06/11/11 18:02:11 O3sqoUcs0
とある休日の午後、ポケモンゲットの疼きに誘われて、俺はいつものサファリゾーンに向かった。
到着するなり、俺の眼は野獣と化し、獲物を物色し始める。
いた!池のほとりの草むらで餌を貪り食べている、ケンタロスを発見。
……俺はそのケンタロス野郎の顔に見覚えがあった。
先日、丁度このゾーン、この草むらでエリートトレーナーと待ち合わせをしていた奴だ。
そのトレーナーのせいで、俺はケンタロスを取り逃がしてしまったんだ。
人のポケモンじゃしょうがないな、他を当たろうとも思った。
しかし、あの全身から発せられる「暴れ牛フェロモン」には抗い難い。
それに、万が一野生ポケモンである可能性もある。
よし、行くぜ!俺は一大決心をし、ケンタロス野郎に声を掛けた。
「よ、よう。いい体してんな。お、お、俺とポケモンリーグのチャンピオンを目指さねえか?」
人のポケモンと分かってる奴に声を掛けるのは初めてで、不覚にも声が震えた。
「いいぜ。実は俺は野生なんだ。俺のすげぇ角でヒィヒィよがらせてやるよ。」
俺の妄想では、ケンタロス野郎はこう言う筈だった。しかし、現実は甘くない。
「なんなんですかあなた。気持ち悪い。警備員呼びますよ。」
やはり駄目だったか……。ケンタロス野郎は俺を睨みつけると、どこかへ行ってしまった。
胸に広がる痛みと、もやもやした得体の知れない感情に耐えながら、俺は思った。
そうか、俺はポケモンリーグを制覇する為のポケモンが欲しかったんじゃない。
俺はあのケンタロスに恋をしていた……そして失恋したんだ、と。
まだ俺自身無垢な駆け出しトレーナーだった頃を思い出し、俺の目から涙が溢れた。