07/01/05 12:42:21 XaRziN1dO
「もう一軒汲み取ってやろうじゃねぇか」
伝票挟みの上から、汲み取り依頼書をまさぐる。ボールペンで引っかくように、次のお客の住所を確認した。
かなり山奥の住所に、バックミラーの中の汲み取り野郎が顔を歪めた。
左手は、手袋のまま、ギアノブを掴んだ。そのままクラッチをつなぎ腰を据えてアクセルを踏む。
「山奥の一軒家最高だぜ」声に出す言葉で、自分を挑発する。
「作業着一丁日本男児の汲み取りだぜ」「俺のホース捌きっぷりを見てやってくれっ」
辛抱たまらなくなって、煙草をくわえる。右手でハンドルを握り、左手でライターで火をつける。
「おうっ」見覚えある看板の先から、山本さんの家が見えてきた。
「ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ」坂道をバックで上がり到着したら、サイドブレーキを引く。
P.T.Oを入れ、吸気し始めると、脳の中を<汲み取り>だけが、支配する。
「ズルッ、ズルッ、ズルッ」玄関先の辺りをホースが通過する度、くぐもった擦過音が響いた。
先ほど来引っ張り続けていたホースを、ギュッと糞甕の前へ引っ張る。
ジョイントの金具が家の角に引っ掛かり、ホースがテカテカに突っ張る。逆手でそれを握ると、グリグリと回転させる。
「これから、この俺が汲み取るぜ」強い臭いに腰が砕けそうになる。ホースを前後に振ると、一層感じる。
バケツの水を追加し、改めて糞尿を吸い込む。
「ズズズッ、パピーッ、ブッ、ブルブルッ」一旦止めて吸い込み力が戻るのをを待つ。
てんこ盛りの糞尿と、やけに効くアンモニア臭で、男入りまくり状態だ。
「汲み取り、地方公務員の汲み取り」「左遷一本男の汲み取り」
言葉が屈辱を呼び、刺激が復讐心をくすぐる。
「ズズッ」軽く吸う。蟹股でホースを力強く上下させる、
「ツーンッ」アンモニア臭が溢れ、どうしようもなくなってくる。
「ゴゴゴッ」反り返り脈打つホースを、渾身の力を込めて捌く。
「144㍑、いや、180㍑だな」
「ズッ、ズズズッ」
「汲み取り終了、あとは集金だ」
<直立不動>の体制で、玄関先に立つ。山本さんは、もはや財布片手に支払いをしようとしてるはずだ。
「1700円になります!」
いつもの決め言葉で、支払いに備える。2000円だされた時に合わせて300円を握った。
まったく返事がなく、家の中は静まりかえっている。
しょうがない、不在伝票を入れて帰ろか、、