何だか解らん部の部室にしようとしてんだぞ。それでもいいのか?」

 「いい」

 長門有希は本から目をそらすことなく答えた。

 「いや、多分ものすごく迷惑をかけると思うぞ」

 「別に」

 「そのうち追い出されるかもしれんぞ?」

 「どうぞ」

 うむ、まるで無感動というか感情がないかのような返答だ。心の底からどうでもいいと思っているのだろうか?

 「まっ、そういうことだから」

 ハルヒが先ほどの宣言を続ける。

 「これから放課後、この部室に集合ね。絶対来なさいよ。来ないと死刑だから」

 お前は小学生か!というツッコミは封印した。ハルヒの満開の笑顔で言われたから、不承不承ながらうなずいた。
 死刑はいやだったからな・・・そういうことにしておいた。

472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:15:02.85 ruxPDPwS0
支援

473:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:15:35.87 RDyPrqwQ0
 次の日の放課後。

 俺が文芸部室を訪れると、俺より先に姿を消していたハルヒの姿はなく、今日も本を読みふける長門有希の姿だけがあった。

 沈黙・・・静寂・・・

 うわあ、いたたまれねえ。
 しかたなく、パイプ椅子のひとつに腰掛け、本棚に目を向けていたが、特に興味を持つ題名も見当たらず、長門有希の方を見れば読書に没頭中。この頃の俺はまだ長門の沈黙に慣れていなかった。

 「・・・・・・何を読んでいるんだ?」

 沈黙に耐えかねて、俺は長門有希に声をかけた。長門有希は返事の代わりにハードカバーの背表紙を俺に見せてきた。睡眠薬かなにかみたいなカタカナが踊っている題名でSF小説らしい程度しかわからなかった。

 「面白いのか?」

 俺のその問いに、長門有希は眼鏡に手をやり、平坦な声で答えた。

 「興味深い」

 とりあえず答えているという感じだ。その後も、本が好きなのかとか、たわいもない質問とそれに対する最短の答えの応酬を行った。質問をすると律儀に答えてくれたのには、助かったさ。
この少女は本は相当好きらしい。わかったのはそれくらいだったがな。

 ドアを蹴破るように涼宮ハルヒが入ってきた。

 「ごめんごめん!ちょっと捕まえるのに手間取っちゃって!」

 と満面の笑顔で入っていたのはいいが、そのまるで逃げた子猫を捕獲してきたような発言はなんだ?

474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:16:07.66 46kebisH0
支援

475:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:16:38.08 RDyPrqwQ0
 ハルヒは後ろ手に誰かをつかんでいた。その人物が部屋に入ったのを確認すると、がちゃりとドアの鍵を閉めた。
 よくみると、ハルヒが捕まえているのはまたしても少女だった。

 不安げに震えた小柄な体の少女は、うん、すんげー美少女だった。しかし、今日ハルヒは「適材な人間」に心当たりがあるからと部活の勧誘に行ったはずだ。
 この子のどこが、「適材な人間」なのだろうか?

 「なんなんですか!」

 その美少女は気の毒にも半泣きの表情だ。

 「ここどこですか、何であたし連れてこられたんですか、何で、かか鍵を閉めるんですか?いったい何を」

 「黙りなさい」

 ハルヒの押し殺した声に少女はビクッと固まった。

 「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

 おい、それで紹介終わりかよ。

 「っていうか、どこから拉致してきたんだ?」

 と俺がいうと、「拉致」と言う部分で朝比奈みくるという美少女はビクッと不安げに反応した。いや、俺はなにもしませんし、何も知りませんよ?共犯者じゃないですから。

 「拉致じゃなくて任意同行よ」

 いや、それもどうなんだ?

476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:17:07.52 46kebisH0
支援

477:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:18:08.12 RDyPrqwQ0
 ハルヒの説明によると、朝比奈みくるさんはこの高校の二年生でハルヒが書道部に仮入部したときから気にいっており、今回部活を立ち上げるにあたり、
この部活の萌えキャラとして任意同行を求め、そのまま引っ張ってきたとのことであった。
 
 かなり、問題な行動じゃないのか?

 しかし、その後の朝比奈みくるさんの行動も俺の予想外ではあった。

 拉致同然につれてこられたというのに、ハルヒの書道部をやめてわが部活にという指示にしたがったのだ。そのとき、ほんのわずかだが、長門有希の方をみたような気がする。

 「とりあえず、四人揃ったところで、紹介するわね。」

 「そこのぼーっとしてるのが、団員一号のキョン、で窓際で本を読んでるのが、団員二号の長門有希。そして、わたしが団長の涼宮ハルヒよ!」

 うむ、ツッコミどころ満載なのだが、まず最初にこのSSは現在第一話終盤になろうとしているのだが、俺の名前でやっと出てきたと思ったら「キョン」というのはどういうことだ?
 作者の悪意を感じるぞ。・・・と、この世界に存在しないものに不満を述べてもしかたないので、とりあえず、目の前の存在に苦言を呈しておくとしよう。

 「団とはなんだ?そもそもどんな部活をつくるつもりかそろそろ明らかにしてもいいんじゃないのか?」

 「あれ?言ってなかった?まあ、いいわ。とりあえず、名前なら決めたわよ。」

 「・・・いってみろ」

 期待感ゼロの状態俺の声に反して、涼宮ハルヒは満面の笑みで命名宣言を行った。

478:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:19:06.79 RDyPrqwQ0
 ・・・とりあえず、お知らせしよう。

 なんだかよくわからない涼宮ハルヒの思いつきではじまった部活動設立計画(現在総員4名)の活動の名前は、

 「SOS団」

 と相成った。

 別に、救難信号ではなく、いや、そっちの方がよかったかもしれん。しかし、ハルヒの宣言文には違う言葉が書いてある。

 S=世界を

 O=大いに盛り上げるための

 S=涼宮ハルヒの
 
 団

 で略してSOS団だそうだ。うむ、呆れてよいとおもうぞ。

 とりあえず、その日は下校時刻になり、解散した。
 今日最大の謎について、俺は朝比奈さんに問わずにはいられなかった。

479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:19:45.87 46kebisH0
支援

忘れてた。問題が発生したら下記スレへ。
URLリンク(yy42.60.kg)

480:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:20:12.02 RDyPrqwQ0
 「朝比奈さん」

 「なんですか、キョンくん」
 
 ・・・あなたもその名前で呼ぶのですか?と名づけた親戚のおばさんと広めた妹をうらめしく思ったものだ。

 「書道部をやめてまで、こんな活動に参加することはないと思いますよ。あいつのことなら気にしないでください。俺が後から言っておきますから。」

 「いえ、いいんです。入ります、あたし」

 「でも、多分ろくなことになりませんよ」

 「大丈夫です・・・それにおそらくこれは必然・・・なのでしょうし、長門さんがいるのも気になります。」

 「気になる?」

 「え、や、何でもないです」

 朝比奈さんは慌てた感じで首を振った。ふわふわの髪の毛がふわふわと揺れた。
 そして、朝比奈さんは俺の方を向いてお辞儀をしながら、

 「ふつつかものですが、よろしくお願いします。」

 「まあ、そこまで言われるんでしたら・・・」

 「それから、あたしのことでしたら、どうぞ、みくるちゃんとお呼びください」

 とにっこり微笑む。ハルヒの笑顔とは違うめまいを覚えるほど可愛い笑顔だった。

481:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:21:05.56 RDyPrqwQ0
 そういえば、帰る直前、長門から本を渡された。

 「貸すから」

 読めということだろうか?しかし、こんな分厚い本を読む習慣は俺にはない。

 「いつ読み終わるかわからんぞ?」

 「いい」

 それだけ言って、長門は帰っていった。 


 ジ・Oはこうして動き出した。

482:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:22:01.86 46kebisH0
支援

483:涼宮ハルヒの○○○○
08/05/26 21:24:17.36 RDyPrqwQ0
支援してくださった方ありがとうございました。
第一話はここまでです。
・・・ここまではほとんど間違い探しですね(汗

全六話ですが、推敲したいと思いますので、今日はここまでにさせてくださいませ。
by 梅里

484:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:25:06.44 46kebisH0
>>594
乙! 続きに期待。

485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:26:52.03 ruxPDPwS0
>>594
乙!
これからの展開に期待!

486:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:33:42.67 6z5RoVSGP
おい誰だ報告したやつ! 規制されたぞ!!!

487:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:35:23.78 6z5RoVSGP
◆hCITHjx2nUって誰だ!

488:みるく ◆MILKyXhOBE
08/05/26 21:40:50.14 6z5RoVSGP
いい度胸だ!

489:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:42:10.30 ORzDq8aPO
予告から一時間半も遅れてしまった…
投下します。

I don't choose, but decide.

490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:43:26.70 46kebisH0
おk。支援する。

しつこいけど、問題発生時は下記スレへ。
URLリンク(yy42.60.kg)

491:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:44:08.63 ORzDq8aPO
 涼宮ハルヒの能力が失われた。

-それに至るプロセスを詳細に具体的に語るのは俺の精神衛星上大変よろしくないので割愛させてもらう。

一文で言うならば、あいつと俺の関係性がどうでもいいクラスメート
→団長と雑用
→次の段階へと変化していく過程でそうなったというわけだ。
たいてい(今だから言えるのだが)こういう関係性になる為の最後の行動というのは単なる確認行為であるわけで、
表見的な関係の呼称が変わるのみで実際の状況はそう変わりはしない。
つまり相変わらず俺はハルヒに振り回される役回りなのだ。
強いていえば振り回し方が理解しやすくなったのが一番の変化かもしれんな。
ともかく、もしかしたらさっきから俺が「確認行為」だの「表見的」だのという妙な言葉を使ったことから分かるヤツもいるかもしれんが、
ここに到達するまでは北高を卒業し、奇跡的に俺がある大学の法学部に入学するまでの時間を要した。
当然と言えば当然、学力に隔たりのあるSOS団メンバーは別々の(とはいえハルヒ・古泉・長門と俺・朝比奈さんで別れただけだが)
大学に進学した。ところが結局俺達はちょくちょく-いや、しょっちゅう例の場所に集まっていたのだ。
要は高校時代とあまり変わらなかったというわけだ。
と以上二文を過去形で語ったのは、変わってしまったことがあるからなわけで。
俺やハルヒをはじめ、単なる心理アドバイザー的立場に収まった古泉や未来との同期を絶った長門-

未来を知らない、時間に縛られない者だけが変化に気付かなかったんだ。

----------------



492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:44:27.15 ruxPDPwS0
支援

493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:44:30.79 46kebisH0
支援

494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:45:36.31 jvQ0Kt30O
やぁ、同志よ(´・ω・`)突然だけど君達に一生恋人ができない呪いをかけたよ。呪いを解く為にはここのスレ→URLリンク(same.u.la)で厨房装って暴れている607に以下のテンプレで書き込んでくれたまえ。それでは検討を祈る。


>>607河童はおまえ!おっさん無理すんなよwww

495:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:47:10.63 ORzDq8aPO

抽選で勝手に登録される科目で運悪く単位取得何度AAランクプラスの刑法に当たったせいで、
月曜の朝から聞き慣れないテクニカルターム満載の教科書を朗らかさのかけらもない教授が朗読するのを拝聴させられる
そんな地獄にも慣れつつあった五月下旬。
高校の頃には想像もしていなかった映画館みたいな教室を出て、弁当を食う場所を物色しているとポケットが振動する。

Fm 朝比奈さん
Sub (無題)
Txt

大切な話があります。
銅像の前で待ってますね。


古泉いわく「天然記念物級の鈍感」たる俺でも、このメールの意味くらい理解できるさ。
実はキョンくんが好きなんですーとか、涼宮さんと別れてわたしとーなんてこたありえん。
来るべき時が来たんだろう。朝比奈さんが未来に帰ってしまう。まさにバック・トゥ・ザ・フューチャー。


寂しさと、何というか諦観のようなものがせめぎあって自分がどう思っているのかよく分からなかった。
いなくなってほしくない。だが、いつだか朝比奈さんが話してくれた未来への里心を想起すると…

「帰らないでくれ」などとは言えない…よな。

----------------

496:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:47:34.04 46kebisH0
支援

497:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:47:45.21 ruxPDPwS0
支援

498:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:49:10.42 ORzDq8aPO

「あ…キョンくん」

オッサンの銅像の足元に佇む朝比奈さんは、俯き気味だったけれど微笑んでいた。

「わたし、未来に帰らないといけません。ううん、帰ります」
強制ではなく自分の意思だという言い換え。それは俺を悲しくさせ、同時に安心させた。
朝比奈さんは例の強制ナントカでムリヤリ連れ戻されるわけではないようだ。俺の顔をちらと伺って、
「涼宮さんにはキョンくんがいるし、もう大きな時空震発生の心配もなさそうなので帰還許可が出たんです」

なるほど。ハルヒの奇想天外パワーが無くなれば、んーなんだっけ、不確定要素がなくなるわけか。
納得しつつも、俺の寂しさがこんな事を言わせた。
でも、朝比奈さんがいなくなったらどうでしょう?またハルヒのやつとんでもない事を…

「ないと思う…。ちょっとさみしいけど、今涼宮さんの一番はキョンくんです。だから悲しませたりしちゃダメですよー」
俺とハルヒが付き合い出してから何度か見せるようになった朝比奈さんお姉さんモード。
この朝比奈さん(姉)には逆らおうという意志すら湧かず、紐で顎を引っ張られるように頷くしかないのだ。
この提案は彼女の言う通りハルヒを悲しませない為に必要な物さ。

「朝比奈さん!」
勢い余って肩を掴んでしまった。途端に真っ赤になり、わたっわた…あの、等と呟く朝比奈さんに続けた言葉はこうだ。

「俺の家で飲みましょう!せっかく大学生になったんだし、みんなを呼んで飲み会ですよ」

お別れ会と言えなかったのはまぁ、許してくれ。
--------------

499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:30.62 yDeA7jrm0
しえん

500:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:47.36 ruxPDPwS0
支援

501:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:49:49.77 46kebisH0
支援

502:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:50:42.23 ORzDq8aPO

集まったのは俺、ハルヒ、長門に鶴屋さん、それに古泉とあとは阪中、谷口、国木田だ。
正直この人数には俺の部屋は手狭なのだが、SOS団絡みで朝比奈さんと関わった奴らは全員呼びたかった。
長門と古泉以外には朝比奈さんは海外に引っ越すというどこかで聞いたような真っ赤な嘘を伝えておいた。
鶴屋さんあたり、気付いていそうだけど。

そういえばいまいましい事に国木田と鶴屋さんは高三の時からいい仲になっていて、
国木田のヤツは志望通りいつだハルヒと共に尾行して到達した大学(鶴屋さんと同じとこだ)に進んだ。
実は俺とハルヒもそこに行こうと思っていたのだが…まぁそれはまた別の話だ。

それはさておき、突然だった上理由もネガティブな集まりだったが
ハルヒや鶴屋さん、そして何より朝比奈さん自身が笑顔を絶やさなかったお陰で
やたらとポジティブに盛り上がった。もしかしたらハルヒの言葉に涙が出そうになったのは俺だけかもしれん。

「今生の別れじゃあるまいし、今じゃ国際通話も安くなってきてるしメールもスカイプもあるんだから寂しくはないわ!
ちょっとだけしかね」

-ハルヒ、お前は朝比奈さんに一番近いようで遠い位置にいるんだよな-

-----------------

503:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:14.45 46kebisH0
支援

504:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:26.69 yDeA7jrm0
しえん

505:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:51:35.57 ruxPDPwS0
支援

506:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:53:14.88 ORzDq8aPO
 夜も深まり阪中が帰ると言い出すと、谷口が送ると宣言し(言いたかないが阪中の無事を祈るぜ)、
どういうつもりか国木田が一人で帰り、ハルヒが俺のベッドに沈むと古泉が全く乱れない呂律でシメの言葉を発した。
「では今日はこの辺りにしましょうか。夜も更けてきましたし、僕は長門さんを送りますからあなたはお二方をお願いします」
ハルヒはどうするんだよ。

「え?泊めてあげるのではないんですか?」

長門を除く…いや長門も少し口角を上げていたな、全員がニヤリとした顔を向けてくる。
何なんだこのチームワークは。

「ん…みくるちゃん…またね…メールするか…キョン…ちゃんと…」
薄目を開けたハルヒの譫言のような言葉からすると、コイツは泊まる気満々で
俺が先輩二人を送るのは絶対的義務ということらしい。やれやれ。

----------------

507:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:53:22.89 46kebisH0
支援

508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:54:21.72 ruxPDPwS0
支援

509:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:54:31.81 ORzDq8aPO
思い出話をしたくないのは俺だけではなかったらしく、古泉・長門ペアと別れるまで俺達はみな無言で歩みを進めた。

「では、またいつか」
「いつか」

短い言葉は信頼の証と思いたい。超能力者とヒューマノイド・インターフェイスに対する感情は
出会ってから色々と変わってきたが、使命から解放されたはずの今でもこうして同じ時を過ごしている
-ってことは、少なくとも俺やハルヒやあいつら相互の間に悪い印象は持っていないだろう。
朝比奈さんは悪意などという概念とは無縁の存在だし…

とか考えつつ麗しの先輩二人の後ろ姿を眺めていると、らしくないな、感傷に浸ってしまった。
国木田が一人で帰ったのは、今この時を作ってやりたかったんだろう。無二の親友同士の時間を。
阪中や谷口もSOS団に気を遣ってくれたのかもしれん。

人をこうして好ましく思い、素直にいいヤツらだと言える…いや言えないな、思えるようにしてくれたのは
思えるような仲間を集めてくれたのは間違いなくハルヒだ。大切にしてやらなくては。
ハルヒだけじゃない。みんなと、みんなと共に過ごす時を。

----------------

「んじゃ、みくる」
「う、うん…」

遠く、遠くへ離れる時が来た。鶴屋家の門の前で二人が向き合っている。
国木田のお膳立てをムダにするわけにはいかん。向かいの歩道で待つことにする。

-朝比奈さんは泣きながら笑い、鶴屋さんは笑いながら泣いていた-

---------------

510:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:54:47.56 46kebisH0
支援

511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:55:21.50 ruxPDPwS0
支援

512:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:56:04.42 ORzDq8aPO
鶴屋さんと別れた後、ゆっくりと時間を稼ぐように歩き、きっとあの公園に行くんだろうなんて事をぼんやり思っていると
やっぱりその通りで、俺達は幾多の記憶が染み付いたあの公園に辿り着いた。
口を開けば終わりになってしまう気がして沈黙を破れない。
あのベンチに座ると別れが訪れる気がして、足を動かせない。
結局、公園の入り口で突っ立ったまま向き合う形になる。
まだ、別れるのは嫌だ。と俺は思ったのだろう。思わず目を逸らした俺の視界に割り込むようにてててっと動き、

「あ、あの…」
朝比奈さんが口を開く。時間…か。
「何ですか」

なるべく何て事ないかのような声を出そうとした時、



信じられない光景が目に飛び込んできた。これ、フラッシュバックってやつか?

思い出ならもっといいものを見たいのだが…

という思考をコンマ一秒で終え、我に帰る。
これは現実だ。今この時この場所で、見覚えのあるワゴンから見覚えのあるヤツが現れ、二度目の暴挙に出やがった。

「藤原ッ!!」

513:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:56:30.30 46kebisH0
支援

514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:57:39.73 /PbRj9WC0
しえn

515:I don't choose, but decide.
08/05/26 21:58:07.68 ORzDq8aPO
今日はここまでで終わりである。初めて書くシリアス系の長編…疲れるのだ…

516:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 21:58:45.80 46kebisH0
>>626
乙! 連載は大変だけど、続きがんばれ。

517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:01:29.99 ob7xYJ3T0
>>627
乙!頑張れ~

518:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:01:56.71 /PbRj9WC0
これは期待。
続きwktk!

519:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:21:18.15 ORzDq8aPO
支援アンド乙アリガトゴザマシタ保守

520:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:38:58.28 7cNzFuoFO
保守

521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:45:07.07 tcd3eVVe0
保守

522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 22:56:15.97 RZKgcr3sO
「きょーん(はぁと)」
「…なんだ?今古泉とゲームでいそがし」
「そんなこと言わないでさぁー…ね?」

プニプニ

「キョンのほっぺってぷにぷにで…ほんとにかわいいわ…。
唇もプニプニしていい?…両手でプニプニしていい?」

プニプニ プニプニ
「…なぁ、ハルヒ…」
「ねぇキョン、私を、保守してくれない?
あなたのそのかわいいお口で、私の顔を塞いで欲しいの…」

むに
「ああっ!いいわ!興奮してきた!保守祭りよぉぉーッ!」

523:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 23:05:38.97 q94h39bOO
人気ライトノベル 涼宮ハルヒシリーズ最新巻 『涼宮ハルヒの驚愕』が9月2日に発売決定!!
スレリンク(campus板)

524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
08/05/26 23:21:37.81 pqWS9cTxO



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