08/05/01 21:19:47 63a9i85J0
「兄ちゃんは大したことない」
20年くらい前のことだ。
賢介少年、いやケン坊はそう言った。
字面だけ捉えたら小生意気なんだが、
丸顔に坊主頭のケン坊が笑顔で言うと憎めない。
そしてケン坊はそんな兄ちゃんのことが大好きだった。
ケン坊の兄ちゃんは当時高校で野球をしていた。
そしてケン坊も兄ちゃんみたいに野球をしたかったのだろう。
兄ちゃんも部活で忙しかったはずだが、
時間がある時に兄ちゃんと楽しそうに遊んでいるケン坊の姿が印象的だった。
当時のケン坊は小柄な少年だったけどバッティングはすごく巧かった。
兄ちゃんがなしえなかった甲子園出場、その先のプロ…。
きっとケン坊はそこまで見据えていたんだと思う。
それは世の中の野球少年の多くが思っていることと同じだろう。
そしてケン坊は甲子園出場を果たし、プロの選手になった。
なかなか芽が出なかったけどいまやリーグを代表する二塁手になった。
♪僕らは待つよ 輝く瞬間♪
私は賢介の応援歌のこのフレーズを聴くといつも泣けてくる。
きっと私も含めてみんなずっと賢介のことを待ち続けたんだと思う。
そして今後も「これからの賢介」のことを待ち続ける。
つい先日TVで「3番バッターのような2番バッター」という発言を見たけど、
最近3番バッターとして試合に出るようになった。
そのうち犠打の記録を持っていたことが不思議に思えるくらいの巧打者、
ファイターズの、いやリーグを代表する巧打者になることを待ち続ける―
田中賢介物語第2章<完>