08/12/22 19:14:07 oI23IxmX0
238 名前:174(1/4) 投稿日: 2008/12/21(日) 22:20:57
>>40
171.出会
朝。
その日、鳥谷敬は六甲おろしよりも早くに目を覚ました。
締め切った部屋は、床の木目が確認出来るほどに明るい。
窓に近づき、カーテンを開ける。視界が白くなった。
「まぶし……」
爽やかな朝の光に目を瞬かせ、鳥谷はしばし、窓の向こうに広がる明るい緑色に
目を慣れさせた。
その時、後方で何者かが身じろぐ気配がした。
振り返り、相手が起きたことを確認する。
「おはようございます」
「……おはよう」
同室の人間が動いた気配に目が覚めたらしい。まだどこか眠りに引きずられた声
が返ってくる。だがそれも一瞬のことで、身を起こした矢野はしっかりとした目を
していた。
彼がこの島で緊張の糸を解くことは、ほとんどない。
「体調はどうです?」
「……悪くはない、かな」
肩を回しながら応える。立ち上がり、矢野は窓際に立つ鳥谷に寄った。
「すっかり晴れたな~」
「晴れましたね」
応え、鳥谷は気晴らしに窓を開けた。両開きの窓を全開にすると、すがすがしい
朝の清涼な空気が滑り込んでくる。
窓を開けて顔を出すのは若干不用心ではあるが、家の裏手となるこちらの窓は、
茂みと、その向こうの林に隠れているため、少しくらいの間なら大丈夫だろう。