09/02/22 18:40:05 T+vw6i4o0
151:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/22 20:00:49 vZ1XuEj20
スレリンク(sec2chd板)
152:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/22 21:26:00 By38J24n0
ほ
153:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/24 00:28:39 SZewaYjL0
職人さん待ちの間 ほしゅだけってのは
さみしいよなー
だが 話題が浮かばん・・・
154:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/24 00:57:14 ZTqw4Pxs0
155:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/24 23:34:16 8LtrwXK/0
>>153
うん
うまくつなげられないからスピンオフ的なものを書こうかと思ったけど
それも難しいよなー
156:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/25 00:36:14 PS27jVgg0
>>155
スピンオフいいねー
157:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/26 12:15:39 Nj+BNj9z0
ho
158:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/26 14:57:47 RxzBZ1Y4O
あし
159:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/27 02:27:55 rVMZq4J+0
>>155
スピンオフ計画?賛成!
書けるならお願いします!!
自分でも書いたりして入るんだけど・・あまりうまくいかない・・。
160:代打名無し@実況は野球ch板で
09/02/27 09:32:03 YrOpq9g0O
頑張れば
161:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/01 02:15:12 wvJzJg8EO
保守
162:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/01 02:16:43 kudvUtgO0
ID:wvJzJg8EO
163:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/02 18:04:33 bShUzafd0
ほす
164:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/02 18:50:22 q3sw3pf20
ID:bShUzafd0
165:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/04 02:57:06 pmcaOz2vO
ほす
166:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/04 09:59:11 MnClrNEp0
167:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/05 19:50:20 8wElgJme0
ほしゅだ
168:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/05 23:58:25 CMwY5H/7O
終わらせようか
169:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/07 22:36:56 P2ZwzQqx0
ho
170:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/07 23:03:58 6DQmjf4bO
ashi
171:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/09 18:33:14 O+WpmjAC0
172:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/09 19:34:16 2JvwXyZ+O
ID:O+WpmjAC0
173:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/11 17:32:53 XbsU+Ku40
ほす
174:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/11 18:03:15 fyYV5/B40
ID:XbsU+Ku40
175:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/13 02:18:45 qi/nbAsmO
age
176:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/14 18:51:47 t+KS0olg0
177:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/14 21:59:51 58n3VKXzO
178:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/15 15:32:07 Vo4Q2kO30
age
179:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/15 22:17:29 qhNoLgP70
あったのって
・各球団
・アテネ
・髪
あとなんだっけ
180:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/15 23:57:57 BPCBtbgy0
ビリオネア
何気に一番好きだったので続き待ってる…
181:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/18 02:22:46 9kg+qY6OO
age
182:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/18 15:19:19 BmMpZVHc0
ほ
183:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/20 02:27:25 kGaK97a0O
保守
184:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/21 23:41:51 +fRfZGrW0
もうどんだけ待っても職人さんはお見えにならない気がする
185:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/21 23:54:33 Q31ooWxy0
はい
186:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/22 00:04:01 frYxnVQX0
ビリバトの続きが読みたい…。
まあ気長に待ってます。
187:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/23 12:21:17 JnU3E5yaO
以前ラウンジの交流スレで野球バトの存在を知りました。
現在2chには創作物を投稿するのに適した板が
新設されており、念のため報告に上がりました。
創作発表
URLリンク(namidame.2ch.net)
既にご存知でしたらすみません。
188:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/23 14:35:29 khlYMIzP0
189:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/25 02:31:58 5+eQ/KjQO
保守
190:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/27 02:20:07 UeO/5dYEO
age
191:虎
09/03/28 23:51:18 eECo1E2RO
長期規制中につき暫定版に投下しました
もしや永久規制か('A`)
192:174氏代理投下(1/8)
09/03/29 22:07:04 Wyf1yPPb0
>>76
172.今岡誠の選ぶ道
(D-9、D-5、I-5、H-9、F-4―全部で五カ所)
告げられた記号を口の中で必死に復唱する。
前を行く逃亡者を追いかけるのに必死な矢野は、放送など耳に入っていないかも
しれない。
自分が覚えておかなければという使命感に、鳥谷は全力で走りながら全島放送に
耳を傾けていた。
耳を叩く風に邪魔される不快感に舌打ちし、鳥谷敬は脇目もふらずに走り続ける
背番号39の背中を追いかけた。
全力で走り、休みもなく駆け、そして息を切らす。
ああ生きているのだと思う。
生きているからこんなに心臓が脈打つ。
今岡誠にとって、それは生きていることへの感慨ではなく、ただ単なる確認と
認識だった。
生きているとは、心臓が脈打ち、脳が活動し、全身に血液が流動する状態のことだ。
駆け続けたその先に道がないことを悟り、今岡はゆっくりと速度を落とした。
急に止まることは心臓に負担をかける。クールダウンもかねて緩やかになった坂を
ゆっくりと登ると、その先に広がる青い空が迎えてきた。
なぜ逃げ出したりなどしたのだろう。
自分の行動の理由を、今岡はあまりよく理解しないでいた。
ただ怖かったのだ。
運命をちらつかせる彼の足跡が。
(桧山さん―)
死の間際に発した「彼」の遺言の一言一言を、今岡は正確に覚えていた。
鳥谷を見た瞬間、全てを悟った顔で笑った桧山の顔を思い出した。
(これは呪縛か?)
言霊という名の呪縛。
形のないそれは、ただ記憶しているというだけで人を惑わす。
193:虎バト174氏代理投下(2/8)
09/03/29 22:08:09 Wyf1yPPb0
「もう少し……」
波の音が強くなる。
闇雲に逃げては来たが、ここまで来ればだいたいの場所は分かる。ここは島の東向き
の海岸だった。
切り立った崖のその下に、無限の回数打ちつける波が渦巻いている。
何がもう少しなのか、今岡には分からなかった。
もう少しで、一番島の端に到達する。そこで何か見えるのか。何が見えるのか、
今岡には分からない。
振り返ると、一段高い場所からあたりが見下ろせる。矢野と鳥谷が追いかけてくる
姿が見えた。
もう、逃げ場はないらしい。
随分と珍しい組み合わせだと思った。桧山の最期の言葉から、彼がつなぎ止めた
関係だということはすぐに知れた。
そして桧山がいなくなっても、彼らは繋がっている。
殺し合うこともなく、別れることもなく。
彼らですら、一人じゃない。
これが今岡だったらどうだろう。桧山が、彼らと自分を繋いでいたら。
無意味な仮定だ。それでも、答えはすぐに出た。
殺していただろう。もしくは、すぐに別れていただろう。
桧山というパイプがいなくなれば、自分は矢野とも鳥谷とも側にはいられなかったはずだ。
(こどく)
孤独な人間は、自ら手放している人間だ。
側にいるための努力をしない。誰かに縋り付いて引き留めることができない。離れて
いく相手の背中を見送り、それでもいいと簡単に自己完結する。
手放すのは簡単だ。なくなっても良いと思っているなら、なおさら。
それでもいいと思っている。
それでも、ふと立ち止まった時に酷く孤独を感じるのは、なぜだろう。
誰かにいて欲しいと思うのは、なぜ。
「着いた……」
まだ答えには到達していないのに、島の東端に到着してしまった。
眺望絶佳。
絶景というものは、無条件に人の感性の鐘を鳴り響かせるものだ。
194:虎バト174氏代理投下(3/8)
09/03/29 22:08:56 Wyf1yPPb0
晴天の蒼と、大海の蒼。
決して同じではない色のコントラストが、地平線に広がる。
空っぽになった心の穴に、蒼が吸い込まれ埋め尽くされていく。
一瞬の充足感は、下を向いた瞬間に別の価値観に奪い取られた。
崖の縁に立つと見下ろせる、白い水飛沫を上げる波打ち際。
気の遠くなるような長い年月を波に削り取られ、U字型に抉れた崖が容器の縁のよう
に見えた。
小さい、と思った。
地平線の向こうまで続く海が、とても小さな水槽のように見えた。
(そういえば、そんな夢を見た)
ぼんやりと覚えている輪郭を繋ぎ合わせると、過去に体験したつまらない記憶が
引っ張り出された。
忘れていた記憶。日常の断片。
過去を夢に見ることは現在への警告なのだと言う。昔どこかの夢心理学で読んだ。
警告にしては些か暗示的で、危機感に欠ける気がしたが、夢に期待出来るのはその
程度だということだろう。
狭くて暗い池の中で、ただ一匹生き残り、ただ一匹で死んでいく大きな金魚。
かわいそうだと思った。同情した。
だが、あの時小さな池を見下ろしていた自分は―
もしかしたら、誰かに見下ろされる、あの金魚と同じだったのではないか。
こんなちっぽけで、安っぽい命を、誰かに見下ろされているなんて知らずに、ただ
生きている。
「今岡!」
海風と思索に攫われかけた今岡を、その声が引き戻した。
ゆっくりと振り返る。坂を登ってくる矢野輝弘の表情は険しく、怒っているよう
にも見えた。
その後ろに、鳥谷。どこか感情の読めない淡泊な表情で、それでも息を切らしながら
彼の後をついてきている。
表情の読めなさが似ていると言われることもあったが、やはり似ていない。
自分は、こんな風に先を行く誰かの後を必死に追いかけたりはできない。
195:虎バト174氏代理投下(4/8)
09/03/29 22:09:42 Wyf1yPPb0
「今岡―お前」
肩で息をしながら、今岡と対峙した矢野は、呼吸を整える間も惜しむように口を開いた。
「桧山を殺したんか?」
「ハイ」
「何で……殺した……っ!?」
あっさりと肯定した今岡に一瞬言葉を失い、矢野が激高を露わに声を絞り出した。
手にしていた大振りの刀が向けられる。微動だにせず、今岡は相手を見返した。
そういえば、意外に熱い人だったなと思い出す。
そんな風に熱くなれる人が今岡は不思議だった。熱くなって、報われなかったら格好悪い
ではないか。
それでも、チームメイトが彼に寄せる信頼を鑑みれば、格好悪いのは自分の方な気がした。
「何故?」
投げかけられた当たり前の疑問に、答えを持たず、今岡は聞き返した。
「何故、殺したんでしょうね。……多分、その理由が知りたかったんです。だから、殺した」
言ってから、気付く。いや、違う。「それ」は桧山ではない。
「いや、違う。怖かったんです」
今岡は頭を振った。
「あの人が、俺を責めなかったから。責めずに、俺を変えようとしたから」
ふいに、桧山の最後の言葉を思い出す。
「あなたは―復讐するつもりですか?」
「―!」
ただ桧山が言った予測を口にしただけなのだが、矢野の反応は顕著だった。
見開かれた瞳に、真意を指摘された人間の動揺が広がる。
くりっと、今岡は視線を矢野から外した。
「えっ―?」
まったく会話に参加していなかったにも関わらず、突然じっと見つめられ、鳥谷が無機質な
視線に物怖じする。
「ごめんなさい」
ほとんど棒読みの口調で謝る。
伝言を伝えただけなのだが、まったく何のことか分からないという表情で見返してくる
鳥谷に、今岡は銃を向けた。
その瞬間、矢野が表情を強ばらせ武器を握る手に力を込めた。
196:虎バト174氏代理投下(5/8)
09/03/29 22:10:29 Wyf1yPPb0
またこのチャンスが回ってきてしまった。
鳥谷を殺せば、矢野は今岡を殺すだろう。
人が、怒りに任せて人を殺す瞬間が見れる。
チャンスが来たからには点を入れなければいけない。クリンナップの仕事だ。
たじろいだ鳥谷に照準を合わせたまま、今岡はドクドクと脈打つ己の鼓動を聞いていた。
銃を構える指が震えている。
恐怖ではない。全身の血流が、興奮に沸き立っている。
ああ、なるほど、これが生きているということか。
だからこの瞬間、自分はこんなにも高揚するのだ。
「生きいている」という実感に浸れる。
惚けていた鳥谷が動いた。慌ててポケットに突っ込んでいた銃を構え、今岡に向ける。
矢野の剣先ははっきりと今岡を向いている。
その光景に、今岡はおかしくなった。
こんなことばかり繰り返している。
『運命に逆らってみろ、今岡。』
(これが、俺の運命なんやろか)
こうやって―
こうやって、望んで壊れていく。
ヒトでなくなっていく。
ココロが消えていく。
誰か、この今岡誠を止めてくれないだろうか。
(これが、俺の―)
そう納得しようとしたとき、はっきりと今岡の中で拒絶が生まれた。
(こんな運命は、嫌だ)
『運命に逆らってみろ、今岡』
『逆らって出来た自分の道を誇ってみせろ』
『彼』の言葉が、空虚な脳みそに鳴る。
カランカランと。
脳の中まで、虚ろになってしまったのだろうか。
(こどく―じゃない?)
そう思った。
197:虎バト174氏代理投下(6/8)
09/03/29 22:11:17 Wyf1yPPb0
空っぽな己の中に、最後まで残っている他人の言葉。
空っぽなはずの自分が、拠り所に出来る他人の言葉を持っているというならば、それは
孤独ではない気がした。
誰かの顔が浮かぶと言うことは、それは、孤独ではない気がした。
『だけど今岡、後悔するなよ。俺を、誰かを殺したことを、お前が死ぬ瞬間まで後悔すんな。
考え続けてみろ』
誰かの言葉が自分の進む道に影響を与えるとするなら、それは、孤独ではない気がした。
今岡は少し、嬉しくなった。
(そうか―)
今岡は自然に笑みを浮かべた。
「鳥谷、貸せ!」
「あっ……!」
動かない今岡に隙を見たのか、矢野が鳥谷から奪った銃を構えた。後方に鳥谷を押しやり、
守るように今岡と対峙する。
一触即発の空気が流れる。
先に口を開いたのは矢野の方だった。
「今、何考えてる」
矢野の問いかけは意外だった。それでも、答える価値のある問いだと思った。
「逆らってみようかなと思って」
言葉と同時にわずかに銃口を持ち上げる。矢野が慌てて構え直し、トリガーにかける指に
力を込めた。
ふっ……、と、今岡が微笑んだ。
「運命に」
今岡が、後ろに飛んだ。
ほんの一歩、あまりにも自然に。
地面のないところへと飛んだ。
唇が薄く開き、ある言葉を紡いだ。
さ よ う な ら
「マコ……っ!」
「今岡さん!!」
198:虎バト174氏代理投下(7/8)
09/03/29 22:12:06 Wyf1yPPb0
二種類の悲鳴が追随する。
轟音の中に落下していく己の身体を感じながら、今岡はやはり考えていた。
『生きるってどういうことなんだろう』
いつか必ず迎える緩慢な死のために人はこの世に存在するわけではない。
そう思う。そのために生きているなら、人間はとっくの昔に絶滅しているだろう。
死ぬために生きるなんて、誰だってしたくないはずだ。
それでも、人が生まれ、生きようとするということは―数百万年の単位でそれが脈々
と繰り返されてきたということは―死ぬ以外にこの世に存在する意味があるはずだ。
その意味を、今岡は分かった気がした。
言葉には出来ないが、分かった気がした。それは、誰もが初めから知っている簡単な
解答だったのかもしれないが、今岡は満足していた。
また一つ、知ることが出来た。
分からないことは好きだった。想像をめぐらせるのも楽しいし、答えを知って知識を
増やすのも楽しい。
『死ぬってどういうことなんだろう』
最期に、今岡はその究極の解答を体験出来る喜びに打ち震えた。
「いりますか?」
「ああ……」
側の岩に持たれ力なく答えた矢野に、民家から持ち出したタオルを水で濡らして渡した。
彼の顔色の悪さが、体調のせいなのか、今目の前で起こった『事件』のせいなのかは
判別し難い。
ただ分かるのは、濡れタオルで目元を覆う矢野が酷く落胆していて、酷く疲れていると
いうことだ。
ひゅぅ―と音を立てて風が旋回した。髪を巻き取られ、頬を撫でる冷気に首をすくま
せる。
高台は吹きさらしになっており、海風を凌げるようなものは何もない。
(寒い……)
まだ十分に太陽に暖められていない島は、昨日の雨の余韻も手伝って冷え冷えとしていた。
鳥谷はともかく、ただでさえ体調不良の矢野をいつまでもここに置いておくべきではない
だろう。せっかくマシになってきたものが、またぶり返してしまう。
199:虎バト174氏代理投下(8/8)
09/03/29 22:12:53 Wyf1yPPb0
「そろそろ行きませんか」
声をかけるが、矢野からのいらえはない。嘆息し、鳥谷は付け加えた。
「いつまでもここにいたって、仕方がないでしょう」
彼が飛び降りる姿があまりにも鮮明に残っている。
崖の方に視線をやると、今にも銃を構えたまま彼が背中から崖下に落ちる様が再現されそうで、
早くこの場を立ち去りたかった。
覚えているその姿は、どこか誇らしげですらあった。
「矢野さん……」
やはり聞いていないように動かない矢野の横顔を盗み見る。
「残念……でしたね。復讐出来なくて」
おかしな言い方だが、ほっとしたというのが正直なところだ。
今岡が自ら命を絶ったことで、彼が人殺しにならなくて済んだことに、心の底から安堵して
いる自分がいる。
「いいんや……」
「え?」
ようやく返ってきた声は、小さ過ぎて、ともすれば聞き逃してしまいそうだった。
「俺の目的は、あいつやないから……」
握り締められた拳が芝を掴む。
「…………」
「矢野さん……?」
タオルを外し、無言のままその拳を睨みつける矢野を見つめた。その表情の頑なさに、
暗い不安が胸の内を浸食する。
彼の内包する闇の深さを、鳥谷はまだ推し量れずにいた。
【残り27人】
200:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/29 22:32:03 w8bZBUBc0
1
201:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/30 10:56:23 y5Wg1Xka0
2009年初の作品投下乙!
今岡……結局その道を選んだか…
取り残された矢野の目的は、一体どこにあるのか……
202:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/30 14:06:39 gYxmzIrv0
203:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/31 20:45:50 Cz1F4Ybt0
職人さん代理投下さん大変乙です
俺も今日規制解除きたよ
だから職人さんも気をおとさないで
204:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/31 22:10:00 6yn51ANDO
はい
205:代打名無し@実況は野球ch板で
09/03/31 22:55:58 s1NGK+ml0
虎バト来てたー。乙です
今岡・・・ああ
206:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/03 13:58:33 LggBk+E+0
開幕ほしゅ
207:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/03 19:27:52 DPH4kM0XO
糞スレ
208:虎
09/04/04 19:50:29 LhF2UJEnO
代理投下ありがとう
引き続き規制中につき暫定板に投下しました
209:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/04 22:03:16 45qWi9neO
210:虎バト174氏代理投下(1/7)
09/04/04 23:57:38 edaPMu4j0
>>199
173.悪意なき犯行
パタン、と。
小さな音が背後で聞こえた。
その襖を閉める静かな音に、中谷仁(背番号66)は畳に座り込んだままビクリ
と肩を震わせた。
荷物を両手にかけたまま、背筋に氷の塊を押しつけられたような戦慄を覚える。
(そんな―)
そんなことがあり得るのか、という思いに囚われ、身体が動かない。
考え事をしていたとはいえ、全くなんの気配も、前触れも感じなかった。
死神は足音を立てずにやってくる。そう、あの時のように……
後頭部に衝撃を感じ、中谷は前のめりに畳に伏した。
激痛に呻きながら、無理矢理首をねじると、後頭部に滲んだ血が畳に擦りつけ
られる。出血量はさほど多くないが、身体に指令を与える機能が麻痺したのか、
手足が思うように動かない。
立ち上がることも出来ず、中谷は朦朧とする意識の中で死神の素顔を見た。
見下ろしてくる男はやはり、藤原通(背番号2)だった。
同級生の、同じファーム仲間の、人殺しの、藤原通。
男の手には、中谷の後頭部を殴ったとおぼしき鈍器が握られていた。
仏間にあった華鋲だ。
「俺を裏切るんか?」
血の付着した鈍色の華鋲をだらりとぶら下げ、藤原は冷ややかに口を開いた。
「聞いて……」
聞いてたのか―口を開こうとして、その作業に酷く労力がいることに気付く。
喉から無理矢理絞り出した声は掠れていて、苦渋と苦悶に満ちていた。
彼は小宮山と中谷の会話を盗み聞きしていたのだ。
どこまで聞いていたかは定かではないが、少なくとも中谷が藤原の思考について
いけず、黙って立ち去ろうとしていることは理解しているらしい。彼がどこまで
その情報を正しく理解しているかは、これまた定かではないが。
211:虎バト174氏代理投下(2/7)
09/04/04 23:59:11 edaPMu4j0
見下ろしてくる目は静かな怒りに燃え、また冷めた色を湛えていた。
これは中谷にとっては意外な反応だった。もし自分の裏切りがばれたのなら、
彼はもっと激高し、泣き叫びながら襲いかかってくるものかと思っていた。
―この男の感情の軌道は、海の天候よりも予想し難い。
「お前、俺から小宮山を奪うつもりやろ?」
その言葉は、やはり中谷にとって意外なものだった。
「小宮山を騙して俺から引き離そうって魂胆やろ? それで、俺がいない場所で
小宮山を殺して……戻ってきて俺も殺すんか? そうはいくか」
息を巻いて言い切る。
どう考えればそうなるのか、とんちんかんな推理に理解の及ばぬ中谷の表情は、
それすらも藤原の目には真意を見透かされ驚愕する顔に映ったらしい。
「ほらやっぱり―」
我が意を得たりと、藤原が笑う。
「全部お見通しや」
刻まれた笑顔に戦慄する。
あまりにも邪気のない、冷質の微笑。
(俺は……)
悪意のない犯行者は、子供のような残酷さで『裏切り者』を糾弾する。
死神はこんな顔をして笑うのだと―
(俺は、ここで死ぬのか……?)
中谷仁は己の人生の道を断ち切る大釜を、彼の後ろに見た。
「全部、お見通しや」
仲間のふりをして自分達に取り入り、小宮山を騙して殺そうとした卑劣な男を、
藤原通は見下ろした。
藤原が指摘した途端、凍り付いた中谷の顔がこちらの推理の正しさを物語っている。
(ほらやっぱり)
藤原は思った。改めて思わずにはいられなかった。
この世界はこんなにも危険に充ち満ちている。
この世界はこんなにも悪意に充ち満ちている。
怖い。恐い。なんてこわい世界なんだろう。
212:虎バト174氏代理投下(3/7)
09/04/05 00:00:02 edaPMu4j0
(守ってやらないと……)
弱くて幼い小宮山を、守ってやることが出来るのは藤原だけだ。
「小宮山をお前なんかに殺させへん。お前があいつを裏切っても、俺はあいつを
裏切らない」
しゃがみ込み、畳に転がる同級生だった男に顔を近づける。動けないのか、中谷
は僅かに身じろいだだけだった。脂汗の滲んだ顔で、藤原を睨みつける。
(あいつには人を殺せるだけの強さがないから、俺が守ってやらないと)
「あいつには俺がおらんとあかんねん」
中谷が何かを言い返そうと口を動かし、結局、観念したように押し黙った。
(やっぱり―俺が信用できるのは小宮山だけだ)
だから彼だけは、何があっても守らなければいけないのだ。
中谷の裏切りは衝撃だった。
彼が小宮山の様子を見に行った後、やはり一人でいることに物足りなさを覚えた
藤原は、自分も小宮山の看病に向かおうと部屋を出た。
小宮山の部屋に入ろうとした矢先、談笑とは言い難い固い声音で話し合う二人の
声が聞こえた。
気になり耳をそばだてると、中谷が巧みに小宮山を言いくるめ、藤原から引き離
して外へ連れ出そうと算段しているところだったのだ。
中谷は同級生だ。そして同じ二軍仲間で、鳴かず飛ばずの中お互い励まし合って
きた。初めてこの家で出会ったときも、彼ならばと喜んだのだ。
(それなのに……俺はこいつを信じたのに)
そこから先の会話は、あまりのショックによく覚えていない。どこか言い争う
ような声も聞こえたが、最終的に二人は和解し、中谷は部屋を出た。
その姿を身を潜めて見送った藤原は、これからどうするべきか、最善の策を考えた。
このままでは小宮山が騙されてしまう。連れ去られてしまう。
信じていた相手に裏切られても、藤原は冷静だった。否、冷静でなければならない
と思っていた。
小宮山を守ると決めた以上、泣き虫な少年と同じように動揺していては駄目だ。
213:虎バト174氏代理投下(4/7)
09/04/05 00:00:59 edaPMu4j0
「俺は、お前を許さん」
冷然と言い放ち、藤原は先ほどまで愚痴こぼし、笑顔を向けていた相手の首に黒い
ベルトをかけた。
中谷の唇が恐怖に震える。青ざめた顔は、いっそ悲壮なほどに迫り来る死の手に
怯えていた。
(自業自得だ)
信頼を寄せる人間を裏切るなんて酷い真似が出来る人間を、藤原は許さない。
だが、きっと小宮山は、彼が自分達を裏切って騙そうとしたことを知ったら悲しむ
だろう。
「アイツは素直で優しいヤツやから、久保田の裏切りを知ったときもすごくショック
を受けてた。それなのに、お前まで裏切るなんて……」
悔しくて涙がにじんだ。自分が彼を信じたばっかりに、小宮山まで危険に晒すことに
なった。
甘かったのだ。この裏切りの園では、同じ立場の人間すら、生きるために仲間を殺す。
中谷の裏切りにより、藤原の『信用の範囲』は、確実に狭まろうとしていた。
「う……がぁ……っ」
藤原の糾弾を受けながら、中谷がもがき苦しむ。
「真実を知っているのは、俺だけでいい」
小宮山には知らせたくなかった。このことで、彼が傷付く必要はない。傷付くのは
自分だけでいい。
ゆっくりと力を込めて同級生の首を絞めながら、藤原は後輩を守ろうとする己の
悲劇的な勇敢さに浸っていた。
―それは自己満足という名の、酷く過った自己犠牲精神の顕在であることに、
藤原通自身が気付くことはない。
悲鳴も上げられずに、中谷は己の首を絞めるベルトを掻きむしった。みるみるうち
に変色する顔色は、赤くなり、青くなり、やがてどす黒くなっていく。
彼が向かおうとしているのは確実な死だ。
藤原は満足した。
これでいい。
裏切り者は死ねばいい。
自分達を傷つけようとする者は死ねばいいのだ。
214:虎バト174氏代理投下(5/7)
09/04/05 00:01:54 edaPMu4j0
「何で裏切ろうとすんねん……」
そう呟いた時、藤原は涙を流していた。
林も久保田も、みんな騙そうとして近づいてくる。
藤原の記憶の中で、歪曲された過去が走馬燈のように蘇る。
彼が敵意を持った人間全てが、裏切り者の仮面を被り笑いかけていた。
みんな俺を騙そうとする。
みんな俺を殺そうとする。
人間とは何て愚かで醜い生き物なのだろう。
箱に入れて大事に取っていたものがいつの間にか全て腐っていて、アレもコレも、
汚いものを全て放りだしたら、後に何も残らなかったみたいな絶望。
(いや、たった一つだけ―)
残った、小さな小さな希望。
「……小宮山……」
やがて抵抗がなくなり、完全に事切れた中谷の身体を畳に落とす。
そこに残ったのは、畳に擦りつけられた小さな血痕と、鈍器と、荷物と、死体。
ぐるりと部屋を見回す藤原の視線が、ある場所で止まった。
最初に中谷が転がり出てきた押し入れ。
僅かに口を開いた襖から覗く暗闇を、藤原通はじっと見つめた。
「くしゅん!」
風邪だろうか。体調は依然として良くはなかったが、こんな事態に本格的に風邪
の様相を呈するのだけは避けたかった。小宮山慎二はくしゃみをかみ殺し、一度鼻
をぐずった。
中谷は無事逃げ出せただろうか。
信頼している人間に対してはとことん無防備な藤原だ。逃げ出すこと自体はさほど
難しくはないだろう。
事実を知り、衝撃を受ける藤原を宥めるのは小宮山の役目だ。それ自体は憂鬱でも
恐ろしくもあったが、選んだのは己自身だ。中谷の誘いを断った時―いや、もっと
以前、藤原から逃げ出すことを選ばなかった時に、小宮山の覚悟は決まっていたのだ。
215:虎バト174氏代理投下(6/7)
09/04/05 00:02:35 edaPMu4j0
中谷と別れを告げてから、まださほど時間は経っていない。まだ藤原は気付いて
いないのか、家の中は随分と静まり返っていた。
布団から抜け出し、小宮山は藤原の姿を捜した。
別室の襖を開けると、思いの外冷たい風が吹き込んできた。驚いて顔を上げると、
なぜか窓が全開になっていた。藤原はいない。
六畳間の和室には部屋の中央あたりに愛想のない机と座布団が二枚置かれている。
なぜかその光景に一瞬だけ違和感を覚えたが、正体が掴めぬまま目に馴染んでしまう。
それよりも、小宮山は藤原の無防備な行動を咎めた。
「藤原さん、何で窓空けてるんですか! 危ないでしょう」
東に面したその部屋は、確かに窓を開けると朝日が差し込んで心地よい。
だが、見晴らしの良いそちら側の窓を開けると人目につくし、侵入されやすいと
いうリスクがあるため、締め切っていたのだ。
「ああゴメン、埃っぽいから、空気入れ替えてた」
トタトタと廊下を走ってきた藤原が、慌てたように襖の前に立つ小宮山の横を通り
過ぎて部屋に入る。
窓を閉めて戻ってきた藤原が、小宮山の前で後ろ手に襖を閉めた。
「…………」
「どうした?」
「いえ、何も」
その時、やはりわずかに感じた違和感に、小宮山は気付くことが出来なかった。
小宮山は鼻をぐすり、藤原に促されて元の部屋に戻った。かいがいしく世話を焼いて
くる藤原に今のところ変わったところはなく、まだ中谷の脱走には気が付いていない
らしい。
「中谷、少し出てくるってさ。危なくなる前にすぐ帰ってこいとは言ってるけど」
「あ、そうですか……」
彼が狂乱するまでまだ若干の猶予があることにほっとする。
(でも、どちらにしろ時間の問題だ)
その時の小宮山は、今後どうやって穏便に、中谷が逃げ出した件について藤原を
納得させるかという点で頭がいっぱいだった。
216:虎バト174氏代理投下(7/7)
09/04/05 00:03:25 fL68B7+y0
だから、小宮山は気付かなかった。
朝日の差し込む部屋の中、移動した座布団の下に潜む僅かな赤黒い染みや、
朝の風が掻き消し忘れた微かな血の匂いや、ほんの数センチ、開いていたはずの
物置の襖が一分の隙もなく閉ざされていたことに―小宮山慎二は気付くことが
出来なかった。
人知れず眠る死者の魂が、閉ざされた六畳間に静かに彷徨っていた。
【残り26人】
217:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/05 22:24:11 WmfDyN3W0
職人さんも代理の方も乙です!
中谷~!!
藤原はまたやってしまったか…
218:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/05 23:59:18 J9yqzdVL0
219:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/06 23:45:48 Q85s9c6g0
うわ、続き来てる!めちゃめちゃ嬉しい。職人さん代理さんありがとう!
藤原も今岡も精神的に壊れたマーダーだったけど、
今岡がここでリタイアか…最後は救われた、と言えるんだろうか
220:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/07 00:14:28 RWkhAt5h0
221:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/07 00:29:10 M4uE1ZEX0
職人さん乙です
藤原怖すぎるよ・・・
222:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/07 15:01:28 MZ7VsgfE0
ちょっとお尋ねしたいんですが、
竜バト2004の保管庫は消えてしまったんでしょうか?
とりあえずスレの過去ログ追って読んでたんだけど
途中抜けてて読めない章がいくつかあって…気になってしょうがない…
223:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/07 22:21:01 w128+fRP0
>>222
どの章か分かればドラバト2004の掲示板にうpするよ
ただ保管庫はどうなったのか分からない…
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
224:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/07 23:44:55 PHanGpCl0
URLリンク(www.youtube.com)
225:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/08 20:59:53 qj9CYWnh0
>>223
222です。リンク先の掲示板で読めました!
ありがとうございます。
保管庫についても㌧です。やっぱり消えちゃったのかな…
226:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/08 22:26:32 Yl25thqZO
227:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/10 02:51:56 AJs1xcGb0
虎バトの職人さん乙です
他のバトの職人さん達も
心よりお待ち申しあげております
228:代打名無し@実況は野球ch板で
09/04/10 09:18:50 Aj6/Wuc60