06/12/12 15:21:51.71 5m/mlZzW0
チョコチョコとフェンスの穴から侵入する朝比奈さんを見守った後、俺も侵入する。
すると入った瞬間に気温が少し下がった気がした。日陰に入った訳でもないのに、気のせいか?
「これならわざわざフェンスをよじ登る必要もありませんでしたね」
古泉は余計な体力を使っちまったようだ。これからハルヒに振り回されるって言うのに、可哀想なこった。
まあ俺もなんだがな・・・そういやコイツの表情から僅かに焦りのようなものが見て取れる。
「どうした、何か悩み事でもあるのか? まあハルヒに関してならそんなこと言ってやれる立場じゃないが」
「いえ、このフェンスを越えた時・・・何だか妙な感覚になりませんでしたか?」
妙な感覚・・・?確かにあったような気がするが、何だったかな。一昨日の晩飯を思い出すように眉間にしわを寄せる。
あー・・・そうだ、ちょっとばかり涼しくなったような気がしたんだっけ。
すると古泉は何かを閃いたかのような顔で指をパチンと鳴らす。
「それです、その通りですよ。どうやら貴方は僕より繊細な身体をお持ちのようですね」
クックと古泉は笑ってるんだか何だか解らない音を立てて長門に質問する。
「――長門さん、ちなみにフェンスの内と外との気温差を教えて頂けますか」
「フェンスの外側は31.5℃。内側は27.3℃。気温差は4.2℃」
もうこの程度では驚かない俺に乾杯。しかし4.2℃は大きいぞ、そう考えるとかなり涼しくなった感じがする。
単純だな、俺。いやそれよりもこの気温差は何だ。まさか雛見沢は別世界とか。
「もしかすると、もしかするかもしれません。・・・いえ、似てるんですよ」
何がだ。
「ここと――閉鎖空間が。」
閉鎖空間だって?あそこはもっと灰色っぽくて寒々しくて・・・それにあの青いバケモノだって居なさそうだ。
679:保母さんと初詣
06/12/12 15:52:03.70 5m/mlZzW0
「ごもっともです。閉鎖空間よりもむしろ――貴方と涼宮さんだけの世界を覚えていますね?」
忘れたくても忘れられんな、フロイト先生が聞いたら爆笑しそうなあれか。ハルヒ曰く最悪の夢。
そのハルヒは朝比奈さんにセクハラして遊んでいる。羨ましい・・・じゃなくて後で注意しとかねばならんな。
しかし古泉の話は長くなりそうだ。朝比奈さん、すみませんが今は耐えてください・・・帰ったら何か奢りますから。
で、その世界がどうしたって?それがこの場所とそっくりだとでも言うのか。
「ええ。もし貴方と涼宮さんがあの世界に居続けたなら、この世界とよく似た世界になったはずです――まあ仮説ですが」
待て、ハルヒがまた新世界を創り上げたってか。俺の記憶が正しければアイツの機嫌が悪い時に閉鎖空間は発生する。
そしてあの世界もその延長線上のようなもんだろう。しかし今のハルヒは機嫌が悪いどころかワクワクしっぱなし状態だ。
「涼宮さんの高ぶる感情に呼応して出来たのかもしれませんよ? 思い過ごしであって欲しいのは僕も同じです」
ふと長門を見るが、いつもと何ら変わりない。古泉の思い過ごし・・・だな。まあハルヒの所為で神経質になってるのだろう。
「アンタたちさっさと来なさい!」
この台詞は二度目だな。セクハラに飽きたのか、ハルヒが大声で呼ぶ。朝比奈さんもどうやら無事のようだ。
先頭にハルヒと古泉、朝比奈さんと俺はその背後で話しながら歩き、そして最後尾の長門が黙々と付いて来る。
しばらくすると舗装道から土道に変わっているのに気付いた。目的地はそろそろか。しかし廃村って感じがしないな・・・おや?
顔を背けた俺の視線の先には――あれってもしかして人じゃないか?
680:おせち(30,000ウォン)
06/12/12 16:01:22.46 OY2DoMugO
誰かクルー?
681:猪(青)
06/12/12 16:16:42.99 DcE01dv40
「廃村って感じがしない」
これは・・・ついにあの人達とご対面ですねっ!?
682:美容師と初詣
06/12/12 16:20:26.13 5m/mlZzW0
間違いない。しかしこんな廃村に来る輩なんてのはオカルトマニアか変人か・・・あ、役所の人とかだったらマズい。
しかし向こうはこちらに気付いていないようだし、見て見ぬフリが賢明だ。ハルヒの事だから話し掛けに行くかも知れんし。
とか何とか考えてる内に、事態は急展開を迎える。
「おんや、見ない顔の子らやね。観光かい?」
俺達の目の前に別の人物が現れやがった。しかしどうやら役所の人間では無いようだな。
元気なご老人が笑みを浮かべてハルヒに話し掛けている。なんだ地元の人か・・・っておい。
ここは廃村じゃなかったのかよ。もしかしてこの爺さんはオカルトマニアで、しかもここの常連とか。よし聞いてみるか。
「あの、お爺さんは何をなさってるんですか?」
「ああ、ワシは家に帰っとるとこよ」
「家って・・・まさか、この村にあるんですか?」
「ワシは雛見沢のモンよ。いや何にも無えけど、この村はええ所やけんね」
そんな馬鹿な。何にも無いどころか、この村はとっくに廃村になったはずだぞ。故郷が忘れられずに無断で住んでいるだろうか?
老人はここに居るのがさも当たり前かのように話を続ける。
「アンタら”わたながし”のお祭りまで居るんやろ?」
祭りだと?既に廃村になった場所で祭りなんて行われる筈がないじゃないか。それに・・・”わたながし”って何だ?
683:姫初め
06/12/12 16:27:53.48 w9Xum6M7O
支援
684:美容師と初詣
06/12/12 16:29:12.27 5m/mlZzW0
「”わたながし”って何ですか?」
聞いたのは俺ではなくハルヒだった。
「知らんのかい?布団とかの「綿」を「流す」で綿流し。
毎年この時期にやる祭りでな、大勢の人で賑わうんよ」
この人は何を言ってるんだ。毎年この時期?もうボケてしまってるのだろうか。
老人と別れた後も歩き続けたSOS団が目にしたのはとんでもない光景だった。
ありえないだろ、こんなことって。
685:猪(大人)
06/12/12 16:47:43.07 4d6X9+YXO
wktk
686:VIP皇帝
06/12/12 16:55:47.49 0pslVNv80
期待
687:トリマーと初詣
06/12/12 17:01:52.08 5m/mlZzW0
寡黙な文学少女とクラス委員長の宇宙人対決や、可憐な美少女と行った過去の世界や、
嫌味な男と巨大怪物との超エスパーバトルなどを見て来た俺だが、流石に呆気に取られたというか何というか。
廃村になったはずの村が廃村になっていなかった。
出会うたびに珍しそうに話し掛けて来る人々、田畑で農作業に努める人々や、走り回る子供まで居る。
雛見沢は・・・人が住む普通の村だった。頭がおかしくなりそうだ。
「何で?どうして雛見沢に人が住んでるの?ねえキョン!」
俺に聞くなって。というか俺が知りたいさ。多分お前の仕業なんだろうよ、ハルヒ。だってデタラメ過ぎる。
朝比奈さんを見てみろ、ポカーンと口を開けっ放しで歩いてるぞ。
流石の古泉もいつものニヤケ顔じゃなくなっていた。古泉、残念ながらお前の思い過ごしじゃなかったようだな。
「正直言って流石に驚きましたよ。僕の予想が当たったのでしょうか」
当たったところで全然嬉しくないな。とにかくここがヤバいならさっさと脱出した方が良いんじゃないか?
早いこと宿まで戻って――
「不可能」
無言を貫き通していた長門が口を開いた。不可能ってどういうことだ?
「この空間の構成情報を解析した結果、涼宮ハルヒ自身が原因ではないという結論に達した。
涼宮ハルヒは飽くまでもトリガーに過ぎない。この空間を創造した主は我々以外の何者か」
トリガーね・・・何時ぞやの巨大カマドウマが思い出される。それはどうでもいい、「何者か」って誰なんだ。
「何者かがこの空間の構成情報へのアクセスを妨害している。さらに情報統合思念体との通信も途絶えている。
このインターフェースの処理能力では何者か把握できない。
この空間から脱出する為にはこの空間の創造主が何者か特定する必要がある」
思念体との通信が途絶えただと?長門のトンデモパワーを妨害するだけの力を持った相手か・・・。
敵も宇宙人か、あるいはまだ見ぬ異世界人か。
688:トリマーと初詣
06/12/12 17:21:44.23 5m/mlZzW0
とは言っても俺が太刀打ち出来そうな相手じゃないのは確かだ。
困り顔の古泉に無表情の長門、未だ呆然としたままの朝比奈さんの愛らしいお顔に、
おい、ハルヒ。随分と楽しそうじゃねえか。
「だって無くなったはずの村が復活してるのよ!ミステリーよ、ミステリー!」
どうだかな、俺にとっちゃお前がミステリーだよ。しかしこんな世界を作ったのはそこのどいつだ?
まあ朝倉の時みたいに死に直面してないだけ幾分マシだが。
「さて困りましたね。帰れない、となると僕達は野宿をしなければなりません」
しまった、そこまで考えてなかった。冬じゃないから凍え死ぬ心配は無いが、田舎の夜は寒そうだ。
それに何より朝比奈さんを野宿させる訳にはいかん。それだけは何としても阻止する。
ということで、まずは寝泊りする場所を探すとするか。
「ハルヒ、今日は雛見沢に泊まろうと思うのだが」
「へえ、アンタもたまにはいいこと言うじゃない!確かにあの移動時間を探索に回した方が良いわね」
「じゃあ宿の方には俺が連絡入れとくから」
よし、適当に誤魔化せたな。しかし寝泊りするといっても民宿なんて無さそうだぞ。
689:トリマーと初詣
06/12/12 17:37:36.69 5m/mlZzW0
俺の考えは的中した。
何処へ行くかの当てもなく、ヘンテコ村を散策するSOS団御一行様。
傍から見れば相当マヌケな絵面だろうが今はどうでもいい。
「村、というからには村長も居られるのでしょう。その人を尋ねれば何か解るかもしれません」
なるほど、なら次に出合った村人に聞いてみるか。
690:猪(里に下りてきた)
06/12/12 18:02:38.91 GcaPPc800
保守
691:猪(ボーカル)
06/12/12 18:19:50.29 0pslVNv80
保守
692:ID:5m/mlZzW0
06/12/12 18:24:31.65 +xwTvu/c0
しかし現実ってのはなかなか上手く行かないように出来てるもんだ。
俺達はだんだん人気のない道へと吸い寄せられていった。村人も見掛けない。
「あのー、引き返した方が良いんじゃないですかぁ?」
朝比奈さんがとても賢明な意見を仰った。確かにこのまま迷ってても仕方ないよな。
じゃあ一度戻りましょう。貴女の意見を無視など出来ません。
「駄目よ、みくるちゃん!私たちはもう引き返せないのよ!」
何のこっちゃ。こんなバカは無視してさっさと戻りましょう、朝比奈さん。
「駄目なもんは駄目なの!みくるちゃん、引き返したら死刑だからね」
ビクッと怯えながら縮こまる朝比奈さん。死刑て。
「ほらほら、ちゃっちゃと進んだ進んだ!」
相変わらずマイペースなハルヒにトボトボと付いて行く朝比奈さん。
もしも貴女が死刑になったら俺が代わりますよ。
「下手をすると林の中で野宿かもしれませんね」
今日はお前の予想が良く当たるからな、って縁起でもない。
ヒョイと肩をすくめた古泉の顔からはいつのまにやら焦りが無くなっていた。
「キョン!あそこに誰かいる!」
693:年賀状(ユニクロからだけ)
06/12/12 18:35:19.78 +xwTvu/c0
長い林道を抜けるとそこはゴミ捨て場だった。粗大ゴミとかそんなんが山みたいに積まれてる。
そのゴミ山の中にやけに小さい人影を見つける。こんな所で何をしてるんだ。
「おーい!そこの誰かー!」
ハルヒは叫びながら役目を終えて捨てられた者達の山を渡り歩く。え、ここ渡るの?
あちらも気付いたようだ。こちらに向かって歩いてくる。どうやらその人影の正体は、長い髪の少女のようだ。
「みぃ・・・どうしたのですか?困ったことがあったらボクに言ってくださいなのです にぱー☆」
694:猪(子持ち)
06/12/12 18:44:12.43 4d6X9+YXO
りかちゃんktkr
695:年賀状(配ってます)
06/12/12 18:47:52.28 R+JIqBnf0
保守
696:猪(浴衣姿)
06/12/12 18:52:42.89 GwDhCUdnO
保守
697:猪(巨乳)
06/12/12 19:32:20.07 3ssG6qi/0
白く透き通った肌と黒く長い髪に陽の光が反射する。
どこか神秘的な雰囲気が漂う少女は古手梨花と名乗った。どこか長門っぽさを感じる。
恐らく俺の妹と同じくらいの歳なんだろうが、一体なんなんだろうなこの差は。
いやそれよりも聞かねばならんことがあるのだった。子供とは言え少なくとも俺達よりは詳しい筈だ。
しかしだな。確かに俺達は困りまくっているのだが、どうして解ったんだ?
「ボクの知らない人がここに来た時は大抵困ってるのですよ。迷子の迷子の子猫さんなのです。みゃーみゃー」
まあ迷子でもない限りこんな所には滅多に来ないだろうな。みゃーみゃー。
「この村はみんな仲良しなのです。だから知らない人が来るとすぐに分かるのですよ」
なるほど、出会う村人全員に話し掛けられた裏にはそんな理由があったのか。恐るべし雛見沢村。
「ええと、梨花ちゃん。この村の村長が何処に居るか知ってるか?」
梨花ちゃんは少しの間考える素振りをし、満面の笑みで答えた。
「それならボクが村長さんのところまで案内しますですよ にぱー☆」
「あなた立派よ!将来のアメリカ大統領になる素質があるわ!」
アメリカ大統領になる素質を見抜けるのなら是非その技を俺に伝授してくれ。将来の大統領に投資してやるから。
しかし案内までしてくれるとはありがたい。この村じゃ目印になりそうな建物とか無いだろうからな。しかしこんな所で何をしていたんだ?
「ボクは人を待っていたのですよ」
じゃあその人を待ってなきゃ駄目じゃないのか?
「大丈夫なのですよ。さあレッツゴーなのです」
698:猪(巨乳)
06/12/12 19:49:58.34 3ssG6qi/0
「まずは一段落ですね。これでなんとかなるでしょう」
まあ寝泊まりする場所は良いとして、本題は未だ進展なしか。
長門、何か新しく解った事あ――どうした?なんか様子がおかしいぞ。
「平気。処理能力が一時的に落ちているだけ」
お前が言う平気は当てにならん。あまり無茶はするな。
「この空間の構成情報から崩壊プログラムの起動条件を割り当てた――その鍵は”古手梨花”」
あれ?なんか思ったより長くなってきたwww
続きはまた明日の保守代わりにでも書きます