07/10/19 20:25:13 TX9PpP1t0
受話器を置こうと思い、とどまる。
俺は今日ニートを脱出するんだ。。
ここでまた逃げてちゃいけねぇやな。
これからあの企業に電話を入れるか!
電話応対、何回もリハーサルをして完璧のはずだ。
電話機のボタンを押そうとする指が、気を荒くさせる。
畜生、また勇気が出なくてしょうがねぇぜ・・・
求人サイトを見渡す。このサイトには大量の求人がある。
武はもう一度求人を見直した。
多すぎる求人の中、武は条件を絞り、丁寧にチェックする。
六尺一丁になり、鞄の中から鉢巻を取り出して締める。
そして腹から大声を張り上げる。
「俺は男だ!ニート脱出するんだ! 男一匹、根性根性ど根性!」
そしてその場で四股を踏み始める。
「押忍!押忍!押忍!」
求人を一つ読むたび、押忍と声を張り上げる。
体の奥からあふれ出てくる緊張を、身体の鍛錬で発散させる。
「押忍!押忍!押忍!」
体中から汗が噴き出しては零れ落ち、緊張で顔の色を変えていく。
六尺も鉢巻も汗でびしょ濡れになってくる。
「くそ!きついな」
緊張し過ぎ、その場で倒れんばかりの青白い顔を見て言う。
そして、開いている求人サイトと電話をそっと閉じた。
青白かった顔は「一仕事終えた」様な清々しい表情で満ちている。
「よっしゃ、楽になった」
そしてゆっくり布団に潜り始める。
親と同居している家に、武が寝返りをうつ音と明日は頑張る!の叫び声が延々と響き渡った。