09/01/02 17:15:11 Z9PCdeeH0
「おう、体調はどうだ」。千葉県に住む父親(64)は仕事を終えると、1人暮らしのアパートから徒歩5分の長男(35)の部屋に寄った。
ゆうべ準備した焼き魚と小松菜の炒め物をテーブルに並べた。
テレビはプロ野球初の女性選手の誕生を報じていた。
「へえ、すごいな」。長男が人を褒めるのを、初めて聞いた気がする。長男に食事を
作るようになって10年。こうやって食卓で向き合えるようになったのは最近のことだ。
長男の引きこもりは大学卒業後に始まった。付属高から大学へ進み、下宿生活を
送ったが、就職活動でつまずいた。最終面接まで進みながら、内定に至らない。実家へ
戻った長男は荒れた。「なんでおれだけうまくいかねえんだ」。テレビを壊し、ガラスを
割り、庭にベッドを投げ出した。間もなく妻は、長女を連れて家を出た。
長男の暴発はいつも食事が引き金になった。味に納得せず、食卓をひっくり返し 「そこに
正座しろ」と怒鳴った。昼食を準備して出かけると「作り直せ」と職場に電話をかけてきた。
息子に家を乗っ取られた父親は、休日は競輪、競馬に居場所を求め、海岸に座って
日暮れを待った。夕食後は長男が寝付くまでマンガ喫茶で過ごした。やがて別に
部屋を借り、黙って食事を届けるようになった。
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