06/11/17 22:23:04 F8adE0ge0
冥球島といえば、ユニフォーム姿の男達が、己のプライドを賭けてぶつかり合う、
勇壮な島として、野球を極めた者にのみ知られている。
試合のあと、男達はベンチ裏に集まり、次の試合に備え、話し合う。
負けたチームの選手達は、激しい試合でボロボロクタクタになりながらも、次の試合から、仲間としてベンチに加わる。
俺はいつもそれが狙いだ。
仲間になった選手の、できるだけ優れてる奴を8人ほど、
こっそりさらってスタメンに据える。
そして、深夜、プロチームとの決勝戦が始まる。
俺はもう一度汚れたユニフォームのみ身に付け、グラウンド中にかっさらってきた選手をばら撒き、
ウォーッと叫びながら、マウンドの上で肩を作る。
汚れたユニフォームは、泥の臭いがムンムン強烈で、俺の勝利への意欲を刺激する。
センターの矢部君は、もうすでに痛いほど興奮している。
グローブの中に顔を埋める。臭ぇ。
汗臭、グラブオイル臭や、牛革独特の酸っぱい臭を、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。
臭ぇぜ、ワッショイ！ 猪狩進ワッショイ！と叫びながら、キャッチャーとサインを交換する。
球種を比べ、一番キレが鋭いやつを決め球に選ぶ。
その決め球には、あかつき大付属戦でスタンドまで運ばれた跡までくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
その決め球を打ち返してきた奴は、あかつき大付属で一番威勢が良かった、エースで4番の、サウスポーの、
猪狩守だったと、勝手に回想して、人差し指と中指を縫い目に押し当て、
思いきり振りかぶり、プロチーム強ぇぜ！俺が抑えてやるぜ！と絶叫し、
ボールをいっそう激しく投げ込む。
他の選手は、きっちりと狙い球を絞り、
ガチムチプロチームのエースを捕らえながら、ウオッ！ウオッ！と唸りながら点を取りまくる。
そろそろ限界だ。