07/05/11 21:26:04 VFkiQqdy0
第十羽 百両の価値
『たのもう!』
「たのもーたのもー!!」
騒々しく何度も門を叩き、講武館の正面から入ろうとする伍助。
表門の脇にある小門から出てきた門下生に名乗りを上げる伍助。
「うさぎ流剣術道場師範、宇田川伍助と申す!!」
「同じく門下生の摂津正雪」
「松山桐之進殿に今すぐ試合を申し込みたい!!」
やれやれ、とあきれ果てる講武館の門下生。
「お主・・・ここが講武館と心得ての事か?
まぁ松山殿はいらっしゃるが・・・おいアレを取ってこい」
もう一人の門下生が急ぎ取ってきたものは、
数年先の他流試合の予定までびっしりと詰まった巻物だった。
「昨日今日来たものがおいそれと試合などできぬのだよ」
一瞬、目が点になる伍助。すぐさま土下座して「なんとかすぐ試合を」と
お願いするも、うさぎ流などというわけのわらかぬ流派であればなおさらのこと
(ワラカヌ・・・って、わからぬの誤植をしてますw)
と、冷たくあしらわれる。
「なんとか・・・なんとか・・・」と門下生の足にすがりつく伍助。
伍助の熱意に打たれたのか、しつこさにあきれ果てたのか、
「それ程までに言うなら・・・それなりの誠意を見せてもらおう」
と、門下生はある難題を出す。
それは・・・
『今日の暮れ六つ(午後六時)の鐘が鳴るまでに百両用意しろ。
それがダメなら、気長に待つ事だな!!』
『ひゃっ…ひゃっ…百両!!?』白目をむく伍助。(作者注:一両十万円ぐらいだと考えてね)
門を閉められ、呆然とする伍助であったが、
しかし・・・やらねば・・・と摂津を連れて駆け出す。
・・・ところが、コレは松山が仕組んだものだった。
偽の試合表を見せ、無理難題を押し付け、
侍にとっては、嫁よりも大事なものが山程あるという事を理解させるためだった。
・・・
考えもなく焦って駆けている伍助をようやく呼び止める事に成功した足がガクガクの摂津。
「まあ、話を聞けよ、オレ達ついてんだぜ伍助ちゃん」「気でもふれたか摂津殿」
「ただ門前払いをくらうより金の問題なったのは運がイイって話サ」
と、懐から何かを取り出す摂津。
それは、お金の面でうさぎ道場のうしろだてになってくれればと
摂津が茶屋の女の子達に聞いてまわって書き上げた
茶屋にしょっちゅう遊びにきてる金持ちの名前が書かれたリストだった。
(作者注:この時代では気に入った道場のお金の世話をしてくれる人が結構いたんだよ!!)
「オレらの束脩(そくしゅう:品物による入門料の事)や月謝だけじゃ厳しいだろ?
天下市の道場になるにゃあ金出すヤツの一人もいねーとな」
・・・「摂津殿!!!」・・・泣きながら摂津に抱きつく伍助。
「女じゃねえなら離れな・・・暮れ六つまで時間がねぇぜ」