09/01/20 20:20:11 9Vboe3vj0
振ろうと思って握ったバットがピクリとも動かない。屋内練習場の一角。バットをつえのように持ったまま約15分間、
野本が固まった。
「同じ左打ちの方ですし、すごいアベレージを残されている方ですから。初めて生で見させていただいて、
想像以上というか、見入ってしまったという感じです」
野本の目は輝いていた。目の前にいたのはカブス・福留だ。社会人出の経験豊富な男といっても、プロではルーキー。
テレビで見ていた雲の上の存在が、そこでバットを振っていた。直立不動で見入った。
ここから野本が“ストーカー”になった。ティー打撃を終え、休憩する福留の方をチラチラ。福留がマシン打撃を始めると、
1人でスーッとその後方へ。今度は約10分間、凝視した。
福留自身はひっそり練習していた。打撃練習は、中日の選手たちがいったん引き揚げ、邪魔にならないタイミングで
始めたハズだった。そこに偶然、新人たちがゾロゾロとやってきた。同じく新人の岩崎恭、育成の加藤、小林も
チラチラ見た。中でも1人だけ、じーっと目を離さなかったのが野本だった。