07/07/06 21:47:26 89n1KE6K0
「追悼すっかぁ」
スーツを脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれの4REALＴシャツを整えた。テレビの前に立ちＤＶＤプレイヤーを起動する。
既に『WWE クリス・ベノワ ハードノックス』を用意し、俺のＤＶＤは俺の視聴を待つ。
身体を横にして鏡に映すと、涙でくしゃくしゃの自分の顔がそこにあった。
「俺の大好きなレスラーの訃報だぜ」声に出していう。
「男はやっぱ追悼」やおらＤＶＤのチャプターから、新日時代のペガサスキッドを取り出す、手にオイルをたっぷり取り、逆手で亀頭をこね回す、
「ペガサス対ライガー、IWGPジュニア戦」キーワードが俺の涙腺を更に刺激する。
「ベノさんたまんねぇ」慟哭に合わせて、身体を上下させる。
頃合いを見て早送りする。
テレビの中のベノワは、WWEスーパースターになっていた。
「ちきしょう俺が代わりに死んでやりテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。ラッシュをもう一度効かせ、フィギュアを追加すると、男へ向かってまっしぐらだ。
「人殺しになっちまった」「プロレス一本のほんまもんの荒ぶる天馬」
「妻子を殺害、その後自殺」「ズリュッ、ブチュッ」涙を飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」心の奥から、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり、俺を悩ます。
-彼の死を悼みてぇ- -でも犯した罪は許されねぇ-相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っ淵に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「ベノワが世界ヘビー級王座を獲得 ! 」「ぶちっ」
プレイヤーを押し分けて、ＤＶＤがしゃくり出される。
再生時間が過ぎ、目の前が現実に戻る。