06/12/31 08:08:20 pCZ15zjy0
「年賀状配っかぁ」
私服を脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれの制服を整えた。原動機付き自転車の前に立ち股を開く。
既に山と積まれ、今年の年賀状は俺の配達を待つ。
原付のエンジンをかけシートに座ると、カゴにパンパンになって、配達物がそこにあった。
「俺の今年一番の郵便配達だぜ」声に出していう。
「男はやっぱ郵便局員」
やおら配達袋の中から、ズルムケ状態のお年玉付き年賀はがきを取り出す、手にグローブをしっかりはめ、逆手でハガキをこね回す、
「ヌリュッ、ヌチョッ」音が俺の勃起中枢を更に刺激する。
「年賀状たまんねぇ」扱きに合わせて、身体を上下させる。
「男の郵便配達にゃあこれだよ」ラッシュを吸い込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「年賀状、年賀状」「新春のご挨拶」
頃合いをみて原付を発進させる。俺は自分のこの仕事が好きだ。
冷たい早朝の風だけが顔にあたり、人気のない車道をつっきり、信号無視して、原付を操り、左手でクラクション鳴らし、右手でヌルヌルとアクセルを回す。
新年一発の俺は、日本一の郵便局員になっていた。
「ちきしょう川に投棄してやりテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。ラッシュをもう一度効かせ、年賀状を追加すると、各家庭へ向かってまっしぐらだ。
「年賀状配ってやる」「お年玉付きのほんまもんの年賀状」
「うりゃ、そりゃ」「ズリュッ、ブチュッ」しぶきを飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」原付のエンジンから、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり、俺を悩ます。
-配りてぇ- -もう川に捨ててぇ-相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っ淵に立つ。
「きたっ」俺は車体を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「年賀状一枚 ! 」「ぶちっ」
郵便ポストを押し分けて、白い塊がしゃくり出される。
真っ白い時間が過ぎ、目の前が現実に戻る。