07/10/19 00:47:27 S/8kCzVE0
>>418
藤吉圭介へ
この手紙をもって僕の医師としての最後の仕事とする。
まず、僕の病態を解明するために、鬼頭教授に病理解剖をお願いしたい。
以下に、心臓病治療についての愚見を述べる。
心臓病の根治を考える際、第一選択はあくまでバチスタ手術であるという考えは今も変わらない。
しかしながら、現実には僕自身の場合がそうであるように、
発見した時点で手遅れの進行症例がしばしば見受けられる。
その場合には、薬剤療法を含む全身治療が必要となるが、
残念ながら、未だ満足のいく成果には至っていない。
これからの心臓病治療の飛躍は、手術以外の治療法の発展にかかっている。
僕は、君がその一翼を担える数少ない医師であると信じている。
能力を持った者には、それを正しく行使する責務がある。
君には心臓病治療の発展に挑んでもらいたい。
遠くない未来に、心臓病による死がこの世からなくなることを信じている。
ひいては、僕の屍を病理解剖の後、君の研究材料の一石として役立てて欲しい。
「屍は生ける師なり」。
なお、自ら心臓病治療の第一線にある者が早期発見できず、
手術不能の心臓病で死すことを、心より恥じる。
朝田龍太郎