07/05/21 01:24:03 PcyOdwCNO
家に帰るとだいぶ夜遅くなっていた。玄関を開けると今にも泣きそうな顔をした愛子が立っていた。
俺「・・・よう」つぶやくような声で言い愛子の目を見た。愛子は俺の目を見ようとしない。俺は会社をクビになったことを言おうとした。
愛子「・・・しげ君、これ何?」愛子の手には俺の小型盗聴器があった。伊藤の家に行った時、隠すのを忘れていた。けど、今の俺にはそんなこともはやどうでもよかった。
愛子「これ・・・全部聞いた。ねえ、なんでこんなことするの?」俺「俺、会社クビになったから。そうだお前、伊藤と付き合ってんだろ?」
愛子「えっ?クビってどういうこと?」俺「それはもういい、お前、あいつと何度もホテル行ってたんだろ」愛子「違う!私は伊藤さんと楽器屋さんに行ってただけよ!」
俺「はぁ?楽器屋って、何言ってんだよ!」愛子「私はただ、伊藤さんとギターを買いに楽器屋巡りしてただけなの!それで最近帰りが遅くなって・・・街で偶然伊藤さんに会って知り合いって聞いて、一緒にどんなギターを買ったらいいか選んでもらってたの」
俺「なんでお前がギターなんか買うんだよ・・・どうせ伊藤にやるためだろ」愛子「しげ君にあげるために買ったの!・・・うれしかったから・・・」
俺「はぁ?」愛子「しげ君が弾き語りしてくれたマシャのMELODY、すごくうれしかったから・・・」そう言うと愛子はうつむき、涙が一粒、二粒と流れ落ちた。
俺は石のグローブで顔面を殴られたような気分になった。全て俺の勘違いだった。けど、現実は取り返しのつかない事になっていたのを今気付いた。
愛子「・・・!」愛子は家を飛び出した。俺「おい、待て!」俺は後を追った。交差点を出たところだった。誰かが叫んだ。「危ない!」俺「愛子!!」